JP2008004423A - 固体酸化物形燃料電池及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】多孔質の電極層を備える固体酸化物形燃料電池において、発電特性を向上させることができる新たな多孔質電極構造を提供する。
【解決手段】固体酸化物形燃料電池2において、固体電解質層6と、空気極層10と、燃料極層16と、これらの多孔質電極層18のずれかにおいてチャンネル状パターンを有する1又は2以上のキャビティ20と、を備え、前記チャンネル状パターンを破線状パターンを有するようにする。このようなキャビティ20を備える多孔質構造を備えることにより発電特性が向上する。
【選択図】図1

Description

本発明は、固体酸化物形燃料電池及びその製造方法に関し、詳しくは、良好な発電特性を備える固体酸化物形燃料電池及びその製造方法に関する。
固体酸化物形燃料電池の燃料極では、Ni/YSZサーメットをはじめとする燃料極における酸化物イオン伝導パス、電子伝導パスのほか、燃料及び生成ガスをできる限りスムーズに燃料極内部に行き渡らせるためのミクロな細孔を含む多孔質構造とすることが不可欠であるとされている。例えば、反応ガスの流通を確保するために、特定構造のガスチャンネルを有する構造を有する電極を備える固体酸化物燃料電池が開示されている(特許文献1)。
特開2004−152762
しかしながら、こうした電極の多孔質構造について詳細な検討がされているわけではない。上記特許文献1に記載の技術によれば、電極にガスチャンネルを形成すると発電に寄与する電極面積が減少し、発電特性が低下するおそれがある。また、濃度分極は固体酸化物形燃料電池の高燃料利用率での電力密度を決めるために重要であるが、こうした状況下においては、最適な電極構造は不明である。
そこで、本発明では、多孔質の電極層を備える固体酸化物形燃料電池において、発電特性を向上させることができる新たな多孔質電極構造を提供することを、一つの目的とする。また、本発明は、濃度分極を抑制することができる多孔質電極構造を備える固体酸化物形燃料電池を提供することを他の一つの目的とする。
本発明者らは、上記した課題を解決するべく検討したところ、意外にも、多孔質電極構造に対してマクロなキャビティを形成することにより、発電特性が向上することを見出し本発明を完成した。すなわち、本発明によれば以下の手段が提供される。
本発明によれば、固体酸化物形燃料電池であって、固体電解質層と、多孔質電極層と、前記多孔質電極層においてチャンネル状パターンを有する1又は2以上のキャビティを備え、前記チャンネル状パターンは、その長さ方向に沿って前記チャンネル状パターンを分断する電極層からなる分断部と該分断部により区画された短線分キャビティとを有する破線状パターンを有する、固体酸化物形燃料電池が提供される。本発明の固体酸化物形燃料電池においては、前記キャビティの電極面積当たりの長さは、30mm/cm以上100mm/cm以下であることが好ましい。また、前記分断部の長さは、0.05mm以上0.8mm以下であることが好ましく、また、前記短線分キャビティの長さは、0.5mm以上1.5mm以下であることが好ましい。さらに、前記分断部の長さに対する前記短線分キャビティの長さは1.0以上7.0以下であることが好ましい。
本発明の固体酸化物形燃料電池においては、前記チャンネル状パターンは、同心状に閉じた又は開放した複数の環状構造を有することができる。また、前記チャンネル状パターンは、ガス流路の方向に沿って均一又は不均一に配置されることができる。
本発明の固体酸化物形燃料電池においては、前記キャビティは、前記多孔質電極層を貫通することができるし、前記キャビティの前記ガス流路側への開口幅の最大寸法が50μm以上500μm以下であることが好ましい。また、前記多孔質電極層において前記キャビティは少なくともガス流路側に開口され、該開口の開口面積の合計は、全電極面積の5%以上40%以下であることが好ましい。
本発明の固体酸化物形燃料電池においては、前記多孔質電極層の厚さは5μm以上1mm以下であることが好ましい。また、前記電極は燃料極であることが好ましい。
本発明によれば、固体酸化物形燃料電池の製造方法であって、チャンネル状パターン備える1又は2以上のキャビティであって、前記チャンネル状パターンはその長さ方向に沿って前記チャンネル状パターンを分断する電極層からなる分断部と該分断部により区画された短線分キャビティとを有する破線状パターンを有している多孔質電極層を形成する工程を備える、固体酸化物形燃料電池の製造方法が提供される。
本発明の固体酸化物形燃料電池(以下、単にSOFCという。)は、固体電解質層と、多孔質電極層と、前記多孔質電極層において、チャンネル状パターンを有する1又は2以上のキャビティと、を備えている。本発明の固体酸化物形燃料電池は、多孔質電極層においてその構成材料、すなわち、多孔質電極によって区画されたチャンネル状パターンのキャビティを備えることで、濃度分極を抑制するなど高い発電特性を得ることができる。また、当該キャビティを破線状とすることで発電特性にも優れたSOFCを得ることができる。すなわち、本発明のSOFCにおいては、こうしたキャビティを備える多孔質電極構造を採ることにより、発電に有効な実効面積は同一か逆に小さくなるにも拘わらず、発電特性が向上されることから、多孔質電極層の細孔に依拠する空隙構造が存在しないチャンネル状パターンを有するキャビティが有効に作用するものと推測される。以下、本発明のSOFC及びその製造方法について詳細に説明する。
(SOFC)
図1には、本発明のSOFCのセルの一例を示し、図2及び図3には、チャンネル状パターンの各種平面形態を示し、図4には、チャンネル状パターンにおけるキャビティの構成形態を示す。
本発明のSOFC2は、固体電解質層6と多孔質空気極層10と多孔質燃料極層16とを備えたセル4のスタック(積み重ね)として構成されている。なお、本発明のSOFC2は、図1に例示する平板型のほか、円筒型などの形態を全て含むものである。また、スタック形態に限定せずに単セル型のSOFCも含んでいる。
(固体電解質)
本SOFC2における固体電解質層6は、従来公知の形態を採ることができるとともに、その材料についても、同様に従来公知の各種の固体電解質材料を特に限定しないで用いることができる。固体電解質層6は、空気雰囲気および燃料ガス雰囲気において酸化物イオン伝導性が高く、ガス透過性が無く、電子伝導性が無い層を形成できる材料により構成されることが好ましい。例えば、固体電解質材料としては、イットリアあるいはスカンジアを固溶させたジルコニア、イットリアとスカンジアを固溶させたジルコニアが挙げられる。これらの各種ジルコニア固溶体におけるイットリアおよびスカンジアの固溶量としては特に限定しないが、例えば、3〜12mol%程度とすることができる。
なお、固体電解質材料には、酸化セリウム(CeO2)、酸化サマリウム(Sm2O3)、酸化ガドリニウム(Gd2O3)、酸化ビスマス(Bi2O3)などが5mol%以下で固溶化されていてもよい。また、緻密な電解質層6の形成のためには、酸化アルミニウム(Al2O3)、二酸化ケイ素(SiO2)など焼結助剤を微量添加させることもできる。
こうしたジルコニア固溶体は商業的に入手可能であるほか共沈法等各種のセラミックス粉末合成方法により製造することができる。
(空気極層)
本SOFC2の空気極層10は、固体電解質層6に対して積層され、固体電解質層6との間で電極界面を構成している。空気極層10は、従来公知の各種形態を採ることができるとともに、その材料についても同様に従来公知の各種の空気極材料を特に限定しないで用いることができる。例えば、LaAMnO3(A=Sr or Ca)で表されるランタンマンガナイト、LaSrCoO3で表されるランタンコバルタイト、LaSrFeO3で表されるランタンフェライト、LaFeCoO3で表されるランタン鉄コバルタイト、LaNiO3で表されるランタンニッケル酸化物、SmSrCoO3で表されるサマリウムコバルタイト、GdSrCoO3で表されるガドリウムコバルタイトなどが挙げられる。また、ランタンマンガナイトには、Ce、Sm、Gd、Pr、Nd、Co、Al、Fe、Cr、Ni、Ca、Sr等が固溶化されていてもよい。
こうした空気極材料は、商業的に入手可能であるとともに、粉末混合法、共沈法、噴霧熱分解法、ゾルゲル法などにより製造することができる。
本SOFC2の空気極層10は多孔質体として構成される。その孔径は特に限定しないが、例えば0.05μm以上10μm以下とすることができる。また、空隙率も特に限定しないが、例えば20%以上50%以下程度とすることができる。空気極層10の厚みも特に限定はないが、例えば5μm以上2mm以下程度が好ましく、より好ましくは1mm以下であり、また、より好ましくは10μm以上である。
(燃料極層)
本SOFC2における燃料極層16は、従来公知の形態を採ることができるとともに、その材料についても、同様に従来公知の各種の燃料極材料を特に限定しないで用いることができる。燃料極材料としては、例えば、Ni/YSZが挙げられる。これらの組成も特に限定しないが、例えば重量比率で50/50〜90/10とすることができる。また、他の燃料極材料としては、Ni/ScSZ、Ni/カルシウムを固溶させたジルコニア(以下、Ni/CSZと示す)、Ni/セリウム酸化物が挙げられる。
こうした燃料極材料は、商業的に入手可能であるとともに、粉末混合法、共沈法、噴霧熱分解法、スプレードライ法、ゾルゲル法などにより製造することができる。
本SOFC2の燃料極層16は多孔質体として構成される。その孔径は特に限定しないが、例えば0.05μm以上10μm以下とすることができる。また、空隙率も特に限定しないが、例えば20〜50%程度とすることができる。燃料極層16の厚みも特に限定はないが、例えば5μm以上2mm以下程度が好ましく、より好ましくは1mm以下であり、また、より好ましくは10μm以上である。
(セパレーター又はインターコネクター)
なお、本SOFC2に用いられるセパレーター30又はインターコネクターとしては、SOFCにおいて従来公知の各種形態を採ることができるとともに従来公知のセパレーター等材料を特に限定しないで用いることができる。例えば、アルカリ土類酸化物を固溶させたランタンクロマイト、Ni-Cr合金、Crフェライト系合金が挙げられる。
(キャビティ)
図1に示すように、本SOFC2の空気極層10及び燃料極層16のいずれかあるいは双方(以下、こうした形態を一括して多孔質電極層18というものとする。)の領域内には、多孔質電極層18を構成する多孔質体により区画されたキャビティ20を備えている。多孔質電極層18におけるキャビティ20は、多孔質電極層18を構成する材料の多孔質体によって区画されて構成されている。すなわち、キャビティ20は多孔質電極層18の多孔質体における細孔(空隙)そのものではなく、多孔質電極層18において、固体電解質層6と電極界面を構成するように周囲と同様の多孔質電極層18の構造が形成されるべき領域に備えられる凹部、貫通孔、スリットのような形態を採るものである。すなわち、キャビティ20においては、多孔質電極層18の厚みは周囲の多孔質電極層18の厚みよりも小さいかあるいは0となっている。なお、このようなキャビティ20は、多孔質体からなる多孔質電極層18を区画あるいは分断するように備えられる場合もあり、多孔質電極層18自体によって区画されている場合も包含されている。
本SOFC2においては、好ましくはこうしたキャビティ20は燃料極層16に備えられている。燃料極層16における燃料ガスとの界面が発電特性に大きく影響を及ぼすからである。
キャビティ20は、多孔質電極層18の内部に形成されるものとすることも可能であるが、好ましくは、多孔質電極層18のガス(燃料ガス及び/又は空気等)流路5側及び/又は固体電解質層6側に開口22を有する形態とすることができる。こうした形態の一例を図1(b)に示す。図1(b)に示すキャビティ20は、ガス流路5側に開口する凹部(溝)形態となっている。固体電解質層6側又はガス流路5側に開口されることで、いずれもガスの流通状態を向上することができるメリットが生じやすくなる。開口22が電極層18のガス流路側にあることで、こうしたガス流通性向上のメリットが大きく、開口22が電極層18の固体電解質層6側にあることで、活性の高い反応界面を有効に活用できる。
キャビティ20は、ガス流路5及び固体電解質層6において開口されていることが好ましい。すなわち、ガス流路5から固体電解質層6に到達するように多孔質電極層18を貫通していることが好ましい。こうしたキャビティ20の形態においては、発電のために有効な実効面積が減少するにもかかわらず濃度分極を抑制して高い発電特性を得ることができる。こうした形態のキャビティ20の一例を図1(c)に示す。図1(c)に示すキャビティ20は、燃料極層16を貫通する貫通孔部の形態となっている。なお、後述する分断部24は、セパレーター30及び固体電解質層6と接触していることが好ましい。
キャビティ20は、チャンネル状パターンを有することができる。チャンネル状パターンは、全体として線状の流路のパターンとして形成されていることが好ましい。なお、ここでいうチャンネル状パターンとは後述するように破線状パターンを含んでいるが、以下、チャンネル状パターンの平面形態の説明にあたっては、キャビティ形態に着目せず、たとえ破線状パターンの非キャビティ部分を含めた全体的なパターンをチャンネル状パターンというものとする。
チャンネル状パターンの多孔質電極層18において展開される平面形態は特に限定しない。例えば、図2(a)〜図2(g)に示すような直線状、曲線状、螺旋状、同心状、放射状、格子状(グリッド状)、セル状(例えば、ヘキサゴンのセル、ダイヤ状のセル等)とすることができる。また、多孔質電極層18において、1種類のパターンのみを用いてもよいし、2種類以上のパターンを組み合わせて用いることもできる。
特に、SOFC2において、ガス流路5におけるガスの流入口を中心とした同心状の環状構造のパターンを用いることが好ましい。こうすることで電極全体に均一に広く燃料を届かせることができるからである。同心状の環状構造パターンは、ガス流路5においてガスの流入口が多孔質電極層18の中央部分に相当する場合には、図2(d)に示すような、電極層18の中央部を中心とする同心状となる。個々の環状構造パターンは、閉じた環状体であってもよいし開放された環状体であってもよい。ガスの流れを妨げないといった観点からは、好ましくは、閉じた環状体である。また、環状構造パターンの輪郭は、多孔質電極層18の外形形態に沿うものとすることができ、当該外形形態が円形状の場合には、環状の輪郭は円形状とすることができ、当該外形形態が方形状の場合には、同輪郭は方形状とすることができる。また、図2(e)に示すような、ガス流路5におけるガスの流入口を中心とした放射状にチャンネル状パターンを形成することも好ましい。
チャンネル状パターンは、ガス流路5におけるガス流通方向に沿って形成することができる。こうすることで、ガス流通性が向上されるメリットがある。また、チャンネル状パターンをガス流路5におけるガス流通方向に沿って均一に形成してもよいし不均一に形成してもよい。均一に形成することで、セル全体において均質な温度分布は発電特性を得ることができる。このようなパターンとしては、例えば、ガスが多孔質電極層18の中央部から外側に流れる場合における、図2(c)〜図2(e)のパターンが挙げられる。また、チャンネル状パターンをガス流通方向に沿って不均一に形成することで、多孔質電極層18において、温度分布や発電特性を不均質に、例えば、ガスの流入口近傍やガスの流出口近傍等で異ならせることができる。このようなパターンとしては、例えば、図3に例示するようなパターンが挙げられる。
また、チャンネル状パターンは、両端が開放された線分(例えば、図2(a)〜(c)、(e)〜(g))又は閉じた線分(例えば、図2(d)として形成されることができる。また、他の線分と交差していてもよいし(例えば、図2(e)、(f))、枝分かれ状になっていてもよい(例えば、図2(g))。また、線分は、1.6mm以上の両端が開放された線分あるいは閉じた線分として形成されていることが好ましい。1.6mm以上であるとキャビティ形成によるガスの流れの制御が可能だからである。より好ましくは3.2mm以上である。なお、チャンネル状パターンを構成する線分は、他の線分と交差していてもよい。
チャンネル状パターンは、図4に示すように、チャンネル状パターンの長さ方向に沿って連続している実線状パターンを有していてもよいし、チャンネル状パターンの長さ方向に沿ってキャビティ20を分断する多孔質電極層18からなる分断部24と分断部24により区画された短線分キャビティ26とを有する破線状パターンを有していてもよい。これら双方のパターンを有していてもよいが、本発明においては、好ましくは、少なくとも破線状パターンを有している。チャンネル状パターンが実線状のパターンであっても濃度分極を抑制し発電特性を向上させることができる場合もあるし、また、破線状とすることでこうした効果が得られる場合もある。特に、チャンネル状パターンを破線状とし、キャビティ20が多孔質電極層18からなる分断部24を備えることにより、キャビティ20の両側の多孔質電極層18が連結されることになり、これにより集電特性が向上されると考えられる。また、ガスの流通方向等に依存しないでキャビティ20による効果を得ることができる。さらに、このような分断部24を設けることで、ガス流通性を確保するとともに電極面積を確保することが容易になる。
破線状パターンは、種々の態様の破線形態を採ることができる。分断部24の長さは、0.05mm以上0.8mm以下であることが好ましい。この範囲であると分断部24におけるガスの拡散が十分可能であり、0.05mm未満であると分断部での伝導性がわるくなり、0.8mmを超えると分断部のガス拡散が不十分になるからである。より好ましくは、0.15mm以上0.5mm以下である。この範囲であると分断部におけるガス拡散が十分可能であるとともに伝導性が損なわれないからである。
また、短線分キャビティ26の長さは、0.5mm以上1.5mm以下であることが好ましい。この範囲であるとガスの流れ方向を制御でき、0.5mm未満であるとガスの流れ方向を制御することができず、1.5mmを超えると破線形態で隔てた電極間の伝導性が低くなるからである。より好ましくは、0.7mm以上1.2mm以下である。この範囲であるとガスの流れ方向を制御できる共に電極表面の伝導性を高いままで保持できるからである。
また、分断部24の長さに対する短線分キャビティ26の長さ1.0以上7.0以下であることが好ましい。この範囲であると、短線分キャビティ24の長さを確保でき、良好なガス拡散性を得ることができるからであり、1.0未満であるとガスの拡散に対して不十分であり、7.0を超えると伝導性が損なわれるからである。より好ましくは2.0以上5.0以下である。この範囲であると表面の導電性が高くかつ十分なガス拡散性を有する電極が得られるからある。さらに好ましくは、2.5以上4.0以下である。
こうしたチャンネル状パターンにおいて、キャビティ20は、電極面積1cmあたり30mm以上の長さを有していることが好ましい。すなわち、電極全体に形成したキャビティ20の長さを電極面積(cm)で除したとき、30mm/cm以上であることが好ましい。また、当該長さは100mm/cm以下であることが好ましい。こうした長さとすることで、ガス流れの制御と共に三相界面を増やす効果が得られるからである。30mm/cm未満であるとガス流れを制御したことによる効果発現が不十分であり、100mm/cmを超えるとキャビティの面積を除いた実際の発電に供する電極面積が小さくなり十分な発電特性が得られないからである。より好ましくは、40mm/cm以上90mm/cm以下である。さらに好ましくは、50mm/cm以上80mm/cm以下である。なお、チャンネル状パターンが破線状パターンのみからなる場合には、短線分キャビティ26の長さが上記範囲であることが好ましく、チャンネル状パターンが一部に破線状パターンを有する場合には、破線状パターンにおける短線分キャビティ26とその他のパターン部分におけるキャビティ20との合計長さが上記範囲にあることが好ましい。
キャビティ20及び短線分キャビティ26の開口22の開口面積の合計は、多孔質電極層18が本来形成されるべき電極面積の5%以上40%以下であることが好ましい。この範囲であると、キャビティ20形成による効果を得ることができるからである。より好ましくは15%以上であり、さらに好ましくは20%以上である。また、より好ましくは35%以下であり、さらに好ましくは30%以下である。
キャビティ20及び短線分キャビティ26のガス流路5側への開口22の開口幅の最大寸法は50μm以上500μm以下であることが好ましい。この範囲であると、生成したガスの放出に適しているからである。より好ましくは100μm以上であり、また、400μm以下である。
以上説明した構造を備える本SOFC2は、発電に有効な実効面積が変化しないか又は減少するにもかかわらず、濃度分極を抑制して良好な発電特性を示す。本SOFC2によれば、電極のマクロな構造によってこうした発電特性の向上が認められるため、簡易でしかも適用範囲が広いものとなっている。このようなキャビティ20及び短線分キャビティ26による効果が生じる原因は必ずしも解明されているわけではないが、キャビティ20及び短線分キャビティ26の形成によるガス拡散の促進効果と分断部24による導電性向上の効果に起因するであろうと推測される。
(SOFCの製造方法)
次に、本SOFC2の製造に適した製造方法について説明する。
本発明のSOFC2の製造方法は、上記したチャンネル状パターンを有する1又は2以上のキャビティ20を備える多孔質電極層18を形成する電極形成工程を備えている。キャビティ20を備える多孔質電極層18を形成するには、各種の印刷手法のほか、UVやレーザーなどのエネルギー波の照射を伴う切削加工、マイクロドリルなどのマイクロマシンによる微細機械加工などが挙げられる。
以下には、少なくともガス流路5側に開口するキャビティ20(凹部又は貫通孔部)を備えるSOFC2の製造に適している方法を例示して本発明の製造方法を説明する。この方法の電極形成工程は、固体電解質層6に対して多孔質電極層18の材料を付与すると同時にパターニングしてSOFC2におけるガス流路側に開口されるキャビティを備える多孔質電極層18を形成する多孔質電極層形成工程を備えている。
この方法においては、まず、固体電解質層6を準備する。固体電解質層6は、既に説明した従来公知の固体電解質材料を用いて適切な成形方法や成膜方法を用いて得ることができる。
次に、固体電解質層6に対して多孔質電極層18の材料を付与する。すなわち、上記した空気極層10の材料又は燃料極層16の材料である。多孔質電極層18の材料を固体電解質層6に対して供給するには、こうした場合に用いられている従来公知の方法、例えば、湿式法、溶射法、スパッタ法等を用いることができるが、キャビティ20の形成方法によっても異なる。
多孔質電極層18の材料を固体電解質層6に供給するのと同時にキャビティ20を形成するのであれば、例えば、スクリーン印刷、インクジェット等の各種の印刷手法によってキャビティ20をパターニングすることができる。スクリーン印刷は大量生産に都合がよいし、インクジェット印刷は、多様な形態でキャビティ20をパターニングするのに都合がよい。なお、こうした手法によれば、凹部形態のキャビティ20を形成するのに好都合ではない。
また、多孔質電極層18の材料を固体電解質層6に供給した後にキャビティ20を形成するのであれば、特に供給手法を限定しない。印刷手法によりベタ塗りしてもよいし、各種の方法を利用できる。そして、こうした一様な多孔質電極層18に対してキャビティ20を形成するには、例えば、UV、レーザー、電子線等を用いた半導体加工技術や、エッチング(ドライ)、X線を用いたLIGA(Lithographie, Galvanoformung, Abformung)など、なんらかのエネルギー波の照射を伴う切削加工技術を採用することができるほか、マイクロドリル等の微細機械加工やエッチング(ウエットエッチング)などを、特に限定しないで用いて多孔質電極層18を切削してキャビティ20をパターニングすることができる。この手法によれば、凹部形態や貫通孔形態のキャビティ20を容易に形成することができる。
なお、多孔質電極層18と固体電解質層6とを接合するには、焼成工程を行う。多孔質電極層18の材料を固体電解質層6への供給と同時にパターニングする場合には、パターニング後に焼成することになり、多孔質電極層18の材料を固体電解質層6に供給後にパターニングする場合には、パターニングの前又は後に焼成工程を実施することができる。
なお、最終的にSOFC2を製造するには、他方の固体電解質層6の他面側にも他方の多孔質電極層18を形成してセル4を製造する。その後、必要に応じ、これをセパレーター30を介してスタックすることによりSOFC2を得ることができる。
なお、以上説明した製造工程は、少なくともガス流路5側に開口するキャビティ20(凹部又は貫通孔部)を備えるSOFC2の製造工程であり、固体電解質層6側に開口するキャビティ20を備えるSOFC2を製造する場合には、予め準備した多孔質電極層18の固体電解質層6側に当接される面に上記各種方法でパターニングを施した上、この多孔質電極層18と固体電解質層6とを一体化することができる。
以上説明した本発明のSOFCの製造方法によれば、簡易な方法によってSOFC2の発電特性を向上させることができる。また、パターニングによりチャンネル状パターンを有するキャビティ20を各種の態様で形成できるため、大きさ、形態、種類を問わないで広い範囲のSOFC2に適用可能である。
以下、本発明を、実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
本実施例では、SOFCの燃料極としてNi/8YSZのサーメット(Ni:8YSZ=80:20(モル比))、空気極としてLa0.8Sr0.2MnO(LSM)、電解質としては厚さ300μmの8YSZを用いた。また、燃料極及び空気極の面積は2cm(直径:1.596cm)とした。本実施例では、燃料極の形成に際し、スクリーン印刷によって実線状及び破線状のチャンネル状キャビティのパターニングを施してSOFCを作製した。
まず、パターニングのためのスクリーンメッシュを作製した。本実施例では、線幅を300μmとして、各種パターンE〜Hを配置したスクリーンメッシュを作製した。図5に、パターンデザインを示す。実線状のパターンは、このパターンのままのスクリーンメッシュを作製し、破線状パターンについては、図6に示す形態で破線状としたスクリーンメッシュを作製した。また、実線状パターンにおいても破線状パターンにおいてもキャビティ(開口)面積の割合は22〜25%となるようにしたとともに、電極面積1cm当たりのキャビティの長さはいずれにおいても60mmとした。
これらのスクリーンパターンを用いて、8YSZ電解質板(厚み300μm)上に燃料極材料のペーストをスクリーン印刷した。スクリーン印刷条件、ペースト作製条件及びスクリーンと電解質との間隔(Gap)を適宜調整して、電極層(厚み20μm)を形成すると同時にキャビティをパターニングした。これを1400℃で熱処理することにより、燃料極材料を焼き付けた。
さらに、固体電解質層に対して、空気極層(厚み15μm)を形成してSOFCを作製した。空気極層の形成は、燃料極と同様にスクリーン印刷の後に1200℃で焼き付けた。これら、燃料極層のキャビティのパターニングが4種類あり、各種類のパターンにつきキャビティが実線又は破線となっている合計8種類のSOFCについて1000℃における発電特性を評価するとともに、燃料極のIR特性及びη分極特性について電流遮断法で評価した。燃料ガス及び空気はセル上部から電極全面に均質に届き,その後セル周辺部に流れる評価装置を用いた。結果を図7〜図10に示す。
螺旋状のEパターンについての結果を図7に示す。図7(a)に示すように、実線状(E1)及び破線状(E2)とした螺旋状パターン間においては発電特性において大きな相違はなかった。また、図7(b)及び図7(c)に示すように、電極特性をみると、特にIRがE1(実線状パターン)よりもE2(破線状パターン)のほうが若干大きくなっていたが、螺旋状のチャンネル状パターンにおいては、破線でも実線でも表面導電性に差がないことがわかった。なお、チャンネル状パターンを有しない燃料極を備える対照SOFCを同様に作製して同様の評価を行って比較したところ、Eパターンは、このような対照SOFCに対しては、明らかに発電特性が向上し濃度分極も抑制されていた。
同心円のFパターンについての結果を図8に示す。図8(a)に示すように、破線状パターン(F2)とすることで、高電流密度側での特性が大きく改善されることがわかった。これは、図8(b)に示すように、特に高電流密度側で、破線状パターン(F2)のIRが低くなったことが大きく影響したと考えられる。なお、Fパターンは同心円からなるため,各円状のキャビティで電極が隔てられる。このため、この各キャビティを破線状にすることによって,隔てられていた集電が大きく改善し,IR低下につながったものと考えられる。なお、チャンネル状パターンを有しない燃料極を備える対照SOFCを同様に作製して同様の評価を行って比較したところ、Fパターンは、このような対照SOFCに対しては、明らかに発電特性が向上し濃度分極も抑制されていた。
同心円と直交する直線の組み合わせからなるGパターンについての結果を図9に示す。図9(a)に示すように、破線状パターン(G2)とすることで、高電流密度側での特性が大きく改善されることがわかった。Gパターンにおいても、Fパターンと同様に同心円からなるため、各円状キャビティで電極が隔てられる。このため、各キャビティを破線状にすることによって,隔てられていた集電が大きく改善し,IR低下につながったものと考えられる。なお、チャンネル状パターンを有しない燃料極を備える対照SOFCを同様に作製して同様の評価を行って比較したところ、Gパターンは、このような対照SOFCに対しては、明らかに発電特性が向上し濃度分極も抑制されていた。
ヘキサゴンセル状のHパターンについての結果を図10に示す。図10(a)に示すように、Hパターンについては、実線状パターン(G1)であっても、破線状パターン(G2)であっても、発電特性に大きな変化はなかった。また、図10(b)及び図10(c)に示すように、燃料極の特性も変化がなく、破線状としても集電特性に改善がなかった。なお、チャンネル状パターンを有しない燃料極を備える対照SOFCを同様に作製して同様の評価を行って比較したところ、Hパターンは、このような対照SOFCに対しては、明らかに発電特性が向上し濃度分極も抑制されていた。
本発明の固体酸化物形燃料電池の構造の例を示す図。 各種チャンネル状パターンを例示する図。 チャンネル状パターンを不均一に形成した例を示す図。 チャンネル状パターンのキャビティの構成例を示す図。 実施例におけるチャンネル状パターンのパターンデザインE〜Hを示す図。 破線状とする場合の分断部と短線分キャビティの構成を示す図。 Eパターンにおける発電特性、燃料極のIR及びη分極特性を示す図。 Fパターンにおける発電特性、燃料極のIR及びη分極特性を示す図。 Gパターンにおける発電特性、燃料極のIR及びη分極特性を示す図。 Hパターンにおける発電特性、燃料極のIR及びη分極特性を示す図。
符号の説明
2 固体酸化物形燃料電池(SOFC)、4 セル、5 ガス流路、6 固体電解質層、10 (多孔質)空気極層、16 (多孔質)燃料極層、18 多孔質電極層、20 キャビティ、22 開口、24 分断部、26 短線分キャビティ、30 セパレーター。

Claims (13)

  1. 固体酸化物形燃料電池であって、
    固体電解質層と、
    多孔質電極層と、
    前記多孔質電極層においてチャンネル状パターンを有する1又は2以上のキャビティと、
    を備え、
    前記チャンネル状パターンは、その長さ方向に沿って前記チャンネル状パターンを分断する電極層からなる分断部と該分断部により区画された短線分キャビティとを有する破線状パターンを有する、固体酸化物形燃料電池。
  2. 前記キャビティの電極面積当たりの長さは、30mm/cm以上100mm/cm以下である、請求項1に記載の固体酸化物形燃料電池。
  3. 前記分断部の長さは、0.05mm以上0.8mm以下である、請求項1又は2に記載の固体酸化物形燃料電池。
  4. 前記短線分キャビティの長さは、0.5mm以上1.5mm以下である、請求項1〜3のいずれかに記載の固体酸化物形燃料電池。
  5. 前記分断部の長さに対する前記短線分キャビティの長さは1.0以上7.0以下である、請求項1〜4のいずれかに記載の固体酸化物形燃料電池。
  6. 前記チャンネル状パターンは、同心状に閉じた又は開放した複数の環状構造を有する、請求項1〜5のいずれかに記載の固体酸化物形燃料電池。
  7. 前記チャンネル状パターンは、ガス流路の方向に沿って均一又は不均一に配置されている、請求項1〜6のいずれかに記載の固体酸化物形燃料電池。
  8. 前記キャビティは、前記多孔質電極層を貫通する、請求項1〜7のいずれかに記載の固体酸化物形燃料電池。
  9. 前記キャビティの前記ガス流路側への開口幅の最大寸法が50μm以上500μm以下である、請求項1〜8のいずれかに記載の固体酸化物形燃料電池。
  10. 前記多孔質電極層において前記キャビティは少なくともガス流路側に開口され、該開口の開口面積の合計は、全電極面積の5%以上40%以下である、請求項1〜9のいずれかに記載の固体酸化物形燃料電池。
  11. 前記多孔質電極層の厚さは5μm以上1mm以下である、請求項1〜10のいずれかに記載の固体酸化物形燃料電池。
  12. 前記電極は燃料極である、請求項1〜11のいずれかに記載の固体酸化物形燃料電池。
  13. 固体酸化物形燃料電池の製造方法であって、
    チャンネル状パターンを有する1又は2以上のキャビティを備え、
    前記チャンネル状パターンは、その長さ方向に沿って前記チャンネル状パターンを分断する電極層からなる分断部と該分断部により区画された短線分キャビティとを有する破線状パターンを有する多孔質電極層を形成する工程を備える、固体酸化物形燃料電池の製造方法。
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