JP2007330036A - 振動体、圧電アクチュエータ、電子機器、および振動体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】圧電素子30A,30Bの体表面部35には、複数の電極パターン311〜315が形成されるとともにこれら電極311〜315のうち互いに導通して同電位とすべきものを電気的に接続する導通パターン411〜419が圧電素子30A,30Bの体表面部35に形成されている。導通パターン411〜419は、常温で導電性粒子を含有した液状物をインクとするインクジェット法により、当該インクを常温より高い温度で乾燥固化させることにより導電性粒子を相互接触させて形成されている。
【選択図】図6
Description
また、特許文献1でもそうであるように、圧電素子表面の電極が複数に分割されている場合は、落下、振動によりオーバーハング部が撓んで他の電極に短絡しないように、その間隔を大きくする必要がある。
このように、補強板の片面側の圧電素子だけ見ても、圧電アクチュエータが厚くなる要因があるところ、特許文献1のように2枚の圧電素子表面の電極をそれぞれ導通させる場合は片側の実装構造に対して2倍の厚みが必要となるため、圧電アクチュエータ全体ではかなり嵩張ってしまう。圧電アクチュエータは、他のモータなどと比べてその厚みや長さなどの寸法に対して大きな駆動力が得られることから、小型の電子機器に搭載されることが多く、機器の小型化に伴い、今後一層の小型化が望まれている。
このような厚み寸法の問題に加えて、リード基板と圧電素子との間の所定の間隔を保持しながらオーバーハング部を圧電素子表面の電極に接合する組立作業は煩雑という問題もある。さらに、このようなリード基板を保持するスペーサやピンなどの部品が必要となり、部品点数が多くなる点でも、圧電アクチュエータ製造における組立作業が煩雑であり、またコストアップに繋がる。
そのうえ、振動に影響しない程度のワイヤ993の細さでは、その位置が非常に定まり難く、作業ばらつきが許容される余裕ある間隔設定が必要となるから、厚みはさらに増大する。
なお、圧電素子表面の電極が複数に分割されている場合に、落下、振動によりワイヤが撓んで他の電極に短絡しないようにその間隔を大きくする必要があったり、2枚の圧電素子を備える場合は厚みが2倍となるのはオーバーハング部の場合と同様である。
ここで、液状物を用いることから、従来実現し得なかった微細な導通パターンの形成が可能となり、細密配線が可能となるから、小型化・薄型化を一層促進できる。
また、液状物を圧電素子の外周部で乾燥固化させるという形成手段により、導通部の位置が定まらないということがなく、導通部は精密にパターニングされる。さらに、導通部の組み立てが不要であるから、製造が極めて容易となる。またさらに、このように圧電素子に直接導通部を形成しているので、リード基板が不要であり、基板を保持する構造も不要であることから、一層、製造容易となる。そのうえ、基板コストが削減でき、コストダウンもできる。
そして、配線、組み立てに起因して信頼性が低下するおそれもない。
なお、圧電素子の用途は、特に限定されず、発振子、フィルタ、およびトランスなどの電子部品や、物品寸法形状等の非接触測定装置、物品変位の測定装置、生体の診断装置、および流量計などの情報機器や、加工機械、治療器、および圧電アクチュエータなどの動力装置などとして広く利用できる。
また、導通部を形成する導通性粒子としては、Ag,Au,Cuなどを例示できる。
ここで、液状物とは、常温において、導電性粒子分散媒すなわち媒質に導電性粒子が分散された状態にあるものをいう。この液状物には、粒径数μm程度のAg等の導電性粒子がエポキシ樹脂等を分散剤として水等の媒質に分散された状態のゲルやペースト状のものも含まれる。また、分散剤などを用いることにより、常温では数nm程度の非常に微細な超微粒子が高い金属含有量で分散したナノインクも液状物に含まれる。つまり、圧電素子の体表面部に吐出、塗布、噴出、滴下等が可能な程度の流動性を有するものであれば、本発明の液状物として用いることができる。なお、以下において、「液状物」はこれと同様の意味内容である。
さらに、液状物を設ける方法としては、後述するインクジェット法のほか、タンポ(パット)印刷、スクリーン印刷、ディスペンサによる塗布などを例示できる。
またさらに、振動体は、圧電素子を保持する補強部材を備えることが好ましく、補強板などの表裏両面にそれぞれ圧電素子が接合されることがより好ましい。このように圧電素子が補強板の両面に設けられることで振動体が安定的に振動するうえ、前述の導通部により、1つ1つの圧電素子における厚みが抑えられていることで振動体の厚みを表裏両方で薄くできるので、前述した効果を大きくできる。
この発明によれば、電極が形成されていない圧電素子の側面部分を経由して同電位電極が互いに導通されるため、絶縁手段を不要にでき、圧電素子の厚みをさらに薄くできるとともに製造をさらに容易化できる。また、絶縁手段を設けないことでエネルギ効率もより良好にできる。
なお、インクジェット法により導通部が形成される場合、インクジェット法は被噴射面に非接触の方式であるため、圧電素子の平面と側面との間の角部や、矩形状とされた圧電素子の側面の角部や、円形や円環状とされた圧電素子の曲面状の側面にも、他の印刷手段などと比べると導通部を容易に形成できる。
「同一面導通部」は、同一面内電極と略同一面に配置されている。なお、同一面導通部の一部が同一面内電極と略同一面に配置されていてもよい。
なお、絶縁層の形成に関しても、後述するインクジェット法が好適であり、この場合のインクとして使用できる絶縁体としては、エポキシ系絶縁樹脂を例示できる。
なお、凹部の形成手段および凹部の態様は任意であるが、例えばフォトリソグラフィーにおけるエッチングなどにより、電極膜の厚みにおいてこのような凹部を容易にかつ精密に刻設できる。そのほか、エンドミル、レーザー、超音波カッターなどで凹部を形成してもよい。
なお、この凸部は、ディスペンサなどを用いて絶縁性の接着剤を塗布することによって形成することもでき、このように接着剤を使用することで圧電素子外周部や電極膜との密着性が向上し、圧電素子外周部への凸部の一体性が高まる。この場合、紫外線硬化型や熱硬化型などの接着剤の使用によって接着剤を迅速に固化させれば、凸部の位置・形状精度などを良好にできる。なお、熱影響を回避するために紫外線硬化型接着剤の使用が好ましい。
また、絶縁層と凸部とを同様の方法で形成できるので、製造をより容易化できる。
なお、このポストについても、液状物を用いてインクジェット法などで形成することができる。
このような振動体の製造に際しては、複数設けられた前記導通部のうち1つ以上の導通部と1つ以上の導通部との間において、その電気抵抗が互いに同一となるように、前記各導通部の膜厚および長さがそれぞれ調整されることが好ましい。
ここで、導通部は液状物を用いて極めて薄く形成され電気抵抗が無視できないことから、電気抵抗は低く設定することが好ましい。なお、圧電素子の導通に関し細密化、微細化が進むと導通部パターンは長く、細くなるため、電気抵抗の検討がますます重要となる。
この発明によれば、前述の振動体を備えたことにより、前述と同様の作用および効果を享受できる。
なお、圧電アクチュエータの駆動方式は問わず、振動により被駆動体を駆動するタイプ(超音波モータ)としては振動の節および腹の位置が不変の定在波駆動方式や、節および腹の位置が遷移する進行波駆動方式等を適宜採用できる。また、分極方向および電圧印加の方向等も任意に構成できる。
なお、被駆動体としては、回転駆動されるロータ、直線駆動されるリニア駆動体などを採用でき、被駆動体の駆動方向は任意に構成できる。
ここで、本発明の電子機器としては、カメラ、プリンタ、携帯情報機器、可動玩具、計測機器など各種の電子機器が対象となる。これら電子機器における駆動機構や発振子などとして前述の圧電素子が組み込まれる。
ここで、圧電アクチュエータは、カレンダ駆動機構や時刻を示す指針の駆動機構などに組み込むことができる。この場合、圧電素子の振動によって送られるロータなどで歯車を駆動し、この歯車などを介して指針や回転板などを駆動することによって時刻や暦の情報を表示することができる。
また、本発明では、基材を用いて複数の圧電素子を一括して製作できる点と、これらの圧電素子に補強板を積層して振動体を製造する点に特徴を有する。ここで、圧電素子に補強板を積層した後、導通部を圧電素子に形成しているため、導通部は薄膜といえども、その厚みに影響されずに補強板と圧電素子とを精密に貼り合わせできる。こうすることで導通部の信頼性を良好に確保できる。
なお、圧電素子と補強板とを積層する際に加圧手段を用いることによって、圧電素子と補強板をより強固に貼り合せることができる。
そして、補強板との貼り合わせ後、インクジェット法などにより、絶縁層や導通部などの形成を一連の工程で実施することによって、生産性を高くできる。
なお、補強板の表裏にそれぞれ圧電素子を一枚〜数十枚程度貼り合わせて振動体を構成しても良い。
なお、インクジェット法には、フォトリソグラフィ等を用いて導通部を形成する場合と比べて必要な部分にのみインクを過不足無く噴射するため材料の使用量が少なくてすむというメリットがある。
また、マスクを使わないため多品種少量生産が可能であり、設備コストも大幅に低減できる。また、薬液の廃液などがほとんどない。
なお、電子機器の実施形態として、圧電アクチュエータが組み込まれたプリンタと、電子時計(第6実施形態)とを例示する。
[1.全体概略構成]
図1は、本実施形態に係るプリンタ1の概略図である。プリンタ1は、印刷用紙がセットされる用紙トレイ2と、印刷された紙PPが排出される排出部3と、筐体4内部に設置される紙送りローラ5とを備える。
ローラ5は、図示しない印刷駆動部で印刷された紙PPを排出部3に送るものである。
ローラ5を駆動する駆動機構は、圧電アクチュエータ(超音波モータ)20と、この圧電アクチュエータ20の振動によって回転駆動されるロータ28と、ロータ28の回転を減速しつつ伝達する減速輪列29とを備えて構成されている。
減速輪列29は、ロータ28と同軸に設けられてロータ28と一体的に回転する歯車291と、この歯車291に噛合し、かつ、ローラ5の回転軸に固定された歯車292とで構成されている。
なお、圧電アクチュエータ20と、ロータ28とは、図2に示すように、圧電アクチュエータユニット10としてユニット化されている。
圧電アクチュエータユニット10は、筐体4のフレーム等に取り付けられる矩形状の支持プレート11と、支持プレート11にそれぞれ取り付けられる圧電アクチュエータ20と、圧電アクチュエータ20による被駆動体としてのロータ28とを備えて構成されている。このように、圧電アクチュエータユニット10は、圧電アクチュエータ20とロータ28とが平面的に隣接して配置されていることで薄型となっている。
また、支持プレート11の圧電アクチュエータ20が対向する部分には、支持プレート11の厚み方向に窪む凹部11Eが圧電アクチュエータ20よりも大きい平面寸法で形成されており、圧電アクチュエータ20が十分な振幅で振動可能となっている。
図3は、圧電アクチュエータ20の斜視図であり、図4および図5は、圧電アクチュエータ20の断面図である。
圧電アクチュエータ20は、図3〜図5に示すように、2枚の矩形板状の圧電素子30A,30Bと、これらの圧電素子30A,30Bの間に介装される補強板21とを備えている。これら圧電素子30A、補強板21、および圧電素子30Bは互いに積層され、圧電素子30A,30Bの伸縮変位に伴い振動する振動体20Aとして構成されている。
この突起211Aとロータ28との相対位置は、突起211Aがロータ28の外周面に対して所定の力で当接するように調整されており、突起211Aとロータ28側面との間に適切な摩擦力が発生することで振動体20Aの振動が効率良くロータ28に伝達される。なお、本体211の他方の短辺側に突起211Aと略同様の突起がカウンタとして形成されていてもよい。
また、本体211は、圧電素子30A,30Bよりも長さが若干短く、本体211の短辺側の両端は、圧電素子30A,30Bの側面よりも内側に配置されている。
一方の腕部212は、図示しない導通手段により、圧電アクチュエータ20外部の回路基板に導通されており、当該回路基板の回路ブロックにおける基準電位が腕部212に給電される。
なお、腕部212,213の本体211に連設される部分は、首状の括れ部212D,213Dとなっているため、振動体20Aの振動エネルギの腕部212,213への散逸が抑制される。
圧電素子30A,30Bは、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT(登録商標))、水晶、ニオブ酸リチウム、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、メタニオブ酸鉛、ポリフッ化ビニリデン、亜鉛ニオブ酸鉛、スカンジウムニオブ酸鉛等から任意に選択した材料により形成され、厚み方向に分極処理がされ、エポキシ系接着剤などで補強板21に強固に接着されている。なお、これら圧電素子30A、30Bの分極方向は互いに逆向きであり、補強板21を挟んで対称となっている。
また、圧電素子30A,30Bの長手方向に沿った両方の長辺側面部352は、圧電素子30A,30Bの厚み方向に対して傾斜している。これにより、圧電素子30A,30Bの幅方向端部における表面部351と長辺側面部352との間の角部が面取りされ、図5に示すように、当該角部の角度θ1が大きくなっているとともに、長辺側面部352と腕部212,213表面との間の角度θ2も大きくなっている。
また、本実施形態は、後述するように、圧電素子30の表面部351および長辺側面部352および短辺側面部353にそれぞれ沿って、導通パターンなどが形成されることに特徴を有し、これらの表面部351、長辺側面部352、および短辺側面部353はいずれも、圧電素子30の体表面部35と総称される。
これらの電極パターン311〜315の分割態様は、大略、矩形状の電極31が圧電素子30の長手方向に沿った溝32により幅方向に3等分され、3等分されたうち幅方向両側の電極がさらに、長手方向の略中央で2つに分割されたものであり、これらの電極パターン311〜315は、圧電素子30の長手方向に沿った中心線について線対称に、かつ平面中心について点対称に配置されている。
図6は、圧電アクチュエータ20が配線された状態を示す平面図である。
本実施形態では、電極パターン311〜315を適宜使い分けることにより、ロータ28(図2)を正方向R+および逆方向R−に駆動して紙送りローラ5(図1)を正方向にも逆方向にも駆動することが可能である。
なお、ロータ28の正転逆転に応じて、電圧が印加されない電極パターン(対称電極パターン311,315または対称電極パターン312,314)は、圧電アクチュエータ20の振動状態を電圧信号として取り出す検出電極として使用される。振動検出信号は、腕部212における電位を基準信号として、この基準信号に対する対称電極パターン311,315の電位の差、あるいは基準信号に対する対称電極パターン312,314の電位の差である差動信号として検出される。
ここで、圧電素子30の長手方向略中央部の略矩形状の部分と腕部212の表面とを合わせた領域には、液状の絶縁体が用いられた絶縁層511が形成されている。この絶縁層511により、中央電極パターン313が導通パターン411の経路上にある電極パターン314,315とは互いに導通しないようになっている。
このような絶縁層511は、導通パターン411の両端にある接点411A間の中間部411Bが異電位とされる部分に重なる場合に必要となる。すなわち、中央電極パターン313から見て、ロータ28の正回転時には対称電極パターン312,314が異電位部となり、ロータ28の逆回転時には対称電極パターン311,315が異電位部となるから、導通パターン411と電極パターン311〜315とを互いに絶縁する必要がある。以降で説明する導通パターンについても、各接点間に異電位部と重なる中間部を有する場合、絶縁層などの絶縁手段が必要となるのは同様であるため、以降では、接点および中間部に関する説明は簡略もしくは省略する。
なお、一方の腕部212に設けられたパッド451〜453を介して、圧電アクチュエータ20の片側から圧電アクチュエータ20外部へと導通を取っているため、配線作業が容易となっている。
導通パターン412は、腕部212の孔212Cの周りに設けられたパッド453に導通され、駆動制御装置に導通されている。なお、絶縁層511は、電極パターン315の導通パターン412が通る部分には形成されていない。
なお、導通パターン413,414の膜厚および長さ、そして前述した導通パターン412の膜厚および長さがそれぞれ調整されることにより、導通パターン413,414の合計による電気抵抗と、導通パターン412による電気抵抗とが略同一に調整されている。
ここで、導通パターン415〜419と補強板21との絶縁が問題となるが、図7に振動体20Aの短辺側の側面部20Bを示したように、側面部20Bには、液状の絶縁体を乾燥固化させた絶縁層512が形成されている。図8の断面図にも、絶縁層512を示した。絶縁層512は、振動体20Aの両方の短辺側にそれぞれ形成されている。なお、補強板21が絶縁性の樹脂製などである場合は、このような絶縁層512は不要である。
これらの絶縁層512により、圧電素子30A,30Bの表面部351に形成された電極パターン同士が補強板21と絶縁される。
なお、図示しない回路基板に実装される圧電アクチュエータ20の駆動制御装置について簡単に説明すると、当該駆動制御装置は、圧電素子30A,30Bに交流電圧を印加する電圧印加部と、振動体20Aの振動状態を検出する振動検出部とを有する。また、ロータ28の回転方向に応じて、対称電極パターン311,315と対称電極パターン312,314とを電圧印加装置または振動検出装置のいずれかに通電するセレクタが設けられている。電圧印加部が印加する電圧の波形は特に限定されず、例えばサイン波、矩形状波、台形波などが採用できる。
ここで、圧電アクチュエータ20の振動体20Aは、突起211Aが良好な振動軌跡を描き、ロータ28を高効率で駆動可能なように、圧電素子30A,30Bの縦横の長さ比や厚さなどが設計されており、このように設計された振動体20Aについて、駆動電圧の周波数が設定される。この駆動周波数は、振動体20Aの振動時における縦振動共振点と屈曲共振点とが互いに近接するように設定される。
以上説明した圧電アクチュエータ20の動作について図6などを参照して説明する。
中央電極パターン313と対称電極パターン311,315とに駆動制御装置の電圧印加部から給電されるとき、圧電素子30A,30Bはこれら電極パターン311,313,315の領域において長手方向に伸縮し、振動体20Aは長手方向に沿って縦一次振動を励振する。この際、対称電極パターン311,315の配置により、振動体20Aの平面中心を軸として図6中、時計回りにモーメントが生じ、振動体20Aは幅方向に屈曲変位する屈曲二次振動を誘起する。これら縦振動および屈曲振動の混合モードで圧電アクチュエータ20は駆動する。この縦振動と屈曲振動との位相差により、突起211Aは楕円軌道(+)を描く。この楕円軌道(+)との接線方向にロータ28(図2)が正方向(R+)に微動送りされ、突起211Aが所定の駆動周波数で楕円運動を続けることにより、ロータ28の回転を通じて紙送りローラ5が正方向に回転駆動される。
この際、対称電極パターン312,314は駆動制御装置の振動検出部に通電されており、駆動制御装置により、検出された振動状態に基いて電圧印加部が発する駆動電圧の周波数が可変に制御される。
ここで、対称電極パターン312,314の配置により、振動体20Aには図6中、前述とは逆となる反時計回りにモーメントが生じ、突起211Aは、前述の楕円軌道(+)とは逆周りの楕円軌道(−)を描く。これにより、ロータ28は逆方向R−に回転駆動され、紙送りローラ5が逆方向に回転駆動される。
ここで、図3などに示したように、各電極パターン311〜315は、圧電素子30の長手方向略中央に配置され、導通パターン411〜414もこの電極パターン311〜315の位置に合わせて形成されている。すなわち、導通パターン411〜414は、振動体20Aの節Aの近傍に形成されている。
次に、前述の導通パターン411〜419および絶縁層511、512を形成する際に使用されるインクジェット手段について説明する。
図10は、インクジェット手段としてのインクジェットヘッド110の拡大図であり、インクジェットヘッド110は、インクを蓄積するインク室111と、インク室111からインクを振動体20Aに噴射する複数のノズル112と、インク室111とノズル112とを連通するとともにその流路が収縮可能な複数(ノズル112と同数)の圧力発生室113と、圧力発生室113を圧縮して流路を収縮させる圧電振動子114とを備えている。
図11には、ノズル112の拡大断面図が示されている。この図11において、ノズルプレート1121の外表面1121Aには、ニッケルなどのめっきによるめっき層1122が設けられており、このめっき層1122は、ノズル112開口の周囲に所定距離を有して形成されることにより、ノズル112周囲に段差1122Aを形成している。
また、めっき層1122の外表面にはさらにコンポジットめっきによるめっき層1123が形成されている。このめっき層1123は、ノズル112の内周にも形成されている。
このめっき層1123により、ノズルプレート1121の外表面には、撥インク処理が施されている。また、ノズル112の内面のめっき層1123が形成されていない部分には、親水処理が施されている。これらの撥インク処理および親水処理により、ノズル112から噴射されるインク120(図12)がノズルプレート1121に付着するのが良好に防止されるとともに、略球形状の液滴が安定した噴射量(吐出量)で噴射可能となっている。また、この撥インク処理により、インク120がノズル112の穿設方向に沿ってまっすぐ噴射される。
圧力発生室113外壁において圧電振動子114の両側には、それぞれ薄肉部113Aが形成されている。この薄肉部113Aにより、圧電振動子114の振動で外壁が変形しやすくなっている。
このようなインクジェットヘッド110では、圧電振動子114に所定の電圧を印加して振動させると、圧電振動子114が圧力発生室113の外壁を押圧して圧力発生室113を収縮させる。これにより、圧力発生室113内のインクが押し出され、ノズル112から微小な液滴となって噴射される。
なお、圧電振動子114の変位量や変位速度などを調整することによりインク120の吐出量、液滴の大きさや吐出速度を調整可能となっている。
ここで、インク吐出量の調整は、導通パターン411〜419それぞれに決められた膜厚および長さや、絶縁層511、512にそれぞれ必要とされる膜厚および範囲の面積など、また、インクにおける溶媒の蒸発速度、インクジェットヘッド110から振動体20Aにおけるインク被噴射面までの距離などに基いて行われる。
あるいは、インクジェットヘッド110から吐出されるインクの吐出量を監視して、予め設定された所定吐出量を吐出するように調整してもよい。つまり、インクジェットヘッド110から一回につき吐出される吐出量は、圧電振動子114の変位量などによって予め設定されているので、ノズル112からの液体の吐出回数を予め設定することにより、液体の所定量の吐出が可能となる。なお、所定吐出量は、調製の際に加えた溶媒の量などを勘案して設定されることが好ましい。
次に、振動体20Aの製造方法について図13〜図19を参照して説明する。図13のフロー図に示すように、振動体20Aの製造工程は、電極形成工程S1と、個片化工程S2と、積層工程S3と、絶縁層形成工程S4と、導通部形成工程S5とを有する。
[9−1.電極形成工程]
図14(A)および(B)は、多数の圧電素子30が形成される基材300を示す。本実施形態では、図14(A)に示すような四角形の板状に形成された基材300を用いる。そして、この基材300の表裏両面にめっき、スパッタ、蒸着などで電極31を形成し(図14(A))、この電極31の面にエッチングによって溝32を刻設する(図14(B))。
図15は、図14(B)の拡大図である。後にそれぞれ個片化される各圧電素子30は、短手方向に沿った方向において、表裏交互となるように配列されている。一方、長手方向に沿った方向では、各圧電素子30の表裏の向きは揃っており、長手方向に延びる溝32が各圧電素子30に連続して形成されている。
次に、図15の一点鎖線に沿って基材300をダイシングし、各圧電素子30に個片化する(個片化工程S2)。ここで、図16に基材300の側面を示したように、各圧電素子30の長辺側に関しては、図16の一点鎖線に沿って斜めにダイシングし、傾斜した長辺側面部352を形成する。
次の積層工程S3では、ステンレス鋼板のプレス打ち抜きなどによって別途形成された補強板21(図3)に圧電素子30A,30Bを接合し、積層体としての振動体20Aを製作する。この際は、図17の概略図に示すように、位置決めピン101〜103を有する支持部材100に圧電素子30B、補強板21、圧電素子30Aの順に、接合面にエポキシ系の導電性接着剤を塗布して積層し、積層方向に沿って加圧手段105で加圧する。なお、加圧手段105と圧電素子30Aとの間には、テフロン(登録商標)製などのシート106を介装することが好ましい。この加圧により、圧電素子30A、補強板21、および圧電素子30が互いに平行となって正確に貼り合わせられ、互いに強固に接着される。
なお、支持部材100には、振動体20Aの短辺側にピン101を1つ、振動体20Aの長辺側で腕部212の両側には2本のピン102,103をそれぞれ立設した。また、接着剤の硬化に際しては、ホットエアなどを用いることにより迅速に硬化させることができる。
次の絶縁層形成工程S4では、前述のインクジェットヘッド110(図10)を使用する。絶縁層形成工程S4における使用インクは、常温では液状である絶縁体として調製される。
この液状の絶縁体には、エポキシ系絶縁樹脂などの樹脂材料を採用できる。
絶縁層形成工程S4では、前述のような液状の絶縁体をインクとして、インクジェットヘッド110を移動しながら、絶縁層511,512が形成される圧電素子30の表面部351や長辺側面部352、腕部212表面、振動体20Aの側面部20Bに当該インクを噴射する。ここで、インクジェットヘッド110内部の制御手段によって、インクを噴射するノズル112が選択され、絶縁層511、512の形成が必要な箇所にのみ、インクが過不足無い量で噴射される。
この際、長辺側面部352が傾斜面とされ、角度θ1,θ2(図5)が大きいため、圧電素子30の表面部351から腕部212へと、この長辺側面部352を介して絶縁層511を形成し易い。
次に、絶縁層511、512に重ねて導通パターン411〜419を形成する。この導通部形成工程S5でも、前述のインクジェットヘッド110を使用し、常温で導電性粒子を含有した液状物をインクとして使用する。なお、インクジェットヘッド110を絶縁層形成工程S4および導通部形成工程S5ごとにそれぞれ準備する方が、生産効率上良い。
なお、溶剤への分散しやすさとインクジェット法への適用との観点から、微粒子の粒径は約1nm以上約0.1μm以下であることが好ましい。
このため、本実施形態では、このような超微粒子が分散された液状物をインクとして使用する。この液状物を、分散剤を捕捉する捕捉物質と、有機バインダ(樹脂)とを含有するように調製しておく。
この工程S5においても、前述の絶縁層形成工程S4と略同様に、インクジェットヘッド110を移動しながら、導通パターン411〜419が形成される圧電素子30の表面部351や長辺側面部352、腕部212の表面、振動体20Aの側面部20Bに、前述のように超微粒子が分散状態に調製されたインクを噴射する。ここで、インクジェットヘッド110内部の制御手段により、導通パターン411〜419の形成が必要な箇所にのみ、各導通パターン411〜419の位置や膜厚、長さ等が制御されつつ、インクが噴射される。
ここでも、長辺側面部352が傾斜面とされ、角度θ1,θ2(図5)が大きいため、圧電素子30の表面部351から腕部212へと、この長辺側面部352を介して導通パターン411等を容易に形成できる。
ここで、本実施形態で使用されるナノインクの粒子径はnmオーダーであるため、インクの表面エネルギの上昇により、比較的低温で金属原子同士が融解されて金属結合が生じる。例えば、マクロ的なAgの融点は912℃であるところ、その粒子径がnmオーダーになると、150℃でも金属の融解を生じさせることが可能となる。これがナノ技術の最たる特徴、利点であって、結合温度が低くて済むため、圧電素子30への熱衝撃を減らすことが可能となる。
そして、振動体20Aを支持プレート11(図2)に組み付けるとともに、腕部212のパッド451〜453を任意の導通手段により駆動制御装置に接続し、また、腕部212をプリンタ1の駆動部における基準電位回路ブロックに導通することにより、圧電アクチュエータ20の組み立てが終了する。
本実施形態によれば、次のような効果を得ることができる。
(1)圧電アクチュエータ20の圧電素子30の配線に関し、導通パターン411〜419や絶縁層511,512を液状のインク120を用いて形成したことにより、これら導通パターン411〜419や絶縁層511,512を圧電素子30の体表面部35に沿った薄膜として形成することが可能となり、これら導通パターン411〜419や絶縁層511,512が圧電素子30と一体化される。このため、ワイヤやオーバーハング部などの導通手段によって圧電アクチュエータ20の厚みが嵩張ることなく、小型化を格段に促進できる。また、インク120を用いることによって、導通パターン411〜419のような微細なパターニングが可能となり、細密配線が可能となるから、小型化・薄型化を一層促進できる。
そして、配線、組み立てに起因して信頼性が低下するおそれもない。
また、インクジェットヘッド110が圧電振動子114の振動で液体流路を圧縮することによりインク120を吐出するので、例えばインクを加熱することによってインク液滴を吐出させる方式に比べて、加熱によるインクの性能劣化が低減される。
また、圧電素子30と補強板21とを積層する際に加圧手段105を用いることで、圧電素子30と補強板21とを強固に貼り合せることができる。
そして、圧電素子30と補強板21との積層後、インクジェットヘッド110を使用し、絶縁層511,512や導通パターン411〜419などの形成を一連の工程(絶縁層形成工程S4および導通部形成工程S5)で実施することによって、生産性を高くできる。
図20に、本実施形態と一部の構成が異なる圧電アクチュエータ20´を示した。圧電アクチュエータ20´の長手方向略中央部における絶縁層511´は、前述の圧電アクチュエータ20(図6)における絶縁層511とは異なり、電極パターン315の部分が一部切り欠きされていない。すなわち、導通パターン412´は、電極パターン315とは絶縁されている。
この圧電アクチュエータ20´は、電極パターン312,314に電圧が印加された際に突起211Aが描く楕円軌道によって被駆動体を一方向に駆動するものとなっており、圧電アクチュエータ20のように正逆両方向には駆動せず、被駆動体が一方向にのみ駆動される電子機器に組み込まれている。
次に、本発明の第2実施形態について図21〜図23を参照して説明する。
なお、以下の説明では、既に説明した実施形態と同様の構成については、同一符号を付して、説明を省略もしくは簡略する。
圧電アクチュエータ22における振動体22Aは、矩形板状の圧電素子33A,33Bと、これらの圧電素子33A,33Bの間に介装される補強板21とを備えて構成されている。
また、圧電素子33A,33Bのそれぞれの表面部351には、電極31が形成され、この電極31が溝32によって分割されることにより、略中央には、第1実施形態とは形状が少々異なるが中央電極パターン313が形成され、幅方向両側ではより細かく分割されることにより、振動体22Aの固有振動数の調整に用いられる調整用の電極パターンが形成されている。これは、第1実施形態の電極パターン311〜315(図6)との対比によれば、図6の対称電極パターン311,312,314,315に相当する部分がそれぞれ、調整用パターン311A〜311D、312A〜312D、314A〜314D、315A〜315Dとされている。
また、調整用パターン312A、調整用パターン314A、および中央電極パターン313に隣接する振動体22Aの側面部20Bには、絶縁層515,516,517がそれぞれ形成されている。これらの絶縁層515〜517は、常温で液状の絶縁体を使用するインクジェットによって凹部214A(図23)に形成されている。
なお、本実施形態に限らず、逆方向にも駆動する場合などには他の調整領域331,335ごとに各調整用パターン同士を適宜導通し、逆方向駆動時における固有振動数を調整することが可能である。
すなわち、図21および図22に示した導通パターン421〜427の態様は一例であり、各調整用パターン311A〜311D,312A〜312D,314A〜314D,315A〜315Dは、個々の振動体22Aにおいて所望の固有振動数を実現するように適宜選択され、互いに導通される。
なお、本実施形態では、導通パターン423の幅は約10μm〜約50μm程度に形成されるので、約0.1mm〜約0.2mm程度の厚みとされる圧電素子33A,33Bの短辺側面354および長辺側面355を介して配線可能となる。これに対して、オーバーハングの場合は0.1mm〜0.15mm程度の幅に形成することが限界であり、略同じ厚みの圧電素子33A,33Bの側面に配線することが殆ど不可能である。
ちなみに、補強板21の厚みは、本実施形態では約0.3mm〜約0.5mmとなっている。
このように短辺側面354および長辺側面355を経由するように配線された導通パターン423は、腕部212の括れ部212D近傍で分岐して一方の腕部212のパッド452に接続され、このパッド452を介して回路基板の電圧印加部に導通される。
また、調整用パターン311Dは、導通パターン423と略同様に圧電素子33A,33Bの長辺側面355を通る導通パターン425によって腕部213に設けられたパッド454に接続され、このパッド454から回路基板の振動検出部に導通されている。つまり、調整用パターン311Dは振動検出電極として用いられる。
(9)圧電素子33A,33Bの側面354,355(図22)を経由するように形成された導通パターン423〜425により、互いに隣接しない調整用電極パターン312A,314D同士、あるいは調整用パターン311Dとパッド455とを互いに導通できるので、これらの導通に関して絶縁手段を不要にできる。これにより、振動体22Aをさらに薄型化。小型化できるとともに製造をさらに容易化でき、エネルギ効率もより良好にできる。
また、本実施形態における、面取部330はR形状であったが、直線状に面取りされた面取部によっても、本実施形態と同様の効果が得られる。ここで、このような面取部の形成により、圧電素子33A,33Bの角隅部に剥離力が集中しないから、当該角隅部が補強板21から剥離しにくいという効果が得られる。
次に、本発明の第3実施形態を図24〜図26を参照して説明する。
図24は、本実施形態における圧電アクチュエータ23の平面図である。
圧電アクチュエータ23における振動体23Aは、矩形平板状の圧電素子34A,34Bと補強板21との積層体であり、各圧電素子34A,34Bにはそれぞれ、5つの電極パターン311〜315が形成されている。ここで、圧電素子34A,34Bの略中央には、前記各実施形態とは形状が少々異なり略十字状の中央電極パターン313が形成されており、電極パターン311、312,314,315は第1実施形態(図6)と略同様に形成されている。
また、中央電極パターン313にも、圧電素子34A,34Bの側面を介して腕部212のパッド452に接続される導通パターン433が形成されている。
ここで、本実施形態は、絶縁層518を確実に形成するための流出規制部を有する点が前記各実施形態とは相違する。
これら流出規制部としての凹部551,552は、図24のA−A線矢視図である図25(A)に凹部551を代表して示したように、電極パターン312,311における電極厚みにおいて形成されており、これらの凹部551,552において、本実施形態では電極としての導電膜が完全に除去され、凹部551,552の底部は圧電素子34A,34Bの表面となっている。ただし、このような態様に限らず、凹部は、絶縁層518が形成される位置から圧電素子34A,34Bの表面に向かって窪む溝であればよい。
このような凹部551,552が形成されていることにより、絶縁層518が形成される領域を超えて広がろうとするインクが当該凹部551,552の内部に案内され、当該領域内にインクを留めることができる。
このような凸部553は、絶縁層518に使用するインクの噴射時における粘度よりも高粘度とされた液状の絶縁体を常温より高い温度で乾燥固化させることにより形成されている。絶縁層518に使用するインクと、凸部553に使用する液状の絶縁体(インク)とは、粘度のみが異なる同一材料となっている。本実施形態では、この凸部553をインクジェット法によって形成している。
(10)凹部551,552、凸部553などの流出規制部により、絶縁層518が形成される適正な領域内に絶縁体(インク)を追い込むことができるので、絶縁層518を目論見通りの膜厚で正確な位置に形成できる。これにより、導通不良などを防止でき、信頼性が向上する。
なお、本実施形態では、流出規制部を説明するために、一つの振動体23Aに複数種類の流出規制部(凹部551,552および凸部553)を示したが、生産効率等を考慮してこれら流出規制部の構成は適宜変更できる。
例えば、凸部553をエッチングなどによる凹部に置換可能であり、流出規制部を凹部のみによって構成できる。
これにより、圧電素子34A,34Bの厚みが増すことなく流れ規制部を形成できる。この場合、凹部は圧電素子34A,34Bの外周部から殆ど突出しないため、加圧手段を用いる積層工程S3の前に流出規制部形成工程S6を実施しても問題ない。
これにより、凸部の突出高さや幅などを自在に設定することで、絶縁体の吐出量や流動性のばらつきを考慮した余裕が必要であるような場合であっても、絶縁体の流れを確実に規制できる。
なお、この凸部をディスペンサなどを用いて接着剤を塗布することによって形成することもできる。このように接着剤を使用することで圧電素子34A,34Bの外周部や電極膜との密着性が向上し、圧電素子34A,34Bの外周部への凸部の一体性が高まる。
次に、本発明の第4実施形態を図27および図28を参照して説明する。本実施形態は、第3実施形態と略同様の構成において、第3実施形態とは異なる流出規制部を示すものである。
本実施形態の圧電アクチュエータ24における振動体24Aでは、絶縁層518の周りを平面的に囲む撥水部554が流出規制部として形成されている。
自己組織化膜とは、電極パターン311〜315などの下地層の構成原子と反応可能な結合性官能基とそれ以外の直鎖分子とからなり、該直鎖分子の相互作用により極めて高い配向性を有する化合物を配向させて形成された膜である。前記自己組織化膜はフォトレジスト材等の樹脂膜とは異なり、単分子を配向させて形成されているので、極めて膜厚を薄くすることができ、しかも、分子レベルで均一な膜となる。即ち、膜の表面に同じ分子が位置するため、膜の表面に均一でしかも優れた撥液性や親液性を付与することができ、微細なパターニングをする際に特に有用である。
(13)導通パターン411〜419が形成されるべき領域5541の外に絶縁体インクが吐出されたとしても、その液滴を撥水部554によって領域5541内に移動させることができるので、絶縁層518を必要な箇所に確実に形成できる。このような撥水部554により、前述の凹部551,552と略同様に圧電素子34A,34Bの厚みが殆ど増すことなく流れ規制部を形成できる。
次に、本発明の第5実施形態を図29〜図32を参照して説明する。本実施形態は、第3、第4実施形態とは異なる手段により、液状の絶縁体インクの流出に対処するものである。
図29は、本実施形態における圧電アクチュエータ25の振動体25Aの平面図であり、図30は、振動体25Aの側断面図である。振動体25Aは、突起211A,211Bおよび腕部212,213が形成された補強板21´と、圧電素子34Aとを備えている。圧電素子は、補強板21´の裏面側には設けられていない。なお、本実施形態では、圧電素子34Aの振動検出は行わないものとする。
これらのポスト311X、315Xは、インクジェット法により、電極パターン311〜315を形成するために用いるインクよりも高粘度のインクによって形成されている。なお、本実施形態におけるポスト311X、315Xは、インクジェットヘッド110により所定の時間間隔で繰り返しインクを吐出することによって、対称電極パターン311,315に立設される。
よって、次の導通パターン441を形成する工程では、各ポスト311X、315Xの先端部を介して対称電極パターン311,315同士を問題なく導通できる(図29参照)。
(15)絶縁層521を形成する際に絶縁性インクが必要な領域を超えて流出した場合であっても、ポスト311X、315Xを介して電極パターン311,315同士の導通が可能となる。すなわち、第3、第4実施形態のような流出規制部を形成することなく、絶縁層を形成する際の位置制御を省略もしくは簡略化できる。
次に、本発明の第6実施形態を図33〜図35を参照して説明する。本実施形態は、電子機器である電子時計への組み込み例を示す。
図33は、本実施形態に係る電子時計7の外観図である。電子時計7は、計時部としてのムーブメント131と、時分秒を表示するための計時情報表示部としての文字板132、時針133、分針134、秒針135のほか、文字板132に設けられた窓部132Aから日付を表示する日付表示装置140を備えた腕時計(ウォッチ)である。
図34は、底板131Aに支持された日付表示装置140を示す平面図である。日付表示装置140は、第1実施形態の圧電アクチュエータ20(図3)と、この圧電アクチュエータ20によって回転駆動される被駆動体としてのロータ28と、ロータ28の回転を減速しつつ伝達する減速輪列141と、減速輪列141を介して伝達される駆動力により回転する日車142とを備えて大略構成されている。
ロータ28は、日の変わり目、あるいは日付補正時に圧電アクチュエータ20により回転駆動される。本実施形態では、ロータ28を圧電アクチュエータ20の振動体20Aに向けて付勢するバネ部材281が設けられている。
減速輪列141は、ロータ28と同軸に配置されてロータ28と一体的に回転する歯車1411と、歯車1411に噛合する日回し中間車1412と、日回し車1413とで構成されている。
図35は、図34の部分拡大図である。
圧電アクチュエータ20は、日付の変わり目に、あるいは、日付補正時に起動され、図示しない駆動回路によって交流電圧が供給されることにより、ロータ28を駆動する。
なお、本実施形態の日付表示装置140には、前述したすべての圧電アクチュエータを組み込むことが可能である。
(17)電子時計7では、時計における駆動手段として一般的なステッピングモータなどに置換して、圧電アクチュエータ20を採用しており、これによって磁気の影響を受けない。さらに、応答性が高く微小送りが可能、小型化・薄型化に有利、高トルク、保持トルク(無通電であってもロータ位置が保持される)が大きいなどのメリットを享受できる。
以上、本発明の実施態様について具体的に示したが、前記各実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改良、変形が可能である。なお、本発明の振動体の製造方法は、振動体の製造装置にそれぞれ展開可能である。
また、導通部と同様に、絶縁層に関しても、液状の絶縁体を用いるインクジェット法、タンポ(パット)印刷、スクリーン印刷、ディスペンサによる塗布などによって形成することも本発明に含まれる。
なお、前記各実施形態では、補強板の腕部212,213の表面にもインクジェットによって絶縁層を形成していたが、本発明では、腕部212,213には他の手段によって絶縁層が形成されていてもよい。つまり、絶縁性を確保する表面加工を別途腕部212,213に施したり、絶縁性のシートなどを腕部212,213の表面に設置したりしてもよい。
また、圧電アクチュエータの電子機器への組み込みに関し、圧電アクチュエータまたはロータにばねなどの付勢手段を設け、圧電アクチュエータの当接部(突起)とロータとの間を加圧してもよい。ここで、付勢手段としてスライドを使用してもよく、つまりスライダで圧電アクチュエータをスライド可能に保持した状態で支持部材などに組み付けてもよい。
ここで、各種の電子機器としては、時計機能を備えた電話、携帯電話、非接触ICカード、パソコン、携帯情報端末(PDA)、カメラ等が例示できる。
また、時計機能を備えないカメラ、ディジタルカメラ、ビデオカメラ、カメラ機能付き携帯電話等の電子機器にも適用可能である。これらカメラ機能を備えた電子機器に適用する場合には、レンズの合焦機構や、ズーム機構、絞り調整機構等の駆動に本発明の圧電アクチュエータを用いることができる。
さらに、計測機器のメータ指針の駆動機構や、自動車等のインパネ(instrumental panel)のメータ指針の駆動機構、圧電ブザー、プリンタ等に用いられるインクジェットヘッドの圧電振動子(図13の圧電振動子114も可)、プリンタの紙送り機構、乗り物や人形などの可動玩具類の駆動機構および姿勢補正機構、超音波モータ、ハードディスクドライブ、超音波洗浄器、超音波加湿器、超音波溶着・溶接装置、超音波治療器、超音波カッター、チューブポンプ等に本発明の圧電アクチュエータを用いてもよい。
なお、前記各実施形態では、圧電アクチュエータの適用例として腕時計を示したが、これに限定されず、本発明は、懐中時計、置時計、掛け時計などにも適用できる。これらの各種時計において、例えばからくり人形などを駆動する機構としても利用できる。
したがって、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
Claims (20)
- 複数の電極が形成された圧電素子を備え、
前記電極同士を電気的に接続する導通部が前記圧電素子の体表面部に形成され、
前記導通部は、常温では導電性粒子を含有した液状物を前記体表面部に設けた後、当該液状物を常温より高い温度で乾燥固化させることにより前記導電性粒子を相互接触させて形成される
ことを特徴とする振動体。 - 請求項1に記載の振動体において、
前記圧電素子は、略板状に形成され、その平面には、前記電極であって互いに同電位とされる2つ以上の同電位電極がそれぞれ形成され、
前記導通部により、前記各同電位電極は、前記圧電素子の前記平面に隣接する側面を経由して互いに導通されている
ことを特徴とする振動体。 - 請求項1に記載の振動体において、
前記体表面部には、前記電極であって互いに同電位とされる2つ以上の同一面内電極が略同一面にそれぞれ形成され、
前記導通部であって前記各同一面内電極を互いに導通するものとして同一面内導通部があり、当該同一面内導通部における前記同一面内電極との各接点間に位置する中間部は、前記同一面内電極における電位とは異なる異電位部と重なり、
前記中間部と前記異電位部との間には、絶縁層が介装される
ことを特徴とする振動体。 - 請求項3に記載の振動体において、
前記絶縁層は、常温では液状である絶縁体を前記異電位部の外面部に設けた後、当該絶縁体を常温より高い温度で乾燥固化させることにより形成されている
ことを特徴とする振動体。 - 請求項4に記載の振動体において、
前記絶縁層が形成される領域外への前記絶縁体の流出を規制する流出規制部を有する
ことを特徴とする振動体。 - 請求項5に記載の振動体において、
前記流出規制部は、前記中間部と前記接点との間に形成されている
ことを特徴とする振動体。 - 請求項5または6に記載の振動体において、
前記流出規制部は、前記絶縁層の位置から前記圧電素子の表面に向かって窪む凹部とされている
ことを特徴とする振動体。 - 請求項5または6に記載の振動体において、
前記流出規制部は、前記圧電素子の表面から突出する凸部とされている
ことを特徴とする振動体。 - 請求項8に記載の振動体において、
前記凸部は、常温では液状であって前記絶縁体が前記異電位部に設けられた際における当該絶縁体の粘度よりも高粘度の絶縁体を常温より高い温度で乾燥固化させることにより形成されている
ことを特徴とする振動体。 - 請求項5または6に記載の振動体において、
前記流出規制部は、前記絶縁層に平面的に隣接する位置に形成された撥水作用を奏する撥水部とされている
ことを特徴とする振動体。 - 請求項4に記載の振動体において、
前記各同一面内電極には、前記絶縁層の表面に露出する導電性ポストが前記絶縁層の形成以前に立設され、
前記導通部は、前記導電性ポストを介して前記各同一面内電極を互いに導通する
ことを特徴とする振動体。 - 請求項1に記載の振動体において、
前記導通部は、複数形成され、これらのうち1つ以上の導通部と1つ以上の導通部との間において、その電気抵抗が互いに同一とされている
ことを特徴とする振動体。 - 請求項1から12のいずれかに記載の振動体において、
前記導通部は、当該振動体の振動の節近傍に形成されている
ことを特徴とする振動体。 - 請求項1から13のいずれかに記載の振動体を備え、
前記振動体の振動を被駆動体に伝達することにより当該被駆動体を駆動する
ことを特徴とする圧電アクチュエータ。 - 請求項1から13のいずれかに記載の振動体または請求項14に記載の圧電アクチュエータを備えた
ことを特徴とする電子機器。 - 請求項15に記載の電子機器は、
計時部と、この計時部で計時された情報を表示する計時情報表示部とを備えた時計である
ことを特徴とする電子機器。 - 振動体を構成する圧電素子に複数の電極をそれぞれ形成する電極形成工程と、
常温では導電性粒子を含有した液状物を前記圧電素子の体表面部に設けた後、当該液状物を常温より高い温度で乾燥固化させることにより前記導電性粒子を相互接触させて、前記電極同士を電気的に接続する導通部を形成する導通部形成工程とを備える
ことを特徴とする振動体の製造方法。 - 互いに同電位とされる2つ以上の電極を、振動体を構成する圧電素子における略同一面にそれぞれ形成する電極形成工程と、
常温では導電性粒子を含有した液状物を前記圧電素子の体表面部に設けた後、当該液状物を常温より高い温度で乾燥固化させることにより前記導電性粒子を相互接触させて、前記電極同士を電気的に接続する導通部を形成する導通部形成工程と、
前記導通部と、前記電極における電位とは異なる異電位部とを絶縁する絶縁層を形成する絶縁層形成工程とを備え、
前記導通部形成工程では、前記導通部を前記異電位部と重なる位置に形成する
ことを特徴とする振動体の製造方法。 - 後に圧電素子に個片化される略板状の基材を扱い、前記圧電素子の体表面部に複数の電極をそれぞれ形成する電極形成工程と、
前記基材から前記圧電素子を複数、板状に個片化する個片化工程と、
前記圧電素子に補強板を積層して振動体を構成する積層工程と、
常温では導電性粒子を含有した液状物を前記補強板と積層された圧電素子の前記体表面部に設けた後、当該液状物を常温より高い温度で乾燥固化させることにより前記導電性粒子を相互接触させて、前記電極同士を電気的に接続する導通部を形成する導通部形成工程とを備える
ことを特徴とする振動体の製造方法。 - 請求項17〜19のいずれかに記載の振動体の製造方法において、
前記導通部形成工程では、前記液状物としてのインクを前記体表面部に噴射することによって前記導通部を形成する
ことを特徴とする振動体の製造方法。
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