1.第1実施形態
(1)構成
1)全体構造
図1及び図2に示す本発明の一実施形態としてのクラッチ装置1は、エンジン側のクランクシャフト2とトランスミッション側の入力シャフト3との間でトルクを断続するための装置である。クラッチ装置1は、主に、第1フライホイール組立体4と、第2フライホイール組立体5と、クラッチカバー組立体8と、クラッチディスク組立体9と、レリーズ装置10とから構成されている。なお、第1フライホイール組立体4と第2フライホイール組立体5との組み合わせによって、ダンパー機構6を含むフライホイールダンパー11が構成されている。
なお、図1及び図2のO−Oがクラッチ装置1の回転軸線であり、図1及び図2の左側にはエンジン(図示せず)が配置されており、右側にはトランスミッション(図示せず)が配置されている。以後、図1及び図2において左側を軸方向エンジン側といい、右側を軸方向トランスミッション側という。
2)第1フライホイール組立体
第1フライホイール組立体4は、クランクシャフト2の先端に固定されている。第1フライホイール組立体4は、クランクシャフト2側に大きな慣性モーメントを確保するための部材である。第1フライホイール組立体4は、主に、円板状部材13と、環状部材14と、支持プレート37(後述)とから構成されている。円板状部材13は内周端が複数のボルト15によってクランクシャフト2の先端に固定されている。円板状部材13には、ボルト15に対応する位置にボルト貫通孔13aが形成されている。ボルト15はクランクシャフト2に対して軸方向トランスミッション側から取り付けられている。環状部材14は、厚肉ブロック状の部材であり、円板状部材13の外周端の軸方向トランスミッション側に固定されている。円板状部材13の外周端は溶接等によって環状部材14に固定されている。さらに、環状部材14の外周面にはエンジン始動用リングギア17が固定されている。なお、第1フライホイール組立体4は一体の部材から構成されていてもよい。
3)第2フライホイール組立体
第2フライホイール組立体5は、主に、摩擦面付きフライホイール21と、円板状プレート22とから構成されている。摩擦面付きフライホイール21は、環状かつ円板状の部材であり、第1フライホイール組立体4の外周側部分の軸方向トランスミッション側に配置されている。摩擦面付きフライホイール21には、軸方向トランスミッション側に第1摩擦面21aが形成されている。第1摩擦面21aは、環状かつ平坦な面であり、後述するクラッチディスク組立体9が連結される部分である。
円板状プレート22は、第1フライホイール組立体4と摩擦面付きフライホイール21との軸方向間に配置された部材である。円板状プレート22は、外周部が複数のリベット23によって摩擦面付きフライホイール21の外周部に固定されており、摩擦面付きフライホイール21と一体回転する部材として機能する。円板状プレート22は、摩擦面付きフライホイール21の第2摩擦面21bに対して軸方向に空間を介して対向している。この空間内に、後述する摩擦抵抗発生機構7の各部材が配置されている。このように摩擦抵抗発生機構7は第2フライホイール組立体5の円板状プレート22の当接部27と摩擦面付きフライホイール21との間に配置されているため、省スペースの構造が実現される。
第1フライホイール組立体4の支持プレート37は、第2フライホイール組立体5を第1フライホイール組立体4に対して半径方向に支持するための部材である。支持プレート37は、固定部37aと、その内周縁から軸方向トランスミッション側に延びる支持部37bとから構成されている。固定部37aは、クランクシャフと2の先端面と円板状部材13との軸方向間に配置されている。固定部37aは、環状の平坦な部材であり、回転軸O−Oに対して垂直な平面を有している。固定部37aは、クランクシャフト2の先端の平坦面に着座しており、ボルト貫通孔13aに対応してボルト貫通孔37cが形成されている。以上の構造により、支持プレート37は、円板状部材13及び入力側円板状プレート32とともに、ボルト15によってクランクシャフト2に固定されている。
摩擦面付きフライホイール21の内周面は、ブッシュ38を介して、支持プレート37の支持部37bの外周面に支持されている。このようにして、摩擦面付きフライホイール21は支持プレート37によって第1フライホイール組立体4及びクランクシャフト2に対して芯出しされている。
支持プレート37の構造及び機能について、さらに詳細に説明する。支持プレート37の支持部37bの軸方向エンジン側の部分の内周面37eは、クランクシャフト2の先端に形成された環状突起2aの外周面2bに当接している。さらに支持部37bの軸方向エンジン側の部分の外周面37fには、円板状部材13の内周面及び入力側円板状プレート32の内周面が当接している。ブッシュ38は、摩擦面付きフライホイール21と支持プレート37との間の回転方向の抵抗を減らすための部材である。この実施形態では、ブッシュ38は、摩擦面付きフライホイール21の内周面21cに圧入や接着によって固定されている。支持部37bの軸方向トランスミッション側部分の外周面37gには、ブッシュ38の内周面38bが回転方向に摺動可能に当接している。ブッシュ38は、摩擦面付きフライホイール21の内周面21cより、さらに軸方向エンジン側に延びている。つまり、ブッシュ38の外周面38aは軸方向エンジン側が摩擦面付きフライホイール21の内周面21cに当接していないが、ブッシュ38の内周面38bはすべて支持部37bの軸方向トランスミッション側の外周面37gに当接している。
以上の支持構造によって、以下に述べる優れた効果が得られる。
a)支持プレート37の構造が簡単である。具体的には、支持プレート37は一枚のプレートから構成され、固定部37aと、その縁から軸方向に延びる支持部37bとから構成されている。固定部37aと支持部37bが一体に形成されており、簡単な構造である。
b)支持プレート37が円板状部材13や入力側円板状プレート32とは別体の独立した部材であるため、支持部37bの加工精度が向上する。その結果、摩擦面付きフライホイール21の半径法位置決めが正確になる。
c)支持構造の組み付け及び分解は、ブッシュ38を内周面21cに固定した摩擦面付きフライホイール21を支持プレート37に対して軸方向に移動させるだけで行うことができる。つまり、支持構造の組み付け及び分解作業が簡単である。
4)ダンパー機構
ダンパー機構6について説明する。ダンパー機構6は、クランクシャフト2と摩擦面付きフライホイール21とを回転方向に弾性的に連結するための機構であり、回転方向に並列に作用するように配置された弾性連結機構29と摩擦抵抗発生機構7とから構成されている。
4−1)弾性連結機構
弾性連結機構29は、1対の出力側円板状プレート30,31と、入力側円板状プレート32と、複数のコイルスプリング33とから構成されている。
一対の出力側円板状プレート30,31は、軸方向エンジン側の第1プレート30と、軸方向トランスミッション側の第2プレート31とから構成されている。両プレート30,31は、円板状部材であり、軸方向に所定の間隔を空けて配置されている。各プレート30,31には、円周方向に並んだ複数の窓部30a,31aがそれぞれ形成されている。窓部30a,31aは、後述するコイルスプリング33を軸方向及び回転方向に支持するための構造であり、コイルスプリング33を軸方向に保持しかつその円周方向両端に当接する切り起こし部を有している。
入力側円板状プレート32は、プレート30,31の間に配置された円板状の部材である。入力側円板状プレート32は円周方向に延びる複数の窓孔32aを有しており、その窓孔32a内にコイルスプリング33が配置されている。
各コイルスプリング33は、大小のばねが組み合わせられた親子ばねである。各コイルスプリング33は、各窓孔32a及び窓部30a,31a内に収容され、半径方向両側と回転方向両側とを支持されているまた、各コイルスプリング33は、窓部30a,31aによって軸方向両側も支持されている。
次に、出力側円板状プレート30,31と摩擦面付きフライホイール21とを連結する連結構造34は、ボルト35とナット36とから構成されている。
4−2)摩擦抵抗発生機構
摩擦抵抗発生機構7は、クランクシャフト2と摩擦面付きフライホイール21との回転方向間でコイルスプリング33と並列に機能する機構であり、クランクシャフト2と摩擦面付きフライホイール21が相対回転すると所定の摩擦抵抗(ヒステリシストルク)を発生する。摩擦抵抗発生機構7は、摩擦面付きフライホイール21の第2摩擦面21bと円板状プレート22の当接部27との間に配置され互いに当接する複数のワッシャによって構成されている。
5)クラッチカバー組立体
クラッチカバー組立体8は、弾性力によってクラッチディスク組立体9の摩擦フェーシング54を摩擦面付きフライホイール21の第1摩擦面21aに付勢するための機構である。クラッチカバー組立体8は、主に、クラッチカバー48と、プレッシャープレート49と、ダイヤフラムスプリング50とから構成されている。
クラッチカバー48は、板金製の円盤状部材であり、外周部がボルト51によって摩擦面付きフライホイール21の外周部に固定されている。
プレッシャープレート49は、例えば鋳鉄製の部材であり、クラッチカバー48の内周側において摩擦面付きフライホイール21の軸方向トランスミッション側に配置されている。プレッシャープレート49は、摩擦面付きフライホイール21の第1摩擦面21a対向する押圧面49aを有している。また、プレッシャープレート49において押圧面49aと反対側の面にはトランスミッション側に突出する複数の弧状突出部49bが形成されている。プレッシャープレート49は、弧状に延びる複数のストラッププレート53によってクラッチカバー48に相対回転不能にかつ軸方向に移動可能に連結されている。なお、クラッチ連結状態ではプレッシャープレート49に対してストラッププレート53が摩擦面付きフライホイール21から離れる方向への荷重を付与している。
ダイヤフラムスプリング50は、プレッシャープレート49とクラッチカバー48との間に配置された円板状部材であり、環状の弾性部50aと、弾性部50aから内周側に延びる複数のレバー部50bとから構成されている。弾性部50aの外周縁部はプレッシャープレート49の突出部49bに軸方向トランスミッション側から当接している。
クラッチカバー48の内周縁には、軸方向エンジン側に延びさらに外周側に折り曲げられたタブ48aが複数形成されている。タブ48aは、ダイヤフラムスプリング50の孔を貫通してプレッシャープレート49側に延びている。このタブ48aによって支持された2個のワイヤリング52が、ダイヤフラムスプリング50の弾性部50aの内周部の軸方向両側を支持している。この状態で、弾性部50aは、軸方向に圧縮されており、プレッシャープレート49とクラッチカバー48とに軸方向に弾性力を付与している。
6)クラッチディスク組立体
クラッチディスク組立体9は、摩擦面付きフライホイール21の第1摩擦面21aとプレッシャープレート49の押圧面49aとの間に配置される摩擦フェーシング54を有している。摩擦フェーシング54は、円板状かつ環状のプレート55を介してハブ56に固定されている。ハブ56の中心孔には、トランスミッション入力シャフト3がスプライン係合している。
7)レリーズ装置
レリーズ装置10は、クラッチカバー組立体8のダイヤフラムスプリング50を駆動することでクラッチディスク組立体9に対してクラッチレリーズ動作を行うための機構である。レリーズ装置10は、主に、レリーズベアリング58と、図示しない油圧シリンダ装置とから構成されている。レリーズベアリング58は、主にインナーレースとアウターレースとその間に配置された複数の転動体とからなり、ラジアル荷重及びスラスト荷重を受けることが可能となっている。レリーズベアリング58のアウターレースには、筒状のリティーナ59が装着されている。リティーナ59は、アウターレースの外周面に当接する筒状部と、筒状部の軸方向エンジン側端から半径方向内側に延びアウターレースの軸方向トランスミッション側面に当接する第1フランジと、筒状部の軸方向エンジン側端から半径方向外側に延びる第2フランジとを有している。第2フランジには、ダイヤフラムスプリング50のレバー部50bの半径方向内側端に軸方向エンジン側から当接する環状の支持部が形成されている。
油圧室シリンダ装置は、油圧室構成部材と、ピストン60とから主に構成されている。油圧室構成部材はその内周側に配置された筒状のピストン60との間に油圧室を構成している。油圧室内には油圧回路から油圧が供給可能となっている。ピストン60は、概ね筒状の部材であり、レリーズベアリング58のインナーレースに対して軸方向トランスミッション側から当接するフランジを有している。この状態で、油圧回路から油圧室に作動油が供給されると、ピストン60はレリーズベアリング58を軸方向エンジン側に移動させる。
(2)動作
1)トルク伝達
このクラッチ装置1では、エンジンのクランクシャフト2からのトルクは、フライホイールダンパー11に入力され、第1フライホイール組立体4から第2フライホイール組立体5に対してダンパー機構6を介して伝達される。ダンパー機構6では、トルクは、入力側円板状プレート32、コイルスプリング33、出力側円板状プレート30,31の順番で伝達される。さらに、トルクは、フライホイールダンパー11から、クラッチ連結状態でクラッチディスク組立体9に伝達され、最後に入力シャフト3に出力される。
2)捩り振動の吸収・減衰
クラッチ装置1にエンジンからの燃焼変動が入力されると、ダンパー機構6において入力側円板状プレート32と出力側円板状プレート30,31とが相対回転し、その間で複数のコイルスプリング33が圧縮される。さらに、摩擦抵抗発生機構7が所定のヒステリシストルクを発生する。以上の作用により捩じり振動が吸収・減衰される。コイルスプリング33の圧縮は、具体的には、入力側円板状プレート32の窓孔32aの回転方向端部と出力側円板状プレート30,31の窓部30a,31aの回転方向端部との間で行われる。
捩り振動入力時には、摩擦面付きフライホイール21の内周面21cが、ブッシュ38を介して、支持プレート37の支持部37bの外周面37gに対して回転方向に摺動する。このとき、ブッシュ38によって回転方向に大きな抵抗は発生しにくい。
(3)他の実施形態
以上、本発明に従うクラッチ装置の一実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形乃至修正が可能である。
2.第2実施形態
(1)構成
1)全体構造
図4に示す本発明の一実施形態としての2マスフライホイール101は、エンジン側のクランクシャフト191からのトルクをクラッチ(クラッチディスク組立体193及びクラッチカバー組立体194)を介してトランスミッション側の入力シャフト192にトルクを伝達するための装置である。2マスフライホイール101は、捩り振動を吸収・減衰するためのダンパー機能を有している。2マスフライホイール101は、主に第1フライホイール102と、第2フライホイール103と、両フライホイール102,103の間のダンパー機構104と、第1摩擦発生機構105と、第2摩擦発生機構106とから構成されている。
なお、図4のO−Oが2マスフライホイール101及びクラッチの回転軸線であり、図4の左側にはエンジン(図示せず)が配置されており、右側にはトランスミッション(図示せず)が配置されている。以後、図4において左側を軸方向エンジン側といい、右側を軸方向トランスミッション側という。また、図6において矢印R1の向きが駆動側(回転方向正側)であり、矢印R2の向きが反駆動側(回転方向負側)である。
なお、以下に述べる実施形態における実際の数値は一実施例に関するものであって、本発明を限定するものではない。
2)第1フライホイール
第1フライホイール102は、クランクシャフト191の先端に固定されている。第1フライホイール102は、クランクシャフト191側に大きな慣性モーメントを確保するための部材である。第1フライホイール102は、主に、フレキシブルプレート111と、イナーシャ部材113とから構成されている。
フレキシブルプレート111は、クランクシャフト191からイナーシャ部材113に対してトルクを伝達すると共に、クランクシャフトからの曲げ振動を吸収するための部材である。したがって、フレキシブルプレート111は、回転方向には剛性が高いが軸方向及び曲げ方向には剛性が低くなっている。具体的には、フレキシブルプレート111の軸方向の剛性は、3000kg/mm以下であり、600kg/mm〜2200kg/mmの範囲にあることが好ましい。フレキシブルプレート111は、中心孔が形成された円板状の部材であり、例えば板金製である。フレキシブルプレート111は内周端が複数のボルト122によってクランクシャフト191の先端に固定されている。フレキシブルプレート111には、ボルト122に対応する位置にボルト貫通孔が形成されている。ボルト122はクランクシャフト191に対して軸方向トランスミッション側から取り付けられている。
イナーシャ部材113は、厚肉ブロック状の部材であり、フレキシブルプレート111の外周端の軸方向トランスミッション側に固定されている。フレキシブルプレート111の最外周部は、円周方向に並んだ複数のリベット115によってイナーシャ部材113に固定されている。イナーシャ部材113の外周面にはエンジン始動用リングギア114がリベット115によって固定されている。なお、第1フライホイール102は一体の部材から構成されていてもよい。
フレキシブルプレート111の外周端には、さらに、プレート112が固定されている。プレート112は、外周部がフレキシブルプレート111とイナーシャ部材113との間に挟まれ、リベット115によって固定されている。プレート112は、フレキシブルプレート111の外周部111aに対して軸方向に間隔をあけて対向する対向部112aを有している。対向部112aは、プレート111の内周部であり、環状かつ平坦な形状である。なお、フレキシブルプレート111の外周部111aとプレート112の対向部112aとの間の環状空間内に、第2摩擦発生機構106(後述)が配置されている。
3)第2フライホイール
第2フライホイール103は、環状かつ円板状の部材であり、第1フライホイール102の軸方向トランスミッション側に配置されている。第2フライホイール103には、軸方向トランスミッション側にクラッチ摩擦面103aが形成されている。クラッチ摩擦面103aは、環状かつ平坦な面であり、後述するクラッチディスク組立体193が連結される部分である。第2フライホイール103は、さらに、内周縁において軸方向エンジン側に延びる内周筒状部103bを有している。また、第2フライホイール103の内周部には、ボルト122が貫通するための貫通孔103dが円周方向に並んで形成されている。
4)ダンパー機構
ダンパー機構104について説明する。ダンパー機構4は、クランクシャフト191と第2フライホイール103とを回転方向に弾性的に連結するための機構である。このように第2フライホイール103はダンパー機構4によってクランクシャフト191に連結されることで、ダンパー機構4と共にフライホイール組立体(フライホイールダンパー)を構成している。ダンパー機構104は、複数のコイルスプリング134,135,136と、一対の出力側円板状プレート132,133と、入力側円板状プレート120とから構成されている。なお、図18の機械回路図に示すように、コイルスプリング134,135,136は摩擦発生機構105,106に対して回転方向に並列に作用するように機能的に配置されている。
一対の出力側円板状プレート132,133は、軸方向エンジン側の第1プレート132と、軸方向トランスミッション側の第2プレート133とから構成されている。両プレート132,133は、円板状部材であり、軸方向に所定の間隔を空けて配置されている。各プレート132,133には、円周方向に並んだ複数の窓部146,147がそれぞれ形成されている。窓部146,147は、後述するコイルスプリング134,135を軸方向及び回転方向にそれぞれ支持するための構造であり、コイルスプリング134,135を軸方向に保持しかつその円周方向両端に当接する切り起こし部を有している。窓部146,147は、それぞれ2個ずつ、円周方向に交互に並んで配置されている(同一半径方向位置に配置されている)。さらに、各プレート132,133には、円周方向に並んだ複数の第3窓部148がそれぞれ形成されている。第3窓部148は、半径方向対向する2カ所に形成され、具体的には第1窓部146の外周側に形成されており、後述する第3コイルスプリング136を軸方向及び回転方向にそれぞれ支持するための構造である。
第1プレート132と第2プレート133は、内周部同士は軸方向に一定の間隔を維持しているが、外周部同士は互いに近接してリベット141,142によって堅く固定されている。第1リベット141は、円周方向に並んで配置されている。第2リベット142は、第1プレート132と第2プレート133において形成された切り起こし当接部143,144同士を固定している。切り起こし当接部143,144は、円周方向の2カ所において半径方向に対向して形成され、具体的には第2窓部147の半径方向外側に配置されている。図5に示すように、切り起こし当接部143,144の軸方向位置は入力側円板状プレート120と同一である。
第2プレート133は、外周部が複数のリベット149によって、第2フライホイール103の外周部に固定されている。
入力側円板状プレート120は、出力側円板状プレート132,133の間に配置された円板状の部材である。入力側円板状プレート120には、第1窓部146に対応した第1窓孔138と、第2窓部147に対応した第2窓孔139が形成されている。また、第1及び第2窓孔138,139は、それぞれ、直線状の内周縁を有しているが、内周縁の回転方向中間部分には半径方向内側に凹んだ切り欠き138a,139aを有している。入力側円板状プレート120は、図14に示すように、さらに、中心孔120aと、その回りに形成された複数のボルト貫通孔120bが形成されている。また、外周縁の各窓孔138,139の円周方向間にあたる位置には、半径方向外側に突出する突起120cが形成されている。突起120cは、出力側円板状プレート132,133の切り起こし当接部143,144と第3コイルスプリング136から回転方向に離れて配置されており、かつ、回転方向に接近するといずれにも当接可能となっている。言い換えると、突起120cと切り起こし当接部143,144はダンパー機構104全体のストッパー機構171を構成している。また、突起120c同士の回転方向の空間は第3コイルスプリング136を収納するための第3窓孔140として機能している。さらに、入力側円板状プレート120の円周方向の複数箇所(この実施形態では4カ所)には、孔120dが形成されている。孔120dは概ね円形状であるが、わずかに半径方向に長くなっている。孔120dの回転方向位置は窓孔138,139の回転方向間であり、孔120dの半径方向位置は切り欠き138a,139aとほぼ同じである。
以上に述べたように、入力側円板状プレート120の突起120cは、円周方向に隙間をあけて配置された複数のパーティションであり、各パーティション同士の円周方向隙間には、第3コイルスプリング136と、切り起こし当接部143,144とが別々に配置されている。言い換えると、突起120cは、第3コイルスプリング136に対して回転方向に当接する機能と、円板状プレート132,133の切り起こし当接部143,144に当接する機能とを有している。
入力側円板状プレート120は、フレキシブルプレート111,補強部材118,及び支持部材119と共に、ボルト122によってクランクシャフト191に固定されている。フレキシブルプレート111の内周部は、クランクシャフト191シャフト191の先端面191aの軸方向トランスミッション側面に当接している。補強部材118は、円板状の部材であり、フレキシブルプレート111の内周部の軸方向トランスミッション側面に当接している。
支持部材119は、筒状部119aと、その外周面から半径方向に延びる円板状部119bとから構成されている。円板状部119bは、補強部材118の軸方向トランスミッション側面に当接している。円板状部119bには、ボルト122が貫通する孔が形成されており、円板状部119bは固定部として機能している。円板状部119bは環状の平坦形状であり、筒状部119aの軸方向トランスミッション側部は、円板状部119bの内周縁から軸方向に延びている。筒状部119aの内周面は、クランクシャフト191の先端中心に形成された円柱突起191bの外周面に当接して芯出しされている。フレキシブルプレート111の内周面及び補強部材118の内周面は、筒状部119aの軸方向エンジン側の外周面に当接して芯出しされている。入力側円板状プレート120の内周面は、筒状部119aの軸方向トランスミッション側根元の外周面に当接して芯出しされている。筒状部119aの内周面には軸受123が装着され、軸受123はトランスミッションの入力シャフト192の先端を回転自在に支持している。また、各部材111,118,119,120はネジ121によって互いに堅く固定されている。
以上に述べたように、支持部材119は、クランクシャフト191に対して半径方向位置決めされた状態で固定され、さらに第1フライホイール102と第2フライホイール103の半径方向位置決めを行っている。このように一つの部品に複数の機能を持たせているため、部品点数が少なくなり、コスト低減につながる。
第2フライホイール103の筒状部103bの内周面は、ブッシュ130を介して、支持部材119の筒状部119aの外周面に支持されている。このようにして、第2フライホイール103は支持部材119によって第1フライホイール102及びクランクシャフト191に対して芯出しされている。ブッシュ130は、筒状のラジアル軸受部130aと、入力側円板状プレート120の内周部と第2フライホイール103の筒状部103b先端との間に配置されたスラスト軸受部130bを有している。このように、第2フライホイール3からのスラスト荷重は、スラスト軸受部130bを介して、軸方向に並んで配置された各部材111,118,119,120によって受けられるようになっている。つまり、ブッシュ130のスラスト軸受部130bが、入力側円板状プレート120の内周部に支持されて第2フライホイール103からの軸方向の荷重を受けるスラスト軸受として機能している。入力側円板状プレート120の内周部は平板状であって平面度が向上しているため、スラスト軸受における発生荷重が安定する。また、入力側円板状プレート120の内周部は平面状であるため、スラスト軸受部130bを長く取ることができ、その結果ヒステリシストルクが安定する。さらに、入力側円板状プレート120の内周部は支持部材119の円板状部119bに対して軸方向に密に当接する部分であるため、変形しにくい。
なお、ブッシュ130のラジアル軸受部130aとスラスト軸受部130bとは、分離した別の部材であってもよい。また、入力側円板状プレート120はクランクシャフト191シャフト191の先端面に直接当接していても良い。
第1コイルスプリング134は、第1窓孔138及び第1窓部146内に配置されている。第1コイルスプリング134の回転方向両端は、第1窓孔138及び第1窓部146の回転方向端に当接又は近接している。
第2コイルスプリング135は、第2窓孔139及び第2窓部147内に配置されている。第2コイルスプリング135は、大小のばねが組み合わせられた親子ばねであり、第1コイルスプリング134より剛性が高い。第2コイルスプリング135の回転方向両端は、第2窓部147の回転方向両端に近接又は当接しているが、第2窓孔139の回転方向両端から所定角度(この実施形態では4°)離れている。第1コイルスプリング134と第2コイルスプリング135は、回転方向に並んだ部材であり(半径方向位置が同じであり)、第2フライホイール103のクラッチ摩擦面103aにおいて摩擦フェーシング193aが当接する部分より内周側に配置されている(前記部分の内周縁より外周側にある部分がない)。このように、第1及び第2コイルスプリング134,135が第2フライホイール103のクラッチ摩擦面103aより内周側に配置されているため、フライホイール組立体の軸方向寸法が小さく抑えられている。
第3コイルスプリング136は、第3窓孔140及び第3窓部148内に配置されている。第3コイルスプリング136は、第1コイルスプリング134及び第2コイルスプリング135より小型ではあるが外周に配置されているため、剛性は高くなっている。なお、第3コイルスプリング136の剛性は第1及び第2コイルスプリング134,135の剛性の2倍以上であることが好ましい。第3コイルスプリング136は、第2フライホイール103とクランクシャフト191との間で第1及び第2コイルスプリング134,135と並列に作用するように機能的に配置され、第1及び第2コイルスプリング134,135の圧縮角度最大領域においてのみ圧縮される。第3コイルスプリング136の半径方向位置は、摩擦面103aが画定する環状領域内である。
5)摩擦発生機構
5−1)第1摩擦発生機構105
第1摩擦発生機構105は、ダンパー機構104の入力側円板状プレート120と出力側円板状プレート132,133との回転方向間でコイルスプリング134,135,136と並列に機能する機構であり、クランクシャフト191と第2フライホイール103が相対回転すると所定の摩擦抵抗(ヒステリシストルク)を発生する。第1摩擦発生機構105は、ダンパー機構104の作動角範囲全体で一定の摩擦を発生するための装置であり、比較的小さな摩擦を発生するようになっている。
第1摩擦発生機構105は、ダンパー機構104より内周側に配置されており、さらに第1プレート132と第2フライホイール103との軸方向間に配置されている。第1摩擦発生機構105は、第1摩擦部材151と、第2摩擦部材152と、コーンスプリング153と、ワッシャ154とから構成されている。
第1摩擦部材151は、入力側円板状プレート120と一体回転して第1プレート132に回転方向に摺動するための部材である。図10〜13に示すように、第1摩擦部材151は、環状部151aと、環状部151aから軸方向トランスミッション側に延びる第1及び第2係合部151b、151cとを有している。環状部151aは、第1プレート132の内周部に対して回転方向に摺動可能に当接している。第1係合部151bと第2係合部151cは、回転方向に交互に配置されている。第1係合部151bは、回転方向に細長い形状を有しており、入力側円板状プレート120の窓孔138,139の内周側切り欠き138a,139aに係合している。第2係合部151cは、半径方向にわずかに長い形状を有しており、入力側円板状プレート120の孔120dに係合している。このため、第1摩擦部材151は、入力側円板状プレート120に対して相対回転不能にかつ軸方向に移動可能になっている。
なお、第1係合部151bの軸方向先端の回転方向中間位置にさらに軸方向に延びる第1突起151dが形成されている。このため、第1突起151dの回転方向両側には第1軸方向面151eが形成されている。また、第2係合部151cの軸方向先端の半径方向内側位置にさらに軸方向に延びる第2突起151fが形成されている。このため、第2突起151fの半径方向外側位置には第2軸方向面151gが形成されている。
第2摩擦部材152は、入力側円板状プレート120と一体回転して第2フライホイール103に回転方向に摺動するための部材である。第2摩擦部材152は、図17に示すように、環状の部材であり、第2フライホイール103の内周部の第2摩擦面103cに対して回転方向に摺動可能に当接している。第2摩擦面103cは第2フライホイール103における他の部分より軸方向トランスミッション側に凹んだ平坦な環状面である。
第2摩擦部材152の内周縁には、回転方向に並んだ複数の切り欠き152aが形成されている。これら切り欠き152a内には、第1係合部151bの第1突起151dと第2係合部151cの第2突起151fが各々係合している。そのため、第2摩擦部材152は、第1摩擦部材151に対して相対回転不能にかつ軸方向に移動可能になっている。
コーンスプリング153は、第1摩擦部材151と第2摩擦部材152との軸方向間に配置され、両部材を軸方向に離れる方向に付勢するための部材である。コーンスプリング153は、図16に示すように、円錐状又は円板状のばねであり、内周縁に複数の切り欠き153aが形成されている。これら切り欠き153a内には、第1係合部151bの第1突起151dと第2係合部151cの第2突起151fが各々係合している。そのため、コーンスプリング153は、第1摩擦部材151に対して相対回転不能にかつ軸方向に移動可能になっている。
ワッシャ154は、コーンスプリング153の荷重を第1摩擦部材151に確実に伝えるための部材である。ワッシャ154は、図17に示すように、環状の部材であり、内周縁に円周方向に並んだ複数の切り欠き154aを有している。これら切り欠き154a内には、第1係合部151bの第1突起151dと第2係合部151cの第2突起151fが各々係合している。そのため、ワッシャ154は、第1摩擦部材151に対して相対回転不能にかつ軸方向に移動可能になっている。ワッシャ154は、第1係合部151bの第1軸方向面151eと第2係合部151cの第2軸方向面151gに着座している。コーンスプリング153は、内周部がワッシャ154に支持され、外周部が第2摩擦部材152に支持されている。
5−2)第2摩擦発生機構106
第2摩擦発生機構106は、ダンパー機構4の入力側円板状プレート120と出力側円板状プレート132,133との回転方向間でコイルスプリング134,135,136と並列に機能する機構であり、クランクシャフト191と第2フライホイール103が相対回転すると所定の摩擦抵抗(ヒステリシストルク)を発生する。第2摩擦発生機構106は、ダンパー機構104の作動角範囲全体で一定の摩擦を発生するための装置であり、比較的大きな摩擦を発生するようになっている。この実施形態では、第2摩擦発生機構106が発生するヒステリシストルクは、第1摩擦発生機構105が発生するヒステリシストルクの5〜10倍となっている。
第2摩擦発生機構106は、フレキシブルプレート111の外周部である環状部111aと、第2円板状プレート112との軸方向間に形成された空間内に配置され互いに当接する複数のワッシャによって構成されている。第2摩擦発生機構106の各ワッシャは、イナーシャ部材113及びリベット115内周側に近接して配置されている。
第2摩擦発生機構106は、図7に示すように、フレキシブルプレート111から第2円板状プレート112の対向部分112aに向かって順番に、フリクションワッシャ157、入力側フリクションプレート158、及びコーンスプリング159を有している。このようにフレキシブルプレート111は第2摩擦発生機構106を保持する機能も有しているため、部品点数が少なくなり、構造が簡単になる。
コーンスプリング159は、各摩擦面に対して軸方向に荷重を付与するための部材であり、対向部分112aと入力側フリクションプレート158との間に挟まれて圧縮されており、そのため両部材に対して軸方向に付勢力を与えている。入力側フリクションプレート158は外周縁に形成された爪部158aが、第2円板状プレート112に形成された軸方向に延びる切り欠き112bに係合しており、この係合によって入力側フリクションプレート158は、第2円板状プレート112に対して、相対回転は不能であるが軸方向に移動可能となっている。
フリクションワッシャ157は、図8に示すように、回転方向に並んで配置された複数の部材であり、それぞれが弧状に延びている。この実施形態ではフリクションワッシャ157は合計6個である。各フリクションワッシャ157は、入力側フリクションプレート158とフレキシブルプレート111の外周部である環状部111aの間に挟まれている。つまり、フリクションワッシャ157の軸方向エンジン側面157aはフレキシブルプレート111の軸方向トランスミッション側面に摺動可能に当接しており、フリクションワッシャ157の軸方向トランスミッション側面157bは入力側フリクションプレート158の軸方向エンジン側面に摺動可能に当接している。図9に示すように、フリクションワッシャ157の内周面には、凹部163が形成されている。凹部163は、フリクションワッシャ157の概ね回転方向中心に形成され、具体的には、回転方向に延びる底面163aと、その両端から概ね半径方向に(底面163aから概ね直角に)延びる回転方向端面163bとを有している。凹部163は、フリクションワッシャ157の内周面の軸方向中間に形成されているため、軸方向両側を構成する軸方向端面163c、163dを有している。
各フリクションワッシャ157の内周側、より具体的には凹部163内には、それぞれ、フリクション係合部材160が配置されている。各フリクション係合部材160の外周部は、フリクションワッシャ157の凹部163内に配置されている。なお、フリクションワッシャ157とフリクション係合部材160はともに樹脂製である。
フリクション係合部材160とフリクションワッシャ157の凹部163とによって構成される係合部分164について説明する。フリクション係合部材160は、軸方向端面160a,160bと、回転方向端面160cとを有している。フリクション係合部材160の外周面160gは凹部163の底面163aに近接している。回転方向端面160cと回転方向端面163bのそれぞれとの間には所定角度の回転方向隙間165(図9における165A)が確保されており、両角度の合計がそのフリクションワッシャ157がフリクション係合部材160に対して相対回転可能な所定角度の大きさとなる。なお、この角度はエンジンの燃焼変動に起因する微少捩り振動により生じるダンパー作動角に等しい又はわずかに越える範囲にあることが好ましい。なお、この実施形態では、フリクション係合部材160は、図9に示す中立状態において、凹部163の回転方向中心に配置されている。したがって、フリクション係合部材160回転方向各側の隙間の大きさは同じである。
フリクション係合部材160は、第1プレート132に対して、一体回転するようにかつ軸方向に移動可能となるように係合している。具体的には、第1プレート132の外周縁には軸方向エンジン側に延びる環状壁132aが形成されており、環状壁132aには各フリクション係合部材160に対応して半径方向に凹んだ凹部161が形成されている。さらに、凹部161の回転方向中心には半径方向に貫通する第1スリット161aが形成されており、回転方向両側には半径方向に貫通する第2スリット161bが形成されている。フリクション係合部材160は、第1スリット161a内に半径方向外側から内側に向かって延びさらに回転方向両側に延び環状壁132aの内周面に当接する第1脚部160eと、各第2スリット161b内に半径方向外側から内側に向かって延びさらに回転方向外側に延びて環状壁132aの内周面に当接する一対の第2脚部160fを有している。これにより、フリクション係合部材160が環状壁132aから半径方向外方に移動することがない。さらに、フリクション係合部材160は、半径方向内側に延び環状壁132aの凹部161に対して回転方向に係合する凸部160dを有している。これにより、フリクション係合部材160は、第1プレート132の凸部として一体回転する。
なお、フリクション係合部材160は、第1プレート132に対して軸方向に着脱可能である。
また、フリクション係合部材160の軸方向寸法が凹部163の軸方向寸法より短い(つまり、凹部163の軸方向端面163c,163d間がフリクション係合部材160の軸方向端面160a,160b間より長い)ため、フリクション係合部材160はフリクションワッシャ157に対して軸方向に移動可能である。さらに、フリクション係合部材160の外周面160gと凹部163の底面163aとの間には半径方向隙間が確保されているため、フリクション係合部材160はフリクションワッシャ157に対して所定角度ではあるが傾くことが可能である。
以上に述べたように、フリクションワッシャ157は、入力側の部材であるフレキシブルプレート111と入力側フリクションプレート158に対して回転方向に移動可能に摩擦係合し、フリクション係合部材160に対して係合部分164の回転方向隙間165を介してトルク伝達可能に係合している。さらに、フリクション係合部材160は、第1プレート132と一体回転すると共に、軸方向に移動可能となっている。
次に、フリクションワッシャ157とフリクション係合部材160との関係について、さらに詳細に説明する。フリクション係合部材160の回転方向幅(回転方向角度)は全て同じであるが、凹部163の回転方向幅(回転方向角度)が異なるものがある。言い換えると、凹部163の回転方向幅が異なる少なくとも2種類のフリクションワッシャ157がある。この実施形態では、図8の上下方向に対向する2つの第1フリクションワッシャ157Aと、左右方向に対向する4つの第2フリクションワッシャ157Bとから構成されている。第1フリクションワッシャ157Aと第2フリクションワッシャ157Bは概ね同一形状であり、又同一材料からなる。両者が異なる点は、凹部163の回転方向隙間の回転方向幅(回転方向角度)のみである。具体的には、第2フリクションワッシャ157Bの凹部163の回転方向幅が、第1フリクションワッシャ157Aの凹部163の回転方向幅より大きくなっている。この結果、第2フリクションワッシャ157Bにおける第2係合部分164Bの第2回転方向隙間165Bが、第1フリクションワッシャ157Aにおける第1係合部分164Aの第1回転方向隙間165Aより大きくなっている。この実施形態では、例えば、前者が10°であり、後者が8°であり、その差は2°である。
各フリクションワッシャ157A,157Bの両回転方向端は互いに近接している。回転方向端間に確保された回転方向端間の角度は、第2フリクションワッシャ157Bにおける第2回転方向隙間165Bと第1フリクションワッシャ157Aにおける第1回転方向隙間165Aの差(例えば、2°)より、大きく設定されている。
6)クラッチディスク組立体
クラッチのクラッチディスク組立体193は、第2フライホイール103のクラッチ摩擦面103aに近接して配置される摩擦フェーシング193aと、トランスミッション入力シャフト192にスプライン係合するハブ193bとを有している。
7)クラッチカバー組立体
クラッチカバー組立体194は、クラッチカバー196と、ダイヤフラムスプリング197と、プレッシャープレート198とを有している。クラッチカバー196は、第2フライホイール103に固定された円板状かつ環状部材である。プレッシャープレート198は、摩擦フェーシング193aに近接する押圧面を有する環状の部材であり、クラッチカバー196と一体回転するようになっている。ダイヤフラムスプリング197は、クラッチカバー196に支持された状態でプレッシャープレート198を第2フライホイール側に弾性的に付勢するための部材である。図示しないレリーズ装置がダイヤフラムスプリング197の内周端を軸方向エンジン側に押すと、ダイヤフラムスプリング197はプレッシャープレート198への付勢を解除する。
(2)動作
1)トルク伝達
この2マスフライホイール101では、エンジンのクランクシャフト191からのトルクは、第2フライホイール103に対してダンパー機構104を介して伝達される。ダンパー機構104では、トルクは、入力側円板状プレート120、コイルスプリング134〜136、出力側円板状プレート132,133の順番で伝達される。さらに、トルクは、2マスフライホイール101から、クラッチ連結状態でクラッチディスク組立体193に伝達され、最後に入力シャフト192に出力される。
2)捩り振動の吸収・減衰
2マスフライホイール101にエンジンからの燃焼変動が入力されると、ダンパー機構104において入力側円板状プレート120と出力側円板状プレート132,133とが相対回転し、その間でコイルスプリング134〜136が並列に圧縮される。さらに、第1摩擦発生機構105及び第2摩擦発生機構106が所定のヒステリシストルクを発生する。以上の作用により捩じり振動が吸収・減衰される。
次に、図19の捩り特性線図を用いてダンパー機構104の動作を説明する。捩り角度の小さな領域(角度ゼロ付近)では、第1コイルスプリング134のみが圧縮されて比較的低剛性の特性が得られる。捩り角度が大きくなると、第1コイルスプリング134と第2コイルスプリング135が並列に圧縮され、比較的高剛性の特性が得られる。捩り角度がさらに大きくなると、第1コイルスプリング134と第2コイルスプリング135と第3コイルスプリング136が並列に圧縮され、捩り特性の両端に最も高い剛性の特性が得られる。第1摩擦発生機構105は、捩り角度の全ての領域において作動している。なお、第2摩擦発生機構106は、捩り角度の両端において捩り動作の向きが変わってから所定角度までは作動していない。
次に、フリクションワッシャ157がフリクション係合部材160によって駆動されるときの動作を説明する。中立状態から、フリクション係合部材160がフリクションワッシャ157に対して回転方向R1側に捩れていく動作を説明する。
捩り角度が大きくなると、やがて、第1フリクションワッシャ157Aにおいてフリクション係合部材160が第1フリクションワッシャ157Aの凹部163の回転方向R1側の回転方向端面163bに当接する。このとき、第2フリクションワッシャ157Bにおいて、フリクション係合部材160が第2フリクションワッシャ157Bの凹部163の回転方向R1側の回転方向端面163bに対して回転方向隙間(第2フリクションワッシャ157Bの第2回転方向隙間165Bと第1フリクションワッシャ157Aの第1回転方向隙間165Aとの差の半分であり、この実施形態では1°)を有している。
さらに捩り角度が大きくなると、フリクション係合部材160は第1フリクションワッシャ157Aを駆動して、フレキシブルプレート111及び入力側フリクションプレート158に対して摺動させる。このときに、第1フリクションワッシャ157Aは第2フリクションワッシャ157Bに対して回転方向R1側に接近するが、両者の端部が当接することはない。
やがて捩り角度が所定の大きさになると、フリクション係合部材160が、第2フリクションワッシャ157Bの凹部163の回転方向端面163bに当接する。これ以降は、フリクション係合部材160は、第1及び第2フリクションワッシャ157A,157Bをともに駆動して、フレキシブルプレート111及び入力側フリクションプレート158に対して摺動させる。
以上をまとめると、フリクションワッシャ157が第1プレート132によって駆動される時には、捩り特性において一定の枚数が駆動されて中間摩擦抵抗が発生する領域が、全ての枚数が駆動される大摩擦抵抗の領域の開始前に発生する。
2−1)微少捩り振動
次に、エンジンの燃焼変動に起因する微小捩り振動が2マスフライホイール101に入力されたときのダンパー機構104の動作を、図18の機械回路図と図19〜図21の捩り特性線図を用いて説明する。
微少捩り振動が入力されると、第2摩擦発生機構106において、入力側円板状プレート120は、フリクション係合部材160(凸部)と凹部163との間の回転方向隙間165において、フリクションワッシャ157に対して相対回転する。つまり、フリクションワッシャ157は、第1プレート132によって駆動されず、したがってフリクションワッシャ157は入力側の部材に対して回転しない。この結果、微小捩じり振動に対しては高ヒステリシストルクが発生しない。すなわち図19の捩り特性線図において例えば「DCa」ではコイルスプリング134,135が作動するが、第2摩擦発生機構106では滑りが生じない。つまり、所定の捩り角度範囲では、通常のヒステリシストルクよりはるかに小さなヒステリシストルクしか得られない。このように、捩じり特性において第2摩擦発生機構106を所定角度範囲内では作動させない微少回転方向隙間を設けたため、振動・騒音レベルを大幅に低くすることができる。
この結果、捩り特性2段目において、捩り振動の動作角度が第1フリクションワッシャ157Aの第1係合部分164Aの第1回転方向隙間165Aの角度(例えば、8°)以内である場合は、図20のように大摩擦抵抗(高ヒステリシストルク)は一切発生せず、低摩擦抵抗の領域Aのみが得られる。また、捩り振動の動作角度が第1フリクションワッシャ157Aの第1係合部分164Aの第1回転方向隙間165Aの角度(例えば、8°)以上であるものの、第2フリクションワッシャ157Bの第2係合部分164Bの第2回転方向隙間165Bの角度(例えば10°)以内である場合は、図21のように低摩擦抵抗の領域Aの端に中間摩擦抵抗の領域Bが発生する。そして、捩り振動の動作角度が第2フリクションワッシャ157Bの第2係合部分164Bの第2回転方向隙間165Bの角度(例えば10°)以上である場合は、図22のように低摩擦抵抗の領域Aの両端に、中間摩擦抵抗の領域Bと、一定の大摩擦抵抗が発生する領域Cとがそれぞれ得られる。
2−2)大捩り振動入力時の動作
大捩り振動が入力された場合の第2摩擦発生機構6の動作を説明する。第2摩擦発生機構106では、フリクションワッシャ157は、フリクション係合部材160及び第1プレート132と一体回転し、フレキシブルプレート111及びフリクションプレート158と相対回転する。この結果、フリクションワッシャ157がフレキシブルプレート111と入力側フリクションプレート158に摺動して摩擦抵抗を発生する。その結果、一定の大きさの摩擦抵抗が捩り特性の全体にわたって得られる。
ここで、捩り角度の端部(振動の向きが変わる位置)での動作について説明する。図19の捩り特性線図の右側端では、フリクションワッシャ157はフリクション係合部材160に対して最も回転方向R2側にずれている。この状態からフリクション係合部材160がフリクションワッシャ157に対して、回転方向R2側にねじれていくと、フリクション係合部材160(凸部)と凹部163の回転方向隙間165の全角度にわたって、フリクションワッシャ157が第1プレート132に対して相対回転する。この間では、フリクションワッシャ157は入力側の部材に対して摺動しないため、低摩擦抵抗の領域A(例えば、8°)が得られる。続いて、第1フリクションワッシャ157Aの第1係合部分164Aの第1回転方向隙間165Aがなくなると、次に第1プレート132が第1フリクションワッシャ157Aを駆動する。すると、第1フリクションワッシャ157Aがフレキシブルプレート111及び入力側フリクションプレート158に対して相対回転する。この結果、先に述べたように、中間の摩擦抵抗の領域B(例えば、2°)が発生する。続いて、第2フリクションワッシャ157Bの第2係合部分164Bの第2回転方向隙間165Bがなくなると、次に第1プレート132が第2フリクションワッシャ157Bを駆動する。すると、第2フリクションワッシャ157Bがフレキシブルプレート111及び入力側フリクションプレート158に対して相対回転する。この時には、第1フリクションワッシャ157Aと第2フリクションワッシャ157Bがともに摺動するため、比較的大きな摩擦抵抗の領域Cが発生する。なお、第1フリクションワッシャ157Aによって発生するヒステリシストルクは、第2フリクションワッシャ157Bによって発生するヒステリシストルクより小さく、実際には半分程度である。
以上に述べたように、大きな摩擦抵抗が発生する初期の段階には、中間の摩擦抵抗の領域Bが設けられている。このように大摩擦抵抗の立ち上がりを段階的にしているため、大摩擦抵抗発生時の高ヒステリシストルクの壁が存在しない。そのため、微少捩り振動を吸収するために微少回転方向隙間を設けた摩擦発生機構において、高ヒステリシストルク発生時のツメのたたき音が減少する。
特に、本発明において、中間の摩擦抵抗を発生させるのに単一種類のフリクションワッシャ157を用いているため、摩擦部材の種類を少なく抑えることができる。また、フリクションワッシャ157は、弧状に延びる簡単な構造である。また、フリクションワッシャ157は、軸方向貫通孔が形成されておらず、製造コストを低く抑えることができる。
(3)効果
3−1)第1摩擦発生機構105の効果
第1摩擦発生機構105が第2フライホイール103の一部を摩擦面として利用しているため、摺動面の面積を大きくすることができる。具体的には、第2摩擦部材152がコーンスプリング153によって第2フライホイール103に付勢されているため、摺動面の面積を大きくすることができる。したがって、摺動面の面圧が低下し、第1摩擦発生機構105の寿命が向上する。
第2摩擦部材152の外周部と第1及び第2コイルスプリング134,135の内周部は軸方向に重なって配置され、第2摩擦部材152の外周縁の半径方向位置は第1及び第2コイルスプリング134,135の内周縁の半径方向位置より半径方向外側にある。このため、第2摩擦部材152と第1及び第2コイルスプリング134,135とが半径方向に近接しているにもかかわらず第2摩擦発生機構106において摩擦面を十分に確保できる。
第1摩擦部材151の環状部151aの外周部と第1及び第2コイルスプリング134,135の内周部は軸方向に重なって配置され、環状部151aの外周縁の半径方向位置は第1及び第2コイルスプリング134,135の内周縁の半径方向位置より半径方向外側にある。このため、環状部151aと第1及び第2コイルスプリング134,135が半径方向に近接しているにもかかわらず、第2摩擦発生機構106において摩擦面を十分に確保できる。
第1摩擦部材151のみが入力側円板状プレート120に相対回転不能に係合しており、第1摩擦部材151と第2摩擦部材152が互いに相対回転不能に係合している。このため、入力側円板状プレート120と第2摩擦部材152とを係合させる必要がなくなり、構造が簡単になる。
第1摩擦部材151は、第1プレート132に対して回転方向に摺動可能に当接する環状部151aと、環状部151aから軸方向に延び入力側円板状プレート120に対して軸方向に移動可能に且つ相対回転不能に係合する複数の係合部151b,151cとを有している。第2摩擦部材152は、複数の係合部151b,151cに相対回転不能に且つ軸方向に移動可能に係合する複数の切り欠き152aを有している。このように、第1摩擦部材151が軸方向に延びる複数の係合部151b,151cを有しているため、第1摩擦部材151の環状部151aと第2摩擦部材152とが軸方向に離れた配置した構造を簡単に実現できる。
コーンスプリング153は、第2摩擦部材152と、第1摩擦部材151の係合部151b,151cとの間に配置されて、両者を軸方向に付勢している。そのため、構造が簡単になる。
ワッシャ154は、第1摩擦部材151の係合部151b,151cの先端に着座し、コーンスプリング153からの付勢力を受ける受け部材として機能している。そのため、摩擦摺動面に付与される軸方向の荷重が安定し、その結果、摺動面で発生する摩擦抵抗が安定する。
第1摩擦発生機構105は第2フライホイール103のクラッチ摩擦面103aから内周側に(半径方向内側に離れて)配置されている。したがって、第1摩擦発生機構105はクラッチ摩擦面103aからの熱の影響を受けにくく、摩擦抵抗が安定する。
第1摩擦発生機構105は、ダンパー機構104の第1及び第2コイルスプリング134,135の半径方向中心位置より内周側に配置されており、ボルト122の最外周縁より外周側に配置されている。したがって、省スペースの構造になる。
3−2)第2摩擦発生機構106の効果
第2摩擦発生機構106が第1フライホイール102(具体的には、フレキシブルプレート111)に保持されているため、第2摩擦発生機構106は第2フライホイール103のクラッチ摩擦面103aからの熱の影響を受けにくい。したがって、第2摩擦発生機構106の性能が安定する。特に、第1フライホイール102は第2フライホイール103とコイルスプリング134〜136を介して連結されていないため、第1フライホイール102にも第2フライホイール103からの熱は伝わりにくくなっている。
第2摩擦発生機構106は、フレキシブルプレート111の外周部である環状部111aを摩擦面として利用している。フレキシブルプレート111を利用しているため、第2摩擦発生機構106は部品点数が少なくなり、構造が簡単になる。
第2摩擦発生機構106は、クラッチ摩擦面103aより外周側に配置されてクラッチ摩擦面103aから半径方向に離れているため、第2摩擦発生機構106がクラッチ摩擦面103aからの熱の影響を受けにくい。
3−3)フレキシブルフライホイール(第1フライホイール102とダンパー機構104)の効果
第1フライホイール102は、イナーシャ部材113と、イナーシャ部材113をクランクシャフト191に連結するための部材であり曲げ方向にたわみ変形可能なフレキシブルプレート111とを有する。ダンパー機構104は、クランクシャフト191からのトルクが入力される入力側円板状プレート120と、入力側円板状プレート120に相対回転可能に配置された出力側円板状プレート132,133と、両者の相対回転によって回転方向に圧縮されるコイルスプリング134,135,136とを有する。第1フライホイール102は、ダンパー機構104に対して曲げ方向に所定範囲で変位可能である。以上に述べた第1フライホイール102とダンパー機構104の組み合わせをフレキシブルフライホイールという。
第1フライホイール102に曲げ振動が発生すると、フレキシブルプレート111が曲げ方向にたわむ。このため、エンジンからの曲げ振動が抑制される。このフレキシブルフライホイールでは、第1フライホイール102がダンパー機構104に対して曲げ方向に所定範囲で変位可能であるため、フレキシブルプレート111による曲げ振動抑制効果が十分に高い。
フレキシブルフライホイールは、第1フライホイール102とダンパー機構104の出力側円板状プレート132との間に配置され、コイルスプリング134,135,136と回転方向に並列に作用する第2摩擦発生機構106をさらに備えている。第2摩擦発生機構106は、トルク伝達可能であるが曲げ方向に相対変位可能に係合するフリクションワッシャ157及びフリクション係合部材160とを有している。このフレキシブルフライホイールでは、第2摩擦発生機構106において2つの部材が曲げ方向に相対変位可能に係合しているため、第1フライホイールがダンパー機構104に対して第2摩擦発生機構106を介して係合しているにもかかわらず、曲げ方向に所定範囲で変位可能である。この結果、フレキシブルプレート111による曲げ振動抑制効果が十分に高い。
フリクションワッシャ157とフリクション係合部材160は回転方向に隙間を空けて係合している。つまり、両者は回転方向に密着していないため、曲げ方向に相対変位する際に大きな抵抗が生じない。
フリクション係合部材160は、出力側円板状プレート132,133の第1プレート132に対して軸方向に移動可能に係合する。そのため、フリクションワッシャ157が第1フライホイール102と共に軸方向移動した際に、フリクション係合部材160と出力側円板状プレート132,133との間で軸方向に抵抗が生じにくい。
3−4)第3コイルスプリング136の効果
第3コイルスプリング136は、捩り特性の捩り角度が最も大きくなった領域で作動を開始し、ダンパー機構104に十分なストッパートルクを付与するための部材である。第3コイルスプリング136は、第1及び第2コイルスプリング134,135に対して回転方向に並列に作用する配置されている。
第3コイルスプリング136は、線径及びコイル径が第1及び第2コイルスプリング134,135に対して大幅に小さく(半分程度)、そのため軸方向に占めるスペースも小さい。図4に示すように、第3コイルスプリング136は、第1及び第2コイルスプリング134,135の外周側に配置され、第2フライホイール103のクラッチ摩擦面103aに対応する位置に配置されている。言い換えると、第3コイルスプリング136の半径方向位置は、クラッチ摩擦面103aの内径と外径との間の環状の領域内にある。
この実施形態では、第3コイルスプリング136を設けることで、ストッパートルクを十分に高くして性能を向上させつつ、第3コイルスプリング136の寸法や配置位置を工夫することで省スペースの構造を実現している。特に、第3コイルスプリング136のコイル径が第1及び第2コイルスプリング134,135のコイル径より小さいため、第3コイルスプリング136が配置された部分全体の軸方向寸法が小さく抑えられている。第3コイルスプリング136のコイル径は第1及び第2コイルスプリング134,135のコイル径に対して0.3〜0.7の範囲にあることが好ましい。この結果、第3コイルスプリング136は第2フライホイール103のクラッチ摩擦面103a(クラッチ摩擦面103a部分は軸方向厚みが大きい)に対応する位置に配置されているにかかわらず、その部分の軸方向寸法は十分に小さくなっており、第1及び第2コイルスプリング134,135が配置されている部分の軸方向寸法より小さくなっている。
また、入力側円板状プレート120の突起120cと出力側円板状プレート132,133の切り起こし当接部143,144とからなるストッパー機構171の半径方向位置がクラッチ摩擦面103aの環状領域内であり、さらには、ストッパー機構171は、第3コイルスプリング136と概ね同一の半径方向位置に配置されている。そのため、各機構が半径方向の異なる位置に配置された構造に比べて、全体の構造の径が小さくなる。
(4)他の実施形態
以上、本発明に従う2マスフライホイールの一実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形乃至修正が可能である。特に、本発明は前述の具体的な角度の数値等に限定されない。
前記実施形態では、係合部分の回転方向隙間の大きさの種類を2種類としていたが、3種類又はそれ以上にしても良い。3種類の場合は、中間の摩擦抵抗の大きさが2段階になる。
前記実施形態では第1摩擦部材と第2摩擦部材の摩擦係数を同一としているが、異ならせてもよい。このように、第1摩擦部材と第2摩擦部材とで発生する摩擦抵抗を調整することで、中間摩擦抵抗と大摩擦抵抗の比を自由に設定できる。
前記実施形態では摩擦係合部材の大きさを全て同じにして異なる大きさの凹部を設けることで中間の摩擦抵抗を発生させていたが、凹部の大きさを全て同じにして異なる大きさの摩擦係合部材を設けてもよい。さらには、異なる大きさの摩擦係合部材と、異なる大きさの凹部とを組み合わせてもよい。
前記実施形態ではフリクションワッシャの凹部は半径方向内側を向いていたが、逆に半径方向外側に向いていてもよい。
さらに、前記実施形態ではフリクションワッシャが凹部を有していたが、フリクションワッシャが凸部を有していてもよい。その場合は、例えば、入力側円板状プレートが凹部を有することになる。
さらに、前記実施形態ではフリクションワッシャは入力側部材に摩擦係合する摩擦面を有していたが、出力側部材に摩擦係合する摩擦面を有していてもよい。その場合は、フリクションワッシャと入力側部材との間に、回転方向隙間を有する係合部分が形成されることになる。