しかしながら、特許文献1のようなタイヤ走行の管内走行装置においては、管路の直径が小さくなるに従って必然的に走行輪の直径も小さくなってしまう。このため、小径の管路内においては、走行速度が極端に低下してしまうとともに、継手位置における段差や管路内面に付着した障害物などが存在すると、これらを乗り越えて走行することができなくなってしまう問題があった。
また、特許文献2のようなキャタピラ走行の管内走行装置においても、同様に小径の管路内においては、駆動輪が小さくなることで走行速度が極端に低下してしまう。さらに、このようなキャタピラ走行においては、走行に伴う機構が複雑であるので、小型化には限界があり、走行可能な管路の大きさには限界があった。
また、特許文献3の管内走行装置は、進行方向に2つの締付けユニット及び送り空気シリンダが組立てられて伸縮することで、進行方向に装置スペースを必要とする。このため、上記のようなタイヤ走行やキャタピラ走行の管内走行装置に比べて、小径の管路でも走行可能であり、段差や障害物などにも対応可能であるものの、管路が湾曲、屈曲している場合には自由に走行することができなくなってしまう問題があった。
この発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、小径の管路においても、段差や障害物、また、管路の湾曲、屈曲を問題とすることなく走行可能な管内走行装置を提供する。
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明の管内走行装置は、進行方向に沿って配設されたフレームと、該フレームに設けられ、該フレームから前記進行方向と略直交する側方に当接部材を張り出して管路の壁面を押圧した状態で、前記当接部材を前記フレームに対して相対的に前記進行方向の前方から後方へ移動させる推進運動、及び、前記当接部材が前記壁面と離間した状態で、前記当接部材を前記フレームに対して相対的に前記進行方向の後方から前方へ移動させる復帰運動を繰り返す推進機構を有する推進手段と、該推進手段の前記推進機構を駆動する駆動機構とを備えることを特徴としている。
この発明に係る管内走行装置によれば、駆動機構が駆動することによって、フレームに設けられた推進手段の推進機構は、推進運動として、当接部材を、フレームから側方に張り出して管路の壁面を押圧するとともに、フレームに対して相対的に前方から後方へ移動させる。推進機構の当接部材と管路との間には摩擦力が生じて互いを拘束するため、結果として、フレームが進行方向の前方に推進される。次に、推進機構は、復帰運動として、当接部材を進行方向の後方から前方へ移動させて、推進運動を開始する直前の状態に復帰する。この際、推進機構の当接部材が管路の壁面と離間した状態を保つことで、フレームに外力が働かず、フレームは静止した状態を保つ。すなわち、推進機構が推進運動と復帰運動とのサイクルを繰り返すことで、1サイクルごとに、推進運動時における推進機構の進行方向前方から後方へのストローク量に応じて、フレームを進行方向前方に走行させることができる。この際、推進運動時における推進機構のストローク量を小さくすることで、装置全体の長さを短くすることができ、管路の湾曲、屈曲にも対応することが可能である。また、ストローク量を変化させずに、推進機構が側方に張り出す張り出し量を変化させることで、小径の管路においても走行速度を変化させること無く対応することが可能であり、また、張り出し量に応じた段差や障害物などを乗り越えて走行することも可能である。
また、上記の管内走行装置において、前記推進機構の前記当接部材は、前記推進運動時に、当接した前記壁面に応じて弾性変形可能であることがより好ましいとされている。
この発明に係る管内走行装置によれば、推進運動時において、推進機構の当接部材は、壁面に応じて弾性変形可能である。このため、管路の壁面が変形している場合、段差が生じている場合、あるいは壁面に障害物などが付着している場合などでも、推進運動時における推進機構の張り出し量を変化させることなく、当接部材が対応する位置で弾性変形して吸収することで、容易に乗り越えることができる。また、推進運動時における推進機構の張り出し量を増大させることで、当接部材の弾性変形量を増大させて、壁面と推進機構の当接部材との間に生じる摩擦力を増大させることができる。このため、壁面が平滑に形成されている場合でも、壁面上で当接部材が滑動してしまうことなく、推進運動時における推進機構の推進力を効率良くフレームに伝達させて走行することができる。
さらに、上記の管内走行装置において、前記当接部材の前記壁面と相対する部分には、滑り止め処理が施された当接部が設けられていることがより好ましいとされている。
この発明に係る管内走行装置によれば、当接部材の壁面と相対する部分、すなわち壁面と直接当接する部分が当接部として滑り止め処理が施されていることで、推進運動時における推進機構の推進力を、より効率良くフレームに伝達させて走行することができる。
また、上記の管内走行装置において、前記推進手段の前記推進機構は、基端が前記フレームの前端部に軸着され、先端が該フレームに対して前方へ配設された状態から側方へ配設された状態まで、所定角度だけ往復回転可能な前部アームと、基端が前記フレームの後端部に軸着され、先端が該フレームに対して後方へ配設された状態から側方へ配設された状態まで、所定角度だけ往復回転可能な後部アームとを備え、前記当接部材は、前端が前記前部アームの前記先端に取り付けられるとともに、後端が前記後部アームの前記先端に取り付けられており、前記前部アームの前記先端と前記後部アームの前記先端との距離に応じて、側方へ弾性的に湾曲可能であることがより好ましいとされている。
この発明に係る管内走行装置によれば、推進機構の当接部材は、前部アームの先端と後部アームの先端との距離を狭めることで、弾性的に湾曲して側方に張り出すことが可能である。また、前部アームを、先端がフレームに対して前方へ配設された状態から側方へ配設された状態まで回転させるとともに、後部アームを、先端がフレームから側方へ配設された状態から後方へ配設された状態まで回転させることで、当接部材をフレームに対して相対的に前方から後方へ移動させることが可能である。このため、推進運動時には、前部アームの先端と後部アームの先端との距離を狭めた状態で、前部アームを先端が前方へ配設された状態から側方へ配設された状態へ、後部アームを先端が側方へ配設された状態から後方へ配設された状態へ回転させることで、当接部材が壁面を押圧した状態で、前方から後方へ移動させて、フレームに推進力を与えることができる。
また、復帰運動時には、前部アームの先端と後部アームの先端との距離を広げて、当接部材を壁面から離間させて、逆に後方から前方に移動させることで、推進運動の開始の状態に戻すことができる。すなわち、前部アームと後部アームとが、当接部材が取り付けられた先端間の距離を変化させて協働して往復回転することで、推進運動と復帰運動とを繰り返すことができる。また、当接部材は、湾曲して側方に張出していることで、前端及び後端から中間部にかけて徐々に壁面との距離が狭まった状態となる。このため、上述のように、復帰運動から推進運動に移行する際の当接部材の張出し量に応じて、管路内の段差や障害物に対応することが可能であるとともに、当接部材が段差や障害物に前端から徐々に当接することでさらに容易に乗り越えて走行することが可能となる。
さらに、上記の管内走行装置において、前記当接部材は、前記前部アーム及び前記後部アームのそれぞれの前記先端に回転可能に取り付けられていることがより好ましいとされている。
この発明に係る管内走行装置によれば、当接部材は、前部アーム及び後部アームのそれぞれの前記先端に回転可能に取り付けられていることで、前部アームの先端と後部アームの先端との距離を狭めた際に、より柔軟に、かつ、略円弧状に湾曲することができる。このため、より円滑に推進運動と復帰運動を繰り返すことができるとともに、略円弧状に湾曲することで、管路内の段差や障害物をより容易に乗り越えて走行することが可能となる。
また、上記の管内走行装置において、前記前部アーム及び前記後部アームは、前記駆動機構によって略等しい回転速度で、かつ、所定の位相差を有して、略等しい角度だけ往復回転可能であることがより好ましいとされている。
この発明に係る管内走行装置によれば、前部アームの回転速度と後部アームの回転速度を略等しくすることで、前部アームが前方から側方へ回転するとともに、後部アームが側方から後方へ回転する場合に、あるいは、前部アームが側方から前方へ回転するとともに、後部アームが後方から側方へ回転する場合に、前部アームと後部アームとの先端間の距離を略等しく、すなわち、当接部材の張り出し量を略一定とすることができる。また、前部アームと後部アームとの往復回転が所定の位相差を有していることで、前部アームが前方から側方へ回転するとともに後部アームが側方から後方へ回転する場合と、前部アームが側方から前方へ回転するとともに後部アームが後方から側方へ回転する場合とで、前部アームと後部アームとの先端間の距離を変化させることができ、すなわち、前部アーム及び後部アームが回転する向きによって、当接部材の張り出し量を変化させることができる。このため、推進運動時には、略一定の張り出し量で壁面に当接し、略一定の速度で前方から後方へ当接部材を移動させてフレームに推進力を伝達するとともに、復帰運動時には、略一定の張り出し量で壁面から離間して推進運動の開始位置に復帰させることができる。
また、上記の管内走行装置において、前記駆動機構を複数備え、前記前部アーム及び前記後部アームは、それぞれ異なる前記駆動機構によって独立して往復回転可能であるものとしても良い。
この発明に係る管内走行装置によれば、推進運動時は、複数の駆動機構によって、当接部材を側方に張り出させた状態で、前部アームを前方から側方へ、後部アームを側方から後方へ、それぞれ回転させることで、当接部材が壁面を押圧するとともに、当接部材を前方から後方へ移動させてフレームに推進力を与えることができる。また、復帰運動時は、側方に位置する前部アームを前方へ回転させることで、前部アームと後部アームの先端間の距離を広げて当接部材を壁面から離間させるとともに、前部アームを、推進運動を開始することが可能な位置に復帰させる。次に、後方に位置する後部アームを側方へ回転させることで、当接部材が壁面から離間した状態で、後部アームも、推進運動を開始することが可能な位置に復帰させることが可能である。すなわち、このように複数の駆動機構によって前部アーム及び後部アームを独立して往復回転させることによって、推進運動及び復帰運動を繰り返すことができる。
また、上記の管内走行装置において、前記駆動機構は、所定の回転方向に回転駆動、または、所定の回転範囲で往復回転駆動する回転駆動部と、前記フレームに軸着され、前記回転駆動部によって、所定の回転方向に回転、または、所定の回転範囲で往復回転可能な回転リンク部材と、前記前部アームの前記基端または前記後部アームの前記基端に固定されて、前記前部アームまたは前記後部アームとともに往復回転可能な揺動リンク部材と、一端が該揺動リンク部材に回転可能に取り付けられるとともに、他端が前記回転リンク部材に回転可能に取り付けられた連接リンク部材とを備え、前記フレーム、前記回転リンク部材、前記揺動リンク部材、及び前記連接リング部材で四リンク列が構成されていることがより好ましいとされている。
この発明に係る管内走行装置によれば、フレームを固定リンクとし、フレームと、回転リンク部材と、揺動リンク部材と、連接リング部材とで四リンク列を構成していることで、回転駆動部の回転駆動を揺動リンク部材の往復回転運動に変換し、揺動リング部材が固定された前部アームまたは後部アームを往復回転させることができる。この際、駆動機構を四リンク列とすることで、省スペースで、効率良く前部アームまたは後部アームを往復回転させて、推進機構に推進運動及び復帰運動させることが可能である。このため、装置全体の小型化、軽量化も図ることができる。
また、上記の管内走行装置において、前記駆動機構は、所定の回転範囲で往復回転駆動する回転駆動部と、前記前部アームの前記基端または前記後部アームの前記基端に取り付けられて、前記前部アームまたは前記後部アームとともに往復回転可能な揺動部材と、前記回転駆動部の往復回転運動に応じて進退可能で、前記揺動部材を押圧することで、該揺動部材を回転させることが可能な直動軸とを備えるものとしても良い。
この発明に係る管内走行装置によれば、回転駆動部によって直動軸を進出させて、揺動部材を押圧し回転させることで、揺動部材が取り付けられた前部アームあるいは後部アームの一方を他方との距離を縮めるように回転させることができる。また、直動軸を後退させることで、揺動部材を介して回転した前部アームあるいは後部アームは、先端に取り付けられた当接部材の弾性によってもとの状態に戻ろうとする。すなわち、回転駆動部を回転駆動させて、直動軸を進退させることで、前部アームまたは後部アームを往復回転させることが可能であり、省スペースで、効率良く、推進機構に推進運動及び復帰運動させることが可能である。
さらに、上記の管内走行装置において、前記推進手段は、複数の前記推進機構が対をなして構成され、対をなした該推進機構の前記前部アーム同士及び前記後部アーム同士は、前記フレームに同軸上で回転可能に軸着されるとともに、前記基端が回転中心よりも該基端側へ延出されており、前記揺動部材は、前記前部アーム及び前記後部アームのそれぞれに回転可能に取り付けられているとともに、対応する該揺動部材同士も回転可能に取り付けられて、対をなした前記推進機構の二つの前記前部アーム及び二つの前記後部アームのそれぞれと、対応する二つの前記揺動部材とで、パンタグラフが構成されていることがより好ましいとされている。
この発明に係る管内走行装置によれば、対をなした推進機構の二つの前部アーム及び後部アームのそれぞれと対応する二つの揺動部材とでパンタグラフが構成されている。このため、回転駆動部によって直動軸を進出させて、揺動部材を押圧することで、対応する二つの前部アームまたは後部アームの一方を回転させて、他方との距離を縮めるように回転させることができる。また、直動軸を後退させることで、当接部材の弾性によって前部アームまたは後部アームはもとの状態にも戻ろうとする。すなわち、回転駆動部を回転駆動させて、直動軸を進退させることで、対をなした推進機構の前部アーム及び後部アームを往復回転させることが可能であり、パンタグラフを構成することで二つの推進機構を省スペースで、効率良く、駆動することができる。
また、上記の管内走行装置において、前記駆動機構の前記回転駆動部は、往復回転可能なサーボモータであり、該サーボモータの回転速度、回転範囲を制御可能な制御部を備えることがより好ましいとされている。
この発明に係る管内走行装置によれば、制御部によって回転駆動部であるサーボモータの回転速度を調整することで、走行速度を調整することができる。また、サーボモータの回転範囲を調整することで、推進運動時のストローク量及び壁面への押圧力を調整することができる。
さらに、上記の管内走行装置において、前記駆動機構または前記推進機構のいずれかの少なくとも一部材には、該推進機構が前記推進運動を行う際に生じる応力または歪みを測定可能な壁反力検出センサが設けられており、前記制御部は、前記壁反力検出センサの検出結果に基づいて、前記サーボモータの回転速度、回転範囲を決定することがより好ましいとされている。
この発明に係る管内走行装置によれば、推進運動時に推進機構が側方に張り出して壁面を押圧することで、その反力が駆動機構及び推進機構の各部材に伝達される。壁反力検出センサが駆動機構または推進機構のいずれかの少なくとも一部材に設けられて、応力または歪みを測定することが可能であることで、制御部は、壁反力検出センサの検出結果に基づいて、推進運動時に壁面から伝達される反力を検出することができる。そして、制御部は、この検出結果に基づいて、回転速度、回転範囲を決定することができることで、推進運動時における壁面を押圧する力を最適なものとして、効率良くフレームに推進力を与えて走行することができる。
また、上記の管内走行装置において、前記回転駆動部には、該回転駆動部に供給される電流を検出可能な電流検出手段が設けられており、前記制御部は、前記電流検出手段の検出結果に基づいて、前記サーボモータの回転速度、回転範囲を決定するものとしても良い。
この発明に係る管内走行装置によれば、推進運動時に推進機構が側方に張り出して壁面を押圧することで、その反力が回転駆動部にも伝達される。このため、回転駆動部のトルクは上昇し、回転駆動部に供給される電流も増大する。すなわち、電流検出手段によって回転駆動部の電流を検出可能であることで、制御部は、電流検出手段の検出結果に基づいて、推進運動時における壁面から伝達される反力を検出することができる。そして、制御部は、この検出結果に基づいて、回転速度、回転範囲を決定することができることで、推進運動時における壁面を押圧する力を最適なものとして、効率良くフレームに推進力を与えて走行することができる。
また、上記の管内走行装置において、前記駆動機構には、電磁クラッチが設けられていることがより好ましいとされている。
この発明に係る管内走行装置によれば、駆動機構に電磁クラッチが設けられていることで、駆動機構が駆動していないときは電磁クラッチが解除されて、推進機構は駆動機構の拘束を受けずに自由に変形可能となる。すなわち、管路内における作業が完了した際に、あるいは、管路内において何らの理由で駆動機構が停止してしまった際には、電磁クラッチが自動的に解除されて、推進機構と壁面との拘束が解除される。このため、推進機構は自然に復帰運動中の状態に変化して、牽引する等の他の方法により、容易に移動させることが可能となる。
また、上記の管内走行装置において、前記フレームと、前記駆動機構とを内部に格納するとともに、前記推進機構が張り出し可能な開口部が形成された本体カバーを備え、前記推進機構は、前記復帰運動時には前記本体カバーに格納されているとともに、前記推進運動時には前記本体カバーの前記開口部から前記当接部材を張り出し、前記壁面に当接することが可能であることがより好ましいとされている。
この発明に係る管内走行装置によれば、本体カバーが、フレーム、駆動機構及び推進機構を内部に格納することで耐久性を向上することができるとともに、取り扱いを容易とさせる。また、推進機構は、推進運動時には、本体カバーに形成された開口部から当接部材を側方に張り出すことで、壁面を押圧して推進力をフレームに与えて、走行することが可能である。
また、上記の管内走行装置において、走行する前記管路を撮影可能な撮影手段を備えることがより好ましいとされている。
この発明に係る管内走行装置によれば、小径の管路内において、管路の湾曲や屈曲、あるいは段差や障害物などの影響を受けずに走行して、撮影手段によって管路内の観察を行うことができる。
また、上記の管内走行装置において、前記推進手段は、複数の前記推進機構で構成され、複数の該推進機構は、前記進行方向に略平行な軸を中心として正面視略等角度で放射状に前記側方に張り出して、前記壁面を押圧することが可能に設けられていることがより好ましいとされている。
この発明に係る管内走行装置によれば、推進手段として設けられた複数の推進機構が、推進運動時において、正面視略等角度で放射状に側方に張り出すことができる。このため、周囲の壁面を複数の推進機構が均一に押圧することで、管路内での走行直進性を向上することができる。また、複数の推進機構によって発生する推進力を、効率良くフレームに伝達して走行することができる。
また、上記の管内走行装置において、前記推進手段は、複数の前記推進機構で構成されるとともに、前記駆動機構は、複数の前記推進機構と対応して複数備えることがより好ましいとされている。
この発明に係る管内走行装置によれば、複数の駆動機構によって、複数の推進機構をそれぞれ独立して、推進運動及び復帰運動させることができる。このため、例えば、一方の推進機構を駆動させるとともに、相対する他方の推進機構を停止させるあるいは推進力を弱めることで、装置の向きを自在に調整することができる。すなわち、管路が湾曲している場合には、管路の線形に応じて円滑に走行することができ、また、管路内でその向きを自由に回転させることもできる。
また、上記の管内走行装置において、前記推進手段を複数備え、複数の該推進手段は、交互に前記推進運動及び前記復帰運動を繰り返すことが可能であることがより好ましいとされている。
この発明に係る管内走行装置によれば、複数の推進手段に交互に推進運動を行わせることで、常にフレームに推進力を与えることが可能である。このため、さらに効率良く走行することが可能であるとともに、勾配を有して、あるいは、略鉛直に配設された管路においても、重力に対向して走行することが可能となる。
本発明の管内走行装置によれば、推進運動及び復帰運動を繰り返すことが可能な推進機構を有する推進手段を備えることで、小径の管路においても、段差や障害物、また、管路の湾曲、屈曲を問題とすることなく自在に走行することが可能である。
(第1の実施形態)
図1から図14は、この発明に係る第1の実施形態を示している。図1及び図2は、管路内を自走する管内走行装置の駆動ユニットを示していて、図1は外観図、また、図2は、内部機構の詳細図を示している。また、図3は、駆動ユニットを含んだ管内走行装置のブロック図を示している。
図3に示すように、管内走行装置1は、管路内を進行方向Aに自走する駆動ユニット2と、駆動ユニット2を外部から制御する制御装置40と、駆動ユニット2と制御装置40とを電気的に接続するケーブル3とを備える。
図1に示すように、駆動ユニット2の各内部機構は、上部カバー4a及び下部カバー4bで構成される本体カバー4によって覆われている。上部カバー4aと下部カバー4bとが組みつけられた状態において、本体カバー4の側部には、進行方向Aに沿って開口部4cが形成されており、後述する推進機構が進行方向Aと直交する側方Sに張り出すことが可能である。
図2に示すように、本体カバー4を取り外した状態において、駆動ユニット2は、前端部5aから後端部5bへ進行方向Aに沿って配設されるフレーム5と、フレーム5に設けられ、フレーム5に進行方向Aに推進力を与える推進機構11、21を有する推進手段10と、推進機構11、21を駆動する駆動機構30とを備える。なお、上述の本体カバー4は、図示しない冶具によってフレーム5に固定されている。
推進機構11は、フレーム5の前端部5aに設けられた前部アーム12と、後端部5bに設けられた後部アーム13とを備えている。また、同様に、推進機構21は、フレーム5の前端部5aに設けられた前部アーム22と、後端部5bに設けられた後部アーム23とを備えている。推進機構11、21のそれぞれの前部アーム12、22は、フレーム5の前端部5aに形成された凹部5cに、基端12a、22aが側方Sに並列して挿入されて、回転可能に軸着されている。また、フレーム5の前端部5aには、前部アーム12、22とともにそれぞれ回転可能に、アームギア12b、22bが設けられており、互いに噛み合っている。アームギア12b、22bのギア比は一対一に設定されている。これにより推進機構11、21の各前部アーム12、22は、各先端12c、22cがフレーム5対して進行方向Aの前方Fへ配設された状態から側方Sへ配設された状態まで略対称に同期して回転することが可能である。
また、推進機構11、21のそれぞれの後部アーム13、23も同様に、フレーム5の後端部5bに形成された凹部5dに、基端13a、23aが回転可能に軸着されている。また、アームギア13b、23bが、後部アーム13、23のそれぞれと回転可能に、かつ、互いに噛み合って、フレーム5の後端部5bに設けられている。アームギア13b、23bのギア比は一対一に設定されている。これにより、推進機構11、21の各後部アーム13、23は、各先端13c、23cがフレーム5に対して進行方向Aの後方Bへ配設された状態から側方Sへ配設された状態まで、略対称に同期して回転することが可能である。
また、推進機構11、21は、それぞれ、当接部材である弾性的に湾曲可能な板バネ14、24を備えている。板バネ14、24は、前端14a、24aがそれぞれ前部アーム12、22の先端12c、22cにピン12d、22dによって回転可能に取り付けられている。また、後端14b、24bが、それぞれ後部アーム13、23の先端13c、23cにピン13d、23dによって回転可能に取り付けられている。すなわち、推進機構11において、板バネ14は、対応する前部アーム12と後部アーム13とが、先端12c、13cの間の距離を狭めるように互いに側方Sへ回転することで、弾性的に略円弧状に湾曲して側方Sに張り出される。また、前部アーム12が、先端12cがフレーム5に対して前方Fへ配設された状態から側方Sへ配設された状態へ回転するとともに、後部アーム13が前部アーム12と協働して、先端13cがフレーム5に対して側方Sへ配設された状態から後方Bへ配設された状態へ回転することで、板バネ14を全体的にフレーム5に対して前方Fから後方Bへ移動させることが可能である。
推進機構21においても同様に、板バネ24を、前部アーム22と後部アーム23の互いの回転方向によって、弾性的に略円弧状に湾曲して側方Sに張り出させる、あるいは、全体的にフレーム5に対して前方Fから後方Bへ移動させることが可能である。また、板バネ14、24の後述する管路の壁面と相対して当接する面には、当接部であるゴムで形成された摩擦板14c、24cが設けられている。なお、図1に示すように、本体カバー4の開口部4cは、各推進機構11、21の板バネ14、24と対応して、進行方向Aに沿って形成されており、各板バネ14、24は、対応する前部アーム12、22及び後部アーム13、23の回転によって上述するように弾性的に湾曲することによる側方Sへの張り出し量を変化させて、本体カバー4から突没可能に設定されている。
図2に示すように、推進機構11、21を駆動する駆動機構30は、回転駆動部であるDCモータ31と、後部アーム13、23と対応した第一ギア32及び前部アーム12、22と対応した第二ギア33とを備える。図2及び図4に示すように、DCモータ31は、フレーム5に固定されており、入力された電圧に応じて所定の回転数で回転可能な減速ギア付きモータである。第一ギア32は、フレーム5に回転可能に軸着されており、DCモータ31の回転駆動によって回転可能である。また、第一ギア32とDCモータ31との間には、電磁クラッチ34が設けられており、DCモータ31に電力が供給され回転駆動する場合には、電磁クラッチ34が作動して動力を第一ギア32に伝達させることが可能であり、電力が供給されていない場合には、電磁クラッチ34は解除されて、第一ギア32はDCモータ31から独立して回転可能となる。また、第二ギア33は、フレーム5に回転可能に軸着されているとともに、第一ギア32と噛み合っている。第一ギア32と第二ギア33のギア比は一対一に設定されている。
図2に示すように、駆動機構30は、さらに、後部ギア13、23と対応して、第一連接リンク部材35及び第一揺動リンク部材36を備えている。第一揺動リンク部材36は、一端36aがアームギア23bに固定されており、アームギア23bとともに回転可能である。また、第一連接リンク部材35は、一端35aが第一揺動リンク部材36の他端36bに回転可能に取り付けられているとともに、他端35bが第一ギア32の外周側において、上面32aに回転可能に取り付けられている。すなわち、第一ギア32及びアームギア23b介して第一揺動リンク部材36を回転可能に軸着しているフレーム5を固定リンク、第一ギア32を回転リンク、第一連接リンク部材35を連接リンク、並びに、第一揺動リンク部材36を揺動リンクとした四リンク列が構成されている。このため、第一ギア32が一定の方向に回転するのに従って、第一揺動リンク部材36は所定の回転範囲で往復回転して、これにより後部アーム13、23は、アームギア13b、23bを介して、所定の回転範囲で往復回転可能である。
後部アーム13、23の回転範囲は、フレーム5におけるアームギア23bと第一ギア32の取り付け位置、第一連接リンク部材35及び第一揺動リンク部材36の部材長によって設定可能である。本実施形態においては、第一連接リンク部材35の他端35bが第一ギア32の回転に伴って最も前方F側に位置する際に、後部アーム13、23がそれぞれ先端13c、23cがフレーム5に対して後方Bへ配設されて、中心軸Lに対する回転角度θBが0度となるように設定されている。また、第一連接リンク部材35の他端35bが最も後方B側に位置する際に、後部アーム13、23はそれぞれフレーム5から両側方Sへ配設されて、回転角度θBが最大値で60度となるように設定されている。
また、同様に、駆動機構30は、前部アーム12、22と対応して、第二連接リンク部材37及び第二揺動リンク部材38を備えている。第二揺動リンク部材38は、一端38aがアームギア12bに固定されており、アームギア12bとともに回転可能である。また、第二連接リンク部材37は、一端37aが第二揺動リンク部材38の他端38bに回転可能に取り付けられているとともに、他端37bが第二ギア33の外周側において、上面33aに回転可能に取り付けられている。すなわち、フレーム5を固定リンク、第二ギア33を回転リンク、第二連接リンク部材37を連接リンク、及び、第二揺動リンク部材38を揺動リンクとした四リンク列が構成されている。
このため、第二ギア33が一定の方向に回転するのに従って、揺動リンク部材38は所定の回転範囲で往復回転して、これにより前部アーム12、22は、アームギア12b、22bを介して、所定の回転範囲で往復回転可能である。後部アーム13、23と同様に、前部アーム12、22の回転範囲は、フレーム5におけるアームギア12bと第二ギア33の取り付け位置、第二連接リンク部材37及び第二揺動リンク部材38の部材長によって設定可能である。そして、本実施形態においては、第二連接リンク部材37の他端37bが第二ギア33の回転に伴って最も後方B側に位置する際に、前部アーム12、22がそれぞれ先端12c、22cがフレーム5に対して前方Fへ配設されて、中心軸Lに回転角度θFが0度となるように設定されている。また、第二連接リンク部材37の他端37bが最も前方F側に位置する際に、後部アーム13、23はそれぞれフレーム5から両側方Sへ配設されて、回転角度θFが最大値で60度となるように設定されている。
すなわち、DCモータ31を回転駆動することによって、推進機構11の前部アーム12及び後部アーム13と、推進機構21の前部アーム22及び後部アーム23とは、それぞれ、回転角度θF、θBがそれぞれ0度から60度となる回転範囲で往復回転することになる。ここで、図2に示すように、本実施形態においては、後部アーム13、23と対応した第一連接リンク部材35の他端35bが最も前方F側に位置する際に、前部アーム12、22と対応した第二連接リンク部材37の他端37bは、第二ギア33上において、最も後方B側の位置を基準としてΔφ=120度だけ回転した位置に設定されている。これにより、前部アーム12、22と後部13、23とは、互いに120度の位相差を有して、往復回転運動を繰り返すことになる。
また、図2及び図3に示すように、DCモータ31には、DCモータ31の回転角度を検出可能なエンコーダ31aが設けられており、これによって前部アーム12、22及び後部アーム13、23の回転角度を適時検出可能である。また、フレーム5には制御部であるモータ制御回路6が設けられており、DCモータ31及びエンコーダ31aと接続されており、エンコーダ31aの検出結果に基づいてDCモータ31を制御して、推進手段10の推進機構11、21に動力を伝達させることが可能である。さらに図3に示すように、モータ制御回路6は、通信回路6aと接続されていて、ケーブル3を介して制御装置40からの入力によってDCモータ31を駆動させることが可能であり、エンコーダ31aの検出結果を制御装置40に出力することが可能である。
また、図1及び図3に示すように、管内走行装置1の駆動ユニット2は、撮影手段7を備えている。撮影手段7は、本体カバー4の前部に設けられ、前方Fを撮影可能な前方撮影素子7aと、本体カバー4の後部に設けられ、後方Bを撮影可能な後方撮影素子7bとを備えている。図3に示すように、前方撮影素子7a及び後方撮影素子7bで撮影された画像は、映像信号処理回路7cによって信号化され、通信回路7dによってケーブル3を介して制御装置40に出力可能である。なお、駆動ユニット2に備えられたDCモータ31、モータ制御回路6、撮影手段7などの電気系に必要な電力は、ケーブル3を介して制御装置40から供給されている。
図3に示すように、制御装置40は、駆動ユニット2におけるモータ制御回路6の通信回路6aとケーブル3を介して送受信可能な通信回路41を備えている。通信回路41は、バス42を介してCPU43、ROM44、及びRAM45と接続されており、CPU43、及びROM44に記憶されたプログラムに基づいて駆動ユニット2のモータ制御回路6に駆動ユニット2を動作させるための各種信号を送信することが可能である。また、駆動ユニット2においてエンコーダ31aの検出結果を受信することが可能であり、RAM45に記憶させることが可能である。なお、ROM44に書き込まれているプログラムなどのデータ及びRAM44に書き込み可能なデータは上記に限らず、使用態様により各種設定可能である。
また、制御装置40は、駆動ユニット2における撮影手段7の通信回路7dとケーブル3を介して送受信可能な通信回路46と、通信回路46と接続されて、受信した映像信号を画像化する映像信号処理回路47とを備える。映像信号処理回路47は、モニタ48と接続されていて、モニタ48に駆動ユニット2の撮影手段7で撮影された画像を映し出すことが可能である。また、映像信号処理回路47は、画像切替スイッチ48aと接続されており、モニタ48に映し出される画像を撮影手段7の前方撮影素子7aで駆動ユニット2の前方Fを撮影した画像と、後方撮影素子7bで駆動ユニット2の後方Bを撮影した画像とを切り替えることが可能である。また、通信回路46は、バス42とも接続されており、バス42を介してRAM45に画像データを記録する、あるいは、RAM45に記憶された画像データをバス42、通信回路46、及び映像信号処理回路47を介してモニタ48に映し出すことも可能である。
また、制御装置40は操作部40aを備え、コネクタ40bを介してバス42と接続されている。このため、作業者は、モニタ48を確認するとともに、操作部40aを操作することでDCモータ31を駆動させて、駆動ユニット2を管路において走行させることが可能である。また、制御装置40は、スイッチ49aによってON/OFF切替可能な電源49を備えており、制御装置40の各構成要素に電力を供給可能であるとともに、ケーブル3を介して駆動ユニット2の各電気系にも電力を供給することが可能である。
次に、管内走行装置1の作用について説明する。図5から図10は、管路Pの内部を走行する管内走行装置1の駆動ユニット2について、経時的変化を模式的に表わしたものである。図5に示すように、管路Pの内部に配置された駆動ユニット2は、各推進機構11、21の前部アーム12、22が、回転角θFが0度、すなわち、中心軸Lと略平行であり、側方Sへ回転しようとする状態である。一方、上述のように前部アーム12、22と、後部アーム13、23とは、120度の位相差を有して往復回転を行う。このため、後部アーム13、23は、回転角度θBが40度であり、側方Sへさらに回転しようとする状態にある。この状態で、制御装置40からの操作に基づくモータ制御回路6による制御によって、DCモータ31を駆動させれば、まず、推進機構11、21は推進運動として管路Pの壁面P1の押圧を開始する。すなわち、推進機構11において前部アーム12及び後部アーム13はともに側方Sへ回転するので、推進機構11の前部アーム12の先端12cと後部アーム13の先端13cとの距離は狭まって、板バネ14は弾性的に湾曲して張り出す。同様に、推進機構21の前部アーム22の先端22cと後部アーム23の先端23cとの距離も狭まって板バネ24は弾性的に側方Sに張り出す。この際、板バネ14、24は、前部アーム12、22及び後部アーム13、23に、それぞれ回転可能に取り付けられていることで、柔軟に、かつ、略円弧状に湾曲することが可能である。
図6は、図5の状態から前部アーム12、22、後部アーム13、23ともに20度ずつ回転した場合を示している。この状態では、前部アーム12、22はさらに側方Sに回転しようとするとともに、後部アーム13、23は、回転角度θBが最大値の60度に達して、逆に後方Bへ回転し始める状態である。そして、この状態では、推進機構11、21の各板バネ14、24は壁面P1の形状に応じて弾性的に変形し壁面P1を押圧する。このため、壁面P1と推進機構11、21の各板バネ14、24との間には、摩擦による拘束力が発生する。この際、板バネ14、24の当接している面には、当接部としてゴムで形成された摩擦板14c、24cが設けられているので、摩擦による拘束力をさらに効果的に発生させることができる。
次に、図7に示すように、前部アーム12、22はさらに側方Sへ、後部アーム13、23は後方Bへ回転することで、推進機構11、21の板バネ14、24は、壁面P1を押圧した状態でフレーム5に対して相対的に前方Fから後方Bへ移動しようとする。この際、推進機構11、21の板バネ14、24は、壁面P1に摩擦によって拘束を受けているので、結果として、反力によってフレーム5は、前方Fへ推進力を受け、進行方向Aへ移動することができる。なお、図7においては、図6の状態から前部アーム12、22、後部アーム13、23ともに20度ずつ回転した場合を示していて、前部アーム12、22の回転角度θF、後部アーム13、23の回転角度θBのそれぞれは40度となる。この状態では、前部アーム12、22は側方Sへ、後部アーム13、23は後方Bへ、それぞれさらに回転しようとする。
そして、図8に示すように、図7に示す状態から、さらに前部アーム12、22が側方Sへ、後部アーム13、23が後方Bへそれぞれ20度ずつ回転することで、フレーム5は推進力を与えられてさらに前方Fへ進出する。図8に示す状態では、前部アーム12、22は、回転角度θFが最大値60度に達するので、これ以降、逆転して前方Fへ回転し始める。また、後部アーム13、23は、回転角度θBが20度であるので、さらに後方Bへ回転しようとする。このため、さらに回転することによって、推進機構11において、前部アーム12の先端12cと後部アーム13の先端13cとの距離は広がり、板バネ14の中心軸Lから側方Sへの張出し量Tは減少して壁面P1から離間することで、推進機構11が壁面P1を押圧するとともに、フレーム5に対して相対的に前方Fから後方Bへ移動することでフレーム5に推進力を与える運動、すなわち推進運動が終了して、復帰運動へ移行する。推進機構21においても同様に、前部アーム22の先端22cと後部アーム23の先端23cとの距離が広がることで板バネ24が壁面P1から離間して推進運動から復帰運動へ移行する。
図9は、図8の状態からさらに20度回転した状態を示しており、前部アーム12、22は、回転角度θFが40度となってさらに前方Fへ回転し、後部アーム13、23は、回転角度θBが0度となるので、これ以降、逆転して再び側方Sへ回転し始める。図9に示すように、推進機構11、21の板バネ14、24は、壁面P1から離間した状態であり、さらに前部アーム12、22及び後部アーム13、23が回転することで、板バネ14、24は後方Bから前方Fへ移動する。なお、この状態では、板バネ14、24は壁面P1を押圧していないことから、フレーム5にはいずれの方向にも推進力が働かない。そして、前部アーム12、22及び後部アーム13、23が回転することにより、板バネ14、24は壁面P1と離間した状態で後方Bから前方Fへ移動し、図10に示すように回転角度θF、θBがともに20度となる。そして、さらに回転することによって、前部アーム12、22の回転角度θFは0度となり、後部アーム13、23の回転角度θBは40度となることで、最初の図5に示す状態、すなわち、復帰運動が終了し、推進運動を開始する直前の状態に復帰して、推進運動に再度移行する。
以上のように、推進機構11は、推進運動の際には、前部アーム12と後部アーム13とが、先端12c、13c間の距離を狭めた状態で、前部アーム12が前方Fから側方Sへ、後部アーム13が側方Sから後方Bへ略等しい回転速度で回転する。このため、板バネ14を張り出し量Tで側方Sに張出して、フレーム5に対して相対的に前方Fから後方Bへ移動させることで、推進力をフレーム5に与えて、進行方向Aへ走行することができる。また、前部アーム12と後部アーム13とが位相差を有して回転していることで、復帰運動の際には、前部アーム12と後部アーム13とが先端12c、13c間の距離を広げた状態で、前部アーム12が側方Sから前方Fへ、後部アーム13が後方Bから側方Sへ略等しい回転速度で回転する。このため、板バネ14の張出し量Tが減少して、フレーム5に対して相対的に後方Bから前方Fへ移動させることで、進行方向Aと逆方向に推進力を与えることなく、推進機構11の各部材前部アーム12、後部アーム13、及び板バネ14を推進運動の開始位置まで復帰させることができる。また、推進機構21においても同様であり、推進機構11、21が推進運動と復帰運動とのサイクルを繰り返すことで、1サイクルごとに、推進運動時における板バネ14、24の前方Fから後方Bへのストローク量に応じて、フレーム5を進行方向Aに走行させることができる。
また、上記のように駆動機構30の各部材の設定によって前部アーム12、22及び後部アーム13、23の回転範囲を設定することができる。さらに、第一連接リンク部材35の他端35bあるいは第二連接リンク部材37の他端37bの固定位置を調整することで、前部アーム12、22と後部アーム13、23との往復回転運動の位相差を設定することができる。そして、前部アーム12、22及び後部アーム13、23の回転範囲及び位相差を調整することで、板バネ14、24の張り出し量T及び推進運動におけるストローク量を自在に調整することができる。すなわち、回転範囲、位相差を設定して、復帰運動から推進運動に移行する際の板バネ14、24の張出し量Tの変化量を調整することで、小径の管路Pにも対応可能である。この際、駆動ユニット2の走行速度は、DCモータ31の回転速度と、推進運動時における板バネ14、24のストローク量に依存するので、張り出し量Tのみを調整することで、小径の管路Pにおいても走行速度を変化させること無く、効率的に走行させることが可能である。
さらに、駆動機構30が四リンク列によって構成されて、推進機構11、21を駆動することができることで、省スペースで、効率良く前部アーム12、22及び後部アーム13、23を往復回転させて、推進機構11、21に推進運動及び復帰運動させることが可能である。このため、装置全体の小型化をさらに図って、より小径の管路にも対応することが可能であり、また、装置全体の軽量化も図ることができる。
また、フレーム5に推進力を与える各推進機構11、21の板バネ14、24は、フレーム5、前部アーム12、22、及び後部アーム13、23で決定される駆動ユニット2の進行方向Aの全長の範囲において、推進運動と復帰運動を繰り返すのみである。すなわち、推進機構11、21の運動によって、駆動ユニット2の全長を必要以上に大きくしてしまうことが無いため、湾曲、屈曲している管路Pでも走行可能とする。また、前部アーム12、22、及び後部アーム13、23の部材長を短く設定して推進運動のストローク量をさらに小さくすることで、より曲率半径を小さくして湾曲、屈曲した管路にも対応することが可能である。
また、上述のように、推進機構11、21の各前部アーム12、22及び後部アーム13、23の回転範囲を設定して、推進運動時における板バネ14、24の張出し量Tを調整することで、管路Pの壁面P1が平滑に形成されて、滑りやすい場合にも対応可能である。すなわち、図11に示すように、推進運動時における板バネ14、24の張出し量Tを大きく設定することによって、壁面P1を押圧する力と、板バネ14、24が弾性変形して壁面P1に接触する面積を増大させることができる。このため、壁面P1が平滑に形成されている場合でも、壁面P1上で板バネ14、24が滑動してしまうことなく、推進運動時における推進機構11、21の推進力を効率良くフレーム5に伝達させて走行することができる。
また、管路Pに段差が生じている、あるいは壁面P1に障害物が付着していたとしても、少なくとも、復帰運動から推進運動に移行する際の板バネ14、24の張出し量Tの変化量と対応する大きさの段差や障害物を乗り越えて走行することが可能である。図12は、管路Pの壁面P1に障害物Qが付着している場合を示している。本実施形態の管内走行装置1において、推進機構11、21の板バネ14、24は、自己の弾性によって略円弧状に湾曲していて、フレーム5に対して相対的に進行方向Aと対向して前方Aから後方Bに移動する。すなわち、板バネ14、24は、フレーム5の全長よりも大きい曲率半径を有する車輪の一部とみなすことができ、推進機構及び復帰運動を繰り返すことで間欠的に
車輪走行を行っているといえる。通常の車輪走行の場合、その車輪は、構造上、本体よりも小さい曲率半径となってしまうので、本体の大きさに対して、乗り越えることが可能な障害物や段差などの大きさは制限されてしまう。しかしながら、管内走行装置1の駆動ユニット2の場合、上述のようにフレーム5よりも大きい曲率半径を有する車輪走行を擬似的に行うことが可能であることで、駆動ユニットの大きさに対してより大きな段差や障害物なども乗り越えて走行することが可能である。このため、図12に示すように、板バネ14は、壁面P1と離れている前端14aから徐々に当接して、壁面P1との距離が狭まっていく中間部にかけて徐々に障害物Qを乗り越えて、抵抗を抑えて障害物Qを通過することが可能である。さらに、図13に示すように、板バネ14が障害物Qの形状に対応して弾性的に変形することで、障害物Qをさらに容易に乗り越えて走行することができる。
また、図4に示すように、駆動ユニット2の駆動機構30には、電磁クラッチ34が設けられている。このため、例えば、図14に示すように、管路Pの所定位置で目的とする作業を終了した場合には、制御装置40の電源スイッチ49aをOFFにすることで、電磁クラッチ34を解除することができる。この状態では、電磁クラッチ34が解除されることで、推進手段10の推進機構11、21は、駆動機構30の拘束を受けずに自由に変形可能となる。すなわち、板バネ14、24による壁面P1への押圧力は働かず、また、板バネ14、24は弾性的に復元して、復帰運動中の状態となって本体カバー4の内部に格納されてしまう。このため、電磁クラッチ34を解除した状態では、ケーブル3を引っ張るなどにより、管路Pの出口側へ牽引することで、駆動ユニット2を容易に移動させて回収することが可能となる。電磁クラッチ34は、上述のように、自発的に電源49をOFFにした場合だけで無く、例えば、何らかの原因によって電力の供給が停止した場合でも解除される。このため、管路P内を走行中に何らかの原因で電力が供給されなくなって停止した場合でも、駆動ユニット2の回収を容易にさせる。
図15、図16は、それぞれ、この実施形態の第1、第2の変形例を示している。図15に示すように、第1の変形例の管内走行装置50は、推進手段51として、上述と同様の推進機構と同様の機構を有する3つ推進機構52、53、54を備えている。図15(b)に示すように、これらの推進機構52、53、54は、それぞれ、板バネ52a、53a、54aを、中心軸Lを中心として正面視略等角度で放射状に側方Sに同時に張り出すことが可能である。また、図16に示すように、第2の変形例の管内走行装置60では、推進手段61として、4つの推進機構62、63、64、65を備えていて、それぞれ、板バネ62a、63a、64a、65aを、中心軸Lを中心として正面視略等角度で放射状に側方Sに同時に張り出すことが可能である。
これらの管内走行装置50、60では、フレーム5に推進力を与える推進機構を増やすことで、推進力を増大させることができる。また、推進機構が正面視略等角度で放射状に側方Sに同時に張り出すことが可能であることで、周囲の壁面P1を均一に押圧することができ、管路P内での走行直進性を向上することができる。
図17から図19は、この実施形態における第3の変形例を示していて、鉛直に配設された管路Rを走行する場合について示している。この変形例の管内走行装置70は、2つの推進手段71、74を備えている。図17(a)に示すように、一方の推進手段71は、正面視略対向して、それぞれ板バネ72a、73aを同時に張り出すことが可能な2つの推進機構72、73を備えている。また、他方の推進手段74も同様に、正面視略対向して、それぞれ板バネ75a、76aを同時に張り出すことが可能な2つの推進機構75、76を備えている。そして、2つの推進手段71、74は、推進運動と復帰運動とのサイクルが逆転しており、一方が推進運動を行っている際に、他方は復帰運動を行うように設定されている。すなわち、図17に示すように、推進手段71の推進機構72、73が推進運動を行っている際に、推進手段74の推進機構75、76は、復帰運動を行っている。次に、図18に示すように、推進手段71の推進機構72、73の推進運動が終了する直前に推進手段74の推進機構75、76の推進運動が開始し、壁面R1を押圧し始める。次に、図19に示すように、推進手段71の推進機構72、73が復帰運動を行うとともに、推進手段74の推進機構75、76が推進運動を行う。
このように管内走行装置70は、2つの推進手段71、74が交互に推進運動と復帰運動を繰り返すことで、常にいずれかの推進機構が壁面R1を押圧することができる。このため、鉛直に配設された管路R、あるいは勾配を有する管路などでも、重力に対向して常に推進力を与えることで、走行することを可能とさせる。
図20は、この実施形態における第4の変形例を示している。この変形例の管内走行装置80は、第3の変形例同様に交互に推進運動と復帰運動を繰り返す2つの推進手段81、85を備えている。推進手段81は、3つの推進機構82、83、84を備えていて、正面視略等角度で放射状に張り出し可能に設けられている。同様に、推進手段85も、3つ推進機構86、87、88を備えていて、正面視略等角度で放射状に張り出し可能に設けられている。このような管内走行装置80では、各推進手段81、85の推進機構を増設することによって、第3の変形例の管内走行装置に比べて推進力をさらに増大させて、走行性能をさらに高めることができる。
図21は、この実施形態における第5の変形例を示している。この変形例の管内走行装置90は、3つの推進手段91、94、97を備えている。推進手段91は、正面視略対向して2つの推進機構92、93を備えている。また、同様に推進手段94は、推進機構95、96を、推進手段97は、推進機構98、99を備えている。そして、推進手段91、94、97は、推進運動及び復帰運動を順に繰り返すように設定されている。このような管内走行装置90では、3つの推進手段とすることで、2つの以上の推進運動を重複して行うことができるので、推進力をより連続的に与えて走行することができる。
(第2の実施形態)
図22から図24は、この発明に係る第2の実施形態を示している。この実施形態において、前述した実施形態で用いた部材と共通の部材には同一の符号を付して、その説明を省略する。
図22、図23に示すように、この実施形態の管内走行装置100は、駆動ユニットとして、前端部101aから後端部101bへ進行方向Aに配設されたフレーム101と、フレーム101に設けられ、フレーム101に進行方向Aへ推進力を与える推進機構110、130を有する推進手段102と、推進機構110、130をそれぞれ駆動する駆動機構111、131とを備える。なお、第一の実施形態同様に、管内走行装置100は、開口部4cを有する本体カバー4を備えるが、省略している。
推進機構110は、前部アーム12及び後部アーム13と、板バネ14とを備える。前部アーム12及び後部アーム13は、フレーム101の前端部101a及び後端部101bのそれぞれに、基端12a、13aが回転可能に軸着されている。また、板バネ14は、前端14a及び後端14bのそれぞれが前部アーム12及び後部アーム13に回転可能に取り付けられている。図23に示すように、駆動機構111は、回転駆動部であるDCモータ112と、電磁クラッチ34を介してDCモータ112によって回転駆動される駆動ギア113とを備える。これらは、図示しない冶具によってフレーム101に固定されている。また、駆動機構111は、フレーム101に回転可能に軸着された従動ギア114を備える。従動ギア114は、駆動ギア113と噛み合っており、DCモータ112の駆動によって回転可能である。また、従動ギア114の同軸上には、従動ギア114とともに回転可能に、略円板上の前部ロータ115及び後部ロータ116が設けられている。
図22に示すように、前部アーム12の基端12a及び後部アーム13の基端13aのそれぞれには、前部アーム12、後部アーム13のそれぞれとともに回転可能に、揺動リンク部材117、118が設けられている。また、前部アーム12の揺動リンク部材117と、前部ロータ115とは、連接リンク部材119で接続されている。連接リンク部材119は、一端119aが、揺動リンク部材117の先端117aに回転可能に取り付けられているとともに、他端119bが前部ロータ115の外周部において回転可能に取り付けられている。すなわち、フレーム101を固定リンク、前部ロータ115を回転リンク、連接リンク部材119を連接リンク、及び、揺動リンク部材117を揺動リンクとした四リンク列が構成されていて、前部ロータ115の回転によって、前部アーム12を往復回転させることが可能である。なお、前部アーム12は、連接リンク部材119の他端119bが前部ロータ115の回転に伴って、最も前方F側に位置する時に、中心軸Lと略平行に先端12cがフレーム101に対して前方Fへ配設された状態、すなわち、回転角度θF1が0度となるように、各部材長が設定されている。また、連接リンク部材119の他端119bが最も後方B側に位置する時に、先端12cがフレーム101に対して側方Sへ配設された状態まで回転し、回転角度θF1が最大値で60度を示すように、各部材長が設定されている。
また同様に、後部アーム13の揺動リンク部材118と、後部ロータ116とは、連接リンク部材120で接続されている。連接リンク部材120は、一端120aが、揺動リンク部材118の先端118aに回転可能に取り付けられているとともに、他端120bが前部ロータ116の外周部において回転可能に取り付けられている。すなわち、フレーム101を固定リンク、後部ロータ116を回転リンク、連接リンク部材120を連接リンク、及び、揺動リンク部材118を揺動リンクとした四リンク列が構成されていて、後部ロータ116の回転によって、後部アーム13を往復回転可能である。そして、後部アーム13は、後部ロータ116の回転によって、連接リンク部材120の他端120bが最も後方Bに位置する状態から最も前方Fに位置する状態まで移動するのに伴って、回転角度θB1が0度から60度まで変化するように、各部材長が設定されている。ここで、図22に示すように、前部アーム12に対応する連接リンク部材119の他端119bが前部ロータ115に取り付けられている位置と、後部アーム13に対応する揺動リンク部材120の他端120bが取り付けられている位置とは、平面視、前部ロータ115及び後部ロータ116の回転中心を中心とした角度でΔφだけずれている。本実施形態においては、Δφを120度に設定している。すなわち、駆動機構111のDCモータ112の駆動によって、前部アーム12と後部アーム13は、120度の位相差をもって、回転角度θF1、θB1が0度から60度となる回転範囲で往復回転を行うことになる。
図22に示すように、推進機構130は、推進機構110と同様に、前部アーム22及び後部アーム23と、板バネ24とを備える。駆動機構131は、駆動機構111と同様に、DCモータ132、駆動ギア133、及び従動ギア134を備えている。また、従動ギア134と同軸上には、略板状の前部ロータ135及び後部ロータ136が従動ギア134とともに回転可能に設けられている。そして、フレーム101、前部ロータ135、前部アーム22の基端22aに固定された揺動リンク部材137、及び一端139a及び他端139bが前部ロータ135と揺動リンク部材137のそれぞれに回転可能に取り付けられた連接リンク部材139によって、四リンク列が構成されていて、前部アーム22は、回転角度θF2が0度から60度となる回転範囲で往復回転可能である。さらに、フレーム101、後部ロータ136、後部アーム23の基端23aに固定された揺動リンク部材138、及び後部ロータ136と揺動リンク部材138のそれぞれに回転可能に取り付けられた連接リンク部材140によって、四リンク列が設定されていて、後部アーム23はθB2が0度から60度となる回転範囲で往復回転可能である。そして、前部アーム22に対応する連接リンク部材139の他端139bが前部ロータ135に取り付けられている位置と、後部アーム23に対応する連接リンク部材140の他端140bが取り付けられている位置とは、平面視、前部ロータ135及び後部ロータ136の回転中心を中心とした角度でΔφだけずれていて、Δφは120度に設定されている。
すなわち、駆動機構131のDCモータ132の駆動によって、前部アーム22と後部アーム23は、120度の位相差をもって、各回転角度θF2、θB2が0度から60度となる回転範囲で往復回転を行うことになる。また、駆動機構111、131のDCモータ112、132には、それぞれ、エンコーダ112a、132aが設けられていて、回転角度の検出が可能である。また、DCモータ112、132及びエンコーダ112a、132aは、それぞれモータ制御回路6に接続されており、各エンコーダ112a、132aによる検出結果に基づいて、モータ制御回路6の制御によって各々独立して駆動することが可能である。
次に、この実施形態の管内走行装置100の作用について説明する。モータ制御回路6による制御のもと、各駆動機構111、131のDCモータ112、132の回転速度及び位相を略等しくして回転させることにより、中心軸Lに対して略対称に前部アーム12、22及び後部アーム13、23を往復回転させて、第一の実施形態同様に管路P内を走行することが可能である。また、図24に示すように、DCモータ112、132の回転速度を略等しくするとともに、180度の位相差をもって回転させることで、推進機構110、130は、一方が推進運動を行っている際に、他方が復帰運動を行い、一方が復帰運動を行っている際に、他方が推進運動を行う。このため、2つの推進機構110、130によって、常に推進力を与えて走行させることができ、鉛直に配設された管路や勾配を有する管路などでも重力に対向して走行することが可能となる。また、図25に示すように、駆動機構111、131のそれぞれのDCモータ112、132を異なる方向に回転駆動させることで、推進機構110、130の一方を前進するように推進運動を行わせ、他方を後退するように推進運動を行わせることができる。このようにすることで、管路P内の所定位置において静止した状態のまま、駆動ユニットの向きを回転させることができる。このため、屈曲している部分を走行する場合や、駆動ユニットの向きを変えて壁面P1を撮影手段7で直視したい場合などに有効である。また、DCモータ112、132の回転速度を変えることで、湾曲した管路などにおいては、より円滑に走行することが可能となる。
(第3の実施形態)
図26から図30は、この発明に係る第3の実施形態を示している。この実施形態において、前述した実施形態で用いた部材と共通の部材には同一の符号を付して、その説明を省略する。
図26に示すように、この実施形態の管内走行装置150は、駆動ユニットとして、フレーム101と、推進機構110、130を有する推進手段151と、推進機構110、130を駆動する駆動機構152、162とを備える。なお、第一の実施形態同様に、管内走行装置100は、開口部4cを有する本体カバー4を備えるが、省略している。推進機構110、130の前部アーム12、22には、基端12a、22aおいて、互いに噛み合うアームギア12b、22bが設けられていて、協働して回転可能である。同様に後部アーム13、23にも、基端13a、23aおいて、互いに噛み合うアームギア13b、23bが設けられていて、協働して回転可能である。
また、駆動機構152は、フレーム101に設けられたサーボモータ153と、サーボモータ153によって回転可能な回転リンク部材154とを備える。サーボモータ153は、モータ制御回路6に接続されており、モータ制御回路6による制御のもと所定の回転速度、回転角度、回転範囲で回転リンク部材154を往復回転させることが可能である。また、駆動機構152は、前部アーム22の基端22aにおいて前部アーム22とともに回転可能に同軸に固定された揺動リンク部材155と、一端156aが揺動リンク部材155に回転可能に取り付けられているとともに、他端156bが回転リンク部材154の先端154aに回転可能に取り付けられた連接リンク部材156とを備える。すなわち、駆動機構152は、フレーム101と、回転リンク部材154と、連接リンク部材156と、揺動リンク部材155とで四リンク列を構成し、サーボモータ153の往復回転によって推進機構110、130の前部アーム12、22を所定の回転速度、回転角度、回転範囲で往復回転させることが可能である。
同様に、駆動機構162は、フレーム101に設けられ、モータ制御回路6に接続されたサーボモータ163と、サーボモータ163によって回転可能な回転リンク部材164とを備える。そして、駆動機構162は、フレーム101と、回転リンク部材164と、後部アーム13の基端13aとともに回転可能に固定された揺動リンク部材165と、一端166a及び他端166bのそれぞれで回転リンク部材164及び揺動リンク部材165の先端164a、165aに回転可能に取り付けられた連接リンク部材166とで四リンク列を構成している。すなわち、サーボモータ163の往復回転によって推進機構110、130の後部アーム13、23を所定の回転速度、回転角度、回転範囲で往復回転させることが可能である。
次に、この実施形態の管内走行装置150の作用について説明する。図27に示すように、まず、管路P内において、前部アーム12、22及び後部アーム13、23の回転角度θF1、θF2、θB1、θB2を0度となるようにサーボモータ153、163を回転させる。そして、推進運動として、この状態から後部アーム13、23と対応したサーボモータ163のみを所定の回転角度だけ回転させて、後部アーム13、23を側方Sへ回転させて、板バネ14、24を側方Sに張り出させて壁面P1を押圧させる。本実施形態では、この状態において回転角度θB1、θB2が60度となるようにサーボモータ163を回転させている。次に、図29及び図30に示すように、サーボモータ153、163を駆動して、前部アーム12、22を回転角度θF1、θF2が0度から60度となるまで、後部アーム13、23を回転角度θB1、θB2が60度から0度となるまで、略等しい回転速度で回転させる。このようにすることで、板バネ14、24は張り出し量Tを略一定として、フレーム5に対して相対的に前方Fから後方Bへ移動する。このため、フレーム101は、推進機構110、130から推進力を受けて、進行方向Aへ走行することができる。次に、復帰運動として、サーボモータ153のみを駆動して、前部アーム12、22を回転角度θF1、θF2が60度から0度となるまで回転させることで、図27に示す初期状態に戻って、再度推進運動を行うことができるようになる。
以上のように、2つの回転駆動部であるサーボモータ153、163と、制御部であるモータ制御回路6によって前部アーム12、22と、後部アーム13、23とを独立して往復回転させることでも、推進機構110、130に推進運動と往復運動を繰り返させて走行することができる。また、回転駆動部がサーボモータ153、163であることで、自在に回転速度、回転角度、回転範囲を設定することが可能である。このため、前部アーム12、22及び後部アーム13、23の回転速度、回転角度、回転範囲を調整して、推進運動におけるストローク量や、板バネ14、24による壁面P1の押圧力を設定することができる。
(第4の実施形態)
図31から図37は、この発明に係る第4の実施形態を示している。この実施形態において、前述した実施形態で用いた部材と共通の部材には同一の符号を付して、その説明を省略する。
図31及び図32に示すように、この実施形態の管内走行装置200は、駆動ユニットとして、フレーム101と、対をなす推進機構210、220を有する推進手段201と、推進機構210、220を駆動する駆動機構230、240とを備える。推進機構210は、前部アーム211及び後部アーム212と、前端213aが前部アーム211の先端211aに、後端213bが後部アーム212の先端212aにそれぞれ回転可能に取り付けられた板バネ213とを備える。推進機構220も同様に、前部アーム221及び後部アーム222と、板バネ223とを備える。推進機構210、220の前部アーム211、221同士は、フレーム101の前端部101aにおいて、中心軸L上の回転中心O1でそれぞれ回転可能に軸着されている。また、前部アーム211、221は、回転中心O1よりもさらに基端側へ、それぞれ略等しい長さだけ延出されたリンク部211b、221bを有している。同様に、後部アーム212、222同士は、フレーム101の後端部101bにおいて、中心軸L上の回転中心O2でそれぞれ回転可能に軸着されている。また、後部アーム212、222は、回転中心O2よりもさらに基端側へ、それぞれ略等しい長さだけ延出されたリンク部212b、222bを有している。
また、駆動機構230は、回転駆動部であり、往復回転可能な駆動ギア231aを有するサーボモータ231と、中心軸L上に延設された直動軸232とを備える。直動軸232には、送りネジ232aが形成されており、サーボモータ231の駆動ギア231aと噛み合っている。また、駆動機構230は、一端233a、234aが推進機構210、220の各前部アーム211、221の基端211c、221cにそれぞれ回転可能に取り付けられた二つの揺動部材233、234を備える。揺動部材233、234は、他端233b、234bにおいて、互いに回転可能に取り付けられている。そして、揺動部材233、234の部材長は、前部アーム211、221のリンク部211b、221bと略等しく設定されており、揺動部材233、234と、リンク部211b、221bとで、パンタグラフが構成されている。すなわち、サーボモータ231を駆動することによって、駆動ギア231aが往復回転するのに伴って、直動軸232は進行方向Aに進退することが可能であり、直動軸232が進出することによって、揺動部材233、234の他端233b、234bを押圧し、前部アーム211、221をそれぞれ側方Sへ回転させることが可能である。また、図33に示すように、直動軸232を後退させることによって、前部アーム211、221は、対応する板バネ213、223の復元力が作用して、先端がフレーム101に対して前方Fへ配設された状態まで回転することが可能である。
同様に駆動機構240も、駆動ギアを有するサーボモータ241と、中心軸L上に延設され、送りネジが形成されるとともに、サーボモータ241の駆動ギアと噛み合う直動軸242を備える。また、後部アーム212、222の基端212c、222cには、それぞれ略等しい部材長を有する揺動部材243、244の一端243a、244aが回転可能に取り付けられており、揺動部材243、244同士も他端243b、244bで回転可能に取り付けられている。すなわち、サーボモータ241を駆動することによって、直動軸242は進行方向Aに進退することが可能であり、これによって後部アーム212、222を先端がフレーム101に対して後方Bへ配設された状態から側方Sへ配設された状態まで往復回転させることが可能である。このため、駆動機構230、240を駆動させることにより、各推進機構210、220の前部アーム211、221及び後部アーム212、222を協働して往復回転させて、推進運動及び往復運動を繰り返して走行することが可能である。
また、図34に示すように、各駆動機構230、240のサーボモータ231、241には、それぞれ回転角度を検出可能なエンコーダ231b、241bが設けられている。サーボモータ231、241及びエンコーダ231b、241bは、それぞれモータ制御回路6に接続されている。このため、サーボモータ231、241は、エンコーダ231b、241bの検出結果に基づいて、モータ制御回路6の制御で、各々独立して回転速度、回転範囲を設定して回転駆動することが可能である。
また、図31及び図34に示すように、推進機構210、220及び駆動機構230、240の構成部材には、各構成部材に生じる歪みを検出可能な壁反力検出センサ202が設けられている。より詳しくは、壁反力検出センサ202は、推進機構210、220において、前部アーム211、221の各先端211a、221a、並びに、後部アーム212、222の各先端222a、222aにそれぞれ設けられたアーム部センサ203と、駆動機構230、240の直動軸232、242に設けられた軸部センサ204とで構成されている。図34に示すように、これらの壁反力検出センサ202での検出結果は、センサ信号処理回路205で信号化され、通信回路6aを介して制御装置40へ送信することが可能である。制御装置40へ送信された壁反力検出センサ202の検出結果は、バス42を介してCPU43に入力され、CPU43は、この検出結果に基づいて、駆動ユニットの各推進機構210、220が最適な押圧力で壁面P1を押圧して推進運動を行うことができるように、サーボモータ231、241を制御することが可能である。以下、壁反力検出センサ202の検出結果に基づく制御の詳細について説明する。
図35に示すように、推進運動時において、推進機構210、220の板バネ213、223は、前部アーム211、221と後部アーム212、222との位置関係に応じて、張り出し量Tで側方Sへ張り出す。図36に示すように、各推進機構210、220の張り出し量Tは、それぞれ、前部アーム211、221の回転角度θFと、後部アーム212、222の回転角度θBとの回転角度の和f(θF、θB)に応じて大きくなる。そして、管路Pの半径Rpよりも張り出し量Tが大きくなることで、その差分だけ板バネ213、223に弾性的に撓みεが生じて壁面P1を押圧し、また、その反力が推進機構210、220に伝達されて、各構成部材の歪みとして壁反力検出センサ202で検出される。なお、壁反力検出センサ202が、アーム部センサ203と、軸部センサ204とで構成されていることで、四方に作用する押圧力を詳細に解析することが可能である。
すなわち、図37に示すように、制御装置40のCPU43は、壁反力センサ202の検出結果に基づいて、板バネ213、223の撓みεを算定する。そして、CPU43は、この撓みεが予め設定された上限値εmaxよりも大きい場合(例えば、図36において、回転角度の和f2で、撓みε2が生じている場合)には、壁面P1に作用する押圧力が必要以上に大きいと判断して、モータ制御回路6を介してサーボモータ231、241を制御して、撓みεが上限値εmax以下となるように、回転角度の和f(θF、θB)を小さくさせる。さらに、撓みεが予め設定された下限値εminよりも小さい場合(例えば、図36において、回転角度の和f1で、撓みε1が生じている場合)には、押圧力が小さくて適切な推進力を与えることができないので、モータ制御回路6を介してサーボモータ231、241を制御して、撓みεが下限値εmin以上となるように、回転角度の和f(θF、θB)を大きくさせる。
以上のように、推進運動時に壁反力検出センサ202で検出される推進機構210、220及び駆動機構230、240の各構成部材に生じる歪みに基づいて、板バネ213、223の撓みεを算定し、この撓みεが所定の範囲となるように回転角度の和f(θF、θB)を調整することで、壁面P1を押圧する力を最適なものとして効率良くフレーム101に推進力を与えて走行することができる。
なお、壁反力センサ202は、推進機構210、220及び駆動機構230、240にアーム部センサ203及び軸部センサ204として複数設けられるものとしたがこれに限るものではない。推進機構210、220または駆動機構230、240の構成部材の少なくとも一つ設けられていれば、検出結果に基づいて撓みεを算定することが可能である。また、壁反力検出センサ202は、歪みセンサであるとしたが、応力を検出可能なものとしても良い。さらには、壁反力センサ202に代わって、回転駆動部であるサーボモータ231、241の電流値を検出する電流計などの電流検出手段を備えるものとしても良い。サーボモータ231、241のトルクは、壁面P1からの反力が増大することによって大きくなるので、これと対応して電流値も大きくなる。このため、サーボモータ231、241の電流値を検出することによっても同様の効果を期待することができる。
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
なお、各実施形態においては、推進機構の前部アーム及び後部アームの回転範囲、位相差について具体例を示したが、これらは各種設定可能なものである。また、駆動ユニットと制御装置は、ケーブルによって接続されているものとしたが、別途通信手段を設けて無線によって送受信可能なものとしても良い。また、駆動ユニットに搭載されたモータ制御回路のみで、予め設定された走行速度で自動的に走行するものとしても良い。また、推進機構の当接部材である板バネには、当接部としてゴムで形成された摩擦板が設けられているものとしたが、これに限るものでは無い。壁面に板バネを押圧した際に、板バネに効果的に摩擦力を作用させることが可能なものであれば良く、例えば、板バネの壁面と相対する面に粗面が形成されているなど、摩擦力を増大させる滑り止め処理が施されていれば良い。