以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。
また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうではないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
また、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
本願発明を詳細に説明する前に、本願における用語の意味を説明すると次の通りである。
半導体ウェハ(半導体基板)とは、集積回路の製造に用いる単結晶シリコン基板(一般にほぼ平面円形状)、サファイア基板、ガラス基板、その他の絶縁、反絶縁または半導体基板など並びにそれらの複合的基板を言う。また、本願において半導体装置というときは、シリコン基板やサファイア基板などの半導体または絶縁体基板上に作られるものだけでなく、特に、そうでない旨が明示された場合を除き、TFT(Thin Film Transistor)およびSTN(Super Twisted Nematic)液晶などのようなガラスなどの絶縁基板上に作られるものなども含むものとする。
素子形成面とは、半導体ウェハの主面であって、その面にフォトリソグラフィ技術により、複数のチップ領域に対応するデバイスパターンが形成される面をいう。
化学的機械的研磨法(CMP;Chemical Mechanical Polishing)とは、一般に被研磨面を相対的に軟らかい布様のシート材料などからなる研磨パッドに接触させた状態で、スラリを供給しながら面方向に相対移動させて研磨を行なう方法をいう。本願においては、その他、被研磨面を硬質の砥石面に対して相対移動させて研磨を行なう方法、その他の固定砥粒を使用するもの、および砥粒を使用しない砥粒フリーCMPなども含むものとする。
エロージョンとは、プラグ(配線)が密集して形成されていない層間絶縁膜には削れが発生しないのに対し、プラグ(配線)が密集している領域では層間絶縁膜を研磨しにくい研磨液を用いても、層間絶縁膜が削れる現象をいう。
シニングとは、エロージョンなどによる段差を緩和して層間絶縁膜を平坦化するために、層間絶縁膜を研磨することをいう。
選択比とは、酸化シリコン膜の研磨速度に対するタングステン膜の研磨速度の比をいい、タングステン膜の研磨速度が酸化シリコン膜の研磨速度が極めて大きい場合を高選択比(数字では選択比は1より大きな値となる)という。一方、タングステン膜の研磨速度と酸化シリコン膜の研磨速度がほぼ同等の場合、選択比はほぼ1になる。選択比が1の場合、タングステン膜の研磨速度と酸化シリコン膜の研磨速度は等しくなる。
(実施の形態1)
本実施の形態1は、例えば、半導体ウェハ上にnチャネル型MISFET(Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)とpチャネル型MISFETを形成する半導体装置の製造方法に適用したものである。本実施の形態における半導体装置の製造方法について図面を参照しながら説明する。
まず、図1に示すように、半導体ウェハ1の素子形成面(主面)にnチャネル型MISFETQ1およびpチャネル型MISFETQ2を形成する。nチャネル型MISFETQ1およびpチャネル型MISFETQ2は、通常の半導体装置の製造技術を用いて形成される。
次に、図2に示すように、nチャネル型MISFETQ1およびpチャネル型MISFETQ2を形成した半導体ウェハ1上に窒化シリコン膜2を形成し、この窒化シリコン膜2上に酸化シリコン膜3を形成する。窒化シリコン膜2は、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)法を用いて形成することができる。酸化シリコン膜3は、TEOS(Tetra Ethyl Ortho Silicate)と酸素とを材料にしたCVD法により形成することができる。続いて、酸化シリコン膜3の表面をCMP法で平坦化する。半導体ウェハ1上での酸化シリコン膜3の膜厚は、例えば、430nmである。この窒化シリコン膜2と酸化シリコン膜3により層間絶縁膜が形成される。つまり、層間絶縁膜は、酸化シリコン膜3を主成分として形成されている。
続いて、図3に示すように、窒化シリコン膜2および酸化シリコン膜3よりなる層間絶縁膜にコンタクトホール4を形成する。コンタクトホール4は、例えば、以下に示すようにして形成される。まず、酸化シリコン膜3上に感光性のレジスト膜を塗布した後、露光・現像処理を施すことによりレジスト膜をパターニングする。レジスト膜のパターニングは、コンタクトホール4を形成する領域にレジスト膜が残らないように行なわれる。そして、パターニングしたレジスト膜をマスクにした反応性ドライエッチングにより、層間絶縁膜にコンタクトホール4を形成する。コンタクトホール4は層間絶縁膜を貫通し、nチャネル型MISFETQ1やpチャネル型MISFETQ2のソース領域あるいはドレイン領域に達するように形成される。半導体ウェハ1上に形成されたソース領域あるいはドレイン領域に達するようにコンタクトホール4は形成されるので、半導体ウェハ1の領域のうちnチャネル型MISFETQ1、pチャネル型MISFETQ2が形成されている領域には、コンタクトホール4が密集して形成される。つまり、層間絶縁膜に形成されるコンタクトホール4は、層間絶縁膜の全体にわたって均一に形成されるのではないため、層間絶縁膜には、コンタクトホール4が密集している領域とコンタクトホール4が形成されていない領域が存在する。コンタクトホール4を形成した後、パターニングされたレジスト膜は除去される。コンタクトホール4の径は、例えば、130nmである。
次に、図4に示すように、コンタクトホール4の内壁を含む層間絶縁膜上に、チタン/窒化チタン膜5aよりなるバリア導体膜を形成する。バリア導体膜であるチタン/窒化チタン膜5aは、後の工程でコンタクトホール4に埋め込むタングステンがコンタクトホールの外部に拡散することを防止するために形成される。チタン/窒化チタン膜5aは、例えば、スパッタリング法を用いて形成することができ、その膜厚は、チタン膜および窒化チタン膜のそれぞれが約10nmである。
続いて、チタン/窒化チタン膜5a上にタングステン膜5bを形成する。このタングステン膜5bは、コンタクトホール4を埋め込むように形成され、例えば、CVD法を使用して形成することができる。タングステン膜5bの膜厚は、例えば、250nmである。このタングステン膜5bとチタン/窒化チタン膜5aは、コンタクトホール4に埋め込むことによりプラグを形成するためのものである。しかし、コンタクトホール4の内部にだけ、チタン/窒化チタン膜5aおよびタングステン膜5bを形成することはできないので、これらの膜の成膜時には、コンタクトホール4以外の酸化シリコン膜3上にも形成される。酸化シリコン膜3上に形成されたチタン/窒化チタン膜5aおよびタングステン膜5bは不要な膜であるので除去する必要がある。すなわち、コンタクトホール4の内部にだけ、チタン/窒化チタン膜5aおよびタングステン膜5bを残すため、酸化シリコン膜3上に形成されている不要なチタン/窒化チタン膜5aおよびタングステン膜5bは、CMP法によって除去する。
図5は、酸化シリコン膜3上に形成されている不要なチタン/窒化チタン膜5aおよびタングステン膜5bを除去するために使用されるCMP研磨装置を示した図である。図5において、本実施の形態1におけるCMP研磨装置は、第1の研磨装置と第2の研磨装置を有している。図5の左側に示す第1の研磨装置は、回転可能な定盤(プラテン)(第1定盤)100上に研磨パッド101が貼り付けられている。そして、この研磨パッド101上に半導体ウェハ1が配置される。半導体ウェハ1は、素子形成面を研磨パッド101に接触させた状態で配置される。さらに、研磨パッド101上には、半導体ウェハ1を研磨パッド101に押し付けるための加圧ヘッド102が設けられている。この加圧ヘッド102に半導体ウェハ1を押し付けて加圧することにより、半導体ウェハ1と研磨パッド101との接触圧力を調整することができ、研磨速度などを調整できるようになっている。また、研磨パッド101上には研磨パッドのコンディショニングを行なうドレッシング機構103が設けられている。さらに、研磨パッド101の上方には、スラリ供給部104が設けられており、このスラリ供給部104から第1研磨液105が研磨パッド101上に滴下されるようになっている。このように構成された第1の研磨装置を用いて、第1研磨液105を供給しながら半導体ウェハ1に第1研磨工程を実施する。
第1研磨工程では、図6に示すように、酸化シリコン膜3上に形成されたタングステン膜5bを研磨する。ここで、タングステン膜5bを第1の研磨装置で研磨する工程は、以下に示す条件で行なわれる。すなわち、第1研磨液105の流量が200cc、加圧ヘッド102による研磨圧力が21kPa、定盤100の回転数が80rpmの条件で行ない、研磨時間はトルク電流を用いた終点検出により決定している。この第1研磨工程において、第1研磨液105によるタングステン膜5bの研磨速度は、約400nm/minとなる。
第1研磨工程で使用する第1研磨液105は、酸化シリコン膜の研磨速度に対してタングステン膜5bおよびチタン/窒化チタン膜5aの研磨速度が速い研磨液である。つまり、第1研磨液105は、タングステン膜5bおよびチタン/窒化チタン膜5aを充分に研磨することができる一方、層間絶縁膜である酸化シリコン膜3はほとんど研磨しない機能を有している。具体的に、第1研磨液105は、広く一般的に使用されているタングステン研磨液を用いることができ、砥粒としてシリカ、アルミナ、酸化セリウムあるいは酸化マグネシウムが使用される。そして、酸化剤には、硝酸鉄、過酸化水素、過ヨウ素酸カリウムや過ヨウ素酸ナトリウムが使用され、その他酸化剤を安定させるための添加剤や界面活性剤を加えることができる。特に、砥粒としてヒュームドシリカを1〜15重量%、酸化剤として過酸化水素を用いることが望ましく、第1研磨液105のpHは酸性領域にあることが望ましい。このような第1研磨液105として、本実施の形態1では、例えば、Cabot社製、SEMI SPERSE W2000を純水で50%に希釈し、過酸化水素が2重量%になるように調整したものを使用している。
ここで、第1研磨工程においては、タングステン膜5bを研磨するが、酸化シリコン膜3上に形成されているタングステン膜5bをすべて研磨するのではなく、図6に示すように、タングステン膜5bの一部が残存するように研磨する。つまり、図6では、層間絶縁膜を構成する酸化シリコン膜3上にチタン/窒化チタン膜5aおよびタングステン膜5bの一部が残存した状態で研磨を終了している。すなわち、層間絶縁膜を構成する酸化シリコン膜3が露出する前に第1研磨工程を終了する。このように、酸化シリコン膜3上に形成されたタングステン膜5bをすべて研磨せずに一部の膜厚分だけタングステン膜5bを残存させるようにすることが本願で開示された1つの発明の1つの特徴である。つまり、タングステン膜5bを少し残存させて酸化シリコン膜3を露出しないことで、層間絶縁膜を構成する酸化シリコン膜3にエロージョンが発生することを防止できる。
第1研磨液105のようにタングステン膜5bおよびチタン/窒化チタン膜5aを充分に研磨できる一方、酸化シリコン膜3を研磨しない機能を有する研磨液を使用する場合、酸化シリコン膜3上に形成されているタングステン膜5bおよびチタン/窒化チタン膜5aをすべて研磨すると、プラグが密集している領域において、エロージョンが発生する。つまり、第1研磨液105を使用すると、理想的には、酸化シリコン膜3を研磨することはないので、タングステン膜5bおよびチタン/窒化チタン膜5aをすべて研磨するまで研磨しても問題はないと考えられる。しかし、実際には、タングステン膜5bを埋め込んだプラグが密集している領域では、タングステン膜5bの研磨工程において、プラグ間に形成されている酸化シリコン膜3も研磨される現象が生じる。つまり、プラグが密集して形成されている領域では、酸化シリコン膜3を研磨しない第1研磨液105を用いた研磨においても、酸化シリコン膜3が研磨されるエロージョンが発生する。一方、プラグが密集して形成されていない領域では、酸化シリコン膜3はほとんど研磨されない。したがって、プラグが密集して形成されている領域と、プラグが密集して形成されていない領域では、酸化シリコン膜3の研磨量に差ができて層間絶縁膜に段差が生じる問題点が発生する。この段差を解消するためには、酸化シリコン膜3を露出させた後、酸化シリコン膜3を研磨(シニング)することが考えられる。このとき、シニング量を増加させるほど、エロージョンにより発生した段差をなくし平坦化することができる。しかし、シニング量を増加させると、層間絶縁膜を構成する酸化シリコン膜3の膜厚が薄くなり、層間絶縁膜の下部に形成されているMISFETのゲート電極が露出してしまう問題点がある。
このように、第1研磨液105でタングステン膜5bおよびチタン/窒化チタン膜5aを酸化シリコン膜3が露出するまで研磨すると不都合が生じることがわかる。
そこで、本実施の形態1では、第1研磨液105を用いたタングステン膜5bの研磨をタングステン膜5bの一部を残存させる状態で終了させている。このため、酸化シリコン膜3を露出することなくタングステン膜5bの研磨を行なうことができる。本実施の形態1によれば、酸化シリコン膜3を露出することがないので、エロージョンを防止することができる。ただし、酸化シリコン膜3上には、チタン/窒化チタン膜5aおよびタングステン膜5bが残存しているので、第1研磨工程だけでチタン/窒化チタン膜5aおよびタングステン膜5bの研磨を終了すると、プラグ間が導通してショート不良が発生してしまう。そこで、本実施の形態1では、第1研磨工程の後に第2研磨工程を実施する。
第2研磨工程は、図5の右側に示す第2の研磨装置で実施される。つまり、図5の左側に示す第1の研磨装置で第1研磨工程が実施された後、半導体ウェハ1を第2の研磨装置に移動して研磨を行なう。図5の右側に示す第2の研磨装置の構成は、図5の左側に示す第1の研磨装置の構成とほぼ同様である。すなわち、第2の研磨装置は、回転可能な定盤(第2定盤)106を有し、この定盤106上に研磨パッド107が形成されている。そして、この研磨パッド107上に半導体ウェハ1が配置される。半導体ウェハ1は、図5の左側の第1の研磨装置で第1研磨工程が実施された後のものであり、素子形成面を研磨パッド107に接触するようにして配置される。研磨パッド107上には半導体ウェハ1に圧力を加える圧力ヘッド108および研磨パッド107のコンディショニングを行なうドレッシング機構109が設けられている。ここまでの構成は、第1の研磨装置と第2の研磨装置で同じである。ここで、第1の研磨装置では、スラリ供給部104が設けられており、このスラリ供給部104から第1研磨液105が供給される。これに対し、第2の研磨装置では、スラリ供給部110とスラリ供給部111が設けられている。スラリ供給部110からは第1研磨液105が供給されるが、スラリ供給部111からは第2研磨液112が供給される。このように第2研磨工程では、第1研磨液105と第2研磨液112とを混合した第3研磨液を用いて研磨が実施される。
第2研磨工程では、以下に示す条件で研磨がおこなわれる。第1研磨液の流量が100cc、第2研磨液の流量が200ccであり、圧力ヘッド108による研磨圧力が21kPa、定盤106の回転数が60rpmである。
第2研磨液112は、タングステン膜の研磨速度よりも酸化シリコン膜の研磨速度が速い特徴を有している。つまり、第2研磨液112は、酸化シリコン膜を充分に研磨することができる一方、タングステン膜をほとんど研磨しないものである。具体的に、第2研磨液112は、砥粒としてシリカ、アルミナ、酸化セリウムあるいは酸化マグネシウムを使用している。特に、砥粒としてコロイダルシリカが5〜25重量%含有されていることが望ましく、また、第1研磨液105の特性に影響しないため、第2研磨液112は中性かpHが8以下となるものであることが望ましい。本実施の形態1では、第2研磨液112として、Fujimi社製 PLANERLITE 4101を原液で使用している。
このように本実施の形態1における第2研磨工程では、タングステン膜5bおよびチタン/窒化チタン膜5aを主に研磨する第1研磨液105と、酸化シリコン膜3を主に研磨する第2研磨液112を混合した第3研磨液を使用している。したがって、第2研磨工程では、タングステン膜5b(チタン/窒化チタン膜5aも含む)と酸化シリコン膜3を研磨することになる。この第2研磨工程を実施することにより、図7に示すように、残存しているタングステン膜5bおよびチタン/窒化チタン膜5aが除去されるとともに層間絶縁膜を構成する酸化シリコン膜3の一部が除去される。これにより、図7に示すように、酸化シリコン膜3上に形成されていた不要なタングステン膜5bおよびチタン/窒化チタン膜5aが除去され、タングステン膜5bとチタン/窒化チタン膜5aをコンタクトホール4内にだけ残すことができ、プラグ6を形成することができる。具体的に、第2研磨工程においては、酸化シリコン膜3の研磨量(シニング量)は、50nm程度になるように調整されている。さらに、第1研磨液105と第2研磨液112とを混合した第3研磨液では、タングステン膜5bの研磨速度と酸化シリコン膜3の研磨速度はほぼ同様の180nm/minとなり、選択比はほぼ1である。
ここで、本願発明で開示された1つの発明の1つの特徴は、第2研磨工程で第1研磨液105と第2研磨液112を混合した第3研磨液を使用した点にある。これにより、エロージョンの発生を抑制することができるのである。つまり、第2研磨工程では、まず第1研磨液105が主に作用して、第1研磨工程で残存させたタングステン膜5bとチタン/窒化チタン膜5aが除去される。そして、酸化シリコン膜3の表面が露出する。このとき、第1研磨工程のようにタングステン膜5bを研磨する第1研磨液105だけを使用すると、プラグ6が形成されていない領域の酸化シリコン膜3は研磨されず、プラグが密集して形成されている領域の酸化シリコン膜3がエロージョンにより研磨される。このため、酸化シリコン膜3を全体でみると段差が生じることになる。しかし、本実施の形態1における第2研磨工程では、第1研磨液105のほかに酸化シリコン膜3を研磨する第2研磨液112が含まれている。したがって、プラグ6が形成されていない領域かプラグ6が密集している領域かにかかわらず、酸化シリコン膜3は研磨される。このため、プラグ6が密集している領域でエロージョンが発生しても、その他の領域でも酸化シリコン膜3が研磨される。このことから、相対的に酸化シリコン膜3に生じる段差を減少させることができ、プラグ6を形成した酸化シリコン膜3を平坦化することができる。つまり、酸化シリコン膜3が露出した後は、主に第2研磨液112が作用して酸化シリコン膜3の全体領域を均一に研磨するので、エロージョンに起因した段差を緩和できるのである。また、本実施の形態1における第2研磨工程では、酸化シリコン膜3を研磨するシニングが発生する。しかし、第1研磨工程を酸化シリコン膜3が露出するまで行なうことによりエロージョンが発生し、このエロージョンを回復するために酸化シリコン膜3を研磨する(シニング)場合とはシニング量に差がある。すなわち、エロージョンが発生した状態からさらに酸化シリコン膜を研磨するとシニング量が大きくなりゲート電極が露出するおそれがあるが、本実施の形態1における第2研磨工程では、エロージョンを発生させないように始めから酸化シリコン膜3を研磨しているので、シニング量を少なくすることができ、ゲート電極が酸化シリコン膜3から露出するという不都合を回避することができるのである。
さらに、本願で開示された1つの発明の1つの特徴は、タングステン膜5bを研磨する第1研磨液105と酸化シリコン膜3を研磨する第2研磨液112を混合した第3研磨液を用いた第2研磨工程において、酸化シリコン膜3の研磨速度に対するタングステン膜5bの研磨速度の比を示す選択比をほぼ1にする点にある。これによりエロージョンの発生を低減できるのである。つまり、酸化シリコン膜3を研磨する第2研磨液112を用いるとしても、タングステン膜の研磨速度に比べて酸化シリコン膜の研磨速度がかなり遅いと、エロージョンの発生を充分に抑制することができない。これは、エロージョンによる酸化シリコン膜3の研磨速度に比べて、第2研磨液112による酸化シリコン膜3の研磨速度が遅くなるために、プラグが密集した領域とプラグが密集していない領域との間で酸化シリコン膜3の研磨量に差ができてしまうからである。エロージョンは、タングステン膜5bの研磨速度に依存するので、タングステン膜5bの研磨速度に酸化シリコン膜3の研磨速度を近づけることによりエロージョンによる段差の発生を抑制することができる。つまり、選択比を1に近づけることによりエロージョンを抑制することができるのである。一方、タングステン膜の研磨速度に比べて酸化シリコン膜の研磨速度がかなり速いと、エロージョンによる凹部の形成とは逆に、凸部(いわゆる逆エロージョン)が発生してしまう。このことから、酸化シリコン膜3に発生する段差を抑制する観点からは、選択比をほぼ1にすることが望ましいことがわかる。具体的には、選択比を0.7以上1.5以下にすることにより、エロージョンに起因した酸化シリコン膜3の段差を抑制することができる。さらに望ましくは、選択比を0.9以上1.2以下にすることにより、エロージョンの発生およびシニング量の低減を効果的に達成することができる。
また、本願で開示された1つの発明の1つの特徴は、第2研磨液112のpHを中性もしくは8以下にするようにした点にある。タングステン膜5bを研磨する第1研磨液105は酸性の溶液である。したがって、第2研磨液112のpHが高くアルカリ性を示す性質のものであると、第1研磨液105と第2研磨液112を混合した場合に化学反応が生じてしまい第1研磨液105および第2研磨液112の両方で充分に機能を発揮することができなくなる。特に、酸化シリコン膜3を研磨する第2研磨液112は、アルカリ性のものが多いので、第2研磨液112として酸化シリコン膜3を研磨できるものであればいずれでもよいということにはならないのである。そこで、本実施の形態1における第2研磨工程では、酸化シリコン膜3を研磨する第2研磨液112として、中性もしくはpHが8以下のものを使用している。このような第2研磨液112を使用することで、第1研磨液105と第2研磨液112とのコンタミネーションを防止することができ、それぞれの特性を充分に発揮することができる。
なお、本実施の形態1においては、第1研磨液105と第2研磨液112とを第2の研磨装置の定盤106上で混合するように構成しているが、これに限らず、例えば、予め第1の研磨液105と第2研磨液112とを混合した第3研磨液を形成しておき、この第3研磨液を定盤106上に供給しながら半導体ウェハ1を化学的機械的研磨(研磨)するようにしてもよい。
また、本願で開示された1つの発明の1つの特徴は、第1研磨工程を第1の研磨装置で実施し、第2研磨工程を第2の研磨装置で実施している点にある。すなわち、第1研磨工程と第2研磨工程で異なる研磨装置を使用している点にある。このように構成することにより、第1研磨工程および第2研磨工程の両方において、それぞれの工程に専用の研磨パッドを用いることができる。したがって、それぞれの工程において、研磨の信頼性を向上させることができ、層間絶縁膜を構成する酸化シリコン膜3を充分に平坦化することができる。なお、本実施の形態1では、第1研磨工程と第2研磨工程を異なる研磨装置を使用して実施しているが、これに限らず、例えば、第1研磨工程と第2研磨工程とを同一の研磨装置を用いて実施してもよい。この構成によれば、半導体製造装置である研磨装置の構成を簡素化できる利点がある。
さらに、本願で開示された1つの発明の1つの特徴は、上述したように第1研磨工程において、タングステン膜5bをすべて研磨せずに残存させる点にある。これにより、第1研磨工程を高速で行なうことができるので、スループットを向上させることができる。このため、本実施の形態1における半導体装置の製造方法は、大量生産に適しているといえる。つまり、タングステン膜5b(チタン/窒化チタン膜5aも含む)をすべて研磨してしまうと、酸化シリコン膜3にエロージョンが発生してしまう。特に、タングステン膜5bの研磨速度が速くなるとエロージョンも大きくなる。したがって、タングステン膜5bをすべて研磨する場合は、タングステン膜5bの研磨速度をあまり速くすることができない。これに対し、本実施の形態1における第1研磨工程では、タングステン膜5bをすべて研磨せずに残存させている。このため、第1研磨工程における研磨速度を高速にしてもエロージョンは生じることはないのである。
本実施の形態1では、第1研磨工程でタングステン膜5bのすべてを研磨せずに一部を残存させるようにしている。これにより、層間絶縁膜を構成する酸化シリコン膜のうち、プラグが密集している領域のエロージョンを防止することができる。次に、第1研磨工程による研磨の終了位置をそれぞれ変えることにより、どの程度エロージョンが変化するかについて説明する。
図8は、層間絶縁膜に形成したコンタクトホール4内を含む酸化シリコン膜3上にチタン/窒化チタン膜5aおよびタングステン膜5bを形成した状態を示す図である。この図8に示す状態からCMP法による第1研磨工程を実施する。このとき、第1研磨工程による研磨を終了する時点をそれぞれ条件1〜条件4に示す。すなわち、条件1は、タングステン膜5bの一部を残存させた位置で研磨を終了することを示しており、条件2は、タングステン膜5bをほぼ研磨し、その下層に形成されているチタン/窒化チタン膜5aが露出した位置で研磨を終了することを示している。条件3は、酸化シリコン膜3がほぼ露出した位置で研磨を終了することを示しており、条件4は、完全に酸化シリコン膜3が露出した位置で研磨を終了することを示している。
条件1〜条件4で示す研磨の終了時点を判断するには、研磨装置のトルク電流波形を解析することにより判断できる。図9は、研磨時間(Polish time)とトルク電流(Torque Current)との関係を示すグラフである。横軸は研磨時間(s)を示しており、縦軸はトルク電流(A)を示している。図9において、研磨時間が10(s)から30(s)程度まではトルク電流がほぼ一定であり、この期間がタングステン膜5bを研磨している時間であることがわかる。したがって条件1は、図9に示すポイント(研磨時間26(s))であることがわかる。次に、研磨時間30(s)を超えると一端トルク電流は上昇し、続いて下降していることがわかる。トルク電流が一端上昇する点が条件2を示しており、下降した点が条件3を示している。そして、その後、トルク電流が15(A)で一定になる点が条件4を示している。このように研磨時間とトルク電流の関係により、条件1〜条件4で示す終了時点を判断することができる。
次に、第1研磨工程をそれぞれ条件1〜条件4で終了した後、第2研磨工程を実施する。第2研磨工程は、酸化シリコン膜3のシニング量が50nmとなるように実施する。この第2研磨工程を実施した後において、条件1〜条件4におけるエロージョン量を図10に示す。図10に示すように、酸化シリコン膜3が露出する前で第1研磨工程を終了する条件1および条件2では、ほとんどエロージョンが発生していないことがわかる。一方、酸化シリコン膜3が露出するまで第1研磨工程を行なう条件3および条件4では、エロージョンが発生しており、その発生量は35nmを超えている。そして、条件3よりも条件4の方が、エロージョン量が大きくなっていることから、酸化シリコン膜3のオーバ研磨量を増加させるほどエロージョンが大きくなることがわかる。したがって、本実施の形態1のように、酸化シリコン膜3が露出する前に、第1研磨工程を終了すれば、エロージョンを大幅に低減することができる。このため、層間絶縁膜を構成する酸化シリコン膜3を極めて平坦な状態にすることができ、次工程への影響を少なくすることができる。
なお、本実施の形態1における第1研磨工程の終了ポイントは条件1に対応する。しかし、図10に示すように、第1研磨工程の終了ポイントを条件2にしてもエロージョンをほとんどなくすことができることがわかる。すなわち、タングステン膜5bをほぼ研磨してチタン/窒化チタン膜5aを露出した状態で第1研磨工程を終了させる場合にもエロージョンを低減できることがわかる。以上のことから、酸化シリコン膜3を露出する前に第1研磨工程を終了させるように構成すれば、エロージョンの発生を低減することができることがわかる。つまり、本実施の形態1では、タングステン膜5bの一部を残す時点で第1研磨工程を終了するように構成したが、タングステン膜5bをほぼ研磨してチタン/窒化チタン膜5aを露出する時点で第1研磨工程を終了しても本実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
このように第1研磨工程と第2研磨工程を実施することにより、図7に示すプラグ6を形成することができる。次に、層間絶縁膜にプラグ6を形成した後の工程について説明する。
図11に示すように、プラグ6を形成した酸化シリコン膜3上に窒化シリコン膜7を形成し、窒化シリコン膜7上にSiOC膜8を形成する。窒化シリコン膜7は、例えば、CVD法を使用することにより形成できる。この窒化シリコン膜7は、その上層に形成されるSiOC膜8に配線形成用の溝を形成する際、その掘りすぎによりSiOC膜8の下層に形成されている膜に損傷を与えたり、加工寸法精度が劣化することを回避するために設けられているものである。
SiOC膜8は、層間絶縁膜の一部を構成する膜であり、酸化シリコン膜よりも誘電率が低い低誘電率膜である。従来、層間絶縁膜として酸化シリコン膜が使用されている。しかし、半導体装置の微細化に伴い、半導体ウェハ上に形成される配線間の容量が無視できなくなり、配線を流れる電気信号の遅延が顕在化してきている。そこで、本実施の形態では、層間絶縁膜として、酸化シリコン膜に代えて酸化シリコン膜よりも誘電率の低いSiOC膜8を使用している。SiOC膜8によれば、配線間に存在する層間絶縁膜の誘電率を低下させることができるので、配線間の容量を低減することができ、配線を流れる電気信号の遅延を抑制することができる。SiOC膜8は、例えば、CVD法を使用して形成することができる。このSiOC膜8は、SiO2結合の一部がSiCH3結合に置き換り誘電率を下げている。
本実施の形態では、低誘電率膜としてSiOC膜8を例に挙げたがこれに限らず、例えば、オルガノシリコン系の有機ポリマーまたは有機シリカガラスなどのような低誘電率材料(いわゆるLow−k絶縁膜、Low−k材料)から形成してもよい。なお、低誘電率膜とは、パッシベーション膜に含まれる酸化シリコン膜(例えば、TEOS(Tetraethoxysilane)酸化膜)の誘電率よりも低い誘電率を有する絶縁膜を例示できる。一般的には、TEOS酸化膜の比誘電率ε=4.1〜4.2程度以下を低誘電率膜という。
低誘電率材料としての有機ポリマーには、例えばSiLK(米The Dow Chemical Co.製、比誘電率=2.7、耐熱温度=490℃以上、絶縁破壊耐圧4.0〜5.0MV/Vm)などがある。低誘電率材料としてのポーラス有機系材料には、例えば、PolyELK(米Air Productsand Chemicals Inc.製、比誘電率=2以下、耐熱温度490℃)などがある。
次に、SiOC膜8上に酸化シリコン膜9を形成する。酸化シリコン膜9は、例えば、TEOSを原料としたCVD法を使用して形成することができる。なお、酸化シリコン膜9は、TEOSを原料とするCVD法だけでなく、シラン(SiH4)などを原料とするCVD法で形成した膜であってもよい。
この酸化シリコン膜9は、SiOC膜8を保護するために形成される。すなわち、層間絶縁膜となるSiOC膜8上に形成した酸化シリコン膜9は、SiOC膜8に溝や埋め込み配線を形成する工程で行なわれるエッチングおよびアッシングからSiOC膜8を保護する機能を有する。SiOC膜8をエッチングする工程では、異方性を実現するためにフッ素(F)を含むエッチングガス(CF4、CHF3、C5F8、O2、Arなどを組み合わせたガス)を使用する。そして、エッチングを実施した後、エッチング装置でアッシングを行なう。このようなエッチング工程およびアッシング工程において、SiOC膜8がO2プラズマにさらされると、SiOC膜8中の炭素の含有量が減少し、SiOC膜8の誘電率が上昇してしまう。SiOC膜8が多孔質であるほどこの現象は顕著に現れるといわれる。また、エッチング工程やアッシング工程において、SiOC膜8中のSi−CH3結合がSi−OH結合に変化することが知られており、この結合の変化によりSiOC膜8は、疎水性から親水性へと変化する。このとき、SiOC膜8に水分が吸収されると絶縁膜破壊に至るとも言われている。さらに、SiOC膜8の組成がレジスト膜の組成に近く、レジスト膜を除去する工程でSiOC膜8も損傷を受けやすい。これらのことから、低誘電率膜であるSiOC膜8を露出した状態でエッチングやアッシングを行なうことは望ましくないので、SiOC膜8上に保護膜として酸化シリコン膜9を設けているのである。
次に、図12に示すように、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を使用することにより、窒化シリコン膜7、SiOC膜8および酸化シリコン膜9を貫通する配線溝16を形成する。すなわち、半導体ウェハ1上に形成されている酸化シリコン膜9上にレジスト膜を塗布し、このレジスト膜に対して露光・現像処理を施すことによりパターニングする。パターニングは、配線溝16を形成する領域にレジスト膜が残らないように行なわれる。そして、パターニングしたレジスト膜をマスクとしたエッチングにより、配線溝16を形成する。その後、パターニングしたレジスト膜はアッシングにより除去される。ここで、SiOC膜8の組成がレジスト膜の組成に近く、SiOC膜8が露出している場合、レジスト膜を除去する工程でSiOC膜8も損傷を受けやすい。しかし、本実施の形態1では、SiOC膜8上に保護膜として酸化シリコン膜9が形成されているので、レジスト膜を除去する工程において、SiOC膜8が損傷を受けることを防止できる。
続いて、配線溝16の底部に露出したプラグ6の表面に形成されている反応層を除去するために、Ar(アルゴン)雰囲気中でスパッタエッチングを行い、半導体ウェハ1の表面処理を行なう。なお、本実施の形態では、アルゴン雰囲気中でスパッタエッチングすることによりプラグ6の表面に形成された反応層を除去する場合を示した。しかし、例えば、水素(H2)や一酸化炭素(CO)のような還元性ガスや、還元性ガスと不活性ガスとの混合ガス雰囲気中での熱処理により、反応層を充分に除去できる場合には、スパッタエッチングに変えて、この熱処理によって反応層を除去してもよい。熱処理の場合、スパッタエッチングにおける酸化シリコン膜9の損失や電子によるゲート絶縁膜のチャージングダメージを防止することができる。
次に、図13に示すように、半導体ウェハ1上にバリア導体膜となる窒化タンタル膜(TaN膜)17aを形成する。窒化タンタル膜17aは、タンタルターゲットをアルゴン/窒素混合雰囲気中で使用する反応性スパッタリング法で形成することができる。この窒化タンタル膜17aは、後の工程で形成する銅膜の密着性の向上および銅の拡散防止のために形成される。窒化タンタル膜17aの膜厚は、例えば、30nm程度である。
本実施の形態では、バリア導体膜として窒化タンタル膜17aを形成する例を示しているが、バリア導体膜として、タンタルなどの金属膜、窒化チタン膜(TiN膜)あるいは金属膜と窒化膜との積層膜であってもよい。バリア導体膜がタンタル膜や窒化タンタル膜の場合には、窒化チタン膜を用いる場合より銅膜との密着性がよい。また、バリア導体膜が窒化チタン膜の場合、この後の工程である銅膜の形成直前に窒化チタン膜の表面をスパッタエッチングすることも可能である。このようなスパッタエッチングにより、窒化チタン膜の表面に吸着した水、酸素分子などを除去し、銅膜の密着性の向上を図ることができる。特に、この技術は、窒化チタン膜を形成した後、真空破壊して半導体ウェハ1の表面を大気にさらして銅膜を形成する場合に効果が大きい。なお、この技術は、窒化チタン膜に限らず、窒化タンタル膜17aなどを形成する場合においても有効である。
続いて、窒化タンタル膜17a上に銅膜あるいは銅合金膜よりなるシード膜(図示せず)を形成する。シード膜は、例えば、長距離スパッタリング法によって形成することができる。このシード膜の膜厚は、配線溝16の内部を除いた窒化タンタル膜17aの表面において、40nm〜200nm程度、好ましくは80nm程度となるようにする。本実施の形態では、シード膜の形成に長距離スパッタリング法を用いる例について説明しているが、銅原子をイオン化することでスパッタリングの指向性を高めるイオン化スパッタリング法を用いてもよい。シード膜は、その後の銅膜を形成するための電極として機能する。
次に、シード膜が形成された半導体ウェハ1の全面に、例えば銅膜(導体膜)17bを配線溝16に埋め込むように形成する。配線溝16に埋め込む銅膜17bは、シード膜を電極とした電界めっき法を使用して形成することができる。めっき液としては、例えば、硫酸(H2SO4)に10%の硫酸銅(CuSO4)および銅膜のカバレッジ向上用の添加剤を加えたものを用いる。この銅膜17bの形成に電界めっき法を用いた場合、銅膜17bの成長速度を電気的に制御できるので、配線溝16の内部における銅膜17bのカバレッジを向上させることができる。本実施の形態では、銅膜17bの形成に電界めっき法を用いているが、無電界めっき法を用いてもよい。無電界めっき法を用いた場合、電圧印加を必要としないので、電圧印加に起因する半導体ウェハ1のダメージを、電界めっき法を用いた場合よりも低減することができる。
また、銅膜17bを形成する工程に続けて、熱処理を施すことにより銅膜17bを流動化させることも可能である。この熱処理により、銅膜17bが流動化するので、銅膜17bの配線溝16への埋め込み性を向上することができる。
続いて、図14に示すように、酸化シリコン膜9上に形成されている不要な窒化タンタル膜17aおよび銅膜17bを除去する。不要な窒化タンタル膜17aおよび銅膜17bを除去するには、例えばCMP法を使用することにより実現できる。これにより、配線溝16の内部にだけ窒化タンタル膜17aおよび銅膜17bを残すことができ、配線溝16の内部に埋め込まれた配線18を形成することができる。
ここで、銅膜17bよりなる配線18を形成する場合も、タングステン膜5bよりなるプラグ6を形成する場合と同様にCMPによる研磨を行なっている。したがって、銅膜17bを研磨する場合もタングステン膜5bを研磨するのと同様に本実施の形態1におけるCMP研磨において、第1研磨工程と第2研磨工程を実施する必要があるのかが問題となる。
しかし、銅膜17bの研磨とタングステン膜5bの研磨では研磨プロセスが異なる。すなわち、タングステン膜5bを研磨する工程では、タングステン膜5bを研磨する第1研磨液105でそのままバリア導体膜であるチタン/窒化チタン膜5aも研磨できる。このため、タングステン膜5bを研磨する第1研磨液105では、過研磨すると、チタン/窒化チタン膜5aまで除去されて酸化シリコン膜3が露出する。したがって、プラグ6が密集している領域では、エロージョンやディッシングにより平坦化が悪化する。そこで、本実施の形態1では、チタン/窒化チタン膜5aが露出する時点あるいはチタン/窒化チタン膜5aが露出する前に第1研磨液105のみによる研磨を終了し、その後、酸化シリコン膜3を研磨できる第2研磨液112を第1研磨液105と混合した第3研磨液(選択比がほぼ1)を用いて研磨するようにしている。これによりエロージョンやディッシングを防止することができる。
これに対し、銅膜17bを研磨する工程において、銅膜17bを研磨する研磨液では、バリア導体膜である窒化タンタル膜17aが削れないようになっており、これにより過研磨しても平坦性が悪化しないようになっている。つまり、銅膜17bの研磨では、窒化タンタル膜17aが研磨されないので、窒化タンタル膜17aの下層に形成されている酸化シリコン膜9にエロージョンが発生することはない。したがって、銅膜17bの研磨の際、タングステン膜5bを研磨するような構成をとる必要はないのである。つまり、第1研磨工程(タングステン膜5bを主に研磨する第1研磨液105を使用)と、第2研磨工程(酸化シリコン膜3を研磨する第2研磨液112と第1研磨液105とを混合した第3研磨液を使用)とを有する研磨方法は、タングステン膜を研磨する場合に有効である。
なお、本実施の形態1では、埋め込み配線である配線18を銅膜17bから構成するようにしたが、配線18をタングステン膜から形成するようにしてもよい。この場合、第1研磨工程と第2研磨工程を有する研磨方法を実施することで、エロージョンやディッシングを防止できる。
その後、図15に示すように、例えば、CMP法を使用することにより、酸化シリコン膜9を除去する。この酸化シリコン膜9は、下層に形成されているSiOC膜8を保護する機能を有しているが、すでにSiOC膜8内に埋め込まれた配線18を形成した後は、配線18の形成時に実施されるエッチング工程やアッシング工程が終了していることから、保護する必要がなくなるからである。すなわち、本実施の形態1では、配線間の容量を低減する観点から低誘電率膜であるSiOC膜8を形成したが、このSiOC膜8上に誘電率の高い酸化シリコン膜9が形成されていると、層間絶縁膜の誘電率が高くなってしまう。このため、酸化シリコン膜9を除去することにより、層間絶縁膜の誘電率を低減することができる。したがって、配線を流れる電気信号の遅延を抑制することができる。なお、本実施の形態1では、酸化シリコン膜9を除去する例について説明したが、酸化シリコン膜9を除去しなくてもよい。この場合、製造工程を簡略化することができる。
次に、図16に示すように、配線18を形成したSiOC膜8上に窒化シリコン膜19を形成する。窒化シリコン膜19は、例えば、CVD法を使用することにより形成することができる。この窒化シリコン膜19は、バリア絶縁膜であり、配線18を構成する銅の拡散を抑制する機能を有している。これにより、バリア導体膜である窒化タンタル膜17aとともに銅膜17bを構成する銅の拡散を抑制することができる。したがって、銅膜17bを囲む絶縁膜の絶縁性を保持し、半導体装置の信頼性を向上させることができる。また、バリア絶縁膜である窒化シリコン膜19は、後の工程で行なわれるエッチングの際のエッチングストッパ膜としても機能する。本実施の形態1では、バリア絶縁膜として窒化シリコン膜を例に挙げて説明したが、これに限らず、例えば、バリア絶縁膜を、炭化シリコン膜(SiC膜)、炭窒化シリコン膜(SiCN膜)あるいは酸窒化シリコン膜(SiON膜)から構成するようにしてもよい。
続いて、窒化シリコン膜19上にSiOC膜20を形成する。このSiOC膜20は、層間絶縁膜の一部を構成する膜であり、酸化シリコン膜よりも誘電率が低い性質を有している。このため、配線間に形成する層間絶縁膜の誘電率を下げることが可能であり、配線間の容量を低減することができる。つまり、配線を流れる電気信号の遅延を抑制することができる。このSiOC膜20は、例えば、CVD法を使用することにより形成できる。
その後、SiOC膜20上に窒化シリコン膜21を形成する。窒化シリコン膜21は、例えば、CVD法を使用することにより形成できる。この窒化シリコン膜21は、エッチングストッパ膜として機能する膜であり、窒化シリコン膜21上の絶縁膜に配線形成用の配線溝などを形成する際、その掘りすぎにより下層の膜に損傷を与えたり、加工寸法精度が劣化することを防止するための膜である。
次に、窒化シリコン膜21上にSiOC膜22を形成する。SiOC膜22は、例えば、CVD法により形成することができる。SiOC膜22も層間絶縁膜の一部を構成する膜であり、酸化シリコン膜よりも低誘電率であるため、配線間の容量を低減することができる。そして、SiOC膜22上に酸化シリコン膜23を形成する。酸化シリコン膜23は、例えば、TEOSを原料としたCVD法により形成することができる。この酸化シリコン膜23は、下層に形成されているSiOC膜22を保護するために形成されている。つまり、層間絶縁膜となるSiOC膜22上に形成した酸化シリコン膜23は、SiOC膜22に溝や埋め込み配線を形成する工程で行なわれるエッチングおよびアッシングからSiOC膜22を保護する機能を有する。
続いて、図17に示すように、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を使用することにより、窒化シリコン膜19、SiOC膜20、窒化シリコン膜21、SiOC膜22および酸化シリコン膜23を貫通する接続孔24と配線溝25とを形成する。そして、接続孔24の底部に露出した配線18の表面に形成されている反応層を除去するために、Ar(アルゴン)雰囲気中でスパッタエッチングを行い、半導体ウェハ1の表面処理を行なう。
次に、図18に示すように、半導体ウェハ1上にバリア導体膜となる窒化タンタル膜(TaN膜)26aを形成する。窒化タンタル膜26aは、タンタルターゲットをアルゴン/窒素混合雰囲気中で使用する反応性スパッタリング法で形成することができる。この窒化タンタル膜26aは、後の工程で形成する銅膜の密着性の向上および銅の拡散防止のために形成される。窒化タンタル膜26aの膜厚は、例えば、30nm程度である。
本実施の形態1では、バリア導体膜として窒化タンタル膜26aを形成する例を示しているが、バリア導体膜として、タンタルなどの金属膜、窒化チタン膜(TiN膜)あるいは金属膜と窒化膜との積層膜であってもよい。
続いて、窒化タンタル膜26a上に銅膜あるいは銅合金膜よりなるシード膜(図示せず)を形成する。シード膜は、例えば、長距離スパッタリング法によって形成することができる。そして、シード膜が形成された半導体ウェハ1の全面に、例えば銅膜(導体膜)26bを接続孔24および配線溝25に埋め込むように形成する。接続孔24および配線溝25に埋め込む銅膜26bは、シード膜を電極とした電界めっき法を使用して形成することができる。
次に、図19に示すように、酸化シリコン膜23上に形成されている不要な窒化タンタル膜26aおよび銅膜26bを除去する。不要な窒化タンタル膜26aおよび銅膜26bを除去するには、例えばCMP法を使用することにより実現できる。これにより、接続孔24および配線溝25の内部にだけ窒化タンタル膜26aおよび銅膜26bを残すことができ、接続孔24の内部に埋め込まれたプラグ27と配線溝25の内部に埋め込まれた配線28を形成することができる。
その後、図20に示すように、例えば、CMP法を使用することにより、酸化シリコン膜23を除去する。この酸化シリコン膜23は、下層に形成されているSiOC膜22を保護する機能を有しているが、すでにSiOC膜22内に埋め込まれた配線28を形成した後は、配線28の形成時に実施されるエッチング工程やアッシング工程が終了していることから、保護する必要がなくなるからである。
以上より、本実施の形態1における半導体装置を製造することができる。なお、配線28の上部にさらに多層の配線を形成してもよいが、本明細書での説明は省略する。
本実施の形態1によれば、タングステン膜5bよりなるプラグ6を形成する際、第1研磨工程と第2研磨工程を実施しているので、プラグ6の密集した領域においても層間絶縁膜を構成する酸化シリコン膜3にエロージョンが発生することを低減できる。つまり、プラグ6を形成した酸化シリコン膜3の表面を充分に平坦化することができる。
タングステン膜5bよりなるプラグ6を形成した酸化シリコン膜3上に銅配線を形成する場合、銅配線の厚さは、プラグ6を形成する際に生じるエロージョン分変動する。例えば、第1層の銅配線の厚さを150nmとした場合、30nmのエロージョンが発生すると第1層の銅配線の抵抗変動は20%にもなり、配線抵抗のばらつきが問題となる。しかし、本実施の形態1における半導体装置の製造方法によれば、プラグ6を形成した酸化シリコン膜3のエロージョンを低減することができる。したがって、プラグ6を形成した酸化シリコン膜3の平坦性を向上することができるので、上層に銅配線を形成した場合に、銅配線の抵抗のばらつきを抑制することができる。なお、本実施の形態1では、プラグ6を形成した酸化シリコン膜3上に銅配線を形成する例を示しているが、これに限らず、例えば、アルミニウム膜あるいはアルミニウム合金膜よりなる配線を形成する場合においても適用することができる。つまり、タングステン膜5bよりなるプラグ6(あるいは配線)を形成する半導体装置であれば、本願で開示される1つの発明を適用することができる。例えば、不揮発性メモリ、DRAM(Dynamic Random Access Memory)を始めとするメモリ製品や、SOC(Silicon On a Chip)などのLogic製品などの半導体装置に適用することが可能である。
(実施の形態2)
前記実施の形態1では、チタン/窒化チタン膜5aおよびタングステン膜5bを酸化シリコン膜3上に形成した後、タングステン膜5bを研磨する第1研磨液105を用いて第1研磨工程を酸化シリコン膜3が露出する前まで行なう。そして、酸化シリコン膜3の研磨速度とタングステン膜5bの研磨速度の比(選択比)がほぼ1の第3研磨液を用いて第2研磨工程を行なう例について説明した。本実施の形態2では、上述した第1研磨工程を行なわず、不要なタングステン膜5bの除去に始めから、酸化シリコン膜の研磨速度とタングステン膜の研磨速度の比がほぼ1の第3研磨液を用いて研磨する例について説明する。
図1から図4に示す工程までは、前記実施の形態1と同様である。続いて、酸化シリコン膜3上に形成されている不要なチタン/窒化チタン膜5aおよびタングステン膜5bを第3研磨液で研磨することによって除去する。このようにして、図7に示すようなプラグ6を形成することができる。その後の工程は、前記実施の形態1と同様である。
ここで、第3研磨液は、タングステン膜5b(チタン/窒化チタン膜5aを含む)を主に研磨する第1研磨液と、酸化シリコン膜3を主に研磨する第2研磨液とを混合した研磨液である。そして、酸化シリコン膜3の研磨速度とタングステン膜5bの研磨速度の比(選択比)がほぼ1である。したがって、第3研磨液で酸化シリコン膜3上のタングステン膜5bとチタン/窒化チタン膜5aを除去した後、露出した酸化シリコン膜3の一部も除去される。この酸化シリコン膜3の研磨量(シニング量)を本実施の形態2では、50nmとしている。
第3研磨液において、第1研磨液と第2研磨液とを混合する割合を変えた場合の酸化シリコン膜の研磨速度(SiO2研磨速度)、タングステン膜の研磨速度(W研磨速度)および選択比を図21に示す。図21では、第1研磨液と第2研磨液の流量比(研磨液流量比)が100cc:100cc、100cc:150cc、100cc:200cc、100cc:300ccの場合を示している。例えば、第1研磨液と第2研磨液の流量比が100cc:100ccの場合、酸化シリコン膜の研磨速度は150nm/minであり、タングステン膜の研磨速度は207nm/minである。また、このときの酸化シリコン膜の研磨速度に対するタングステン膜の研磨速度の選択比(W/SiO2選択比)は、1.38であることがわかる。なお、第1研磨液と第2研磨液は、研磨装置の定盤上で混合している。図21に示すように、タングステン膜を研磨する第1研磨液の流量に対して、酸化シリコン膜を研磨する第2研磨液の流量を増加させると、選択比が小さくなることがわかる。
図21に示すそれぞれの選択比を有する第3研磨液を用いてタングステン膜およびチタン/窒化チタン膜を研磨した場合、酸化シリコン膜に発生するエロージョン量を図22に示す。図22に示すように、選択比が1の場合、エロージョンはほとんど発生しないことがわかる。酸化シリコン膜の研磨速度が速い場合(選択比が小さい場合)には、エロージョン量は負となり、タングステン膜が突き出した、いわゆる逆エロージョンが発生する。一方、タングステン膜の研磨速度が速い場合(選択比が大きい場合)には、エロージョンが発生することがわかる。しかし、図22に示すように、第3研磨液の選択比が0.7以上1.5以下であれば、エロージョン量を20nm(絶対値)以下に低減できることがわかる。つまり、本実施の形態2のように、第1研磨液と第2研磨液とを混合した第3研磨液だけを用いてタングステン膜を研磨する場合も、第3研磨液において、酸化シリコン膜の研磨速度に対するタングステン膜の研磨速度の比を示す選択比を0.7以上1.5以下にすることにより、エロージョンの発生を低減できることがわかる。このため、プラグを形成した層間絶縁膜上にダマシン法による銅配線を形成する場合、エロージョンに起因する配線抵抗のばらつきを低減することができる。なお、第3研磨液において、酸化シリコン膜の研磨速度に対するタングステン膜の研磨速度の比を示す選択比を0.9以上1.2以下にすれば、さらに、エロージョンを低減することができる。
(実施の形態3)
本実施の形態3は、前記実施の形態1と同様にタングステン膜の研磨を第1研磨工程と第2研磨工程で行なう。前記実施の形態1では、半導体ウェハの全面にタングステン膜を形成する場合について説明しているが、本実施の形態3では、半導体ウェハの外周から2mmの範囲にはタングステン膜を成膜しない場合も含めて説明する。すなわち、製造する製品によっては、半導体ウェハの外周部にタングステン膜を成膜しない場合もあるので、この場合も含めて、本願で開示される1つの発明を適用する例について説明する。
まず、図1から図4に示すようにして、コンタクトホール4を形成した酸化シリコン膜3上にチタン/窒化チタン膜5aおよびタングステン膜5bを形成する。ここで、第1半導体ウェハにおいては、チタン/窒化チタン膜5aおよびタングステン膜5bを外周から2mmの範囲には形成していない。これに対し、第2半導体ウェハにおいては、チタン/窒化チタン膜5aおよびタングステン膜5bを全面に形成する。
次に、第1半導体ウェハと第2半導体ウェハのそれぞれに対し、第1研磨工程を実施する。第1研磨工程は、タングステン膜5b(チタン/窒化チタン膜5aも含む)だけを研磨する第1研磨液を用いて、タングステン膜5bの残膜厚が200nm、70nm、30nm、0nmになるまで行なうものと酸化シリコン膜3を露出するまで行なうものを第1半導体ウェハと第2半導体ウェハのそれぞれについて形成する。
続いて、それぞれ形成した第1半導体ウェハおよび第2半導体ウェハに対して、第2研磨工程を実施する。第2研磨工程は、第1研磨液と酸化シリコン膜を研磨する第2研磨液とを混合した第3研磨液を使用して研磨する。この第3研磨液において、酸化シリコン膜の研磨速度に対するタングステン膜の研磨速度の比を示す選択比は1にする。
このようにして、酸化シリコン膜3上に形成される不要なタングステン膜5bを除去するが、この際、酸化シリコン膜3に発生するエロージョンと、酸化シリコン膜3の研磨量のばらつき(シニングばらつき)を図23に示す。
図23に示すように、外周から2mmの範囲にはタングステン膜5bを形成しない第1半導体ウェハと全面にタングステン膜5bを形成する第2半導体ウェハの両方とも、酸化シリコン膜3を露出するまで第1研磨工程を実施する場合以外は、エロージョンを5nm以下に低減できていることがわかる。したがって、外周から2mmの範囲にはタングステン膜5bを形成しない第1半導体ウェハであっても、酸化シリコン膜3が露出する前に第1研磨工程を終了し、その後第2研磨工程を実施することによって、エロージョンの発生を低減できることがわかる。
しかし、外周から2mmの範囲にはタングステン膜5bを形成しない第1半導体ウェハにおいては、第1研磨工程で残すタングステン膜5bの残膜厚が大きいほど酸化シリコン膜3の研磨量のばらつきが大きくなっていることがわかる。例えば、第1研磨工程で残すタングステン膜5bの残膜厚が30nmの場合には、酸化シリコン膜3の研磨量のばらつきは18nm程度である。これに対し、第1研磨工程で残すタングステン膜5bの残膜厚が200nmの場合には、酸化シリコン膜3の研磨量のばらつきは60nmにもなる。これは、以下に示す理由による。つまり、外周から2mmの範囲にタングステン膜5bを形成しない場合、第1研磨工程をタングステン膜5bの残膜厚が200nmである時点で終了すると、タングステン膜5bを形成している領域には、残膜200nmのタングステン膜5bが残っているのに対し、タングステン膜5bを形成していない領域では、酸化シリコン膜3が露出していることになる。この状態で第2研磨工程を実施すると、タングステン膜5bを形成している領域では、すぐに酸化シリコン膜3が研磨されることはなく、残存しているタングステン膜5bから研磨される。一方、タングステン膜5bを形成していない領域では、第2研磨工程が始まるとすぐに露出している酸化シリコン膜3が研磨される。このため、タングステン膜5bが形成されている領域とタングステン膜5bが形成されていない領域で、酸化シリコン膜3の研磨量に差が生じるのである。このことから、酸化シリコン膜3の研磨量にばらつきが生じる。このばらつきは、タングステン膜5bの残膜厚が大きいほど顕著に現れる。図23に示すシニングばらつきは、外周から3mmまで計測したときのばらつき量を示している。
以上のことから、外周から2mmの範囲にはタングステン膜5bを形成しない第1半導体ウェハに対しては、第1研磨工程におけるタングステン膜5bの残膜厚をできるだけ少なくすることが望ましいことがわかる。つまり、第1研磨工程におけるタングステン膜5bの残膜厚を70nm以下、または、50nm以下にすることが望ましい。さらに、30nm以下にすることが望ましい。第1研磨工程におけるタングステン膜5bの残膜厚を30nm以下にすることによって、タングステン膜5bを全面に形成した第2半導体ウェハと同等のシニングばらつきにすることができる。このように、酸化シリコン膜3をほとんど研磨しない第1研磨工程をタングステン膜5bの残膜厚をできる限り少なくすることで、第2研磨工程における酸化シリコン膜3の研磨量のばらつきを低減することができる。したがって、半導体ウェハの外周部でのチップ取得領域を広げることができ、チップ取得数を増やすことができる。
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。