JP2007247723A - ダンパー機構 - Google Patents

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Abstract

【課題】フライホイール組立体に搭載されたダンパー機構の高回転数領域における戻り不良の発生を抑制し、振動減衰性能の向上を図る。
【解決手段】ダンパー機構4は、第1フライホイール2と、第1フライホイール2に対して相対回転可能に配置された中間回転体44と、中間回転体44に対して相対回転可能に配置された第2フライホイール3と、第1フライホイール2と中間回転体44を回転方向に弾性的に連結する複数の第1コイルスプリング41を有する第1ダンパー8と、中間回転体44と第2フライホイール3とを回転方向に弾性的に連結し第1ダンパー8の最小作動トルクよりも小さいトルクで作動を開始する第2ダンパー9とを備えている。第1コイルスプリング41は、回転方向に予め圧縮された状態で中間回転体44の支持部45同士の間に収容されている。
【選択図】図2

Description

本発明は、ダンパー機構、特に、クランクシャフトに対して弾性部材を介してトルク伝達可能に配置されたフライホイールを備えたフライホイール組立体に用いられるダンパー機構に関する。
エンジンのクランクシャフトには、エンジンの燃焼変動に起因する振動を吸収するために、フライホイールが装着されている。さらに、フライホイールの軸方向トランスミッション側にはクラッチ装置が設けられている。クラッチ装置は、トランスミッションの入力シャフトに連結されたクラッチディスク組立体と、クラッチディスク組立体の摩擦連結部をフライホイールに付勢するクラッチカバー組立体とを備えている。クラッチディスク組立体は、捩り振動を吸収・減衰するためのダンパー機構を有している。ダンパー機構は、回転方向に圧縮されるように配置されたコイルスプリング等の弾性部材を有している。
一方、ダンパー機構を、クラッチディスク組立体ではなく、フライホイールとクランクシャフトとの間に設けた構造も知られている。この場合は、フライホイールがコイルスプリングを境界とする振動系の出力側に位置することになり、出力側の慣性が従来に比べて大きくなっている。この結果、共振回転数をアイドル回転数以下に設定することができ、大きな減衰性能を実現できる。このように、フライホイールとダンパー機構とが組み合わさって構成される構造が、2マスフライホイール又はフライホイールダンパーである(例えば、特許文献1を参照。)。なお、エンジンのクランクシャフトに固定されたフライホイールを第1フライホイールといい、クランクシャフトに弾性部材を介して連結されクラッチ装置が装着されるフライホイールを第2フライホイールという。
特開平4−231757号公報
この種のフライホイール組立体のダンパー機構としては、特許文献1に記載のように外周側に弾性部材が配置されているものが知られている。このようなダンパー機構では、例えば弾性部材が直列に作用するように自由状態で配置されており、低剛性・広捩り角度のダンパー特性により捩り振動を吸収・減衰している。
しかし、高回転数領域においては外周側の弾性部材に遠心力が作用するため、外周側の弾性部材がその外周側に配置された部材に押し付けられ、大きなヒステリシストルクが発生する。このヒステリシストルクにより、弾性部材の動作が妨げられる。このように、高回転数領域においてはダンパー機構の振動減衰性能が低下する。
そこで、例えば外周側の弾性部材に加えて内周側にも弾性部材を自由状態で配置し、両弾性部材を直列に作用させているものが提案されている。このダンパー機構では、外周側の弾性部材により低剛性・広捩り角度を実現しつつ、高回転数領域においてはヒステリシストルクが発生しにくい内周側の弾性部材を補助的に作動させて振動減衰性能の低下を防止している。
しかしながら、内周側の弾性部材では構造上、捩り角度を広く確保することが困難である。このため、高回転数領域においてはダンパー機構の捩り角度が狭くなり、従来のダンパー機構では高回転数領域において発生した大捩り振動を効果的に吸収・減衰することができない。例えばクラッチ連結状態において、高回転数領域でドライバーがアクセルペダルを急に離すと、エンジンブレーキによりダンパー機構は逆駆動され、ダンパー機構には大捩り振動が入力される。このとき、前述のように外周側の弾性部材が遠心力により動作しないため、いわゆるダンパー機構の戻り不良が発生する。特に、両フライホイールの相対回転角度が小さくなると、弾性部材が自由状態に近くなり、第1フライホイールと第2フライホイールとを初期状態に戻す方向に小さな荷重しか発生しない。このため、この荷重がヒステリシストルクに打ち勝つことができず、高回転数領域においてはダンパー機構の戻り不良が発生する。そして、戻り不良が発生した場合に、内周側の弾性部材ではこのような大きな捩り振動を吸収・減衰することができないため、この結果として振動減衰性能が著しく低下してしまう。
本発明の課題は、フライホイール組立体に搭載されたダンパー機構の高回転数領域における戻り不良の発生を抑制し、振動減衰性能の向上を図ることにある。
第1の発明に係るダンパー機構は、トルクを伝達するとともにトルク変動を吸収・減衰するためのダンパー機構であって、第1回転部材と、第1回転部材に対して相対回転可能に配置された第2回転部材と、第2回転部材に対して相対回転可能に配置された第3回転部材と、第1回転部材と第2回転部材とを回転方向に弾性的に連結する複数の第1弾性部材を有する第1ダンパーと、第2回転部材と第3回転部材とを回転方向に弾性的に連結し第1ダンパーの最小作動トルクよりも小さいトルクで作動を開始する第2ダンパーとを備えている。第1弾性部材は、回転方向に予め圧縮された状態で第1回転部材および第2回転部材のいずれか一方に設けられている。
このダンパー機構では、第1弾性部材が回転方向に予め圧縮されているため、例えば入力トルクが第1弾性部材の圧縮状態に応じた最小作動トルクを超えるまでは、第1弾性部材の圧縮は開始されず、第2ダンパーのみが作動し、捩り振動を吸収・減衰する。
一方、入力トルクが最小作動トルクを超えると第1弾性部材の圧縮が開始され、第2ダンパーと直列に第1ダンパーが作動する。すなわち、最小作動トルク以上のトルクを入力しなければ、第1回転部材と第2回転部材とが相対回転することはない。言い換えると、第1回転部材と第2回転部材との相対回転が初期状態に戻る方向には、第1弾性部材により従来よりも大きな荷重が第1回転部材および第2回転部材に作用する。これにより、このダンパー機構では、高回転数領域における戻り不良の発生を抑制することができ、振動減衰性能を向上させることができる。
第2の発明に係るダンパー機構は、第1の発明のダンパー機構において、第2ダンパーが第1弾性部材の内周側に配置され、第2回転部材と第3回転部材とを回転方向に弾性的に連結する複数の第2弾性部材を有している。
第3の発明に係るダンパー機構は、第1または第2の発明のダンパー機構において、第1ダンパーは第2ダンパーの動作中に作動を開始する。
このダンパー機構では、第1ダンパーの作動開始時には第2ダンパーが作動している。言い換えると、第2ダンパーのストッパ作動時においては第1ダンパーが作動している。これにより、第2ダンパーのストッパ作動時の衝撃を緩和でき、ストッパの破損やたたき音の発生を低減することができる。
第4の発明に係るダンパー機構は、第1から第3の発明のいずれかのダンパー機構において、第1回転部材および第2回転部材のいずれか一方が第1弾性部材の端部を回転方向に支持する複数の支持部を有している。第1回転部材および第2回転部材の他方は、第1弾性部材の外周側に配置され、第1弾性部材の半径方向外側への移動を規制する摺動部を有している。第1弾性部材は、隣り合う支持部同士の回転方向間に圧縮された状態で円弧状に配置されている。
このダンパー機構では、支持部同士の間に第1弾性部材が圧縮された状態で円弧状に配置されているため、遠心力が作用していない状態でも第1弾性部材は外周側へ迫り出そうとし、摺動部と第1弾性部材との摺動によりヒステリシストルクが発生する。すなわち、遠心力がほどんと作用しない低回転数領域においても、摺動部と第1弾性部材との摺動によりヒステリシストルクを得ることができる。これにより、例えば低回転数領域においてクラッチを連結する際にエンジンの回転数が低下することで共振が発生し過大トルク変動による捩り振動が発生しても、大捩り振動を効果的に吸収・減衰することができる。
第5の発明に係るダンパー機構は、第4の発明のダンパー機構において、隣り合う支持部同士の回転方向間には、少なくとも2つ以上の第1弾性部材が収容されている。隣り合う第1弾性部材の端部同士の間には、第1弾性部材を保持するとともに摺動部と摺動するスプリングシートが配置されている。
第6の発明に係るダンパー機構は、第1から第3の発明のいずれかのダンパー機構において、第2回転部材が第1弾性部材の端部を回転方向に支持する複数の支持部を有している。第1回転部材は、支持部と回転方向に対応する位置に配置され第1弾性部材の端部と当接可能な複数の当接部と、第1弾性部材の外周側に配置され第1弾性部材を半径方向に支持する摺動部とを有している。当接部と第1弾性部材の端部との間には、回転方向の隙間が形成されている。
本発明のフライホイール組立体およびダンパー機構では、第1弾性部材が予め圧縮された状態でセットされているため、第1および第2回転部材の相対回転を初期状態に戻す方向に大きな荷重を発生させることができる。これにより、高回転数領域における戻り不良の発生を抑制することができ、振動減衰性能の向上を図ることができる。
(1)構成
1)全体構造
図1〜図5を用いて本発明に係る2マスフライホイールについて説明する。図1に本発明の一実施形態としての2マスフライホイール1の縦断面概略図、図2に図1の上側半分の部分拡大図、図3に図1の下側半分の部分拡大図、図4および図5に2マスフライホイール1の平面概略図を示す。なお、図1〜図3のO−Oが2マスフライホイール1およびクラッチの回転軸線であり、図1〜図3の左側にはエンジン(図示せず)が配置されており、右側にはトランスミッション(図示せず)が配置されている。以後、図1〜図3において左側を軸方向エンジン側といい、右側を軸方向トランスミッション側という。また、図4および図5において矢印R1の向きが駆動側(回転方向正側)であり、矢印R2の向きが逆駆動側(回転方向負側)である。
図1に示すように、2マスフライホイール1は、エンジン側のクランクシャフト91からのトルクを図示しないクラッチ装置を介してトランスミッション側の入力シャフトに伝達するための装置であり、捩り振動を吸収・減衰するためのダンパー機能を有している。2マスフライホイール1は、主に、クランクシャフト91に固定された第1回転部材としての第1フライホイール2と、第1フライホイール2に相対回転可能に配置され図示しないクラッチ装置が装着される第3回転部材としての第2フライホイール3と、両フライホイール2,3を回転方向に弾性的に連結するダンパー機構4と、両フライホイール2,3の間に回転方向の抵抗を付与する第1摩擦発生機構5とおよび第2摩擦発生機構7とから構成されている。
2)第1フライホイール
第1フライホイール2は、クランクシャフト91側に大きな慣性モーメントを確保するための部材であり、図2に示すように、主要部を構成する第1フライホイール本体21と、第1フライホイール本体21の外周側に固定されたリングギヤ14と、第1フライホイール本体21のトランスミッション側に固定された環状のプレート22とから構成されている。第1フライホイール本体21の内周側には第1筒状部23が形成されており、第1フライホイール本体21は第1筒状部23を介してボルト92によりクランクシャフト91の先端に固定されている。第1筒状部23の外周側には、第2フライホイール3を回転可能に支持する軸受34が装着されている。また、第1フライホイール本体21の外周側には後述する第1コイルスプリング41を内周側に収容する摺動部としての第2筒状部25が形成されている。
3)第2フライホイール
第2フライホイール3は、環状かつ円板状の部材であり、第1フライホイール2の軸方向トランスミッション側に配置されている。第2フライホイール3の内周側には第2筒状部32が形成されており、第2フライホイール3は第2筒状部32を介して軸受34により第1フライホイール2に相対回転可能に支持されている。第2フライホイール3の軸方向トランスミッション側には、図示しないクラッチ装置が装着されている。
4)ダンパー機構
ダンパー機構4は、第1フライホイール2と第2フライホイール3とを回転方向に弾性的に連結するための機構であり、低剛性・広捩り角度・高ヒステリシストルクのダンパー特性を有する第1ダンパー8と、低剛性・低ヒステリシストルクのダンパー特性を有し第1ダンパー8と直列に作用する第2ダンパー9とから構成されている。具体的には、図2〜図4に示すように、ダンパー機構4は、2枚のプレートからなる第2回転部材としての環状の中間回転体44と、第1フライホイール2と中間回転体44とを回転方向に弾性的に連結する第1弾性部材としての複数の第1コイルスプリング41と、2枚のプレートの間に配置され第2フライホイール3に固定される第3回転部材としての環状の出力回転体48と、中間回転体44と出力回転体48とを回転方向に弾性的に連結する第2弾性部材としての複数の第2コイルスプリング43a,43b,43cとから主に構成されている。
なお、図6に第1コイルスプリング41のセット状態の説明図、図7(a)に第2ダンパー9の捩り特性線図、図7(b)に第1ダンパー8の捩り特性線図、図7(c)にダンパー機構4の捩り特性線図を示す。
4−1)第1ダンパー
図3および図4に示すように、中間回転体44は、外周側に突出する2つの支持部45と、第2コイルスプリング43a,43b,43cを保持する保持部44a,44b,44cとを有している。支持部45同士の回転方向間には、4つの第1コイルスプリング41が予め圧縮された状態で直列に収容されている。具体的には、第1コイルスプリング41の端部には、支持部45と回転方向に当接可能な第1スプリングシート46と、第1コイルスプリング41の端部同士の間に配置された第2スプリングシート42とが装着されており、4つの第1コイルスプリング41が円弧状に直列に配置されている。そして図6に示すように、4つの第1コイルスプリング41が自由状態(図6(a)の状態)から角度θ1だけ圧縮された状態(図6(b)の状態)で支持部45同士の回転方向間にセットされている。すなわち、図4に示すように、第1スプリングシート46から支持部45に対して常時予圧による荷重F1が作用している。
また図4に示すように、第1スプリングシート46および第2スプリングシート42は、第1コイルスプリング41の端部を覆う筒状部46a,42aを有している。筒状部46a,42aは半径方向外側に円弧状の当接面46b,42bを有しており、当接面46b,42bは第1フライホイール本体21の第2筒状部25の内周面25aと当接している。また、隣り合う第1および第2スプリングシート46,42の筒状部46a,42aの先端が回転方向に当接することで、第1ダンパー8の第1ストッパ機構55を実現している。
図3および図4に示すように、第1フライホイール本体21のトランスミッション側には、支持部45と軸方向に対向する2つの第1突起24が形成されており、プレート22のエンジン側には、支持部45に対向する2つの第2突起26が形成されている。第1突起24および第2突起26は、第1スプリングシート46と回転方向に当接可能である。
以上の構成により、第1フライホイール2と中間回転体44とが相対回転すると、第1コイルスプリング41が回転方向に直列に圧縮される。このとき、第1コイルスプリング41が予め圧縮された状態でセットされているため、第1フライホイール2への入力トルクが最小作動トルク(第1コイルスプリング41の圧縮状態に応じた所定値)以下では、第1フライホイール2と中間回転体44とは一体回転し、入力トルクが最小作動トルクを超えると第1コイルスプリング41の圧縮が開始される。これにより、第1コイルスプリング41を含む第1ダンパー8において、低剛性・広捩り角度のダンパー特性を実現することができる(図7(b)参照)。
また、図4に示すように、予め圧縮された4つの第1コイルスプリング41が円弧状に配置されているため、第1および第2スプリングシート46,42には半径方向外側への合成荷重F2が作用する。このため、第1および第2スプリングシート46,42の筒状部46a,42aは第1フライホイール2の第2筒状部25に押し付けられ、筒状部46a,42aと第2筒状部25との間に比較的大きな摩擦抵抗を発生させることができる。このように、第1および第2スプリングシート46,42と、第2筒状部25とにより第1フライホイール2と中間回転体44との間に摩擦抵抗を発生させる第1摩擦発生機構5が形成されている。これにより、第1ダンパー8において比較的高ヒステリシストルクのダンパー特性を実現することができる(図7(b)参照)。特に、この構成では遠心力が作用していない状態であっても、一定のヒステリシストルクを発生することができる。このため、低回転数領域においても所望のヒステリシストルクを得ることができる。
4−2)第2ダンパー
図2〜図5に示すように、第1コイルスプリング41の内周側には、3種類の第2コイルスプリング43a,43b,43cが2つずつ回転軸を挟んで対向するように配置されている。第2コイルスプリング43a,43b,43cは、出力回転体48に形成された窓部48a,48b,48cに収容されており、中間回転体44の保持部44a,44b,44cにより軸方向および回転方向に保持されている。第2ダンパーが3段階で作動するように、第2コイルスプリング43a,43b,43cと窓部48a,48b,48cとの回転方向間には異なる長さの隙間が確保されている。また、出力回転体48の外周側には複数の突起48dが形成されており、突起48dの回転方向間には中間回転体44に固定されたストッパ35が収容されている。中間回転体44と出力回転体48とが一定角度の相対回転を行うと、突起48dとストッパ35とが回転方向に当接する。すなわち、突起48dおよびストッパ35により第2ダンパーの作動範囲を制限する第2ストッパ機構56が構成されている。
以上の構成により、中間回転体44と出力回転体48とが相対回転すると、第2コイルスプリング43a,43b,43cが順次回転方向に圧縮され、相対回転角度が所定の角度に達すると第2ストッパ機構56により中間回転体44と出力回転体48とが一体回転する。これにより、第2ダンパー9において捩り剛性が3段階に変化する低剛性のダンパー特性を実現することができる(図7(a)参照)。この場合、3段目に作動を開始する第2コイルスプリング43cが作動するタイミングと、第1ダンパー8が作動するタイミングとがほぼ一致するように、第2コイルスプリング43cと窓部48cとの隙間などが調整されている。すなわち、図7(c)に示すように、第2コイルスプリング43cの圧縮が開始されるのとほぼ同時に第1コイルスプリング41の圧縮が開始され、第1コイルスプリング41と第2コイルスプリング43cとは中間回転体44が中間部材として機能することで直列に作用する。
また、図2および図3に示すように、出力回転体48の内周部と第1フライホイール本体21との軸方向間には、摩擦ワッシャ51およびコーンスプリング52が挟み込まれており、出力回転体48と第1フライホイール2との間には摩擦ワッシャ51により比較的小さな摩擦抵抗が発生する。このように、摩擦ワッシャ71と、コーンスプリング72とにより第1フライホイール2と出力回転体48との間に摩擦抵抗を発生させる第2摩擦発生機構7が形成されている。これにより、第2ダンパー9において比較的低ヒステリシストルクのダンパー特性を実現することができる。
さらに、図4に示すように、第1突起24および第2突起26と第1スプリングシート46との回転方向間には、初期状態で角度θが確保されている。このため、第1フライホイール2と中間回転体44との相対回転が角度θ以内であれば、第1コイルスプリング41は圧縮されず(図7(b)参照)、それに加えて、4つの第1コイルスプリング41が第1フライホイール2に対して相対回転する。すなわち、初期状態から角度θまでの範囲においては、第1コイルスプリング41が圧縮されず第2筒状部25と第1スプリングシート46および第2スプリングシート42との間で摩擦抵抗が発生する。これにより、図7(c)に示すように、第2摩擦発生機構7により発生するヒステリシストルクに加えて、捩り角度0°付近において第1摩擦発生機構5により比較的大きなヒステリシストルクを得ることができる。
以上の説明や図7(c)の捩り特性から明らかなように、このダンパー機構4では、従来補助的にしか用いられていない内周側に配置された第2ダンパー9がメインのダンパーとして機能し、外周側に配置された第1ダンパー8が過大トルク変動を吸収・減衰するためのダンパーとして機能する。
(2)動作および効果
1)トルク伝達
この2マスフライホイール1では、エンジンのクランクシャフト91からのトルクは、第1フライホイール2の第1フライホイール本体21に入力され、ダンパー機構4を介して第2フライホイール3へ伝達される。具体的には、ダンパー機構4では、第1コイルスプリング41が予め圧縮された状態で収容されているため、最小作動トルクまでは第1フライホイール2と中間回転体44とは一体回転し、中間回転体44と出力回転体48および第2フライホイール3とが相対回転する。この結果、中間回転体44に伝達されたトルクにより第1コイルスプリング41ではなく内周側の第2コイルスプリング43a,43bが中間回転体44と出力回転体48との間で順次圧縮される。第2コイルスプリング43cの圧縮が開始されるとほぼ同時に、第1コイルスプリング41が第1フライホイール2と中間回転体44との間で圧縮される。すなわち、第1コイルスプリング41と第2コイルスプリング43cとが中間回転体44により直列に圧縮される。さらに第1フライホイール2と第2フライホイール3との相対回転が進むと、やがて第1ストッパ機構55と第2ストッパ機構56とが作動し、第1フライホイール2と第2フライホイール3との相対回転は停止する。
このようにして、入力されたトルクは、第1コイルスプリング41(第1ストッパ機構55)、中間回転体44、第2コイルスプリング43a,43b,43c(第2ストッパ機構56)、出力回転体48、第2フライホイール3を介して図示しないクラッチディスク組立体およびトランスミッションの入力シャフトに出力される。
2)捩り振動の吸収・減衰
クラッチ連結状態において2マスフライホイール1にエンジンからの燃焼変動が入力されると、入力トルクが第1ダンパー8の最小作動トルク以下の比較的小さい捩り振動の場合は、ダンパー機構4において中間回転体44と出力回転体48とが相対回転し、それらの間で第2コイルスプリング43a,43bが2段階で並列に圧縮される。このとき、第2摩擦発生機構7により低ヒステリシストルクが発生する。
また、入力トルクが最小作動トルクよりも大きい大捩り振動の場合は、ダンパー機構4において、第1ダンパー8の第1コイルスプリング41と第2ダンパー9の第2コイルスプリング43cとが直列に作用する。このとき、第2摩擦発生機構7に加えて第1摩擦発生機構5により比較的大きなヒステリシストルクが発生する。
以上の作用により、ダンパー機構4において捩り振動が吸収・減衰される。
3)戻り不良の改善
クラッチ連結状態において、高回転数領域でドライバーがアクセルペダルを急に離すと、エンジンブレーキによりダンパー機構は逆駆動され、ダンパー機構には大捩り振動が入力される。このとき、前述のように従来のダンパー機構では外周側の弾性部材が遠心力により動作せず、内周側の弾性部材ではこのような大きな捩り振動を吸収・減衰することができないため、いわゆるダンパー機構の戻り不良が発生する。
しかし、このダンパー機構4では、第1コイルスプリング41が予め圧縮された状態で収容されているため、高回転数領域において第1摩擦発生機構5で発生するヒステリシストルクが遠心力の作用により大きくなっても、第1フライホイール2と第2フライホイール3との間には両フライホイール2,3を初期状態に戻す方向に第1コイルスプリング41からの大きな荷重F1が作用する。このため、この荷重F1が第1摩擦発生機構5で発生するヒステリシストルクに打ち勝つことができ、高回転数領域においてダンパー機構4の戻り不良の発生を抑制することができる。
4)過大トルク変動の吸収・減衰
共振などにより過大トルク変動が生じ、大捩り振動が発生した場合には、第2ダンパー9の作動に加えて、第1ダンパー8が作動する。具体的には、入力トルクが第1ダンパー8の最小作動トルクを超えると、第1ダンパー8の第1コイルスプリング41が直列に圧縮される。それに加えて、遠心力がほとんど作用しない低回転数領域においても、第1摩擦発生機構5により比較的大きなヒステリシスを得ることができる。すなわち、このダンパー機構4では、特に低回転数領域において低剛性・広捩り角度・高ヒステリシストルクのダンパー特性を実現することができ、過大トルク変動を効果的に吸収・減衰することができる。
また、第2ダンパー9のみが作動する捩り角度0°付近においても、第2摩擦発生機構7により発生するヒステリシストルクに加えて、第1摩擦発生機構5により比較的大きなヒステリシストルクが発生する(図7(c)参照)。これにより、過大トルク変動をより効果的に吸収・減衰することができ、ダンパー機構4の振動減衰性能をより向上させることができる。
5)ストッパ機構の破損・たたき音の発生低減
第1フライホイール2と第2フライホイール3との相対回転が所定の角度を超えると、第2ダンパー9の第2ストッパ機構56が作動し、第2ダンパー9の作動が停止する。このとき、第1ダンパー8が作動中であるため、第1ダンパー8による発生するトルクにより、突起48dとストッパ35とが衝突する際の衝撃が緩和され、ストッパ機構の破損やたたき音の発生を低減することができる。
(4)他の実施形態
以上、本発明に係るダンパー機構の実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形乃至修正が可能である。
例えば、本発明に係るダンパー機構の実施形態は、前述の2マスフライホイール1に限定されるものではなく、トルク変動や捩り振動を吸収・減衰する必要がある他の装置にも適用可能である。
本発明の一実施形態としての2マスフライホイールの縦断面概略図。 図1の上側部分の部分拡大図。 図1の下側部分の部分拡大図。 2マスフライホイールの部分平面図。 2マスフライホイールの部分平面図。 第1コイルスプリングのセット状態を示す図。 ダンパー機構の捩り特性線図。
符号の説明
1 2マスフライホイール
2 第1フライホイール(第1回転部材)
3 第2フライホイール(第3回転部材)
4 ダンパー機構
5 第1摩擦発生機構
7 第2摩擦発生機構
8 第1ダンパー
9 第2ダンパー
25 第2筒状部(摺動部)
41 第1コイルスプリング(第1弾性部材)
43a,43b,43c 第2コイルスプリング(第2弾性部材)
42 第2スプリングシート
44 中間回転体(第2回転部材)
45 支持部
46 第1スプリングシート
48 出力回転体(第3回転部材)

Claims (6)

  1. トルクを伝達するとともにトルク変動を吸収・減衰するためのダンパー機構であって、
    第1回転部材と、
    前記第1回転部材に対して相対回転可能に配置された第2回転部材と、
    前記第2回転部材に対して相対回転可能に配置された第3回転部材と、
    前記第1回転部材と前記第2回転部材とを回転方向に弾性的に連結する複数の第1弾性部材を有する第1ダンパーと、
    前記第2回転部材と前記第3回転部材とを回転方向に弾性的に連結し、前記第1ダンパーの最小作動トルクよりも小さいトルクで作動を開始する第2ダンパーと、を備え、
    前記第1弾性部材は、回転方向に予め圧縮された状態で前記第1回転部材および第2回転部材のいずれか一方に設けられている、
    ダンパー機構。
  2. 前記第2ダンパーは、前記第1弾性部材の内周側に配置され、前記第2回転部材と前記第3回転部材とを回転方向に弾性的に連結する複数の第2弾性部材を有している、
    請求項1に記載のダンパー機構。
  3. 前記第1ダンパーは、前記第2ダンパーの動作中に作動を開始する、
    請求項1または2に記載のダンパー機構。
  4. 前記第1回転部材および第2回転部材のいずれか一方は、前記第1弾性部材の端部を回転方向に支持する複数の支持部を有し、
    前記第1回転部材および第2回転部材の他方は、前記第1弾性部材の外周側に配置され、前記第1弾性部材の半径方向外側への移動を規制する摺動部を有し、
    前記第1弾性部材は、隣り合う前記支持部同士の回転方向間に圧縮された状態で円弧状に配置されている、
    請求項1から3のいずれかに記載のダンパー機構。
  5. 隣り合う前記支持部同士の回転方向間には、少なくとも2つ以上の前記第1弾性部材が収容されており、
    隣り合う前記第1弾性部材の端部同士の間には、前記第1弾性部材を保持するとともに前記摺動部と摺動するスプリングシートが配置されている、
    請求項4に記載のダンパー機構。
  6. 前記第2回転部材は、前記第1弾性部材の端部を回転方向に支持する複数の支持部を有し、
    前記第1回転部材は、前記支持部と回転方向に対応する位置に配置され前記第1弾性部材の端部と当接可能な複数の当接部と、前記第1弾性部材の外周側に配置され前記第1弾性部材を半径方向に支持する摺動部とを有し、
    前記当接部と前記第1弾性部材の端部との間には、回転方向の隙間が形成されている、
    請求項1から3のいずれかに記載のダンパー機構。
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