JP2007277405A - 高熱伝導性樹脂コンパウンド・高熱伝導性樹脂成形体・放熱シート用配合粒子、高熱伝導性樹脂コンパウンド・高熱伝導性樹脂成形体・放熱シート、および、その製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】平均粒径80超〜100μmの球状アルミナ粒子が60〜80vol%、平均粒径0.5〜7μmのアルミナ粒子が20〜40vol%の配合で含まれることを特徴とする、高熱伝導性樹脂コンパウンド・高熱伝導性樹脂成形体・放熱シート用配合粒子、高熱伝導性樹脂コンパウンド・高熱伝導性樹脂成形体・放熱シート、および、その製造方法。
【選択図】 図2
Description
樹脂に加えるアルミナの充填率を上げることで高熱伝導率化を目指すという方法が多く研究されており、フィラーの充填・分散を容易にするものとして、下記の特許文献1に記載されているように角を落とした丸味状アルミナを用いるものや、下記の特許文献2に記載されているように球状アルミナを用いる等のアルミナ形状を変えるという研究が行なわれた。
そこで本発明は、80μmを超える大きな粒子を用いても表面が粗くなるのを抑制でき、さらに切断面からの粒子の脱落が起こり難い放熱シートであって、熱伝導率をさらに向上させた放熱シートを製造することができる高熱伝導性樹脂コンパウンド・高熱伝導性樹脂成形体・放熱シート用配合粒子、高熱伝導性樹脂コンパウンド・高熱伝導性樹脂成形体・放熱シート、および、その製造方法を提供することを課題とする。
(1)平均粒径80超〜100μmの球状アルミナ粒子が60〜80vol%、平均粒径0.5〜7μmのアルミナ粒子が20〜40vol%の配合で含まれることを特徴とする、高熱伝導性樹脂コンパウンド用配合粒子。
(2)(1)に記載の高熱伝導性樹脂コンパウンド用配合粒子を樹脂成形体に用いることを特徴とする高熱伝導性樹脂成形体用配合粒子。
(3)(2)に記載の高熱伝導性樹脂成形体用配合粒子を放熱シートに用いることを特徴とする放熱シート用配合粒子。
(4)前記平均粒径0.5〜7μmのアルミナ粒子が非球状であることを特徴とする、(3)に記載の放熱シート用配合粒子。
(5)平均粒径80超〜100μmの球状アルミナ粒子が60〜80vol%、平均粒径0.5〜7μmのアルミナ粒子が20〜40vol%の配合で含まれる配合粒子を、体積比で60〜85vol%含むことを特徴とする、高熱伝導性樹脂コンパウンド。
(6)(5)に記載の高熱伝導性樹脂コンパウンドを用いて成形したことを特徴とする高熱伝導性樹脂成形体。
(8)前記放熱シートの熱伝導率が5.6W/mK以上であることを特徴とする、(7)に記載の放熱シート。
(9)平均粒径0.5〜7μmのアルミナ粒子と樹脂との混合物からなるマトリックスに、平均粒径80超〜100μmの球状アルミナ粒子が均一に分散していることを特徴とする、請求項(7)または(8)に記載の放熱シート。
(10)前記マトリックスのうち樹脂の占める体積が30〜65vol%であることを特徴とする、(9)に記載の放熱シート。
(11)小径の無機質粒子と樹脂とを予め混合してマトリックスを形成した後、該マトリックスに大径の無機質粒子を混合して成形することを特徴とする高熱伝導性樹脂コンパウンドの製造方法。
(12)(11)に記載の高熱伝導性樹脂コンパウンドを用いて成形することを特徴とする高熱伝導性樹脂成形体の製造方法。
(13)(12)に記載の高熱伝導性樹脂成形体を用いて作製することを特徴とする放熱シートの製造方法。
(14)前記小径の無機質粒子を平均粒径0.5〜7μmのアルミナ粒子とし、前記大径の無機質粒子を平均粒径80超〜100μmの球状アルミナ粒子とすることを特徴とする、(13)に記載の放熱シートの製造方法。
ここに、球状粒子とは、粒子の円形度(相当円の周囲長/粒子投影像の周囲長)の平均値が0.8以上の粒子をいう。
また、非球状粒子とは、粒子の円形度(相当円の周囲長/粒子投影像の周囲長)の平均値が0.8未満の粒子をいう。
その結果、前記特許文献3や4のように樹脂をマトリックスとした場合には、プレス等でシートの面出しをする際には面が荒れ、切断する場合には大径アルミナ球状粒子の脱落が多く見られたが、これは樹脂の部分とアルミナの部分との硬度が大きく異なることに起因することが分かった。即ち、面出しの際には樹脂部が低くなりアルミナ部が残るように段差が付き面が荒れていたものであり、切断時にはアルミナ球状粒子の周りの樹脂部に沿って亀裂が入り易く、結果として大径アルミナ球状粒子の部分が剥がれる脱落が見られた。
そこで、マトリックスとなる部分の硬度を大径粒子の硬度とほぼ同じレベルにするために、小径の無機質粒子と樹脂とを予め混合してマトリックスを形成した後、該マトリックスに大径の無機質粒子を混合して成形することを検討した。本発明においては、無機質粒子の種類は問わないが、熱伝導性を確保するためアルミナ、窒化アルミ、窒化ホウ素などが好ましい。
例えば無機質粒子としてアルミナ粒子を用い、予め樹脂と小径アルミナ非球状粒子とを混合してマトリックスを形成する工程と、その後に大径アルミナ球状粒子を混合する工程と、シート成形する工程を具備することで、図1のSEM像に示すような構造となり、図2に示すような樹脂と小径アルミナ非球状粒子をマトリックスとして、大径アルミナ球状粒子が分散しているという構造を作ることができた。
ここに、球状粒子とは、粒子の円形度(相当円の周囲長/粒子投影像の周囲長)の平均値が0.8以上の粒子をいう。
また、非球状粒子とは、粒子の円形度(相当円の周囲長/粒子投影像の周囲長)の平均値が0.8未満の粒子をいう。
粒子の円形度は、電子顕微鏡と画像解析装置を用い、例えば、シスメックス社製FPIAを用いて測定することができる。
円形度の測定は、粒子個数100個以上をカウントし、その平均値をその粉末の円形度とする。
本発明による前述の構造は熱伝導率にとっても好適である。80超〜100μmといった大径アルミナ球状粒子を用いた好適な配合では、従来の樹脂マトリックスの場合には5.0〜5.5W/mKの高熱伝導率の値は出るもののシートの面荒れや粒子の脱落等の問題があったが、本発明によるマトリックスを用いることによって、シートの面荒れや切断時の粒子の脱落の問題が解決する上、アルミナを無機フィラーとした放熱シートにおいてはかなり高い5.6W/mK以上の熱伝導率値を有する高熱伝導性樹脂成形体を得ることができた。
本発明の樹脂コンパウンドは、成形体 として用いる場合には、放熱シートやプリント配線板に用いられる一方、非成形体としては、放熱グリースや接着剤などに用いられる。
以下の説明は、樹脂コンパウンドを成形体の放熱シートとして用いる場合の実施形態を示す。
小径アルミナ非球状粒子の粒径を小さくすると、マトリックスとなる樹脂と小径アルミナ非球状粒子の混合物の粘性が低くなり、大径アルミナ球状粒子の隙間に廻り込みやすくなり、粒子の脱落防止や面荒れ抑制に効果を示すのに加え、熱伝導率の向上にも寄与する。平均粒径が7μm超のアルミナ非球状粒子を用いると、マトリックスとなる混合物の粘度が高くなり、大径アルミナ球状粒子の隙間に入り込めなくなる場合も生じるため、空隙が形成されやすくなる。その結果熱伝導率は著しく低下してしまう。平均粒径が0.5μm未満の場合には、マトリックスとなる混合物の粘性はかなり低くなり脱落防止や面荒れ抑制には効果が大きくなるが、マトリックス自体の熱伝導パスとして多数の小径アルミナ粒子が必要となり、熱伝導バリアが増えるために、熱伝導率が低下してしまう。高熱伝導率の放熱シートを目標とする本発明の場合には、小径アルミナ非球状粒子の平均粒径は0.5〜7μmが好適である。
大径アルミナ球状粒子と小径アルミナ非球状粒子の配合比率の限定理由を述べる。大径アルミナ球状粒子と小径アルミナ非球状粒子との合計体積を100vol%とした場合、大径球状粒子の配合比率が80vol%を超えると熱伝導率は5.6W/mkを下回った。これは、大径アルミナ球状粒子の配合比率が80vol%超になると、マトリックスとなる混合物内の小径アルミナ非球状粒子が相対的に減ることからマトリックスの熱伝導率が低下し、放熱シート全体としての熱伝導率が低下するためである。また、大径アルミナ球状粒子の配合比率が60vol%より小さくなると熱伝導率はやはり5.6W/mKを下回った。これは、大径アルミナ球状粒子の配合比率が60vol%未満になると、大径アルミナ球状粒子が相対的に減るために、大径粒子間の熱伝導のバリアの数が増え熱伝導率が低下するからである。従って、大径アルミナ球状粒子と小径アルミナ非球状粒子の比率は、これらの和を100vol%とした際に大径アルミナ球状粒子の比率が60〜80vol%であると熱伝導率が5.6W/mK以上と好適な値を示す。
以上のように、大径アルミナ球状粒子の平均粒径が80超〜100μmであり、小径アルミナ非球状粒子の平均粒径が0.5〜7μmであり、両者の和を100vol%とした場合に大径アルミナ球状粒子が60〜80vol%、小径アルミナ非球状粒子が20〜40vol%であると、シートの面荒れ抑制や切断時の粒子の脱落がなく、熱伝導率も5.6W/mKを超え好ましい。
本発明の放熱シートでは、前記した大径アルミナ球状粒子と小径アルミナ非球状粒子から構成されるアルミナ配合粒子とシート全体に含まれる樹脂の合計体積を100vol%とした場合、アルミナ配合粒子の配合比率が60〜85vol%(これをシート体積比という)であることが望ましい。シート体積比が60vol%未満の場合には、樹脂が多くなり熱伝導に寄与するアルミナ配合粒子が減るため、熱伝導率が低下する。また、シート体積比が85vol%超では、本発明のマトリックス中の樹脂が少なくなるため、マトリックスが大径アルミナ球状粒子の隙間にうまく廻り込めない場合が生じ易くなり、熱伝導率が低下する。シート体積比が60〜85vol%の場合に、6.0W/mK以上の高熱伝導となり、より好適となる。
大径アルミナ球状粒子の隙間へのマトリックスの廻り込みやすさを、マトリックスを形成する樹脂と小径アルミナ非球状粒子の比率で評価できることが分かった。樹脂と小径アルミナ非球状粒子の体積の合計を100vol%とした場合、樹脂の比率が30vol%未満であると、樹脂と小径アルミナ非球状粒子の混合物の粘度が高くなりすぎ、大径アルミナ球状粒子の隙間に回りこんで入ることが困難となり、シートに空隙を生じ、熱伝導率が低くなる。樹脂が65vol%を超えると、マトリックスの混合物自体の熱伝導率が下がり、大径アルミナ球状粒子間を結ぶ熱伝導パスの熱伝導率が小さくなることから全体の熱伝導率も低下してしまう。樹脂と小径アルミナ非球状粒子の体積合計100vol%とした場合に樹脂が30〜65vol%の比率であると熱伝導率が高くなり好適である。
以下、実施例にて詳細に説明する。
樹脂CY52-276(実際には、CY52-276A液とCY52-276B液を等量)と小径アルミナ非球状粒子を表1および表2に示す体積量となるように秤量し、ハイブリッドミキサーにて混合した。得られた混合物に、大径アルミナ球状粒子を表に示す量を加え、ハイブリッドミキサーで発熱が起こらない時間条件にて混合した。
得られた放熱シートから50mmφ×2.5mmtの試料を切り抜き、熱流計法による熱伝導率測定を行なった。
試料No.1〜3は、小径アルミナ非球状粒子の粒径と樹脂とのアルミナ配合比を一定として、大径アルミナ球状粒子の粒径を変化させた例である。大径アルミナ球状粒子の径が70μmの場合5.4W/mkと低く、80μm超100μm以下の範囲において5.6W/mK以上の熱伝導率が得られる。
試料No.4〜8は、大径アルミナ球状粒子の粒径と樹脂とのアルミナ配合比を一定として、小径アルミナ非球状粒子の粒径を変化させた例である。小径アルミナ非球状粒子の粒径が0.5〜7μmの場合5.6W/mKを超え好適な範囲となるのが分かる。本発明の範囲外となる8μm、0.8μmの場合、両者とも5.4W/mKと低い熱伝導率にとどまっている。
試料No.14〜18は、大径アルミナ球状粒子の粒径と小径アルミナ非球状粒子の粒径と両者の粒子の比率を一定として、樹脂の量を変えてアルミナ粒子と樹脂との比率を変化させた例である。アルミナ粒子の樹脂との比率が60vol%未満や85vol%超であると、熱伝導率は5.8や5.7W/mKの値を示すが、この比率が60〜85vol%の範囲内であると、熱伝導率が6.0W/mKを超えてさらに好適な範囲となる。
試料No.14〜17,19は、大径アルミナ球状粒子の粒径と小径アルミナ非球状粒子の粒径と両者の粒子の比率を一定として、マトリックスとなる樹脂と小径アルミナ非球状粒子との比率を変化させた例である。樹脂と小径アルミナ非球状粒子の合計体積を100とした場合、樹脂が30vol%未満や65vol%超となる場合に熱伝導率は5.7や5.9W/mKの値を示すが、樹脂が30〜65vol%であると熱伝導率が6.0W/mKを超えてさらに好適な範囲となる。
以上の実施例はすべて前述のように、予め樹脂と小径アルミナ非球状粒子を混合する工程と、得られた混合物に大径アルミナ球状粒子を混合する工程と、混合後の樹脂混合物を成形してシート化する工程により行ったものである。
比較例として、熱伝導率8.0W/mKと好適なシートが得られた試料No.14の配合にて、樹脂と大径アルミナ球状粒子と小径アルミナ非球状粒子を同時に混合し、混合後の樹脂混合物を成形してシート化する工程を用い、アルミナ粒子の混合のタイミング以外の条件はすべて同一として放熱シートを作製した。得られたシートの特性は、熱伝導率が4.8W/mKと低く、また、プレス面の平坦度も悪かった。熱伝導測定用のサンプルを切り出す際に切断面から大径アルミナ球状粒子の脱落も見られた。SEMにて内部を観察すると、大径アルミナ球状粒子の周りを樹脂のみが覆い、本発明で必要なマトリックスが部分的にしか形成されてないことを確認した。
Claims (14)
- 平均粒径80超〜100μmの球状アルミナ粒子が60〜80vol%、平均粒径0.5〜7μmのアルミナ粒子が20〜40vol%の配合で含まれることを特徴とする、高熱伝導性樹脂コンパウンド用配合粒子。
- 請求項1に記載の高熱伝導性樹脂コンパウンド用配合粒子を樹脂成形体に用いることを特徴とする高熱伝導性樹脂成形体用配合粒子。
- 請求項2に記載の高熱伝導性樹脂成形体用配合粒子を放熱シートに用いることを特徴とする放熱シート用配合粒子。
- 前記平均粒径0.5〜7μmのアルミナ粒子が非球状であることを特徴とする、請求項3に記載の放熱シート用配合粒子。
- 平均粒径80超〜100μmの球状アルミナ粒子が60〜80vol%、平均粒径0.5〜7μmのアルミナ粒子が20〜40vol%の配合で含まれる配合粒子を、体積比で60〜85vol%含むことを特徴とする、高熱伝導性樹脂コンパウンド。
- 請求項5に記載の高熱伝導性樹脂コンパウンドを用いて成形したことを特徴とする高熱伝導性樹脂成形体。
- 請求項6に記載の高熱伝導性樹脂成形体を用いて作製したことを特徴とする放熱シート。
- 前記放熱シートの熱伝導率が5.6W/mK以上であることを特徴とする、請求項7に記載の放熱シート。
- 平均粒径0.5〜7μmのアルミナ粒子と樹脂との混合物からなるマトリックスに、平均粒径80超〜100μmの球状アルミナ粒子が均一に分散していることを特徴とする、請求項7または請求項8に記載の放熱シート。
- 前記マトリックスのうち樹脂の占める体積が30〜65vol%であることを特徴とする、請求項9に記載の放熱シート。
- 小径の無機質粒子と樹脂とを予め混合してマトリックスを形成した後、該マトリックスに大径の無機質粒子を混合して成形することを特徴とする高熱伝導性樹脂コンパウンドの製造方法。
- 請求項11に記載の高熱伝導性樹脂コンパウンドを用いて成形することを特徴とする高熱伝導性樹脂成形体の製造方法。
- 請求項12に記載の高熱伝導性樹脂成形体を用いて作製することを特徴とする放熱シートの製造方法。
- 前記小径の無機質粒子を平均粒径0.5〜7μmのアルミナ粒子とし、前記大径の無機質粒子を平均粒径80超〜100μmの球状アルミナ粒子とすることを特徴とする、請求項13に記載の放熱シートの製造方法。
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