JP2007331097A - 切削工具 - Google Patents

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Abstract

【課題】切削工具を用いてできるだけ高い材料除去率を実現できるように設計された切削工具を提供する。
【解決手段】切削工具、特にフライス工具であって、基部と、基部に接し円周側面と端面とを有するヘッド部と、を備える。基部とヘッド部は共通の中心軸を持ち、ヘッド部は円周側面に切刃11を持つ少なくとも一つのリップ4を有する。リップ4は円周側面の切刃11に隣接するチップブレーカ面15を有し、チップブレーカ面15は二つのチップブレーカ部分面16、17からなる。第1チップブレーカ部分面16は第1すくい角(γ)で配置され、第2チップブレーカ部分面17は、第2すくい角(γ)で配置される。第2すくい角(γ)は第1すくい角(γ)よりも大きい。第1チップブレーカ部分面16はアーチ18を有する。
【選択図】図3

Description

本発明は、切削工具、特にエンドミル形のフライス工具(milling tool)に関する。
一般に、エンドミルは、基部としての細長い円柱形シャンクと、この基部に隣接し円周側面と端面とを有するヘッド部とを備える。基部およびヘッド部は、通常、一体に設計されており、共通の中心軸を持つ。ヘッド部は、通常、複数のリップを備える。各リップは、円周側面と端面にそれぞれ一つの切刃を有してもよい。
エンドミルの使用範囲に応じて、特にこの種のエンドミルを用いて達成されるべき材料除去率に関して、上記エンドミルは様々に設計される。例えば、航空機産業においては、航空機部品の生産時に材料除去率の高いエンドミルが必要とされる。これは、安全上の理由から、航空機用の部品は材料の固体ブロックから一体部品として加工される必要があるからである。この種の部品を適度な時間で製造し続けるために、この部門で使用されるエンドミルには、毎分4l以上の材料除去率が必要とされる。これらのエンドミルは、同時に著しい負荷にさらされる。この理由のため、特にこの種のエンドミルの製造業者は、エンドミルの切削特性を改善しようと常に努力している。
例えば、切削中に工具に作用する負荷を低減できる可能性の一つとして、工具表面のチップ流れ特性に影響を与えるという方法がある。
例えば、DE 197 24 319 C1は、以下のような方法を開示する。幾何学的に定義されたリップを有する切削工具の切刃領域において、切刃からわずかに離れた位置に、レーザ照射によって表面構造を変化させたパターンを持つすくい面を設ける。この手法により、流出するチップの流れ速度および流れ方向に影響を与えることができる。
本発明の目的は、切削工具を用いてできるだけ高い材料除去率を実現できるように、最初に述べたタイプの切削工具を設計することにある。
本発明によると、この目的は、
a)基部と、
b)基部に隣接し円周側面と端面を有するヘッド部と、を備え、
c)基部とヘッド部が共通の中心軸を持ち、
d)ヘッド部は円周側面に切刃を持つ少なくとも一つのリップを有し、
e)リップは、円周側面の切刃に隣接するチップブレーカ面を有し、
f)チップブレーカ面は二つのチップブレーカ部分面からなり、
g)第1チップブレーカ部分面は第1すくい角で配置され、第2チップブレーカ部分面は第2すくい角で配置され、
h)第2すくい角は第1すくい角よりも大きく、
i)第1チップブレーカ部分面がアーチを有する切削工具、特にフライス工具によって達成される。
したがって、本発明によれば、相異なるすくい角を持つ二つのチップブレーカ部分面に再分割されるチップブレーカ面が切削工具に設けられる。第2チップブレーカ部分面の第2すくい角が、第1チップブレーカ部分面の第1すくい角と比べて大きくなるように選択されるという事実のために、切削動作中に第1チップブレーカ部分面のみが最初にチップと接触するという効果が得られる。特に、第1チップブレーカ部分面がアーチを有する場合、第1チップブレーカ部分面は、事実上チップに対して「スキージャンプヒル」のようなものとして作用し、その結果、チップ空間における飛翔過程が終わるまでチップが第2チップブレーカ部分面に到達することがない。その結果、切削圧力が低下するが、これはチップの形成に必要となるエネルギーが低下するからである。切削圧力が低下する結果、切削工具を用いた材料除去率をより高くすることができる。このため、この種の切削工具をさらに効率的に使用することができる。
本発明の一実施形態によると、リップは円周側面に切刃を備えるだけでなく、ヘッド部の端面にも切刃を備える。リップの円周側面の切刃は、リップの端面の切刃と合流する。このため、切削工具は円周方向のみならず端面でも切削可能である。
本発明の一実施形態によると、この場合、端面の切刃は第2チップブレーカ部分面と隣接している。したがって、第1チップブレーカ部分面は、本質的に円周側面の切刃のみに割り当てられる。一方、一つのチップブレーカ面のみ、すなわち第2チップブレーカ部分面は、端面の切刃に割り当てられる。
本発明の変形例によると、第1すくい角は、0°と20°の間、特に5°と20°の間、好ましくは17°である。第2すくい角は、10°と30°の間、好ましくは24°である。
本発明の一実施形態によると、第1チップブレーカ部分面は、中心軸方向で半径方向に観察したとき0.2mmから1.5mmの幅を有している。第1チップブレーカ部分面は、「スキージャンプヒル」という作用のために、チップブレーカ溝として指定される。第2チップブレーカ部分面も、チップの誘導を改善するためにアーチ形をしていてもよい。
本発明のさらに別の変形例によると、円周側面のリップは三つのフランクを備えており、各フランクは円周側面の切削面に対して逃げ角を有している。第1フランクの第1逃げ角は、0.8°と1.2°の間、好ましくは1°である。第2フランクの第2逃げ角は、10°と18°の間、好ましくは12°である。そして、第3フランクの第3逃げ角は、20°と25°の間、好ましくは23°である。円周側面に三つのフランクを有するこの構成によって、切削動作の間、減衰効果をもちつつ切削工具と工作物の間の摩擦を全体として低減し、その結果、切削工具の動作、好ましくは中心軸周りの回転動作がより滑らかになり、したがって、切削中に生成される表面の品質が向上する。
本発明の一実施形態によると、円周側面の第1フランクの円周方向の幅は、切削工具の全直径に依存している。切削工具は、少なくとも一部が本質的に円柱形の構造であり、第1フランクの幅は切削工具の直径が増加するにつれて増加する。切削工具の好ましい実施形態によると、切削工具の直径は6mmと30mmの間であり、この場合、フランクの幅は0.03mmと0.16mmの間で変化してもよい。第1フランクの選択可能な幅のパラメータ範囲は、それぞれ、様々な直径を有する切削工具の平板形態に割り当てられる。
これとは別に、円周側面のリップの三つのフランクは本質的に平面構造であるが、わずかに凹んだカーブ状であってもよい。
切削工具の別の構成によると、端面のリップは二つの末端フランクを有しており、各末端フランクは端面の切削面で末端逃げ角を囲んでいる。第1末端フランクの第1末端逃げ角は7°と15°の間、好ましくは12°であり、第2末端フランクの第2末端逃げ角は15°と30°の間であり、好ましくは23°である。
これとは別に、切削工具のリップの円周側面の切刃は、半径でリップの端面の切刃と一体になる。この半径は、通常1.5mmと5mmの間であり、好ましくは4mmである。しかしながら、概して、半径は工具の全直径に合わせられる。
本発明の一実施形態によると、リップの円周側面の切刃は、半径を持って端面の切刃と合流するだけでなく、円周側面のフランクも端面のフランクと合流する。一方、円周側面の第2フランクは第1末端フランクと合流し、円周側面の第3フランクは第2末端フランクと合流する。リップの円周側面の第1フランクは、好ましくは本質的に半径の2/3を過ぎた後に、半径方向に突出する。
本発明の変形例によると、切削工具は、本質的に同一の構造である複数のリップ、好ましくは4つ、5つまたは6つのリップを有し、リップは中心軸の周りに配置される。この場合、リップの円周側面の切刃は、本質的に円柱の外側面上に位置する。
本発明の好ましい実施形態によると、中心軸に対して少なくとも二つの異なるピッチ角で互いに配置された複数のリップが配置される。したがって、リップは中心軸の周りに一様に配置されるわけではない。連続するリップ間のピッチ角は60°と120°の間である。切削工具の実施形態によると、切削工具は4つのリップを有しており、第1リップと第2リップの間のピッチ角、および第3リップと第4リップの間のピッチ角はいずれも80°であり、第2リップと第3リップの間のピッチ角、および第4リップと第1リップの間のピッチ角はいずれも100°である。しかしながら、第1リップと第2リップの間のピッチ角、および第3リップと第4リップの間のピッチ角はいずれも60°であってもよく、第2リップと第3リップの間のピッチ角、および第4リップと第1リップの間のピッチ角はいずれも120°であってもよい。
本発明の一実施形態によると、リップの円周側面の切刃はらせん状に延びる。この場合、リップのらせん角は一定であってもよく、特に20°と50°の間であり、好ましくは30°である。しかしながら、らせんは必ずしも一定である必要があるわけではなく、端面に向かう中心軸Mの軸方向に増加してもよい。したがって、端面から離れているリップの領域においては0°から25°のらせん角で始まり、端面においては30°と50°の間のらせん角に達するように、端面に向かう中心軸に対してらせん角が増加してもよい。
本発明の一実施形態によると、チップを除去するためのチップ空間が切削工具の各リップに割り当てられており、チップ空間の容量は、基部に向かう中心軸の軸方向に減少する。本発明の変形例によると、チップ空間は本質的に円錐形の設計であり、この円錐は中心軸に対して0°より大きく最大10°の範囲の角度を持ち、好ましくは5°と6°の間である。リップの円周側面の切刃がらせん状に延びる場合、円錐状に設計されたチップ空間もまたらせん状に延びる。上述したように、チップ空間の円錐構成の結果として、チップ空間の容量は、基部に向かう中心軸の軸方向に減少する。
本発明の好ましい変形例では、チップを除去するためのチップ空間が少なくとも一つのリップまたは各リップに割り当てられる。切削工具は、少なくとも一つのチップ空間の表面の少なくとも一部に表面粗さの小さい部分を有している。この部分は、除去されたチップと接触することができる。平均表面粗さ(算術平均)Raは0.03μmと0.10μmの間で選択され、および/または最高最低高さ(十点平均粗さ)Rzは0.10μmと0.35μmの間で選択され、および/または最大高さRmaxは0.20μmと0.50μmの間で選択される。この表面粗さの小さい表面、すなわち滑らかな表面は、小さい表面粗さを持つチップ空間の表面または表面の対応する部分によって好ましくは製造される。小さい表面粗さは、好ましくは対応する目の細かい研削工具または研磨工具を用いて研削、研磨、再研削または再研磨することによって製造される。したがって、チップ空間すなわち溝の対応する表面は、さらに滑らかにするために再加工される。一方で、切削工具の他の領域、例えば特にリップは再加工されない。チップ空間のより滑らかな表面領域すなわち再加工された表面領域は、すくい面の反対側のチップ空間内の表面領域にあることが好ましい。言い換えると、隣接リップのチップ空間と対面するリップ背面に位置している。
少なくとも一つのリップの切刃、好ましくは各リップの切刃は、少なくとも一部に波形または波状の歯、または荒削り用の歯を有している。荒削りを目的として設けられるこの実施形態では、二つのチップブレーカ部分面を有するチップブレーカ面の設計が、荒削り用の歯または波状のリップを安定化させる役割も持つ。
本発明の構成によると、それぞれリップの切刃を有する二つの切削領域が、それぞれ直線上の端面に位置し、第1直線上にある二つの切削領域は互いに一つとなり、第1直線と交差する第2直線上にある二つの切削領域は、中心軸の領域にそれぞれ凹みを有している。この凹みは第1直線の方向で半径方向外側に延びてそれぞれのチップ空間と合流する。このような凹みは二つの本質的にV字形の部分を有する。したがって、4つのリップを有する切削工具には、二つの本質的にV字形の部分を持つこのような凹みが二つあることになる。
本発明の変形例によると、切削はリップにクーラントを供給するための少なくとも一つの通路を備えており、この通路は、凹みとリップの第2末端フランクの領域にその開口部を有しており、端面の切削領域はもう一方の切削領域とは合流しない。4つのリップを有する切削工具は二つの通路を備えることが好ましく、通路の開口部は互いに反対側に180°で配置される。冷却通路の開口部をこのように配置することで、凹みを通ってクーラントがリップに到達しやすくなる。加えて、集積したチップを良好に除去することができる。
本発明の変形例によると、切削工具は好ましくは円環カッターである。
本発明の例示的な実施形態は、添付の概略図に示されている。
図1は、エンドミル形の切削工具、ここでは円環カッター1形の切削工具を示す。円環カッター1は、カッター1のシャンク(柄)を構成する基部2を備える。シャンク2に隣接して円環カッター1のヘッド部3がある。ヘッド部3は、円環カッターのリップを有する。
この例では、円環カッター1は、少なくともその一部が本質的に円柱形状をなしており、中心軸Mを有する。円環カッター1は、中心軸Mの周りに回転可能である。この例示的な実施形態では、円環カッター1は4つのリップ4〜7を備えており、これらリップは中心軸Mの周りに配置される。各リップ4〜7は、端面に切削領域8を、円周側面に切削領域9を有している。各リップ4〜7は、端面の切削領域8には切刃10を有し、円周側面の切削領域9には切刃11を持つ。この例示的な実施形態では、円周側面の切削領域9、特にリップ4〜7の円周側面の切刃11は、らせん状に延びている。切刃11は、本質的に、円柱形の円環カッター1の外側面に配置されている。各リップ4〜7のらせん角εは、本例示的な実施形態では30°である。ここで、らせん角εは中心軸Mに対して特定される角度であり、図1に示されている。しかしながら、円環カッターの寸法に応じて、らせん角は20°と50°の間であってもよい。本例示的な実施形態においては、リップ4〜7のらせんは変化しないことが好ましい。しかしながら、円環カッター1の端面へ向かう中心軸Mの軸方向でらせんが増加してもよい。
本例示的な実施形態では、中心軸Mの周りに配置されたリップ4〜7は、中心軸Mの周りに不均一に配置されている。すなわち、いずれも中心軸に対して同一の間隔角度である。
図2は、リップ4〜7の領域における円環カッター1のヘッド部3の断面図を簡略化して示す。とりわけ図2から分かるように、リップ4〜7の間の角度は、リップ4〜7の円周側面の切刃11の位置により変わる。なお、図2の切刃のそれぞれの位置に参照番号が付されている。リップ4の円周側面の切刃11とリップ5の円周側面の切刃11との間のピッチ角、および、リップ6の円周側面の切刃11とリップ7の円周側面の切刃11との間のピッチ角が、それぞれψである一方で、リップ5の円周側面の切刃11とリップ6の円周側面の切刃11、および、リップ7の円周側面の切刃11とリップ4の円周側面の切刃11は、それぞれピッチ角ψを含む。本例示的な実施形態では、ピッチ角ψは80°であり、ピッチ角ψは100°である。しかしながら、ピッチ角ψ、ψは他の値をとってもよい。例えば、ピッチ角ψが60°でありピッチ角ψが120°であってもよい。角度ψ、ψが相対的に離れた位置にあることは、言及する価値がある。二つの連続するリップ間のピッチ角は、60°から120°の間であることが好ましい。本例示的な実施形態では、ピッチ角の指定は、各リップの端面の対応する切刃10にも適用される。図5から分かるように、切刃10は、円周側面の切刃11に属する。
特に円周方向におけるリップの幾何学的関係について、図3を参照して説明する。図3は、図2のリップを拡大して示す。本例示的な実施形態では、図3では、円環カッター1の全てのリップの一例として、円周側面上のリップ4を拡大している。円周側面の切削領域9において、リップ4は円周側面の切刃11を有する。切刃11と直接に隣接して第1フランク(逃げ面)12がある。第1フランク12は、Sで示す切削面に対して第1逃げ角をもって配置される。切削面Sは、切刃11に対する切削方向における接平面である。第1フランク12の第1逃げ角αは0.8°と1.2°の間であり、好ましくは1°である。第1フランク12に隣接して第2フランク13がある。第2フランク13は、切削面Sに対して測定される第2逃げ角αをもって配置される。第2フランク13の第2逃げ角αは10°と18°の間であり、好ましくは12°である。最後に、第2フランク13に隣接して第3フランク14がある。第3フランク14は、切削面Sに対して同じように測定される第3逃げ角αをもって配置される。第3フランク14の第3逃げ角αは20°と25°の間であり、好ましくは23°である。第1フランク12の円周方向における幅Bは、円柱形の円環カッター1の直径Dによって決まる。幅Bは、支持斜面(supporting bevel)としても指定される。円環カッター1の直径Dが増加するにつれて、第1フランク12の幅Bも増加する。円環カッターは、6mmから30mmの直径Dを持つように設計されることが好ましい。この場合、円周方向における第1フランク12の幅Bは、0.03mmと0.16mmの間で変化しうる。本例示的な実施形態では、三つのフランク12〜14は平面のフランクとして示されている。しかしながら、三つのフランクは必ずしも平面である必要はなく、わずかにカーブしていてもよい。特に、三つのフランクは、わずかに凹んだ曲面として設計されてもよい。
全てのリップ4〜7の例示として、リップ4の三つのフランク12〜14が図4に再び示されている。図4は、円環カッター1のヘッド部3のリップ4〜7の斜視図である。
図3からも分かるように、リップ4の円周方向における切削領域9は、一つのチップブレーカ面15を有する。このチップブレーカ面15は、二つのチップブレーカ部分面16、17を備える。第1チップブレーカ部分面16は、切刃11を通って延びる平面であり切削面Sに対する法平面であるNに対して、第1すくい角γで配置される。第2チップブレーカ部分面17は、法平面Nに対して第2すくい角γで配置される。第1チップブレーカ部分面16の切刃11に隣接する第1すくい角γは、最初の進路に対して指定される角度である。第1すくい角γは5°から20°の間であり、好ましくは17°である。第2チップブレーカ部分面17の第2すくい角γは、最初の進路に対して指定される角度であり、第1チップブレーカ部分面16に隣接している。第2すくい角γは10°と30°の間であり、好ましくは24°である。円環カッター1の実施形態に応じて、第2すくい角γは常に第1すくい角γよりも大きくなるように選択されるが、この理由は、図3から分かるように、切削プロセス中に生じるチップに対して「スキージャンプヒル」のように作用し、チップがチップブレーカ部分面16に沿って滑るようにするためである。この効果を強めるために、第1チップブレーカ部分面16はアーチ18を有する。この例示的な実施形態では、チップブレーカ部分面17もアーチ19を有する。特に、チップブレーカ部分面16(チップブレーカ溝とも表される)の実施形態のおかげで、切削プロセス中に生じたチップはまず最初に第1チップブレーカ部分面16とのみ接触し、特にアーチ18と角度γ、γの選択のために、当初は第2チップブレーカ部分面17から離れた状態を維持する。しかしながら、それにもかかわらず、これは形成された直後のチップが第2チップブレーカ部分面17と接触する可能性を除外するものではない。このような設計の利点は、チップの形成に必要となるエネルギーが少なくて済むため、切削動作中の切削圧力が低減されることである。
これとは別に、チップブレーカ部分面16は、中心軸Mに向かう半径方向に0.2mmから1.5mmの間の幅Cを持つ。
特に図1ないし図4から分かるように、リップ4〜7の円周側面の各切削領域9は、リップ4〜7の端面の各切削領域8と合流する(merge into)。特に、リップ4〜7の円周側面の切刃11は、リップ4〜7の端面の切刃10と一つになる。図4に参照番号を用いて示すように、各リップ4〜7は、端面の切削領域8に、切刃10の他に第1末端フランク20と第2末端フランク21とを備える。第1末端フランク20は、それぞれの端面の切刃10と隣接しており、第1逃げ角βを持つ。第1逃げ角βは、端面の切削面(明確には図示せず)に対して7°と15°の間の角度をとり、好ましくは12°である。
第1末端フランク20に隣接する第2末端フランク21は、第2末端逃げ角β2を含む。第2末端逃げ角β2は、端面の切削面(明確には図示せず)に対して15°と30°の間の角度をとり、好ましくは23°である。
上述したように、円周側面の切削領域9は、端面の切削領域8と半径Rをもって合流する。具体的には、これは円周側面の切刃11と端面の切刃10とに当てはまる。通常、半径Rは1.5mmと5mmの間であり、好ましくは4mmである。特に図4から分かるように、好ましくは半径Rの本質的に2/3の後に、各リップ4〜7の円周側面の第1フランク12は半径Rを有して突出する。したがって、円周側面の第2フランク13は、リップ4〜7の端面の第1末端フランク20と本質的に合流する。これと対応して、円周側面の第3フランク14は、端面の第2末端フランク21と合流する。
リップ7を参照する図4から同様に分かるように、リップ4〜7の一例として、第1チップブレーカ部分面16は円周側面上にのみ存在し、各リップ4〜7の端面上には存在しない。各リップ4〜7の端面上の切刃10は、第2チップブレーカ部分面17とのみ直接に隣接する。
加えて、リップ4〜7はそれぞれ、切削中に生じるチップを除去するためのチップ空間22を有する。この場合、各チップ空間22の容量は、シャンク2に向かう中心軸Mの軸方向に減少することが好ましい。好ましくは、リップ4〜7の各チップ空間22は、本質的に円錐形状である。この円錐は、中心軸Mに対して0°より大きく最大10°までの角度δ(好ましくは5°と6°の間)を有する。この結果として、チップ空間22の容積の減少が達成される。チップ空間22のサイズを削減することで、ヘッド部3、具体的にはリップ4〜7の領域における円環カッター1を、シャンク2に向かう中心軸Mの方向でより堅固な構造とすることができ、その結果、切削中の軸歪みを低減することができる。
図1および図4において符号25で指定された部分である各チップ空間22の表面は、チップブレーカ面15、16、17および関連する切刃11の反対側に位置するか、またはチップブレーカ面15、16、17および前記切刃とチップ空間22の他の側から向かい合う。この部分25は、再研磨(repolishing)または再研削(regrinding)することによって滑らかにされ、チップ空間22の残りの部分よりも表面荒さの低い部分がそこに存在するようにする。チップ空間22の表面のこの部分25における平均表面粗さ(average surface roughness)(算術平均粗さ)Raは、0.03μmと0.10μmの間に設定される。および/または、平均最高最低高さ(averaged peak-to-valley height)(十点平均粗さ)Rzは、0.10μmと0.35μmの間に設定される。および/または、最大高さ(maximum peak-to-valley height)Rmaxは、0.20μmと0.50μmの間に設定される。この手法により、チップ空間22におけるチップの除去を改善し、その過程で生じる摩擦力を低減する。
円環カッター1の端面の構成を、円環カッター1の平面図として図5に示す。図5から、リップの端面の切刃10を有する二つの切削領域8が、それぞれ、直線G1、G2上の端面の上に位置することが理解されよう。本例示的な実施形態の場合、リップ4および6の端面の切削領域8は、直線G1の上に位置しており、互いに合流する。リップ5および7の切削領域8は、直線G1と交差する直線G2の上に位置する。リップ5の端面上の切削領域8は、リップ7の端面上の切削領域8と合流しない。反対に、リップ5および7の切削領域8は、直線G1の方向に延びる一様な凹みを有しており、各凹みは、二つの本質的にV字形の部分30、31を備える。この場合、凹みの部分30、31は、それぞれのチップ空間22と合流する。同様のV字形の領域32は、リップ4および6において直線G2の方向にそれぞれ部分30から分岐する。領域32は、それぞれのチップ空間22の内部に同様に開口する。
明瞭さのために図5のみから分かるように、円環カッター1は、リップ4〜7にクーラントを供給するための二つの通路40、41を備える。通路40は、部分31の領域とリップ5の第2末端フランク21の領域に開口部を有しており、通路41は、リップ7の凹みの部分31とリップ7の第2末端フランク21に開口部を有している。切削プロセスの間リップ4〜7を冷却するためのクーラントは、凹み30から32を通り各リップ4〜7へと通過することができ、加えて、切削動作中に集積するチップを除去する役割を提供することができる。さらに、通路40、41の開口部は、互いに反対側に180°で位置する。円環カッター1を通る通路40、41の方向は明確に示されていないが、リップ4〜7のらせんの向きに適応させるために、ヘッド領域3において、それと対応してらせん状にされることが好ましい。
一例として円環カッターを用いるものとして本発明を説明した。しかしながら、本発明は円環カッターまたは他のフライス(milling)工具に限定されるわけではない。それどころか、本発明にしたがって他の切削工具も設計することができる。
これとは別に、上述の寸法や角度の指定は例示としてのみ理解されるべきである。すなわち、本発明の範囲から逸脱しない範囲で、明示的に指定されていない寸法、角度、および公差も使用可能である。
この例では、切削工具が4つのリップを持つものとして説明されているが、これは必ずしも必要であるわけではない。したがって、5つ、6つまたはそれ以上のリップを有するように工具を設計することも可能である。同時に、リップは必ずしも端面の切刃を同時に備えている必要があるわけではない。それどころか、円周側面にのみ切刃が設けられていてもよい。
エンドミルの斜視図である。 図1のエンドミルの断面図である。 図2に例示したリップの拡大図である。 図1のエンドミルのヘッド部の斜視図である。 図1のエンドミルの端面の平面図である。
符号の説明
1 円環カッター、 2 シャンク、 3 ヘッド部、 4〜7 リップ、 8 端面の切削領域、 9 円周切削領域、 10 端面の切刃、 11 円周側面の切刃、 12 第1フランク(支持斜面)、 13 第2フランク(側面)、 14 第3フランク、 15 チップブレーカ面、 16 第1チップブレーカ部分面(チップブレーカ溝)、 17 第2チップブレーカ部分面、 18 アーチ、 19 アーチ、 20 第1末端フランク、 21 第2末端フランク、 22 チップ空間、 25 部分、 30 凹み部分、 31 凹み部分、 32 凹み、 40、41 クーラント通路、 M 中心軸、 ε らせん角、 D 工具直径、 α 第1逃げ角、 α 第2逃げ角、 α 第3逃げ角、 β 第1末端逃げ角、 β 第2末端逃げ角、 γ 第1すくい角、 γ 第2すくい角、 ψ 第1ピッチ角、 ψ 第2ピッチ角、 δ 円錐角、 S 切削面、 N 法平面、 B 第1フランクの幅、 C 第1チップブレーカ部分面の幅、 R 半径、 G1 第1直線、 G2 第2直線。

Claims (20)

  1. 切削工具(1)、特にフライス工具であって、
    a)基部(2)と、
    b)基部(2)に隣接し円周側面と端面を有するヘッド部(3)と、を備え、
    c)基部(2)とヘッド部(3)が共通の中心軸(M)を持ち、
    d)ヘッド部(3)は円周側面に切刃(11)を持つ少なくとも一つのリップ(4〜7)を有し、
    e)リップ(4〜7)は、円周側面の切刃(11)に隣接するチップブレーカ面(15)を有し、
    f)チップブレーカ面(15)は二つのチップブレーカ部分面(16、17)からなり、
    g)第1チップブレーカ部分面(16)は第1すくい角(γ)で配置され、第2チップブレーカ部分面(17)は第2すくい角(γ)で配置され、
    h)第2すくい角(γ)は第1すくい角(γ)よりも大きく、
    i)第1チップブレーカ部分面(16)がアーチ(18)を有する
    ことを特徴とする切削工具(1)。
  2. リップ(4〜7)が端面に切刃(10)を有し、リップ(4〜7)の円周側面の切刃(11)が、好ましくはリップ(4〜7)の端面の切刃(10)と合流するか、および/または第2チップブレーカ部分面(17)に隣接する端面の切刃(10)と合流することを特徴とする請求項1に記載の切削工具。
  3. 第1すくい角(γ)が、0°と20°の間、好ましくは5°と20°の間の範囲から選択され、好ましくは約17°であることを特徴とする請求項1または2に記載の切削工具。
  4. 第2すくい角(γ)が10°と30°の間であり、好ましくは24°であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の切削工具。
  5. 第1チップブレーカ部分面(16)が、中心軸Mの方向において半径方向に0.2mmと1.5mmの間の幅Cを有することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の切削工具。
  6. 第2チップブレーカ表部分面(17)がアーチ(19)を有することを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一項に記載の切削工具。
  7. 円周側面のリップ(4〜7)が三つのフランク(12、13、14)を備え、各フランクが円周側面の切削面Sに対して逃げ角(α、α、α)を有しており、
    第1フランク(12)の第1逃げ角(α)は、好ましくは0.8°と1.2°の間であり、好ましくは1°であり、および/または
    第2フランク(13)の第2逃げ角(α)は、好ましくは10°と18°の間であり、好ましくは12°であり、および/または
    第3フランク(14)の第3逃げ角(α)は、好ましくは20°と25°の間であり、好ましくは23°であり、および/または
    円周方向における第1フランク(12)の幅Bが、好ましくは切削工具(1)の直径Dによって決まり、切削工具(1)の直径Dが増加するにつれて増加し、切削工具(1)の直径Dが好ましくは6mmと30mmの間であり、第1フランク(12)の幅Bが好ましくは0.03mmと0.16mmの間であり、および/または
    前記三つのフランク(12、13、14)が、好ましくは本質的に平面であるか、またはわずかに凹んだカーブ曲面に設計されている
    ことを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一項に記載の切削工具。
  8. 端面上のリップ(4〜7)が二つの末端フランク(20、21)を有し、各末端フランクは前記端面の切削面に対して末端逃げ角(β、β)を有し、
    第1末端フランク(20)の第1末端逃げ角(β)が、好ましくは7°と15°の間であり、好ましくは12°であり、および/または
    第2末端フランク(21)の第2末端逃げ角(β)が、好ましくは15°と30°の間であり、好ましくは23°であることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか一項に記載の切削工具。
  9. リップ(4〜7)の円周側面の切刃(11)が、半径Rをもってリップ(4〜7)の端面の切刃(10)と合流し、半径Rが好ましくは1.5mmと5mmの間であり、好ましくは4mmであり、および/または
    リップ(4〜7)の円周側面の第1フランク(12)が、好ましくは半径Rの本質的に2/3の後で好ましくは半径Rで突出することを特徴とする請求項2または請求項2を引用する請求項のいずれかに記載の切削工具。
  10. 本質的に同一の構造である複数のリップ、好ましくは4つ、5つ、または6つのリップ(4〜7)を有し、リップが中心軸Mの周りに配置されていることを特徴とする請求項1ないし9のいずれか一項に記載の切削工具。
  11. チップ(4〜7)の円周側面の切刃(11)が本質的に円柱の外側面上にあることを特徴とする請求項1ないし10のいずれか一項に記載の切削工具。
  12. 中心軸(M)に対して少なくとも二つの異なるピッチ角(ψ、ψ)で互いに配置された複数のリップ(4〜7)が設けられており、連続するリップ(4〜7)間のピッチ角(ψ、ψ)が好ましくは60°と120°の間であり、
    当該切削工具は特に4つのリップ(4〜7)を有し、第1リップと第2リップ(4,5)の間のピッチ角(ψ)、および第3リップと第4リップ(6,7)の間のピッチ角(ψ)が好ましくはいずれも80°であり、第2リップと第3リップ(5,6)の間のピッチ角(ψ)、および第4リップと第1リップ(7,4)の間のピッチ角(ψ)が好ましくはいずれも100°であり、または、
    第1リップと第2リップの間のピッチ角(ψ)、および第3リップと第4リップの間のピッチ角(ψ)がいずれも60°であり、第2リップと第3リップの間のピッチ角(ψ)、および第4リップと第1リップの間のピッチ角(ψ)がいずれも120°である
    ことを特徴とする請求項1ないし11のいずれか一項に記載の切削工具。
  13. リップ(4〜7)の円周側面の切刃(11)がらせん状に延びることを特徴とする請求項1ないし12のいずれか一項に記載の切削工具。
  14. リップ(4〜7)のらせん角(ε)が20°と50°の間、好ましくは30°であり、および/または、
    端面から離れているリップの領域においては0°から25°のらせん角で始まり、端面においては30°と45°の間のらせん角に達するように、端面に向かう中心軸(M)の軸方向にらせん角が増加することを特徴とする請求項13に記載の切削工具。
  15. チップを除去するためのチップ空間(22)がリップ(4〜7)に与えられ、チップ空間(22)の容量が好ましくは基部(2)に向かう中心軸(M)の軸方向に減少し、および/または
    チップ空間(22)が本質的に円錐形の設計であり、この円錐は中心軸(M)に対して角度δを有し、角度δは0°より大きく最大10°であり、好ましくは5°と6°の間であることを特徴とする請求項1ないし14のいずれか一項に記載の切削工具。
  16. それぞれリップ(4〜7)の切刃(10)を有する二つの切削領域(8)が、それぞれ直線(G1、G2)上の端面に位置し、第1直線(G1)上にある二つの切削領域(8)は互いに一つとなり、
    第1直線(G1)と交差する第2直線(G2)上にある二つの切削領域(8)は、中心軸(M)の領域にそれぞれ凹み(30、31)を有しており、この凹みは第1直線(G1)の方向で半径方向外側に延びてそれぞれのチップ空間(22)と合流し、凹みは好ましくは二つの本質的にV字形の部分(30、31)を有することを特徴とする請求項1ないし15のいずれか一項に記載の切削工具。
  17. リップ(4〜7)にクーラントを供給する少なくとも一つの通路(40,41)を備え、通路(40、41)は、凹み(31)とリップ(4〜7)の第2末端フランク(21)の領域にその開口部を有し、端面の切削領域(8)はもう一方の切削領域(8)とは合流せず、二つの通路(40、41)には好ましくは互いに反対側に180°で配置された開口部が設けられていることを特徴とする請求項16に記載の切削工具。
  18. 円環カッター(1)であることを特徴とする請求項1ないし17のいずれか一項に記載の切削工具。
  19. 少なくとも一つのリップの少なくとも一つの切刃が、波形であるかギザギザ形状であるかまたは荒削り用の歯を有することを特徴とする請求項1ないし18のいずれか一項に記載の切削工具。
  20. チップを除去するためのチップ空間(22)が少なくとも一つのリップまたは各リップ(4〜7)に与えられており、
    当該切削工具は、少なくとも一つのチップ空間の表面の少なくとも一部に表面粗さの小さい部分を有しており、この部分は除去されたチップと接触することができ、および/またはこの部分がチップ空間のチップブレーカ面の反対側にあるかまたはチップブレーカ面と対面しており、および/またはこの部分が隣接リップのチップ空間と対面するリップ背面に配置されており、
    平均表面粗さRaが0.03μmと0.10μmの間で選択され、および/または平均最高最低高さRzが0.10μmと0.35μmの間で選択され、および/または最大高さRmaxが0.20μmと0.50μmの間で選択され、
    チップ空間内の表面粗さの小さい表面または表面の各部分が、好ましくは対応する目の細かい研削工具または研磨工具を用いて研削、研磨、再研削または再研磨することによって製造されることを特徴とする請求項1ないし19のいずれか一項に記載の切削工具。
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