図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る拡径掘削用バケット22を説明する。
図1には、場所打ちコンクリート杭を構築するための杭孔20の中間に中間拡径部を形成する掘削機10の全体構成が示されている。
ケリーバ12が、掘削機本体としてのクレーン16のワイヤー88に接続されて懸架されている。また、ケリーバ12の途中には旋回装置14が設けられており、ケリーバ12の上下方向の移動を拘束せずに、ケリーバ12を回転させる。
クレーン16の前方から張出した位置決めアーム18は、旋回装置14の水平位置を調整し、縦穴としての杭孔20の中心位置にケリーバ12を配置する。
図9(C)に示すように、回転軸としての固定ポスト24の上端部には、軸部材60が接続されている。そして、この軸部材60上に設けられた連結ブラケット26にケリーバ12がピン連結されている。
なお、図1の杭孔20は、事前にケリーバ用のドリリングバケットによって地盤28を掘削して形成したものであり、杭孔20内には孔壁の倒壊を防止するベントナイト等の安定液Lが満たされている。
拡径掘削用バケット22は、図2に示すように、上部スタビライザ部36、拡縮バケット部38、下部スタビライザ部40によって構成され、上からこの順に配置されている。
上部スタビライザ部36は、図3の平面図に示すように、軸部材60を囲む円弧状のガイド部材42を対角状に4つ配置したものである。
各ガイド部材42の内側には、角筒状のスライド部材44の後端部が固定され、スライド部材44の先端部は軸部材60に向っている。スライド部材44は、軸部材60の各コーナー部から外側に張出した角筒状の支持部材46の内側に、スライド可能に嵌合されている。これにより、図3の状態よりも外側(矢印Nの方向)にガイド部材42を拡げることができる。
支持部材46にはボルト48を通す2つの貫通孔50が開けられており、スライド部材44にはボルト48を通す7つの貫通孔52が等間隔に開けられている。
杭孔20の孔壁面とガイド部材42の間にわずかな隙間を残す程度に、スライド部材44をスライドさせてガイド部材42の位置を調整し、貫通孔50と貫通孔52が一致する位置で、2本のボルト48によって固定する。
このとき、各スライド部材44のスライド量を等しくすることによって、軸部材60に接続された固定ポスト24の中心を杭孔20の中心位置にガイドすることができる。
図2に示すように、拡縮バケット部38には、固定ポスト24を囲む拡翼部としての側壁板30が4つ設けられている。4つの側壁板30はすべて同形状であり、側壁板30の平断面は円弧状になっている。また、側壁板30の下部30Bは略鉛直面を形成しており、側壁板30の上部30Aは内側に傾斜している。
各側壁板30の回転方向(矢印Mの方向)先頭側の端部には、掘削ビット32が上下方向に等間隔で配設されている。掘削ビット32は、図2のA−A断面図の図4に示すように、杭孔20の孔壁面に向って尖った形状をしている。よって、旋回装置14によりケリーバ12を介して固定ポスト24を矢印Mの方向に回転させ、側壁板30が杭孔20の孔壁面側に移動することにより、杭孔20の穴壁としての孔壁が掘削されて中間拡径部が形成される。
図2の各側壁板30の下端部には、先端部が下方内側に向うように、アーム部としてのアーム部材34が着脱可能に取付けられている。対向するアーム部材34の長さは同じであり、隣り合うアーム部材34同士の長さは異なっている。すなわち、対向する1組のアーム部材34の長さは長く、対向するもう1組のアーム部材34の長さは短くなっている。これにより、拡径掘削用バケット22のバケット径が最小のときに、長い方のアーム部材34は交差し、短い方のアーム部材34は、この交差した長い方のアーム部材34にぶつからないようになっている。図5に示すように、側壁板30の下部30Bは、鉛直線62と略平行な鉛直面を形成しており、側壁板30の上部30Aは、鉛直線62に対して角度Eだけ内側に傾斜している。この角度Eが、中間拡径部56を掘削した際の中間拡径部上部の傾斜面56Aの傾斜角度になる。
また、アーム部材34は、鉛直線62に対して角度Fだけ内側に傾斜するように、側壁板30の内側に設けられたブラケット74の下端部に固定されている。この角度Fが、中間拡径部56を掘削した際の中間拡径部下部の傾斜面56Cの傾斜角度になる。
図5のアーム部材34を外側から見た正面図の図6(A)に示すように、アーム部材34にも、側壁板30の掘削ビット32と同様の掘削ビット58が上下方向に等間隔で配設されている。
掘削ビット32は、図6(A)のB−B断面図の図6(B)に示すように、中間拡径部下部の傾斜面56C側に尖った形状をしている。よって、旋回装置14によりケリーバ12を介して固定ポスト24を矢印Mの方向に回転させ、側壁板30と共にアーム部材34が外側に移動することにより杭孔20の孔壁が削られ、中間拡径部下部の傾斜面56Cが形成される。
アーム部材34は、図7に示す構造によって着脱することができる。アーム部材34の上端部に設けられたブラケット160には、ボルト163の貫通孔161A、161Bが形成されている。
側壁板30の内側に設けられたブラケット74にも、ボルト163の貫通孔162A、162Bが形成されており、アーム部材34を側壁板30の下端部に装着してブラケット160をブラケット74に添わせたときに、貫通孔162A、162Bは貫通孔161A、161Bと一致する。
そして、図7の右図に示すように、貫通孔161A、161Bと貫通孔162A、162Bの位置を合わせてボルト163を通し、ナットで締め付けてアーム部材34を固定する。
なお、このアーム部材34の取付け構造は、アーム部材34の着脱が容易にでき、かつ杭孔の孔壁をアーム部材34が掘削できる程度にしっかりと固定できるものであればよく、図8のような構造にしてもよい。
図8では、アーム部材34の上端部に設けられたブラケット164に、ボルト168の貫通孔165A、165Bが上向きに形成されている。
ブラケット74の下端部に設けられたブラケット166にも、ボルト168の貫通孔167A、167Bが下向きに形成されており、アーム部材34を側壁板30の下端部に装着したときに、貫通孔167A、167Bは貫通孔165A、165Bと一致する。
そして、図8の右図に示すように、貫通孔165A、165Bと貫通孔167A、167Bの位置を合わせてボルト168を通し、ナット169で締め付けてアーム部材34を固定する。
側壁板30及びアーム部材34は、図9に示すリンク機構66によって拡縮される。
図9(C)に示すように、ケリーバ12の下端部が、軸部材60上の連結ブラケット26にピン連結されている。そして、この軸部材60は、拡径掘削用バケット22の回転軸としての角筒状の固定ポスト24の上端部に接続されている。
固定ポスト24の外側には、角筒状の昇降ポスト64が設けられている。昇降ポスト64の長さは固定ポスト24の長さよりも短く、固定ポスト24の長さ方向に沿って昇降ポスト64がスライドするように、昇降ポスト64の内側に固定ポスト24が嵌合されている。
昇降ポスト64の左右には、ブラケット68が固定されており、ブラケット68の上部には、ブラケット72がさらに外側に食み出るように設けられている。そして、油圧シリンダ70の中央部は、このブラケット72に回転可能に連結されている。
リンク部材76の両端は、ブラケット68の外側中央部と、側壁板30の内側に設けられたブラケット74の上部にそれぞれ回転可能に連結されており、このリンク部材76と平行になるように設けられたリンク部材78の両端は、ブラケット68の下部と、ブラケット74の下部に回転可能に連結されている。
リンク部材80の両端は、リンク部材76、78の略中央部にそれぞれ回転可能に連結されており、リンク部材82の両端は、リンク部材80の下端部と、固定ポスト24の下端部に設けられたブラケット84にそれぞれ回転可能に連結されている。
略三角形状のブラケット90はリンク部材78と連動するように、その下辺がリンク部材78に固定されており、ブラケット90の頂部連結部92は、油圧シリンダ70のピストンロッド86の先端部と回転可能に連結されている。
ここで、図9(A)に示すような、拡径掘削用バケット22のバケット径が最小の状態において、油圧シリンダ70を作動させ、油圧シリンダ70のピストンロッド86を矢印Pの方向に縮めるとブラケット90の頂部連結部92は、リンク部材78のブラケット68との連結部78Aを回転中心として矢印Qの方向に回転する。
すると、このブラケット90の動きに連動して、リンク部材76、78が矢印Rの方向に旋回し、これに伴って昇降ポスト64は矢印Sの方向へ、側壁板30は矢印Tの方向へ移動し、図9(B)の状態になる。
さらに、油圧シリンダ70のピストンロッド86を矢印Pの方向に縮めると、最終的には図9(C)に示すような、拡径掘削用バケット22のバケット径が最大の状態になる。
このように、図9(A)、(B)、(C)の順に動作することによって拡径掘削用バケット22は拡径し、また、この逆の動作手順(図9(C)、(B)、(A))によって拡径掘削用バケット22は縮径する。
このようなリンク機構66によって、油圧シリンダ70がリンク機構66内にコンパクトに収めることができるので、大きな拡径率(孔杭の拡径部と軸部の断面積の比率)の中間拡径部を孔杭の中間に形成することができる。
従来の拡径掘削用バケットで掘削できるのは、3.2以下程度の拡径率の拡径部であったが、本実施形態の拡径掘削用バケット22においては、リンク機構66を用いることによって最大で約5.0程度の拡径率の拡径部の掘削を行うことができる。
また、油圧シリンダ70をリンク機構66に組込んだ構造としたことで、拡縮バケット部38の高さを低く抑えることができるので、拡径掘削用バケット22の機械高さを小さくすることができる。
また、側壁板30の支持アームとなるリンク部材78を油圧シリンダ70で直接動作させるので、伝達力のロスがなく、機械効率を向上させることができる。
なお、図9では2つの油圧シリンダ70のみが示されているが、4つの側壁板30のそれぞれに油圧シリンダ70及びリンク機構66が設けられている。すなわち、拡縮バケット部38には4つの油圧シリンダ70が搭載されている。
図2に示すように、スタビライザ部としての下部スタビライザ部40は、吊り支柱94と、受け皿としての土砂回収用バケット96とによって構成されている。土砂回収用バケット96は、底板100を有する円筒状の容器である。
図10に示すように、スタビライザ部としての下部スタビライザ部40は、回転軸としての固定ポスト24の下端部に着脱可能に設けられている。4つの吊り支柱94の上端部が、固定ポスト24の下端部に着脱可能に取付けられた接合部材98の下面に接合され、下方外側に向かって四方に広がっている。吊り支柱94の下端部は、土砂回収用バケット96の側壁上部に接合されている。
図11に示すように、下部スタビライザ部40の接合部材98上部は、円筒状の嵌入部170となっている。また、嵌入部170にはボルト174の貫通孔171が形成されている。
回転軸としての固定ポスト24下部には、嵌入部170の嵌入孔172が設けられている。嵌入孔172の上方は、嵌入した嵌入部170の頂部が当って止まるように、角筒状の固定ポスト24の中空部分が埋められている。また、固定ポスト24下部には、嵌入部170が嵌入孔172に完全に嵌入されたときの貫通孔171と一致するように、貫通孔173が形成されている。
そして、図11の右図に示すように、貫通孔171と貫通孔173の位置を合わせてボルト174を通し、ナット175で締め付けて嵌入部170を固定ポスト24に連結する。
なお、この下部スタビライザ部40の取付け構造は、着脱が容易にでき、かつ固定ポスト24下部にしっかりと下部スタビライザ部40を固定できるものであればよく、ピンによって固定ポスト24と嵌入部170を連結してもよい。
また、土砂回収用バケット96は、図9に示すように、土砂回収用バケット96の開放された上面が常にアーム部材34の先端部よりも低い位置になるように取付けられている。
土砂回収用バケット96の外径は、土砂回収用バケット96の側壁面と杭孔20の孔壁の間に若干の隙間が形成される程度に、杭孔20の径よりも小さくなっている。
図10に示すように、土砂回収用バケット96の蓋となる円盤状の底板100は、土砂回収用バケット96の側壁下部の内側に設けられたヒンジ102によって矢印Vの方向に開閉可能に連結されている。この開閉によって、土砂回収用バケット96に積載された掘削土砂を地上にて排出する。
土砂回収用バケット96のヒンジ102と対向する側壁付近には、底板100のロック機構104が設けられている。土砂回収用バケット96の側壁下部及び上部に設けられ、内側に張出した上部サポート106及び下部サポート108に、丸棒110が回転可能に支持されて、蓋をした状態の底板100の水平面に対して略垂直に立設している。
丸棒110の上端部にはハンドル112が設けられており、下端部にはロック部材114が設けられている。ロック部材114の下部は、図12に示すような、傾斜面114A、114Bを有する形状をしている。
土砂回収用バケット96を上から見た図13に示すように、ハンドル112の略中央部と、上部サポート106から張出したブラケット120との間にはスプリング118が設けられており、矢印Wと逆の方向にハンドル112を付勢している。このとき、上部サポート106の上面に固定されたストッパー部材122にハンドル112が当たるので、ハンドル112はこの位置よりもさらにブラケット120側に回ることはない。さらに、上部サポート106の上面には、ハンドル112が矢印Wの方向に回って符号112Aの位置に達したときに当たるストッパー部材126が固定されている。
底板100には、ロック部材114の平面外形(幅d1)よりも若干大きい開口部124(幅d2)が形成されている。この開口部124は、ハンドル112を矢印Wの方向に回しストッパー部材126に当たったときにロック部材114と嵌合する位置に形成されている。
図13(A)では、ロック部材114の角部と、これに対向するロック部材114のもう一方の角部との間の長さd3が開口部124の幅d2よりも大きくなっているので、ロック部材114が開口部124の縁に引掛かりロックされる。これによって、底板100が閉まった状態を維持する。
スプリング118に抗してハンドル112を矢印Wの方向に回すと、図13(B)に示すように、ロック部材114が開口部124と嵌合する位置(d2>d1)に配置されてロックが解除される。
そして、土砂の重量によってヒンジ102を回転中心にして矢印Yの方向に底板100が回転して開放される。
開放した底板100を閉じるには、底板100を外力によって押し上げるか、又は拡径掘削用バケット22を地上に下ろせば、装置の自重によって底板100が閉じられる。
底板100を下から見た平面図の図14に示すように、底板100が押し上げられると開口部124の縁部128の裏側がロック部材114の傾斜面114A、114B、と接し(図14(A))、さらに底板100を押し上げることによってロック部材114が、丸棒110の中心を軸としてスプリング118に抗して回転し(図14(B))、ついにロック部材114が開口部124と嵌合する位置になったときに(図14(C))開口部124がロック部材114を通過して底板100が閉じられる。
開口部124を通過したロック部材114は、スプリング118の付勢力により図14(A)と同じ位置に戻り底板100が自動的にロックされる(図14(D))。
図15には、図1の杭孔20に中間拡径部56を形成した杭孔154において、この底部に拡底部を形成する掘削機130の全体構成が示されている。
杭孔の底部に配置された拡底掘削用バケット132以外の構成は、図1とほぼ同様であるので、同符号を付すると共に、適宜省略して説明する。
ケリーバ12の下端部は、拡底掘削用バケット132の固定ポスト24の上端部に接続された軸部材60上の連結ブラケット26にピン連結されている。
杭孔154は、拡径掘削されていない軸部54と拡径掘削用バケット22によって掘削された中間拡径部56とによって構成されている。また、この中間拡径部56は、上部傾斜面56A、鉛直面56B、下部傾斜面56Cからなり、杭孔154の中間2箇所に形成されている。
拡底掘削用バケット132は、図16に示すように、上部スタビライザ部36、拡縮バケット部136、底蓋部138によって構成され、上からこの順に配置されている。
拡縮バケット部136は、図2の拡縮バケット部38のアーム部材34と下部スタビライザ部40を外して、着脱可能な底蓋部138を取付けたものである。
図17に示すような、図9と同様の動作手順で、側壁板30の拡縮が行われる。
図18(A)に示すように、固定ポスト24の下端部に支持部材140が着脱可能に固定されている。そして、支持部材140の端部に設けられたヒンジ142に底蓋144が回転可能に連結されている。図19に示すように、支持部材140の上面に嵌入部170が設けられており、下部スタビライザ40と同様の構造によって、回転軸としての固定ポスト24に底蓋部138が着脱可能に取付けられている。
図18(A)に示すように、底蓋144は下方向に尖った円錐形状になっており、ヒンジ142によって矢印Kの方向に開閉可能になっている。これによって、拡縮バケット部136に積載された掘削土砂を地上にて排出する。
底蓋144のロック機構104は、土砂回収用バケット96に設けられたものと同じなので説明を省略する。
ヒンジ142は底蓋144の直径方向において、約1/4ほど内側の位置に設けられているので、底蓋144を開放したときに、拡縮バケット部136の下端から地上面までの距離を小さくすることができる。よって、土砂排出時の拡底掘削用バケット132の機械高を小さくすることができるので、掘削土砂の排出を容易にするために底蓋を大きくした場合でも拡底掘削用バケット132の機械高は大きくならない。
底蓋144を下から見た平面図である図18(B)に示すように、底蓋144には底蓋144の中心に対して対称な位置に2つの略扇状の開口部146が形成されている。開口部146の回転方向端部の一方には長尺な掘削ビット148が取付けられており、さらに、底蓋144には、開口部146を底蓋144の上面側から覆う開閉板150が設けられている。
開閉板150は、図20に示すように、開口部146の縁部付近に、掘削ビット148に対向するように設けられたヒンジ152によって矢印Gの方向に開閉する。
掘削ビット148は下方に尖った形状をしている。よって、旋回装置14によりケリーバ12を介して固定ポスト24を矢印Mの方向に回転させ、側壁板30と共に底蓋144を回転させると、孔底に溜まっている掘削土砂、及び掘削ビット148によって掘削された土砂は、矢印Jの方向に流れ、これによって底蓋144上に掘削土砂が集められる。
土砂排出のために拡底掘削用バケット132をクレーン16で地上へ持ち上げる際には、開閉板150上に載った土砂の自重で開閉板150は閉まった状態になるので、開口部146から土砂がこぼれ落ちることはない。
次に、本発明の実施形態に係る拡径掘削用バケット22の作用及び効果について説明する。
図21、22の施工手順図に示すように、本実施形態では、まず中間拡径部の掘削を行い、最後に拡底部の掘削を行う。なお、アーム部材34及び下部スタビライザ部40は側壁板30の下端部に着脱できるので、アーム部材34及び下部スタビライザ部40を外して、別の傾斜角を有するアーム部材や拡底掘削用の底蓋部138に容易に付替えることができる。
まず、図21(A)においては、事前にケリーバ用のドリリングバケットによって地盤28を掘削して孔杭20を形成する。そして、孔壁の倒壊を防止するベントナイト等の安定液Lで満たされた孔杭20内の中間拡径部を形成する位置に拡径掘削用バケット22を配置する。
ここで、拡径掘削用バケット22上部に設けられた上部スタビライザ部36は、杭孔20の孔壁とガイド部材42の間にわずかな隙間を残す程度に、スライド部材44をスライドさせてガイド部材42の位置を調整し、貫通孔50と貫通孔52が一致する位置で、2本のボルト48によって固定されている。また、全てのスライド部材44のスライド量は等しくなっている。
これにより、ガイド部材42が、杭孔20の孔壁に接触して、軸部材60に接続された固定ポスト24の中心を杭孔20の中心位置にガイドする。よって、上部スタビライザ部36により、回転軸となる固定ポスト24の中心が常に杭孔20の中心位置にあるので、下から上へ中間拡径部を掘削したときの真円度を高めることができる。
また、アーム部材34の下方にも下部スタビライザ部40が設けられている。この下部スタビライザ部40の土砂回収用バケット96の側壁面が、杭孔20の孔壁に接触して固定ポスト24の中心を杭孔20の中心位置にガイドする。よって、下部スタビライザ部40により、固定ポスト24の中心が常に杭孔20の中心位置にあるので、上から下へ中間拡径部を掘削したときの真円度を高めることができる。
次に、図21(B)においては、図9の動作手順に従い、旋回装置14によりケリーバ12を介して固定ポスト24を矢印Mの方向に回転させながら側壁板30を外側に拡げていく。
このとき、側壁板30の掘削ビット32、及びアーム部材34の掘削ビット58が杭孔20の孔壁を掘削し、中間拡径部56が形成される。
中間拡径部56の掘削方法には、図23に示すような、上から下へ掘削する方法と、図24に示すような、下から上へ掘削する方法がある。どちらの方法を用いるかは、中間拡径部の形状、土質、拡縮回数等を考慮して適宜決めればよい。
図23(A)に示すように、まず、拡径掘削用バケット22の径を最小にした状態で、クレーン16により拡径掘削用バケット22を所定の位置まで下ろして配置する。
次に、図23(B)に示すように、固定ポスト24、側壁板30、及びアーム部材34を回転させながら、予定した中間拡径部上部の傾斜面56Aの位置まで側壁板30を拡げていく。この掘削が終わった後に、拡径掘削用バケット22の径を最小にした図23(A)の状態に戻し、次の掘削位置まで拡径掘削用バケット22を下ろす。
そして、この位置で、図23(B)のときと同じような掘削を行い、この手順を繰返して図23(C)〜(E)に示すように拡径掘削用バケット22を徐々に下方へ移動させて行く。そして、この縦分割の掘削によって中間拡径部56が形成される。
よって、中間拡径部上部の傾斜面56Aは側壁板上部30Aの掘削ビット32によって掘削され、中間拡径部56の最も大きな径の部分の鉛直面56Bは側壁板下部30Bの鉛直な壁面に設けられた掘削ビット32によって削られ、中間拡径部56下部の傾斜面56Cはアーム部材34に設けられた掘削ビット58によって掘削される。
図24においては、図23とほぼ同様の手順で、側壁板30及びアーム部材34を回転させながら外側へ拡げて、下から上へ中間拡径部56を掘削していく。
なお、本実施形態では、掘削予定の位置まで一度に側壁板30及びアーム部材34を拡げたが、中間拡径部56の全長に渡って拡径掘削用バケット22を上下に複数回往復させて、少しずつ拡径するような横分割の掘削を併用してもよい。
側壁板30に設けられた掘削ビット32、及びアーム部材34に設けられた掘削ビット58によって掘削された土砂は、図9(C)の矢印Uのように土砂回収用バケット96に流れ込む。このとき、土砂回収用バケット96の側壁面と杭孔20の孔壁の間の隙間が小さい方が、この隙間からこぼれ落ちる土砂も少なくなるので、土砂回収用バケット96の外径は杭孔20の径に出来るだけ近い長さであることが好ましい。
流れ込んだ掘削土砂で土砂回収用バケット96が一杯になったら、図21(C)に示すようにクレーン16により拡径掘削用バケット22を地上に引上げて、図13に示した手順で底板100を開放し、掘削土砂を排出する。そして、図21(A)〜(C)の作業を適宜繰返し、必要な箇所に中間拡径部56を形成する。
すべての中間拡径部56の掘削が終了したならば、図21(D)に示すように、拡径掘削用バケット22のアーム部材34及び下部スタビライザ部40を外し、底蓋部138を取付けて拡底掘削用バケット132とし、拡底掘削用バケット132の径を最小にした状態でクレーン16によって杭孔の底部まで下ろす。
次に、図22(E)に示すように、固定ポスト24、側壁板30、及び底蓋144を回転させながら、図17に示す動作手順で拡底掘削を行う。このとき、側壁板30に設けられた掘削ビット32によって掘削された土砂は図17(C)の矢印Zのように、また、杭孔154の底部に溜まっている掘削土砂は図18、20の矢印Jの方向に流れて底蓋144上に溜まる。
回収した土砂が、拡底掘削用バケット132の最大積載量に達したときに、側壁板30を内側に移動させて拡底掘削用バケット132の径を最小の状態にし、図22(F)に示すように、クレーン16にて拡底掘削用バケット132を地上に引上げて、底蓋144を開放し、掘削土砂を排出する。
ここで、拡底掘削用バケット132の油圧シリンダ70は伸びる動作のときの方が大きなパワーを出力することができる。また、杭孔154の孔壁を掘削する際の側壁板30の拡径動作よりも掘削土砂を中央に集める縮径動作の際に大きなパワーを必要とする。よって、リンク機構66は、油圧シリンダ70のピストンロッド86が伸びたときに側壁板30が縮径する機構なので、油圧シリンダ70を有効に作用させることができる。
土砂を地上に排出した後には、拡底掘削用バケット132を再び杭孔154の底部に下ろし、拡底掘削を行う。そして、図22(E)、(F)の作業を繰返して拡底部158を形成し、図22(G)に示すような、多段に拡径された杭孔156を構築する。
これまで述べたように、本実施形態では、アーム部材34が側壁板30の下端部に着脱可能に設けられているので、掘削予定の中間拡径部下部の傾斜面に合ったアーム部材を装着することによって、中間拡径部下部のさまざまな傾斜面の掘削に対応することができる。
また、傾斜面を有する中間拡径部を形成することができるので、掘削後の中間拡径部下部の法尻の崩落を防止し、孔壁安定液中のスライム等が中間拡径部下部に堆積しないようにすることができる。
また、中間拡径部下部の傾斜面に合わせた形状の側壁板を有する拡径掘削用バケットを別途製作した場合には、1つの工事に拡底掘削用と中間拡径掘削用の2つのバケットを用意しなければならないのでコスト高になってしまうが、本実施形態の拡径掘削用バケット22は、アーム部材34及び下部スタビライザ部40が着脱可能なので、アーム部材34及び下部スタビライザ部40を外して、固定ポスト24の下端部に拡底掘削用の着脱可能な底蓋部138を取付けることによって、1つの拡径掘削用バケットで中間拡径及び拡底の両方の掘削を行うことができる。
また、上部スタビライザ部36及び下部スタビライザ部40により、回転する固定ポスト24の中心が常に杭孔の中心位置にあるので、中間拡径部の真円度を高めることができる。
また、通常の拡径掘削用バケットでは、拡翼部上方に位置する回転軸にスタビライザ部が設けられているだけなので、拡径掘削用バケットを上から下に移動させながら中間拡径部の掘削を行う場合には、スタビライザ部の径よりも掘削した杭孔の径の方が大きくなるので、拡翼部上方のスタビライザ部が杭孔の孔壁に接触しなくなる。よって、拡翼部上方に位置するスタビライザ部が、回転軸の中心を杭孔の中心位置にガイドする役目を果たさなくなってしまう。
しかし、本実施形態の拡径掘削用バケット22は、下部スタビライザ部40の土砂回収用バケット96をアーム部材34の下方に設けているので、拡径掘削用バケット22を上から下に移動させながら中間拡径の掘削を行う場合(図23)においても常にアーム部材34下方の下部スタビライザ部40がガイドの役目を果たし、これによって、中間拡径部の真円度を高めることができる。
また、下部スタビライザ部40の土砂回収用バケット96が、側壁板30及びアーム部材34により掘削された土砂を直接受けることができるので、杭孔の底部に落ちて溜まった掘削土砂の回収のために、杭孔の底部まで回収用バケットを繰返し下ろす作業を頻繁に行わなくてよい。
このように、本実施形態の拡径掘削用バケット22を用いることによって、杭孔の中間に中間拡径部を形成することができるので、この杭孔に杭を構築したときに中間拡径部が地中でネジ山のような働きをして周囲の地盤から大きな鉛直支持力と引抜抵抗力を得ることができる。
よって、拡径を小さくしても十分な鉛直支持力と引抜抵抗力が得られるので、建設副産物となる掘削土や杭施工時に使用する孔壁安定液を削減でき、環境負荷低減を図ることができる。
さらに、杭の材料であるコンクリートや鉄筋を削減することができるので、コスト低減や工期短縮を図ることができる。高強度コンクリートは、杭自体の強度を上げることができるので、高拡径率の中間拡径部や拡底部を有する杭の材料として適している。
なお、本実施形態において、中間拡径部56の掘削を行った後に拡底部158の掘削を行った例を示したが、これに限らずに、拡底部158の掘削を行った後に中間拡径部56の掘削を行ってもよい。中間拡径部の掘削を行った後に拡底部の掘削を行う場合、杭孔の底部に溜まった掘削土砂を最後にまとめて回収することができる。
また、事前にケリーバ用のドリリングバケットによって地盤28を掘削して孔杭20のすべてを形成した後に中間拡径部56及び拡底部158を掘削する例を示したが、孔杭を段階的に掘り進めながら、中間拡径部を掘削するようにしてもよい。すべての孔杭を形成した後に中間拡径部及び拡底部を掘削する方が、掘削が完了した中間拡径部を掘削用バケットが通過する回数を減らすことができるので、掘削が完了した中間拡径部の法尻等の崩落を防ぐことができる。
また、杭孔20は、拡底掘削用バケット132によって掘削してもよい。
また、4つの側壁板30を設けた例を示したが、側壁板30は分割できるように2つ以上で構成されていればよい。側壁板30が2つの場合、拡縮する力が2方向に偏ってしまって十分な真円度の確保が難しく、また、側壁板30を多くすると構造が複雑になり多くの油圧シリンダを必要とするので、側壁板30は4つとするのが好ましい。
また、掘削ビット32、58、148は、地盤を掘削できるものであればよく、大きさや配置等については、必要に応じて適宜決めればよい。
また、底板100の開閉を行うヒンジ102は、土砂回収用バケット96の側壁下部の内側に設けられているが、構造的に可能であれば、底蓋144のようにヒンジをさらに内側に入った位置に設けてもよい。これにより、底板100を開放したときに、土砂回収用バケット96の下端から地上面までの距離を小さくすることができるので、掘削土砂を排出し易くするために大きな底板100を用いた場合においても、土砂排出時の拡径掘削用バケット22の機械高は大きくならない。
また、拡縮バケット部38は、下部スタビライザ部、アーム部、及び底蓋部が着脱可能に取付けられ、拡翼部が拡縮するものであればよく、リンク機構66を用いたものでなくてもよい。
拡径掘削用バケット22は下方に下部スタビライザ部40が設けられ、機械高が高くなるので、本実施形態のような、高さを低く抑えた拡縮バケット部38、136や、開放時の拡縮バケット部136下端から地上面までの距離を小さくした底蓋144を用いることが好ましい。
また、拡径掘削用バケット22は、掘削予定の中間拡径部下部の傾斜面に合ったアーム部材34を装着することによって、中間拡径部下部のさまざまな傾斜面の掘削に対応することができるものであるが、中間拡径部下部の傾斜面の傾斜角は45度程度であることが施工及び構造的に好ましい。
また、杭孔20の中間の2箇所に中間拡径部56を形成した例を示したが、中間拡径部の配置や数は、杭に求められる鉛直支持性能等に応じて適宜決めればよい。
また、油圧シリンダ70は、ピストンロッド86に相当する部材を伸縮する装置であればよい。
また、吊り支柱94は、土砂回収用バケット96を固定ポスト24の下端部に、ガイドとしての機能を有する強度を確保するように取付けられ、側方から掘削土砂が入り込めるものであればよく、例えば、土砂回収用バケット96の中心から鉛直に立設した円筒状のパイプ等でもよい。
また、上部スタビライザ部36は、拡径掘削用バケット22及び拡底掘削用バケット132の回転軸を杭孔の中心位置にガイドできるものであれば、どのような形状でもよく、拡径部の十分な真円度が得られる掘削が可能であれば上部スタビライザ部36はなくてもよい。
また、下部スタビライザ部40にガイド機能を持たせなくてもよい場合には、土砂回収用バケット96の径を小さくしたり、平面視にて正方形や多角形等の他の形状にしてもよい。また、拡径掘削用バケット22の機械高に余裕がある場合には、土砂回収用バケット96を底の深い受け皿にしてもよい。
逆に、下部スタビライザ部40に土砂回収機能を持たせなくてもよい場合には、土砂回収用バケット96を受け皿とせずに、例えば、上部スタビライザ部36のようにしてもよい。