JP5657399B2 - 固体酸化物形電気化学セルの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明の実施形態は、固体酸化物形電気化学セルの製造方法に関する。
固体電解質膜を備える電気化学セルは、通常600〜900℃程度の運転条件において、イオン伝導性を有する固体電解質膜を介して、水素または炭化水素などの還元剤と酸素などの酸化剤を反応させ、電気エネルギを取り出したり、外部から電気エネルギを受けて水蒸気などの電気分解を行うものである。
電気エネルギを取り出す反応を行う場合には、還元剤と酸化剤との反応エネルギを電気として取り出す固体酸化物形燃料電池(Solid Oxide Fuel Cell:SOFC)として機能する。一方、水蒸気などの電気分解を行う場合には、上記したSOFCにおける反応の逆反応を動作原理とし、イオン伝導性を有する電解質膜を介して、高温の水蒸気を電気分解することにより水素と酸素とを得る固体酸化物形電解セル(Solid Oxide Electrolysis Cell:SOEC)として機能する。
SOFCおよびSOECの双方の機能を有する電気化学セルを備えた電気化学装置を用いて、必要に応じて発電モードと電解モードのいずれかの運転、いわゆるリバーシブル運転を行えば、電力に余裕のあるときに水素を得て蓄積し、電力不足時に蓄積した水素で発電を行う電力貯蔵システムを実現することが可能である。
また、発電の際に生じる発熱反応、および水蒸気電解の際に生じる吸熱反応に伴う熱量の蓄積または供給を効率よく行う機構を併設することで、電力貯蔵システム全体をさらに高い効率で運用することができる。これを実用するためには、上記した、発熱反応および吸熱反応のいずれをも効率よく行うことができるセル構造を備えるとともに、発熱反応および吸熱反応の際に、セル反応部とセルスタックの外部との熱の移動を効率的に行う機構の構築が必要となる。
上記した発熱反応や吸熱反応の際における熱の移動を効率的に行うためには、発熱反応または吸熱反応が生じる水素極と集電部材との間の熱抵抗を低減し、セルスタックの外部に熱が移動しやすい構造にすることが必要となる。
ここで、従来の一般的な固体電解質型の電気化学セルは、構成部材の大部分がセラミックスで構成されている。この従来の電気化学セルを製造する際、電気化学セルの特性を確保するために、セラミック材料である固体電解質膜および水素極を少なくとも1100℃以上の温度で焼成することが必要となる。
特開平10−326623号公報
上記したように、セラミック材料である固体電解質膜および水素極を少なくとも1100℃以上の温度で焼成することが必要であるため、金属で構成される集電部材などは、融点や表面酸化の観点から、水素極と一体で構成することは困難であった。そのため、水素極と集電部材は接触させて配置される構成が採られ、水素極と集電部材との間の熱抵抗や電気抵抗を減少させるには限界があった。
また、水素極と金属で構成される集電部材とを一体化するために焼成温度を低下させると、焼成が不十分となり、電気化学セルの特性が低下するという問題が生じる。
本発明が解決しようとする課題は、機械的強度を確保しつつ、構成部材間の熱抵抗や電気抵抗を減少させることができる固体酸化物形電気化学セルの製造方法を提供することである。
実施形態の固体酸化物形電気化学セルの製造方法は、電子絶縁性とイオン伝導性を有する固体電解質膜の一方の主面に、酸化物からなる酸素極を焼成して形成する工程と、前記酸素極の形成後、水素極触媒金属からなる平均粒径が0.1μm〜5μmの金属粒子、および前記固体電解質膜と同種のイオン伝導性を有する酸化物からなる平均粒径が1nm〜100nmの酸化物粒子を含む混合物を、前記固体電解質膜の他方の主面に配置する工程と、配置された前記混合物からなる層に積層して、金属多孔質体からなる水素極側集電層を配置する工程と、前記混合物を、不活性雰囲気または還元性雰囲気の下、前記金属多孔質体の融点よりも低く、かつ前記酸素極を形成する際の焼成温度よりも低い温度で焼成することによって水素極を形成するとともに、前記水素極に前記水素極側集電層を接合する工程と、前記酸素極に積層して酸素極側集電層を配置する工程とを具備する。
実施の形態の固体酸化物形電気化学セルの断面を模式的に示す図である。 実施の形態の他の構成の固体酸化物形電気化学セルの断面を模式的に示す図である。 発電特性試験の結果を示す図である。 熱流束測定の結果を示す図である。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
(固体酸化物形電気化学セル)
図1は、実施の形態の固体酸化物形電気化学セル10の断面を模式的に示す図である。図2は、実施の形態の他の構成の固体酸化物形電気化学セル10の断面を模式的に示す図である。また、以下に示す実施の形態において、同一の構成部分には同一の符号を付して、重複する説明を省略または簡略する。
図1に示すように、固体酸化物形電気化学セル10は、固体電解質膜11と、この固体電解質膜11の一方の主面11aに形成された水素極12と、固体電解質膜11の他方の主面11bに形成された酸素極13とを備えている。さらに、固体酸化物形電気化学セル10は、水素極12に積層して形成された水素極側集電層14と、酸素極13に積層して形成された酸素極側集電層15とを備えている。
固体電解質膜11は、電子絶縁性と酸素イオン伝導性を有し、膜状に稠密に形成されている。ここで稠密とは、固体電解質膜11におけるガスリークが実質的に無視できる程度の稠密度であればよい。固体電解質膜11は、例えば、安定化ジルコニアから構成される。この場合、安定化剤としては、例えば、Y、Sc、Yb、Gd、Nd、CaO、MgOなどが挙げられる。これらの安定化剤をジルコニア中に固溶して使用する。
また、固体電解質膜11は、安定化ジルコニアに代えて、ペロブスカイト型酸化物から構成されてもよい。ペロブスカイト型酸化物としては、例えば、LaSrGaMg酸化物、LaSrGaMgCo酸化物、LaSrGaMgCoFe酸化物などが挙げられる。さらに、固体電解質膜11は、CeOにSm、Gd、Y、Laなどを固溶させたセリア系電解質固溶体で構成されてもよい。なお、固体電解質膜11は、これらの材料に限定されるものではなく、これら以外の材料で構成されてもよい。
また、固体電解質膜11の厚さは、使用される用途に応じて任意に設定することができる。例えば、固体電解質膜11の厚さを、10μm〜500μmの範囲に設定することができる。
水素極12は、水素極触媒金属からなる平均粒径が0.1μm〜5μmの金属粒子、および固体電解質膜11と同じ酸素イオン伝導性を有する酸化物からなる平均粒径が1nm〜100nmの酸化物粒子を含んで構成されている。金属粒子を構成する水素極触媒金属としては、例えば、白金などの金属や、酸化ニッケル、酸化コバルトなどの金属酸化物が挙げられる。酸化物粒子を構成する酸化物は、酸素イオン伝導性を有するセラミックスで構成され、例えば、サマリア安定化セリア(SDC)、ガドリニア安定化セリア(GDC)などのセリア系酸化物、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)などのジルコニア系酸化物などが挙げられる。また、酸化物粒子を構成する酸化物として、固体電解質膜11を構成する酸化物を使用してもよい。
ここで、金属粒子の平均粒径を0.1μm〜5μmにするのが好ましいのは、触媒粒子の表面積が大きいほど電極としての活性が高くなるからである。また、さらに好ましい金属粒子の平均粒径は、1μm以下である。なお、粒径が小さすぎると電気化学セルの運用時、特に高電流密度において金属粒子の凝集による特性低下が生じるため、金属粒子の平均粒径の下限値を0.1μmとする。
また、酸化物粒子の平均粒径を1nm〜100nmにするのが好ましいのは、焼成による組織焼結の緻密性が向上するからである。また、さらに好ましい酸化物粒子の平均粒径は、1nm〜50nmである。なお、製造技術や混合時の分散の限界上、酸化物粒子の平均粒径の下限値を1nmとする。
なお、平均粒径とは、有効径による体積平均径をいい、平均粒径は、例えば、レーザー回折・散乱法または動的光散乱法などによって測定される。
水素極12を構成する、金属粒子と酸化物粒子との混合割合について、金属粒子の質量を1とした場合、酸化物粒子の質量は、0.6〜1.6の範囲に設定することが好ましい。この範囲とすることが好ましいのは、触媒層の活性および触媒層中の酸素イオン伝導経路、電子伝導経路が最もバランスよく配置されるからである。なお、金属粒子および酸化物粒子は、均一に分散され、水素極12を構成することが好ましい。
また、水素極12の厚さは、使用される用途に応じて任意に設定することができる。例えば、水素極12の厚さを、50μm〜200μmの範囲に設定することができる。
酸素極13は、酸素を効率よく解離するとともに、電子伝導性を有する材料で構成され、公知の電気化学セルの酸素極として用いられている任意の材料によって構成される。例えば、LaSrMn酸化物(LSM)、LaSrCo酸化物(LSC)、LaSrCoFe酸化物(LSCF)などで酸素極13を構成することができる。
また、酸素極13の厚さは、使用される用途に応じて任意に設定することができる。例えば、酸素極13の厚さを、30μm〜100μmの範囲に設定することができる。
ここで、酸素極13を固体電解質膜11との反応性の高い、LaSrCo酸化物(LSC)やLaSrCoFe酸化物(LSCF)で構成する場合、図2に示すように、固体電解質膜11と酸素極13との間に、酸化物層16をさらに備えることが好ましい。この酸化物層16は、固体電解質膜と同じ酸素イオン伝導性を有する酸化物からなる平均粒径が1nm〜100nmの酸化物粒子を含んで構成される。
酸化物層16を構成する酸化物として、例えば、サマリア安定化セリア(SDC)、ガドリニア安定化セリア(GDC)などが挙げられる。このように、固体電解質膜11と酸素極13との間に酸化物層16を設けることで、反応性の高い酸素極13の構成材料と固体電解質膜11の構成材料とが直接接触することを防ぎ、良好な特性を安定して維持することができる。
水素極側集電層14は、ニッケル、銀または白金などの金属で構成される多孔質体で構成される。また、水素極側集電層14は、水素極12に一体的に接合した状態で構成されている。多孔質体の気孔率は、例えば、30〜80%であることが好ましい。気孔率が30%未満の場合には、ガス透過性が損なわれ、電気化学セル特性が低下する。一方、気孔率が80%を超える場合には、機械的強度を十分に維持することができず、組立の際に破損することがある。なお、気孔率は、ガス透過法や吸水法、ポロシメータなどによって測定される。
また、水素極側集電層14の厚さは、機械的強度の維持とガス透過性の確保の理由から、500μm〜5mmの範囲に設定することが好ましい。また、水素極側集電層14を支持体として機能させることもでき、これによって機械的強度を維持または向上することができる。
酸素極側集電層15は、耐酸化表面処理を施したニッケルやステンレスなどの一般的な金属、金、銀または白金などの耐酸化性を有する金属などで構成される。なお、酸素極側集電層15と酸素極13との間における電気的接触をより確実なものとし、これらの間の電気的抵抗を低減するために、酸素極側集電層15と酸素極13との間に、例えば、酸素極13と同組成を有する酸化物粒子、酸素極側集電層15と同組成を有する金属粒子などからなる接合層を設けてもよい。
上記した構成を備える固体酸化物形電気化学セル10において、発電反応時には、酸素極13において解離された酸素イオン(O2−)が固体電解質膜11を通って水素極12へ移動し、水素と反応して水を生成する。このときに生じた電子を外部回路として取り出し発電に供する。
一方、水蒸気電解反応時には、固体酸化物形電気化学セル10に供給された電力により、水素極12に供給された水蒸気を水素と酸素イオン(O2−)に分解し、水素を放出する。また、酸素イオン(O2−)は、固体電解質膜11を通って酸素極13へ移動し、酸素として放出される。
(固体酸化物形電気化学セルの製造方法)
次に、本発明に係る実施の形態の固体酸化物形電気化学セル10の製造方法について説明する。
ここでは、図1および図2に示した固体酸化物形電気化学セル10の製造方法について説明する。
まず、固体電解質膜11の一方の主面11bに、酸素極13を構成する酸化物からなる酸化物粒子に有機バインダーを添加して作製したスラリーを塗布やスクリーン印刷する。そして、空気中で、1050〜1250℃の温度で、1〜6時間焼成して、酸素極13を形成する。
なお、酸素極13と固体電解質膜11との間に酸化物層16を介在させる場合には、酸素極13を形成する工程の前に、酸素イオン伝導性を有する酸化物からなる酸化物粒子に有機バインダーを添加して作製したスラリーを、固体電解質膜11の一方の主面11bに塗布やスクリーン印刷する。その後、1150〜1250℃の温度で、1〜6時間焼成して酸化物層16を形成する。そして、酸素極13を形成する工程において、上記した方法で、この酸化物層16に積層して酸素極13を形成する。
続いて、水素極12を構成する、水素極触媒金属からなる金属粒子、および酸素イオン伝導性を有する酸化物からなる酸化物粒子を含むスラリー状の混合物を、固体電解質膜11の他方の主面11aに塗布やスクリーン印刷する。ここで、混合物は、前述した混合割合で混合された金属粒子および酸化物粒子に有機バインダーを添加して作製される。
続いて、固体電解質膜11の他方の主面11aに配置された混合物からなる層に積層して、水素極側集電層14を配置する。
続いて、混合物および水素極側集電層14が配置された側を、不活性雰囲気または還元性雰囲気の下、水素極側集電層14を構成する金属多孔質体の融点よりも低い温度で焼成して水素極12を形成するとともに、水素極12に水素極側集電層14を接合する。この際の焼成温度は、800〜1000℃であり、焼成時間は、4〜10時間である。なお、不活性雰囲気は、例えば、水素極12側に窒素などの不活性ガスを流通させることで実現でき、還元性雰囲気は、例えば、水素極12側に水素などの還元性ガスを流通させることで実現できる。
ここで、混合物を構成する金属粒子や酸化物粒子の平均粒径は、前述したように所定の範囲に限定されている。この範囲に平均粒径を設定することで、800〜1000℃という低い焼成温度においても混合物を適正に焼成することができる。
また、混合物を焼成する際、酸素極13の表面を有機材料で被覆した状態で、混合物を焼成することが好ましい。混合物を焼成する際、酸素極13側は、同様に800〜1000℃となるため、この温度範囲で(不活性雰囲気中で)耐熱性を有する有機材料が使用される。有機材料としては、例えば、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂などが挙げられる。酸素極13の表面の被覆は、特に、混合物を焼成する際、酸素極13側も不活性雰囲気または還元性雰囲気となる場合に有効である。このように、酸素極13の表面を有機材料で被覆することで、酸素極13側が不活性雰囲気または還元性雰囲気となる場合においても、酸素極13の活性を確保することができる。
また、混合物を焼成する際、600℃以上、かつ水素極側集電層14を構成する金属多孔質体の融点よりも低い温度の下、酸素極13側に酸素を含む酸化ガスを供給し、水素極12側に水素を含む還元ガスを供給し、固体酸化物形電気化学セル10に通電しつつ混合物を焼成してもよい。このようにすることで、焼成時間を短縮することができる。なお、この場合には、酸素極13の表面は、有機材料によって被覆されていない。
続いて、酸素極側集電層15を酸素極13に積層して配置する。また、酸素極側集電層15と酸素極13との間に接合層を設ける場合には、先の記載のように、例えば、酸素極13と同組成を有する酸化物粒子、酸素極側集電層15と同組成を有する金属粒子などを介在させて接合層を形成する。
上記した製造工程を経て固体酸化物形電気化学セル10が得られる。
なお、固体酸化物形電気化学セル10の製造方法は、上記した製造方法に限られるものではなく、固体酸化物形電気化学セル10を次の製造方法によって製造してもよい。
以下に、本発明に係る実施の形態の他の固体酸化物形電気化学セル10の製造方法について説明する。
まず、酸素極13を構成する酸化物からなる酸化物粒子に有機物バインダーを添加して作製したスラリーを平板上に塗布やスクリーン印刷する。そして、空気雰囲気下で一旦乾燥させた後、固体電解質膜11を構成する、電子絶縁性とイオン伝導性を有する酸化物からなる酸化物粒子に有機物バインダーを添加して作製したスラリーを酸素極13の一方の主面に塗布やスクリーン印刷する。そして、1150〜1250の温度で、1〜6時間焼成して固体電解質膜11を形成する。
なお、酸素極13と固体電解質膜11との間に酸化物層16を介在させる場合には、固体電解質膜11を形成する工程の前に、酸化物層16を構成する、酸素イオン伝導性を有する酸化物からなる酸化物粒子に有機バインダーを添加して作製したスラリーを、酸素極13の一方の主面に塗布やスクリーン印刷し、室温にて乾燥させて酸化物層16を形成したのち、更に電解質層を形成後、焼成処理を行う。
続いて、水素極12を構成する、水素極触媒金属からなる金属粒子、および固体電解質膜11と同じ酸素イオン伝導性を有する酸化物からなる酸化物粒子を含むスラリー状の混合物を、固体電解質膜11の酸素極13を有する側とは異なる側の主面11aに塗布やスクリーン印刷する。ここで、混合物は、前述した混合割合で混合された金属粒子および酸化物粒子に有機バインダーを添加して作製される。
続いて、固体電解質膜11に配置された混合物からなる層に積層して、水素極側集電層14を配置する。
続いて、混合物および水素極側集電層14が配置された側を、不活性雰囲気または還元性雰囲気の下、水素極側集電層14を構成する金属多孔質体の融点よりも低い温度で焼成して水素極12を形成するとともに、水素極12に水素極側集電層14を接合する。この際の焼成温度は、800〜1000℃であり、焼成時間は、4〜10時間である。なお、不活性雰囲気は、例えば、水素極12側に窒素などの不活性ガスを流通させることで実現でき、還元性雰囲気は、例えば、水素極12側に水素などの還元性ガスを流通させることで実現できる。
ここで、混合物を構成する金属粒子や酸化物粒子の平均粒径は、前述したように所定の範囲に限定されている。この範囲に平均粒径を設定することで、800〜1000℃という低い焼成温度においても混合物を適正に焼成することができる。
また、混合物を焼成する際、酸素極13の表面を有機材料で被覆した状態で、混合物を焼成することが好ましい。混合物を焼成する際、酸素極13側は、800〜1000℃となるため、この温度範囲で耐熱性を有する有機材料が使用される。有機材料としては、例えば、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂などが挙げられる。酸素極13の表面の被覆は、特に、混合物を焼成する際、酸素極13側も不活性雰囲気または還元性雰囲気となる場合に有効である。このように、酸素極13の表面を有機材料で被覆することで、酸素極13側が不活性雰囲気または還元性雰囲気となる場合においても、酸素極13の活性を確保することができる。
また、混合物を焼成する際、600℃以上、かつ水素極側集電層14を構成する金属多孔質体の融点よりも低い温度の下、酸素極13側に酸素を含む酸化ガスを供給し、水素極12側に水素を含む還元ガスを供給し、固体酸化物形電気化学セル10に通電しつつ混合物を焼成してもよい。このようにすることで、焼成時間を短縮することができる。なお、この場合には、酸素極13の表面は、有機材料によって被覆されていない。
続いて、酸素極側集電層15を酸素極13に積層して配置する。また、酸素極側集電層15と酸素極13との間に接合層を設ける場合には、先の記載のように、例えば、酸素極13と同組成を有する酸化物粒子、酸素極側集電層15と同組成を有する金属粒子などを介在させて接合層を形成する。
上記した製造工程を経て固体酸化物形電気化学セル10が得られる。
ここで、上記した構成を備える固体酸化物形電気化学セル10の水素極側集電層14および酸素極側集電層15には、ガス供給溝が形成されたセパレータ(図示しない)がそれぞれ積層配置される。このようにセパレータを介して複数の固体酸化物形電気化学セル10を積層してセルスタックが構成される。
なお、混合物を焼成して水素極12を形成する際、水素極側集電層14とセパレータとの間に、例えば銀ペーストなどを塗布して、水素極12側の構成を一体的に形成してもよい。
上記したように、本発明に係る実施の形態の固体酸化物形電気化学セル10およびその製造方法によれば、水素極12を形成する混合物を構成する金属粒子や酸化物粒子の平均粒径を、所定の範囲に設定することで、800〜1000℃という低い焼成温度においても混合物を適正に焼成し、水素極12を形成することができる。そのため、混合物を焼成する際、金属多孔質体からなる水素極側集電層14を水素極12に一体的に接合させることができる。
また、水素極側集電層14と水素極12とを一体的に構成することで、水素極側集電層14と水素極12と間の熱抵抗を減少させて熱伝導を向上させることができる。さらに、水素極側集電層14と水素極12との接合部にける電気的抵抗を低減することができる。また、金属多孔質体からなる水素極側集電層14を支持体として機能させることで、機械的強度を維持または向上することができる。
(水素極12の酸化物粒子の粒径の影響)
ここでは、水素極12を構成する酸化物粒子の粒径が固体酸化物形電気化学セル10の発電特性に及ぼす影響について調べた。
固体酸化物形電気化学セル10としては、図1に示した固体酸化物形電気化学セル10を使用した。固体酸化物形電気化学セル10は、次のように製造した。
まず、Y安定化ジルコニア(YSZ)からなる、厚さが0.3mmの固体電解質膜11の一方の主面11bに、酸素極13を構成するLaSrMn酸化物(LSM)からなる酸化物粒子に有機バインダーを添加して作製したスラリーを塗布した。そして、空気雰囲気下で、1150℃の温度で、2時間焼成して、酸素極13を形成した。
続いて、水素極12を構成する、酸化ニッケルからなる金属粒子とサマリア安定化セリア(SDC)の酸化物粒子とを、質量比1:1で混合し、スラリー状の混合物を作製した。ここで、金属粒子の平均粒径を1μmとした。また、平均粒径が、100nm、200nm、1μmの3種類の酸化物粒子を用意し、3種類のスラリー状の混合物を作製した。
そして、混合物を固体電解質膜11の一方の主面11bに塗布し、混合物からなる層に積層して、ニッケルからなる気孔率が60%の金属多孔質体(水素極側集電層14)を配置した。ここで、酸素極13の表面をエポキシ樹脂からなる有機材料で被覆した。
続いて、混合物および水素極側集電層14が配置された側を、窒素ガス雰囲気の下、900℃の温度で10時間、焼成し、水素極12を形成するとともに、水素極側集電層14を水素極12に接合し、水素極12と水素極側集電層14とを一体的に構成した。
続いて、銀からなるメッシュ状の酸素極側集電層15を酸素極13に積層して配置した。
このようにして、発電特性を評価する3種類の固体酸化物形電気化学セル10(試料1〜試料3)を作製した。ここで、水素極12を構成する酸化物粒子の平均粒径は、試料1においては100nmであり、試料2においては200nmであり、試料3においては1μmである。
また、水素極12を構成する酸化物粒子の平均粒径を100nmとした仕様において、混合物を焼成する際、900℃の温度の下、酸素極13側に空気を、水素極12側に水素を供給し、固体酸化物形電気化学セル10に0.05A/cmの電流を通電しながら6時間焼成を行った。そして、上記同様に酸素極側集電層15を酸素極13に積層して配置し、固体酸化物形電気化学セル10(試料4)を作製した。
上記した試料1〜試料4を用いて発電特性を評価した。発電特性試験は、酸素極側に空気、水素極側に純水素を供給し、一定電流密度におけるセル電圧を逐次測定することで実施された。図3は、発電特性試験の結果を示す図である。
図3に示すように、酸化物粒子の平均粒径が小さいほど優れた発電特性が得られ、試料1および試料4においては、試料2および試料3よりも優れた発電特性が得られることがわかる。さらに、試料1および試料4は、同等の発電特性が得られ、試料4においては、通電しながら焼成することで、試料1よりも短い焼成時間で、適正に焼成されていることがわかる。
(熱流束の測定)
ここでは、水素極12側における熱の伝えやすさを評価するために熱流束を測定した。ここでは、上記した試料1、および試料1において水素極12と水素極側集電層14とを一体的に構成せずに、水素極12に積層して水素極側集電層14を配置した構成の試料5について、熱流束を測定した。なお、試料1および試料5の他の構成は同じである。
熱流束測定では、試料1および試料5における水素極側集電層14の表面、および酸素極側集電層15の表面に熱電対を取り付け、それぞれの試料を800℃の温度に加熱した。その後、水素極側に、800℃を超える温度の過熱水蒸気を含む高温ガスを供給してさらに温度を上昇させた際の、水素極側集電層14の表面および酸素極側集電層15の表面の温度、酸素極側集電層15の表面の温度上昇速度などに基づいて熱流束を算出した。
図4は、熱流束測定の結果を示す図である。なお、図4の縦軸は、試料5における熱流束を1としたときの熱流束比で示している。
図4に示すように、試料1における熱流束は、試料5における熱流束よりも大きいことがわかる。すなわち、試料1においては、試料5に比べて、水素極12と水素極側集電層14との間の熱抵抗が小さく、熱の移動が促進されていることがわかる。
以上説明した実施形態によれば、機械的強度を確保しつつ、構成部材間の熱抵抗や電気抵抗を減少させることが可能となる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。
10…固体酸化物形電気化学セル、11…固体電解質膜、11a,11b…主面、12…水素極、13…酸素極、14…水素極側集電層、15…酸素極側集電層、16…酸化物層。

Claims (6)

  1. 電子絶縁性とイオン伝導性を有する固体電解質膜の一方の主面に、酸化物からなる酸素極を焼成して形成する工程と、
    前記酸素極の形成後、水素極触媒金属からなる平均粒径が0.1μm〜5μmの金属粒子、および前記固体電解質膜と同種のイオン伝導性を有する酸化物からなる平均粒径が1nm〜100nmの酸化物粒子を含む混合物を、前記固体電解質膜の他方の主面に配置する工程と、
    配置された前記混合物からなる層に積層して、金属多孔質体からなる水素極側集電層を配置する工程と、
    前記混合物を、不活性雰囲気または還元性雰囲気の下、前記金属多孔質体の融点よりも低く、かつ前記酸素極を形成する際の焼成温度よりも低い温度で焼成することによって水素極を形成するとともに、前記水素極に前記水素極側集電層を接合する工程と、
    前記酸素極に積層して酸素極側集電層を配置する工程と
    を具備することを特徴とする固体酸化物形電気化学セルの製造方法。
  2. 前記酸素極を形成する工程の前に、前記固体電解質膜と同種のイオン伝導性を有する酸化物からなる平均粒径が1nm〜100nmの酸化物粒子を含む材料を前記固体電解質膜の一方の主面に配置し、焼成して酸化物層を形成する工程を備え、
    前記酸素極を形成する工程において、前記酸化物層に積層して前記酸素極を形成することを特徴とする請求項1記載の固体酸化物形電気化学セルの製造方法。
  3. 酸化物からなる酸素極を形成する工程と、
    前記酸素極の一方の主面に、電子絶縁性とイオン伝導性を有する酸化物からなる平均粒径が1nm〜100nmの酸化物粒子を含む材料を配置し、焼成して固体電解質膜を形成する工程と、
    水素極触媒金属からなる平均粒径が0.1μm〜5μmの金属粒子、および前記固体電解質膜と同種のイオン伝導性を有する酸化物からなる平均粒径が1nm〜100nmの酸化物粒子を含む混合物を、前記固体電解質膜に積層して配置する工程と、
    配置された前記混合物からなる層に積層して、金属多孔質体からなる水素極側集電層を配置する工程と、
    前記混合物を、不活性雰囲気または還元性雰囲気の下、前記金属多孔質体の融点よりも低く、かつ前記酸素極を形成する際の焼成温度よりも低い温度で焼成することによって水素極を形成するとともに、前記水素極に前記水素極側集電層を接合する工程と、
    前記酸素極の他方の主面に酸素極側集電層を配置する工程と
    を具備することを特徴とする固体酸化物形電気化学セルの製造方法。
  4. 前記固体電解質膜を形成する工程の前に、前記固体電解質膜と同種のイオン伝導性を有する酸化物からなる平均粒径が1nm〜100nmの酸化物粒子を含む材料を前記酸素極の一方の主面に配置し、焼成して酸化物層を形成する工程を備え、
    前記固体電解質膜を形成する工程において、前記酸化物層に積層して前記固体電解質膜を形成することを特徴とする請求項3記載の固体酸化物形電気化学セルの製造方法。
  5. 前記混合物を焼成する工程において、前記酸素極の表面を有機材料で被覆して、前記混合物を焼成することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の固体酸化物形電気化学セルの製造方法。
  6. 前記混合物を焼成する工程において、600℃以上、かつ前記金属多孔質体の融点よりも低い温度の下、前記酸素極側に酸素を含む酸化ガスを供給し、前記水素極側に水素を含む還元ガスを供給し、固体酸化物形電気化学セルに通電しつつ前記混合物を焼成することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の固体酸化物形電気化学セルの製造方法。
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