JP2007262037A - ε−カプロラクタムの製造方法 - Google Patents
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Abstract
1,1'-パーオキシジシクロヘキシルアミンを選択的に分解し、ε-カプロラクタムとシクロヘキサノンを高選択率で製造する方法を提供すること、ならびに、触媒濃度を低減し、及び/又は触媒のリサイクルを行うことによって、触媒使用量を低減することを課題とする。
【解決手段】
1,1'-パーオキシジシクロヘキシルアミンを、リチウム塩と、ε-カプロラクタムより求核性が高く1,1'-パーオキシジシクロヘキシルアミンより求核性が低いアミドからなる付加体を触媒として分解することを特徴とするε-カプロラクタム及びシクロヘキサノンの製造方法にによって本発明の課題は解決される。
【選択図】 なし
Description
臭化リチウム又は塩化リチウムを触媒に用い、生成物であるε-カプロラクタムを溶媒とした場合、臭化リチウム又は塩化リチウムとε−カプロラクタムとが付加体を生成するが、その結合は強固であり、ε−カプロラクタムの選択率は低下した。また、臭化リチウム又は塩化リチウムの分離回収も困難であった。
第1の発明は、1,1'-パーオキシジシクロヘキシルアミン(PXA)を、リチウム塩と、ε-カプロラクタムより求核性が高く1,1'-パーオキシジシクロヘキシルアミンより求核性が低いアミドからなる付加体を触媒として分解することを特徴とするε-カプロラクタム及びシクロヘキサノンの製造方法に関する。
第2の発明は、リチウム塩が塩化リチウム又は臭化リチウムである第1の発明のε-カプロラクタム及びシクロヘキサノンの製造方法に関する。
第3の発明は、ε-カプロラクタムより求核性が高く1,1'-パーオキシジシクロヘキシルアミンより求核性が低いアミドが7〜20員環のラクタム、N−置換ラクタム及び式(1)で表されるN,N-ジ置換アミド
第4の発明は、ε-カプロラクタムより求核性が高く1,1'-パーオキシジシクロヘキシルアミンより求核性が低いアミドがラウロラクタムである第1の発明のε-カプロラクタム及びシクロヘキサノンの製造方法に関する。
第5の発明は、ε-カプロラクタムより求核性が高く1,1'-パーオキシジシクロヘキシルアミンより求核性が低いアミドがN−アルキルラクタムである第1の発明のε-カプロラクタム及びシクロヘキサノンの製造方法に関する。
本発明で使用されるPXAはシクロヘキサノンをアンモニア水と過酸化水素水でアンモ酸化することによって容易に製造される。その製造方法は、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8及び特許文献9等に開示されている。
(i)の7〜20員環のラクタムは、融点が低く、溶媒への溶解性も高いので好ましい。具体的には、ヘプトラクラム、オクトラクタム、デカノラクラム、ウンデカノラクタム、ラウロラクタム等が挙げられるが、ラウロラクタムは製造、入手が容易であり、反応後のリチウム塩との付加体の分離、リサイクルも容易であり、特に好ましい。
(ii)のN−置換ラクタムとしては、N−メチル−γ−ブチロラクタム(2−メチルピロリドン)、N−メチルδバレロラクタム(2−メチルピペリドン)、N−メチル−ε−カプロラクタム、N―メチルラウロラクタム等が挙げられる。環員数に特に制約はない。また、窒素原子に結合する置換基も電子供与性の置換基であれば、特に制約はない。
(iii)の式(1)で表されるN,N-ジ置換アミドにおいて、式(1)中、R1はアルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等(なお、これら置換基は、その異性体も含む。))を表すが、主鎖の炭素数に制約はない。また、窒素原子に結合する置換基R2、R3としては、電子供与性の置換基であれば、特に制約はないが、具体的には、アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等(なお、これら置換基は、その異性体も含む。))、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等(なお、これら置換基は、その異性体も含む。))、アミノ基等が挙げられる。式(1)で表されるN,N-ジ置換アミドの具体例としては、ジメチルアセトアミド、ジエチルアセトアミド、メチルエチルプロピオアミド等が挙げられる。
この反応は、通常、常圧で行われるが、加圧、場合によっては減圧条件下で行う事もできる。また、通常、大気中で行われるが、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下、或いは、これらガスの気流下で行う事もできる。
なお、本発明において用いる選択率は炭素基準の選択率であり、以下の式で定義される。
(参考例1:PXAの製造)
攪拌槽型反応器にシクロヘキサノン100g、60%過酸化水素水30g、20%アンモニア水130g、塩化アンモニウム15gを加え、30℃で9時間反応を行い、未反応の過酸化水素水、アンモニア、及び触媒である塩化アンモニウムを水洗除去して101gの粗PXAを得た。ガスクロマトグラフィーで分析した結果、シクロヘキサノン転化率90%、PXA選択率95%であった。n-ヘキサンを用いて再結晶を行い、89gのPXAを取得した。
宇部エムス(有)社製ラウロラクタム30gをトルエン90gに溶解し、110℃に加熱した。このラウロラクタム溶液に無水臭化リチウム粉末3gを加えた。ゲル状物が生成したのを確認後、70℃に冷却し、生成した白色沈殿を濾過し、LiBr-ラウロラクタム付加体を取得した。70℃のトルエンで洗浄を行い、付着したラウロラクタムを除去後、乾燥して18gの白色粉末を得た。H-NMRの=N-Hのシフト、IRのνN-Hのシフト、熱分析における融点変化、分解シグナルの出現、マススペクトルのリチウム−ラウロラクタム、ラウロラクタム-リチウム-ラウロダクタムシグナルの出現から、リチウム1原子とラウロラクタム2分子が付加している事を確認した。表1に、LiBr-ラウロラクタム付加体とラウロラクタムの分析結果の比較を示す。
参考例2で製造したLiBr-ラウロラクタム付加体(LiBr-Lc12と略記)1.1gを、110℃に加熱したトルエン20gに分散させ、攪拌しながら参考例1で製造したPXA結晶10gをトルエン15gに溶解した溶液を加え、110℃で6時間反応を行った。得られた反応液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、PXAは全て分解しており、ε-カプロラクタム(Lc6と略記)の選択率は46.1%、シクロヘキサノン(以下CHONと略記)選択率は49.9%で、合計96.0%の選択率が得られた。
トルエン25gに宇部エムス(有)社製ラウロラクタム10gを加え、110℃に加熱して溶解した。この溶液に無水臭化リチウム粉末を1g加えた。臭化リチウムはラウロラクタム(Lc12と略記)と付加体を形成し、ゲル状に膨潤した。これに、参考例1で製造したPXA結晶10gをトルエン15gに溶解した溶液を加え110℃で6時間反応を行った。ガスクロマトグラフィーで分析した結果、PXAは全て分解しており、Lc6の選択率は47.2%、CHONの選択率は48.8%で、合計96.0%の選択率が得られた。反応液を梨型フラスコに移し、減圧蒸留を行い、3.3kPaで60℃の留分(留分1)を4.63g、0.27kPaで125〜128℃の留分(留分2)を4.38g、釜残11.6gを取得した。留分1は96重量%のCHONを含み、留分2、釜残はそれぞれ95重量%,6重量%のLc6を含んでいた。従って、反応、蒸留を通しての収率はLc6:45.3%、CHON:47.8%、であった。
実施例2で得られた釜残にトルエン25gを加えて希釈し、PXA結晶10gをトルエン15gに溶解した溶液を加え、実施例2と同様に反応を行った。新たに加えたPXAに対するLc6,CHONの収率は、Lc6:49.6%、CHON:46.7%であった。
実施例3で得られた反応液を実施例2と同様にして減圧蒸留を行い、留出液と釜残を得た。得られた釜残を用いて、実施例3と同様にしてPXAの分解反応を行った。この、蒸留ならびに反応の操作をさらに5回繰返した(実施例2から数えて合計7回)。使用したPXAは70g、取得した留分1は31.29g、CHON純度96重量%、留分2は36.58g、Lc6の純度95.5%、釜残11.61g、Lc6含有率5.0%で、収率はLc6:47.4%、CHON:46.2%、であった。
Lc12を1,1-ジメチルアセトアミドに代えた以外は実施例2と同様にして反応を行った。反応後のガスクロマトグラフィー分析結果は、PXA転化率99.6%、Lc6選択率46.4%、CHON選択率48.3%、合計94.7%であった。
Lc12を1-メチル-2-ピロリドンに代えた以外は実施例2と同様にして反応を行った。反応後のガスクロマトグラフィー分析結果は、PXA転化率93.3%、Lc6選択率45.2%、CHON選択率48.5%、合計93.7%であった。
Lc12を1-メチルカプロラクタムに代えた以外は実施例2と同様にして反応を行った。反応後のガスクロマトグラフィー分析結果は、PXA転化率98.9%、Lc6選択率47.3%、CHON選択率47.7%、合計95.0%であった。
Lc12をホルムアミドに代えた以外は実施例2と同様にして反応を行った。反応後のガスクロマトグラフィー分析結果は、PXA転化率83.6%、Lc6選択率6.8%、CHON選択率53.9%、合計60.8%であった。
Lc12をアセトアミドに代えた以外は実施例2と同様にして反応を行った。反応後のガスクロマトグラフィー分析結果は、PXA転化率87.9%、Lc6選択率41.3%、CHON選択率28.2%、合計69.5%であった。
Lc12を1-メチルホルムアミドに代えた以外は実施例2と同様にして反応を行った。反応後のガスクロマトグラフィー分析結果は、PXA転化率95.4%、Lc6選択率35.0%、CHON選択率41.7%、合計76.7%であった。
Lc12を1-メチルアセトアミドに代えた以外は実施例2と同様にして反応を行った。反応後のガスクロマトグラフィー分析結果は、PXA転化率99.1%、Lc6選択率37.3%、CHON選択率42.5%、合計79.8%であった。
Lc12を2-ピロリドンに代えた以外は実施例2と同様にして反応を行った。反応後のガスクロマトグラフィー分析結果は、PXA転化率67.7%、Lc6選択率40.3%、CHON選択率46.8%、合計87.1%であった。
Lc12をLc6に代えた以外は実施例2と同様にして反応を行った。反応後のガスクロマトグラフィー分析結果は、PXA転化率71.2%、Lc6選択率17.9%、CHON選択率35.3%、合計53.2%であった。なお、反応によるLc6生成量は反応前後のLc6モル量の差とした。
Lc12をピリジンに代えた以外は実施例2と同様にして反応を行った。反応後のガスクロマトグラフィー分析結果は、PXA転化率92.0%、Lc6選択率40.3%、CHON選択率46.1%、合計86.4%であった。
アセトニトリル25gにカプロラクタム5.4gと無水臭化リチウム粉末を2g加え80℃に加熱し溶解した(カプロラクタム/LiBr=2/1(モル/モル))。これに参考例1で製造したPXA結晶10gをアセトニトリル15gに溶解した溶液を加え80℃で6時間反応を行った。ガスクロマトグラフィーで分析した結果、PXA転化率は88.1%、Lc6の選択率は41.1%、CHONの選択率は48.2%で、選択率合計は89.3%であった。
カプロラクタム添加量を10.8gとした以外は比較例8と同様に反応を行った(カプロラクタム/LiBr=4/1(モル/モル))。ガスクロマトグラフィーで分析した結果、PXA転化率は 58.3%、Lc6の選択率は19.1%、CHONの選択率は40.1%で、選択率合計は59.2%であった。
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