JP2007290731A - 試薬用容器 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明の試薬用容器1は、試薬Sを収容する試薬収容部(ウェル11)を有する容器本体10と、容器本体10に貼着され、試薬収容部の開口部を被覆する被覆フィルム20とを備え、被覆フィルム20は、アルミニウム層21と、容器本体10に貼着されるシール層22とを有し、シール層22が、メタロセン触媒により合成された直鎖状低密度ポリエチレンを含有し、厚みが1〜6μmである。
【選択図】図2
Description
これら試薬用容器に収容された試薬は、例えば、ピペットチップや注射針等により吸い取られて分取され、分取された試薬は別の容器や同一チップ上に配置された反応部等に分注される。
ところで、上記試薬用容器の試薬収納部が密封されない場合には、長時間放置したり加熱したりした際に試薬が蒸発することがあった。
そこで、試薬の蒸発を防止することを目的として、例えば、特許文献1には、試薬収容部を有する容器本体と、容器本体に貼着され、試薬収容部の開口部を被覆する被覆フィルムとを備える試薬用容器が提案されている。特許文献1に記載の試薬用容器では、ピペットチップや注射針の先端を被覆フィルムに突き刺して貫通させることにより、試薬が分取されるようになっている。
また、被覆フィルムとしては、光による試薬の変質または劣化を防止するために遮光性が高いもの、ピペットチップや注射針の先端を複数の異なる箇所に突き刺すことができる、すなわち、突き刺し性が確保されたものが求められる。
本発明は、前記事情を鑑みてなされたものであり、シール強度、遮光性のいずれもが高く、突き刺し性が確保された試薬用容器を提供することを目的とする。
[1] 試薬を収容する試薬収容部を有する容器本体と、容器本体に貼着され、試薬収容部の開口部を被覆する被覆フィルムとを備える試薬用容器であって、
被覆フィルムは、アルミニウム層と、容器本体に貼着されるシール層とを有し、シール層が、メタロセン触媒により合成された直鎖状低密度ポリエチレンを含有し、厚みが1〜6μmであることを特徴とする試薬用容器。
[2] アルミニウム層が厚さ10μm以下の硬質アルミニウム箔からなることを特徴とする[1]に記載の試薬用容器。
[3] アルミニウム層とシール層との間に中間層が設けられていることを特徴とする[1]または[2]に記載の試薬用容器。
[4] 被覆フィルムのアルミニウム層におけるシール層側と反対側の面に、保護層が設けられていることを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載の試薬用容器。
[5] 保護層が、脆性材料からなることを特徴とする[4]に記載の試薬用容器。
本願請求項2に係る発明に係る発明によれば、被覆フィルムを容易に開裂させることができるため、試薬の回収性を高くすることができる。
本願請求項3に係る発明によれば、アルミニウム層に試薬が直接接触しにくいため、耐試薬性を高くすることができる。
本願請求項4に係る発明によれば、アルミニウム層の空気による酸化や損傷を防ぐことができ、しかも被覆フィルムの取り扱い性を向上させることができる。
本願請求項5に係る発明によれば、被覆フィルムを容易に開裂させることができるため、試薬の回収性を高くすることができる。
図1および図2に、本実施形態例の試薬用容器を示す。この試薬用容器1は、試薬Sを収容する試薬収容部であるウェル11,11・・・を有する略直方体状の容器本体10と、容器本体10に貼着され、容器本体10のウェル11,11・・・の開口部11a,11a・・・の全ておよびその周辺を被覆する1枚の被覆フィルム20とを備えるものである。
容器本体10の材質としては特に制限されないが、成形加工性に優れることから、樹脂製であることが好ましい。容器本体10を構成する樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレン、ポリプロピレン(PP)、アクリル樹脂、ABS樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、シクロオレフィン系ポリマー、フッ素樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。これらのうち、シクロオレフィン系ポリマーはシール強度を高くしにくいが、本発明によれば、容器本体10がシクロオレフィン系ポリマーで構成されても、シール強度を高くすることができる。
容器本体10は、2種類以上の樹脂製の部材が接合されたものでもよいし、樹脂製の部材と金属製の部材とが接合されたものであってもよい。これらの材質は、試薬Sの性質や容器本体10に求められる機械的物性に応じて適宜選択することが好ましい。
容器本体10の厚さは、使用時に充分な強度を確保できる厚さであればよい。
ウェル11の大きさは、収容される試薬Sの量に応じて設定されるが、利便性の点から、その開口部11aの直径を5〜10mm、深さを5mm以下に設定することが好ましい。
さらには、ウェル11に収容した試薬Sの回収効率をより向上させるために、内壁表面にプラズマ処理やコロナ処理等の表面処理を施してもよい。
被覆フィルム20は、アルミニウム層21と、容器本体10に貼着されるシール層22と、それらの間に設けられた中間層23とを有する。また、アルミニウム層21におけるシール層22側と反対側の面に、保護層24が設けられている。
硬質アルミニウム箔の厚さは8μm以下であることがより好ましい。
ここで、硬質アルミニウム箔とは、伸びが1%/180mm以下、破裂度が0.5kg/cm2以下のアルミニウム箔である。本発明における伸びはJIS C 2151に準拠した引張試験において、引張速度50mm/minで測定した値であり、破裂度はJIS P 8112に準拠して測定した値である。
アルミニウム層21には、碁盤目格子状の模様等のエンボスが形成されていてもよい。
m−LLDPEとしては、例えば、三井化学社製商品名エボリュー、ダウデュポン社製商品名エンゲージ、日本ポリエチレン社製商品名ハーモレックス等が市販されている。
シール層22中のm−LLDPEの含有量が100質量%未満である場合には、例えば、高圧ラジカル重合法により合成された直鎖状低密度ポリエチレン、チグラー触媒により合成された直鎖状低密度ポリエチレンなどが含まれてもよい。
中間層23の厚さは、ピペットチップや注射針の先端を突き刺した際に被覆フィルム20を容易に開裂させることができる点から、10μm以下であることが好ましい。
保護層24は、厚さが15μm以下であって、伸びが30%/180mm以下、破裂度が2kg/cm2以下であることが好ましい。保護層24がこのような物性値である場合にも、ピペットチップや注射針の先端を突き刺した際に被覆フィルム20を容易に開裂させることができる。
試薬用容器1は、例えば、容器本体10におけるウェル11の開口部11aを覆うように被覆フィルム20を重ねた後、被覆フィルム20におけるウェル11の開口部11aの周囲に位置する部分に、加熱したシールバーを押圧することにより得られる。
上述した試薬用容器1は、化学反応、抗原抗体反応、DNA反応、たんぱく質反応等の検出をチップ上で行うμ−Total Analysis System技術やLab−on−Chip技術に好適に利用される。
例えば、抗原抗体反応の検出では、あらかじめ、容器本体10のウェル11に試薬Sである抗体を収容し、ウェル11を被覆フィルム20により密封する。次いで、ピペットチップの先端を被覆フィルム20に突き刺して貫通させ、そのピペットチップにより前記抗体を分取し、分取した抗体を、同じ試薬用容器あるいは別の部材の反応部に配置された抗原に滴下する。その際、抗原または抗体に標識物質を付けておくことにより、抗原抗体反応の有無を検出できる。標識物質としては、蛍光物質等の発光物質を用いることができ、標識物質として発光物質を用いた場合には、抗原抗体反応が起こった際に発光させることができる。
このような試薬用容器1を用いたDNA反応は、一塩基遺伝子多型(SNP)の解析に適用できる。SNPの解析の場合、核酸プローブやその他検出に用いる試薬Sは複数あってもよい。SNPの解析としては、サードウェイブテクノロジーズ,Inc(米国ウィスコンシン州マディソン市)が開発したインベーダー法を採用することができる。
また、シール層22の厚みが1〜6μmであることにより、ピペットチップや注射針の先端を突き刺した際に被覆フィルム20が略直線状に開裂するため、開裂後でも、被覆フィルム20にピペットチップや注射針の先端を突き刺すことができる部分が残っており、突き刺し性が確保されている。
また、被覆フィルム20のアルミニウム層21によって遮光性を高くできるため、試薬Sの変質・劣化を防ぐことができる。
さらに、アルミニウム層21におけるシール層22側と反対側の面に保護層24が設けられているため、アルミニウム層21の空気による酸化や損傷を防ぐことができ、しかも被覆フィルム20の取り扱い性を向上させることができる。
また、上述した実施形態例では、1枚の被覆フィルムにより複数のウェルの開口部を被覆したが、一つの開口部に対して1枚の被覆フィルムを被覆してもよい。
さらに、被覆フィルムは、アルミニウム層とシール層とを有すれば、必ずしも中間層および/または保護層が設けられていなくてもよい。
まず、アルミニウム層である厚さ7μmの硬質アルミニウム箔の片面に、サンドブラスト加工が施された厚さ15μmのマット調ポリエチレンテレフタレートフィルム(破裂度2kg/cm2、伸び6%/180mm)からなる保護層を、ポリエステルウレタン系接着剤(厚さ2μm)を介して積層した。
また、m−LLDPE(三井化学社製商品名エボリューSP2540)を脂肪酸エステル系乳化剤により水に乳化して塗布液を調製した。次いで、その塗布液を、乾燥厚さが6μmになるように硬質アルミニウム箔のもう一方の片面に塗布し、乾燥させることにより、シール層を形成して、被覆フィルムを得た。
また、シクロオレフィン系ポリマー(日本ゼオン社製商品名ゼオノア1420R)を射出成形して、試薬収容部である半球状のウェルが4つ形成された容器本体を作製した。
次いで、4つのウェルの全てが被覆されるように、かつ、シール層が容器本体に接するように、容器本体に被覆フィルムを重ねた。そして、被覆フィルムにおけるウェルの開口部の周囲に位置する部分に、シールバーを160℃、1秒、0.5MPaで押圧し、ヒートシールして、試薬用容器を得た。
[シール強度、接着力]
シール強度は、引張試験機を使用し、引張速度50mm/min、180°の角度で、剥離フィルムを容器本体から剥離し、完全に剥離した際の剥離強度をシール強度とした。また、そのシール強度に基づき、接着力を以下の基準で評価した。
○:シール強度が5.0N/15mm以上であった。
×:シール強度が5.0N/15mm未満であった。
[突き刺し性]
被覆フィルムに注射針を5回、各々異なる箇所に突き刺して、その際の突き刺し性を目視により観察し、以下の基準で評価した。
◎:特に容易に突き刺すことができた。
○:容易に突き刺すことができた。
△:容易に突き刺すことはできるが、被覆フィルムの一部が容器本体から剥がれた。
×:突き刺すことが困難であった。
××:突き刺すことが極めて困難であった。
上記塗布液を、乾燥厚さが1μmになるように塗布してシール層を形成したこと以外は実施例1と同様にして試薬用容器を得た。そして、実施例1と同様に評価した。評価結果を表1に示す。
上記塗布液を、乾燥厚さが8μmになるように塗布してシール層を形成したこと以外は実施例1と同様にして試薬用容器を得た。そして、実施例1と同様に評価した。評価結果を表1に示す。
硬質アルミニウム箔のもう一方の片面に塗布液を塗布する代わりに、硬質アルミニウム箔のもう一方の片面に上記m−LLDPEの溶融物を積層し、該溶融物を冷却して厚さ15μmのシール層を形成したこと以外は実施例1と同様にして試薬用容器を得た。そして、実施例1と同様に評価した。評価結果を表1に示す。
m−LLDPEの代わりにチグラー触媒により合成した直鎖状低密度ポリエチレン(三井化学社製商品名ウルトゼックス3520L)を用いて塗布液を調製し、この塗布液を、乾燥厚さが5μmになるように硬質アルミニウム箔のもう一方の片面に塗布してシール層を形成したこと以外は実施例1と同様にして試薬用容器を得た。そして、実施例1と同様に評価した。評価結果を表1に示す。
m−LLDPEの代わりにチグラー触媒により合成した上記LLDPEを用いたこと以外は比較例2と同様にして試薬用容器を得た。そして、実施例1と同様に評価した。評価結果を表1に示す。
これに対し、シール層の厚さが6μmを超えていた比較例1,2の試薬用容器では、突き刺し性が低かった。さらに、比較例2では、シール強度が低く、被覆フィルムの接着力が弱かった。
また、シール層がチグラー触媒により合成したLLDPEからなる比較例3,4の試薬用容器は、シール強度が低く、被覆フィルムの接着力が弱かった。さらに、シール層の厚さが6μmを超えていた比較例4の試薬用容器では、突き刺し性が低かった。
Claims (5)
- 試薬を収容する試薬収容部を有する容器本体と、容器本体に貼着され、試薬収容部の開口部を被覆する被覆フィルムとを備える試薬用容器であって、
被覆フィルムは、アルミニウム層と、容器本体に貼着されるシール層とを有し、シール層が、メタロセン触媒により合成された直鎖状低密度ポリエチレンを含有し、厚みが1〜6μmであることを特徴とする試薬用容器。 - アルミニウム層が厚さ10μm以下の硬質アルミニウム箔からなることを特徴とする請求項1に記載の試薬用容器。
- アルミニウム層とシール層との間に中間層が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の試薬用容器。
- 被覆フィルムのアルミニウム層におけるシール層側と反対側の面に、保護層が設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の試薬用容器。
- 保護層が、脆性材料からなることを特徴とする請求項4に記載の試薬用容器。
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