JP2007265784A - 非水系電解質二次電池用正極活物質とその製造方法、および、これを用いた非水系電解質二次電池 - Google Patents

非水系電解質二次電池用正極活物質とその製造方法、および、これを用いた非水系電解質二次電池 Download PDF

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Abstract

【課題】熱安定性が良好で、かつ高い充放電容量をもつ正極活物質を提供する。
【解決手段】リチウム金属複合酸化物Li1+zNi1-x-yCoxTiy2(ただし、0.10≦x≦0.21、0.03≦y≦0.08、−0.05≦z≦0.10)の粉末からなる非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法であって、ニッケル塩およびコバルト塩の混合水溶液と硫酸チタニルの硫酸水溶液に、アルカリ溶液を加え、50℃以上、80℃以下で、かつ、pH10以上、pH12.5以下の条件で、ニッケルとコバルトとチタンの水酸化物を共沈させ、得られた複合水酸化物Ni1-x-yCoxTiy(OH)2(ただし、0.10≦x≦0.21、0.03≦y≦0.08)を、300℃以上、900℃未満の温度で熱処理し、得られたニッケルコバルトチタン複合酸化物をリチウム化合物と混合し、650℃以上、850℃以下の温度で熱処理する。
【選択図】図1

Description

本発明は、非水系電解質二次電池用正極活物質とその製造方法、および、これを用いた非水系電解質二次電池に関する。
近年、携帯電話やノート型パソコンなどの携帯電子機器の普及にともない、高いエネルギー密度を有する小型で軽量な非水系電解質二次電池の開発が強く望まれている。このような二次電池として、リチウムイオン二次電池がある。リチウムイオン二次電池の負極材料には、リチウム金属やリチウム合金、金属酸化物、あるいはカーボン等が用いられている。これらの材料は、リチウムを脱離および挿入することが可能な材料である。
このようなリチウムイオン二次電池については、現在、研究開発が盛んに行われているところである。この中でも、リチウム金属複合酸化物、特に合成が比較的容易なリチウムコバルト複合酸化物(LiCoO2)を正極材料に用いたリチウムイオン二次電池は、4V級の高い電圧が得られるため、高いエネルギー密度を有する電池として実用化が進んでいる。このリチウムコバルト複合酸化物(LiCoO2)を用いたリチウムイオン二次電池では、優れた初期容量特性やサイクル特性を得るための開発がこれまで数多く行われてきており、すでにさまざまな成果が得られている。
しかし、リチウムコバルト複合酸化物(LiCoO2)は、原料に希産で高価なコバルト化合物を用いているため、電池のコストアップの原因となる。このため、正極活物質として、リチウムコバルト複合酸化物(LiCoO2)以外を用いることが望まれている。
また、最近は、携帯電子機器用の小型二次電池だけではなく、電力貯蔵用や、電気自動車用などの大型二次電池として、リチウムイオン二次電池を適用することへの期待も高まってきている。このため、正極材料のコストを下げ、より安価なリチウムイオン二次電池の製造を可能とすることは、広範な分野への大きな波及効果が期待できる。
リチウムイオン二次電池用正極活物質として新たに提案されている材料としては、コバルトよりも安価なマンガンを用いたリチウムマンガン複合酸化物(LiMn24)や、ニッケルを用いたリチウムニッケル複合酸化物(LiNiO2)を挙げることができる。
リチウムマンガン複合酸化物(LiMn24)は、原料が安価である上、熱安定性、特に、発火などについての安全性に優れるため、リチウムコバルト複合酸化物(LiCoO2)の有力な代替材料であると言えるが、理論容量がリチウムコバルト複合酸化物(LiCoO2)のおよそ半分程度しかないため、年々高まるリチウムイオン二次電池の高容量化の要求に応えるのが難しいという欠点を持っている。また、45℃以上では、自己放電が激しく、充放電寿命も低下するという欠点も有している。
一方、リチウムニッケル複合酸化物(LiNiO2)は、リチウムコバルト複合酸化物(LiCoO2)とほぼ同じ理論容量を持ち、リチウムコバルト複合酸化物よりもやや低い電池電圧を示す。このため、電解液の酸化による分解が問題になりにくく、より高容量が期待できることから、開発が盛んに行われている。しかし、ニッケルを他の元素で置換せずに、純粋にニッケルのみで構成したリチウムニッケル複合酸化物を正極活物質として用いて、リチウムイオン二次電池を作製した場合、リチウムコバルト複合酸化物に比べ、サイクル特性が劣っている。また、高温環境下で使用されたり保存されたりした場合に、比較的電池性能を損ないやすいという欠点も有している。
このような欠点を解決するために、例えば、特許文献1では、高温環境下での保存や使用に際して良好な電池性能を維持することのできる正極活物質として、LiwNixCoyz2(0.05≦w≦1.10、0.5≦x≦0.995、0.005≦z≦0.20、x+y+z=1)で表されるホウ素が添加されたリチウムニッケル複合酸化物が提案されている。
また、特許文献2では、リチウムイオン二次電池の自己放電特性やサイクル特性を向上させることを目的として、LixNiaCobc2(0.8≦x≦1.2、0.01≦a≦0.99、0.01≦b≦0.99、0.01≦c≦0.3、0.8≦a+b+c≦1.2、Mは、Al、V、Mn、Fe、CuおよびZnから選ばれる少なくとも1種の元素)で表されるリチウムニッケル系複合酸化物が提案されている。
しかしながら、これらの製造方法によって得られたリチウムニッケル系複合酸化物では、リチウムコバルト複合酸化物に比べて、充電容量および放電容量がともに高く、サイクル特性も改善されているが、満充電状態で高温環境下に放置しておくと、リチウムコバルト複合酸化物に比べて、低い温度から酸素放出を起こすといった問題がある。
このような問題を解決するために、例えば、特許文献3では、リチウムイオン二次電池正極材料の熱的安定性を向上させることを目的として、LiabNicCode(Mは、Al、Mn、Sn、In、Fe、V、Cu、Mg、Ti、Zn、Moからなる群から選択される少なくとも一種の金属であり、かつ0<a<1.3、0.02≦b≦0.5、0.02≦d/c+d≦0.9、1.8<e<2.2の範囲であって、さらにb+c+d=1である)で表されるリチウム含有複合酸化物等が提案されている。この場合に、添加元素Mとして、例えばアルミニウムを選択した場合、ニッケルからアルミニウムへの置換量を多くすれば、正極活物質の分解反応は抑えられ、熱安定性は向上することが確かめられている。しかし、十分な安定性を確保するのに有効なアルミニウムでニッケルを置換すると、充放電反応にともない、酸化還元反応に寄与するニッケルの量が減少するため、電池性能として最も重要である初期容量が大きく低下するという問題点を有している。これは、アルミニウムが3価で安定していることから、Redox反応に寄与しないために容量低下が起こるものと考えられる。
また、特許文献4では、一般式LiNi1-xCoyz2(ただし、0.1≦x≦0.3、0.05≦y≦0.28、0.02≦z≦0.25、x=y+zであり、Mは、Mg、Al、Ca、Ti、V、Cr、Mn、Feのうち少なくとも一種以上からなる)で表されるリチウム含有複合酸化物を、反応槽を用いて、これに塩濃度が調整されたニッケル−コバルト−M塩水溶液、その水溶液と錯塩を形成する錯化剤、および、アルカリ金属水酸化物をそれぞれ連続的に供給し、ニッケル−コバルト−M錯塩を生成させ、次いで、この錯塩をアルカリ金属水酸化物により分解して、ニッケル−コバルト−M水酸化物を析出させ、前記錯塩の生成および分解を槽内で循環させながら繰り返し行わせ、ニッケル−コバルト−M水酸化物をオ−バーフローさせて取り出すことにより得られる粒子形状が略球状であるニッケル−コバルト−M水酸化物を原料として用いて得るか、あるいは、さらにこれを焼成して、ニッケル−コバルト−M酸化物とした後に、これにリチウム塩を混合し、焼成して得ることが記載されている。
これは、水酸化ニッケルに二種以上の水酸化物を共沈させ、そのうちの一種をコバルトに限定することによって、リチウム含有複合酸化物の分極特性を改善し、さらにニッケルおよびコバルト以外の水酸化物を共沈させることにより、格子の安定化を図っている。この方法により得られた複合元素共沈水酸化物をリチウムイオン二次電池の正極活物質の材料として用いた場合、2元素共沈水酸化物であるコバルトニッケル水酸化物を用いた場合に比べ、初期容量が上昇し、また、充放電の繰り返しによるサイクル劣化が抑制されると記載されている。
特許文献4の実施例5において、チタン塩として硫酸チタンを用いてニッケルコバルトチタン水酸化物であるNi0.75Co0.20Ti0.05(OH)2が作製されている。しかしながら、発明者らがこの水酸化物の作製を試みたところ、硫酸チタンは、3価ではほとんど水に不溶であり、4価では水溶性であるが、加水分解を起こしやすいことから、ニッケルコバルトチタン水溶液を用いて、安定してニッケルコバルトチタン水酸化物を得ることができず、チタン水酸化物が偏析し、また、粒成長がしにくくなり、工業的には不向きであることがわかった。
最近では、携帯電子機器等の小型二次電池に対する高容量化の要求は年々高まる一方であり、安全性を確保するために容量を犠牲にすることは、リチウムニッケル複合酸化物による高容量化のメリットを失うことになる。また、リチウムイオン二次電池を大型二次電池に用いようという動きも盛んであり、中でもハイブリッド自動車用、電気自動車用の電源としての期待が大きい。したがって、自動車用の電源として用いられる場合、安全性に劣るというリチウムニッケル複合酸化物の問題点の解消は、大きな課題である。
特開平8−45509号公報
特開平8−213015号公報
特開平5−242891号公報
特開平10−27611号公報
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであって、熱安定性が良好で、かつ高い充放電容量をもつ正極活物質を提供することを目的とする。
発明者等は、一般式Li1+zNi1-x-yCoxy2(ただし、0.10≦x≦0.21、0.03≦y≦0.08、−0.05≦z≦0.10)で表されるリチウムニッケルコバルト系複合酸化物の粉末について鋭意検討したところ、添加元素Mとしてチタンが、充電状態での熱安定性を向上させるのに好ましいとの知見を得た。
特に、均一なニッケルコバルトチタン系複合水酸化物を作製する点からは、添加チタン塩として硫酸チタニルを用いることが必要であることを見出した。
また、ニッケル塩およびコバルト塩の混合水溶液と硫酸チタニルの硫酸水溶液にアルカリ溶液を加えて、ニッケルコバルトチタン水酸化物を共沈させ、得られたニッケルコバルトチタン複合水酸化物Ni1-x-yCoxTiy(OH)2とリチウム化合物とを混合し、650℃以上、800℃以下の温度で熱処理することで得られる非水系電解質二次電池用正極活物質が、熱安定性が良好で、かつ、高い充放電容量をもつ正極活物質となることを見出した。
さらに、得られたニッケルコバルトチタン複合水酸化物Ni1-x-yCoxTiy(OH)2(ただし、0.10≦x≦0.21、0.03≦y≦0.08)を、300℃以上、900℃未満の温度で熱処理し、得られたニッケルコバルトチタン複合水酸化物とリチウム化合物とを混合し、650℃以上、850℃以下の温度で熱処理することで、比表面積が小さく、さらに熱安定性が向上することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法は、リチウムニッケルコバルトチタン複合酸化物Li1+zNi1-x-yCoxTiy2(ただし、0.10≦x≦0.21、0.03≦y≦0.08、−0.05≦z≦0.10)の粉末からなる非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法に係る。
当該製造方法の特徴は、まず、ニッケルコバルトチタン複合水酸化物を得る工程において、ニッケル塩およびコバルト塩の混合水溶液と硫酸チタニルの硫酸水溶液に、アルカリ溶液を加え、50℃以上、80℃以下で、かつ、pH10以上、pH12.5以下の条件で、ニッケルコバルトチタン複合水酸化物を共沈させることに特徴がある。
また、得られたニッケルコバルトチタン複合水酸化物Ni1-x-yCoxTiy(OH)2(ただし、0.10≦x≦0.21、0.03≦y≦0.08)を、300℃以上、900℃未満の温度で熱処理し、得られたニッケルコバルトチタン複合酸化物をリチウム化合物と混合し、650℃以上、850℃以下の温度で熱処理することに特徴がある。
なお、前記硫酸チタニルの硫酸水溶液には、硫酸が10質量%以上である硫酸水溶液を用いることが望ましい。
また、前記リチウム化合物には、炭酸リチウム、水酸化リチウム、炭酸リチウムの水和物、および、水酸化リチウムの水和物のいずれかを用いることが望ましい。
本発明の非水系電解質二次電池用正極活物質は、前記のいずれかの非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法によって得られたリチウムニッケルコバルトチタン複合酸化物Li1+zNi1-x-yCoxTiy2(ただし、0.10≦x≦0.21、0.03≦y≦0.08、−0.05≦z≦0.10)の粉末からなる。
当該正極活物質は、BET法で測定した比表面積が0.6m2/g以下であることが望ましい。
本発明の非水系電解質二次電池は、本発明の非水系電解質二次電池用正極活物質を正極に用いることを特徴とする。
本発明の非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法により、工業的にリチウムニッケルコバルト複合酸化物からなる正極活物質を得ることができ、該正極活物質は、4価で安定するチタンで置換されることにより、ニッケルの一部が3価から2価となることで、ニッケルを別元素に置換したことによる電池の初期容量の低下を防止することができる。また、酸化力の強いチタンで置換させることで、リチウムイオン二次電池の正極として用いた場合、電池の熱安定性の向上を図ることができる。
また、当該製造方法により、正極活物質の比表面積を小さくすることができ、電解液との反応面積を低減することで、電池の安全性を高められるという効果が付加される。また、二次粒子を形成している一次粒子が成長して、粒子の隙間を埋めることにより、タップ密度が向上し、電極としての充填密度が向上し、二リチウムイオン二次電池の実質的な容量アップにつながるという利点も有する。
本発明の非水系電解質二次電池用正極活物質を用いて、非水系電解質二次電池を得ることにより、最近の携帯電子機器等の小型二次電池に対する高容量化の要求を満足するとともに、ハイブリッド自動車用や電気自動車用の大型二次電池に用いられる電源として求められる安全性をも確保することが可能となり、工業上、きわめて有用である。
本発明のリチウムイオン二次電池の実施形態について、各構成要素ごとにそれぞれ詳しく説明する。
本発明のリチウムイオン二次電池は、正極、負極および非水系電解液などからなり、一般のリチウムイオン二次電池と同様の構成要素により構成される。なお、以下で説明する実施形態は例示に過ぎず、本発明の非水系電解質二次電池は、本明細書に記載されている実施形態を基に、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した形態で実施することができる。また、本発明の非水系電解質二次電池は、その用途を特に限定するものではない。
(1)正極活物質、正極
本発明の非水系電解質二次電池用正極活物質は、一般式Li1+zNi1-x-yCoxTiy2(ただし、0.10≦x≦0.21、0.03≦y≦0.08、−0.05≦z≦0.10)で表されるリチウムニッケルコバルトチタン複合酸化物の粉末からなる。
本発明による二次電池の充放電反応は、正極活物質内のリチウムイオンが可逆的に出入りすることで進行する。充電によってリチウムが引き抜かれた正極活物質は、高温で不安定であり、加熱すると活物質が分解して酸素を放出し、この酸素が電解液の燃焼を引き起こし、発熱反応が起こる。したがって、正極材料の熱安定性を改善するということは、リチウムが引き抜かれた正極活物質の分解反応を抑えるということである。
従来、開示されている正極活物質の分解反応を抑える方法としては、アルミニウムのように、酸素との共有結合性の強い元素で、ニッケルの一部を置換することが一般的に行なわれてきた。確かに、ニッケルからアルミニウムへの置換量を多くすれば、正極活物質の分解反応は抑えられ、熱安定性が向上するが、充放電反応にともなう酸化還元反応に寄与するニッケルの量が減少することで、充放電容量の低下を招くため、アルミニウムへの置換量はある程度に留めなければならなかった。その結果、十分な熱安定性を確保した場合には、十分な可逆容量を得ることができず、ある程度の容量を得るためには、熱安定性を犠牲にしなければならなかった。
このため、本発明では、一般式Li1+zNi1-x-yCoxy2(ただし、0.10≦x≦0.21、0.03≦y≦0.08、−0.05≦z≦0.10)で表されるリチウム金属複合酸化物の粉末において、添加元素Mとして、4価で安定するチタンを採用し、チタンで置換することで、ニッケルの一部が3価から2価となり、ニッケルを別元素に置換したことによる電池の初期容量の低下を防止するとともに、熱安定性の向上を図っている。
次に、本発明の非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法について説明する。
本発明では、一般式Li1+zNi1-x-yCoxTiy2(ただし、0.10≦x≦0.21、0.03≦y≦0.08、−0.05≦z≦0.10)で表される層状構造を有するリチウムニッケルコバルトチタン複合酸化物を次のように製造する。
まず、コバルトとニッケルとチタンとの原子比が、前記一般式の原子比となるように、ニッケル塩とコバルト塩の混合水溶液と硫酸チタニルの硫酸水溶液を準備する。ニッケル塩とコバルト塩の混合水溶液と硫酸チタニルの硫酸水溶液にアルカリ溶液を加えて、それらを一定速度にて攪拌して、共沈殿させる。そして、定常状態になった後に、沈殿物を採取し、濾過し、水洗して、ニッケルコバルトチタン複合水酸化物を得る。
その後、得られたニッケルコバルトチタン複合水酸化物を300℃以上、900℃未満の温度で熱処理することによって、二次粒子を形成している一次粒子の成長を促し、比表面積を低減させるとともに、粒子同士の隙間を低減させることで、タップ密度の向上を図る。その上で、ニッケルコバルトチタン複合水酸化物を熱処理することで得られたニッケルコバルトチタン複合酸化物を、リチウム化合物と混合して、熱処理することで、望まれる比率のリチウムイオン二次電池用正極活物質として有用なリチウムニッケルコバルトチタン複合酸化物を得ている。
本発明では、均一なニッケルコバルトチタン水酸化物を作製する点から、チタン塩として、硫酸チタニルを用いる。チタン塩として、塩化チタンや硫酸チタンを用いた場合、ニッケル塩およびコバルト塩との混合水溶液を作成する際に、加水分解あるいはその時点で酸化が進み、水酸化チタンあるいは酸化チタンが発生し、チタンの偏析が起きてしまう。また、粒成長がしにくくなり、工業的に不向きである。したがって、使用するチタン塩としては、水への溶解度の高い硫酸チタニルを用い、かつ、硫酸水溶液であることが工業的に必要となる。
また、本発明では、ニッケル塩およびコバルト塩の複合水溶液と硫酸チタニルの硫酸水溶液を準備し、ニッケル塩およびコバルト塩の混合水溶液と硫酸チタニルの硫酸水溶液にアルカリ溶液を加えて、それらを一定速度にて攪拌して、反応槽内にニッケルとコバルトとチタンとの原子比が、前記一般式の原子比となるように、ニッケルコバルトチタン複合水酸化物を共沈させる。そして、定常状態になった後に沈殿物を採取し、濾過し、水洗して、ニッケルコバルトチタン複合水酸化物を得ている。この工程により、3元素が均一に分散した複合水酸化物を得ることができる。
リチウム化合物としては、炭酸リチウム、水酸化リチウム、炭酸リチウムの水和物、または、水酸化リチウムの水和物を用いることが好ましい。
また、ニッケル化合物としては、硫酸ニッケル、酸化ニッケル、炭酸ニッケル、硝酸ニッケル、水酸化ニッケル、オキシ水酸化ニッケル等を使用することができる。コバルト化合物としては、硫酸コバルト、酸化コバルト、炭酸コバルト、硝酸コバルト、水酸化コバルト、オキシ水酸化コバルト等を使用することができる。
ニッケル、コバルトおよびチタンの添加元素に係る化合物としては、酸化物、炭酸化物等を使用できるが、上述のように、複合水酸化物や複合酸化物を使用した方がより好ましい。
また、硫酸チタニルは、硫酸が10質量%以上であることが好ましい。硫酸が10質量%未満では、保存中に加水分解を起こし、水酸化チタンが析出し、ニッケルコバルトチタン複合水酸化物を作製した場合、チタンの偏析が起こり、工業上、好ましくない。一方、市販の硫酸チタニルの硫酸濃度は30〜50%であるため、原液のままの使用であれば50%程度の濃度での使用が可能である。
本発明では、従来の方法と異なり、チタン溶液の添加をニッケル塩やコバルト塩の混合水溶液と別としている。その理由は、硫酸チタニルの硫酸水溶液と、その他の混合水溶液を最初に混合してしまうと、硫酸濃度の低下によりチタンの加水分解が起こり、チタンの偏析が起こる可能性があるためと、チタン水酸化物は両性で、酸やアルカリで再溶解するため、反応液中の硫酸および苛性ソーダが、析出したチタン水酸化物の再溶解に消費され、ニッケルおよびコバルトの析出を阻害し、粒子の成長が促進されず、微粉になりやすいためである。
反応条件は、錯化剤の使用の有無により異なるが、50℃以上、80℃以下の温度範囲で、混合水溶液がpH10以上、pH12.5以下の範囲となるようにアルカリ溶液を添加して共沈殿させる。所定の条件下で一定速度にて攪拌し、反応槽内が定常状態になった後に、オーバーフローした沈殿物を採取し、濾過し、水洗して、ニッケルコバルトチタン複合水酸化物からなる粒子を得ることができる。
pH領域は、錯化剤がない場合、pH10以上、pH11以下の範囲を選択し、かつ、混合水溶液の温度を60℃以上、80℃以下の範囲とする。錯化剤がない場合、pH11より高く、特にpH13程度で晶析すると、細かい粒子となり、濾過性も悪くなり、球状粒子が得られない。また、pHが10よりも低いと、水酸化物の生成速度が著しく遅くなり、濾液中にニッケルが残留し、ニッケルの沈殿量が目的組成からずれて、目的の比率のニッケルコバルトチタン複合水酸化物が得られなくなってしまう。pH10以上、pH11以下とし、かつ、混合水溶液の温度を60℃以上に保つことによって、すなわち、反応温度を上げ、またニッケルの溶解度を上げることによって、ニッケルの沈殿量が目的組成からずれて共沈にならない現象を回避している。
なお、混合水溶液の温度が80℃を超えると、水の蒸発量が多いためにスラリー濃度が高くなり、ニッケルの溶解度が低下する上、濾液中に硫酸ナトリウム等の結晶が発生し、不純物濃度が上昇する等、正極材料の充放電容量が低下する原因となる状態が起こるので、好ましくない。
アンモニアなど錯化剤を使用する場合には、ニッケルの溶解度が上昇するため、pH領域をpH10以上、12.5以下、温度領域も50℃〜80℃まで、それぞれ広げることができる。
以上により、ニッケルとコバルトとチタンの原子比が、望む比率に均一に混合された粒子を得ることができる。さらに、得られる粒子は球状に近く、濾過性も良好で、実にハンドリング性の良い良好な粒子が得られる。なお、ニッケルコバルトチタン複合水酸化物は、1μm以下の一次粒子が複数集合した球状の二次粒子からなることが好ましい。
その後、得られたニッケルコバルトチタン複合水酸化物を、300℃以上、900℃未満の温度で熱処理し、得られたニッケルコバルトチタン複合酸化物とリチウム化合物とを混合し、650℃以上、850℃以下の温度で熱処理する。
得られたニッケルコバルトチタン複合水酸化物は、300℃以上、900℃未満の温度で熱処理することが必要である。熱処理温度は、750℃〜800℃がさらに好ましい。熱処理温度が900℃以上であると、複合水酸化物が酸化物に変化した後の粒成長が著しく、リチウム化合物との反応性が悪化し、目的とするリチウムニッケルコバルトチタン複合酸化物を得ることができない。また、300℃よりも低いと、ニッケルコバルトチタン水酸化物がニッケルコバルトチタン酸化物へ変化する温度に至らないため、チタンの拡散が十分でなく、また同時に、一次粒子の粒成長が進まないため、本発明のリチウムニッケルコバルトチタン複合酸化物が得られない。熱処理は、二次粒子を形成している一次粒子の粒成長を促進して、比表面積を低減させるとともに、一次粒子同士の隙間を低減して、タップ密度を向上させる効果を最大限発揮するために行われる。
本発明の正極活物質は、リチウム化合物と、前述の方法で得られたニッケルコバルトチタン複合酸化物Ni1-x-yCoxTiy2を、それぞれ所定量混合し、酸素気流中で650℃以上、850℃以下の温度で、10時間〜20時間程度、焼成することによって合成することができる。650℃より低温であると、リチウム化合物との反応が十分に進まず、所望の層状構造をもったリチウムニッケルコバルトチタン複合酸化物を合成することが難しくなる。また、850℃を超えると、リチウム層にニッケルが、ニッケル層にリチウムが混入して層状構造が乱れ、3aサイトにおけるリチウム以外の金属イオンのサイト占有率が2%より大きくなってしまい、リチウムのサイトである3aサイトに金属イオンの混入率が高くなり、リチウムイオンの拡散パスが阻害され、得られた正極を用いた電池は、初期容量や出力が低下してしまうことから、好ましくない。
また、得られた正極活物質の粒度分布のD50は、4.5μm〜8.1μmであり、タップ密度は1.5g/ml以上であることが好ましい。この範囲を外れると、正極を作製するときに、十分、正極活物質を充填できなくなるなど、正極材料として相応しくなくなってしまうからである。
次に、正極を形成する正極合材およびそれを構成する各材料について説明する。
前記一般式Li1+zNi1-x-yCoxTiy2(ただし、0.10≦x≦0.21、0.03≦y≦0.08、−0.05≦z≦0.10)で表されるリチウムニッケルコバルトチタン複合酸化物を正極活物質として用いる正極は、例えば、次のようにして作製する。
粉末状の正極活物質、導電材、結着剤とを混合し、さらに必要に応じて活性炭、粘度調整等の目的の溶剤を添加し、混練して、正極合材ペーストを作製する。正極合材ペースト中のそれぞれの混合比も、リチウム二次電池の性能を決定する重要な要素となる。溶剤を除いた固形分の全質量を100質量%とした場合、一般のリチウム二次電池の正極と同様、正極活物質の含有量を60〜95質量%とし、導電材の含有量を1〜20質量%とし、結着剤の含有量を1〜20質量%とすることが望ましい。
得られた正極合材ペーストを、例えば、アルミニウム箔製の集電体の表面に塗布し、乾燥して、溶剤を飛散させる。必要に応じ、電極密度を高めるべく、ロールプレス等により加圧することもある。このようにして、シート状の正極を作製することができる。シート状の正極は、目的とする電池に応じて適当な大きさに裁断等をして、電池の作製に供することができる。ただし、正極の作製方法は、前記例示のものに限られることなく、他の方法によってもよい。
正極の作製にあたって、導電剤としては、例えば、黒鉛(天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛など)や、アセチレンブラック、ケッチェンブラックなどのカーボンブラック系材料などを用いることができる。
また、バインダとしては、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、エチレンプロピレンジエンゴム、フッ素ゴム、スチレンブタジエン、セルロース系樹脂、ポリアクリル酸などを用いることができる。
結着剤は、活物質粒子をつなぎ止める役割を果たすもので、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂等を用いることができる。必要に応じ、正極活物質、導電材、活性炭を分散させ、結着剤を溶解する溶剤を正極合材に添加する。溶剤としては、具体的には、N−メチル−2−ピロリドン等の有機溶剤を用いることができる。また、正極合材には、電気二重層容量を増加させるために、活性炭を添加することができる。
(2)負極
負極には、金属リチウムやリチウム合金等を使用したり、あるいは、リチウムイオンを吸蔵および脱離できる負極活物質に、結着剤を混合し、適当な溶剤を加えてペースト状にした負極合材を、銅等の金属箔集電体の表面に塗布し、乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮して形成したものを使用する。
負極活物質としては、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、フェノール樹脂等の有機化合物焼成体、コークス等の炭素物質の粉状体を用いることができる。この場合、負極結着剤としては、正極同様、ポリフッ化ビニリデン等の含フッ素樹脂等を用いることができ、これらの活物質および結着剤を分散させる溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン等の有機溶剤を用いることができる。
(3)セパレータ
正極と負極との間には、セパレータを挟み込んで配置する。セパレータは、正極と負極とを分離し、電解質を保持するものであり、ポリエチレン、ポリプロピレン等の薄い膜で、微少な孔を多数有する膜を用いることができる。
(4)非水系電解液
非水系電解液は、支持塩としてのリチウム塩を有機溶媒に溶解したものである。
有機溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、トリフルオロプロピレンカーボネート等の環状カーボネート、また、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジプロピルカーボネート等の鎖状カーボネート、さらに、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジメトキシエタン等のエーテル化合物、エチルメチルスルホン、ブタンスルトン等の硫黄化合物、リン酸トリエチル、リン酸トリオクチル等のリン化合物等から選ばれる1種を単独で、あるいは2種以上を混合して用いることができる。
支持塩としては、LiPF6、LiBF4、LiClO4、LiAsF6、LiN(CF3SO22等、およびそれらの複合塩を用いることができる。
さらに、非水系電解液は、ラジカル捕捉剤、界面活性剤および難燃剤等を含んでいてもよい。
(5)電池の形状、構成
以上のように説明してきた正極、負極、セパレータおよび非水系電解液で構成される本発明のリチウム二次電池の形状は、円筒型、積層型等、種々のものとすることができる。
いずれの形状を採る場合であっても、正極および負極を、セパレータを介して積層させて電極体とし、得られた電極体に、非水系電解液を含浸させ、正極集電体と外部に通ずる正極端子との間、および、負極集電体と外部に通ずる負極端子との間を、集電用リード等を用いて接続し、電池ケースに密閉して、リチウム二次電池を完成させる。
以下、本発明の一実施例について、図面を参照して詳述する。図1は、電池評価に用いたコイン電池を示す断面図である。
(実施例1)
ニッケル:コバルト:チタンのモル比が81:15:4となるように、硫酸ニッケルおよび硫酸コバルトの混合溶液と硫酸チタニルの硫酸水溶液を準備し、12.5%水酸化ナトリウム溶液を反応槽に同時に添加し、pHを10〜11の範囲、反応温度を50℃〜80℃の範囲内で一定に保ち、共沈法によってニッケルコバルトチタン複合水酸化物からなる粒子を形成させた。
その後、反応槽内の水酸化物スラリーを全量回収し、濾過し、水洗後、乾燥し、ニッケルコバルトチタン複合水酸化物の乾燥粉末を得た。さらに、電気炉を用いて、ニッケルコバルトチタン複合水酸化物を750℃で10時間、熱処理し、ニッケルコバルトチタン複合酸化物を得た。
得られたニッケルコバルトチタン複合酸化物と市販の水酸化リチウム一水和物(FMC社製)とを、ニッケル、コバルトおよびチタンの合計とリチウムの原子比が1:1.05となるように秤量した後、球状の二次粒子の形骸が維持される程度の強さで、シェーカーミキサー(WAB社製TURBULA TypeT2C)を用いて十分に混合した。得られた混合物20gを、5cm×12cm×3cmのマグネシア製の焼成容器に装入し、密閉式電気炉を用いて、流量3L/minの酸素気流中で、昇温速度5℃/minで730℃まで昇温して、10時間焼成した後、室温まで炉冷して、本実施例の正極活物質(Li1.05Ni0.81Co0.15Ti0.042)を得た。
得られた焼成物をX線回折で分析したところ、六方晶系の層状構造を有することを確認した。BET法で測定した比表面積は、0.50m2/gであった。また、タップ密度を蔵持科学器械製作所製振盪比重測定器KRS−406により測定したところ、1.94g/ccであった。
得られた正極活物質の初期容量評価は、以下のようにして行った。
正極活物質の粉末70質量%に、アセチレンブラック20質量%およびPTFE10質量%を混合し、ここから150mgを取り出してペレットを作製し、正極とした。負極としてリチウム金属を用い、電解液には1MのLiClO4を支持塩とするエチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)の等量混合溶液(富山薬品工業製)を用いた。これらを用いて、露点が−80℃に管理されたAr雰囲気のグローブボックス中で、図1に一部破断斜視図を示すような2032型のコイン電池を作製した。
作製した電池は、24時間程度放置し、開路電圧OCV(Open Circuit Voltage)が安定した後、正極に対する電流密度を0.5mA/cm2として、カットオフ電圧4.3Vまで充電して、初期充電容量とし、1時間の休止後、カットオフ電圧3.0Vまで放電したときの容量を、初期放電容量とした。
正極の安全性の評価は、前述と同様な方法で作製した2032型のコイン電池を用いて、以下のように行った。まず、カットオフ電圧4.5VまでCCCV充電(定電流−定電圧充電。最初に、充電が定電流で動作し、それから定電圧で充電を終了するという2つのフェーズの充電過程を用いる充電方法。)した後、短絡しないように注意しながら解体して正極を取り出した。得られた正極を3.0mg計り取り、電解液を1.3mg加えて、アルミニウム製測定容器に封入し、示差走査熱量計(DSC)(Rigaku社製PTC−10A)を用いて、昇温速度10℃/minで室温から400℃までの発熱速度を測定した。
得られたリチウムニッケルコバルトチタン複合酸化物の元素分析値、BET法による比表面積、初期放電容量、およびDSC測定によって得られた発熱速度を、表1に示す。
(実施例2)
ニッケルコバルトチタン複合水酸化物の熱処理温度を780℃とした以外は、実施例1と同様に正極活物質を作製した。得られた正極活物質をX線回折で分析したところ、六方晶系の層状構造を有することを確認した。BET法で測定した比表面積は0.48m2/gであった。また、タップ密度は、1.95g/ccであった。
初期容量評価は、実施例1と同様に行った。得られたリチウムニッケルコバルトチタン複合酸化物の元素分析値、BET法による比表面積、初期放電容量、およびDSC測定によって得られた発熱速度を、表1に示す。
(実施例3)
ニッケルコバルトチタン複合水酸化物の熱処理温度を800℃とした以外は、実施例1と同様に正極活物質を作製した。得られた正極活物質をX線回折で分析したところ、六方晶系の層状構造を有することを確認した。BET法で測定した比表面積は0.45m2/gであった。また、タップ密度は、1.98g/ccであった。
初期容量評価は、実施例1と同様に行った。得られたリチウムニッケルコバルトチタン複合酸化物の元素分析値、BET法による比表面積、初期放電容量、およびDSC測定によって得られた発熱速度を、表1に示す。
(実施例4)
ニッケルコバルトチタン複合水酸化物の熱処理温度を850℃とした以外は、実施例1と同様に正極活物質を作製した。得られた正極活物質をX線回折で分析したところ、六方晶系の層状構造を有することを確認した。BET法で測定した比表面積は0.40m2/gであった。また、タップ密度は、1.94g/ccであった。
初期容量評価は、実施例1と同様に行った。得られたリチウムニッケルコバルトチタン複合酸化物の元素分析値、BET法による比表面積、初期放電容量、およびDSC測定によって得られた発熱速度を、表1に示す。
(実施例5)
ニッケルコバルトチタン複合水酸化物の熱処理温度を800℃とし、焼成温度を800℃とした以外は、実施例1と同様に正極活物質を作製した。得られた正極活物質をX線回折で分析したところ、六方晶系の層状構造を有することを確認した。BET法で測定した比表面積は0.35m2/gであった。また、タップ密度は、1.97g/ccであった。
初期容量評価は、実施例1と同様に行った。得られたリチウムニッケルコバルトチタン複合酸化物の元素分析値、BET法による比表面積、初期放電容量、およびDSC測定によって得られた発熱速度を、表1に示す。
(実施例6)
ニッケルコバルトチタン複合水酸化物の熱処理温度を850℃とし、焼成温度を800℃とした以外は、実施例1と同様に正極活物質を作製した。得られた正極活物質をX線回折で分析したところ、六方晶系の層状構造を有することを確認した。BET法で測定した比表面積は0.32m2/gであった。また、タップ密度は、2.00g/ccであった。
初期容量評価は、実施例1と同様に行った。得られたリチウムニッケルコバルトチタン複合酸化物の元素分析値、BET法による比表面積、初期放電容量、およびDSC測定によって得られた発熱速度を、表1に示す。
(実施例7)
ニッケルコバルトチタン複合水酸化物の熱処理温度を300℃とした以外は、実施例1と同様に正極活物質を作製した。得られた正極活物質をX線回折で分析したところ、六方晶系の層状構造を有することを確認した。BET法で測定した比表面積は0.57m2/gであった。また、タップ密度は、1.88g/ccであった。
初期容量評価は、実施例1と同様に行った。得られたリチウムニッケルコバルトチタン複合酸化物の元素分析値、BET法による比表面積、初期放電容量、およびDSC測定によって得られた発熱速度を、表1に示す。
(比較例1)
ニッケル:コバルト:チタンのモル比が81:15:4となるように、硫酸ニッケルおよび硫酸コバルトの混合溶液と硫酸チタニルの硫酸水溶液を準備し、12.5%水酸化ナトリウム溶液を反応槽に同時に添加し、pHを10〜11の範囲、反応温度を50℃〜80℃の範囲で一定に保ち、共沈法によってニッケルコバルトチタン複合水酸化物からなる粒子を形成させた。
その後、反応槽内の水酸化物スラリーを全量回収し、濾過し、水洗後、乾燥し、ニッケルコバルトチタン複合水酸化物の乾燥粉末を得た。
得られたニッケルコバルトチタン複合水酸化物と市販の水酸化リチウム一水和物(FMC社製)とを、ニッケル、コバルトおよびチタンの合計とリチウムの原子比が1:1.05となるように秤量した後、球状の二次粒子の形骸が維持される程度の強さで、シェ−カーミキサー(WAB社製TURBULA TypeT2C)を用いて十分に混合した。得られた混合物20gを、5cm×12cm×3cmのマグネシア製の焼成容器に装入し、密閉式電気炉を用いて、流量3L/minの酸素気流中で、昇温速度5℃/minで730℃まで昇温して、10時間焼成した後、室温まで炉冷して、本比較例の正極活物質を得た。
得られた正極活物質をX線回折で分析したところ、六方晶系の層状構造を有することを確認した。BET法で測定した比表面積は、0.93m2/gであった。また、タップ密度は、1.46g/ccであった。
初期容量評価は、実施例1と同様に行った。得られたリチウムニッケルコバルトチタン複合酸化物の元素分析値、BET法による比表面積、初期放電容量、およびDSC測定によって得られた発熱速度を、表1に示す。
(比較例2)
焼成温度を800℃とした以外は、比較例1と同様に正極活物質を作製した。
得られた正極活物質をX線回折で分析したところ、六方晶系の層状構造を有することを確認した。BET法で測定した比表面積は0.83m2/gであった。また、タップ密度は、1.76g/ccであった。
初期容量評価は、実施例1と同様に行った。得られたリチウムニッケルコバルトチタン複合酸化物の元素分析値、BET法による比表面積、初期放電容量、およびDSC測定によって得られた発熱速度を、表1に示す。
(比較例3)
ニッケルコバルトチタン複合水酸化物の熱処理温度を900℃とした以外は、実施例1と同様に正極活物質を作製した。得られた正極活物質をX線回折で分析したところ、六方晶系の層状構造を有することを確認した。BET法で測定した比表面積は0.71m2/gであった。また、タップ密度は、1.97g/ccであった。
初期容量評価は、実施例1と同様に行った。得られたリチウムニッケルコバルトチタン複合酸化物の元素分析値、BET法による比表面積、初期放電容量、およびDSC測定によって得られた発熱速度を、表1に示す。
(比較例4)
ニッケルコバルトチタン複合水酸化物の熱処理温度を1000℃とした以外は、実施例1と同様に正極活物質を作製した。得られた正極活物質をX線回折で分析したところ、六方晶系の層状構造を有することを確認した。BET法で測定した比表面積は0.73m2/gであった。また、タップ密度は、2.03g/ccであった。
初期容量評価は、実施例1と同様に行った。得られたリチウムニッケルコバルトチタン複合酸化物の元素分析値、BET法による比表面積、初期放電容量、およびDSC測定によって得られた発熱速度を、表1に示す。
(比較例5)
ニッケルコバルトチタン複合水酸化物の熱処理温度を1100℃とした以外は、実施例1と同様に正極活物質を作製した。得られた正極活物質をX線回折で分析したところ、六方晶系の層状構造を有することを確認した。BET法で測定した比表面積は0.68m2/gであった。また、タップ密度は、2.54g/ccであった。
初期容量評価は、実施例1と同様に行った。得られたリチウムニッケルコバルトチタン複合酸化物の元素分析値、BET法による比表面積、初期放電容量、およびDSC測定によって得られた発熱速度を、表1に示す。
(比較例6)
ニッケルコバルトチタン複合水酸化物の熱処理温度を250℃とした以外は、実施例1と同様に正極活物質を作製した。得られた正極活物質をX線回折で分析したところ、六方晶系の層状構造を有することを確認した。BET法で測定した比表面積は0.88m2/gであった。また、タップ密度は、1.72g/ccであった。
初期容量評価は、実施例1と同様に行った。得られたリチウムニッケルコバルトチタン複合酸化物の元素分析値、BET法による比表面積、初期放電容量、およびDSC測定によって得られた発熱速度を、表1に示す。
Figure 2007265784
[評価]
表1に示すように、実施例1〜7で得られたリチウムニッケルコバルトチタン複合酸化物は、リチウムニッケルコバルトチタン複合水酸化物に熱処理を加えて得ているため、二次粒子を形成している一次粒子が成長している。そのため、BET法による比表面積が低減し、0.6m2/g以下となっていることがわかる。また、タップ密度も、一次粒子どうしの焼結が進んでいるために向上し、1.85g/cc以上を達成している。
比表面積が低減したその結果、充電電極を加熱した場合に、電解液との反応面積が低減して電解液の分解反応が抑制され、発熱速度が抑えられている。たと考えられる。また、初期放電容量も180mAh/gを超え、リチウムコバルト複合酸化物(LiCoO2)に代わる新たな電池材料として使用可能な材料であることがわかる。
一方、比較例1および2のように、ニッケルコバルトチタン複合水酸化物を熱処理せずに、該水酸化物とリチウム化合物を混合し、熱処理することにより、リチウムニッケルコバルトチタン複合酸化物を得た場合には、タップ密度が1.8g/cc以下と低くなっており、容量とタップ密度との積から計算される単位体積当たりの放電容量は実施例と比較して大きく低下している。また、一次粒子同士の焼結が進んでおらず、比表面積が大きくなってしまっているために、電解液との接触面積が大きく、反応性が大きくなって分解反応が促進され、電池の安全性で問題があるといえる。
また、比較例3〜5のように、ニッケルコバルトチタン複合水酸化物の熱処理温度を900℃以上にした場合は、焼成後の正極活物質が焼結して固くなり、製品としては粉砕が必要になるため、粉砕工程を加えた結果、比表面積が増大している上、初期放電容量の低下も大きかった。
さらに、比較例6のように、ニッケルコバルトチタン複合水酸化物の熱処理温度を300℃未満にすると、一次粒子の粒成長が十分でないため、比表面積が増大し、発熱速度が抑えられていない。
したがって、ニッケルコバルトチタン複合水酸化物の熱処理温度は、300℃以上、900℃未満とすることが必要であることがわかる。
産業上の利用分野
安全性に優れていながら、高い初期容量を有しているという本発明の非水系電解質二次電池のメリットを活かすためには、常に高容量を要求される小型携帯電子機器の電源に好適である。
また、電気自動車用の電源においては、電池の大型化による安全性の確保の難しさと、より高度な安全性を確保するための高価な保護回路が必要不可欠である。これに対して、本発明のリチウムイオン二次電池は、優れた安全性を有しているため、安全性の確保が容易になるばかりでなく、高価な保護回路を簡略化し、より低コストにできるという点において、電気自動車用電源としても好適である。なお、本発明は、純粋に電気エネルギーで駆動する電気自動車用の電源のみならず、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン等の燃焼機関と併用するいわゆるハイブリッド車用の電源としても用いることができる。
正極活物質の初期容量評価に用いたコイン電池を示す一部破断斜視図である。
符号の説明
1 リチウム金属負極
2 セパレータ(電解液含浸)
3 正極(評価用電極)
4 ガスケット
5 負極缶
6 正極缶
7 集電体

Claims (8)

  1. ニッケルコバルトチタン複合水酸化物とリチウム化合物との混合し、熱処理することにより、リチウムニッケルコバルトチタン複合酸化物Li1+zNi1-x-yCoxTiy2(ただし、0.10≦x≦0.21、0.03≦y≦0.08、−0.05≦z≦0.10)の粉末を得る非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法において、ニッケル塩およびコバルト塩の混合水溶液と硫酸チタニルの硫酸水溶液に、アルカリ溶液を加え、50℃以上、80℃以下で、かつ、pH10以上、pH12.5以下の条件で、ニッケルコバルトチタン複合水酸化物を共沈させることを特徴とする非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法。
  2. リチウムニッケルコバルトチタン複合酸化物Li1+zNi1-x-yCoxTiy2(ただし、0.10≦x≦0.21、0.03≦y≦0.08、−0.05≦z≦0.10)の粉末からなる非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法において、ニッケルコバルトチタン複合水酸化物Ni1-x-yCoxTiy(OH)2(ただし、0.10≦x≦0.21、0.03≦y≦0.08)を、300℃以上、900℃未満の温度で熱処理し、得られたニッケルコバルトチタン複合酸化物をリチウム化合物と混合し、650℃以上、850℃以下の温度で熱処理することを特徴とする非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法。
  3. リチウムニッケルコバルトチタン複合酸化物Li1+zNi1-x-yCoxTiy2(ただし、0.10≦x≦0.21、0.03≦y≦0.08、−0.05≦z≦0.10)の粉末からなる非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法であって、ニッケル塩およびコバルト塩の混合水溶液と硫酸チタニルの硫酸水溶液に、アルカリ溶液を加え、50℃以上、80℃以下で、かつ、pH10以上、pH12.5以下の条件で、ニッケルコバルトチタン複合水酸化物を共沈させ、得られたニッケルコバルトチタン複合水酸化物Ni1-x-yCoxTiy(OH)2(ただし、0.10≦x≦0.21、0.03≦y≦0.08)を、300℃以上、900℃未満の温度で熱処理し、得られたニッケルコバルトチタン複合酸化物をリチウム化合物と混合し、650℃以上、850℃以下の温度で熱処理することを特徴とする非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法。
  4. 前記硫酸チタニルの硫酸水溶液として、硫酸が10質量%以上である硫酸水溶液を用いることを特徴とする請求項1または3に記載の非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法。
  5. 前記リチウム化合物として、炭酸リチウム、水酸化リチウム、炭酸リチウムの水和物、および、水酸化リチウムの水和物のいずれかを用いることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法。
  6. 請求項2〜5のいずれかに記載の非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法によって得られたリチウムニッケルコバルトチタン複合酸化物Li1+zNi1-x-yCoxTiy2(ただし、0.10≦x≦0.21、0.03≦y≦0.08、−0.05≦z≦0.10)の粉末からなることを特徴とする非水系電解質二次電池用正極活物質。
  7. BET法で測定した比表面積が0.6m2/g以下であることを特徴とする請求項6に記載の非水系電解質二次電池用正極活物質。
  8. 請求項6または7に記載の非水系電解質二次電池用正極活物質を正極に用いたことを特徴とする非水系電解質二次電池。
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