JP2007308630A - コークスの製造方法 - Google Patents

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Izumi Shimoyama
泉 下山
Takashi Anyashiki
孝思 庵屋敷
Kiyoshi Fukada
喜代志 深田
Hidekazu Fujimoto
英和 藤本
Tetsuya Yamamoto
哲也 山本
Hiroyuki Sumi
広行 角
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Abstract

【課題】石炭の軟化溶融性をより適切に評価することのできる評価指標を選定し、その評価指標を用いて所望の強度、特に高強度のコークスを製造する技術を提供すること。
【解決手段】石炭を乾留してコークスを製造する際に、石炭の静電容量の温度依存性から求められる、石炭が構造変化を示す温度範囲と、該温度範囲における静電容量低下幅とを用いて、製造されるコークスの強度を予測することを特徴とするコークス強度の予測方法を用いる。この予測方法を用いて、複数種類の石炭を配合して乾留し、コークスを製造する際に、各石炭の静電容量の温度依存性から、前記各石炭が構造変化を示す温度範囲と、該温度範囲における静電容量低下幅とを求め、前記温度範囲と前記静電容量低下幅とに基づき、前記各石炭の配合率を決定することを特徴とするコークスの製造方法を用いる。
【選択図】図2

Description

本発明は、各種の石炭を配合して調整した配合炭を乾留して、高強度のコークスを製造する方法に関する。
高炉において溶銑を製造する際の原料として用いられるコークスは、高強度のものが望ましいことが広く知られている。これは、コークスの強度が低いと高炉内で粉化し、高炉の通気性が阻害され、安定的な高炉の操業が行なえなくなるためである。
室炉式コークス炉において石炭を乾留して製鉄用コークスを製造する場合、生成するコークスの強度は、原料石炭の選択方法、事前処理方法、乾留条件、消火条件、事後処理条件などの影響を受ける。これらの中で、設備や操業条件に係わる条件は設備的制約のため大きく変更することが難しいので、原料石炭の選択はコークス品質を制御するための最も重要な方法と認識されている。
望ましい強度のコークスを得るための原料配合方法としては、種々の方法が知られているが(例えば、非特許文献1参照。)、石炭の粘結性、すなわち、加熱により一旦溶融し、反応の進行とともに再び固化し、強固なコークス構造を形成する性質は重要な指標と認識されている。
石炭の粘結性に大きな影響を与える、加熱時の軟化溶融性を評価する方法は、ギーセラープラストメーター、ディラトメーター、るつぼ膨張性試験、ソ連式プラストメーター、粘弾性評価による方法など様々な公知技術があるが、いずれの方法においても長所及び短所があり、最適なものとして確立された技術はない。
一方で、石炭等の固体高分子物質の加熱過程において、軟化開始温度、ガラス転移温度及び溶融温度などの熱物性値を測定することは可能である。例えば、微粉砕した固体高分子物質を薄膜状に成形した試料を電極間に固定し、アルゴンや窒素などの不活性ガス中で昇温加熱しながら、静電容量(キャパシタンス)及び電気伝導度(コンダクタンス)を測定し、その値の温度依存性を基にして固体高分子物質の軟化開始温度、ガラス転移温度及び溶融温度などの熱物性値を測定する方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
宮津、奥山、鈴木、福山、森著「日本鋼管技報」第67巻 1975年、p.1−13 特開2004−325426号公報
上記のように、石炭の加熱時の軟化溶融性を評価する方法は確立していない。しかし、所望の強度のコークスを得るための原料配合を実現するためには、石炭の加熱時の軟化溶融性を正しく評価する必要がある。
このような現状に鑑み、石炭の軟化溶融性をより適切に評価することのできる評価指標を選定し、その評価指標を用いて所望の強度、特に高強度のコークスを製造する技術を提供することが本発明の目的である。
本発明者らは、上記目的のため、石炭の軟化溶融性評価に関する種々の方法を検討し、コークス品質への影響を調査した結果、以下の発明の完成に至った。
すなわち、(1)石炭を乾留してコークスを製造する際に、石炭の静電容量の温度依存性から求められる、石炭が構造変化を示す温度範囲と、該温度範囲における静電容量低下幅とを用いて、製造されるコークスの強度を予測することを特徴とするコークス強度の予測方法である。そして、この予測方法を用いて、石炭の配合構成を決定し、その石炭を乾留するコークスの製造方法の発明を完成した。その特徴は以下の通りである。
(2)複数種類の石炭を配合して乾留し、コークスを製造する際に、各石炭の静電容量の温度依存性から、前記各石炭が構造変化を示す温度範囲と、該温度範囲における静電容量低下幅とを求め、前記温度範囲と前記静電容量低下幅とに基づき、前記各石炭の配合率を決定することを特徴とするコークスの製造方法。
(3)石炭が構造変化を示す温度範囲と、静電容量低下幅とに対する、前記石炭の乾留後の強度との関係から、目標とする強度のコークスを製造するための温度範囲と静電容量低下幅とを設定し、各石炭について加重平均して求めた温度範囲と静電容量低下幅とが前記設定値となるように石炭の配合率を決定することを特徴とする(2)に記載のコークスの製造方法。
(4)配合後の石炭の、温度範囲が70℃以上、かつ静電容量低下幅が2.0pF以上となるように、石炭を配合することを特徴とする、(2)または(3)に記載のコークスの製造方法。
(5)石炭の静電容量の温度依存性を、前記石炭の昇温速度を1〜10℃/分として測定することを特徴とする(2)ないし(4)のいずれかに記載のコークスの製造方法。
本発明によれば、原料として用いる石炭をその性状に基づいて最適に選択することで任意の強度のコークスを得ることができる。これにより、高強度のコークスを製造することができるので、安定的な高炉の操業を行なうことができる。
本発明は、石炭加熱過程、すなわち石炭の軟化溶融過程における静電容量変化がコークス化反応および生成するコークスの性状に与える影響を調査した結果に基づいて完成されたものである。まず、本発明で得られた知見を説明する。
一般に、石炭を加熱昇温しながら石炭の静電容量の測定を行なうと、温度が高いほど、静電容量が増加する傾向が観測される。ところが、加熱過程で軟化溶融する石炭の場合、350〜400℃付近で静電容量が一旦増加した後、減少し、再び増加する、というパターンを示す。石炭の静電容量の温度変化の一例を、図1に示す。この現象は、石炭が軟化溶融する際に分子構造の変化が起こり、分子の移動性および極性が変化したことに基づくものと考えられている。
石炭が加熱によりコークス化して、高強度のコークスが得られる場合には、石炭の分子が熱分解して一旦石炭の高分子構造が破壊され、低分子化により溶融した状態で分子の再配列が起こり、黒鉛微結晶構造が成長して再固化し、欠陥の少ない強固なコークス構造を形成すると考えられている。従って、生成するコークスの性状は加熱による石炭分子の移動性に影響されると推定され、また、分子の移動性や凝集性には分子の極性が作用することが推測される。
上記の考え方に基づき、本発明者らは、加熱過程における石炭の静電容量変化と生成するコークス強度の関連を調査した。その結果、上記の構造変化を示すと考えられる温度範囲および、その温度範囲における静電容量の低下幅とコークス強度の間に関連があることを見出し、この新規な知見に基づき、本発明の完成に至った。
以下に本発明で得られた知見の詳細を述べ、それに基づく本発明を説明する。
加熱下における石炭の静電容量は、例えば、上記の特許文献1に示される加熱下での静電容量測定方法等の公知の方法で測定できる。石炭加熱過程の昇温速度などの測定条件は、同一条件下で静電容量の測定を行なうのであれば任意に設定することができるが、石炭がコークス炉内で受ける熱履歴に従う昇温速度条件下で石炭の加熱を行なうことが好ましい。
より具体的には、石炭の静電容量測定の際の昇温速度は、実際のコークス炉内における昇温速度である1〜10℃/分程度で一定の値とすることが望ましい。測定結果として得られる静電容量の温度による変化のパターンは図1に例示する通りであるが、この変化のパターンから、コークス強度に影響を与える2種の評価指標を得ることができる。すなわち、その第1の評価指標は、図2にAで示す「構造変化を示す温度範囲」として定義される値であり、第2の評価指標は、図2にBで示す第1の評価指標の温度範囲における「静電容量の低下幅」として定義される値である。これらの評価指標を用いることで、乾留後のコークス強度を予測することが可能となる。
上記第1の評価指標「構造変化を示す温度範囲」を求める方法を具体的に図3を用いて説明する。「構造変化を示す温度範囲」Aとは、構造変化を開始したと考えられる温度と終了したと考えられる温度の差として求められる。構造変化を開始したと考えられる温度は、図3における直線1と直線2の交点の温度として定義できる。直線1は、200℃〜300℃における静電容量変化を直線近似した直線であり、例えば、その範囲の測定値と温度の回帰直線をもって直線1とすることができる。直線2は、200℃〜静電容量極大点5の温度の範囲における静電容量温度変化の傾きが最大となる点(傾き極大点6)を通り、傾き極大点6における傾きを持つ直線である。構造変化が終了したと考えられる温度は、図3における直線3と直線4の交点の温度として定義できる。ここで、直線3は、図3における静電容量極小点7の温度から高温側50℃以内における静電容量温度変化の傾きが最大となる点(傾き極大点8)を通り、傾き極大点8における傾きを持つ直線である。直線4は、図3における静電容量極小点7の温度+50℃の温度9における静電容量値の点を通り、その点における傾きを持つ直線である。この時、直線3と直線4が一致する場合には、直線1と直線4の交点をもって、構造変化が終了したと考えられる温度とする。なお、静電容量の温度変化において、静電容量極大点5および極小点7を持たない石炭は「構造変化を示す温度範囲」=0とするのが適当である。
上記第2の評価指標「静電容量の低下幅」の求め方を、図4を用いて説明する。「静電容量の低下幅」Bは、図4に示す静電容量極大点5と静電容量極小点7の静電容量の差として求める。この時、静電容量極大点5および極小点7をもたない石炭は「静電容量の低下幅」=0とするのが適当である。
このようにして種々の石炭について静電容量の温度変化曲線を測定し、「構造変化を示す温度範囲」と「静電容量の低下幅」を求め、その石炭を乾留して生成したコークスの強度との相関を調べた。その結果を図5にまとめて示す。図5中の点の側に付記した数字は、その石炭を乾留して生成したコークスのJISドラム強度指数DI150/15の値である。図5より、「構造変化を示す温度範囲≧70℃」かつ「静電容量の低下幅≧2.0pF」の石炭(図5中の点線で区切った右上部分)から、ドラム強度82以上の高強度(DI150/15≧82)のコークスが得られることが明らかである。したがって、石炭加熱過程で得られる静電容量変化曲線において、構造変化を示す温度範囲が70℃以上、かつその温度範囲における静電容量低下幅が2.0pF以上となるような石炭を用いてコークスを製造することで、高強度のコークスが得られることが分かる。
なお、上記において石炭としては、単一銘柄の石炭からなる単味炭および2〜6種の石炭を配合して調整した配合炭を試験に供している。静電容量の測定値は、乾留した単味炭または配合炭での実測値である。すなわち、単に「構造変化を示す温度範囲」と「静電容量の低下幅」が所定範囲の石炭のみを用いて高強度コークスを製造するだけでなく、「構造変化を示す温度範囲」と「静電容量の低下幅」が所定範囲となるように各種銘柄の石炭を配合することで、高強度コークスを製造することが可能となる。なお、配合炭の「構造変化を示す温度範囲」、「静電容量の低下幅」の値は、その配合炭を構成する単味炭の「構造変化を示す温度範囲」、「静電容量の低下幅」の値をそれぞれの配合率に基づき加重平均した値と概略一致した。したがって、本発明の方法においては、配合炭の調製にあたり、その配合炭の静電容量の測定を行なった値に基づいて配合炭構成を再調整して最終的な配合構成を決定してもよいし、各単味炭の静電容量の測定値から配合炭の静電容量の測定値を予測し、その値が上記範囲に入るように配合構成を決定してもよい。
コークス製造用の石炭として、あらかじめ静電容量の温度変化を測定して「構造変化を示す温度範囲」と「静電容量の低下幅」が既知である複数銘柄の石炭を用い、配合後の「構造変化を示す温度範囲」と「静電容量の低下幅」が異なるように、配合炭種類A〜Dの配合炭を調整した。また、配合後の配合炭A〜Dについて静電容量の温度変化を実際に測定して、静電容量の温度による変化のパターンから「構造変化を示す温度範囲」と「静電容量の低下幅」を求めた。各配合炭を40kg試験炉により、水分8mass%、嵩密度750kg/m3、炉壁温度1050℃、乾留時間8時間の条件で乾留を行い、乾留後窒素気流中で冷却してNo.1〜4のコークスを得た。製造した各コークスは2mの高さから鉄板上に落下させた後、JIS K−2151に準拠した方法でドラム指数の測定を行なった。比較のため、従来の評価指標として、JIS M−8816記載の方法により石炭の最大平均反射率Roを、JIS M−8801記載の方法により石炭のギーセラープラストメーター法最高流動度(MF)をそれぞれ測定した。これらの結果を表1にまとめて示す。
Figure 2007308630
表1によれば、「構造変化を示す温度範囲≧70℃」かつ「静電容量の低下幅≧2.0pF」の条件を満たすように調整した配合炭A、Bを用いて製造したNo.1、2では、DI150/15≧82の高強度のコークスが得られた。また、上記条件を満たさないNo.3、4では、コークス強度は82未満であり、強度が低く、本発明方法の有効性が確認された。
また、従来のRo、MFを評価指標とする配合方法と比較すると、従来技術では一般にRoが高いほどコークス強度が高く、MFについても上限値(MF=1000程度)を超えない範囲でMFが高いほどコークス強度が高くなると言われているが、No.2とNo.3のコークスでは、Ro、MFともNo.3の方が高くなっているのに対し、コークス強度はNo.3の方が低くなっている。No.2とNo.3においては、静電容量から判断される本発明の評価基準では、No.2が望ましい配合、No.3が望ましくない配合と判断され、実測したコークス強度の傾向と一致している。したがって、本発明のコークスの製造方法を用いれば、従来のRo、MFを評価指標とする方法よりも効果的にコークス用石炭の配合を決定でき、高強度のコークスを製造する上で進歩した方法であることが明らかとなった。
石炭の静電容量の温度変化のパターンを示すグラフ。 本発明で用いる評価指標である「構造変化を示す温度範囲」と「静電容量の低下幅」を示すグラフ。 「構造変化を示す温度範囲」を求める方法の説明図。 「静電容量の低下幅」を求める方法の説明図。 「構造変化を示す温度範囲」と「静電容量の低下幅」と、生成したコークスの強度との相関を示すグラフ。
符号の説明
1 直線
2 直線
3 直線
4 直線
5 静電容量極大点
6 傾き極大点
7 静電容量極小点
8 傾き極大点
9 静電容量極小点の温度+50℃の温度
A 構造変化を示す温度範囲
B 静電容量の低下幅

Claims (5)

  1. 石炭を乾留してコークスを製造する際に、石炭の静電容量の温度依存性から求められる、石炭が構造変化を示す温度範囲と、該温度範囲における静電容量低下幅とを用いて、製造されるコークスの強度を予測することを特徴とするコークス強度の予測方法。
  2. 複数種類の石炭を配合して乾留し、コークスを製造する際に、各石炭の静電容量の温度依存性から、前記各石炭が構造変化を示す温度範囲と、該温度範囲における静電容量低下幅とを求め、前記温度範囲と前記静電容量低下幅とに基づき、前記各石炭の配合率を決定することを特徴とするコークスの製造方法。
  3. 石炭が構造変化を示す温度範囲と、静電容量低下幅とに対する、前記石炭の乾留後の強度の関係から、目標とする強度のコークスを製造するための温度範囲と静電容量低下幅とを設定し、各石炭について加重平均して求めた温度範囲と静電容量低下幅とが前記設定値となるように石炭の配合率を決定することを特徴とする請求項2に記載のコークスの製造方法。
  4. 配合後の石炭の、温度範囲が70℃以上、かつ静電容量低下幅が2.0pF以上となるように、石炭を配合することを特徴とする、請求項2または請求項3に記載のコークスの製造方法。
  5. 石炭の静電容量の温度依存性を、前記石炭の昇温速度を1〜10℃/分として測定することを特徴とする請求項2ないし請求項3のいずれかに記載のコークスの製造方法。
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