JP2008021691A - ビスマス置換希土類鉄ガーネット単結晶の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 鉛をフラックス成分とするLPE法において、BIGに含まれる鉛の量を0.1重量%に減らすことのできるBIGの結晶育成技術。
【解決手段】 希土類酸化物と鉛を含んだフラックス成分からなる融液を用いたLPE法によるBIG育成において、融液中のZn/Pbモル濃度比が0.15以上とすることで、BIGへの鉛の混入が抑制できる。
【選択図】 なし
【解決手段】 希土類酸化物と鉛を含んだフラックス成分からなる融液を用いたLPE法によるBIG育成において、融液中のZn/Pbモル濃度比が0.15以上とすることで、BIGへの鉛の混入が抑制できる。
【選択図】 なし
Description
本発明は、光アイソレータや光サーキュレータなどのファラデー回転子に用いられる、ビスマス置換希土類鉄ガーネット単結晶の結晶育成方法に関する。
近年、光ファイバ通信や光計測の発展はめざましいものがある。この光ファイバ通信や光計測では多くの場合、信号源として半導体レーザが使用されている。しかし、半導体レーザは、光ファイバ端面などから反射し、再び半導体レーザ自身に戻ってくるところの所謂反射戻り光があると、発振が不安定になるという重大な欠点がある。そのため半導体レーザの出射側に光アイソレータを設けて、反射戻り光を遮断し、半導体レーザの発振を安定化させることが行われている。
光アイソレータは偏光子、検光子、ファラデー回転子およびファラデー回転子を磁気的に飽和させるための永久磁石からなる。光アイソレータの中心的な機能を担うファラデー回転子には、主に液相エピタキシャル(以下、LPEと略す)法で育成される厚さが数十μmから500μm程度のビスマス置換希土類鉄ガーネット単結晶(以下、BIGと適宜略す)、たとえば(HoTbBi)3Fe5O12、(YbTbBi)3Fe5O12などが提案されている。
BIG単結晶を育成するLPE法では、フラックス成分であるPbO-Bi2O3-B2O3にガーネット単結晶成分である希土類や鉄を溶かした融液を、ガーネット単結晶が析出する過飽和温度状態にして、種結晶基板上を浸漬して結晶育成が行われる。この際に、フラックス成分であり、かつファラデー効果の増大をもたらすBiが取り込まれ、BIGが育成されるのである。しかしながら、同じくフラックス成分である鉛も、不純物として0.2重量%〜0.8重量%が取り込まれる。
近年、環境に対する規制が厳しくなってきている。鉛は中枢神経系機能障害やガンを引き起こす物質であることから、例えば、RoHS指令「電気電子機器に含まれる特定有害物質の使用制限に関する欧州議会および理事会指令」での指定物質であり、その最大許容量は0.1重量%と定められている。このRoHS指令を満足するためには、BIGに不純物として取り込まれるPb量を0.1重量%以下に減らすBIG製造技術が必要とされている。
最も有効な手段は、鉛を含まないフラックス成分を使った融液による結晶育成であることは明白である。しかしながら、鉛を含まないフラックス成分として、Bi2O3(特許文献1)、またはBi2O3にアルカリ金属を添加した方法(特開文献2)が提案されているが、光通信用途のファラデー回転子に必要な厚さ0.5mm程度のBIGを、安定に育成する技術としては確立されていない。また、技術的にも困難だとされている。そこで、鉛をフラックス成分としたLPE法技術にて、育成したBIGにPbの混入を防ぐ手段が必要とされているのである。
特公昭57−45719
特開昭50−134000
鉛をフラックス成分とするLPE法において、BIGに含まれる鉛の量を0.1重量%に減らすことのできるBIGの結晶育成技術の提案を課題とする。
本発明者らは、希土類酸化物と鉛を含んだフラックス成分からなる融液を用い、非磁性ガーネット単結晶基板にビスマス置換希土類鉄ガーネット単結晶BIGを育成する液相エピタキシャル法において、酸化亜鉛(ZnO)の融液への添加が、育成された単結晶であるBIGへの鉛(Pb)の混入を抑制する働きがあるとの知見を得て、上記課題の解決につき、さらに鋭意検討した結果、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、希土類酸化物と酸化鉛を含んだフラックス成分からなる融液を用い、非磁性ガーネット単結晶基板にビスマス置換希土類鉄ガーネット単結晶を育成する液相エピタキシャル法において、融液中の酸化鉛モル濃度が5%以上であり、かつ融液中のZnのPbに対するモル濃度の比Zn/Pbが0.15以上であることを特徴とするビスマス置換希土類鉄ガーネット単結晶の製造方法である。
環境への規制、例えばRoHS指令を満足したファラデー回転子の提供が可能となる。
以下、本発明の詳細を説明する。
図1は、融液中のZnO/PbOの濃度比と、BIG中へのPb混入量と関係を図示した結果である。融液中のPbOに対するZnOの添加によって、BIG中に混入するPbが低減することを、本発明者らは明らかにした。図2は、BIG中のZn含有量とPb含有量の関係を表した図である。2価のZnが、2価の希土類イオンや鉄イオンで構成されるBIGに取り込まれることによって、2価であるPbの混入が抑制されるものと、本発明者らは考えている。
図1は、融液中のZnO/PbOの濃度比と、BIG中へのPb混入量と関係を図示した結果である。融液中のPbOに対するZnOの添加によって、BIG中に混入するPbが低減することを、本発明者らは明らかにした。図2は、BIG中のZn含有量とPb含有量の関係を表した図である。2価のZnが、2価の希土類イオンや鉄イオンで構成されるBIGに取り込まれることによって、2価であるPbの混入が抑制されるものと、本発明者らは考えている。
図1の結果から、鉛をフラックス成分とするLPE法において、融液のZnO/PbO濃度比を0.15以上にすることで、BIGに含まれる鉛の量は0.1重量%に抑制されるとの結果を得て、本発明を完成させたである。
上記である本発明において、ビスマス置換希土類鉄ガーネット単結晶(BIG)は
R3−xBixFe5−yAyO12 (2)
〔式(2)において、RはY、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbおよびLuからなる群から選ばれる一種または二種以上の元素であり、Aは、Ga、Sc、AlおよびInからなる群から選ばれる一種または二種以上の元素である。また、0.5≦x≦2.0、y≦1.6である。〕
の式で表されるBIG膜から、通常、選択する。
ここで、xが0.5未満ではファラデー効果が小さくなり好ましくない。ファラデー効果との観点からは、より大きいことが好ましいが、2.0を越えると結晶欠陥が増加してくるので好ましくない。yが0.7未満では飽和磁界が大きくなり、室温近傍での角形ヒステリシスの安定性が小さくなりやすいので好ましくない。逆に、1.6を超えるとファラデー効果が小さくなるので好ましくない。
R3−xBixFe5−yAyO12 (2)
〔式(2)において、RはY、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbおよびLuからなる群から選ばれる一種または二種以上の元素であり、Aは、Ga、Sc、AlおよびInからなる群から選ばれる一種または二種以上の元素である。また、0.5≦x≦2.0、y≦1.6である。〕
の式で表されるBIG膜から、通常、選択する。
ここで、xが0.5未満ではファラデー効果が小さくなり好ましくない。ファラデー効果との観点からは、より大きいことが好ましいが、2.0を越えると結晶欠陥が増加してくるので好ましくない。yが0.7未満では飽和磁界が大きくなり、室温近傍での角形ヒステリシスの安定性が小さくなりやすいので好ましくない。逆に、1.6を超えるとファラデー効果が小さくなるので好ましくない。
また、Rは、光学特性と磁気特性を考慮し、かつ、育成基板との格子定数の適合性などを考慮して選択するものであるが、具体的には、Y、Eu、Gd、Tb、Ho、Ybの組み合わせが挙げられる。
また、Aは、2つの鉄サイトに置換される置換量が安定となるように選択することが好ましく、具体的には、Ga、Alの組み合わせが挙げられる。
本発明に用いる上記BIG膜の製造に用いる育成基板(基板)としては、公知のものが使用できる。一般には、既に、SGGG基板と称して市販されている格子定数が1.2490nmから1.2515nmの非磁性ガーネット〔(GdCa)3(GaMgZr)5O12〕基板から適宜選択する。
また、Aは、2つの鉄サイトに置換される置換量が安定となるように選択することが好ましく、具体的には、Ga、Alの組み合わせが挙げられる。
本発明に用いる上記BIG膜の製造に用いる育成基板(基板)としては、公知のものが使用できる。一般には、既に、SGGG基板と称して市販されている格子定数が1.2490nmから1.2515nmの非磁性ガーネット〔(GdCa)3(GaMgZr)5O12〕基板から適宜選択する。
以下、本発明を実施例によって、具体的に説明する。
実施例1
白金製ルツボに、酸化鉛[PbO、4N]3518g、酸化ビスマス[Bi2O3、4N]3673g、酸化第2鉄[Fe2O3、4N]582g、酸化ほう素[B2O3、5N]156g、酸化テルビウム[Tb4O7、3N]52g、酸化ホルミウム[Ho3O4、3N]3g、酸化ガリウム[Ga2O3、3N]13gを仕込み融液とした。この融液に対して、酸化亜鉛[ZnO、3N]を0から200g添加量を変化させていった。この融液を精密縦型管状電気炉の所定の位置に設置し、1000℃に加熱溶融して十分に攪拌して均一に混合してBIG育成用融液とした。融液中のPbモル濃度は48〜52%、ZnOモル濃度は0〜8%である。
実施例1
白金製ルツボに、酸化鉛[PbO、4N]3518g、酸化ビスマス[Bi2O3、4N]3673g、酸化第2鉄[Fe2O3、4N]582g、酸化ほう素[B2O3、5N]156g、酸化テルビウム[Tb4O7、3N]52g、酸化ホルミウム[Ho3O4、3N]3g、酸化ガリウム[Ga2O3、3N]13gを仕込み融液とした。この融液に対して、酸化亜鉛[ZnO、3N]を0から200g添加量を変化させていった。この融液を精密縦型管状電気炉の所定の位置に設置し、1000℃に加熱溶融して十分に攪拌して均一に混合してBIG育成用融液とした。融液中のPbモル濃度は48〜52%、ZnOモル濃度は0〜8%である。
ここに得られた融液の温度を飽和温度以下の温度まで低下させて後、融液表面に、常法に従って、厚さが760μmで、格子定数が1.2497±0.0002nmの3インチ(111)ガーネット単結晶[(GdCa)3(GaMgZr)5O12]基板の片面を接触させ、基板を回転させながらエピタキシャル成長を行った。
このBIGに混入されるPbとZnの濃度を蛍光X線分析装置にて分析した結果が図1と図2である。
このBIGに混入されるPbとZnの濃度を蛍光X線分析装置にて分析した結果が図1と図2である。
さらに、ZnO/PbOモル濃度比0で長時間育成して、厚さ320μmで、Tb1.9Ho0.2Bi0.9Fe4.8Ga0.2O12組成のBIG厚膜を作製した。このBIGに混入されるPbの濃度を蛍光X線分析装置にて分析した結果、0.31重量%であった。ファラデー回転角は、1550nm波長にて910deg/cmであった。
ZnO/PbOモル濃度比0.05で長時間育成して、厚さ260μmで、Tb1.9Ho0.2Bi0.9Fe4.8Ga0.2O12組成のBIG厚膜を作製した。このBIGに混入されるPbの濃度を蛍光X線分析装置にて分析した結果、0.18重量%であった。ファラデー回転角は、1550nm波長にて900deg/cmであった。
ZnO/PbOモル濃度比0.166で長時間育成して、厚さ280μmで、Tb1.9Ho0.2Bi0.9Fe4.8Ga0.2O12組成のBIG厚膜を作製した。このBIGに混入されるPbの濃度を蛍光X線分析装置にて分析した結果、0.09重量%であった。ファラデー回転角は、1550nm波長にて920deg/cmであった。
Znの添加にて、BIGの育成技術として既に確立されている鉛フラックスを使ったLPE法技術を使って、中枢神経系機能障害やガンを引き起こす物質である鉛の製品への混入を防ぐことができ、その産業上の意義は極めて高い。
Claims (1)
- 希土類酸化物と酸化鉛を含んだフラックス成分からなる融液を用い、非磁性ガーネット単結晶基板にビスマス置換希土類鉄ガーネット単結晶を育成する液相エピタキシャル法において、融液中の酸化鉛モル濃度が5%以上であり、かつ融液中のZnのPbに対するモル濃度の比Zn/Pbが0.15以上であることを特徴とするビスマス置換希土類鉄ガーネット単結晶の製造方法。
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---|---|---|---|
JP2006189957A JP2008021691A (ja) | 2006-07-11 | 2006-07-11 | ビスマス置換希土類鉄ガーネット単結晶の製造方法 |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2010256588A (ja) * | 2009-04-24 | 2010-11-11 | Granopt Ltd | ファラデー回転子 |
-
2006
- 2006-07-11 JP JP2006189957A patent/JP2008021691A/ja active Pending
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