JP2007269657A - α−グリセロホスホリルコリン結晶の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】特定の式で表される1,3−ジオキソラン−グリセリルホスホリルコリン化合物の加水開環反応を、カチオン性イオン交換樹脂存在下で行うことを特徴とするα−グリセロホスホリルコリン結晶の製造法を提供する。
【解決手段】特定の式で表される1,3−ジオキソラン化合物と、特定の式で表される2−クロロ−2−オキサ−1,3,2−ジオキサホスホランと、トリメチルアミンとを反応させ、特定の式で表される1,3−ジオキソラン−グリセリルホスホリルコリン化合物を得、これをカチオン性イオン交換樹脂の存在下、水含有溶媒中で加水開環反応をさせた後、水との共沸溶媒存在下で減圧乾燥することにより結晶化させることを特徴とするα−グリセロホスホリルコリン結晶の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、α−グリセロホスホリルコリンの製造法に関する。更に詳しくは、前駆体である前記式(3)で表される1,3−ジオキソラン−グリセリルホスホリルコリン化合物の加水開環反応をカチオン性イオン交換樹脂存在下で行うことを特徴とするα−グリセロホスホリルコリン結晶の製造法に関する。
リン脂質は、生体内に広く分布し、生理的に極めて重要な役割を果たしているものである。また、薬剤のキャリアー、乳化剤、保湿剤等の用途で産業上汎用されており、重要な工業原料である。これらのリン脂質の中間体物質として重要な化合物である、α−グリセロホスホリルコリンの製造方法としては、これまで以下のような方法が知られている。
特許文献1では、トリエチルアミンなどの3級アミンの塩化水素トラップ剤存在下、1、2−イソプロピリデングリセロールを2−クロロ−2−オキサ−1,3,2−ジオキサホスホランとをエチルエーテルなどの非プロトン性溶媒中で縮合させ、発生した塩酸塩を系内から除去後、反応溶媒を留去させて1,2−イソプロピリデン−3−グリセリル−エチレンサイクリックホスフェイトを得る。これをメチレンクロライド中などの非プロトン溶媒中でトリメチルアミンと常温で反応させ、α−1,2−イソプロピリデン−3−グリセリルホスホリルコリンを得、これを塩酸等の無機酸存在下、加水開環反応させる。得られた粗α−グリセロホスホリルコリンをカチオン性イオン交換樹脂のカラムで脱酸および単離、精製した後、エタノール中で結晶化させ、α−グリセロホスホリルコリンを得る方法が知られている。
特許文献2では、ホスホリルコリンテトラメチルアンモニウム塩などのコリンリン酸塩を無水アルコールなどの極性溶媒に溶解させて、(+)−ブロモ−1,2−イソプロピリデングリセロールトシレートと反応させる。生成した塩を濾別し、溶媒を留去後、L−α−1,2−イソプロピリデン−3−グリセリルホスホリルコリンを得る。これを塩酸等の無機酸、または氷酢酸等の有機酸存在下、加水開環反応させる。得られた粗L−α−グリセロホスホリルコリンをカチオン性イオン交換樹脂のカラムで脱酸および単離、精製した後、無水リン酸の存在下、水を減圧留去させ、L−α−グリセロホスホリルコリンを得る方法が知られている。
前記特許文献1,2の製造方法は、前駆体であるα−1,2−イソプロピリデン−3−グリセリルホスホリルコリンもしくはL−α−1,2−イソプロピリデン−3−グリセリルホスホリルコリンの加水開環反応の触媒として、塩酸などの無機酸や氷酢酸などの有機酸を使用している。このような無機酸や有機酸を触媒に用いた場合、反応過程において副生成物が生じ純度が低下することがある、また反応終了後に系内に触媒が残存するため、反応終了後にカチオン交換樹脂カラムを用いて反応過程で生じた副生成物、および触媒を系内から完全に除去して目的物を単離する必要があった。一般的に、反応終了後にカラムを用いる精製法は非効率で操作が繁雑になるので、工業化における大量生産には不適である。また、反応終了後にカラムを用いる精製法は、α−グリセロホスホリルコリンもしくはL−α−グリセロホスホリルコリンがカラムの樹脂に非特異的吸着することがあるため、収率が低下するという問題があった。
さらに、前記特許文献1では、α−グリセロホスホリルコリンの結晶化において、過剰のエタノールを必要とする、結晶化に長時間を有する、結晶化の際に収率が低下する、といった問題があった。
また、前記特許文献2では、前記特許文献1における結晶化における収率の低下を改善すべく、L−α−グリセロホスホリルコリンの結晶化において、脱水剤である無水リン酸の存在下、減圧乾燥させている。しかしながら、単純な減圧乾燥では脱水が困難であり、目的物の脱水に伴う結晶化に長時間を有するといった問題は未だ解決されていなかった。
このように、加水開環反応の触媒として無機酸や有機酸を使用する製造方法は、反応終了後に、反応過程で生じた副生成物、および触媒の除去のため、カラムを用いてα−グリセロホスホリルコリンもしくはL−α−グリセロホスホリルコリンを単離、精製する必要があった。また得られたα−グリセロホスホリルコリンもしくはL−α−グリセロホスホリルコリンのエタノール中での結晶化、および単純な減圧乾燥によって脱水を伴う結晶化は、長時間を有するといった問題があった。したがって、カラム操作による精製過程を行わず、また脱水に伴う結晶化が容易なα−グリセロホスホリルコリンの製法を見出すことが熱望されていた。
欧州特許出願公開第0486100号明細書 特開平5−92982号公報
本発明の目的は、製造過程でカラム操作を行わず高純度のα−グリセロホスホリルコリン結晶が得られ、また容易に脱水に伴う結晶化を達成できるα−グリセロホスホリルコリン結晶の製造法を提供することにある。
このような状況を鑑み、発明者らは前記問題点を解決するべくα−グリセロホスホリルコリン結晶の製造方法について鋭意研究した結果、公知の方法で得た前駆体であるα−1,3−ジオキソラン−グリセリルホスホリルコリンをカチオン性イオン交換樹脂存在下で加水開環反応させた後、水との共沸溶媒存在下で減圧乾燥を行うことにより、カラムによる精製を行わず高純度に、かつ脱水を伴う結晶化が容易に、α−グリセロホスホリルコリン結晶を得られることを見出し、本発明を完成するに到った。
すなわち、本発明は(イ)、および(ロ)に記載される発明である。
(イ)、式(1)で表される1,3−ジオキソラン化合物と式(2)で表される2−クロロ−2−オキサ−1,3,2−ジオキサホスホランとトリメチルアミンとを反応させ、式(3)で表される1,3−ジオキソラン−グリセリルホスホリルコリン化合物を得、これをカチオン性イオン交換樹脂の存在下、水含有溶媒中で加水開環反応をさせた後、水との共沸溶媒存在下で減圧乾燥することで、結晶化させることを特徴とするα−グリセロホスホリルコリン結晶の製造方法。
Figure 2007269657
(式(1)中、R1及びR2は同一であっても異なっても良く、水素原子あるいは炭素数1〜4の飽和炭化水素基を表す。)
Figure 2007269657
Figure 2007269657
(式(3)中、R1及びR2は同一であっても異なっても良く、水素原子あるいは炭素数1〜4の飽和炭化水素基を表す。)
(ロ)、カチオン性イオン交換樹脂が、H+型カチオン性イオン交換樹脂である、前記(イ)項に記載のα−グリセロホスホリルコリン結晶の製造方法。
本発明によれば、カラムによる精製を行わず高収率かつ高純度にα−グリセロホスホリルコリンを得ることができ、また、脱水を伴う結晶化が容易であるため、従来の製造方法よりも容易に高品質のα−グリセロホスホリルコリン結晶を提供することができる。
以下、本発明を更に詳細に説明する。
本発明の製造方法は、式(1)で表される1,3−ジオキソラン化合物と式(2)で表される2−クロロ−2−オキサ−1,3,2−ジオキサホスホランとトリメチルアミンとを反応させ、式(3)で表される1,3−ジオキソラン−グリセリルホスホリルコリン化合物を得、これをカチオン性イオン交換樹脂の存在下、水含有溶媒中で加水開環反応をさせた後、水との共沸溶媒存在下で減圧乾燥することにより結晶化させることを特徴とするα−グリセロホスホリルコリン結晶の製造方法であるが、より詳細には、式(1)で表される1,3−ジオキソラン化合物と式(2)で表される2−クロロ−2−オキサ−1,3,2−ジオキサホスホランを反応して得られる1,3−ジオキソラン−グリセリル−エチレンサイクリックホスフェイト化合物にトリメチルアミンを反応させて式(3)で表される1,3−ジオキソラン−グリセリルホスホリルコリン化合物を得て、これをカチオン性イオン交換樹脂の存在下、水含有溶媒中で加水開環反応をさせた後、水との共沸溶媒存在下で減圧乾燥することで、結晶化させることを特徴とする式(4)で表されるα−グリセロホスホリルコリン結晶の製造方法である。
尚、発明の目的を損なわない範囲で、本発明の製造方法は、一つの反応容器中で連続的に行われても、また何段階かの工程に分けて行われてもどちらでもよい。
Figure 2007269657
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前記式(1)中、R1およびR2は、同一であっても異なってもよく、水素原子あるいは炭素数1〜4の飽和炭化水素基を表す。前記炭素数1〜4の飽和炭化水素基としては、直鎖または分岐鎖構造を有する炭素数1〜4の飽和炭化水素基を用いることができ、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基などが挙げられる。中でも前記式(1)中のR1およびR2は、好ましくは合成のし易さ、入手の容易さの点からは、メチル基が好ましく挙げられる。
前記式(1)で表される化合物の具体例としては、例えば、(R,S)−1,2−イソプロピリデングリセロール、(R,S)−sec−ブチリデングリセロール等が挙げられるが、好ましくは合成のし易さ、入手の容易さの点からは、(R,S)−1,2−イソプロピリデングリセロールが好ましく挙げられる。このような1,3−ジオキソラン化合物としては、特願2005−094963号などで知られる既知の方法により合成したものを用いても良いが、市販品を用いることもできる。
本発明の製造方法に用いられる、前記式(2)で表される2−クロロ−2−オキソ−1,3,2ジオキソホスホランは、R.S.Edmundson.,Chem.Ind.,(London),1962,1828(1962)などで知られる既知の方法により合成したものを用いても良いが、市販品を用いることもできる。式(2)で表される2−クロロ−2−オキソ−1,3,2−ジオキソホスホランの使用量は、前記式(1)で表される1,3−ジオキソラン化合物に対してモル比で0.5〜2倍量であり、好ましくは0.8〜1.5倍量であり、最も好ましくは1〜1.1倍量である。ここで、式(2)で表される化合物の量が、式(1)で表される1,3−ジオキソラン化合物に対してモル比で1倍量より少ない場合は、高い反応転化率が達成できない。また、式(2)で表される化合物の量が、式(1)で表される1,3−ジオキソラン化合物に対してモル比で2倍量より多い場合は、更なる反応転化率の向上が達成できず、反応転化率の向上に寄与しない余剰分の式(2)で表される化合物が無駄になる。
本発明の製造法において、前記式(1)と前記式(2)で表される化合物との反応に用いられる溶媒としては、一般に非プロトン性溶媒であれば特に限定されないが、例えば、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、酢酸エチル、塩化メチレン、アセトニトリル等が好ましく挙げられ、化合物の溶解性、化合物の反応性の点からテトラヒドロフランが最も好ましく挙げられる。非プロトン性溶媒の使用量は、前記式(1)で表される1,3−ジオキソランに対して重量比で1〜20倍量であり、好ましくは2〜15倍量であり、最も好ましくは4〜10倍量である。
本発明の製造法において、前記式(1)と前記式(2)で表される化合物との反応に用いられる塩化水素トラップ剤としては、トリエチルアミン、ピリジン、4−メチルアミノピリジン、ジイソプロピルアミン、ジシクロヘキシルアミン等が用いられ、より好ましくはトリエチルアミン、ジイソプロピルアミンが用いられる。前記、塩化水素トラップ剤の使用量は、式(2)で表される2−クロロ−2−オキソ−1,3,2−ジオキソホスホランに対してモル比で1〜10倍量であり、好ましくは1〜2倍量である。このとき塩化水素トラップ剤の使用量が、式(2)で表される2−クロロ−2−オキソ−1,3,2−ジオキソホスホランに対してモル比で1倍量より少ないと、塩化水素を十分にトラップすることができず、またモル比で10倍量より多くても、更なる塩化水素のトラップ量の向上は望めないばかりか、使用する塩化水素トラップ剤の量が大量になることから、取り扱いの困難さを生じ、また反応効率の点からみても効率的ではないという問題がある。
本発明の製造法において、前記式(1)と前記式(2)で表される化合物との反応における反応温度は、通常−50〜50℃、好ましくは−30〜30℃、最も好ましくは−20〜20℃の範囲である。反応温度が−50℃よりも低い場合は、反応に長時間を有する恐れがある。また反応温度が50℃より高い場合、更なる反応速度が望めないうえ、前記式(1)と前記式(2)で表される化合物との反応が発熱反応であるため反応温度の制御が困難となり危険であるため望ましくない。一方、反応時間は、反応温度、濃度などの条件により異なるが、通常1〜12時間程度が好ましい。
以上の前記式(1)と前記式(2)で表される化合物との反応により、下記式(5)で表される1,3−ジオキソラン−グリセリル−エチレンサイクリックホスフェイト化合物を得ることができる。なお、前記の反応においては、反応の副産物として、有機塩基であるハロゲン化水素塩が反応系に生じるが、これは濾過や抽出操作により除去してもよい。
Figure 2007269657
式(5)中、R1及びR2は同一であっても異なっても良く、水素原子あるいは炭素数1〜4の直鎖または分岐鎖構造を有する飽和炭化水素基を表す。前記炭素数1〜4の直鎖または分岐鎖構造を有する飽和炭化水素基としては、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基などが挙げられる。中でも前記式(1)中のR1およびR2は、好ましくは合成のし易さ、入手の容易さの点からは、メチル基が好ましく挙げられる。
本発明の製造方法において、式(5)で表される1,3−ジオキソラン−グリセリル−エチレンサイクリックホスフェイト化合物にトリメチルアミンを反応(開環付加反応)させるにあたっては、開環付加反応を非プロトン性溶媒中で行えばよい。非プロトン性溶媒としては、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、酢酸エチル、塩化メチレン、アセトニトリル等が好ましく挙げられるが、極性が高い溶媒を用いるのが開環付加反応によい点からは、溶媒としてアセトニトリルが最も好ましい。開環付加反応における溶媒の使用量としては、式(5)で表される1,3−ジオキソラン−グリセリル−エチレンサイクリックホスフェイト化合物に対して重量比で1〜20倍量であり、好ましくは2〜15倍量であり、最も好ましくは4〜10倍量である。
本発明の製造法に用いられるトリメチルアミンは、通常N,N−ジメチルメタンアミンとして知られており、一般に市販されているトリメチルアミンを好ましく使用することができる。前記、トリメチルアミンの使用量は、式(5)の1,3−ジオキソラン−グリセリル−エチレンサイクリックホスフェイト化合物に対してモル比で1〜10倍量であり、好ましくは1.5〜8倍量、最も好ましくは2〜5倍量である。このときトリメチルアミンの使用量が、式(5)で表される1,3−ジオキソラン−グリセリル−エチレンサイクリックホスフェイト化合物に対してモル比で1倍量より少ないと、高い反応転化率が達成できない。またモル比で10倍量より多くても、更なる反応転化率の向上が達成できず、反応転化率の向上に寄与しないトリメチルアミンが無駄になる。
本発明の製造方法において、開環付加反応の反応温度は、通常0〜100℃、好ましくは40〜80℃、最も好ましくは60〜80℃の範囲である。一方、反応時間は、反応温度、トリメチルアミンの使用量などの条件により異なるが、通常1〜24時間程度が好ましい。
以上の反応により、前記式(3)で表される1,3−ジオキソラン−グリセリルホスホリルコリン化合物を得ることができる。
式(3)中、R1及びR2は同一であっても異なっても良く、水素原子あるいは炭素数1〜4の直鎖または分岐鎖構造を有する飽和炭化水素基を表し、それぞれ式(1)中の、R1及びR2に同じである。
式(3)で表される1,3−ジキソラン−グリセリルホスホリルコリン化合物は、減圧乾燥、再沈殿、再結晶、カラム、イオン交換、ゲル濾過等の処理により単離、精製した後、前記式(4)で表されるα−グリセロホスホリルコリンの結晶を得るための原料として用いることができる。
本発明の製造方法において、前記式(3)で表される1,3−ジキソラン−グリセリルホスホリルコリン化合物を、カチオン性イオン交換樹脂の存在下に水含溶媒中で加水開環反応させることにより目的物(4)を得ることができる。
本発明の製造方法に用いるカチオン性イオン交換樹脂には、H+型カチオン性イオン交換樹脂と、Na+型カチオン性イオン交換樹脂がある。
前記、H+型カチオン性イオン交換樹脂としては、カルボン酸残基の陽イオンが水素イオン(H+)をもつ、カルボン酸残基を有するH+型カチオン性イオン交換樹脂;スルホン酸残基の陽イオンが水素イオン(H+)をもつ、スルホン酸残基を有するH+型カチオン性イオン交換樹脂;がある。
前記、Na+型カチオン性イオン交換樹脂としては、スルホン酸残基の陽イオンがナトリウムイオン(Na+)をもつ、スルホン酸残基を有するNa+型カチオン性イオン交換樹脂;がある。
前記、カルボン酸残基を有するH+型カチオン性イオン交換樹脂としては、具体的には、ダイヤイオンWKシリーズ(商品名、三菱化学社製)、IRC50、IRC76(商品名、オルガノ社製)等が挙げられる。
前記、スルホン酸残基を有するH+型カチオン性イオン交換樹脂としては、具体的には、アンバーリスト15DRY(商品名、ローム&ハース社製)、アンバーリスト15WET(商品名、ローム&ハース社製)、アンバーリスト31WET(商品名、ローム&ハース社製)、ダウエックス50W(商品名、ダウケミカル社製)、ムロマックXSC−12−338(商品名、ムロマチテクノス社製)、ナフィオンNR50(商品名、デュポン社製)等が挙げられる。
また前記、スルホン酸残基を有するNa+型カチオン性イオン交換樹脂としては、具体的には、ダイヤイオンSKシリーズ(商品名、三菱化学社製)、ダイヤイオンUBKシリーズ(商品名、三菱化学社製)等が挙げられる。
以上のカチオン性イオン交換樹脂のうち、反応速度の速さやの点からは、H+型カチオン性イオン交換樹脂を用いるのがよく、中でもダイヤイオンWKシリーズ、アンバーリスト31WET、ナフィオンNR50を用いるのが好ましい。これらH+型カチオン性イオン交換樹脂を用いる場合、反応速度の速さや反応終了後の濾過等を用いたカチオン性イオン交換樹脂の、除去の容易さの理由からは、スルホン酸残基を有するH+型カチオン性イオン交換樹脂を用いるのがよく、中でもアンバーリスト31WET、ナフィオンNR50が最も好ましい。
尚、Na+型カチオン性イオン交換樹脂を用いる場合は、できれば使用前にイオン交換操作を行い任意のイオン交換率でH+型にした後に用いることが反応速度の速さの点から好ましい。
本発明の製造方法に用いるカチオン性イオン交換樹脂の樹脂の形状は、用いる反応形態、反応条件に応じて選択してよいが、通常、粒子径が100μm〜5mm程度の小粒子の形状、もしくは繊維状の形状ものを使用することができる。
本発明の製造方法において、用いられるカチオン性イオン交換樹脂の使用量は、通常反応系全体に占める割合が、好ましくは0.05〜50質量%、更に好ましくは0.5〜40質量%、最も好ましくは1.0〜30質量%である。ここでカチオン性イオン交換樹脂の量が、反応系全体に対して、0.05質量%より少ない場合は、短時間に高い反応転化率が達成できない場合があることから好ましくない。また、カチオン性イオン交換樹脂の量が反応系全体に対して、50質量%より多い場合は、それ以上添加しても更に反応転化率の向上が期待できない場合がある。
本発明の製造方法において、加水開環反応に用いる水含有溶媒としては、例えば、水単独または、メタノール、エタノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン(THF)、アセトニトリル、アセトン、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルフォキシド、ジメチルアセトアミドなどの水可溶性の溶媒と水との混合溶媒が好ましく挙げられ、化合物の溶解性反応終了後の、留去の容易さの理由から、エタノールと水、イソプロパノールと水との混合溶媒が最も好ましく挙げられる。このとき、水と水可溶性の溶媒との混合比は水1.0倍量に対して0.1〜1.0倍量がよい。水含有溶媒の使用量は、前記式(3)で表される1,3−ジオキソラン−ホスホリルコリン化合物に対して重量比で0.1〜20倍量であり、好ましくは0.5〜10倍量であり、最も好ましくは1〜5倍量である。
本発明の製造方法において、式(3)で表される化合物の加水開環反応における反応温度は、通常0〜100℃、好ましくは10〜50℃、最も好ましくは20〜40℃の範囲である。反応温度が0℃よりも低い場合は、水分が凝固する、および反応に長時間を有する、といった恐れがあるため好ましくない。また反応温度が100℃より高い場合、更なる反応速度が望めないため好ましくない。一方、反応時間は、反応温度、カチオン性イオン交換樹脂の種類、および濃度などの条件により異なるが、通常1〜12時間程度が好ましい。
本発明の製造方法において、加水開環反応させて得られた前記式(3)で表される化合物の結晶は、水との共沸溶媒存在下、減圧乾燥で脱水させることにより、白色粉末固体の結晶として得られる。水との共沸溶媒としては、例えば、エタノール、イソプロパノール、酢酸エチル、酢酸メチル、ブタノール、等が挙げられる。水の留去のし易さの点からはエタノール、もしくはイソプロパノールが特に好ましい。水との共沸溶媒の使用量は、α−グリセロホスホリルコリンに対して好ましくは1〜10倍量用いるのがよい。減圧乾燥による結晶化は、減圧度、温度、および時間は適宜決定すればよいが、通常、減圧度は10mmHg以下、温度範囲は0〜70℃、好ましくは10〜60℃、最も好ましくは20〜50℃の範囲である。尚、減圧乾燥は、公知の方法で行うことができるが、特に真空乾燥器を用いる方法が好ましい。
本発明の製造方法により、前記式(4)で表されるα−グリセロホスホリルコリンの結晶を得ることができる。本発明では、カチオン性イオン交換樹脂を用いて、好ましい条件で製造した場合には、含水量が1.0%以下で、純度が99.0%以上、融点140±5℃好ましくは140±2℃である、α−グリセロホスホリルコリン結晶を簡便に製造することができる。
この際、グリセロホスホリルコリン結晶の含水量は、カールフィッシャー法(三菱社製:カールフィッシャー法自動水分測定装置KF−06)で測定することができる。またグリセロホスホリルコリン結晶の純度は、どのような方法で決定してもよいが、たとえば、薄層クロマトグラフィーによる定量法、即ちGPCの副生成物(1,3−ジオキソラン−グリセリルホスホリルコリン化合物,ホスファチジルコリン,グリセリン,グリセロホスホリック酸ナトリウム塩等)を定量し、差分法により求める方法で定量を行うことができる。融点は、市販の融点測定器または示差走査熱量分析装置(DSC)を用いて測定することができる。
本発明の製造方法で製造したα−グリセロホスホリルコリン結晶は、不純物が少ないため、医薬品や化粧品などの製造ための中間体材料としての用途などに好ましく用いることが出来る。特に、リン脂質合成のための原料として好適に用いることができる。
以下、実施例により本発明の製造方法をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
本発明の製造法において、2−クロロ−2−オキサ−1,3,2−ジオキサホスホランは、シグマ−アルドリッチ社で購入できる。
製造例1
500mLの四つ口フラスコに下記組成式(A)
Figure 2007269657
で表される1,2−イソプロピリデングリセロールを22.2g(168mmol)、トリエチルアミン17.0g(168mmol)およびテトラヒドロフラン250mLを加えて攪拌しながら0℃に冷却した。2−クロロ−2−オキサ−1,3,2−ジオキサホスホラン23.9g(168mmol)をテトラヒドロフラン50mLに溶解し、得られた溶液を前記フラスコに滴下ロートを用いて滴下した。滴下終了後、反応混合物を昇温して室温で2時間反応を継続させた。副生成物として析出したトリエチルアミン塩酸塩を濾別した。得られた濾液およびアセトニトリル300mLを1Lの密栓付き耐圧瓶に移し替え、その耐圧瓶にトリメチルアミン31.5g(672mmol)を加えて密栓し、70℃で20時間反応させた。過剰のトリメチルアミンを留去後、反応液を−20℃で半日放置し結晶を生成させた。生成物を濾過し、アセトニトリル1Lで洗浄し50℃で一晩減圧乾燥させ、下記組成式(B)
Figure 2007269657
で表される1,2−イソプロピリデン−3−グリセリルホスホリルコリンを得た。収量は21.9g(73.7mmol)、収率は44.0%であった。得られた生成物の1H−NMRおよび31P NMRの測定結果を以下に示す。
1H NMR(CD3OD):1.32,1.38(two,s,6H,(CH3)2C),3.22 (s,9H,(CH33N), 3.63(t,2H,CH2N),3.78−4.09(m,5H,CH2CHCH2),4.29(t,2H,POCH2
31P NMR (CD3OD):0.69
実施例1
スクリュー管に製造例1で得られた1,2−イソプロピリデン−3−グリセリルホスホリルコリン10.0g(33.6mmol)を水とエタノールの重量組成比が1.0対0.5である混合溶媒10mLに溶かし、スルホン酸残基を有するH+型カチオン性イオン交換樹脂(ナフィオンNR50、デュポン社製)3gを加え45℃で攪拌した。2時間攪拌反応させた後、イオン交換樹脂を濾別し、反応溶液に適時エタノールを加え、真空乾燥器を用いた減圧乾燥(50℃、1mmHg)により脱水・結晶化させ、前記式(4)で表されるα−グリセロホスホリルコリン結晶を得た。収量は8.2g(31.9mmol)、収率は95.0%であった。1H−NMRおよび31P NMRの測定結果を以下に示す。
1H NMR(CD3OD):3.22 (s,9H,(CH33N),),3.51−3.99(m,7H,CH2N,CH2CHCH2),4.31(t,2H,POCH2
31P NMR (CD3OD):1.03
得られたα−グリセロホスホリルコリン結晶の含水量はカールフィッシャー法(三菱社製:カールフィッシャー法自動水分測定装置KF−06)で0.45%であった。純度は以下に示す薄層クロマトグラフィーによる定量法で求めた。得られたα−グリセロホスホリルコリン、およびその副生成物と考えられる以下の化合物、1,2−イソプロピリデン−3−グリセリルホスホリルコリン,ホスファチジルコリン,グリセリン,グリセロホスホリック酸ナトリウム塩の標準サンプルを着点したTLCプレートを展開液で飽和させた展開槽に入れた。展開液がプレート上端付近まで届いたら、展開槽から取り出し乾燥させた。発色剤のリン酸・硫酸銅水溶液をTLCプレートに噴霧し、スポットが褐色になるまでプレートヒーターで加熱した。溶媒に対する試料の移動率(Rf値)で定性を行い、スポットの濃淡および大きさで定量を行った。各標準サンプル以外のスポットは不明成分とし、Rf値の近い既知の標準サンプルを基準にして定量を行った。その結果、得られたα−グリセロホスホリルコリンの純度は99.2%であった。
DSC(示差走査熱量分析計、セイコー電子工業製)を用いて−20℃から250℃まで昇温し、熱容量の変化を追跡したところ、140℃に吸熱ピークがみられたことから、得られたα−グリセロホスホリルコリン結晶の融点は140℃であった。
実施例2
実施例1のイオン交換樹脂を、カルボン酸残基を有するH+型カチオン性イオン交換樹脂(ダイヤイオンYK11、三菱化学社製)3gに替え、6時間攪拌反応を行い、反応2時間後、4時間後にそれぞれα−グリセロホスホリルコリンの反応転化率を測定した以外は、実施例1と同様に反応を行った。尚、α−グリセロホスホリルコリンの反応転化率は、反応溶液をCD3ODに溶解後、31P−NMRを測定し、1,2−イソプロピリデン−3−グリセリルホスホリルコリンに由来する0.69ppmの積分値と1Pとした場合のα−グリセロホスホリルコリンに由来する1.03ppmの積分値(X)を求め、以下の式(A)で算出した。
反応転化率(%)=X×100/(1+X) ・・・(A)
その結果、2時間攪拌反応させた後のα−グリセロホスホリルコリンの反応転化率は69.7%、更に2時間(計4時間)攪拌反応させた後のα−グリセロホスホリルコリンの反応転化率は90.9%であった。
6時間攪拌反応を続け、得られたα−グリセロホスホリルコリン結晶の収量は8.3g(32.3mmol)、収率は96.0%であった。
得られたα−グリセロホスホリルコリン結晶の含水量および純度の値は、含水量0.5%および純度99.1%であった。
得られたα−グリセロホスホリルコリン結晶についてDSC(示差走査熱量分析計、セイコー電子工業製)を用いて−20℃から250℃まで昇温し、熱容量の変化を追跡したところ、140℃に吸熱ピークがみられたことから、α−グリセロホスホリルコリン結晶の融点は140℃であった。
比較例1
スクリュー管に製造例1で得られた1,2−イソプロピリデン−3−グリセリルホスホリルコリン10.0g(33.6mmol)を水10mLに溶かし、4N塩酸1mLを加え45℃で攪拌した。6時間攪拌反応させた後、合成吸着剤を用いて触媒を除去し、無水リン酸存在下で真空乾燥器を用いた減圧乾燥(50℃,1mmHg)により脱水・結晶化させ、前記式(4)で表されるα−グリセロホスホリルコリンを得た。収量は8.3g(32.3mmol)、収率は96.0%であった。得られたα−グリセロホスホリルコリンの含水量および純度の、それぞれの値は、含水量4.0%および純度88.0%であった。
実施例1および2、比較例1の結果より、H+型カチオン性イオン交換樹脂を用いた場合の製造方法の方が、H+型カチオン性イオン交換樹脂を用いない製造方法の場合よりも収率、および純度が優れていた。
また、実験の結果、H+型カチオン性イオン交換樹脂の比較では、カルボン酸残基を有するH+型カチオン性イオン交換樹脂よりも、スルホン酸残基を有するH+型カチオン性イオン交換樹脂を用いた方が、反応速度が速いことがわかった。

Claims (2)

  1. 式(1)で表される1,3−ジオキソラン化合物と式(2)で表される2−クロロ−2−オキサ−1,3,2−ジオキサホスホランとトリメチルアミンとを反応させ、式(3)で表される1,3−ジオキソラン−グリセリルホスホリルコリン化合物を得、これをカチオン性イオン交換樹脂の存在下、水含有溶媒中で加水開環反応をさせた後、水との共沸溶媒存在下で減圧乾燥することにより結晶化させることを特徴とするα−グリセロホスホリルコリン結晶の製造方法。
    Figure 2007269657
    (式(1)中、R1及びR2は同一であっても異なっても良く、水素原子あるいは炭素数1〜4の飽和炭化水素基を表す。)
    Figure 2007269657
    Figure 2007269657
    (式(3)中、R1及びR2は同一であっても異なっても良く、水素原子あるいは炭素数1〜4の飽和炭化水素基を表す。)
  2. カチオン性イオン交換樹脂が、H+型カチオン性イオン交換樹脂である、請求項1に記載のα−グリセロホスホリルコリン結晶の製造方法。
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