JP4835255B2 - 試薬用容器 - Google Patents
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Description
これら試薬用容器に収容された試薬は、例えば、ピペットチップや注射針等により吸い取られて分取され、分取された試薬は別の容器や同一チップ上に配置された反応部等に分注される。
ところで、上記試薬用容器の試薬収納部が密封されない場合には、長時間放置したり加熱したりした際に試薬が蒸発することがあった。
そこで、試薬の蒸発を防止することを目的として、例えば、特許文献1には、試薬収容部を有する容器本体と、容器本体に貼着され、試薬収容部の開口部を被覆する被覆フィルムとを備える試薬用容器が提案されている。特許文献1に記載の試薬用容器では、ピペットチップや注射針の先端を被覆フィルムに突き刺して貫通させることにより、試薬が分取されるようになっている。
そこで、試薬用容器を構成する容器本体を除菌処理し、さらに、被覆フィルムを滅菌処理する対策が採られることがある。滅菌処理としては、例えば、電子線の照射、γ線の照射、紫外線の照射、過酸化水素ガスの接触などが知られている。ところが、被覆フィルムに上記滅菌処理を施しても、正確な実験結果が得られないことがあった。特に、試薬をDNA反応の検出に用いた場合には、誤差が生じやすかった。これは、滅菌処理では細菌の死骸が被覆フィルム表面に残るためであると考えられる。
被覆フィルムの表面から細菌の死骸を除去するためには、滅菌水等で洗い流す洗浄処理が別途必要になるため、煩雑になる。
本発明は、前記事情を鑑みてなされたものであり、被覆フィルムから細菌およびその死骸が簡便にかつ充分に除去され、また、遮光性が高く、しかも突き刺し性、実用上必要な耐久性および外観が確保された被覆フィルムを備える試薬用容器を提供することを目的とする。
[1] 試薬を収容する試薬収容部を有する容器本体と、容器本体に貼着され、試薬収容部の開口部を被覆する被覆フィルムとを備える試薬用容器であって、
被覆フィルムは、アルミニウム層と、容器本体に貼着されるシール層と、アルミニウム層およびシール層の間に設けられ、ポリプロピレンにより構成された中間層と、アルミニウム層における中間層と反対側の面に設けられた保護層とを有し、被覆フィルムの両面が、次亜塩素酸系水溶液により洗浄されたことを特徴とする試薬用容器。
[2] アルミニウム層が厚さ10μm以下の硬質アルミニウム箔からなることを特徴とする[1]に記載の試薬用容器。
[3] アルミニウム層にエンボスが形成されていることを特徴とする[1]または[2]に記載の試薬用容器。
[4] 次亜塩素酸系水溶液が次亜塩素酸ナトリウムを含有する水溶液であることを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載の試薬用容器。
また、本願請求項1に係る発明の試薬用容器では、被覆フィルムがアルミニウム層を有するため、遮光性が高い。
また、本願請求項1に係る発明における被覆フィルムの構成によれば、突き刺し性を確保できる。
さらに、本願請求項1に係る発明では、被覆フィルムが中間層を有するため、次亜塩素酸系水溶液により洗浄された際にシール層の一部が侵されたとしてもアルミニウム層に次亜塩素酸系水溶液が直接接触しにくくなっている。また、被覆フィルムが保護層を有するため、次亜塩素酸系水溶液により洗浄された際にアルミニウム層に次亜塩素酸系水溶液が直接接触しにくくなっている。これらのことから、次亜塩素酸系水溶液によるアルミニウム層の腐食を防止できるため、被覆フィルムは実用上必要な耐久性および外観が確保されている。
本願請求項4に係る発明では、次亜塩素酸系水溶液として安価な次亜塩素酸ナトリウムを含有するものを使用するため、試薬用容器を安価にできる。
図1および図2に、本実施形態例の試薬用容器を示す。この試薬用容器1は、試薬Sを収容する試薬収容部であるウェル11,11・・・を有する略直方体状の容器本体10と、容器本体10に貼着され、容器本体10のウェル11,11・・・の開口部11a,11a・・・の全ておよびその周辺を被覆する1枚の被覆フィルム20とを備えるものである。
容器本体10の材質としては特に制限されないが、成形加工性に優れることから、樹脂製であることが好ましい。容器本体10を構成する樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレン、ポリプロピレン(PP)、アクリル樹脂、ABS樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、シクロオレフィン系ポリマー、フッ素樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。
容器本体10は、2種類以上の樹脂製の部材が接合されたものでもよいし、樹脂製の部材と金属製の部材とが接合されたものであってもよい。これらの材質は、試薬Sの性質や容器本体10に求められる機械的物性に応じて適宜選択することが好ましい。
容器本体10の厚さは、使用時に充分な強度を確保できる厚さであればよい。
また、通常、容器本体10は、除菌処理が施されている。
ウェル11の大きさは、収容される試薬Sの量に応じて設定されるが、利便性の点から、その開口部11aの直径を5〜10mm、深さを5mm以下に設定することが好ましい。
さらには、ウェル11に収容した試薬Sの回収効率をより向上させるために、内壁表面にプラズマ処理やコロナ処理等の表面処理を施してもよい。
被覆フィルム20は、アルミニウム層21と、容器本体10に貼着されるシール層22と、それらの間に設けられた中間層23と、アルミニウム層21における中間層23と反対側の面に設けられた保護層24とを有するものである。
硬質アルミニウム箔の厚さは8μm以下であることがより好ましい。
ここで、硬質アルミニウム箔とは、伸びが1%/180mm以下、破裂度が0.5kg/cm2以下のアルミニウム箔である。本発明における伸びはJIS C 2151に準拠した引張試験において、引張速度50mm/minで測定した値であり、破裂度はJIS P 8112に準拠して測定した値である。
さらに、第1の溝同士の間隔および第2の溝同士の間隔は、2mm以下であることが好ましい。ここで、溝同士の間隔とは、各溝の幅方向の中央同士の間隔のことである。第1の溝同士の間隔および第2の溝同士の間隔が2mm以下であれば、ピペットチップや注射針の先端を突き刺した際に被覆フィルムをより容易に略直線状に開裂させることができ、試薬の回収性がより向上する。
被覆フィルム20において、エンボス処理版やエンボスロールが接触した面がシール層22側および保護層24側のどちらに配置されても構わない。
また、シール層22は、ピペットチップや注射針の先端を突き刺した際に被覆フィルム20をより容易に略直線状に開裂させることができる点から、その厚さが15μm以下であって、破裂度が1kg/cm2以下であることが好ましい。
中間層23の厚さは、ピペットチップや注射針の先端を突き刺した際に被覆フィルム20をより容易に略直線状に開裂させることができる点から、10μm以下であることが好ましい。
また、保護層24は、ピペットチップや注射針の先端を突き刺した際に被覆フィルム20をより容易に略直線状に開裂させることができることから、脆性材料からなることが好ましい。脆性材料としては、例えば、サンドブラスト加工等により表面がマット調に加工されたマット調ポリエチレンテレフタレートフィルム、発泡状の樹脂フィルム等が挙げられる。
保護層24は、厚さが15μm以下であって、伸びが30%/180mm以下、破裂度が2kg/cm2以下であることが好ましい。保護層24がこのような物性値である場合にも、ピペットチップや注射針の先端を突き刺した際に被覆フィルム20をより容易に略直線状に開裂させることができる。
次亜塩素酸系水溶液としては、例えば、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウム、次亜塩素酸カルシウム、次亜塩素酸リチウムを含有する水溶液などが挙げられる。これらの中でも、安価であることから、次亜塩素酸ナトリウムを含有する水溶液が好ましい。
試薬用容器1の製造方法の一例について説明する。本例の製造方法では、まず、アルミニウム層21の一方の面に中間層23を積層し、他方の面に保護層24を積層する。その積層の際には必要に応じて接着剤を用いてもよい。
次いで、中間層23におけるアルミニウム層21と反対側の面にシール層22を形成する。シール層22の形成方法としては、例えば、シール層22を構成する樹脂の溶液を中間層23の表面に塗布する方法、シール層22を構成する樹脂を溶融し、シール層22が形成されるように、溶融した樹脂を中間層23の表面に供給する方法などが挙げられる。
次いで、このようにして得た被覆フィルム20の両面を次亜塩素酸系水溶液により洗浄する。例えば、被覆フィルム20の両面に次亜塩素酸系水溶液を噴霧して洗浄する。次亜塩素酸系水溶液による洗浄後には、被覆フィルム20の両面に残存する次亜塩素酸系水溶液を充分に除去するために、水等で洗い流すことが好ましい。
そして、容器本体10におけるウェル11の開口部11aを覆うように、かつ、容器本体10にシール層22が接するように、次亜塩素酸系水溶液で洗浄した被覆フィルム20を重ねた後、被覆フィルム20の、ウェル11の開口部11aの周囲に位置する部分に、加熱したシールバーを押圧して試薬用容器1を得る。
上述した試薬用容器1は、化学反応、抗原抗体反応、DNA反応、たんぱく質反応等の検出をチップ上で行うμ−Total Analysis System技術やLab−on−Chip技術に好適に利用される。
例えば、抗原抗体反応の検出では、あらかじめ、容器本体10のウェル11に試薬Sである抗体を収容し、ウェル11を被覆フィルム20により密封する。次いで、ピペットチップの先端を被覆フィルム20に突き刺して貫通させ、そのピペットチップにより前記抗体を分取し、分取した抗体を、同じ試薬用容器あるいは別の部材の反応部に配置された抗原に滴下する。その際、抗原または抗体に標識物質を付けておくことにより、抗原抗体反応の有無を検出できる。標識物質としては、蛍光物質等の発光物質を用いることができ、標識物質として発光物質を用いた場合には、抗原抗体反応が起こった際に発光させることができる。
このような試薬用容器1を用いたDNA反応は、一塩基遺伝子多型(SNP)の解析に適用できる。SNPの解析の場合、核酸プローブやその他検出に用いる試薬Sは複数あってもよい。SNPの解析としては、サードウェイブテクノロジーズ,Inc(米国ウィスコンシン州マディソン市)が開発したインベーダー法を採用することができる。
また、被覆フィルム20のアルミニウム層21によって遮光性を高くできるため、試薬Sの変質・劣化を防ぐことができる。
また、本発明者が調べた結果、試薬用容器1では、ピペットチップや注射針の先端を突き刺した後でも、被覆フィルム20にピペットチップや注射針の先端を突き刺すことができる部分が残っており、突き刺し性が確保されていることが判明した。
さらには、アルミニウム層21の片面に中間層23が設けられているため、次亜塩素酸系水溶液により被覆フィルム20が洗浄された際にシール層22の一部が侵されたとしても中間層23によってアルミニウム層21に次亜塩素酸系水溶液が直接接触しにくくなっている。また、アルミニウム層21のもう一方の片面に保護層24が設けられているため、次亜塩素酸系水溶液により被覆フィルム20が洗浄された際に、アルミニウム層21に次亜塩素酸系水溶液が直接接触しにくくなっている。これらのことから、次亜塩素酸系水溶液によるアルミニウム層21の腐食を防止できるため、被覆フィルム20は実用上必要な耐久性および外観が確保されている。
また、被覆フィルム20が保護層24を有しているため、アルミニウム層21の空気による酸化、物体の接触によるアルミニウム層21の損傷を防ぐこともできる。
また、上述した実施形態例では、1枚の被覆フィルムにより複数のウェルの開口部を被覆したが、一つの開口部に対して1枚の被覆フィルムを被覆してもよい。
まず、アルミニウム層である厚さ7μmの軟質アルミニウム箔の一方の面に、中間層である厚さ7μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルム(OPP)を、ポリエステルウレタン系接着剤(厚さ2μm)を介して積層した。また、上記軟質アルミニウム箔の他方の面に、保護層である厚さ5μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを、ポリエステルウレタン系接着剤(厚さ2μm)を介して積層した。
次いで、軟質アルミニウム箔に積層した二軸延伸ポリプロピレンフィルムにおける軟質アルミニウム箔と反対側の面に、マレイン酸変性ポリプロピレンを主成分としたヒートシールラッカーを厚さ3μmで塗布してシール層を形成して、被覆フィルムを得た。
次いで、得られた被覆フィルムの両面に、0.1質量%の次亜塩素酸ナトリウム水溶液を噴霧し、次いで、滅菌純水に漬け置きして、被覆フィルムに残留する次亜塩素酸ナトリウム水溶液を洗い流した後、無菌乾燥した。
また、ポリプロピレンを射出成形して、試薬収容部である半球状のウェルが4つ形成された容器本体を作製した。
次いで、各ウェルに試薬であるPrimer Mix、Taq DNA Polymerase、PCR Buffer、希釈用滅菌水を収容した後、4つのウェルの全てが被覆されるように、かつ、シール層が容器本体に接するように、次亜塩素酸ナトリウムにより洗浄した被覆フィルムを容器本体に重ねた。そして、被覆フィルムにおけるウェルの開口部の周囲に位置する部分に、シールバーを200℃、3秒、20N/cm2で押圧し、ヒートシールして、試薬用容器を得た。
[細菌およびその死骸の除去性]
被覆フィルムにピペットチップを突き刺して、ウェル内の試薬を回収した。そして、回収した試薬について細菌分析を行い、その分析結果に基づいて以下の基準で評価した。
○:細菌が確認されなかった。
△:細菌に由来すると思われるDNaseが確認された。
×:細菌が確認された。
[被覆フィルムの耐腐食性]
被覆フィルムの表面を目視により観察して以下の基準で評価した。
○:変化なし。
×:被覆フィルムのアルミニウム層が腐食して変色していた。
[被覆フィルムの突き刺し性]
被覆フィルムにポリプロピレン製ピペットチップ(200μl)を突き刺して、突き刺し性を以下の基準で評価した。
◎:5回以上突き刺し可能であった。
○:3回以上5回未満突き刺し可能であった。
[試薬の回収性(試薬の回収率)]
試薬を100μl回収することを目標として、ピペットチップによりウェルに収容された試薬を回収し、その実際の回収量を測定した。そして、(実際の回収量)/100μl×100%の式により試薬の回収率を求めた。一般に、試薬の回収率が85%以上であれば、実用的であるとされている。
厚さ7μmの軟質アルミニウム箔の代わりに厚さ7μmの硬質アルミニウム箔を用いたこと以外は実施例1と同様にして試薬用容器を得た。そして、実施例1と同様に評価した。評価結果を表1に示す。
厚さ7μmの硬質アルミニウム箔の代わりに、あらかじめエンボスが形成された厚さ7μmの硬質アルミニウム箔を用いたこと以外は実施例2と同様にして試薬用容器を得た。そして、実施例1と同様に評価した。評価結果を表1に示す。
なお、エンボスの形成の際に用いたエンボス処理版は、直線状の第1の凸条と該第1の凸条に直交する第2の凸条が各々多数形成された碁盤目格子状の模様を有し、第1の凸条同士の間隔および第2の凸条同士の間隔が4mmのものである。このエンボス処理版を用いることにより、硬質アルミニウム箔に、碁盤目格子状の模様で、第1の溝同士の間隔および第2の溝同士の間隔が4mmのエンボスを形成した。
被覆フィルムの両面を次亜塩素酸ナトリウム水溶液で洗浄しなかったこと以外は実施例1と同様にして試薬用容器を得た。そして、実施例1と同様に評価した。評価結果を表1に示す。
被覆フィルムを次亜塩素酸ナトリウム水溶液で洗浄する代わりに、被覆フィルムの両面に紫外線を照射したこと以外は実施例1と同様にして試薬用容器を得た。そして、実施例1と同様に評価した。評価結果を表1に示す。
軟質アルミニウム箔の一方の面に中間層である二軸延伸ポリプロピレンフィルムを積層せずに、シール層を直接形成したこと以外は実施例1と同様にして試薬用容器を得た。そして、実施例1と同様に評価した。評価結果を表1に示す。
被覆フィルムのシール層側の表面のみを次亜塩素酸ナトリウム水溶液で洗浄したこと以外は実施例1と同様にして試薬用容器を得た。そして、実施例1と同様に評価した。評価結果を表1に示す。
さらに、アルミニウム層として硬質アルミニウム箔を用いた実施例2,3の試薬用容器では、試薬の回収性に優れており、特に、エンボスが形成された硬質アルミニウム箔を用いた実施例3の試薬用容器では、ほぼ100%に近い回収率を示した。
紫外線照射された被覆フィルムを備える比較例2の試薬用容器でも、細菌およびその死骸が充分に除去されていなかった。
中間層を有さない被覆フィルムを備える比較例3の試薬用容器は、アルミニウム層に腐食が見られた。このような被覆フィルムは実用上必要な耐久性および外観が確保されていない。
シール層側の表面のみが次亜塩素酸ナトリウムで洗浄された被覆フィルムを備える比較例4の試薬用容器は、細菌およびその死骸が除去されていなかった。
Claims (4)
- 試薬を収容する試薬収容部を有する容器本体と、容器本体に貼着され、試薬収容部の開口部を被覆する被覆フィルムとを備える試薬用容器であって、
被覆フィルムは、アルミニウム層と、容器本体に貼着されるシール層と、アルミニウム層およびシール層の間に設けられ、ポリプロピレンにより構成された中間層と、アルミニウム層における中間層と反対側の面に設けられた保護層とを有し、被覆フィルムの両面が、次亜塩素酸系水溶液により洗浄されたことを特徴とする試薬用容器。 - アルミニウム層が厚さ10μm以下の硬質アルミニウム箔からなることを特徴とする請求項1に記載の試薬用容器。
- アルミニウム層にエンボスが形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の試薬用容器。
- 次亜塩素酸系水溶液が次亜塩素酸ナトリウムを含有する水溶液であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の試薬用容器。
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