JP2007263317A - 歯車装置およびこれを備える電動パワーステアリング装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】減速機の従動ギヤ24の一側面32と、これに対向する第1のハウジング25aの一側面57のそれぞれに、従動ギヤ24の周方向に対して交差する方向に延びる凸条58,59が設けられている。軸方向Sに沿ってみたときに、従動ギヤ24の回転に伴って、従動ギヤ24の凸条58、および第1のハウジング25aの凸条59が、軸方向Sに部分的に対向することにより、互いの間に潤滑剤Lを保持可能な交差部67a,67bを形成する。従動ギヤ24の回転に伴って、交差部67a,67b間に保持された潤滑剤Lを、凸条59の延びる方向に移動させる。
【選択図】図3
Description
本発明は、かかる背景のもとでなされたもので、より広範な運転条件下において十分な潤滑ができる歯車装置およびこれを備える電動パワーステアリング装置を提供することを目的とする。
本発明によれば、選択された歯車の回転に伴って、交差部および交差部間に保持された潤滑剤を、凸条の延びる方向に移動させることができる。これにより、選択された歯車の歯部に向けて潤滑剤を移動させることができ、歯車同士の噛み合い部分に十分な量の潤滑剤を供給することができる。また、潤滑剤を交差部間に保持させて移動させることにより、潤滑剤の移動に遠心力を用いる必要がない。したがって、選択された歯車の回転数が数rpm程度の低い回転数であっても、潤滑剤を確実に移動して歯部に供給できる。広範な運転条件下で十分な潤滑ができる。また、潤滑剤として潤滑油を使用することができ、また潤滑剤としてグリースを使用することができ、より広範な運転条件下で十分な潤滑ができる。
また、本発明において、上記の歯車装置(21)を用いて、操舵補助用の電動モータ(20)の出力回転を舵取り機構(22)に伝達する場合がある(請求項7)。この場合、潤滑剤として、潤滑油よりも粘性の高いグリースを用いて油漏れを良好に防止でき、且つ数rpm程度の低い回転数でも十分な潤滑を行うことのできる電動パワーステアリング装置を実現できる。
図1は、本発明の一実施の形態の電動パワーステアリング装置1の概略構成を示す模式図である。図1を参照して、電動パワーステアリング装置1は、ステアリングホイール等の操舵部材2に連結されているステアリングシャフト3と、ステアリングシャフト3に自在継手4を介して連結されている中間軸5と、この中間軸5に自在継手6を介して連結されているピニオン軸7と、ピニオン軸7の先端部に設けられたピニオン8に噛み合うラック9を形成して車両の左右方向に延びるラック軸10とを有している。
トーションバー15の近傍には、トーションバー15のねじれに起因する第1の操舵軸13と第2の操舵軸14との相対回転変位量を検出するトルクセンサ16が設けられている。このトルクセンサ16の検出信号は、制御部17に与えられる。制御部17は、トルクセンサ16からの検出信号に基づいて操舵部材2に加えられた操舵トルクを算出する。そして、算出した操舵トルクや車速センサ18からの車速検出信号等に基づいて、ドライバ19を介して操舵補助用の電動モータ20の駆動を制御する。これにより、電動モータ20が駆動し、その出力回転(動力)が、歯車装置としての減速機21で減速されて第2の操舵軸14へ伝達される。第2の操舵軸14に伝えられた動力は、さらに中間軸5等を介して、上記ラック軸10、タイロッド11およびナックルアーム等を含む舵取り機構22に伝えられ、運転者の操舵が補助される。
駆動ギヤ23は、電動モータ20の出力軸20aに連なる小歯車であり、従動ギヤ24は、駆動ギヤ23に噛み合い第2の操舵軸14に連なる大歯車である。
図2は、図1の減速機21周辺の要部の断面図である。図2を参照して、ハウジング25は、アルミニウム合金を用いて形成された、全体として筒状をなすものであり、第1のハウジング25aと第2のハウジング25bとを備えている。これら第1および第2のハウジング25a,25bは、ステアリングシャフト3の軸方向S(従動ギヤ24の軸方向でもある)に互いに対向している。
ハウジング25内には、潤滑剤Lが収容されており、これら駆動ギヤ23と従動ギヤ25との噛み合い領域Aに潤滑剤Lが存在している。潤滑剤Lは、例えばグリースである。
第1の軸受29の外輪29bが、第1のハウジング25aの軸受保持孔46に相対回転を規制されて嵌合されている。第2の軸受30の外輪30bが、第2のハウジング25bの軸受保持孔47に相対回転を規制されて嵌合されている。
第1および第2の軸受29,30は、以下のようにして軸方向に位置決めされるとともに、予圧を付与されている。すなわち、第2の軸受30の外輪30bは、第2のハウジング25bの段部36に当接し位置決めされている。第2の軸受30の内輪30aは、駆動ギヤ23の他端部の位置決め段部37に当接することにより、駆動ギヤ23の一端部側(電動モータ側)への移動が規制されている。
ねじ部材39は、第1のハウジング25aに形成されるねじ孔40にねじ込まれることにより、第1および第2の軸受29,30に予圧を付与すると共に、駆動ギヤ23を軸方向に位置決めしている。ロックナット50が、予圧調整後のねじ部材39を止定するためにねじ部材39に係合されている。
ねじ部材54は、第1のハウジング25aに形成されるねじ孔55にねじ込まれることにより、第3および第4の軸受34,35に予圧を付与すると共に、従動ギヤ24を軸方向Sに位置決めしている。ロックナット56が、予圧調整後のねじ部材54を止定するためにねじ部材54に係合されている。
同様に、従動ギヤ24の他側面52と、この他側面52に相対向する第2のハウジング25bの一側面60のそれぞれに、1ないし複数の凸条61,62(リブ)が設けられている。
各凸条58は、内径部63と外径部64との間に跨って形成されており、周方向Cに対して交差する方向としての第1の方向である径方向Rに沿って延びている。すなわち、各凸条58は、周方向Cに対して略90°をなして交差しており、放射状に延びている。なお、各凸条58は、周方向Cに対して90°未満の角度なして交差していてもよい。各凸条58は、周方向Cに所定の幅Bを有している。
図3および図5を参照して、第1のハウジング25aの一側面57は、軸方向Sと直交して延びている。第1のハウジング25aの凸条59は、この一側面57に突設されている。
一側面57には、軸受保持孔48(第3の軸受34を支持する軸受保持孔48)を取り囲む環状の内径部66が突設されており、上記各凸条59は、当該内径部66から、周方向Cに対して交差する方向としての第2の方向D2に沿って延びている。第2の方向D2は、例えば、周方向Cに対して数十°(例えば50°)程度の角度をなしている。図5に示す断面において(従動ギヤ24から第1のハウジング25aをみて)、各凸条59の一端部59aは、他端部59bに対して周方向他方C2にねじれている。
各凸条59の一端部59aは、内径部66によって互いに接続されている。各凸条59の他端部59bは、従動ギヤ24の歯部31と軸方向Sに対向している。1つの凸条59(591)の他端部59bは、各ギヤ23,24の噛み合い領域Aに近接している。図2を参照して、別の1つの凸条59(592)の他端部59bは、鉛直方向Vに関する第1のハウジング25aの一側面57の下端に位置している。
各凸条59の頂面68および内径部66の頂面69は、面一に形成されて従動ギヤ24の一側面32と平行であり、互いに近接している。相対向する凸条58,59間の間隔F1は、潤滑剤Lが交差部67a,67b間で表面張力によって保持される程度に近接されている。
具体的には、従動ギヤ24の他側面52は、軸方向Sに直交して延びる平面である。他側面52には、従動ギヤ24の内径部63と外径部64との間に複数の凹部72が形成されている。これらの凹部72は、軸方向Sにみてそれぞれ扇形形状をなしている。従動ギヤ24の周方向Cに隣り合う凹部72間に、凸条61が設けられている。各凸条61は、周方向Cに等間隔に配置されている。
各凸条61は、内径部63と外径部64との間に跨って形成されており、周方向Cに対して交差する方向としての第1の方向である径方向Rに沿って延びている。すなわち、各凸条61は、周方向Cに対して略90°をなして交差しており、放射状に延びている。なお、各凸条61は、周方向Cに対して90°未満の角度なして交差していてもよい。各凸条61は、周方向Cに所定の幅Bを有している。
図3および図8を参照して、第2のハウジング25bの一側面60は、軸方向Sと直交して延びている。第2のハウジング25bの凸条62は、この一側面60に突設されている。
一側面60には、前記軸受保持孔49(第4の軸受35を保持する軸受保持孔49)を取り囲む環状の内径部73が突設されており、上記各凸条62は、当該内径部73から、周方向Cに対して交差する方向としての第3の方向D3に沿って延びている。第3の方向D3は、例えば、周方向Cに対して数十°(例えば50°)程度の角度をなしている。図8に示す断面において(軸方向Sのうち従動ギヤ24を向く方向にみて)、各凸条62の一端部62aは、他端部62bに対して周方向一方C1にねじれている。
図3および図8を参照して、軸方向Sに沿ってみたとき、凸条61は、周方向Cに対して交差角度E3で交差しており、凸条62(図8において、凸条62の一部を図示)は、周方向Cに対して交差角度E4で交差している。軸方向Sに沿ってみたとき、対をなす凸条61,62は、周方向Cに対して互いに逆向きに傾斜しており、当該周方向Cに対して相異なる交差角度E3,E4で交差している。
各凸条62の頂面75および内径部73の頂面76は、面一に形成されて従動ギヤ24の他側面52と平行であり、互いに近接している。相対向する凸条61,62間の間隔F2は、潤滑剤Lが交差部74a,74b間で表面張力によって保持される程度に近接されている。
同様に、従動ギヤ24の回転に伴って、従動ギヤ24の他側面52に関する交差部74a,74bと従動ギヤ24の軸線24aとの距離G2が増大するときに、図3および図5に示すように、従動ギヤ24の一側面32に関する交差部67a,67bと従動ギヤ24の軸線24aとの距離G1が減少する。
以上の概略構成を有する電動パワーステアリング装置では、以下の動作が行われる。すなわち、図2を参照して、潤滑剤Lの一部は、自重や各ギヤ23,24からの振動や、各歯車23,24同士の噛み合い等によって、噛み合い領域Aから出て、従動ギヤ24の一側面32と第1のハウジング25aの一側面57との間を落下する。
従動ギヤ24が周方向他方C2にさらに回転すると、図10(B)に示すように、交差部671a,672bと軸線24aとの距離G1が短くなり、潤滑剤Lが第1のハウジング25aの内径部66側に移動される。
図2および図11(A)に示すように、潤滑剤Lが落下して鉛直方向Vの下端にある状態から従動ギヤ24が周方向一方C1に回転すると、鉛直方向Vの下端にある潤滑剤Lは、鉛直方向Vの下端にある凸条621の他端部62bとこれに対向する凸条61の他端部61bの交差部74a,74b(741a,741b)間に保持される。
図11(C)を参照して、内径部73側に潤滑剤Lがある状態から、従動ギヤ24が周方向他方C2に回転すると、内径部73に保持された潤滑剤Lは、鉛直方向Vの上方にある凸条621の一端部62aと、これに対応する従動ギヤ24の凸条61の一端部61aとの間に形成される交差部741a,741b間に保持される。図11(D)に示すように、この交差部741a,741bの移動に伴い、潤滑剤Lは凸条621の他端部62bにまで移動され、当該他端部62bから噛み合い領域A(図2参照)に供給される。
同様に、従動ギヤ24の他側面52側の上記交差部74a,74bと従動ギヤ24の軸線24aとの距離G2が、周方向一方C1に回転するときに減少するようになっている。この場合、従動ギヤ24が周方向一方C1に回転することにより、交差部74a,74b間に保持された潤滑剤Lを、従動ギヤ24の内径側に移動させることができる。
以上より、潤滑剤Lとして、潤滑油よりも粘性の高いグリースを用いて油漏れを良好に防止でき、且つ数rpm程度の低い回転数でも十分な潤滑を行うことのできる電動パワーステアリング装置1を実現できる。
さらに、駆動ギヤ23の一対の側面のうちの少なくとも一方の側面と、この側面に対向するハウジングの側面のそれぞれに凸条を設けて、駆動ギヤ23の回転に伴い潤滑剤Lが駆動ギヤ23の軸線23aから遠ざかったり近づいたりするようにしてもよい。
Claims (7)
- 互いに噛み合う複数の歯車と、
これら複数の歯車を収容するハウジングと、
このハウジング内に収容された潤滑剤とを備え、
上記複数の歯車のなかから少なくとも1つ選択された歯車の少なくとも一方の側面、およびこれに対向するハウジングの側面に、上記選択された歯車の周方向に対して交差する方向に延びる凸条が設けられ、
上記選択された歯車の軸方向に沿ってみたときに、上記選択された歯車の回転に伴って、上記選択された歯車の凸条およびハウジングの対応する凸条が、上記選択された歯車の軸方向に部分的に対向することにより、互いの間に潤滑剤を保持可能な交差部を形成するようにしてあることを特徴とする歯車装置。 - 請求項1において、上記選択された歯車の凸条およびハウジングの対応する凸条は、上記選択された歯車の軸方向に沿ってみたときに、歯車の周方向に対して相異なる交差角度で交差していることを特徴とする歯車装置。
- 請求項1または2において、上記選択された歯車の軸方向に沿ってみたときに、上記選択された歯車の凸条およびハウジングの対応する凸条は、歯車の周方向に対して互いに逆向きに傾斜していることを特徴とする歯車装置。
- 請求項1〜3の何れか1項において、上記交差部と上記選択された歯車の中心との距離が、上記選択された歯車が所定の回転方向に回転するときに増大または減少することを特徴とする歯車装置。
- 請求項1〜4の何れか1項において、上記選択された歯車の凸条は当該歯車の一対の側面に設けられ、
上記ハウジングの凸条は、上記選択された歯車の各側面の凸条にそれぞれ対応する凸条を含み、
上記選択された歯車の回転に伴って、上記選択された歯車の一方の側面の凸条に関する交差部と上記選択された歯車の中心との距離が増大するときに、他方の側面の凸条に関する交差部と上記選択された歯車の中心との距離が減少するようにしてあることを特徴とする歯車装置。 - 請求項1〜5の何れか1項において、上記選択された歯車の軸方向が鉛直方向に対して交差していることを特徴とする歯車装置。
- 請求項1〜6の何れか1項に記載の歯車装置を用いて、操舵補助用の電動モータの出力回転を舵取り機構に伝達することを特徴とする電動パワーステアリング装置。
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