JP2007284269A - レーザスクライブ方法および電気光学装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】多光子吸収閾値以下のレーザ強度であっても改質層の形成を可能にするレーザスクライブ方法および電気光学装置を提供することを目的とする。
【解決手段】複数の表示パネル31が形成された石英基板51のレーザ光4の入射面51aと反対面51b近傍へ、まず、フェムト秒レーザ光4aにより、石英自体より多光子吸収の生じ易い基礎改質層55を形成する。次に、基礎改質層55にYAGレーザ光4bの集光点を合わせて、基礎改質層55に重なるように改質層56,57を形成する。
【選択図】図8
【解決手段】複数の表示パネル31が形成された石英基板51のレーザ光4の入射面51aと反対面51b近傍へ、まず、フェムト秒レーザ光4aにより、石英自体より多光子吸収の生じ易い基礎改質層55を形成する。次に、基礎改質層55にYAGレーザ光4bの集光点を合わせて、基礎改質層55に重なるように改質層56,57を形成する。
【選択図】図8
Description
本発明は、レーザ光によって透明基板の内部に多光子吸収による改質層を形成し、改質層に沿って透明基板をスクライブ(切断)するレーザスクライブ方法およびレーザスクライブ方法を用いて加工された電気光学装置に関する。
従来、ガラスなどの脆性な透明基板を切断するために、パルスレーザ光を透明基板の内部に集光させ、集光部に多光子吸収による改質層を形成するレーザスクライブ方法が知られている。レーザスクライブ方法は、特許文献1および特許文献2に示されているように、まず、透明基板の切断予定ラインに沿って、パルスレーザ光の入射面から遠い位置および近い位置に2つの改質層を形成する。次に、この改質層を起点にして透明基板を切断すれば、容易に切断可能である。パルスレーザ光は、一般にYAGレーザが用いられるが、近年、チタンサファイアレーザのような超短パルスレーザも用いられている。また、特許文献3には、超短パルスレーザによる多光子吸収について詳細に開示されている。
ここで、パルスレーザ光による改質層の形成について簡単に説明する。図12(a)は、従来のレーザスクライブ方法による基板のレーザ光入射面側への改質層形成を示す断面図である。この場合、YAGレーザのレーザ光100は、集光レンズ101によって、透明基板102の入射面107から透明基板102内部の入射面107の近傍へ集光されている。入射面107から入射したレーザ光100は、透明基板102によって屈折することにより収差が生じ、集光点103および集光点104の間に集光される。集光されたレーザ光100の強度Pが、多光子吸収を生じさせる多光子吸収閾値Pkより大きい強度P1であれば、改質層が形成され、改質層の入射面107と直角方向の長さは、集光された集光点103と集光点104との距離△L1である。このように、収差が生じた集光点間の距離△Lにおけるレーザ光100の強度Pが多光子吸収閾値Pk以上であれば、△Lの長さを有する改質層が形成可能である。
しかし、従来の技術では、図12(b)の基板のレーザ光入射面側と反対面側への改質層形成を示す断面図のように、透明基板102の入射面107から離れた反対面108の近傍においては、収差による集光点105および集光点106との距離△L2が距離△L1より広がり、この間の強度Pが多光子吸収閾値Pk以下の強度P2になる場合がある。この場合、改質層が形成されないため、改質層を形成するために、出力の大きなYAGレーザを用いて対応をしていた。出力の大きなYAGレーザによれば、図12(a)の入射面107に近い位置においては、レーザ光100の強度Pが必要以上に強くなることに起因して熱が発生し、発生した熱の影響により、改質層周辺の透明基板102の変質、膨張、応力集中などの課題があった。この課題は、厚い透明基板において改質層を形成する場合により顕著である。
本発明は、上記課題を解決するために、多光子吸収閾値以下のレーザ強度であっても改質層の形成を可能にするレーザスクライブ方法および電気光学装置を提供することを目的とする。
本発明のレーザスクライブ方法は、レーザ光を被加工物の内部へ照射し、レーザ光の集光点において被加工物の切断予定位置に多光子吸収による改質層を形成するために、被加工物に多光子吸収が生じ易い基礎改質領域を形成する基礎工程と、レーザ光を基礎改質領域へ集光させ、基礎改質領域に重ねて前記多光子吸収による改質層を形成する改質工程と、を有することを特徴とする。
このレーザスクライブ方法によれば、レーザ光を被加工物の内部に集光させ、集光点において改質層を形成する。改質層は、被加工物の内部に集光されたレーザ光の多数の光子が被加工物の電子と相互作用して吸収される、いわゆる多光子吸収の現象が生じた領域である。被加工物の切断予定位置に改質層を形成することにより、改質層を起点にして被加工物を容易に切断可能である。この場合、レーザ光は、一点に集光するように照射されるが、被加工物に入射すると屈折することにより収差が生じ、集光点が拡大して単位面積あたりのレーザ強度が低下する。そのため、被加工物の内部の所定位置へ最初に改質層を形成しようとすると、レーザ強度が改質層形成に必要な強度以下の弱レベルに低下していて、多光子吸収の現象が生じず、改質層の形成ができないことがある。このような事態を回避するために、まず、基礎工程において、被加工物に対して多光子吸収が生じ易い基礎改質領域を形成しておく。基礎改質領域は、被加工物自体に比べて、レーザ光が吸収されやすい状態の領域である。次に、改質工程において、基礎改質領域にレーザ光を集光させて、基礎改質領域へレーザ光による改質層を形成する。基礎改質領域へレーザ光を照射すると、レーザ強度が弱レベルであっても、基礎改質領域はレーザ光を吸収し易い領域のため、レーザ光が吸収されて多光子吸収の現象が生じ、改質層の形成が可能である。このように、基礎改質領域を形成しておけば、基礎改質領域を基にして、弱レベルの強度のレーザ光で改質層の形成ができ、出力の大きなレーザ加工装置などを用いる必要がない。
この場合、レーザ光は、ナノ秒レーザによるパルス幅がマイクロ秒からピコ秒の範囲のパルスレーザ光であることが好ましい。
この方法によれば、レーザ光として、汎用性および信頼性の高いパルス幅がナノ秒(10-9秒)クラスのパルスレーザ光を発する装置を用いることが可能である。一般に、高信頼性を有するナノ秒クラスのパルスレーザ光は、収差の影響を排除するためにレーザ強度を上げて被加工物に集光させると、パルスによるナノ秒クラスの照射時間では、多光子吸収により改質層を形成すると同時に、レーザ光が被加工物に吸収されて熱エネルギに変換されてしまい、被加工物の変質、膨張、応力集中が生じることがある。これに対し、被加工物に基礎改質領域を形成しておくことにより、ナノ秒クラスのパルスレーザ光であっても、パルスレーザ光の強度を熱変換が生じるほど上げることなく、基礎改質領域に重ねて改質層を形成することが可能である。
そして、基礎改質領域は、被加工物のレーザ光の入射面に対して反対面の近傍に形成され、基礎工程では、フェムト秒レーザによるパルス幅がピコ秒からフェムト秒の範囲のパルスレーザ光を入射面の方向から被加工物へ照射して基礎改質領域を形成することが好ましい。
この方法によれば、通常、被加工物の入射面から反対面にかけて、収差により次第に集光点が広がり単位面積あたりのレーザ強度も弱くなる傾向であるが、それに対して、最もレーザ強度が弱くなり改質層を形成しにくい反対面の近傍へ、基礎改質領域を形成する。基礎工程における基礎改質領域の形成は、フェムト秒レーザによるパルス幅の極めて短いパルスレーザ光によって行う。フェムト秒(10-15秒)のパルスレーザ光を用いると、極短時間のパルス幅でレーザ光の照射の繰り返しが可能であるため、強いレーザ強度のレーザ光であっても、レーザ光が熱エネルギに変換される前の極短時間の間に多光子吸収を行うことができ、熱の発生をほとんど伴わずに基礎改質領域を形成可能である。従って、フェムト秒のパルスレーザ光によれば、パルス幅の長い他のレーザ光では被加工物へ熱影響を与えてしまうレーザ強度であっても、基礎改質領域を反対面の近傍へ効率良く形成することが可能である。
または、基礎改質領域は、被加工物のレーザ光の入射面に対する反対面の近傍に形成され、基礎工程では、レーザ光を反対面の方向から被加工物へ照射して基礎改質領域を形成することが好ましい。
この方法によれば、通常、被加工物の入射面から反対面にかけて、収差により次第に集光点が広がり単位面積あたりのレーザ強度が弱くなる傾向であるが、それに対して、入射面からのレーザ光のレーザ強度が最も弱くなり改質層を形成しにくい反対面の近傍へ、基礎改質領域を形成する。この基礎改質領域を形成する基礎工程では、レーザ光を被加工物の反対面の側から照射する。レーザ光を反対面の側から照射することにより、レーザ光の屈折による収差の影響をほとんど受けないため、レーザ光のレーザ強度が弱くならず、反対面の近傍への基礎改質領域の形成が可能である。このように、改質層を形成するためのレーザ光と同じレーザ光を用いて、照射方向を変える操作だけで、基礎改質領域が容易に形成可能である。
あるいは、基礎工程では、被加工物のレーザ光の入射面に対して反対面を非鏡面に加工した基礎改質領域を形成することが好ましい。
この方法によれば、通常、被加工物の入射面から反対面にかけて、収差により次第に集光点が広がり単位面積あたりのレーザ強度が弱くなる傾向であるが、それに対して、入射面からのレーザ光のレーザ強度が最も弱くなり改質層を形成しにくい反対面の近傍へ、基礎改質領域を形成する。この基礎改質領域は、レーザ光を吸収する領域であれば良く、この場合、基礎改質領域は、レーザ光を透過し難い非鏡面にした反対面である。非鏡面の反対面は、レーザ光のレーザ強度が弱レベルであっても、反対面である基礎改質領域に集光されたレーザ光を吸収するために多光子吸収の現象が生じ、改質層の形成が可能である。なお、反対面を非鏡面にする基礎工程の加工方法としては、微粒子を吹き付けるブラスト法、薬品による化学的な処理法などが挙げられる。
そして、被加工物とレーザ光とを切断予定位置に沿って複数回相対移動させ入射面および反対面の間に改質層を形成するための移動工程をさらに有していることが好ましい。
この方法によれば、切断予定位置に沿って改質層を形成するための移動工程は、複数回行う相対移動毎にレーザ光の集光点を被加工物の入射面の方向に移動させることにより、改質層を被加工物の入射面方向へ拡大させる。これにより、被加工物の入射面および反対面の間の厚さに関わらず、被加工物の厚さ方向のほぼ全域に改質層を形成可能である。ほぼ全域に改質層を形成することにより、被加工物を切断予定位置に沿って、正確に、且つ、容易に切断可能である。また、改質層は、切断予定位置に沿って被加工物の厚さ方向と直交方向に20μm以下の微小幅で形成することが可能であり、被加工物を切断屑として無駄にすることがほとんどない。
本発明の電気光学装置は、上記記載のレーザスクライブ方法によって加工されたことを特徴とする。
この電気光学装置によれば、被加工物がレーザスクライブ方法によって、切断屑のほとんどないように切断され、また、切断のための無駄なスペースもなく効率的に形成されている。電気光学装置としては、液晶表示装置、有機EL(Electro Luminescence)表示装置などが挙げられ、被加工物である基板の上に液晶、有機EL(Electro Luminescence)などの表示部を複数形成しておき、これら表示部を単位として基板をレーザ光によって切断する。レーザ光によれば、表示部間が狭隘であっても基板を確実に切断でき、基板上に表示部を近接させて最大数形成することが可能であり、電気光学装置の効率的な製造が図れる。
以下、本発明を具体化して製造した電気光学装置の一例として液晶表示装置を取り上げ、レーザ加工装置によるレーザスクライブ方法について説明する。最初に、レーザ加工装置および液晶表示装置についてそれぞれ図面を参照して説明する。
(実施形態1)
(実施形態1)
図1は、実施形態1におけるレーザ加工装置の構成を示すブロック図である。レーザ加工装置1は、レーザ光4を被加工物10へ照射する照射機構部2と、照射機構部2を制御するホストコンピュータ3とを備えている。照射機構部2は、レーザ光4を出射するレーザ光源5と、出射されたレーザ光4を反射するダイクロイックミラー6と、ダイクロイックミラー6で反射したレーザ光4を集光する集光レンズ7とを備えている。
また、照射機構部2は、被加工物10を載置する載置台11と、載置台11をレーザ光4の光軸と略直交する平面内でX軸方向へ相対的に移動させるX軸移動部12と、Y軸方向へ相対的に移動させるY軸移動部13とを備えている。さらに、集光レンズ7に対して載置台11を相対的に移動させて、レーザ光4の焦点(集光点)の位置を被加工物10の厚み方向であるZ軸方向へ調整可能なZ軸移動部14と、X軸移動部12、Y軸移動部13およびZ軸移動部14を移動させるための移動機構部15とを備えている。そして、ダイクロイックミラー6を挟んで集光レンズ7に対して反対側に位置する撮像部16を備えている。
次に、このような構成の照射機構部2を制御するホストコンピュータ3について説明する。ホストコンピュータ3の制御部20は、撮像部16が撮像した画像情報を処理する画像処理部21と、レーザ光源5を所定の出力、パルス幅、パルス周期で出射制御をするレーザ制御部22と、移動機構部15を制御する移動制御部23とを有している。また、ホストコンピュータ3は、レーザ光4による加工の際に用いられる各種加工条件のデータなどを入力する入力部28と、レーザ光4による加工状態などの情報を表示する表示部27とを有している。
そして、制御部20は、入力部28から入力されたデータなどを一時的に保存するRAM(Random Access Memory)26と、画像処理部21、レーザ制御部22、移動制御部23の制御用プログラムなどを記憶するROM(Read Only Memory)25と、ROM25に記憶されているプログラムに従って各種の制御を実行するCPU(Central Processing Unit)24とを有している。これら画像処理部21、レーザ制御部22、移動制御部23、CPU24、ROM25およびRAM26は、バス29を介して相互に接続されている。
以上のような構成のレーザ加工装置1において、X軸移動部12と、Y軸移動部13と、Z軸移動部14とは、それぞれ図示していないサーボモータによって駆動される。被加工物10へのレーザ光4の集光点をZ軸方向に移動させるZ軸移動部14には、移動距離を検出可能な位置センサが内蔵されており、移動制御部23は、この位置センサの出力を検出してレーザ光4の集光点のZ軸方向位置を制御可能である。
撮像部16は、可視光を発する光源とCCD(Charge Coupled Device:固体撮像素子)が組み込まれたものである。光源から出射した可視光は、集光レンズ7を透過して焦点を結ぶ。被加工物10のレーザ光4の入射面と入射面の反対側の面とに、それぞれ焦点を合わせるようにZ軸移動部14を移動させて、移動距離を位置センサで検出すれば被加工物10の厚みを計測することが可能である。
また、レーザ加工装置1において、レーザ光源5は、チタンサファイアを固体光源とし、チタンサファイアからのフェムト秒(10-15秒)のパルス幅で出射可能なフェムト秒レーザ光4aと、半導体レーザ励起によるNd:YAGレーザ(以下YAGレーザと呼称する)からナノ秒(10-9秒)のパルス幅で出射が可能なYAGレーザ光4bとを有している。そして、集光レンズ7は、倍率が100倍、開口数(NA:Numerical Aperture)が0.8、WD(Working Distance)が3mmの対物レンズを使用している。
次に、液晶表示装置(電気光学装置)について説明する。図2は、液晶表示装置の構成を示す部分断面を含む平面図であり、図3は、液晶表示装置の構成を示す部分断面を含む側面図である。図3は、図2のP−P’に沿った断面図である。図2および図3において、液晶表示装置30は、TFT基板33と、TFT基板33に形成されている表示パネル(表示部)31とを有し、表示パネル31は、TFT基板33およびTFT基板33と対をなす対向基板34が封止材であるシール材35によって貼り合わされている。シール材35は、両基板面内の領域において閉ざされた枠状に形成されている。
シール材35の形成されている領域の内側には、TFT基板33の表面にモザイク状に配置されている画素電極36および各画素電極36をスイッチング制御するTFT37と、対向基板34のTFT基板33側の面に画素電極36に対向して配置されている平面状の対向電極38と、画素電極36および対向電極38を覆うように形成されている配向膜39と、シール材35および配向膜39によって区画された領域内に封入保持されている液晶40とが配置されている。また、液晶表示装置30は、通常、外部との接続用のフレキシブル配線(FPC、Flexible Printed Circuit board)基板32を有する。
そして、シール材35の形成されている領域の外側および下側には、データ線駆動回路41と、フレキシブル配線基板32と接続するための実装端子42とが、TFT基板33の一辺に沿って形成されている。さらに、この一辺に隣接する二辺に沿って走査線駆動回路43,43がそれぞれ形成され、TFT基板33の残る一辺に、走査線駆動回路43,43の間を接続するための複数のパネル配線44が設けられている。また、対向基板34のコーナー部の少なくとも1箇所においては、TFT基板33と対向基板34との間で電気的導通をとるための基板間導通材45が配設されている。
図2に示すフレキシブル配線基板32は、実装端子42にそれぞれ接続するFPC配線46を内部に有している。FPC配線46と実装端子42とは、異方性導電膜部47によって電気的導電がとられている。異方性導電膜部47は、導電性粒子とバインダとを有する異方性導電膜をFPC配線46と実装端子42との間で熱圧着加工することによって、対応するFPC配線46と実装端子42とをそれぞれ電気的に導通させている。さらに、異方性導電膜部47は、電気的導通を図るだけでなく、実装端子42間の距離より微小な粒子径の導電性粒子をバインダに分散させることにより、隣接する実装端子42間の絶縁性を確保している。
なお、表示パネル31においては、使用する液晶40の種類、すなわち、TN(Twisted Nematic)モード、STN(Super Twisted Nematic)モード等の動作モードや、ノーマリホワイトモードまたはノーマリブラックモードの別に応じて、位相差板、偏光板等が所定の向きに配置されるが、ここでは図示を省略する。また、表示パネル31をカラー表示用として構成する場合には、対向基板34において、TFT基板33の各画素電極36に対向する領域に、赤(R)、緑(G)、青(B)のカラーフィルタをその保護膜とともに形成する。
この液晶表示装置30は、石英基板に複数の表示パネル31が形成された表示基板を、レーザ加工装置1によって表示パネル31の単位でスクライブ(切断)したものである。このような液晶表示装置30を効率的に製造するための表示基板について簡単に説明する。図4(a)は、複数の表示パネルが形成された表示基板を示す平面図である。また、図4(b)は、複数の表示パネルが形成された表示基板の側面を示す断面図である。図4(a)および(b)に示すように、表示基板50は、石英基板(被加工物)51の一方の表面51aに複数の表示パネル31が形成されたものである。それぞれの表示パネル31は、石英基板51がX軸方向切断予定線(切断予定位置)52およびY軸方向切断予定線(切断予定位置)53に沿って、レーザ加工装置1によって切断されると、図2および図3に示す液晶表示装置30として個別に取り出される。図4(a)は、石英基板51に40個の表示パネル31が形成されている表示基板50を示している。
石英基板51は、レーザ加工装置1によって表示基板50から切断された液晶表示装置30において、TFT基板33として機能する。このように、表示基板50を切断して液晶表示装置30を得る方法について、次に、詳細に説明する。図5は、石英基板の切断方法を示すフローチャート図である。
図5に示すように、レーザ加工装置1を用いて表示基板50の石英基板51を切断する方法の工程を列挙すると、まず、集光レンズ7と、載置台11に載置された石英基板51とを相対的に位置決めする石英基板位置決めの工程(S1)と、石英基板51の厚みを測定する石英基板厚み測定の工程(S2)と、により石英基板51をレーザ加工装置1へ正しくセットする。次に、フェムト秒レーザ光の焦点位置調整の工程(S3)において、レーザ光源5をフェムト秒レーザとし、Z軸移動部14によりフェムト秒レーザ光4aの集光点である焦点の位置を、一方の表面(以降入射面と呼称する)51aに対して反対側の反対面51bの近傍へ調整する。そして、X軸移動部12およびY軸移動部13により石英基板51を相対移動させながら、X軸方向切断予定線52およびY軸方向切断予定線53に沿ってフェムト秒レーザ光4aを照射するフェムト秒レーザ走査の工程(S4)を一回実行する。フェムト秒レーザ走査の工程が基礎工程に該当する。
ここで、図6は、フェムト秒レーザによる基礎改質層の形成を示す断面図であり、基礎工程の加工を示している。図6に示すように、フェムト秒レーザ光4aは、石英基板51の反対面51b近傍の集光点54に集光され、フェムト秒レーザ光4aによる多光子吸収によって基礎改質層(基礎改質領域)55が形成される。基礎改質層55は、石英自体に比してレーザ光4を吸収し易い性質を有している。
次に、レーザ光源5をYAGレーザに交換する工程(S5)と、YAGレーザの走査回数を演算する工程(S6)を経て、YAGレーザ光の焦点位置調整の工程(S7)で、Z軸移動部14によってYAGレーザ光焦点の位置をフェムト秒レーザ光4aの焦点位置より入射面51aの側に移動調整する。そして、X軸移動部12およびY軸移動部13により石英基板51を相対移動させながら、X軸方向切断予定線52およびY軸方向切断予定線53に沿ってYAGレーザ光を照射するYAGレーザ走査の工程(S8)を実行する。YAGレーザ走査の工程が改質工程に該当する。YAGレーザ走査の工程は、YAGレーザの走査回数を演算する工程の結果に基づき、所定走査終了を判断する工程(S9)により所定回数に達するまで移動をする。ステップS9が移動工程に該当する。最後に、石英基板の切断の工程(S10)で、石英基板51を切断する。
図7は、基礎改質層に重ねてYAGレーザによる改質層の形成を示す断面図であり、改質工程の加工を示している。基礎改質層55は、YAGレーザ光4bを吸収し易いため、石英に対して多光子吸収が生じ難い強度のYAGレーザ光4bによっても、YAGレーザ光4bの集光点58において、多光子吸収による改質層56の形成が可能である。
ここで、フローチャートの各ステップの詳細な説明の前に、フェムト秒レーザおよびYAGレーザによる多光子吸収について説明する。石英基板51に用いられる石英は、可視領域のレーザ光を吸収せずに透過させるため、通常、この種のレーザ光によって石英基板51を切断加工することは、困難であった。これに対して、パルス幅が小さいパルスレーザ光を石英基板51の集光点に集光させ、且つ、パルスレーザ光の単位面積あたりの強度Pを多光子吸収が生じるべき多光子吸収閾値Pkである1×108(W/cm2)以上に設定すると、短時間にパルスレーザ光のエネルギが石英に集中し、集光されたパルスレーザ光の多数の光子が石英の電子と相互作用して吸収される、いわゆる多光子吸収の現象が生じる。
多光子吸収は、パルスレーザ光のエネルギが熱に変換される前に、短時間の間に行われるため、熱の発生をほとんど伴わず、さらに、パルスレーザ光を集光させた石英基板51の内部にのみ作用させることが可能である。従って、パルス幅が極めて小さいフェムト秒(10-15秒)クラスのフェムト秒レーザ光4aによれば、より超短時間で多光子吸収の現象が生じるため、強度Pを高めても、熱などの影響を与えることなく石英基板51への加工が可能である。図6に示すように、石英基板51の多光子吸収が生じた集光点54の領域が基礎改質層55である。
一方、YAGレーザ光4bのようにパルス幅がフェムト秒より長い例えばナノ秒(10-9秒)クラスのレーザ光4を用いて、YAGレーザ光4bを石英内に集光させ、且つ、レーザ光の強度Pを多光子吸収が生じるべき多光子吸収閾値Pk以上に設定しても、石英内に多光子吸収の現象が生じ改質層56の形成が可能である。しかし、基礎改質層55の無い石英基板51の反対面51bの近傍へ改質層56を直接形成するためには、図12(b)を参照して説明したように、収差により、YAGレーザ光4bの強度Pが多光子吸収閾値Pk以下になり改質層56の形成が困難な場合がある。この場合、反対面51bの近傍へ改質層56を形成可能になるように、収差の影響に抗して強度Pの強いYAGレーザを用いると、改質層56の形成は可能となる。
しかし、強度Pの強いYAGレーザによるYAGレーザ光4bは、収差の影響の少ない部分への加工時には強度Pが強くなり、パルス幅がフェムト秒レーザ光4aより長いことと相まって、パルスの間に照射されたYAGレーザ光4bのエネルギの一部が熱に変換してしまい、石英の溶解飛散、結晶の肥大化などのダメージを石英基板51へ与えてしまうことがある。
フェムト秒レーザによって基礎改質層55を形成しておけば、強度Pの強いYAGレーザを用いる必要がなく、収差のために反対面51bの近傍では多光子吸収閾値Pk以下となるYAGレーザ光4bを用いても、基礎改質層55に重ねて改質層56を形成可能である。この強度PのYAGレーザを用いれば、収差の影響の少ない入射面51aの近傍においても、石英基板51に熱影響を与えることなく改質層加工が可能である。
以上の説明を踏まえて、図5に示すフローチャートの各ステップについて、順に、詳細に説明する。最初に、ステップS1において、図4に示した表示基板50の石英基板51を、表示パネル31が形成されている入射面51aに対する反対面51bが載置台11に接するように載置する。そして、X軸方向切断予定線52がX軸に平行となるように石英基板51を位置決めする。また、移動制御部23は、レーザ光4の光軸が石英基板51のX軸方向切断予定線52またはY軸方向切断予定線53の線上に位置するように、サーボモータを駆動しX軸移動部12およびY軸移動部13を移動させる。この場合、石英基板51には、位置決め用のアライメントマークが形成されており、撮像部16によってこのアライメントマークを認識し、画像処理部21に取り込んだ画像データに基づいて座標を演算して、石英基板51を位置決めする。位置決め後、ステップS2へ進む。
ステップS2において、石英基板51の厚みを測定するために、石英基板51のレーザ光4の入射面51aと反対面51bとのそれぞれに、撮像部16から出射される可視光の焦点を合わせ、撮像部16が捉えた映像を表示部27に表示させる。可視光の焦点合わせは、Z軸移動部14を移動させて行う。これら一連の操作は、作業者がホストコンピュータ3を操作して行う。ホストコンピュータ3は、Z軸移動部14の位置センサの出力から石英基板51の厚みを演算し、演算結果は、ホストコンピュータ3のRAM26にZ軸方向の座標として記憶される。この表示基板50の場合、石英基板51の厚みは、1000μmである。厚み測定後、ステップS3に進む。
ステップS3において、フェムト秒レーザによる基礎改質層55の形成データとして、撮像部16が捉えた可視光の焦点の位置とフェムト秒レーザ光4aの集光点54とのZ軸方向の位置関係、および、フェムト秒レーザ光4aによる基礎改質層55の長さ△L3を、予めフェムト秒レーザ光4aの照射予備試験の結果から求めてある。これらデータは、ホストコンピュータ3へ入力されている。これらのデータと、ステップS2で求められた石英基板51の厚みデータ(Z軸方向の座標)とに基づいて、図6に示すように、移動制御部23は、Z軸移動部14を駆動して、基礎改質層55の端部が反対面51bに掛かるように、集光点54をZ軸方向に移動させる。フェムト秒レーザ光4aの集光点54の調整後、ステップS4へ進む。
ステップS4において、図6に示すように、集光レンズ7に対して石英基板51を相対移動させる。図6は、X軸方向切断予定線52に沿ってフェムト秒レーザ光4aを照射して基礎改質層55を形成している場合を示している。石英基板51には、図4(a)に示すように、複数(40個)の表示パネル31が形成されており、X軸方向の9本のX軸方向切断予定線52と、Y軸方向の8本のY軸方向切断予定線53とにより区画されている。つまり、X軸方向に所定のピッチでずらしながらレーザ操作を9回行い、続いてY軸方向に所定のピッチでずらしながらレーザ操作を8回行って、各表示パネル31を基礎改質層55で仕切る。X軸方向切断予定線52およびY軸方向切断予定線53は、あらかじめデータとして入力されているので、ホストコンピュータ3は、このデータに基づいた制御信号を移動制御部23へ送り、移動制御部23は、制御信号に基づいてX軸移動部12とY軸移動部13を移動させることにより、石英基板51を集光レンズ7に対して相対移動させることが可能である。
ここで、フェムト秒レーザによる基礎改質層55の形成について説明する。集光レンズ7で集光されて石英基板51へ出射されたフェムト秒レーザ光4aは、石英基板51の入射面51aで屈折して石英基板51へ入射し、石英基板51の内部の集光点54に集光する。集光点54では、多光子吸収によって基礎改質層55が形成される。フェムト秒レーザ光4aは、本来、集光点54に集光されるのが理想的であるが、図12(b)を参照して説明したように、収差の影響があるため、フェムト秒レーザ光4aの集光点54は、△L3の範囲に拡大している。即ち、基礎改質層55は、石英基板51の厚み方向に長さ△L3で形成される。
フェムト秒レーザ光4aを出射するレーザ光源5は、出力が700mWであり、パルス幅を300フェムト秒、波長を800nm、繰り返し周波数を1KHzに設定した。そして、集光点54における強度Pは、1×108(W/cm2)以上となるようにフェムト秒レーザ光4aを集光させる。以上のような条件下において、載置台11を20mm/秒の速度で移動させると、形成される基礎改質層55は、ピッチSが20μm、△L3が300μmであった。フェムト秒レーザ光4aによる基礎改質層55の形成後、ステップS5へ進む。
ステップS5において、図7に示すようにレーザ光源5をNd:YAGレーザに交換する。フェムト秒レーザによる基礎改質層55の形成データと同様に、YAGレーザにおいて、撮像部16が捉えた可視光の焦点の位置とYAGレーザ光4bの集光点58とのZ軸方向の位置関係、および、YAGレーザ光4bによる改質層56の長さ△L4を、予めYAGレーザ光4bの照射予備試験の結果から求めてある。YAGレーザは、フェムト秒レーザに比べて繰り返し周波数が高く10KHzに設定可能であり、ピッチSをフェムト秒レーザの場合と同様に20μmとすると、載置台11の移動は、200mmの高速に設定可能であった。また、改質層56の石英基板51の厚み方向における長さ△L4は、200μmであった。これらデータは、ホストコンピュータ3へ入力されている。レーザ光源5の交換後、ステップS6へ進む。
ステップS6において、YAGレーザの走査回数等を演算する。ここでは、基礎改質層55に重ねて形成する改質層56の形成位置の設定をはじめとして、図8の改質層に順に重ねてYAGレーザによる改質層の形成を示す断面図のように、入射面51aの方向へ長さ△L5の改質層57を順に形成するための演算等を行う。具体的には、改質層56を形成するための図7に示す集光点58の位置、改質層57を形成するための集光点59の位置を順に設定する。最終的には、図9(a)のX軸方向に形成された改質層を示す断面図、および図9(b)のY軸方向に形成された改質層を示す断面図のように、石英基板51の厚み方向のほぼ断面全域に改質層56,57,・・,60を形成するように、載置台11を移動させる走査回数等を演算をする。演算後、ステップS7へ進む。
ステップS7において、YAGレーザ光4bの焦点位置を調整する。図7に示すように、移動制御部23は、Z軸移動部14を駆動してYAGレーザ光4bの焦点位置である集光点58の位置を基礎改質層55内に設定する。このとき、△L3が300μmで既に形成されている基礎改質層55に対し、△L4が200μmの改質層56をそれぞれの入射面51a側の端部が重なるように設定した。こうすれば、収差により強度Pの弱いYAGレーザ光4bによってでも確実に改質層56が形成可能である。これは必須ではなく、改質層56が基礎改質層55に重なっていれば、改質層56を基礎改質層55に対して入射面51aの側寄りに形成するように集光点58を調整しても良い。焦点位置の調整後、ステップS8へ進む。
ステップS8において、ステップS4と同様に載置台11を移動させる走査を行い、YAGレーザ光4bによって改質層56を形成する。形成後、ステップS9へ進む。
ステップS9において、ステップS6で演算した所定の走査が終了したか否かを制御部20が判断する。終了していれば、ステップS10へ進み、一方、終了していなければ、ステップS7へ戻る。
ステップS7へ戻ると、図8に示すように、改質層56に重ねて改質層57を形成する。この場合、焦点位置は、改質層57を改質層56より入射面51a方向へ、90μmの長さRだけずらして重なるように調整する。そして、ステップS8において、載置台11を移動させて改質層57を形成する。ステップS7およびステップS8の同様の操作を繰り返し行い、順に、図9(a)に示すように、改質層60までを形成する。改質層60が形成されれば、ステップS10へ進む。
ステップS10において、石英基板51をX軸方向切断予定線52およびY軸方向切断予定線53に沿って切断する。図9に示すように、石英基板51の厚み方向に連続して形成された基礎改質層55、改質層56,57,60に対して、曲げ応力または引っ張り応力のような外部応力を加える。外部応力を加えることにより、石英基板51は、X軸方向切断予定線52およびY軸方向切断予定線53に沿って容易に切断可能である。
これら改質層56,57,60は、石英基板51の厚み方向断面の全面に連続して形成されているため、改質層56,57,60以外が切断されて、いわゆるチッピングなどによる液晶表示装置30の外形不良が発生することをほぼ防止可能である。また、石英基板51の厚さ方向に対し直交方向の改質層56,57,60の幅は、約20μm程度の微小幅であり、この微小幅に沿って石英基板51を切断可能であるため、高い外形寸法精度の液晶表示装置30が入手可能である。なお、フェムト秒レーザによる基礎改質層55とYAGレーザによる改質層56,57,60との切断面は、基礎改質層55が改質された屈折率変化領域であり、改質層56,57,60が極微小クラック領域であり、それぞれ異なった断面を有している。
以下、実施形態1の効果をまとめて記載する。
(1)フェムト秒レーザ光4aを用いて石英基板51の入射面51aに対する反対面51bの近傍に基礎改質層55を形成しておくことにより、YAGレーザ光4bの強度Pが収差のため反対面51b近傍において、改質層56を形成可能な強度Pk以下であっても、基礎改質層55に重ねて改質層を形成可能である。これにより、収差による強度低下を補うために、より強い出力のYAGレーザを用いることなく、順に改質層56,57,60の形成が可能である。
(2)基礎改質層55以外の加工には、繰り返し周波数の高いYAGレーザを用いることができ、基礎改質層55と同じピッチSで改質層56,57,60を形成する場合、フェムト秒レーザを用いた時と比べて、例えば10倍の速度で載置台11を移動させて処理速度の向上が図れる。従って、短時間に、効率良く改質層56,57,60を形成することが可能である。
(3)液晶表示装置30は、基礎改質層55および改質層56,57,60が形成されたX軸方向切断予定線52およびY軸方向切断予定線53に沿って、表示基板50から切断されるため、チッピングなどの外形不良が発生することをほぼ防止した高い外形寸法精度を有する。
(実施形態2)
(実施形態2)
次に、本発明を他の方法で具体化した実施形態2について説明する。図10(a)は、実施形態2におけるレーザ加工装置の構成を示すブロック図、図10(b)は、基礎改質層の形成を示す断面図である。実施形態1との相違点は、フェムト秒レーザを用いずにYAGレーザによって、基礎改質層78を被加工物10である石英基板51の反対面51b近傍に形成していることである。そのため、レーザ加工装置70の構成が実施形態1のレーザ加工装置1とは、異なっている。
図10(a)に示すように、レーザ加工装置70は、実施形態1のレーザ加工装置1の有するダイクロイックミラー6、集光レンズ7、載置台11、撮像部16等の構成に加え、レーザ光源5に替えてYAGレーザ光源71と、基礎改質層78を形成する場合にYAGレーザ光72の進路を変えて反対面51bへ導く3枚のダイクロイックミラー73と、載置台11に対して集光レンズ7と反対側に位置する集光レンズ75とを有している。また、載置台11を移動させる載置台移動部76は、YAGレーザ光72が反対面51bへ入射するのを妨げないように配置され、X軸移動部12、Y軸移動部13、Z軸移動部14の機能を有している。載置台移動部76は、移動機構部15により制御される。
なお、YAGレーザ光源71とダイクロイックミラー6の間に設けられたダイクロイックミラー73は、基礎改質層78を形成する場合にのみ、YAGレーザ光72の進路をかえるために挿入される構成である。そして、YAGレーザ光源71から出射されるYAGレーザ光72は、レーザ光源5から出射されるYAGレーザ光4bであっても良い。
以上のような構成のレーザ加工装置70を用いて基礎改質層78を形成する方法について、図5に示すフローチャート図に基づき、実施形態1と異なるステップを中心に説明する。ステップS1およびS2においては、YAGレーザ光72を集光レンズ7または集光レンズ75のいずれかから石英基板51へ照射して、石英基板51の位置決めおよび厚み測定をする。
続いて、ステップS3において、フェムト秒レーザ光4aではなくYAGレーザ光72を用い、ダイクロイックミラー73を経由して、集光レンズ75からYAGレーザ光72を石英基板51へ照射する。YAGレーザ光72による基礎改質層78の形成データとして、撮像部16が捉えた可視光の焦点の位置とYAGレーザ光72の集光点77とのZ軸方向の位置関係、および、YAGレーザ光72による基礎改質層78の長さ△L6を、予めYAGレーザ光72の照射予備試験の結果から求めてある。これらデータは、ホストコンピュータ3へ入力されている。これらのデータとステップS2で求められた石英基板51の厚みデータ(Z軸方向の座標)とに基づいて、図10(a)および(b)に示すように、載置台移動部76は、載置台11を移動させて、基礎改質層78の端部が反対面51bに掛かるように、集光点77をZ軸方向に移動させる。
集光点77の調整後、ステップS4へ進み、ステップS4において、図10(b)に示すように、YAGレーザ光72を照射して基礎改質層78を形成する。この場合、基礎改質層78は、YAGレーザ光72が石英基板51へ入射した面である反対面51bの近傍に位置するため、基礎改質層78の加工時は、YAGレーザ光72の屈折による収差の影響が少なく、収差による強度Pの低下がほとんど無い状態である。
基礎改質層78の形成後、レーザ光をYAGレーザに交換する工程であるステップS5は、YAGレーザ光72の照射方向を集光レンズ75の方向から集光レンズ7の方向へ変更する工程となる。つまり、YAGレーザ光源71とダイクロイックミラー6の間に挿入されているダイクロイックミラー73を移動させ、YAGレーザ光72がダイクロイックミラー6で反射して集光レンズ7へ導かれるようにする。
以降、ステップS6からステップS9までは、実施形態1と同様に、基礎改質層78に重ねて、石英基板51の入射面側からYAGレーザ光72を照射して、改質層79を形成する。この場合、改質層79は、図7に示す実施形態1の改質層56に相当する。そして、最終的には、改質層79に重ねて図示していない改質層を、図9(a)および(b)に示す状態のように、石英基板51の厚み方向断面のほぼ全面へ、順に形成する。従って、ステップS10で表示基板50から切断された液晶表示装置30は、チッピングなどによる外形不良が発生することをほぼ防止した高い外形寸法精度のものである。
以下、実施形態2の効果を記載する。
(1)石英基板51の入射面51aからYAGレーザ光72を照射した場合に、強度Pが収差の影響で最も弱くなり基礎改質層78を形成しにくい反対面51bの近傍へ、YAGレーザ光72を反対面51bから照射することにより、収差の影響を排除でき、且つ、出力の強いYAGレーザ光源71を用いることなく、基礎改質層78を形成可能である。
(2)ダイクロイックミラー6またはダイクロイックミラー73によりYAGレーザ光72の進路を変えることにより、同じYAGレーザ光源71を用いて、それぞれ異なる方向から基礎改質層78および改質層79を形成可能である。
(実施形態3)
(実施形態3)
次に、本発明をさらに他の方法で具体化した実施形態3について説明する。図11(a)は、実施形態3における基礎改質層の形成を示す断面図、図11(b)は、基礎改質層に重ねてYAGレーザによる改質層の形成を示す断面図である。実施形態1および実施形態2との相違点は、フェムト秒レーザやYAGレーザを用いずに、基礎改質層80を石英基板51の反対面51bに形成していることである。
図11(a)に示すように、基礎改質層80は、反対面51bを非鏡面にして、光が吸収されやすいように加工したものである。反対面51bを非鏡面にする方法としては、セラミックなどの微粒子を空気圧などによって反対面51bへ吹き付けるブラスト法や、薬品によって反対面51bを腐食させて非鏡面にする化学処理法などがある。ここでは、ハードビッカース硬度700、粒径0.2mmのジルコニア粉を空気圧5Kg/cm2で吹き付け加工した。これにより、石英基板51の反対面51bは、非鏡面の微細な凹凸面の基礎改質層80となり、光を吸収し易くなる。基礎改質層80の厚みは、10μm程度である。このブラスト法による加工は、図5に示すフローチャート図のステップS4の工程に該当する。
基礎改質層80の形成後、実施形態1と同様にステップS1、ステップS2を経て、次に、ステップS6からステップS10の工程を実行する。この場合、図11(b)に示すように、図11(a)の基礎改質層80に重なるようにYAGレーザ光4bの集光点81を設定し、改質層82を形成する。続いて、改質層81に重ねて改質層83を形成する。この場合、基礎改質層80の厚みが薄いため、改質層82の長さは、80μm程度となり、以降の加工による改質層83は、200μmの長さである。改質層82は、図8に示す実施形態1の改質層56に相当し、改質層83は、実施形態1の改質層57に相当する。
そして、最終的には、改質層83に重ねて図示していない改質層を、図9(a)および(b)に示す状態のように、石英基板51の厚み方向断面のほぼ全面へ、順に形成する。これにより、実施形態1および2と同様な高い外形寸法精度の液晶表示装置30が得られる。
以下に実施形態3の効果を記載する。
(1)基礎改質層80の形成をブラスト法により行うため、レーザ加工装置1,70を用いる場合に比べて、多数の石英基板51に対して迅速に加工可能である。
また、本発明は上記の各実施形態に限定されるものではなく、次に挙げる変形例のような形態であっても、それぞれ各実施形態と同様な効果が得られる。
(変形例1)液晶表示装置30の石英基板51の厚みは、1000μmに限定されず、さらに厚板の石英基板51に対しても加工可能である。その際、石英基板51が厚く、実施形態1および2の基礎改質層55,78に重ねてYAGレーザ光4b,72による改質層56,79の形成が、収差のため困難な場合、基礎改質層55,78を入射面51aの方向へ複数列形成しても良い。こうすれば、YAGレーザ光4b,72の収差の影響を低減でき、改質層56,79の形成が容易に可能である。
(変形例2)または、基礎改質層55,78を石英基板51の反対面51b近傍ではなく、入射面51aに近い側に一列形成しても良い。基礎改質層55,78は、改質層56,79を重ねて形成するための一列あれば形成可能である。ただし、反対面51b近傍に基礎改質層55,78が形成されている方が、石英基板51の切断には、より好ましい。
(変形例3)レーザスクライブ方法により切断する基板材は、石英に限らず、水晶、ガラスなどの光透過材であっても良い。種々の基板材が適用でき、レーザスクライブ方法の応用範囲の拡大が図れる。
(変形例4)ステップS5において、石英基板51を載置したレーザ加工装置1のレーザ光源5をフェムト秒レーザからYAGレーザに交換したが、石英基板51をフェムト秒レーザ装置からYAGレーザ装置へ移動させても良い。基礎改質層と改質層の形成工程別に順送りの加工ができ、多数の石英基板51の切断が効率的に行える。
(変形例5)レーザ加工装置1,70の照射機構部2における、レーザ光4,72の焦点位置の調整は、集光レンズ7,75側を固定し、石英基板51側をX,Y,Z軸方向に移動させて行う構成であるが、石英基板51側を固定し、レーザ光源5,71、ダイクロイックミラー6,73、集光レンズ7,75の側をX,Y,Z軸方向に移動させて行う構成としても良い。これにより、レーザ加工装置1,70の設計の自由度が広げられる。
本発明のレーザスクライブ方法を用いれば、表示基板50から液晶表示装置30を無駄なく効率的に多数個切り出せる。表示基板50に形成される表示パネル31は、液晶に限らず有機ELなどの形成も可能であり、液晶表示装置30以外の電気光学装置である有機EL表示装置なども効率的に切断して得ることが可能である。また、石英基板51に限らず、水晶、ガラスなどの光透過性の材料に対しても有効な切断方法であり、水晶基板やガラス基板に形成されたSAW(Surface Acoustic Wave、弾性表面波)デバイス、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)デバイス、各種半導体デバイスなどの切断への利用が可能で、応用範囲の広いものである。これら電気光学装置は、携帯電話、電子辞書、デジタルカメラ、ビューファインダ、電子時計などの電子機器の表示部に最適である。
1…レーザ加工装置、2…照射機構部、3…ホストコンピュータ、4…レーザ光、5…レーザ光源、6…ダイクロイックミラー、7…集光レンズ、10…被加工物、11…載置台、15…移動機構部、20…制御部、30…電気光学装置としての液晶表示装置、31…表示部としての表示パネル、33…TFT基板、50…表示基板、51…石英基板、51a…入射面、51b…反対面、52…切断予定位置としてのX軸方向切断予定線、53…切断予定位置としてのY軸方向切断予定線、54…集光点、55…基礎改質領域としての基礎改質層、56,57,60…改質層、58,59…集光点、70…レーザ加工装置、72…YAGレーザ光、73…ダイクロイックミラー、77…集光点、78…基礎改質層、79…改質層、80…非鏡面としての基礎改質層、82,83…改質層、P…レーザ強度、Pk…多光子吸収閾値、P1…レーザ光入射面でのレーザ強度、P2…レーザ光出射面でのレーザ強度、L…レーザ光入射面からの距離。
Claims (7)
- レーザ光を被加工物の内部へ照射し、前記レーザ光の集光点において前記被加工物の切断予定位置に多光子吸収による改質層を形成するレーザスクライブ方法であって、
前記被加工物に多光子吸収が生じ易い基礎改質領域を形成する基礎工程と、
前記レーザ光を前記基礎改質領域へ集光させ、前記基礎改質領域に重ねて前記多光子吸収による前記改質層を形成する改質工程と、を有することを特徴とするレーザスクライブ方法。 - 請求項1に記載のレーザスクライブ方法において、
前記レーザ光は、ナノ秒レーザによるパルス幅がマイクロ秒からピコ秒の範囲のパルスレーザ光であることを特徴とするレーザスクライブ方法。 - 請求項1または2に記載のレーザスクライブ方法において、
前記基礎改質領域は、前記被加工物の前記レーザ光の入射面に対する反対面の近傍に形成され、
前記基礎工程では、フェムト秒レーザによるパルス幅がピコ秒からフェムト秒の範囲のパルスレーザ光を前記入射面の方向から前記被加工物へ照射して前記基礎改質領域を形成することを特徴とするレーザスクライブ方法。 - 請求項1または2に記載のレーザスクライブ方法において、
前記基礎改質領域は、前記被加工物の前記レーザ光の入射面に対する反対面の近傍に形成され、
前記基礎工程では、前記レーザ光を前記反対面の方向から前記被加工物へ照射して前記基礎改質領域を形成することを特徴とするレーザスクライブ方法。 - 請求項1または2に記載のレーザスクライブ方法において、
前記基礎工程では、前記被加工物の前記レーザ光の入射面に対する反対面を非鏡面に加工した前記基礎改質領域を形成することを特徴とするレーザスクライブ方法。 - 請求項1から5のいずれか一項に記載のレーザスクライブ方法において、
前記被加工物と前記レーザ光とを前記切断予定位置に沿って複数回相対移動させ前記入射面および前記反対面の間に前記改質層を形成するための移動工程をさらに有していることを特徴とするレーザスクライブ方法。 - 請求項1から6のいずれか一項に記載のレーザスクライブ方法によって加工されたことを特徴とする電気光学装置。
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