JP6993923B2 - シーラントフィルムおよび包装材 - Google Patents

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本発明は、ヒートシールに供するシーラントフィルムおよび包装材に関する。
ゼリー、茶わん蒸し、惣菜などを収容した個包装カップ状商品や、深絞り包装体、使い捨て注射器などの医療品や日用品、文房具を収容するブリスターパックには、従来、ポリオレフィン系樹脂製の容器底材が用いられ、蓋材には容器底材と同程度の融点を有するポリオレフィン系樹脂からなるシール層を含むフィルムが用いられてきた。例えば、蓋材フィルムのシール層には、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-アクリル酸エステル共重合体などのポリオレフィン系樹脂が汎用されていた。
近年では、食品包装容器底材も高機能化が求められ、透明性、耐熱性、酸素ガスバリア性、非吸着性、保香性、成型性などの観点から非晶性ポリエチレンテレフタレート(A-PET)をはじめするポリエステル系樹脂製容器底材の需要が伸びてきており、これらに対して蓋材をヒートシールするため、ポリエステル樹脂をシール層に用いたフィルムが使用されている。
さらに、A-PETシートを容器底材に加工する際のシート打抜き性や金型離型性を向上させるため、また重ね入れられた複数の容器底材から1つの容器底材を取り出す際の耐擦傷性を向上させるため、また食品等の内容物を取り出し易くさせるためなどの観点から、シリコーンを塗布した離型性A-PETシートからなる容器底材が多用されてきている。そのため、蓋材用シーラントフィルムとして上述の汎用のポリオレフィン系樹脂やポリエステル樹脂をシール層に用いたフィルムを用いた場合、シリコーンの離型作用によって十分な密着性が得られずシール不良を引き起こしてしまう。従って、蓋材用のシーラントフィルムには、容器底材の表面に離型剤シリコーンが存在していても十分なシール密着性を有する機能が求められる。その一方で、シール密着性が強くても、開封の際には人の手で軽い力で綺麗に開けられる易開封機能を備えることも重要視されている。
ポリエステル系樹脂製容器に対する易開封性フィルムとしては、例えば、特許文献1には、破断伸度30~100%、厚み15μm以下のヒートシール性ポリエステル層、オレフィンと無水マレイン酸との共重合樹脂よりなるフィルム層、ポリオレフィン層の3層共押出フィルムについて開示されている。
しかしながら、ヒートシール性ポリエステル層を構成するポリエステルを得るためには、対象被着材であるポリエステルと融着状態にヒートシール性を向上させる目的で、ガラス転移温度が非常に低い非晶性線状飽和ポリエステル、例示では東洋紡績社製バイロンGM-900(ガラス転移温度-20℃)を混合しているため、フィルムが不透明となってしまう。
特許文献2には、ガラス転移温度が40℃以下の結晶性ポリエステルAとガラス転移温度が45℃~90℃の非晶性ポリエステルBを含むシール層によって層間剥離する易開封性包装材料について開示されている。
しかしながら、このようなシール層の場合、シール層の弾性率が低いため、開封剥離時の応力によりシール層が伸びて切れてしまい、容器底材にシール層樹脂の膜残りや毛羽立ちを発生してしまうことが懸念される。
特許文献3には、エチレンと(メタ)アクリル酸アルキルエステル又はビニルエステルとのエチレン系共重合体と、ポリエステル樹脂を含有するシール層とサポート層を有し、シール層と容器本体との界面で剥離する易開封性フィルムについて開示されている。
しかしながら、エチレン共重合体を含むシール層では、離型剤が塗布されたPET容器に対して密着性を得られない。またシール層と容器本体とのシール密着強度と、シール層とサポート層との層間密着強度とのバランスが難しいため、狙い通りにシール層と容器本体との界面で剥離できなかったり、シール層が伸びたり膜残りが発生したりし易い。
特許文献4には、ポリオレフィンを主成分とし、防曇剤を含まないラミネート層(A)、ポリオレフィンと防曇剤とを含有する中間層(B)、酸変性ポリオレフィンを主成分とする接着層(C)、ポリエステル系樹脂と防曇剤とを含有するヒートシール層(D)とが、(A)/(B)/(C)/(D)の順で積層されてなる多層フィルムについて開示している。
しかしながら、ヒートシール層(D)の樹脂としては、非晶性あるいは低結晶性ポリエステル系樹脂の種類が広く列挙されているに過ぎず、例えば、実施例1記載の非晶性ポリエチレンテレフタレート(イーストマンケミカル製PETG6763)では、シリコーン塗布のPETとはシール密着性が不十分であるため、内容物の密封が不完全となる懸念がある。また実施例8記載の結晶性ポリエステル(東洋紡績製バイロンGM-913)を用いるとフィルムが不透明となる、また容器底材から開封する際にヒートシール層が伸びて膜残りが生じるといった不具合がある。
特許文献5では、防曇剤を塗布或いは含有する非晶性ないし低結晶性ポリエステルからなるシール層(A)、中間ポリエステル層(B)、接着性樹脂層(C)を含むシール性フィルムが開示されている。また、中間層(B)によりシール層(A)の防曇剤が接着性樹脂層(C)へ移行して層間強度が低くなることを防止し、また、破断伸度の小さい中間層(B)を介在させることにより破断伸度の大きいシール層(A)を被着体から引き剥がす技術思想で設計された構成であるため、実質上、中間層(B)を必須としている。
しかしながら、中間層を実質上必須とし、層数が多いので、それに相当する設備が必要であり、また、シール層を被着体から引き剥がす思想のため、シール層の膜残りや毛羽立ちが派生する懸念がある。
特開平4-94933号公報 特開2001-328221号公報 特開2006-116700号公報 WO2015/046132号公報 特開2004-25825
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、ポリエステル系樹脂からなるシートにシリコーン等の離型剤が表面に塗布された離型性ポリエステル系樹脂成形体(以下、「離型PET」と称することがある)に対して優れたヒートシール密着性を有し、且つ成形体とヒートシールで密封した包装体を開封する際に易剥離(イージーピール)できると共に剥離後に開封箇所に樹脂の残る膜残りや毛羽立ちが生じずに綺麗な剥離面(剥離外観)を成すことができ、また透明性が良好であるシーラントフィルムを提供する。
なお、成形体とは、ポリエステル系樹脂を成形加工してなるフィルム、シート、容器底材、プレートなどを意味する。成形体は、全体がポリエステル系樹脂で形成されていてもよいし、多層構成で内容物側の内層がポリエステル系樹脂で形成されていてもよいし、また、少なくとも、シーラントフィルムとヒートシールするヒートシール箇所がポリエステル系樹脂で形成されていてもよい。
本発明者らは鋭意検討した結果、シール層に離型PETと強固にヒートシール密着できる機能を持たせ、剥離層をシール層に直接接して配設させ、剥離層にシール層との層界面で剥離(層間剥離)できる機能を持たせる以下のシーラントフィルム、および、該フィルムを用いた包装材を考案し、上記課題の解決に至った。
第1の本発明は、少なくともシール層と剥離層とを有するシーラントフィルムにおいて、
前記シール層と前記剥離層とが接して構成され、
前記シール層が、設定温度180℃、せん断速度100sec-1における溶融粘度が5,000Pa・sec以下、かつ20℃の貯蔵弾性率E’が1,000MPa以上であるポリエステル系樹脂、または、該ポリエステル系樹脂と界面活性剤とからなり、
前記剥離層が、設定温度180℃、せん断速度100sec-1における溶融粘度が1,000Pa・sec以下、かつ20℃の貯蔵弾性率E’が1,500MPa以下である変性エチレン系共重合体からなり、
前記界面活性剤は、アニオン性界面活性剤、または、アニオン性界面活性剤とノニオン性界面活性剤であり、前記シール層に対するアニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤のそれぞれの含有比率が0.1質量%以上3.0質量%未満であることを特徴としたシーラントフィルムである。
第1の本発明において、記シール層の破断伸度は10%以下であることが好ましい。
第1の本発明において、前記ポリエステル系樹脂は非晶性樹脂であることが好ましい。
第1の本発明において、前記剥離層のシール層が接する面とは反対側に支持層を有することが好ましい。
第1の本発明のシーラントフィルムのヘーズは20%以下であることが好ましい。
第2の本発明は、第1の本発明のシーラントフィルムとポリエステル系樹脂からなる容器底材とをヒートシールして形成される包装材である。
「ポリエステル系樹脂からなる容器底材」とは、少なくともシーラントフィルムとヒートシールする箇所がポリエステル系樹脂で形成されていればよく、例えば、ポリエステル系樹脂からなるヒートシール層を有する積層フィルムからなる容器底材も含む。また、該ポリエステル系樹脂は、シリコーンが塗布された離型PETであることが好ましく、本発明のシーラントフィルムは該離型PETに対しても良好なヒートシール性を発揮する。
本発明によれば、シリコーン離型剤が塗布されたポリエステル系樹脂成形体(例えば容器底材)に対して強固に密着できるシーラントフィルムを提供できるので、内容物がヨーグルトやゼリー、惣菜等の水分を含み、シール設定箇所が濡れる可能性がある場合であっても、微小な夾雑物がシール設定箇所に存在する可能性がある場合であっても、確実にシーラントフィルムと成形体とを密封することができる。
また、包装後の開封の際には、シール層と剥離層の界面で層間剥離する易剥離性(イージーピール性)を有するため、剥離した後の面にシール層の樹脂が残る膜残りや毛羽立ちが起こり難いため、内容物を取り出す際に、シール箇所に内容物が引っ掛かることなく取り出せる。また、シール層の樹脂の千切れが起こり難いので、樹脂千切れが異物として内容物に混ざることを防止することができる。
さらに、透明性のあるシーラントフィルムであるので、内容物の視認性がよく、商品の美観性を高め商品価値の向上にも有効である。
(a)~(b)は、本発明のシーラントフィルムの層構成を示す模式図である。
以下、本発明の実施形態の一例としての本発明のシーラントフィルム(以下「本フィルム」と称する)について説明する。ただし、本発明の範囲が以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
<シーラントフィルム>
図1(a)~(c)に層構成を示したように、本発明のシーラントフィルム100は、少なくともシール層10と剥離層20とを有する。
(シール層10)
本フィルムのシール層10は、被着体とヒートシールする機能目的から本フィルムの片側の最表面の位置に配設する。また、本フィルムのシール層10は、設定温度180℃、せん断速度100sec-1における溶融粘度が5,000Pa・sec以下、かつ20℃の貯蔵弾性率E’が1,000MPa以上であるポリエステル系樹脂からなる。
シール層10は、シリコーン離型剤が塗布されたポリエステル系樹脂成形体(以下、「離型PET」と言う場合がある。)とのシール密着性と易開封性とを兼備する機能を有するために、第一に、離型PETに対して、十分なシール密着性を必要とするために、シール層10を構成するポリエステル系樹脂の高温溶融状態での粘度を低くするとよい。また、第二に、室温環境下での開封時においてシール層10が離型PETに密着して残存したまま剥離層20との界面で剥離させるために、剥離層20に対しシール層10の貯蔵弾性率を高くするとよい。
シール層10を構成するポリエステル系樹脂の、設定温度180℃、せん断速度100sec-1における溶融粘度は5,000Pa・sec以下であることが好ましく、4,000Pa・sec以下がより好ましく、3,500Pa・sec以下が更に好ましい。また、180℃は、ポリエステル系樹脂成形体とシーラントフィルムとをヒートシールする場合の汎用のシール温度条件の一例であることから、シール層10を構成する樹脂の特性を規定する上で必要な条件であり、ヒートシールをより低温条件で行う場合は、例えば設定温度160℃、せん断速度100sec-1における溶融粘度が上記範囲であることが好ましい。
そのメカニズムは判明していないが、ヒートシール温度における溶融粘度が5,000Pa・sec以下であることにより、ヒートシール工程で本フィルムが加熱された際に、シール層10のポリエステル系樹脂が溶融して被着体表面の微小な凹凸の隅々まで濡れ広がり接触表面積を最大限にすることができ、アンカー効果機能を果たすことができ高い密着性を成すものと考えられる。また、溶融粘度が5,000Pa・sec以下であることにより、ヒートシールにおいて溶融したポリエステル系樹脂層の中に離型PETのシリコーンが取り込まれ易くなり、シール層10のポリエステル系樹脂と容器底材のポリエステル樹脂とが融着し易くなること、等が考えられる。下限は特に限定されないが、フィルム製膜時に必要な溶融張力との関係から、500Pa・sec以上が好ましい。
ポリエステル系樹脂の溶融粘度は、JIS K 7199に基づき、内径1mm、長さ10mmのキャピラリーダイを用いて設定温度180℃、せん断速度100sec-1の条件下で測定した。
シール層を構成するポリエステル系樹脂の20℃の貯蔵弾性率E’は1,000MPa以上が好ましく、2,000MPa以上がより好ましい。1,000MPa以上であることにより、室温環境で本フィルムを離型PETから引き剥がして開封する時にシール層が離型PETにしっかり密着したまま、剥離層との層界面で剥離して開封することができる。シール層10と剥離層20との貯蔵弾性率の差が500MPa以上あることにより、シール層10と剥離層20の層間強度がシール層10とA-PET(離型PET)の密着強度より十分小さくなり、シール層10と剥離層20との層間剥離性が向上する。上限は特に限定されないが、フィルムの柔軟性、割れ難さの点から、5,000MPa以下が好ましい。
ポリエステル系樹脂の貯蔵弾性率は、JIS K 7244-4法に基づき、周波数10Hzの引張振動の温度分散測定により、20℃における貯蔵弾性率を算出した。
シール層10の破断伸度は10%以下が好ましい。10%以下であることにより、本フィルムが剥離層20とシール層10との界面で剥離する際に、被着体に密着したシール層10が剥離層側に引っ張られて伸び過ぎることが生じ難いため、易剥離性が良好となる。下限は特に限定されないが、一般に1%以上である。
シール層10の破断伸度は、JIS K 7127に基づき、200mm/secの速度で測定した。また測定は、本フィルム100からシール層10を剥がしてシール層10単体として測定してもよいし、シール層10を構成するポリエステル系樹脂を単体フィルムに成形して測定してもよい。
ポリエステル系樹脂の溶融粘度、貯蔵弾性率、および破断伸度は、共重合組成、分子量、分子量分布、分岐などの分子構造、結晶性、配向などの三次元構造によってそれぞれ影響されるものである。
ポリエステル系樹脂の固有粘度(IV)は、離型PETに対する密着性と共押出フィルム製膜性の点から0.10m/kg以下が好ましく、0.09m/kg以下がより好ましい。
ポリエステル系樹脂のガラス転移温度は、シール層20との層間剥離性の点から20℃以上100℃以下が好ましく、30℃以上80℃以下がより好ましい。ポリエステル系樹脂のガラス転移温度が20℃以上であれば、室温下において樹脂がガラス状であるので、シール層20/剥離層10との層間の剥離挙動が良好となり、膜残りが発生し難い。
本フィルムのシール層10を構成するポリエステル系樹脂の種類は、上述の溶融粘度と貯蔵弾性率の物性範囲を満たすものであればよく、特に限定されない。それら物性の点から、非晶性ポリエステルあるいは低結晶性ポリエステルが好ましい。例えば、二塩基酸成分として、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、セバンシン酸、ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルスルホンジカルボン酸、4,4’-ビフェニルジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-フェニレンジオキシジ酢酸、およびこれらの構造異性体、マロン酸、コハク酸、アジピン酸等のジカルボン酸またはその誘導体、p-ヒドロキシ安息香酸、p-ヒドロキシ安息香酸エステル類、グリコール酸などのオキシ酸またはその誘導体から選択される成分と、グリコール成分として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ペンタメチレングリコールなどの脂肪族グリコール、シクロヘキサンジメタノールのような脂環式グリコールやさらにはビスフェノールA、ビスフェノールSなどの芳香族ジヒドロキシ化合物誘導体から選択される成分とから、それぞれ1つ、または複数を選択し組み合わせて、二塩基酸成分とグリコール成分とのエステル交換反応またはエステル化反応を行い、次いで溶融重縮合反応により得ることができる。
なお、2種類以上のポリエステル系樹脂を用いてシール層10を形成してもよく、その場合、各樹脂は、溶融粘度が設定温度180℃、せん断速度100sec-1における溶融粘度は5,000Pa・sec以下かつ20℃の貯蔵弾性率E’が1,000MPa以上のものを用いる。
シール層10の透明性、引いては本フィルムの透明性の観点からは、1種類のポリエステル系樹脂を用いてシール層10を形成することが好ましい。また、2種類以上のポリエステル系樹脂を用いる場合は、相溶性の高いポリエステル系樹脂同士を組み合わせることが好ましい。互いに非相溶の2種以上のポリエステル系樹脂を用いる場合は、屈折率差の小さい種類を組み合わせることが好ましく、または、押出成形温度における粘度差の小さいポリエステル系樹脂を組み合わせて樹脂同士の分散を良好にすることが好ましい。
中でも、離型PETに対するシール性の観点から、非晶性ポリエステル樹脂が好ましい。さらに、二塩基酸成分としてイソフタル酸成分とテレフタル酸成分からなり、またグリコール成分としてエチレングリコールからなるポリエチレンテレフタレート(以下、「IPA共重合PET」と称することがある)が好ましく、透明性や成形性も良好である。
本フィルムのシール層10は、界面活性剤を含有することができる。
本フィルムを他の底材容器に対して蓋材として用いる場合において、例えば底材容器にゼリーや茶わん蒸しのような水物や、満注又は満杯の形態で包装する物の場合は、蓋材のフィルムには防曇性は必要ないので、シール層に界面活性剤は含有しない。一方、内容物が幾分かの水分を含んでおり、かつ底材容器中の内容物と蓋材との間に空間が存在する場合は、外気温度によって蓋材の内容物側表面、即ちシール層10表面が内容物の水分によって曇ってしまい、内容物の視認性が悪くなる。
そのため、従来、シール層表面への防曇剤の塗布や、特許文献5のようにシール層を構成するポリエステル系樹脂層への防曇剤の混合が提案されてきたが、実際には、ポリエステル系樹脂層への防曇剤の練り込みは両者の相溶性の点から、シール層は不透明になってしまう、十分な防曇性が発現されないといった不具合点があった。そのため、特許文献5においても実施例では、防曇剤の練り込みではなく、ポリエステル樹脂層表面に防曇剤溶液を塗布する手法を用いている。
本フィルムでは、所定の溶融粘度と貯蔵弾性率を有するポリエステル系樹脂に対して、特定種類の界面活性剤を含有することで、フィルムの防曇性と透明性を兼備できる。更には、冷蔵庫などにおける低温保管時においてもフィルム表面が曇ることのない優れた防曇性(低温防曇性)を有する。
一般に、包装用樹脂フィルムに用いる防曇剤には、樹脂との相溶性の点からノニオン性界面活性剤が多用されるが、上述の溶融特性と弾性特性を有するポリエステル系樹脂から構成されるシール層に練り込む界面活性剤には、アニオン性界面活性剤が好ましい。
アニオン性界面活性剤としては、アルキルスルホン酸、アルキルアリールスルホン酸、アリールスルホン酸、アルキル硫酸、アルキルアリール硫酸、アリール硫酸のアルカリ金属塩、またはアルカリ土類金属塩が望ましい。中でも炭素数8~30、より好ましくは炭素数12~16からなるアルキルスルホン酸、アルキルアリールスルホン酸、アルキル硫酸のナトリウム、カリウム、リチウム、マグネシウム、またはカルシウム等の金属塩が好ましく、中でもナトリウム、カリウム塩を用いることが好ましい。なお、これらアニオン性界面活性剤は単独で用いてもよく、また2種類以上を組み合わせて用いることもできる。
シール層10、ひいては本フィルム100の透明性を向上させるためには、アニオン性界面活性剤とノニオン性界面活性剤とを併用することが好ましい。具体的には、防曇性を向上させるためにシール層へのアニオン性界面活性剤の含有量を増加させると、シール強度や剥離性、透明性を低下させる場合があるが、アニオン性界面活性剤とノニオン性界面活性剤を併用することにより、防曇性とシール強度、剥離性、透明性との兼備が可能となる。
本フィルムに用いるノニオン性界面活性剤としては、エチレンオキサイド付加物、ポリエチレングリコールが好ましく、1種を用いても良く、2種類以上を用いてもよい。
エチレンオキサイド付加物は、アルコールや脂肪酸やそれらのエステル類、油脂などにエチレンオキサイドを付加させた化合物であり、エチレンオキサイドの重合部分の鎖長を調整することにより、所望の親油性親水性パラメータ(HLB)に調整される。エチレンオキサイド付加物の具体例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステルなどが挙げられる。ポリエチレングリコールは、エチレングリコールが重合した構造であり、ポリエチレンオキサイドと同様な構造であるが、ポリエチレンオキサイドの分子量が数万以上であるのに対し、ポリエチレングリコールは分子量2万程度までのものである。
中でも、ポリオキシエチレンアルキルエーテルの使用が、アニオン性界面活性剤と併用して防曇性と透明性とを兼備する点で好ましく、アルキル基は炭素数8~30がより好ましく、炭素数12~16が更に好ましい。
界面活性剤として、アニオン性界面活性剤のみを用いる場合、またアニオン性界面活性剤とノニオン性界面活性剤とを併用する場合とも、シール層10中におけるアニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤のそれぞれの含有比率は、0.1質量%以上3質量%未満が好ましい。下限は0.2質量%以上がより好ましく、0.3質量%以上が更に好ましく、上限は2.5質量%以下がより好ましい。界面活性剤の含有量が0.1質量%以上であれば、水分を含んだ内容物を本フィルムで包装し、冷蔵環境下で保存した際においても包装体内部の水分がシーラントフィルム表面で水滴とならずに均一な水膜を形成しやすい。このように常温から低温まで防曇性に優れるため、内容物の視認性が良好であり、商品の美観性がよく好適に用いられる。また帯電防止効果も優れることから、ブロッキングや摩擦帯電などのフィルム製膜のトラブルを抑制することができる。3質量%未満であると透明性が良好になりやすい。
なお、アニオン性界面活性剤はシール層10を構成するポリエステル系樹脂との相溶性が低いため含有率3質量%以上では、アニオン性界面活性剤のブリードアウトにより透明性や、シール強度、剥離性が低下する場合がある。一方、ノニオン性界面活性剤はポリエステル系樹脂との相溶性が比較的高いため、アニオン性界面活性剤3質量%未満にノニオン性界面活性剤3質量%未満を加えても、透明性、シール強度、剥離性と、防曇性向上との両立が可能となる。
アニオン性界面活性剤とノニオン性界面活性剤の両者を含有させる場合、アニオン性界面活性剤とノニオン性界面活性剤の含有比率は、1:0.5~1:1程度が好ましい。
シール層10を構成するポリエステル系樹脂への界面活性剤の配合は、公知の方法で行うことができる。例えば、予めポリエステル系樹脂と界面活性剤とを二軸押出機等で混練して作製した界面活性剤濃度の高いマスターバッチとポリエステル系樹脂とをドライブレンドして用いてもよいし、所定濃度に作製したマスターバッチを用いてもよい。また、フィルム製膜する押出機において、直接、ポリエステル系樹脂と界面活性剤とをドライブレンドしてもよい。ポリエステル系樹脂に対する界面活性剤の分散性の点から、二軸押出機でマスターバッチを作製することが好ましい。
(剥離層20)
本フィルムの剥離層20は、シール層10に直接接して存在し、測定温度180℃、せん断速度100sec-1における溶融粘度が1500Pa・sec以下、かつ20℃の貯蔵弾性率E’が500MPa以下である変性エチレン系共重合体からなる。
剥離層20は、第一に、フィルム製膜時にはシール層10と十分な密着性を必要とするために、高温溶融状態での粘度を低くするとよい。また第二に、室温環境下での開封時において離型PETに密着したままのシール層10に対して剥離層20が両層界面から剥離するために、剥離層の貯蔵弾性率をシール層に対して所定値以上低くするとよい。
剥離層20を構成する変性エチレン系共重合体の測定温度180℃、せん断速度100sec-1における溶融粘度は1,500Pa・sec以下であることが好ましく、1,000Pa・sec以下がより好ましい。また、180℃は、ポリエステル系樹脂成形体とシーラントフィルムとをヒートシールする場合の汎用のシール温度条件の一例であることから、剥離層20を構成する樹脂の特性を規定する上で必要な条件であり、ヒートシールをより低温条件で行う場合は、例えば設定温度160℃、せん断速度100sec-1における溶融粘度が上記範囲であることが好ましい。
溶融粘度が1,500Pa・sec以下であることにより、本フィルムの製膜時にシール層10に対する剥離層20の層間密着性が向上する。下限は特に限定されないが、シール層との層間剥離性の点から10Pa・sec以上が好ましい。
剥離層20を構成する変性エチレン系共重合体の20℃の貯蔵弾性率E’は、500MPa以下が好ましく、300MPaがより好ましく、100MPa以下が更に好ましい。500MPa以下であることにより、室温環境で本フィルムを離型PETから引き剥がして開封する時にシール層10が離型PETにしっかり密着したまま、剥離層20がシール層10との層界面で剥離して容易に開封できる。剥離層20の貯蔵弾性率がシール層10の貯蔵弾性率より500MPa以上小さいと、シール層10と剥離層20の層間強度がシール層10とA-PETの密着強度より十分小さくなり、シール層10と剥離層20との層間剥離性が向上する。下限は特に限定されないが、一般に10MPa以上が好ましい。
変性エチレン系共重合体の溶融粘度および貯蔵弾性率は、共重合組成、変性度、分子量、分子量分布、分岐などの分子構造、結晶性、配向などの三次元構造によってそれぞれ影響されるものである。
変性エチレン系共重合体の溶融粘度は、JIS K 7199に基づき、内径1mm、長さ10mmのキャピラリーダイを用いて設定温度180℃、せん断速度100sec-1の条件下で測定した。
変性エチレン系共重合体の貯蔵弾性率は、JIS K7244-4法に基づき、周波数10Hzの引張振動の温度分散測定により、20℃における貯蔵弾性率を算出した。
変性エチレン系共重合体の密度は920kg/m以下であることが好ましく、910kg/m以下がより好ましい。密度が920kg/m以下であることにより、変性エチレン系共重合体中の結晶成分が少なくなり、隣接層との共押出密着性が向上する。
本フィルムの剥離層20を構成する変性エチレン系共重合体の種類は、上述の溶融粘度と貯蔵弾性率の物性範囲を満たすものであればよく、特に限定されない。
エチレン系共重合体に用いる単量体としては、エチレン、プロピレン、ブテンなど炭素数2~8のアルケンが挙げられ、また、(メタ)アクリル酸エステル成分を含有していても良い。(メタ)アクリル酸エステル成分としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。また同様に酢酸ビニル成分、ビニルアルコール成分などを含有していても良い。これらは1種を単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。
また変性は、不飽和カルボン酸成分による酸変性が望ましい。不飽和カルボン酸成分としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、フマル酸、クロトン酸等のほか、不飽和ジカルボン酸のハーフエステル、ハーフアミド等が挙げられる。中でもアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸が好ましく、特に無水マレイン酸が好ましい。また、不飽和カルボン酸成分は、前記エチレン系単量体と共重合されていればよく、その形態は限定されず、共重合の状態としては、例えば、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。
酸変性率は、接着性が良好である観点から0.1~10%が好ましく、0.2~5%がより好ましい。
剥離層20は、層間密着性と易剥離性を著しく損なわない限り、或いは向上させるために、その他の樹脂を混合しても良い。変性エチレン系共重合体との混合性、フィルム製膜の共押出性の点から、ポリエチレン、無水マレイン酸により変性または共重合されたポリオレフィン系樹脂が好ましい。剥離層20におけるその他の樹脂の混合比率は50質量%未満である。
(支持層30)
本発明のシーラントフィルム100は、フィルムの片側の最表面に位置するシール層10と、シール層10に接して存在する剥離層20を有すればよく、シール層10と剥離層20の2層構成でもよく(図1(a))、また剥離層20側にシール層10及び剥離層20を支持する支持層30を有する構成でもよい(図1(b))。また、二層以上の支持層30を有する構成でもよい(図1(c))。
支持層30としては、例えば、食品包装用途における酸素ガスバリア性、水蒸気バリア性、耐衝撃性、耐ピンホール性、製造・搬送時のハンドリング性等のフィルムの用途や要求特性に応じて、樹脂層を構成するとよい。例えばポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、エチレン共重合体などのポリオレフィン系樹脂や、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体等のガスバリア性樹脂の樹脂層を1層または2層以上を組み合わせて用いることができる。ポリエチレン樹脂は、中でも低密度ポリエチレン樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂が層間密着性の点で好ましい。
具体的な層構成としては、例えば以下のような層構成が挙げられる。なお、剥離層20と支持層30との間、支持層30同士の間には接着層、蒸着層、印刷層、コート層などを適宜有することもできる。
・シール層/剥離層/ポリエチレン樹脂層
・シール層/剥離層/ポリプロピレン樹脂層
・シール層/剥離層/ポリアミド樹脂層
・シール層/剥離層/ポリアミド系樹脂層/ポリオレフィン系樹脂層
・シール層/剥離層/ポリアミド系樹脂層/ポリエステル系樹脂層
・シール層/剥離層/ポリアミド系樹脂層/エチレン-酢酸ビニル共重合体層/ポリオレフィン系樹脂層
また、フィルムの強度、耐ピンホール性の点で、支持層30として更に二軸延伸フィルムを用いることが好ましく、上述の樹脂層からなる支持層30の側に積層する。
二軸延伸フィルムとしては、例えば二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(OPET)、二軸延伸ナイロンフィルム(ONy)、二軸延伸ポリプロピレンフィルム(OPP)、二軸延伸ポリスチレンフィルム(OPS)などが挙げられる。
<各層およびフィルムの厚み>
本フィルムのシール層10の厚みおよび剥離層20の厚みは、フィルムの総厚および他の層の厚みとのバランスを踏まえ、離型PETとのヒートシール密着性、イージーピール性、透明性を満足すれば、特に限定されるものではないが、両層ともそれぞれ1~50μm程度が好ましい。下限は2μm以上がより好ましく、3μm以上が更に好ましく、上限は40μm以下がより好ましく、30μm以下が更に好ましい。1μm以上であればフィルム製膜性がよく、20μm以下であれば経済性の点で好ましい。
本フィルムの総厚みは、好ましくは10~100μmが好ましく、下限は15μm以上がより好ましく、上限は50μm以下がより好ましい。本フィルムの総厚みが10μm以上であれば十分なフィルム強度となり、100μm以下であれば、ヒートシール工程での伝熱性やフィルムの透明性の点で好ましい。
(その他の成分)
本フィルムの各層は、それぞれ上記した各成分を主成分としていればよく、本発明の機能を阻害しない範囲内で、その他の樹脂、または、以下の添加剤を含んでいてもよい。ここで、主成分とは、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、特に好ましくは100質量%である。
本フィルムには、各層の特性を阻害しない範囲であれば、それぞれ各種添加剤を含有することができる。例えば着色剤、無機充填剤、有機充填剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、酸化防止剤、滑剤、加水分解防止剤、可塑剤、難燃剤などを挙げることができる。これらの添加剤の添加量は特に限定されるものではなく、本発明の所望とする物性を阻害することのない範囲において適宜決定することができる。
<シーラントフィルムの製造方法>
本フィルムを製造する方法は、シール層10がフィルムの片側の最表面に位置し、またシール層10と剥離層20が直接接して配設するように製造できれば、特に限定されない。
例えば、シール層10と剥離層20を、公知のTダイ法やインフレーション法などで、フィードブロック方式やマルチマニホールド方式、それらの組み合わせにより共押出してもよいし、各層を単層フィルムで製造した後に熱ラミネートしてもよいし、一方の層に対して他方を押出ラミネートしてもよい。
また、支持層30は、シール層10、剥離層20と共に共押出してもよいし、シール層10/剥離層20のフィルムに対して、支持層30をドライラミネート法、ウェットラミネート法、サンドラミネート法、熱ラミネート法、押出ラミネート法で形成してもよい。ラミネートの際には、必要に応じてアンカーコート処理やプラズマ、コロナ放電などの表面処理を行っても良い。ドライラミネートやウェットラミネートでは、公知のウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、ポリエステル系接着剤などの各種接着剤を用いることができる。
また、シール層10/剥離層20/支持層30を共押出により作製して、支持層30側に、さらに支持層30として上記した二軸延伸フィルムをラミネートしてもよい。ラミネート方法、表面処理方法は上記した通りである。
また、本フィルムは無延伸でもよく、公知の方法で一軸延伸、二軸延伸してもよく、二軸延伸は同時延伸でも逐次延伸でもよい。また、上記のようにさらに支持層30として二軸延伸フィルムをラミネートする場合は、ラミネートする前に、必要に応じて、本フィルムを延伸すればよい。
<ヒートシール密着性、易剥離(イージーピール)性>
本発明のシーラントフィルム100は、離型PETに対する優れたヒートシール密着性と、開封時にシール層10と剥離層20との層間で剥離し優れたイージーピール性を有するイージーピールシーラントフィルムである。
例えば、離型PETに対し、ヒートシール設定温度180℃の条件で良好なシール密着性を示すことが好ましく、より低温条件の160℃でシール密着性を示すと尚好ましい。また、シール層10/剥離層20の層間剥離強度は、下限は10N/15mm幅以上が好ましく、12N/15mm幅以上がより好ましい。上限は30N/15mm幅以下が好ましく、20N/15mm幅以下がより好ましい。係る範囲の剥離強度を有していれば、被着体に対して十分な強度で密着しており、また、手で容易に剥離開封できる。さらに、本フィルムは、剥離後の両層剥離面に樹脂が不定形に残る膜残りや毛羽立ちや樹脂千切れが生じ難く、良好な剥離外観が得られる。
剥離強度は、本フィルムと被着体とを速度200mm/minで180度剥離試験した際に測定される最大試験力である。
<透明性>
本シーラントフィルム100の透明性は、内容物の視認性、美観性、意匠性等の観点から、ヘーズ20%以下が好ましく、10%以下がより好ましい。下限は特に限定されず、値がより小さいと透明性が良好であり好ましい。ヘーズは、JIS K7136に基づき測定される全ヘーズ値である。
<濡れ性>
本シーラントフィルム100のシール層10表面の濡れ性は、フィルムの防曇性の点から、23℃下においてシール層表面に1μLの蒸留水の液滴を滴下し、その20秒後の接触角が30°以下であることが好ましく、20°以下であることがより好ましい。なお、接触角の下限は特に限定されず、値がより小さいと水がシール層表面に濡れ広がることを意味し、好ましい。
<防曇性>
本シーラントフィルム100は、シール層10に防曇剤を含有することにより、優れた防曇性を示す。更には冷蔵環境下においても良好な防曇性を示す。
例えば、底面直径50mm、深さ80mmのポリプロピレン製円筒形容器に常温蒸留水を100mL入れ、本フィルムをシール層10を容器側に向け該容器の開口部に両面テープで貼着して密封し、恒温槽内で5℃6時間静置した場合であっても、水蒸気がフィルムシール層表面に凝結しない。または、水分がフィルム表面に凝結した場合も、レンズ状にならず均一な水膜を形成するため、内容物を鮮明に確認することができる。
以下の実施例および比較例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明は下記の実施例によって制限を受けるものではない。
下記の原材料と方法によりフィルムを作製し、試験、評価を行い、結果を表1に纏めた。
<原材料>
(シール層;ポリエステル系樹脂)
PEs-1:ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート共重合体(180℃溶融粘度:3,100Pa・sec、20℃貯蔵弾性率:2,400MPa、破断伸度:3%、固有粘度:0.086m/kg、ガラス転移温度:73℃、融点:なし)、
PEs-2:ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート共重合体(180℃溶融粘度:2,600Pa・sec、20℃貯蔵弾性率:2,200MPa、破断伸度:2%、固有粘度:0.083m/kg、ガラス転移温度:71℃、融点:なし)、
PEs-3:ポリブチレンテレフタレート-ポリテトラメチレンエーテルグリコール共重合体(180℃溶融粘度:650Pa・sec、20℃貯蔵弾性率33MPa、破断伸度800%、固有粘度:0.150m/kg、ガラス転移温度:-70℃、融点:126℃)、
PEs-4:グリコール変性ポリエチレンテレフタレート(溶融粘度:5,700Pa・sec、20℃貯蔵弾性率:1,400MPa、破断伸度280%、固有粘度:0.106m/kg、ガラス転移温度:71℃、融点なし)
(シール層;界面活性剤)
AS-1:アルキルスルホン酸ナトリウム塩(アルキル基炭素数12~16)、
AS-2:アルキル硫酸ナトリウム塩(アルキル基炭素数12~16)、
NS-1:ポリオキシエチレンアルキルエーテル(エチレンオキサイド付加数:5モル%、アルキル基炭素数12~16)、
NS-2:ポリエチレングリコール(数平均分子量8600)、
<剥離層>
APE-1:無水マレイン酸変性エチレン-プロピレン-ブテン共重合体(180℃溶融粘度:830Pa・sec、20℃貯蔵弾性率:64MPa、密度:903kg/m)、
APE-2:無水マレイン酸変性エチレン-プロピレン-ブテン共重合体(180℃溶融粘度:860Pa・sec、20℃貯蔵弾性率:25MPa、密度:888kg/m)、
APE-3:エチレン-アクリル酸エステル共重合体(180℃溶融粘度:640Pa・sec、20℃貯蔵弾性率38MPa、密度:942kg/m)、
<支持層>
SL-1:直鎖状低密度ポリエチレン(C6)、
SL-2:ポリアミド6,66共重合体、
OPET:二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(12μm厚)、
(実施例1~9、比較例1~5)
表1に記した配合の原材料を各押出機に供給し、Tダイ共押出法により押出温度220℃の条件で、シール層、剥離層、支持層の各層を接して押出し、40℃の水冷金属冷却ロールで冷却し、共押出フィルムを得た。シール層/剥離層/支持層の厚みは5μm/10μm/15μmであった。
次いで、共押出支持層の表面をコロナ放電処理した後、エーテル系ポリウレタン接着剤を用いて、OPETをドライラミネートした。
<評価方法>
実施例・比較例で得られたサンプルについて、以下の方法で測定・評価を行い、結果を表1に示した。
(1)ヒートシール試験、剥離試験
被着体としてシリコーン塗布されたA-PETシート(三菱ケミカル社製ノバクリアSR006、200μm厚)を用い、そのシリコーン塗布面に実施例および比較例で得られたフィルムのシール層面を対向させて重ね、その一端をヒートシール機を用いて荷重2kg/cm、ヒートシール時間1秒間の条件でヒートシールした。設定温度は160℃と180℃の2通りで試験した。
その後、長さ100mm、幅15mmの短冊状に切り出し、ヒートシール部を中央にしてA-PETシートとフィルムのそれぞれの端を引張試験機の掴み具に取り付け、剥離角度180度、剥離速度200mm/分の条件で、短冊状の長さ方向に剥離又は破断するまで引張り、測定された最大応力を剥離強度として測定した。
設定温度180℃において、剥離強度が10N/15mm以上であるものを密着性良好と判断した。また、剥離層/シール層の界面で層間剥離し、かつ30N/15mm幅以下のものを易剥離性良好と判断した。
(2)剥離状態評価
上記剥離試験後の剥離面を観察して下記の基準で評価した。
○:剥離層/シール層の界面で綺麗に層間剥離している。
△:剥離層/シール層の界面で層間剥離しているが、剥離層の一部がシール層面に膜残りしている。
▲:剥離層/シール層の層間剥離している部分の他、シール層/被着体の界面で剥離した部分があり、剥離面が乱れている。
×:シール層/被着体の界面で剥離している。
(3)透明性
JIS K7136に準拠して、全光線透過率、および全ヘーズを測定した。
全ヘーズが20%以下であるものを合格とした。
(4)濡れ性
23℃下においてシール層表面に1μLの蒸留水の液滴を滴下し、その20秒後の接触角を測定した。
接触角が30°以下であるものを合格とした。
(5)低温環境下の防曇性
底面直径50mm、深さ80mmのポリプロピレン製円筒形容器に常温蒸留水100mLを入れ、次いで、フィルムのシール層側を容器に向けて両面テープで容器開口部に貼り付けて密封し、恒温槽で5℃、6時間静置し、フィルムの曇り度合いを観察し下記の基準で評価した。
◎:水分がフィルムの内容物側表面の全面にムラなく濡れ広がり、内容物を鮮明に視認できる。
〇:水分が水滴にならずにフィルムの内容物側表面が濡れ(ムラあり)、内容物を視認できる。
×:水分がフィルムの内容物側表面で凝結して微細な水滴となってフィルムが曇り、内容物を視認できない。
Figure 0006993923000001
表1より実施例1~9に記載のフィルムは、離型PETと設定温度180℃でヒートシールした場合に十分な密着性と、層間剥離による易剥離性および良好な剥離外観、更には良好な透明性を得ることができた。更に実施例1、2、4~9は、設定温度160℃のヒートシールにおいても良好な剥離外観が得られ、優れていた。
比較例1のフィルムは、シール層のアニオン性界面活性剤を3質量%含有しているため、界面活性剤がシール層表面に過剰に析出し、離型PETとのヒートシール密着性が悪いため剥離強度が低く、また透明性が悪かった。
比較例2のフィルムは、剥離層の樹脂が酸変性等の変性をしていない樹脂であったため、被着体に密着したシール層に対し剥離層の接着力が弱いことから剥離強度が低く、膜残りも生じた。
比較例3のフィルムは、シール層に用いた界面活性剤がノニオン性界面活性剤のみであったため、界面活性剤がシール層表面に析出し難く、シール層表面における防曇性を発現することができなかった。またシール層と剥離層との層界面剥離面に膜残りが生じた。
比較例4のフィルムは、シール層のポリエステル系樹脂の20℃貯蔵弾性率が33MPaと非常に柔らかい樹脂材料のため、剥離の際にフィルムが伸びてしまうことから剥離強度が低かった。また透明性も著しく悪かった。
比較例5のフィルムは、シール層の樹脂の180℃溶融粘度が5,700Pa・secと高いため、ヒートシール工程においてシール層の被着体への密着が弱く、シール層と被着体の界面で剥がれてしまい、剥離面も乱れていた。
また、界面活性剤を含有する例の防曇性評価について、実施例2~9は、シール層に所定の界面活性剤を所定量含有し、内容物視認性が良好であった。実施例3、5~9は「◎」評価、実施例2、4は「〇」評価であった。比較例1、4、5の防曇性は「◎」、比較例2は「〇」評価だったが、何れも密着性が悪く、比較例1、4は更に透明性も悪かった。比較例3は、界面活性剤を含有するがノニオン性界面活性剤のみのため、防曇性が「×」評価だった。
本シーラントフィルムは、離型PETに対し、良好なヒートシール密着性と易開封性、更には透明性を有することから、内容物視認性や美観性が重要な、食品、医薬品、医療品、工業部品などの包装に好適である。
包装の形態としては、離型PETで成形されたカップ、深絞り体、ブリスターパックなどの容器底材に対する蓋材として好適であり、パウチ等の袋体のシーラントフィルムとしても用いることができる。

Claims (6)

  1. 少なくともシール層と剥離層とを有するシーラントフィルムにおいて、
    前記シール層と前記剥離層とが接して構成され、
    前記シール層が、設定温度180℃、せん断速度100sec-1における溶融粘度が5000Pa・sec以下、かつ20℃の貯蔵弾性率E’が1,000MPa以上であるポリエステル系樹脂、または、該ポリエステル系樹脂と界面活性剤とからなり、
    前記剥離層が、3種以上のアルケンを単量体として用いたエチレン系共重合体を不飽和カルボン酸成分により変性した変性エチレン系共重合体からなり、該変性エチレン系共重合体の設定温度180℃、せん断速度100sec-1における溶融粘度が1,500Pa・sec以下、かつ20℃の貯蔵弾性率E’が500MPa以下であり
    前記界面活性剤は、アニオン性界面活性剤、または、アニオン性界面活性剤とノニオン性界面活性剤であり、前記シール層に対するアニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤のそれぞれの含有比率が0.1質量%以上3.0質量%未満であることを特徴としたシーラントフィルム。
  2. 前記シール層の破断伸度が10%以下である、請求項1に記載のシーラントフィルム。
  3. 前記ポリエステル系樹脂が非晶性樹脂である、請求項1または2に記載のシーラントフィルム。
  4. 前記剥離層のシール層が接する面とは反対側に支持層を有する、請求項1~3の何れかに記載のシーラントフィルム。
  5. シーラントフィルムのヘーズが20%以下である、請求項1~4の何れかに記載のシーラントフィルム。
  6. 請求項1~5に記載のシーラントフィルムとポリエステル系樹脂からなる容器底材とをヒートシールして形成される包装材。
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