JP2007287343A - 燃料電池用のカソード電極及び燃料電池 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】触媒と、含フッ素置換アセチレンポリマーとが含まれてなることを特徴とする燃料電池用のカソード電極を採用する。
【選択図】なし
Description
そこで、触媒粉末を固化成形させるバインダ樹脂に酸素透過性に優れたポリジメチルシロキサンを用い、触媒表面への酸素供給量を増大させて活性化過電圧を低減させる方法が提案されている(特許文献1)。
また、酸素溶解性及び耐熱性に優れた含フッ素ポリマーをバインダ樹脂に採用することも検討されているが、含フッ素ポリマーの多くは溶剤に不溶であるため、電極の形成が困難であった。
本発明の燃料電池用のカソード電極は、触媒と、下記一般式(1)で表される含フッ素置換アセチレンポリマーとが含まれてなることを特徴とする。ただし、下記一般式(1)において、R1及びR2は独立して、水素、フッ素基、アルキル基、フッ素置換アルキル基、フッ素置換フェニル基のうちのいずれかであり、n1は100以上10000以下の整数である。
また、本発明の燃料電池用のカソード電極においては、前記含フッ素置換アセチレンポリマーと前記含ケイ素置換アセチレンポリマーの混合比が、モノマー単位で、フッ素置換アセチレンポリマー:含ケイ素置換アセチレンポリマー=1:4〜1:100の範囲であることが好ましい。
また、本発明の燃料電池用のカソード電極においては、前記含フッ素置換アセチレンポリマーがポリ(2−トリフルオロメチルフェニルアセチレン)であることが好ましい。
また、本発明の燃料電池用のカソード電極においては、前記含ケイ素置換アセチレンポリマーがポリ(1−トリメチルシリルプロピン)であることが好ましい。
また、この含フッ素置換アセチレンポリマーは、各種の溶剤に溶解させることが可能であり、カソード電極の形成を容易に行うことができる。
本実施形態の燃料電池は、図1に示すように、本発明に係るカソード電極2およびアノード電極3と、カソード電極2およびアノード電極3の間に挟持された電解質4と、カソード電極2の外側に配置された酸化剤流路5aを有する酸化剤配流板5と、アノード電極3の外側に配置された燃料流路6aを有する燃料配流板6とから構成され、80℃〜200℃の温度で作動するものである。
固体高分子電解質の材質としては例えば、パーフルオロカーボンスルフォン酸型イオン交換膜や、炭化水素型高分子電解質膜が好ましい。
また、リン酸型電解質の材質としては例えば、塩基性ポリマーに、リン酸、ポリリン酸、ホスホン酸、硫酸のうちのいずれか一種以上の酸が含浸されてなるものが好ましい。前記酸のうちリン酸は、85%のオルソリン酸水溶液に含浸するのが望ましく、塩基性ポリマーの一官能基あたり200〜1000モル%程度のドープ量に設定することが望ましい。塩基性ポリマーがリン酸等を保持することにより、リン酸等の水素イオンが一部解離し、この水素イオンによって電解質膜4にイオン伝導性が付与される。リン酸を保持する塩基性ポリマーとしては、ポリベンズイミダゾール、ポリ(ピリジン)、ポリ(ピリミジン)、ポリイミダゾール、ポリベンゾチアゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリオキサジアゾール、ポリキリノン、ポリキノキサリン、ポリリアジアゾール、ポリ(テトラザビレン)、ポリオキサゾール、ポリビニルピリジン、ポリビニルイミザゾール、これらの誘導体、のうちのいずれか一種または二種以上からなるものである。特に、塩基性ポリマーとして、下記一般式(3)に示すポリベンズイミダゾールを用いることが好ましい。なお、塩基性ポリマーの平均分子量は1000〜1000000が好ましい。更にリン酸型電解質として、多孔質炭化ケイ素体にリン酸を含浸させたものを用いても良い。
また、この含フッ素置換アセチレンポリマーは、ポリマーに対する酸素の溶解性が高く、特に空気中の酸素を選択的に溶解する性質がある。従って、含フッ素置換アセチレンポリマーをカソード電極に含有させることで、触媒層2a内部における酸素濃度が向上し、活性化過電圧の低減が図られる。更に、含フッ素置換アセチレンポリマーはフッ素系樹脂であるにもかかわらず、トルエン等の溶剤に対して溶解性を示すので、触媒とともに溶剤に混合することで均一なスラリーが形成され、このスラリーを用いてカソード電極を形成することにより、含フッ素置換アセチレンポリマーを触媒層2a中に均一に分散させることができる。
以上より、含フッ素置換アセチレンポリマーは燃料電池の電極構成材料として好適である。
更に、含ケイ素置換アセチレンポリマーは、トルエン等の溶剤に対する溶解性が高いため、含フッ素置換アセチレンポリマーと同様に、触媒層2a中に均一に分散させることができる。
以上より、含ケイ素置換アセチレンポリマーは、含フッ素置換アセチレンポリマーと同様に、燃料電池の電極構成材料として好適である。
そこで、本発明に係るカソード電極では、含フッ素置換アセチレンポリマーに加えて、酸素透過係数PO2が比較的高い含ケイ素置換アセチレンポリマーを含有させることが望ましい。これにより、カソード電極におけるバインダーの酸素透過係数PO2と酸素/窒素分離係数(PO2/PN2)とが向上し、触媒層内部における酸素濃度を向上できると同時に触媒表面における酸素濃度も向上することができ、これにより活性化過電圧の更なる低減が図られる。
触媒に対する各ポリマーの配合率が下限値以上であれば、触媒表面に十分な量の酸素を供給することができる。また配合率が上限値以下であれば、カソード電極2自体の抵抗率が低く抑えられ、カソード電極の内部抵抗を低減できる。
疎水性樹脂としては例えば、ポリ四フッ化エチレン、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロエチレン共重合体、パーフルオロエチレン等といった疎水性および耐熱性に優れた樹脂を用いることができる。疎水性樹脂を添加することにより、発電反応に伴って生成した水によって触媒層2aが過剰に濡れるのを防止することができ、カソード電極2内部における酸素の拡散阻害を防止することができる。すなわち、カソード電極2内部の触媒表面において、気相(酸素)−液相(水)−固相(触媒)の三相界面が多く形成されて、カソード電極2の特性を向上させることができる。
また、塩基性ポリマーとしては、上記の電解質4に用いられる塩基性ポリマーを利用することができる。塩基性ポリマーの平均分子量は1000〜100000が好ましい。平均分子量が1000以下では触媒との密着性が悪く、また平均分子量が100000以上では、溶剤に溶けにくくなり触媒との混合が困難になるからである。塩基性ポリマーを添加することによって、電解質4から滲み出されたリン酸等をカソード電極2に保持させることができる。これにより、カソード電極2の触媒表面に水素イオンを効率よく輸送させることができ、酸素の還元反応の反応速度を高めることができる。
更に、プロトン伝導性樹脂としては、パーフルオロカーボンスルフォン酸型イオン交換樹脂などのフッ素系イオン交換樹脂を用いることができる。特にフッ素系イオン交換樹脂は酸素選択的溶解性を有しており、当該樹脂に溶解させた酸素を電極表面に効率よく輸送させることができる。これにより、カソード電極の触媒表面に水素イオンを効率よく輸送させることができ、酸素の還元反応の反応速度を高めることができ、活性化過電圧をより低くすることができる。
また、触媒層2aにおける塩基性ポリマーの配合率は質量%で0%以上10%以下の範囲が好ましく、2%以上5%以下の範囲がより好ましい。塩基性ポリマーの配合率を2%以上とすることで触媒層2aにおける水素イオンの伝導性を高めて酸素の還元反応を効率よく進めることができる。また塩基性ポリマーの配合率を10%以下とすることでカソード電極2の内部抵抗を低減することができる。
更に、触媒層2aにおけるプロトン伝導性樹脂の配合率は質量%で0%以上10%以下の範囲が好ましく、2%以上5%以下の範囲がより好ましい。プロトン伝導性樹脂の配合率を2%以上とすることで触媒層2aにおける水素イオンの伝導性を高めて酸素の還元反応を効率よく進めることができる。またプロトン伝導性樹脂の配合率を10%以下とすることでカソード電極2の内部抵抗を低減することができる。
また、疎水性樹脂、塩基性ポリマーまたはプロトン伝導性樹脂が、トルエン等の溶剤に不溶の場合には、これら疎水性樹脂等及び触媒により触媒層を形成し、そのあとから含フッ素置換アセチレンポリマーを添加すると同時に、必要に応じて含ケイ素置換アセチレンポリマーを添加してもよい。具体的には、触媒及びこれら疎水性樹脂等を、疎水性樹脂等が可溶な溶剤に混合してスラリーとし、このスラリーから溶剤を除去して混合物とする。次に、含フッ素置換アセチレンポリマーと、必要に応じて含ケイ素置換アセチレンポリマーとが溶解されたトルエン溶液を調製し、このトルエン溶液に先ほどの混合物を投入して混練することによりスラリーとし、このスラリーを多孔質カーボンシート2bに塗布し、更にトルエンを除去することで触媒層を形成する。また、先ほどの混合物にトルエン溶液を塗布してからトルエンを除去しても良い。このようにして、疎水性樹脂等が更に添加されてなる触媒層が得られる。
実施例1のカソード電極を以下のようにして製造した。まず、ポリ(2−トリフルオロメチルフェニルアセチレン)(以下、PTFMPAと表記する)を0.3質量%の濃度で溶解させたトルエン溶液20mlを用意し、このトルエン溶液に白金担持触媒2gを添加して混合してスラリーとした。触媒とPTFMPAの質量比は触媒:PTFMPA=1:0.05であった。なお白金担持触媒には、カーボン(ValcanXC72)に白金を坦持させた白金担持触媒(白金含有率40質量%)を用いた。
得られたスラリーを微細カーボン層を有するカーボンペーパー(SGL Carbon社製:GDL30BC)上に塗布した。塗布後、真空中150℃で約15分間乾燥して溶媒を除去した。このようにしてカーボンペーパーに触媒層が形成されてなる実施例1のカソード電極を製造した。なお、カソード電極の触媒層におけるPTFMPAの配合率は5質量%であった。
なお、酸素透過係数PO2の測定は次のように行った。PTFMPAを膜厚100μmの薄膜に成形し、この薄膜を隔壁とした2つの領域をもつ測定装置を用意した。各領域には、ガス流入路とガス流出路がそれぞれ設けられている。一方の流入路からArガスを流量200ml/Lで流通させ、他方の流入路から空気を流量200ml/Lで流通させた。Arガスを流した側の領域についてガスの成分分析をガスクロマトグラフにより行うことにより、酸素透過係数PO2を測定した。
実施例2のカソード電極を以下のようにして製造した。まず、PTFMPAとポリ(1−トリメチルシリルプロピン)(以下、PTMSPと表記する)とをモノマーユニット比(PTFMPA:PTMSP)で1:4の割合でかつ0.5質量%の濃度で溶解させたトルエン溶液20mlを用意し、このトルエン溶液に白金担持触媒2gを添加して混合してスラリーとした。触媒とPTFMPAとPTMSPの質量比は触媒:(PTFMPA+PTMSP)=1:0.05であった。なお白金担持触媒は実施例1と同じものを用いた。
得られたスラリーを実施例1と同じ種類のカーボンペーパー上に塗布した。塗布後、真空中150℃で約15分間乾燥して溶媒を除去した。このようにして実施例2のカソード電極を製造した。
そして、実施例2のカソード電極を用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例2の燃料電池を製造した。なお、カソード電極の触媒層におけるPTFMPAの配合率は1質量%であり、PTMSPの配合率は4質量%であった。
PTFMPAとPTMSPのモノマーユニット比(PTFMPA:PTMSP)を1:100にしたこと以外は上記実施例2と同様にして実施例3のカソード電極を製造した。
そして、実施例3のカソード電極を用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例3の燃料電池を製造した。なお、カソード電極の触媒層におけるPTFMPAの配合率は0.05質量%であり、PTMSPの配合率は5質量%であった。
PTFMPAとPTMSPのモノマーユニット比(PTFMPA:PTMSP)を1:200にしたこと以外は上記実施例2と同様にして実施例4のカソード電極を製造した。
そして、実施例4のカソード電極を用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例4の燃料電池を製造した。なお、カソード電極の触媒層におけるPTFMPAの配合率は0.03質量%であり、PTMSPの配合率は5質量%であった。
ポリ(ビニリデンフルオライド)(以下、PVdFと表記する)を0.3質量%の濃度で溶解させたN−メチルピロリドン溶液(NMP溶液)20mlを用意し、このNMP溶液に白金担持触媒2gを添加して混合してスラリーとした。触媒とPVdFの質量比は触媒:PVdF=1:0.05であった。なお白金担持触媒には実施例1と同様の白金担持触媒を用いた。
得られたスラリーを、実施例1と同じ種類のカーボンペーパー上に塗布した。塗布後、真空中150℃で約15分間乾燥して溶媒を除去した。このようにして比較例1のカソード電極を製造した。なお、カソード電極の触媒層におけるPVdFの配合率は3質量%であった。
そして、比較例1のカソード電極を用いたこと以外は実施例1と同様にして、比較例1の燃料電池を製造した。
PTFMPAに代えてPTMSPを用いたこと以外は実施例1と同様にして、比較例2の燃料電池を製造した。
上記のようにして製造した各燃料電池に対して、カソード電極に空気を供給するとともにアノード電極に水素を供給し、作動温度150℃、電解質に対して加湿しない条件(無加湿の条件)で発電を行い、発電特性を評価した。発電は、出力電流密度が0.3A/cm2になる条件で行った。表1に、発電開始から10時間、500時間および1000時間経過したときの各燃料電池の出力電圧を示す。
実施例2及び3の燃料電池では、PTFMPAに加えて酸素透過性の高いPTMSPを含有させたことにより、触媒表面における酸素濃度が増大して、出力電圧が更に増大していることがわかる。
また、実施例1〜3の燃料電池は、PTFMPAを含まない比較例2と比べて、10時間後の出力電圧は低いものの、500時間後では実施例1〜3の出力電圧が比較例2よりも大きくなり、500時間から1000時間の間では出力電圧がほとんど低下していない。これは、PTFMPAを含有させたことによって、カソード電極の耐熱性及び耐酸化性が向上し、燃料電池の長期安定性が向上したためである。
実施例4については、PTFMPAの含有率が低いために、実施例1〜3と比べて500〜1000時間後の出力電圧が低くなっているが、10時間後の出力電圧は実施例1〜3及び比較例1並びに2の中で最も高く、初期特性に優れていることがわかる。
Claims (7)
- 前記一般式(2)で表される含ケイ素置換アセチレンポリマーの酸素透過係数PO2が1×10−11[cm3(標準状態)・cm/cm2・s・Pa]以上であることを特徴とする請求項2に記載の燃料電池用のカソード電極。
- 前記含フッ素置換アセチレンポリマーと前記含ケイ素置換アセチレンポリマーの混合比が、モノマー単位で、フッ素置換アセチレンポリマー:含ケイ素置換アセチレンポリマー=1:4〜1:100の範囲であることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の燃料電池用のカソード電極。
- 前記含フッ素置換アセチレンポリマーがポリ(2−トリフルオロメチルフェニルアセチレン)であることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の燃料電池用のカソード電極。
- 前記含ケイ素置換アセチレンポリマーがポリ(1−トリメチルシリルプロピン)であることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の燃料電池用のカソード電極。
- 請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の燃料電池用のカソード電極を備えたことを特徴とする燃料電池。
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