JP3553220B2 - 封緘性フィルムおよびその製造方法 - Google Patents
封緘性フィルムおよびその製造方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP3553220B2 JP3553220B2 JP23324395A JP23324395A JP3553220B2 JP 3553220 B2 JP3553220 B2 JP 3553220B2 JP 23324395 A JP23324395 A JP 23324395A JP 23324395 A JP23324395 A JP 23324395A JP 3553220 B2 JP3553220 B2 JP 3553220B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- resin
- matrix resin
- weight
- parts
- sealable film
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Fee Related
Links
Images
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、PTP(Press through pack)包装、ブリスター包装のフィルム、カップ類の蓋材などとして有用な封緘性フィルムおよびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
錠剤などを密封包装するためのPTP包装体は、塩化ビニル樹脂などの透明なプラスチックシートを真空成形して収容部を形成した成形部材と、前記収容部に収容された内容物を封緘するためのシール材とで構成されている。このシール材は、通常、厚さ20〜40μm程度のアルミニウム箔に、ヒートシール性樹脂(例えば、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩素化ポリプロピレンなど)を塗布したり、溶融押出し機から押出されたヒートシール性樹脂をラミネートすることにより形成されている。このようなシール材は、ガス遮断性、防湿性に加えて、高い開封性や破封性を有しており、内容物の取出し操作が簡単である。
【0003】
しかし、アルミニウム箔を含むシール材は、使用後に廃棄すると、土壌中に長期間に亘り残留し、自然環境を汚染する。また、焼却処分したとしても、完全に焼却できず、塊状の未燃焼物が残存する。また、塩化ビニル樹脂や塩素含有樹脂で構成されたヒートシール材は、焼却時に塩素含有ガスを生成し、焼却炉を早期に損傷させたり、環境を汚染する。
さらに、最近、バーコードを利用したPOSシステムが商品の在庫管理などに利用されているものの、アルミニウム箔にバーコード印刷すると、バーコードを読み取るための赤外線などの光線がアルミニウム箔により乱反射される。そのため、読取り機によりバーコードを正確に読み取ることができない場合がある。従って、医薬品などのPTP包装体の管理には、前記シール材が有効に利用できない。
さらには、医薬活性成分の中には、アルミニウムなどの金属成分との接触を抑制する必要のある成分がある。このような医薬活性成分を含む医薬品は、アルミニウム箔を含まないシール材、例えば、グラシン紙を用いたシール材でPTP包装されている。しかし、グラシン紙を用いたシール材はガス遮断性および防湿性が小さいので、長期間に亘り医薬品を安定に保存することができない。
このようなことは、ブリスター包装体やカップ蓋材などでも同様に生じる。
【0004】
実公昭54−11256号公報には、被包装物を収容する多数のポケットが形成された成形シートと、この成形シートに対して剥離可能に接合し、かつポケットを封緘するための非破断性フィルムと、前記各ポケットを区画するため、成形シートおよび非破断性フィルムに亘って形成された切取り用ミシン目と、成形シートから非破断性フィルムを剥離するため、切取り用ミシン目間に互い違いに形成された剥離用ミシン目とを備えた錠剤などの固形物の包装体が開示されている。しかし、この包装体では、切取り用ミシン目を利用してポケットを切取り、剥離用ミシン目を利用して、成形シートから非破断性フィルムを剥離させて内容物を取出す必要があり、内容物の取出し操作が煩雑である。また、非破断性フィルムのガス遮断性や防湿性がさほど高くないので、内容物を長期間に亘り安定に保存することが困難である。
【0005】
実開昭54−11258号公報には、内容物を収容するための細長状の収容部が形成されたシート本体と、前記収容部の開口部を封緘するため、シート本体の開口部側に、一軸延伸方向を開口部の長軸方向に合致させて積層した一軸延伸薄膜とで構成されたPTP包装体が開示されている。この包装体では、内容物の押圧により薄膜を破断させることにより、内容物を取出すことができる。しかし、薄膜として一軸延伸フィルムを用いる必要があるだけでなく、延伸方向と開口部の長軸方向とを一致させて積層する必要があるため、包装作業性および包装体の生産性が低下しやすい。また、薄膜のガス遮断性や防湿性がさほど高くないので、内容物を長期間に亘り安定に保存することが困難である。
【0006】
特開平3−51400号公報には、グラシン紙の一方の面に熱封緘性樹脂層を形成し、他方の面に防湿性を有する脆い耐熱性目止め剤を被覆した蓋材が開示されている。しかし、前記目止め材のガス遮断性および防湿性が低いので、PTP包装の蓋材として利用しても、内容物の保存安定性を高めることが困難である。
【0007】
さらに、アルミニウム箔や塩素含有樹脂を含まないシール材として、ポリプロピレンなどの樹脂とフィラーとを含む樹脂組成物をフィルム成形し、引裂き強度を小さくした封緘用フィルムを調製することも可能である。しかし、フィラーの量が少ない場合には、フィルムの破断性が低下し、フィラーの量が多い場合には、ピンホールやマイクロクラックなどが生成し、ガス遮断性を大きく低下させる。特に、フィラーの量を多くすると、部分的にガスバリア性が大きく低下する部位が生成しやすい。例えば、フィルム全体としては水蒸気透過率が3g/m2 ・24hr程度であっても、部分的に水蒸気透過率が10g/m2 ・24hr程度の部位が生成する。そのため、封緘用フィルムをPTP包装に利用すると、内容物の取出し性と保存安定性を両立することが困難であり、高い防湿性を必要としない内容物の包装にしか適用できず、用途が大きく制限される。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、破断性,内容物の取出し性と、内容物の保存安定性とを両立できる封緘性フィルムおよびその製造方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、アルミニウム箔および塩素含有樹脂を用いることなく、PTP包装により内容物を長期間に亘り安定に保存できるとともに、内容物を簡単な操作で取出す上で有用な封緘性フィルムおよびその製造方法を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、前記の如き優れた特性を有する封緘性フィルムでシールされた包装体を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記目的を達成するため鋭意検討の結果、マトリックス樹脂と、このマトリックス樹脂に対して非相溶の熱可塑性樹脂と、フィラーとを組み合わせてフィルム化すると、破断性を改善できること、マトリックス樹脂としてガスバリア性の高い樹脂を用いると、ポリマーアロイ化によりガスバリア性を向上できることを見いだし、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明の封緘性フィルムは、厚さ25μmでの水蒸気透過率が20g/m2・24時間以下のマトリックス樹脂、このマトリックス樹脂に対して非相溶の熱可塑性樹脂(以下、単に非相溶熱可塑性樹脂又は熱可塑性樹脂という場合がある)、およびフィラーを含む樹脂組成物で形成されたベース層と、このベース層の一方の面に形成されたヒートシール層とを備えており、2kg・cm以下の突き刺し衝撃強度を有し、前記樹脂組成物は、前記マトリックス樹脂100重量部に対して、前記フィラー30〜60重量部を含んでいる。前記樹脂組成物は、マトリックス樹脂100重量部に対して、マトリックス樹脂に対する非相溶の熱可塑性樹脂2〜30重量部程度を含んでいてもよい。マトリックス樹脂の種類に応じて非相溶熱可塑性樹脂は選択でき、例えは、マトリックス樹脂がプロピレン系重合体である場合には、非相溶熱可塑性樹脂は、スチレン系重合体、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネートなどであってもよい。前記ヒートシール層を構成する樹脂は、ヒートシール強度、内容物の種類などに応じて選択でき、非塩素系ヒートシール可能な樹脂や、オレフィン単位を含む非塩素系の重合体である場合が多い。
前記樹脂組成物は、破断性などを調整するため、さらにマトリックス樹脂に対応するエラストマーを含んでいてもよい。
本発明の封緘性フィルムは、内容物を長期間に亘り安定に保存するため、厚さ25μmでの水蒸気透過率が6g/m2・24時間以下であってもよい。また、破断性や内容物の取出し性を高めるため、本発明の封緘性フィルムは、引張り破断伸度が5%以下、引張り破断強度が0.7〜6kg/15mmであってもよい。さらに、内容物の光線による劣化を抑制するため、封緘性フィルムは、日本工業規格(JIS) K7105に準じて測定した全光線透過率が50%以下であってもよい。
本発明には、マトリックス樹脂としてのプロピレン系重合体100重量部に対して、スチレン系重合体3〜25重量部、およびフィラー20〜60重量部を含む樹脂組成物で形成されたベース層と、オレフィン単位を含む非塩素系のヒートシール性重合体から選択され、かつ前記ベース層の一方の面に形成されたヒートシール層とを備えており、2kg・cm以下の突き刺し衝撃強度を有し、前記マトリックス樹脂の厚さ25μmでの水蒸気透過率が20g/m 2 ・24時間以下である封緘性フィルムも含まれる。
【0011】
本発明の方法では、厚さ25μmでの水蒸気透過率が20g/m2・24時間以下のマトリックス樹脂、このマトリックス樹脂に対して非相溶の熱可塑性樹脂、およびフィラーを含む樹脂組成物で形成されたベース層の一方の面に、ヒートシール層を形成することにより、封緘性フィルムを製造する。この方法では、前記マトリックス樹脂100重量部に対して、前記フィラー30〜60重量部を含む前記樹脂組成物を用いて、2kg・cm以下の突き刺し衝撃強度を有する前記封緘性フィルムを製造する。
さらに、本発明の包装体は、内容物を収容するための収容凹部が形成された成形体と、前記収容凹部の開口部を封緘するフィルムとで構成されており、前記封緘用のフィルムは、ヒートシール層が成形体にヒートシールされた前記封緘性フィルムで形成されている。
【0012】
【発明の実施の形態】
マトリックス樹脂は、厚さ25μmでの水蒸気透過率(単位:g/m2 ・24時間)が20以下であればいずれの樹脂も使用可能である。好ましいマトリックス樹脂の水蒸気透過率(単位:g/m2 ・24時間)は、厚さ25μmにおいて、15以下(例えば、0.1〜15程度)、好ましくは12以下(例えば、0.5〜10程度)、さらに好ましくは10以下(例えば、1〜10程度)である。また、マトリックス樹脂はフィルム成形性を有する非ハロゲン系樹脂(特に非塩素系樹脂)である場合が多い。
【0013】
このようなマトリックス樹脂には、例えば、ポリオレフィン系重合体[ポリエチレン(低密度、中密度、高密度ポリエチレン、線状ポリエチレンなど)、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン−1共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−無水マレイン酸共重合体などのエチレン系重合体、ポリプロピレン、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−ブテン−1共重合体、プロピレン−エチレン−ブテン−1共重合体、プロピレン−無水マレイン酸共重合体などのプロピレン系重合体、ポリ(4−メチルペンテン−1)、環状ポリオレフィン(ジシクロペンタジエン、5−ビニルノルボルネンなとの環状非共役ジエン、2,3−ジイソプロピリデン−5−ノルボルネンなどの環状共役ジエンを含むポリオレフィン、例えば、三井石油化学(株)製,アペルなど)など]、液晶性高分子[完全芳香族ポリエステル、完全芳香族ポリエステルアミドなど(例えば、ポリプラスチックス(株)製,ベクトラ、三菱化学(株)製,ノバキュレートなど)]などが含まれる。これらのマトリックス樹脂は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。二種以上のマトリックス樹脂を用いる場合、互いに相溶性を有する樹脂を用いる場合が多い。
好ましいマトリックス樹脂にはプロピレン系重合体が含まれ、このプロピレン系重合体が共重合体である場合にはブロック共重合体、ランダム共重合体のいずれであってもよい。さらに好ましいマトリックス樹脂にはポリプロピレン(アイソタクチックポリプロピレンなど)が含まれる。
【0014】
前記マトリックス樹脂に対して非相溶の熱可塑性樹脂は、マトリックス樹脂の種類に応じて選択できるが、フィルム形成能を有する非ハロゲン系樹脂(特に非塩素系樹脂)である場合が多い。代表的な非相溶性熱可塑性樹脂には、例えば、オレフィン系重合体、スチレン系重合体、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、その他の熱組成樹脂などが含まれる。これらの熱可塑性樹脂も一種又は二種以上組み合わせて使用できる。なお、マトリックス樹脂に対する相溶性は、マトリックス樹脂と熱可塑性樹脂とを、両者の共通する溶融温度で混練した後、冷却固化させ、破断面を走査型又は透過型電子顕微鏡で観察することにより判断でき、海島構造を有し、相分離している場合には、非相溶であると判断できる。
【0015】
前記オレフィン系重合体には、前記と同様のオレフィン系重合体が例示され、マトリックス樹脂の種類に応じて非相溶の重合体が選択して使用される。
【0016】
スチレン系重合体には、スチレン系単量体の単独または共重合体(1)、スチレン系単量体と共重合性単量体との共重合体(2)、ゴム変性スチレン系重合体(3)などが含まれる。
スチレン系単量体には、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、クロロスチレンなどが含まれる。好ましいスチレン系単量体はスチレン、α−メチルスチレンなどである。スチレン系単量体と共重合可能な共重合性単量体には、種々のビニル単量体、例えば、(メタ)アクリル系単量体[(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル(例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチルなど)、(メタ)アクリロニトリルなどの不飽和ニトリルなど]、マレイン酸やフマル酸又はそれらの誘導体[例えば、マレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸ジアルキルエステル、マレイミド、N−フェニルマレイミド、N−メチルマレイミドなどのN−置換マレイミドなど]、ジエン(例えば、イソプレン、ブタジエンなど)などが含まれる。共重合性単量体は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
好ましい共重合性単量体には、例えば、(メタ)アクリル系単量体[(メタ)アクリル酸、アルキル部分の炭素数が1〜4程度の(メタ)アクリル酸エステル、アクリロニトリルなどの不飽和ニトリル]、マレイン酸又はその誘導体[無水マレイン酸、マレイミド又はその誘導体(マレイミド、N−フェニルマレイミドなどのN−置換マレイミドなど)など]、ジエン(ブタジエンなど)などが含まれる。
【0017】
ゴム変性スチレン系樹脂(耐衝撃性スチレン系樹脂)には、ゴム成分としてのポリブタジエンにスチレンおよびアクリロニトリルがグラフト重合したABS樹脂、他のゴム成分(アクリルゴム,エチレン−酢酸ビニル共重合体,エチレン−プロピレンゴムなど)にスチレンおよびアクリロニトリルがグラフト重合した共重合体、ポリブタジエンにスチレンおよびメタクリル酸メチルがグラフト重合した共重合体などが含まれる。
【0018】
好ましいスチレン系重合体には、例えば、(1)スチレン系単量体の単独又は共重合体[例えば、ポリスチレン(GPPS)など]、(2)スチレン系単量体と、(メタ)アクリル系単量体及びマレイン酸又はその誘導体から選択されたビニル単量体との共重合体[例えは、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体(MAS樹脂)、スチレン−アクリルニトリル共重合体(AS樹脂)、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−マレイミド共重合体、スチレン−N−フェニルマレイミド共重合体などのスチレンとマレイミド又はその誘導体との共重合体など]、(3)ゴム変性スチレン系樹脂[ゴム成分にスチレンおよびアクリロニトリルやメタクリル酸メチルがグラフト重合した共重合体、例えば、ABS樹脂など]などが含まれる。
【0019】
ポリアミドとしては、ジアミンとジカルボン酸とから誘導されるポリアミド、アミノカルボン酸から誘導されるポリアミド、ラクタムから誘導されるポリアミドや、コポリアミドが使用できる。ポリアミドには、例えば、ナイロン6,ナイロン66,ナイロン610,ナイロン612,ナイロン11,ナイロン12などが含まれる。
【0020】
ポリエステルには、テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸とアルキレングリコールを主成分とするジオール成分とのポリエステルが含まれ、アルキレンテレフタレート単位を65モル%以上、好ましくは75〜100モル%以上、さらに好ましくは80〜100モル程度含んでいる。
テレフタル酸以外のジカルボン酸成分には、例えば、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸;シクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸;イソフタル酸、フタル酸、無水フタル酸などの芳香族ジカルボン酸などが含まれる。これらのジカルボン酸成分は一種または二種以上で使用できる。テレフタル酸は、芳香族ジカルボン酸(例えば、イソフタル酸)などと組み合わせて使用する場合が多い。なお、ジカルボン酸成分に代えて、対応するジカルボン酸低級アルキルエステル(例えば、メチルエステル等)を使用してもよい。テレフタル酸の使用量は、前記アルキレンテレフタレート単位の含有量に対応しており、テレフタル酸を単独で使用する場合が多い。
ジオール成分としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ポリテトラメチレングリコール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなどの脂肪族ジオール、シクロヘキサンジオール、1,4−ジメチロールシクロヘキサンなどの脂環族ジオール、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド(例えば、エチレンオキサイド付加物)などが挙げられる。これらのジオール成分は一種または二種以上使用できる。
好ましいジオール成分には直鎖状脂肪族ジオール(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4−ブタンジオールなど)、脂環族ジオール(例えば、1,4−ジメチロールシクロヘキサンなど)などが含まれる。特に好ましいジオール成分は、少なくともエチレングリコール及び/又は1,4−ブタンジオールを含んでいる。ジオール成分としては、エチレングリコール又は1,4−ブタンジオールを単独で使用する場合が多い。
好ましいポリエステルには、テレフタル酸単位を含むポリエステル、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ(1,4−ジメチロールシクロヘキサンテレフタレート)、エチレンテレフタレート単位やブチレンテレフタレート単位を主たる構成単位として含むコポリエステルなどが含まれる。
【0021】
ポリカーボネートには、ジヒドロキシ化合物と、ホスゲンまたは炭酸エステル(ジフェニルカーボネートなど)との反応により得られる重合体が含まれる。ジヒドロキシ化合物は脂環族化合物などであってもよいが、好ましくは芳香族化合物、特にビスフェノール化合物である。
ビスフェノール化合物としては、例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)プロパン、4,4′−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルフィドなどが挙げられる。これらのビスフェノール化合物は単独で又は二種以上組み合わせて反応に供してもよい。
好ましいポリカーボネートには、ビスフェノールA型ポリカーボネートなどが含まれる。
【0022】
さらに、他の非相溶性熱可塑性樹脂としては、アクリル系樹脂、熱可塑性ポリウレタンなどを用いてもよい。
非相溶性熱可塑性樹脂の分子量は、広い範囲から選択でき特に制限されないが、例えば、重量平均分子量1×104 〜100×104 、好ましくは1×104 〜50×104 程度の範囲から選択できる。
【0023】
これらの非相溶性熱可塑性樹脂のうち、スチレン系樹脂、ポリアミド、ポリエステルを用いる場合が多い。好ましい非相溶性熱可塑性樹脂には、スチレン系樹脂が含まれる。
【0024】
非相溶性熱可塑性樹脂の使用量は、マトリックス樹脂の種類に応じて、破断性およびフィルム強度を損わない範囲で選択でき、例えば、マトリックス樹脂100重量部に対して、2〜30重量部、好ましくは3〜25重量部、さらに好ましくは5〜20重量部程度である。
【0025】
フィラーとしては、有機フィラーおよび無機フィラーのいずれも使用できるが、無機フィラーを使用する場合が多い。フィラーの形状は粒子状、繊維状のいずれであってもよく、中空状、中実状や多孔質であってもよいが、通常、粒子状フィラーを用いる場合が多い。フィラーとしては、例えば、タルク、カオリン、マイカ、アルミナ、シリカ、ガラス、石英粉、カーボンブラック、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化鉄、水酸化アルミニウム、硫酸バリウムなどが例示できる。これらのフィラーは単独で又は二種以上混合して使用できる。好ましいフィラーには、タルク、マイカ、アルミナ、シリカ、ガラスなどが含まれる。
フィラーの平均粒径は、例えば、0.1〜20μm、好ましくは1〜15μm、さらに好ましくは2〜10μm程度であり、平均粒径3〜8μm程度のフィラーを用いてもよい。
フィラーの使用量は、破断性およびガス遮断性などを損わない範囲で選択でき、例えば、マトリックス樹脂100重量部に対して、5〜70重量部、好ましくは10〜60重量部、さらに好ましくは20〜60重量部程度であり、30〜60重量部程度である場合が多い。
【0026】
ベース層を形成するための樹脂組成物は、さらにマトリックス樹脂の種類に対応するエラストマー(例えば、マトリックス樹脂がオレフィン系樹脂である場合にはオレフィン系エラストマー)を含んでいてもよい。エラストマーはベース層を押出し成形する場合、フィルムの引取り方向(MD方向)にフィルムが過度に裂けるのを抑制する上で有用である。
【0027】
マトリックス樹脂がプロピレン系樹脂である場合、エラストマーは、オレフィン系エラストマーである場合が多い。オレフィン系エラストマーには、例えば、エチレンと炭素数3〜20程度のα−オレフィンとの共重合体、プロピレンと炭素数4〜20程度のα−オレフィンとの共重合体などの軟質共重合体、α−オレフィン−ジエン系共重合体(例えば、エチレン−C3−20α−オレフィン−ジエン共重合体、プロピレン−C4−20α−オレフィン−ジエン共重合体など)などが含まれる。より具体的には、オレフィン系エラストマーとしては、三井石油化学(株)製の「タフマー」、日本合成ゴム(株)製の「EP樹脂・ダイナロン」、旭化成(株)製の「タフテック」、シェル化学(株)製の「クレイトン・カリフレックス」などが例示できる。これらのエラストマーは単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
オレフィン系エラストマーの含有量は、例えば、マトリックス樹脂100重量部に対して1〜10重量部、好ましくは2〜8重量部程度であり、3〜10重量部程度である場合が多い。
【0028】
前記ベース層は、前記成分やその組成が異なる複数の層で形成してもよい。
前記樹脂組成物で形成されたベース層の厚みは、内容物の保存性、取出し性などを損わない限り特に制限されず、例えば、10〜200μm、好ましくは30〜150μm、さらに好ましくは40〜120μm程度であり、50〜100μm程度である場合が多い。
【0029】
前記樹脂組成物で形成されたベース層の一方の面には、高いシール性を確保するため、ヒートシール層が形成されている。このヒートシール層は、塩素化プロピレン、塩素化ポリエチレン、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニリデン−酢酸ビニル共重合体などの塩素含有樹脂で形成してもよいが、非塩素系のヒートシール可能な樹脂で形成されているのが好ましい。
【0030】
このようなヒートシール性樹脂としては、オレフィンホモ又はコポリマー(例えば、ポリエチレン、無定形ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−ブテン−1共重合体、プロピレン−エチレン−ブテン−1共重合体など);オレフィンとビニル単量体とのオレフィン系コポリマー、特にエチレンとビニル単量体とのエチレン系コポリマー(例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体などのエチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体など);酸変性ポリオレフィン(例えば、アイオノマー、エチレン−(メタ)メタクリル酸共重合体、(メタ)メタクリル酸変性ポリプロピレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレンなど);ポリビニルアルコール系樹脂(例えば、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体など);スチレン系樹脂(スチレン−アクリル共重合体など);アクリル系樹脂(例えば、アクリル酸エステル(例えば、アクリル酸C1−4 アルキルエステル)とメタクリル酸エステル(例えば、メタクリル酸メチル)とのコポリマーなど);ポリアミド(例えば、ナイロン−11,ナイロン−12,ナイロン−610,ナイロン612など)などが含まれる。これらのヒートシール性樹脂は1種または2種以上組合わせて使用できる。
【0031】
好ましいヒートシール性樹脂には、オレフィン単位を含む非塩素系の重合体、例えば、オレフィンホモ又はコポリマー(例えば、ポリエチレン、無定形ポリプロピレン、プロピレン−ブテン−1共重合体、プロピレン−エチレン−ブテン−1共重合体など)、エチレン系コポリマー(例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体など)、酸変性ポリオレフィン(例えば、エチレン−(メタ)メタクリル酸共重合体、(メタ)メタクリル酸変性ポリプロピレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレンなど)などが含まれる。なお、酸変性ポリオレフィンの具体例としては、三菱化学(株)製の「モディック・ノバテックAP」、東ソー(株)製の「メルセン」、三井石油化学(株)製の「アドマー」などが挙げられる。ヒートシール性樹脂としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体などのエチレン系コポリマーを用いる場合が多い。
【0032】
ヒートシール層の厚みは、シール強度、内容物の取出し性および破断性などを損わない範囲で選択でき、例えば1〜30μm、好ましくは3〜30μm、さらに好ましくは5〜25μm程度であり、5〜20μm程度である場合が多い。
前記ベース層およびヒートシール層を構成する成分は、安全性の高い材料、例えば、昭和57年厚生省告示第20号に記載されている規格に適合する成分(例えば、ポリプロピレン、ポリスチレンなど)であるのが好ましい。
【0033】
ヒートシール層は、前記マトリックス樹脂が溶融又は熱変性しない温度でシール強度が発現するのが好ましい。例えば、マトリックス樹脂がポリプロピレンである場合、ポリプロピレンの融点(140〜170℃)以下の温度で高いシール強度が発現するヒートシール層を形成するのが、包装体を得る上で有利である。被着体に対するヒートシール層のシール強度(単位:g/15mm)は、例えば、T剥離(90°剥離)強度800以上、好ましくは900以上、さらに好ましくは1000以上である。なお、ヒートシール強度は、ヒートシール試験装置を用い、圧力3kg/cm2 、シール時間1秒、シール温度100〜200℃でヒートシールし、幅15mmの試料を、引張り試験機(オリエンテック(株)の「テンシロン」、島津製作所(株)の「オートグラフ」など)を用いて、速度300mm/分で90°剥離したときの剥離強度である。また、ポリマーの融点は、熱示差走査熱量計(DSC)を用い、JIS K7121に規定する方法で、昇温速度10±1℃/分で測定したときの融解ピーク温度(Tpm)を意味する。
【0034】
このような封緘性フィルムの水蒸気透過率(単位:g/m2 ・24時間)は、内容物を長期間に亘り安定に保存できる範囲で選択でき、例えば、厚さ25μmにおいて、JIS Z0280(40℃,90%RH)に準じて測定したとき、6以下(例えば、0.1〜6)、好ましくは4.5以下(例えば、0.5〜4)、さらに好ましくは3.5以下(例えば、1〜3)、特に2.5以下である。
【0035】
封緘性フィルムの強度は、内容物の保存性および破断性を損わない範囲で選択でき、例えば、JIS K7127に準じて測定した引張り破断伸度は、5%以下(例えば、0.1〜4%)、好ましくは3%以下(例えば、0.1〜2%)程度であり、封緘性フィルムの引張り破断強度(単位:kg/15mm)は、例えば、0.7〜6、好ましくは1〜5、さらに好ましくは1.5〜5程度である。なお、フィルムの引取り方向(MD方向)と、引取り方向に対して直交する幅方向(TD方向)とにおいて、前記破断伸度や破断強度は異なっていてもよいが、MD方向とTD方向における破断伸度や破断強度の差が小さい方が、破断性が高く、内容物を容易に取出すことができる。そのため、MD方向およびTD方向のいずれにおいても、フィルムは前記破断伸度および破断強度を有するのが好ましい。
【0036】
さらに、封緘性フィルムの突き刺し衝撃強度(単位:kg・cm)は、破断性を損わない範囲で選択でき、例えば、2以下(例えば、0.1〜1.7程度)、好ましくは1.5以下(例えば、0.2〜1.2程度)、さらに好ましくは1.0以下(例えば、0.3〜1程度)である。なお、フィルムの突き刺し衝撃強度は、東洋精機(株)法と称される方法で測定できる。すなわち、東洋精機(株)から、機器No.195として販売されている「フィルムインパクトテスター」を用いて測定できる。この装置は、紙に関する規格JIS P8134などに準ずるパンクチュアーテストを、薄いプラスチックフィルムでも評価できるように改良された装置であり、突き刺し衝撃強度の測定に一般的に利用されている。
【0037】
さらに、JIS K7105に準じて測定したフィルムの全光線透過率は、内容物の保存安定性を損わない範囲で選択でき、例えば、50%以下(例えば、5〜45%程度)、好ましくは45%以下(例えば、10〜40%程度)である。
【0038】
なお、前記ベース層とヒートシール層との間には、例えば、アンカーコート層、下引き層などが介在していてもよい。また、前記ベース層及び/又はヒートシール層には、種々の添加剤、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの安定剤、可塑剤、帯電防止剤、難燃剤、ブロッキング防止剤、滑剤、着色剤などを含んでいてもよい。
【0039】
本発明の封緘性フィルムは、前記樹脂組成物で構成されたベース層の一方の面に前記ヒートシール層を形成することにより製造することができる。
前記ベース層およびヒートシール層は、慣用の方法で形成できる。例えば、ベース層は、前記樹脂組成物を押出し機を用いて溶融混練しつつ、Tダイやサーキュラーダイから押出してフィルム成形することにより形成でき、ヒートシール層は、ヒートシール剤を前記ベース層に塗布したり、押出しラミネートすることにより形成できる。ヒートシール剤を塗布したりラミネートする場合、ベース層の表面は、コロナ放電などにより表面処理してもよく、アンカーコート処理してもよい。なお、塗布によりヒートシール層を形成する場合、ヒートシール剤としては、溶液又はエマルジョンの形態の塗布液を用いる場合が多い。
また、樹脂組成物とヒートシール剤とを共押出し成形することにより、ベース層とヒートシール層とが積層した封緘性フィルムを製造することもできる。
本発明の好ましい方法には、樹脂組成物を押出し成形したベース層にヒートシール剤を塗布する方法、樹脂組成物とヒートシール剤との共押出し成形法が含まれる。
【0040】
本発明の方法において、前記ベース層や共押出し成形したフィルムは延伸処理に供してもよいが、延伸処理しなくても高い破断性がえられる。そのため、本発明の封緘性フィルムは、製造工程を簡略化でき、生産性を高める上で有用な未延伸フィルムであるのが好ましい。
【0041】
本発明の封緘性フィルムは、ヒートシール層を利用した内装材や表層材などのラミネート用フィルムとしても使用できるが、ヒートシール層により高い密封性を確保できるとともに、高いガス遮断性により内容物を長期間に亘り保存できる。そのため、封緘性フィルムは、PTP(Press through pack)包装や、ブリスター包装用フィルム、カップ類の蓋材などとして使用し、密封された包装体を得る上で有用である。
【0042】
前記包装体は、通常、内容物を収容するための収容凹部が形成された成形体と、前記収容凹部の開口部を封緘するための封緘性フィルムとで構成されている。すなわち、前記包装体において、封緘性フィルムのヒートシール層は、成形体のうち収容凹部の開口部を除く領域(被着領域)、例えば、開口端面や鍔部などの非開口領域にヒートシールされている。このような包装体では、収容凹部に収容された被収容物を封緘性フィルムのヒートシールにより気密に密封できる。また、封緘性フィルムのガス遮断性(防湿性)が高く、実用的な強度を有しているので、被収容物の変質や劣化を防止しつつ長期間に亘り保存できる。さらに、封緘性フィルムは破断性が高いので、被収容物を包装体から取出すことも容易である。
【0043】
本発明の封緘性フィルムは実用的な強度を有しつつ、押圧により破断できるので、収納凹部から固形の内容物を押圧により取出すPTP包装体の封緘フィルム(底シール材)として適している。特に塩素含有樹脂を使用していない封緘性フィルムは、安全衛生性が高く、環境汚染の虞がなく、医薬品や食品などを密封保存する上で有用である。
前記PTP包装体は、例えば、図1に示す断面構造を有する。すなわち、成形シート1には、錠剤、カプセル剤などの固形物3を収容するための複数の収容凹部2が形成されている。前記成形シート1のうち、収容凹部2を除く領域には、固形物3を密封して保存するため、ベース層5を外面に位置させて、封緘性フィルム6のヒートシール層4がヒートシールされている。なお、この例では、前記成形シート1及び封緘性フィルム6には、収容凹部2を区画するミシン目7が形成されている。
【0044】
このようなPTP包装体では、封緘性フィルム6のガス遮断性(防湿性など)が高いので、収容凹部2に収容された錠剤などの固形物3を密封して安定に保存できる。また、収容凹部2に収容された錠剤などの固形物3を封緘性フィルム6側へ押し付けると、封緘性フィルム6が破断するので、固形物を容易に取出すことができる。そのため、内容物の取出し性と保存安定性を両立できる。
【0045】
なお、本発明の包装体において、被収容物は液体であってもよいが、封緘性フィルムの破断性を利用して簡単な操作で内容物を取出すためには、固形物であるのが好ましい。固形物は、前記錠剤などの医薬品に限らず、キャンデー、チョコレートなどであってもよく、特に制限されない。
前記包装体において、被着体としての成形体とヒートシール層との間のヒートシール強度は、高い密封性を確保するため、前記のように、800g/15mm以上であるのが有用である。
【0046】
ヒートシールを利用して包装体を形成するためには、被着体としての成形体を、マトリックス樹脂と同系統の樹脂、特に同じ樹脂を含む樹脂組成物で形成するのが有利である。すなわち、マトリックス樹脂と共通する樹脂又は樹脂組成物で成形体とベース層とを形成すると、前記マトリックス樹脂が溶融又は熱変性しない温度で、成形体とヒートシール層とを強固にヒートシールでき、成形体の変形などを防止できる。さらに、成形体と封緘性フィルムのベース層が共通する樹脂で形成されているため、内容物を取出した後、包装体を再度、成形体への成形、ベース層の形成に利用できる。特に、封緘性フィルムのベース層のマトリックス樹脂および成形体をプロピレン系重合体(例えば、ポリプロピレン)で形成すると、内容物の視認性を確保しつつ、ヒートシール強度を高めることができる。
さらに、前記封緘性フィルムには、アルミニウム箔などの金属箔を用いていないため、包装体の外面に位置するベース層にバーコードを施しても、赤外線などの光線が乱反射するのを抑制でき、読取り機によりバーコードを正確に読み取ることができる。そのため、前記封緘性フィルムのベース層には、バーコードなどの識別マークを施してもよい。
【0047】
【発明の効果】
本発明の封緘性フィルムおよび包装体は、防湿性の高いマトリックス樹脂、非相溶性樹脂およびフィラーを含む樹脂組成物により形成されたベース層にヒートシール層が形成されているため、破断性,内容物の取出し性と保存安定性を両立できる。また、アルミニウム箔および塩素含有樹脂を用いることなく、破断性および密封性を高めることができる。そのため、PTP包装などにより内容物を長期間に亘り安定に保存できるとともに、内容物を簡単な操作で取出す上で有用である。
本発明の方法では、ベース層にヒートシール層を形成するという簡単な操作で、前記の如き優れた特性を有する封緘性フィルムを製造できる。
【0048】
【実施例】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
実施例1〜5
アイソタクチックポリプロピレン(宇部興産(株)製,YK121,厚さ25μmでの水蒸気透過率8g/m2 ・24時間)と、ポリスチレン(ダイセル化学工業(株)製,#51)、タルク(竹原化学(株)製,pHタルク,平均粒径7μm)およびポリオレフィン系エラストマー(三井石油化学(株)製,タフマーA4085)を表1に示す割合で用い、二軸押出し機(東芝機械(株)製,TEM50B)を用いてスクリュー回転数200rpm、温度240℃で溶融混練してペレットを調製した。得られたペレットを、押出し機(大阪精機(株),65mm押出し機)にコートハンガーTダイ(幅1100mm)を取り付けた装置に供給し、Tダイから溶融押出しし、延伸処理することなくフィルム成形することによりベース層フィルム(厚み80μm)を得た。
得られたベース層フィルムの一方の面に、グラビアコーターを用いてエマルジョン系ヒートシール剤(大日精化(株),セイカダイン1900)を乾燥後の厚み10μmで塗布し、封緘性フィルムを得た。
【0049】
ポリプロピレンシート(出光石油化学(株)製,PPシートピュアレイMG−200、厚み250μm)を成形しカプセル剤が収容可能な凹部を形成した成形体と、前記封緘性フィルムと、カプセル剤とを、PTP包装械(CKD(株))に供給し、充填速度4m/分、ヒートシール温度190℃で、カプセル剤を自動充填するとともに、封緘性フィルムで収容凹部をヒートシールし、PTP包装体を作製した。
【0050】
比較例1および2
ナイロン6(宇部興産(株)製,1018B,厚さ25μmでの水蒸気透過率180g/m2 ・24時間)、アイソタクチックポリプロピレン(宇部興産(株)製,YK121,厚さ25μmでの水蒸気透過率8g/m2 ・24時間)、ポリスチレン(ダイセル化学工業(株)製,#51)、低密度ポリエチレン(三菱化学(株)製,F251)、およびタルク(竹原化学(株)製,pHタルク,平均粒径7μm)を表1に示す割合で用いる以外、実施例1と同様にして、ベース層フィルムを調製した。また、得られたベース層フィルムを用いる以外、実施例1と同様にして封緘性フィルムおよびPTP包装体を作製した。
【0051】
そして、封緘性フィルムの引張り強度、引張り伸度、突き刺し衝撃強度、水蒸気透過率、全光線透過率を測定した。また、5人のパネラーにより、PTP包装体からのカプセル剤の取出し性を下記の基準で評価した。
優:アルミニウム箔を含むシール材と同程度
良:取出し時に少し抵抗感がある
不可:取出し難く、カプセルが破損する
ベース層フィルムを形成する樹脂組成物の配合処方とともに、封緘性フィルムおよびPTP包装体の取出し性の結果を表1に示す。
【0052】
【表1】
表1より明らかなように、比較例の封緘性フィルムに比べて、実施例の封緘性フィルムは、高い破断性と高い密封保存性とを備えている。また、実施例のPTP包装体では、封緘性フィルムを破断させ、カプセル剤を簡単かつ円滑に取出すことができる。
なお、実施例及び比較例の封緘性フィルムのうちベース層フィルムの外面にバーコードを印刷したPTP包装体について、光学式の読取り機でバーコードを読み取ったところ、いずれもバーコードを正確に読み取ることができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1はPTP包装体の一例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
1…成形シート
2…収容凹部
3…固形物
4…ヒートシール層
5…ベース層
6…封緘性フィルム
Claims (16)
- 厚さ25μmでの水蒸気透過率が20g/m2・24時間以下のマトリックス樹脂、このマトリックス樹脂に対して非相溶の熱可塑性樹脂、およびフィラーを含む樹脂組成物で形成されたベース層と、このベース層の一方の面に形成されたヒートシール層とを備えている封緘性フィルムであって、2kg・cm以下の突き刺し衝撃強度を有し、前記樹脂組成物が、前記マトリックス樹脂100重量部に対して、前記フィラー30〜60重量部を含む封緘性フィルム。
- 樹脂組成物が、マトリックス樹脂100重量部に対して、マトリックス樹脂に対する非相溶の熱可塑性樹脂2〜30重量部を含む請求項1記載の封緘性フィルム。
- マトリックス樹脂がプロピレン系重合体である請求項1記載の封緘性フィルム。
- マトリックス樹脂に対する非相溶の熱可塑性樹脂が、スチレン系重合体、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネートからなる群から選択された少なくとも一種である請求項1記載の封緘性フィルム。
- ヒートシール層が非塩素系ヒートシール可能な樹脂で形成されている請求項1記載の封緘性フィルム。
- ヒートシール層がオレフィン単位を含む非塩素系の重合体である請求項1記載の封緘性フィルム。
- 樹脂組成物が、さらにマトリックス樹脂に対応するエラストマーを含む請求項1記載の封緘性フィルム。
- オレフィン系エラストマーの含有量が、マトリックス樹脂100重量部に対して1〜10重量部である請求項5記載の封緘性フィルム。
- 厚さ25μmでの水蒸気透過率が6g/m2・24時間以下である請求項1記載の封緘性フィルム。
- 引張り破断伸度が5%以下、引張り破断強度が0.7〜6kg/15mmである請求項1記載の封緘性フィルム。
- 日本工業規格(JIS) K7105に準じて測定した全光線透過率が50%以下である請求項1記載の封緘性フィルム。
- マトリックス樹脂としてのプロピレン系重合体100重量部に対して、スチレン系重合体3〜25重量部、およびフィラー20〜60重量部を含む樹脂組成物で形成されたベース層と、オレフィン単位を含む非塩素系のヒートシール性重合体から選択され、かつ前記ベース層の一方の面に形成されたヒートシール層とを備えている封緘性フィルムであって、2kg・cm以下の突き刺し衝撃強度を有し、前記マトリックス樹脂の厚さ25μmでの水蒸気透過率が20g/m 2 ・24時間以下である封緘性フィルム。
- 厚さ25μmでの水蒸気透過率が20g/m2・24時間以下のマトリックス樹脂、このマトリックス樹脂に対して非相溶の熱可塑性樹脂、およびフィラーを含む樹脂組成物で形成されたベース層の一方の面に、ヒートシール層を形成する封緘性フィルムの製造方法であって、前記マトリックス樹脂100重量部に対して、前記フィラー30〜60重量部を含む前記樹脂組成物を用いて、2kg・cm以下の突き刺し衝撃強度を有する封緘性フィルムを製造する方法。
- 内容物を収容するための収容凹部が形成された成形体と、前記収容凹部の開口部を封緘するフィルムとで構成された包装体であって、このフィルムが、ヒートシール層が成形体にヒートシールされた請求項1記載の封緘性フィルムで形成されている包装体。
- 800g/15mm以上のヒートシール強度でヒートシール層が成形体にヒートシールされている請求項14記載の包装体。
- 成形体が、固形物を収容するための複数の収容凹部が形成された成形シートである請求項14記載の包装体。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP23324395A JP3553220B2 (ja) | 1995-08-17 | 1995-08-17 | 封緘性フィルムおよびその製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP23324395A JP3553220B2 (ja) | 1995-08-17 | 1995-08-17 | 封緘性フィルムおよびその製造方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH0952313A JPH0952313A (ja) | 1997-02-25 |
JP3553220B2 true JP3553220B2 (ja) | 2004-08-11 |
Family
ID=16952021
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP23324395A Expired - Fee Related JP3553220B2 (ja) | 1995-08-17 | 1995-08-17 | 封緘性フィルムおよびその製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3553220B2 (ja) |
Families Citing this family (11)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPH10330577A (ja) * | 1997-03-31 | 1998-12-15 | Mitsui Chem Inc | 環状オレフィン系樹脂成形体および該成形体の印字方法 |
ATE314282T1 (de) * | 1997-10-02 | 2006-01-15 | Kyowa Hakko Kogyo Kk | Durchdrückpackung sowie verfahren zum entnehmen und zum teilen von tabletten |
JP3839065B2 (ja) | 1998-04-03 | 2006-11-01 | 協和醗酵工業株式会社 | 分割錠剤及びプレススルーパック |
JP4132217B2 (ja) * | 1998-04-28 | 2008-08-13 | グンゼ株式会社 | 低温ヒートシール性を有する多層シート |
JP2000281130A (ja) * | 1999-03-30 | 2000-10-10 | Dai Ichi Seiyaku Co Ltd | ブリスター包装体、底材および樹脂シート |
JP4710271B2 (ja) * | 2004-07-27 | 2011-06-29 | 東洋製罐株式会社 | 容器蓋材 |
JP4765338B2 (ja) * | 2005-02-22 | 2011-09-07 | 東洋製罐株式会社 | 包装材料 |
JP2007069950A (ja) * | 2005-09-07 | 2007-03-22 | Ckd Corp | Ptpシートの製造装置 |
JP5820562B2 (ja) | 2009-05-12 | 2015-11-24 | 旭化成ケミカルズ株式会社 | プレススルーパック用蓋材フィルム及び包装体 |
CN103201189B (zh) * | 2010-11-12 | 2015-04-01 | 旭化成化学株式会社 | 泡罩包装包装体 |
JP2018203366A (ja) * | 2017-06-08 | 2018-12-27 | 共同印刷株式会社 | ブリスターパック用蓋材 |
-
1995
- 1995-08-17 JP JP23324395A patent/JP3553220B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPH0952313A (ja) | 1997-02-25 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP5117255B2 (ja) | 再封機能付き多層フィルム及びこれを用いた包装体 | |
JP4000422B2 (ja) | 易突き破り性フィルム | |
JP3553220B2 (ja) | 封緘性フィルムおよびその製造方法 | |
US20170158400A1 (en) | Product packaging with coc-coc sealing interface | |
JP7256020B2 (ja) | 剥離機能付き多層フィルム及びその包装体 | |
JP5106795B2 (ja) | 再封機能付き蓋材及びこれを用いた包装体 | |
JP5121244B2 (ja) | 再封機能付き底材及びこれを用いた包装体 | |
JP6993923B2 (ja) | シーラントフィルムおよび包装材 | |
JP7405169B2 (ja) | 手切り開封用低吸着性積層体と、該積層体を用いた包装材料及び包装体 | |
JP2008155432A (ja) | バリア性を有するヒ−トシ−ル性フィルム | |
JPH11349705A (ja) | ブリスタパック包装体の蓋材用シート | |
JP5003222B2 (ja) | バリア性を有するヒ−トシ−ル性フィルム | |
JP2008221733A (ja) | バリア性を有するヒ−トシ−ル性フィルム | |
JP4749119B2 (ja) | 再封機能付き多層フィルム及びこれを用いた再封可能な包装体 | |
EP3906154B1 (en) | Product packaging with heat sealable barrier material | |
JP2005298055A (ja) | 易引き裂き性を有する包装フィルム及びその包装フィルムを用いた容器 | |
JP2005008246A (ja) | シール付チューブ容器 | |
JP3405863B2 (ja) | 易引裂き性フィルムおよびその製造方法 | |
JP2006143864A (ja) | 酸素吸収性フィルム及びそれを用いた積層体、包装用容器 | |
JPH10193502A (ja) | 透明バリアフィルム、それを使用した積層材および包装用容器 | |
EP0996576B1 (en) | Child resistant dispenser package | |
JPH08281893A (ja) | ヒートシール性を有するポリエステルフィルムおよびその製造方法 | |
WO2005027080A1 (ja) | インモールド成形用ラベル | |
JP2009280278A (ja) | 食品用包装体 | |
JP5309456B2 (ja) | バリア性を有するヒ−トシ−ル性フィルム |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20040406 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20040428 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
S531 | Written request for registration of change of domicile |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313532 |
|
R350 | Written notification of registration of transfer |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20080514 Year of fee payment: 4 |
|
S531 | Written request for registration of change of domicile |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313531 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20080514 Year of fee payment: 4 |
|
R350 | Written notification of registration of transfer |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090514 Year of fee payment: 5 |
|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |