JP2007276204A - 金属板貼合せ成形加工用フィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】優れた成形加工性を有し、ラミネート後の光沢感、レトルト後外観、ゴールド発色性に優れた金属板貼合せ成形加工用フィルムを提供する。
【解決手段】ポリエステルA層およびこれと接するポリエステルB層からなり、ポリエステルA層はエチレンテレフタレート単位を主体とするポリエステル(a)からなる面配向係数が0.155以上の層であり、ポリエステルB層はブチレンテレフタレート単位を主体とするポリエステル(b1)30〜70重量%およびエチレンテレフタレート単位を主体とするポリエステル(b2)30〜70重量%からなるポリマー合計100重量部に着色剤を0.1〜5.0重量部配合した樹脂組成物からなる層であり、色差計で測定されるフィルムのa*値が−30〜20、b*値が20〜70であることを特徴とする金属板貼合せ成形加工用フィルム。
【選択図】なし

Description

本発明は、ポリエステルからなる金属板貼合せ成形加工用フィルムに関する。
金属缶には内外面の腐蝕防止として一般に塗装が施されているが、最近、工程簡素化、衛生性向上、公害防止の目的で、有機溶剤を使用せずに防錆性を得る方法の開発が進められ、その一つとして熱可塑性樹脂フィルムによる被覆が試みられている。すなわち、ブリキ、ティンフリースチール、アルミニウム等の金属板に熱可塑性樹脂フィルムをラミネートした後、絞り加工等により製缶する方法の検討が進められている。
一方、缶の外観上に高級感を与えるためにゴールド色に発色する塗料が現在でも広く使用されており、これを着色フィルムのラミネートで代替する提案がなされているが、多くの課題がある。例えば特開2001−301025号公報においては、エチレンテレフタレートを主たる構成成分とした着色ポリエステルフィルムが開示されているが、フィルムの融点が高いことから金属板上への良好な密着性を得られるラミネートが難しく、また成形性が低い浅搾り缶程度しか用いることが出来ず、最も広く普及している飲料缶のような成形加工度の高い用途には適応が出来ないという問題があった。また、着色ポリエステル樹脂からなる単層フィルムの場合、着色剤によっては、製罐後のレトルト殺菌処理時に着色剤が容易にブリードアウトし外観を損なうだけでなく、特に容器内面側にラミネートする場合は安全性に問題が生じる可能性があった。さらに、特開2003−26823号公報においては、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」ということがある)を共重合化し、低融点化、低結晶化することにより、熱ラミネート性と成形性の良好な着色ポリエステルフィルムが開示されているが、ラミネート時に溶融して非晶化したフィルムがレトルト殺菌処理時に結晶化して白化し美観を損なうという問題があった。これに対して、本発明者らは、ポリエチレンテレフタレートまたはこれを主体とするポリエステルと、ポリブチレンテレフタレートまたはこれを主体とするポリエステルよりなる着色フィルムを考案している(特開2004−148627号公報、特開2005−314542号公報)。
特開2001−301025号公報 特開2003−26823号公報 特開2004−148627号公報 特開2005−314542号公報
このフィルムは比較的低温で熱圧着でき、しかも得られたラミネート金属板は加工性に優れる。また、結晶化速度が速いため、レトルト殺菌処理時にフィルムが結晶化して白化し美観を損なうこともなかった。しかしこのフィルムは表面が柔らかく、ラミネートの熱圧着時にラミネートロール上の付着物やキズを転写してしまうために、フィルム表面に凹凸が生じラミネート金属板の光沢感が損なわれるという問題があった。また、製罐後のレトルト殺菌処理時にフィルム中のオリゴマーが容易に表面に析出し、さらに缶の外観を損ねるという問題もあった。
従って従来の技術では高度な成形加工性を有し、かつラミネート金属板の光沢性、レトルト後の外観やゴールド発色性、着色剤ブリードアウト耐性のすべてを満足するものはなかった。
本発明の目的は、優れた成形加工性を有し、光沢性、レトルト後外観やゴールド発色性、着色剤ブリードアウト耐性等に優れた金属缶、例えば飲料缶、食品缶等を製造し得る金属板貼合せ成形加工用フィルムを提供することにある。
すなわち本発明は、ポリエステルA層およびこれと接するポリエステルB層からなり、
ポリエステルA層はエチレンテレフタレート単位を主体とするポリエステル(a)からなる面配向係数が0.155以上の層であり、ポリエステルB層はブチレンテレフタレート単位を主体とするポリエステル(b1)30〜70重量%およびエチレンテレフタレート単位を主体とするポリエステル(b2)30〜70重量%からなるポリマー合計100重量部に着色剤を0.1〜5.0重量部配合した樹脂組成物からなる層であり、色差計で測定されるフィルムのa*値が−30〜20、b*値が20〜70であることを特徴とする金属板貼合せ成形加工用フィルムある。
本発明によれば、優れた成形加工性を有し、光沢性、レトルト後外観やゴールド発色性、着色剤ブリードアウト耐性等に優れた金属缶、例えば飲料缶、食品缶等を製造し得る金属板貼合せ成形加工用フィルムを提供することができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の金属板貼合せ成形加工用フィルムは、ポリエステルA層およびこれと接するポリエステルB層からなる。
[ポリエステルA層]
ポリエステルA層はエチレンテレフタレート単位を主体とするポリエステル(a)からなる。このポリエステルA層の面配向係数は0.155以上、好ましくは0.158以上、さらに好ましくは0.160以上である。面配向係数が0.155未満であると製罐後のレトルト殺菌処理時にフィルム中のオリゴマー成分が容易にフィルム表面に析出し、缶の外観が損なわれる。
面配向係数は、アッベ式屈折計を用いナトリウムD線に対するフィルム長手方向の屈折率nMD、巾方向の屈折率nTD、厚み方向の屈折率nZを室温23℃で測定し、下式より求められた値である。なお、封入液にはジヨードメタン、光源にはナトリウムランプを用いる。
Figure 2007276204
[ポリエステルB層]
ポリエステルB層はブチレンテレフタレート単位を主体とするポリエステル(b1)およびエチレンテレフタレート単位を主体とするポリエステル(b2)からなるポリマー組成物に着色剤を配合した樹脂組成物からなる層である。
このポリマー組成物は、ブチレンテレフタレート単位を主体とするポリエステル(b1)30〜70重量%、好ましくは40〜60重量%、およびエチレンテレフタレート単位を主体とするポリエステル(b2)70〜30重量%、好ましくは60〜40重量%からなる。
ブチレンテレフタレート単位を主体とするポリエステル(b1)が30重量%未満で、エチレンテレフタレート単位を主体とするポリエステル(b2)が70重量%を超えると、フィルムの最短半結晶化時間が長くなりすぎ、レトルト処理後の外観が斑点状に乳白色に変色し易い。なお、ブチレンテレフタレートを主体とするポリエステル(b1)とエチレンテレフタレートを主体とするポリエステル(b2)は、製膜前までに溶融混練させていることが望ましい。
[エチレンテレフタレート単位を主体とするポリエステル(a)、(b2)]
本発明におけるポリエステルA層のエチレンテレフタレート単位を主体とするポリエステル(a)およびポリエステルB層のエチレンテレフタレート単位を主体とするポリエステル(b2)は、テレフタル酸をジカルボン酸成分、エチレングリコールをジオール成分としてなるポリエステルである。これらのポリエステルには、本発明の効果が損なわれない範囲、例えば全ジカルボン酸成分100モル%に対して例えば20モル%以下の割合で他の成分を共重合してもよい。すなわち「主体」とは例えば80モル%以上の構成成分を意味する。
共重合成分はジカルボン酸成分でもジオール成分でもよい。共重合に用いることのできるジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の如き芳香族ジカルボン酸や、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸等の如き脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸の如き脂環族ジカルボン酸等を例示することができる。また共重合に用いることのできるジオール成分としては、ブタンジオール、ヘキサンジオール等の如き脂肪族ジオール、シクロヘキサンジメタノールの如き脂環族ジオールを例示することができる。これらは単独で用いてもよく、また二種以上を用いてもよい。
共重合成分の割合は、結果としてポリマー融点が210〜256℃、好ましくは215〜256℃、さらに好ましくは220〜256℃の範囲になる割合である。ポリマー融点が210℃未満では、ポリエステルとしての結晶性が低く、結果としてフィルムの耐熱性が低下する。他方、ポリマー融点が256℃を越えると、ポリマーの結晶性が大きすぎて成形加工性が損なわれる。
エチレンテレフタレート単位を主体とするポリエステル(a)およびエチレンテレフタレート単位を主体とするポリエステル(b2)の固有粘度は、好ましくは0.50〜0.80、さらに好ましくは、0.54〜0.70、特に好ましくは0.57〜0.65である。固有粘度が0.50未満では実用に供することのできる機械的強度を有したフィルムが得られず、0.80を超えると成形加工性が損なわれる。
なお、ポリエステルの融点は、示差走査熱量計TA Instruments mDSCを用い、昇温速度20℃/分で融解ピークを求める方法により得られる融点である。サンプル量は約10mgとする。また、ポリエステルの固有粘度は、o−クロロフェノールに溶解後、35℃での測定から求めた値である。
[ブチレンテレフタレート単位を主体とするポリエステル(b1)]
本発明において、ポリエステルB層のブチレンテレフタレート単位を主体とするポリエステル(b1)は、テレフタル酸をジカルボン成分、1,4−ブタンジオールをジオール成分としてなるポリエステルである。このポリエステルは、好ましくは固相重縮合反応されたものを用いる。
ブチレンテレフタレート単位を主体とするポリエステルには、本発明の効果が損なわれない範囲、例えば全ジカルボン酸成分100モル%に対して20モル%以下の割合で他の成分を共重合してもよい。すなわち「主体」とは例えば80モル%以上の構成成分を意味する。共重合成分はジカルボン酸成分でもジオール成分でもよい。共重合ジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の如き芳香族ジカルボン酸や、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸等の如き脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸の如き脂環族ジカルボン酸等を例示することができる。これらの中、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジガルボン酸またはアジピン酸が好ましい。また共重合ジオール成分としては、エチレングリコール、ヘキサンジオール等の如き脂肪族ジオール、シクロヘキサンジメタノールの如き脂環族ジオールを例示することができる。これらは単独で用いてもよく、また二種以上を用いてもよい。
共重合成分の割合は、結果としてポリマー融点が180〜223℃、好ましくは200〜223℃、更に好ましくは210〜223℃の範囲になる割合である。ポリマー融点が180℃未満ではポリエステルとしての結晶性が低く、結果としてフィルムの耐熱性が低下する。なお、ポリブチレンテレフタレートホモポリマーの融点は223℃であることから、223℃が融点の上限となる。
ブチレンテレフタレート単位を主体とするポリエステル(b1)の固有粘度は、好ましくは0.60〜2.00、さらに好ましくは0.80〜1.70、特に好ましくは0.85〜1.50である。この固有粘度が0.6未満であると実用に供することのできる機械的強度を有したフィルムが得られず好ましくない。また、原料ポリエステル樹脂及びフィルムの生産性の面で、固有粘度の上限は2.0であることが好ましい。
[フィルムの色調]
本発明の金属板貼合せ成形加工用フィルムは、色差計により測定した色調が、好ましくはa*値が−30〜20、b*値が20〜70である色調、さらに好ましくはa*値が−20〜10、b*値が40〜70である色調を有する。b*値が20未満であると着色性に乏しく、金属ラミネート後に良好なゴールド発色性が得られない。70を超えると着色剤の分散状態が悪化し、製膜性が低下し易く好ましくない。a*値およびb*値をこの範囲とすることで金属ラミネート後に外観上高級感のあるゴールド発色性を持たせることができる。なお、カラー測定はJIS Z−8722に基づき、分光式自動色差計を用いて、白板反射法により測定される。
本発明の金属板貼合せ成形加工用フィルムは、125℃で90分間のレトルト処理をした前後での色差(ΔE*)が、好ましくは5以下、さらに好ましくは3以下である。また、200℃で1分間の乾熱処理をした前後での色差が、好ましくは3以下、さらに好ましくは2以下である。125℃で90分間のレトルト処理をした前後での色差が5を超える場合、その原因としてはレトルト中のフィルム白化や顔料ブリードアウトの発生が考えられる。200℃で1分間の乾熱処理をした前後での色差が3を超える場合、その原因としてはフィルム中の顔料の変性やブリードアウトが考えられる。どちらの場合も、ラミネート後に所望の色調や金属光沢感が得られないだけでなく、特に容器内面側にラミネートする場合には安全性に問題が生じるので好ましくない。
[着色剤]
この色調および色差を得るために、本発明においてポリエステルB層は、上記ポリマー組成物の合計100重量部に対して着色剤を0.1〜5.0重量部、好ましくは0.3〜1.0重量部配合した樹脂組成物からなる。
特に高温下やレトルト下の使用で好適に使用するためには、フィルムに添加する着色剤の耐熱性が重要であり、例えば300℃での熱質量変化率が5%以下である着色剤を用いることが好ましい。この着色剤として、有機顔料および無機顔料のいずれも用いることができるが、フィルムの透明性の観点から、有機顔料を用いることが好ましい。有機顔料としては、例えばアンスラキノン系、イソインドリノン系、ベンズイミダゾロン系、キノフタロン系、縮合アゾ系を用いることができる。
色調を調整するために、上記以外の着色成分を併用してもよいが、その場合には耐熱性の良好なものを用い、食品衛生面での安全性が認められているものを用いる。
着色剤は、原料樹脂の重合工程にて添加してもよいし、高濃度のマスターチップをニ軸押出機を用いて製造しておき、着色剤未含有のチップと混合することにより所望の濃度の着色剤を含有する樹脂組成物を得てもよい。また、例えばスクリューフィーダーを用いて、製膜工程の押出機に着色剤を粉体のままで直接含有させてもよい。
[微粒子]
本発明の金属缶貼合せ成形加工用フィルムは、フィルム製造工程における取扱い性、特に巻取り性を改良するため、好ましくは微粒子を配合する。この微粒子は、平均粒径2.5μm以下、好ましくは0.01〜1.8μmの微粒子である。この微粒子をポリマー100重量部に対して、好ましくは0.01〜1重量部、さらに好ましくは0.01〜0.5重量部含有させるとよい。
微粒子は無機微粒子、有機微粒子のいずれを用いてもよいが、好ましくは無機微粒子を用いる。無機微粒子としては、シリカ、アルミナ、二酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸バリウムを例示することができる。有機微粒子としては架橋ポリスチレン粒子、架橋シリコーン樹脂粒子が例示できる。
微粒子の平均粒径は、好ましくは2.5μm以下である。2.5μmを超えると成形加工により変形した部分の粗大粒子(例えば10μm以上の粒子)が起点となりピンホールを生じたり、場合によっては破断することもあり好ましくない。特に、耐ピンホール性の点で好ましい微粒子は、平均粒径が2.5μm以下であると共に、粒径比(長径/短径)が1.0〜1.2である単分散微粒子である。このような微粒子としては、真球状シリカ、真球状二酸化チタン、真球状ジルコニウム、真球状架橋シリコーン樹脂粒子を例示することができる。
[フィルム硬度]
本発明の金属缶貼合せ成形加工用フィルムは、最外層となるポリエステルA層の室温におけるフィルム硬度Hが18mgf/μm以上、好ましくは20mgf/μm以上である。室温におけるA層のフィルム硬度Hが18mgf/μm未満であるとフィルムを金属板に熱圧着する際にラミネートロールの付着物やキズがフィルムに転写し、フィルム表面に凹凸を生じさせるためにラミネート金属板の光沢感が損なわれて好ましくない。
なお、ポリエステルA層の硬度Hは、超微小押し込み硬さ試験機ENT−1100aを用い、室温において、500mgfの試験荷重での押し込み深さhμmより下記の式で求めた値である。
Figure 2007276204
[最短半結晶化時間]
本発明において、金属缶貼合せ成形加工用フィルムを構成する樹脂組成物の最短半結晶化時間は、好ましくは1〜100秒、さらに好ましくは1〜80秒、特に好ましくは1〜50秒である。最短半結晶化時間が1秒未満であると結晶性が上がり過ぎるため製膜性が悪化し好ましくない。他方、最短結晶化時間が100秒を超えるとレトルト処理後の外観が斑点状に乳白色に変色するため好ましくない。
なお、ここでいう最短半結晶化時間とは、樹脂の結晶化が生じる温度範囲で半結晶化時間を測定し、該温度範囲の中で最も短かった半結晶化時間であり、ポリマー結晶化速度測定装置(コタキ製作所(株)製、MK−801型)を用いて、直交した偏光板の間に置いた試料の結晶化に伴い増加する光学異方性結晶成分による透過光を各試料温度で測定(脱偏光強度法)し、下記のアブラミ式を用いて結晶化度が1/2となる時間を算出した各試料温度での値の中で最も短い時間である。
測定にあたり試料(試料重量:8mg)は該装置に組み込まれた融解炉で樹脂の最高融点+50℃の温度で窒素中で1分間加熱後、直ちに試料を移動させて、結晶化浴中に浸漬し、10秒以内に試料温度を平衡な測定温度になるようにして測定を開始する。
また、ここでの最高融点とは示差走査熱量計(TA Instruments mDSC型)により20℃/分の昇温速度で昇温した時、1つあるいは2つ以上の吸熱ピークが認められるが、それらの吸熱ピークの最大深さを示す温度の中で最高の温度をいう。該脱偏光強度法は、新実験化学講座(丸善)および高分子化学Vol.29.No.139、323および336(高分子学会)にも記載されているように、早い結晶化速度を測定する時に有効な方法である。
なお、試料が熱平衡に達するまでの時間を考慮し、結晶化浴中に試料を移動して10秒経過した時点をt=0秒として測定した。t=0秒で測定した脱偏光透過強度がIo、Logtに対して脱偏光透過強度をプロットして結晶化温度曲線が直線になりはじめた点の脱偏光透過強度をIgとする。
Figure 2007276204
本発明において最短半結晶化時間を上記の範囲とするためには、例えば、ポリエステルのCOOH末端量を以下のようにコントロールするとよい。すなわち、フィルムの最短半結晶化時間は、COOH末端量に大きく関係する。COOH末端量を以下のように適切にコントロールされていないポリエステルでは、ポリマー溶融時の滞留時間を長くしたり滞留温度を高くするとポリマーが熱分解により劣化するという弊害が発生する。
ブチレンテレフタレート単位を主体とするポリエステル(b1)のCOOH末端量は、好ましくは10〜70当量/トンであり、エチレンテレフタレート単位を主体とするポリエステル(a)およびエチレンテレフタレートを主体とするポリエステル(b2)のCOOH末端量は、好ましくは10〜50当量/トンである。この範囲であると最短半結晶化時間を本発明の範囲に制御することができ好ましい。
ブチレンテレフタレート単位を主体とするポリエステル(b1)のCOOH末端量が10当量/トン未満であると、必要な最短半結晶化時間が長くなり過ぎてポリマーの劣化によるフィルムの製膜性が低下し易くなり、またレトルト処理後の外観が斑点状に乳白色に変色するため好ましくない。他方、COOH末端量が70当量/トンを超えるものは最短半結晶化時間が短くなり過ぎて、製膜工程中、特に延伸工程中で結晶化を起こしてしまい、局所的な厚み斑や幅変動の原因となり製膜性が低下し易く好ましくない。
エチレンテレフタレート単位を主体とするポリエステル(a)およびエチレンテレフタレートを主体とするポリエステル(b2)のCOOH末端量が10当量/トン未満であると、かかる最短半結晶化時間が長くなり過ぎて、ポリマーの劣化によるフィルムの製膜性が低下し易くなり、またレトルト殺菌処理後の外観が斑点状に乳白色に変色するため好ましくない。他方、COOH末端量が50当量/トンを超えるものは最短半結晶化時間が短くなり過ぎて、製膜工程中、特に延伸工程中で結晶化を起こしてしまい、局所的な厚み斑や幅変動の原因となり製膜性が低下し易く好ましくない。
なお、COOH末端量は、セイワ技研製COOH自動測定装置を用い、サンプル100mgにベンジルアルコール20mgを加え、窒素雰囲気下にて200℃で4分間加熱した後常温に冷却し、フェノールレッドを指示薬として0.02N水酸化ナトリウムベンジルアルコール溶液を滴下して指示薬変色までの滴定量より下記式を用いて求められる。
COOH末端量(当量/トン)=滴定量(cc)×200
[厚み]
ポリエステルB層からの着色剤ブリードアウト防止性の効果を発揮するために、ポリエステルA層の厚みは好ましくは0.5〜5μm、さらに好ましくは1〜5μmであり、ポリエステルB層の厚みは好ましくは5〜50μmである。
本発明の金属板貼合せ成形加工用フィルムの全体厚みは、好ましくは6〜55μm、さらに好ましくは8〜45μm、特に好ましくは10〜30μmである。全体厚みが6μm未満であると成形加工時に破れ等が生じやすくなり好ましくなく、55μmを超えると過剰品質であって不経済であり好ましくない。
[ラミネート]
本発明の金属板貼合せ成形加工用フィルムは、製罐後のレトルト殺菌処理時における着色剤のブリードアウトを防ぐために、ポリエステルA層が最外層になるように金属板にラミネートして用いる。
本発明の金属板貼合せ成形加工フィルムが貼合せる対象の金属板、特に製缶用金属板としては、ブリキ、ティンフリースチール、ティンニッケルスチール、アルミニウム等が適切である。金属板へのポリエステルフィルムの貼合せは、例えば下記(ア)、(イ)の方法で行うことができる。
(ア)金属板をフィルムの融点以上に加熱しておいてフィルムを貼合せた後冷却し、金属板に接するフィルムの表層部(薄層部)を非晶化して密着させる。
(イ)フィルムにあらかじめ接着剤をプライマーコートしておき、この面と金属板を貼合せる。接着剤としては公知の樹脂接着剤、例えばエポキシ系接着剤、エポキシ−エステル系接着剤、アルキッド系接着剤等を用いることができる。また、この接着剤に白色顔料や黄色顔料を分散させることにより着色外観を有するフィルムとすることもできる。
[製造方法]
まず、本発明で用いるエチレンテレフタレートを主体とするポリエステル(a)、ブチレンテレフタレート単位を主体とするポリエステル(b1)およびエチレンテレフタレートを主体とするポリエステル(b2)は、従来公知の方法で製造することができる。例えば、テレフタル酸、エチレングリコールおよび共重合成分をエステル化反応させ、次いで得られる反応生成物を重縮合反応させて共重合ポリエステルとする方法、或いはジメチルテレフタレート、エチレングリコールおよび共重合成分をエステル交換反応させ、次いで得られる反応生成物を重縮合反応させて共重合ポリエステルとする方法で製造することができる。必要に応じて、他の添加剤、例えば蛍光増白剤、酸化防止剤、熱安定剤、帯電防止剤を配合してもよい。
本発明の金属板貼合せ成形加工用フィルムは、上記のポリエステルを用いて、従来公知の共押出製膜法に準拠して製造することができる。まず、前述の各ポリエステル原料を必要に応じて乾燥した後、複数台の押出し機、複数層のマルチマニホールドダイ又はフィードブロックを使用し、それぞれのポリエステルを積層してスリット状のダイから溶融シートを押出し、冷却ロールで冷却固化して未延伸シートを得る。この場合、シートの平面性を向上させるため、シートと回転冷却ドラムとの密着性を高める必要があり、静電印加密着法又は液体塗布密着法が好ましく採用される。本発明においては必要に応じ両者を併用してもよい。
本発明の金属板貼合せ成形加工用フィルムは、未延伸フィルムであってもよいが、二軸配向フィルムであることが好ましい。未延伸フィルムは定法により得ることができる。また、二軸配向フィルは、定法で得た未延伸フィルムを二軸方向に延伸して二軸配向する。すなわち、先ず、ロールまたはテンター方式の延伸機により、前記の未延伸シートを長手方向に延伸する。延伸温度は、50〜100℃、好ましくは60〜90℃であり、延伸倍率は2.8〜5.0倍、好ましくは3.0〜4.5倍である。次いで、テンター方式の延伸機により、幅方向に延伸を行う。延伸温度は60〜110℃、好ましくは70〜100℃であり、延伸倍率は3.0〜5.0倍、好ましくは3.2〜4.5倍である。さらに引続き130〜220℃の範囲の温度で20%以内の弛緩下で熱処理を行い、二軸延伸フィルムを得ることができる。
以下、実施例を掲げて本発明をさらに説明する。なお、フィルムの特性は、以下の方法で測定、評価した。
(1)融点
示差走査熱量計TA Instruments製 DSC 2920 Modulated DSCを用い、昇温速度20℃/分で融解ピーク温度を求める方法により測定した。なお、サンプル量は約20mgとした。
(2)固有粘度
フィルムをο−クロロフェノールに溶解後、遠心分離機により酸化チタン等のフィラーを取り除き、35℃の温度にて測定した。なお、固有粘度は未延伸フィルムの値である。
(3)COOH末端量
セイワ技研製COOH自動測定装置を用い、サンプル100mgにベンジルアルコール20mgを加え、窒素雰囲気下にて、200℃で4分間加熱した後、常温に冷却し、フェノールレッドを指示薬として0.02N水酸化ナトリウムベンジルアルコール溶液を滴下して、指示薬変色までの滴定量より下記式を用いて求めた。
COOH末端量(当量/トン)=滴定量(cc)×200
(4)面配向係数
アッベ式屈折計を用い、室温23℃で測定したナトリウムD線に対するフィルム長手方向の屈折率nMD、巾方向の屈折率nTD、厚み方向の屈折率nZより求めた。封入液はジヨードメタン、光源はナトリウムランプを用いた。
(5)フィルム硬度
超微小押し込み硬さ試験機ENT−1100aを用い、室温において、500mgfの試験荷重での押し込み深さhμmより求めた。
(6)最短半結晶化時間
コタキ製作所製ポリマー結晶化速度測定装置MK−801型を用い、サンプル8mgにて40〜150℃の範囲にて測定した。
フィルムサンプルを、230℃に加熱した板厚0.25mmのティンフリースチールの両面に貼合せ、水冷した後、150mm径の円板状に切り取り、絞りダイスとポンチを用いて4段階で深絞り加工し、55mm径の側面無継目容器(以下、缶と略す)を作成した。これらの缶について以下の観察及び試験を行ない、各々下記の基準で評価した。
(7)深絞り加工性
缶の加工状況について観察し、下記の基準で評価した。
○:フィルムに異状なく加工され、フィルムに白化や破断が認められない。
△:缶上部のフィルムに白化が認められる。
×:フィルムの一部にフィルム破断が認められる。
(8)レトルト後外観
前記(7)にて深絞り成形が良好であった缶に水を一杯まで充填した後、レトルト釜に入れ、スチームが直接サンプルに当らないようにして125℃の加圧水蒸気で90分レトルト処理を施し、深絞り缶の底のポリエステル樹脂層の表面外観の変化を肉眼で観察し、下記の基準で評価した。
○:変化なし。
△:やや白濁した。
×:著しく斑点状に乳白色に変化した。
(9)着色剤ブリードアウト耐性
前記(8)と同様の手順でレトルト処理を施し、深絞り缶の底のポリエステル樹脂層をガーゼで軽く拭き、ガーゼの着色度合いを調べ、下記の基準で評価した。
○:ガーゼに着色なし。
△:ガーゼがやや着色した。
×:ガーゼが著しく黄色に着色した。
(10)オリゴマー析出耐性
前記(8)と同様の手順でレトルト処理を施し、深絞り缶のポリエステル樹脂層の表面を肉眼で観察し、析出物の有無を確認し、下記の基準で評価した。
○:オリゴマー析出なし。
△:缶の一部にオリゴマー析出が認められた。
×:缶全面にオリゴマー析出が認められた。
(11)カラー測定
JIS Z 8722に基づき、日本電色工業製自動色差計(SE−Σ90型)を用い、5cm角のサンプル1枚のa*値およびb*値を測定し、下記の基準でフィルム発色性について評価した。なお、測定の際はフィルム押えとして装置に付属の白色板を使用し、反射法で測定し、下記の基準で評価した。
○:a*値が−30〜20、b*値が20〜70
△:a*値が−30〜20、b*値が上記範囲外のもの
×:a*値とb*値が上記範囲外のもの
(12)フィルムのレトルト耐性
5cm角のフィルムサンプルを125℃、90分間レトルト殺菌処理し、処理前後のフィルムについて(11)と同様にL*、a*、b*を測定した。さらに、下記式より色差(ΔE*)を算出し、下記の基準で評価した。
ΔE*={(ΔL*)+(Δa*)+(Δb*)1/2
ΔL*=処理前後でのフィルムのL*の差
Δa*=処理前後でのフィルムのa*の差
Δb*=処理前後でのフィルムのb*の差
○:ΔE*が5以下
△:ΔE*が5〜10
×:ΔE*が10以上
(13)フィルムの耐熱性
5cm角のフィルムサンプルを200℃、1分間乾熱処理し、処理前後のフィルムについて(11)と同様にL*、a*、b*を測定した。さらに、上記(12)と同様に上記式で色差(ΔE*)を算出し、下記の基準で評価した。
○:ΔE*が3以下
△:ΔE*が3〜5
×:ΔE*が5以上
[実施例1〜3]
表1に示すA層とB層のポリエステル組成物を常法により乾燥し、A層を280℃、B層を270℃で別々に溶融した後、フィードブロックを使用して二層に積層し、ダイから押出して冷却固化し、未延伸フィルムを作成した。次いで、この未延伸フィルムを68℃で3.2倍に縦延伸した後、78℃で3.7倍に横延伸し、185℃で熱固定して二軸配向積層フィルムである金属板貼合せ成形加工用フィルムを得た。得られたフィルムの厚みは12μmであった。なお、インドリノンイエローはイソインドリノン系の有機顔料であり、アンスラキノンはアンスラキノン系の有機顔料である。
[比較例1]
表1に示すA層とB層のポリエステル組成物を常法により乾燥し、270℃で個々に溶融した後、フィードブロックを使用して二層に積層し、ダイから押出して冷却固化し、未延伸フィルムを作成した。次いで、この未延伸フィルムを68℃で3.2倍に縦延伸した後、78℃で3.7倍に横延伸し、185℃で熱固定して二軸配向積層フィルムを得た。得られたフィルムの厚みは12μmであった。
[比較例2]
表1に示すA層とB層のポリエステル組成物を常法により乾燥し、280℃で個々に溶融した後、フィードブロックを使用して二層に積層し、ダイから押出して冷却固化し、未延伸フィルムを作成した。次いで、この未延伸フィルムを105℃で3.2倍に縦延伸した後、120℃で3.2倍に横延伸し、210℃で熱固定して二軸配向積層フィルムを得た。得られたフィルムの厚みは15μmであった。
[比較例3]
実施例1において、B層のポリエステル組成物を表1のとおり変更する以外は同様にして製膜を行い、二軸配向積層フィルムを得た。
[比較例4]
実施例1において、A層およびB層の層厚みを表1のとおり変更する以外は同様にして製膜を行ない、二軸配向積層フィルムを得た。
[比較例5]
表1に示すA層とB層のポリエステル組成物を常法により乾燥し、A層を280℃、B層を260℃で別々に溶融した後、フィードブロックを使用して二層に積層し、ダイから押出して冷却固化し、未延伸フィルムを作成した。次いで、この未延伸フィルムを60℃で3.2倍に縦延伸した後、70℃で3.7倍に横延伸し、185℃で熱固定して二軸配向積層フィルムを得た。製膜時横延伸工程において切断が頻発し製膜性は悪かった。
評価結果は表2に示す通りであった。
Figure 2007276204
Figure 2007276204
表2の結果から明らかなように、本発明の金属板貼合せ成形加工用フィルムを使用した缶では、優れた深絞り加工性を有し、ラミネート後の光沢感、レトルト後外観、ゴールド発色性に優れている。
本発明の金属板貼合せ成形加工用フィルムは、清涼飲料水や食缶用などの金属缶の缶胴部や蓋材部に貼合せて用いることができる。

Claims (8)

  1. ポリエステルA層およびこれと接するポリエステルB層からなり、ポリエステルA層はエチレンテレフタレート単位を主体とするポリエステル(a)からなる面配向係数が0.155以上の層であり、ポリエステルB層はブチレンテレフタレート単位を主体とするポリエステル(b1)30〜70重量%およびエチレンテレフタレート単位を主体とするポリエステル(b2)30〜70重量%からなるポリマー合計100重量部に着色剤を0.1〜5.0重量部配合した樹脂組成物からなる層であり、色差計で測定されるフィルムのa*値が−30〜20、b*値が20〜70であることを特徴とする金属板貼合せ成形加工用フィルム。
  2. ポリエステルA層の室温におけるフィルム硬度Hが18mgf/μm以上である、請求項1記載の金属板貼合せ成形加工用フィルム。
  3. ポリエステルA層が最外層となるように用いられる、請求項1記載の金属板貼合せ成形加工用フィルム。
  4. ポリエステルB層の樹脂組成物の最短半結晶化時間が1〜100秒である、請求項1記載の金属板貼合せ成形加工用フィルム。
  5. 着色剤が、アンスラキノン系、イソインドリノン系、ベンズイミダゾロン系、キノフタロン系および縮合アゾ系からなる群から選ばれる少なくとも1種類の有機顔料である、請求項1記載の金属板貼合せ成形加工用フィルム。
  6. 125℃×90分のレトルト処理前後における色差ΔE*が5以下である、請求項1記載の金属板貼合せ成形加工用フィルム。
  7. 200℃×1分の乾熱処理前後における色差ΔE*が3以下である、請求項1記載の金属板貼合せ成形加工用フィルム。
  8. ポリエステルA層の厚みが0.5〜5μm、ポリエステルB層の厚みが5〜50μmである、請求項1記載の金属板貼合せ成形加工用フィルム。
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