JP2007247127A - 複合加工糸 - Google Patents

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Abstract

【課題】繊維・繊維製品形状やポリマーに制約が無く、広く応用展開可能な形態安定性、開繊性、吸水性に優れたナノファイバー複合加工糸を提供するものである。
【解決手段】数平均による単糸繊度が0.1×10−6〜500×10−6dtexのナノファイバー繊維Aと数平均による単繊維繊度が0.1〜8dtexの繊維Aとは別の染色性を示す繊維Bと複合した複合加工糸。ナノファイバー繊維Aが芯糸側に配置された芯鞘型複合加工糸であって、繊維Bに対する繊維Aの複合比率が5wt%〜70wt%であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1に項記載の複合加工糸であることが好ましい。
【選択図】なし

Description

本発明は、従来には無かった形態安定性と品質の優れたナノファイバー複合加工糸に関するものである。
ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート(以下PBTと記す場合もある)に代表されるポリエステルやナイロン6やナイロン66に代表されるポリアミドといった重縮合系ポリマーは適度な力学特性と耐熱性を有するため、従来から衣料用途や産業資材用途の繊維に好適に用いられてきた。
ポリエステル繊維やポリアミド繊維は衣料用途に用いられてきたこともあり、ポリマー改質だけでなく、繊維の断面形状や極細糸による性能向上の検討も活発に行われてきた。その一つとして、海島複合紡糸を利用したポリエステルの超極細糸が生み出され、スエード調の人工皮革という大型新製品に結実していった。また、この超極細糸を一般衣料に適用し、通常の繊維では絶対に得られないピーチタッチの優れた風合いの衣料にも展開されている。このため、さらにレベルの高い人工皮革や高質感衣料を得るために、より細い繊維が望まれていた。
しかしながら、現在の海島複合紡糸技術では単繊維繊度は0.04dtex(直径2μm相当)が限界であり、直径がnmレベルのナノファイバーに対するニーズに充分応えられるレベルではなかった。また、ポリマーブレンド繊維により超極細糸を得る方法もある(特許文献1、2)が、ここで得られる超極細糸の単繊維繊度はポリマーブレンド繊維中での島ポリマーの分散状態で決定されるが、該特許文献で用いられているポリマーブレンド系では島ポリマーの分散が不十分であるため、得られる超極細糸の単糸繊度ばらつきが大きく、製品の性能が太い単糸群で決定され超極細糸のメリットが十分発揮されないばかりか、品質安定性等にも問題があった。
ところで、ナノファイバーを得る特殊な方法として、メソポーラスシリカに重合触媒を坦持しておき、そこでポリエチレンの重合を行うことで直径が30〜50nm(5×10−6〜2×10−5dtex相当)のポリエチレンナノファイバーを得る方法がある。しかし、この方法ではナノファイバーの綿状塊しか得られておらず、そこから繊維を引き出すことは不可能である。また、扱えるポリマーもPEのような付加重合系ポリマーのみであり、ポリエステルやポリアミドといった重縮合系ポリマーは重合過程で脱水が必要であるため、原理上扱うことは困難である。このため、この方法で得られるナノファイバーには応用展開に大きな制約があった。
また、ナノファイバーを単独で使用すると単繊維繊度が非常に小さいため糸条としての剛性が低く、布帛形状とした場合に形態安定性が悪く取り扱いにくい物であった。さらにナノファイバー単独では表面活性が高くなるため凝集を起こしやすくナノファイバーとしての特性を十分に発揮することが出来なかった。
また、特許文献3に、ナノファイバーを作成する方法やナノファイバーを複合させる方法がある。しかし、このようなナノファイバーと細繊度糸との複合加工糸では、染色や強度などの加工糸間のムラが大きく、製品の工程通過性や収率、製品の品質安定性において問題が残されていた。
以上説明したように、繊維・繊維製品形状やポリマーに制約が無く、広く応用展開可能で、さらに形態・製品製造の安定性にも優れたナノファイバーが求められていた。
特開平5−156579号公報 特開平6−272114号公報 特開2005−23466号公報
本発明は、繊維・繊維製品形状やポリマーに制約が無く、広く応用展開可能な形態・製品製造安定性に優れたナノファイバーを含む複合加工糸を提供するものである。
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成からなる。
[1]下記ナノファイバー繊維Aと繊維Bからなることを特徴とする複合加工糸。
ナノファイバー繊維A:熱可塑性ポリマーからなり、数平均による単繊維繊度が0.1×10−6〜500×10−6dtexのナノファイバー繊維群であるナノファイバー集合体。
繊維B:ナノファイバー繊維Aと異なる染色性を示す繊維。
[2]ナノファイバー繊維Aが染色されていないことを特徴とする請求項1に記載の複合加工糸。
[3]ナノファイバー繊維Aを構成する熱可塑性ポリマーの80重量%以上が、ポリエステル、ポリアミドおよびポリオレフィンからなる群から選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする請求項1または2に記載の複合加工糸。
[4]繊維Bを構成する繊維の単繊維繊度が0.1dtex以上8dtex以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載の複合加工糸。
[5]ナノファイバー繊維Aが芯糸側に配置された芯鞘型複合加工糸であって、繊維Bに対する繊維Aの複合比率が5wt%〜70wt%であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1に項記載の複合加工糸。
[6]ナノファイバー繊維Aを構成する熱可塑性ポリマーがポリアミドであり、繊維Bがカチオン染色可能なポリエステル繊維であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の複合加工糸。
[7]ナノファイバー繊維Aを構成する熱可塑性ポリマーがポリブチレンテレフタレートであり、繊維Bがカチオン染色可能なポリエステル繊維、または、ポリアミド繊維であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の複合加工糸。
[8]ナノファイバー繊維Aが海島型複合糸から得られるナノファイバー集合体であって、該海成分がポリ乳酸であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の複合加工糸。
[9]消臭率が80%以上であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の複合加工糸。
本発明によれば、吸水性、消臭性に寸法安定性に優れ、ソフトな清涼感を有する布帛製品を提供でき、インナー、スポーツ衣料品などに幅広く活用できる素材を提供することができる。
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
本発明は、ナノファイバー集合体(ナノファイバー繊維A)とナノファイバー繊維A以外の繊維Bとの複合加工糸であって、前記ナノファイバー繊維A以外のもう一方の繊維Bにおいて、繊維Bがナノファイバー繊維Aであるナノファイバーと異なる染色性を示すことが重要である。ナノファイバー繊維Aでは、染色性の不良やバラツキ、他の製品への汚染などが問題となり、ナノファイバーを染色せずに、もう一方の繊維Bを発色させることで製品化とすることができる。また、繊維Bがナノファイバー繊維Aと異なる染色性を示すことで、製品に杢調の染色性を示す製品とすることも可能である。
本発明でいうナノファイバー繊維Aを構成する熱可塑性ポリマーは、ポリエステルやポリアミド、またポリオレフィンなどの熱可塑性ポリマーであることが成形性の点から好ましい。中でもポリエステルやポリアミドに代表される重縮合系ポリマーは融点が高いものが多く、より好ましい。ポリマーの融点は165℃以上であると耐熱性が良好であり好ましい。例えば、ポリ乳酸は170℃、PETは255℃、N6は220℃である。また、ポリマーには粒子、難燃剤、帯電防止剤等の添加物を含有させていても良い。またポリマーの性質を損なわない範囲で他の成分が共重合されていても良いが、難溶解性ポリマーとしてはポリマー本来の耐熱性や力学特性を保持するためには共重合率は5mol%あるいは5重量%以下であることが好ましい。また、ポリマーの分子量は、繊維形成能や力学特性の点から重量平均分子量で1万〜50万であることが好ましい。特に衣料、インテリア、車両内装等に用いる場合には、難溶解性ポリマーとしては共重合率が5mol%または5重量%以下の相対粘度2以上のナイロン6、ナイロン66、極限粘度0.50以上のPET、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸がより好ましい。ただし、易溶解性ポリマーは後で除去することを考慮すると、本願目的を達成する範囲であれば数平均分子量は3000以上であっても良い。
例えば、ナノファイバー繊維Aがポリアミドの場合には、繊維Bはカチオン染色性を示す共重合ポリエステル(以下、カチオン可染ポリエステルと記すこともある)等のように、ナノファイバー繊維Aと繊維Bのポリマーの組み合わせには繊維Bを染色される際に、ナノファイバー繊維Aが染色されないことが好ましい。染色性の点を除けば、ナノファイバー繊維Aと繊維Bのポリマーの組み合わせは特に限定されることはないが、ポリプロピレンとカチオン可染ポリエステルの組み合わせの他に、ポリエステルとポリアミド、ポリエステルとカチオン可染ポリエステルなどの組み合わせや、ポリプロピレン等の染色性を示さないポリマーと染色可能なポリマーとの組み合わせなども考えられる。また、繊維Bとして原着糸を用い、染色を行わない方法も使用できる。ここで、ナノファイバー繊維Aがポリアミドの場合には、繊維Bとしてカチオン可染ポリエステルが好ましく使用される。また、ナノファイバー繊維Aがポリブチレンテレフタレートの場合には、繊維Bとしてポリアミドやカチオン可染ポリエステルが好ましく使用される。ここで、製品の堅牢度やナノファイバー繊維Aの染色性の関係から、ナノファイバー繊維Aと繊維Bのポリマーの組み合わせには繊維Bを染色される際に、ナノファイバー繊維Aが染色されないことがさらに好ましく使用される。
上記のようにナノファイバー繊維Aを構成する熱可塑性ポリマーががポリアミドの場合には、繊維Bとしてはカチオン可染ポリエステル繊維が好ましい。ポリアミドとカチオン可染ポリエステルの組み合わせにより、優れた発色性と製品品質を有すると同時に、ソフトな風合いや優れた消臭性能などを有することが可能となる。繊維Bのカチオン可染ポリエステルとしては、例えば特公昭34−10497号公報、特公平1−20248号公報等に見られるように、金属スルホネート基を含有するイソフタル酸成分を共重合、あるいは金属スルホネート基を含有するイソフタル酸成分と分子量400〜6000のグリコール成分を共重合する等の改質ポリエステルを使用できる。
また、ナノファイバー繊維Aを構成する熱可塑性ポリマーがポリブチレンテレフタレートの場合には、繊維Bとしてはカチオン可染ポリエステル繊維またはポリアミド繊維のいずれでもよい。ポリブチレンテレフタレートとカチオン可染ポリエステル、または、ポリアミドとの組み合わせにより、ナノファイバー繊維Aがポリアミドの場合と同様に、優れた発色性と製品品質を有すると同時に、ソフトな風合いや優れた消臭性能などを有することが可能となる。ここで、ポリアミドを繊維Bに使用する場合にはさらなるソフト感が得られる素材となる。
また、本発明のナノファイバー繊維Aとは数平均単繊維繊度が0.1×10−6〜500×10−6dtexのナノファイバー繊維群の集合体であり、構成する各単繊維は従来の超極細糸の1/100〜1/100000以下であるため、比表面積が飛躍的に大きくなるという特徴がある。このため、通常の超極細糸程度では見られなかったナノファイバー特有の性質を示す。
まず、ナノファイバーの性質として吸着特性の大幅な向上が挙げられる。実際に、同じ総繊度のポリアミドナノファイバーと通常の0.1dtex程度のポリアミド超極細糸で比較してみると、ポリアミドナノファイバーを含む糸では、表面積が大きくなるため吸着性能が向上するものである。このような吸着性能の向上により、吸湿性能などが向上する。吸湿性能は衣料用途では快適性の点から非常に重要な特性であり、ナノファイバー複合加工糸を使用した布帛として4%以上とすることが好ましい。
また、吸着特性の向上により、消臭性能も向上する。すなわち消臭性能の場合、通常の繊維に比べナノファイバー繊維Aは表面積が大きいため(同繊度の場合)、臭気ガスの吸着に優れる特性を有する。消臭性能も衣料用途では非常に重要な特性であり、本発明ではナノファイバー繊維Aを含む複合加工糸を使用した布帛として、100分後の消臭率が80%以上であることが好ましい。
ここで、本発明のナノファイバー繊維Aの製造方法は特に限定されるものではないが、例えば以下のような方法を採用することができる。
すなわち、2種類以上の溶剤に対する溶解性の異なる易溶解性ポリマーと難溶解性ポリマーをアロイ化してポリマーアロイ溶融体となし、これを海成分とし、前記した難溶解性ポリマーと帯電性の異なる難溶解性ポリマーを島成分として特公昭62−25763号公報等に代表される2成分海島型複合口金を用い紡糸した後、冷却固化して繊維化する。そして必要に応じて延伸・熱処理を施し海島型複合糸であるポリマーアロイ繊維Cを得る。そして、易溶解性ポリマーを溶剤で除去することにより本発明のナノファイバー繊維Aを得ることができる。
ここで、ナノファイバー繊維Aの前駆体であるポリマーアロイ繊維Cの海成分で易溶解性ポリマーがマトリックス、難溶解性ポリマーがドメインとなり、そのドメインサイズを制御することが重要である。
前駆体中でのドメインサイズによりナノファイバー繊維Aの直径がほぼ決定されるため、ドメインサイズの分布は本発明のナノファイバー繊維Aの直径分布に準じて設計される。このため、アロイ化するポリマーの混練が非常に重要であり、本発明では混練押出機や静止混練器等によって高混練することが好ましい。なお、単純なチップブレンド(特許文献2)では混練が不足するため、本発明のような数十nmサイズでドメインを分散させることは困難である。
具体的に混練を行う際の目安としては、組み合わせるポリマーにもよるが、混練押出機を用いる場合は、2軸押出混練機を用いることが好ましく、静止混練器を用いる場合は、その分割数は100万以上とすることが好ましい。
また、ドメインを数十nmサイズで超微分散させるには、ポリマーの組み合わせも重要である。
ポリマー同士の融点差が20℃以下であると、特に押出混練機を用いた混練の際、押出混練機中での融解状況に差を生じにくいため高効率混練しやすく、好ましい。また、熱分解や熱劣化し易いポリマーを1成分に用いる際は、混練や紡糸温度を低く抑える必要があるが、これにも有利となるのである。ここで、非晶性ポリマーの場合は融点が存在しないためガラス転移温度やビカット軟化温度あるいは熱変形温度でこれに代える。
さらに、溶融粘度も重要であり、ドメインを形成するポリマーの方を低く設定すると剪断力によるドメインポリマーの変形が起こりやすいため、ドメインポリマーの微分散化が進みやすくナノファイバー化の観点からは好ましい。ただし、ドメインポリマーを過度に低粘度にするとマトリックス化しやすくなり、繊維全体に対するブレンド比を高くできないため、ドメインポリマー粘度はマトリックスポリマー粘度の1/10以上とすることが好ましい。
ポリマーアロイ中では、ドメインポリマーとマトリックスポリマーが非相溶であるため、ドメインポリマー同士は凝集した方が熱力学的に安定である。しかし、ドメインポリマーを無理に超微分散化するために、このポリマーアロイでは通常の分散径の大きいポリマーブレンドに比べ、非常に不安定なポリマー界面が多くなっている。このため、このポリマーアロイを単純に紡糸すると、不安定なポリマー界面が多いため、口金からポリマーを吐出した直後に大きくポリマー流が膨らむ「バラス現象」が発生したり、ポリマーアロイ表面の不安定化による曳糸性不良が発生し、糸の太細斑が過大となるばかりか、紡糸そのものが不能となる場合がある(超微分散ポリマーアロイの負の効果)。このような問題を回避するため、口金から吐出する際の、口金孔壁とポリマーとの間の剪断応力を低くすることが好ましい。そのためには、口金孔径は大きく、口金孔長は短くする傾向であるが、過度にこれを行うと口金孔でのポリマーの計量性が低下し、繊度斑や紡糸性悪化が発生してしまうため、吐出孔より上部にポリマー計量部を有する口金を用いることが好ましい。ポリマー計量部は、具体的には特公昭62−25763号公報の第1図に記載のように島成分の導入孔に絞った部位、海成分はパイプとの間に狭隘部で計量することが好ましい。
また、溶融紡糸での曳糸性や紡糸安定性を十分確保する観点から、口金面温度はマトリックスポリマーの融点+25℃以上とすることが好ましい。
上記したように、本発明で用いる超微分散化したポリマーアロイを海成分として紡糸する際は、紡糸口金設計が重要であるが、糸の冷却条件も重要である。上記したようにポリマーアロイは非常に不安定な溶融流体であるため、口金から吐出した後に速やかに冷却固化させることが好ましい。このため、口金から冷却開始までの距離は1〜15cmとすることが好ましい。ここで、冷却開始とは糸の積極的な冷却が開始される位置のことを意味するが、実際の溶融紡糸装置ではチムニー上端部でこれに代える。
紡糸速度は特に限定されないが、紡糸過程でのドラフトを高くする観点から高速紡糸ほど好ましい。紡糸ドラフトとしては100以上とすることが、得られるナノファイバー直径を小さくする観点から好ましい。
また、紡糸されたポリマーアロイ繊維Cには延伸・熱処理を施すことが好ましいが、延伸の際の予熱温度はドメインポリマーのガラス転移温度(Tg)以上の温度することで、糸斑を小さくすることができ、好ましい。
製造方法は、以上のようなポリマーの組み合わせ、紡糸・延伸条件の最適化を行うことで、マトリックスポリマーが数十nmに超微分散化し、しかも糸斑の小さなポリマーアロイを海成分とした海島型複合糸であるポリマーアロイ繊維Cを得ることを可能にするものである。このようにして得た前駆体を用いることで、ある断面だけでなく長手方向のどの断面をとっても単繊維繊度ばらつきの小さなナノファイバー繊維Aを得ることができるのである。前駆体である海島型複合糸であるポリマーアロイ繊維Cのウースター斑は15%以下とすることが好ましく、より好ましくは5%以下である。
このようにして得られたポリマーアロイ繊維Cからマトリックスポリマーである易溶解ポリマーを溶剤で溶出することで、ナノファイバー繊維Aを得るのであるが、その際、溶剤としては水溶液系のものを用いることが環境負荷を低減する観点から好ましい。具体的にはアルカリ水溶液や熱水を用いることが好ましい。このため、易溶解ポリマーとしては、ポリエステル等のアルカリ加水分解されるポリマーやポリアルキレングリコールやポリビニルアルコールおよびそれらの誘導体等の熱水可溶性ポリマーが好ましい。より好ましい組み合わせとしては、島成分にアルカリ水溶液に難溶解性を示すポリアミドを用い、海成分に易溶解性を示すポリ乳酸を用いることなどが挙げられる。
このように、海成分として使用するポリ乳酸などの溶出速度が早いポリマーは、複合加工後の繊維Bへの溶出処理時ダメージが軽減されるものとなり、好ましく使用される。
このような製造方法により繊維長が数十μmから場合によってはcmオーダー以上のナノファイバーがところどころ接着したり絡み合った紡績糸形状のナノファイバー群と極細糸群が混合されたナノファイバー繊維Aが得られるのである。
また、本発明におけるナノファイバー繊維Aの強度は1cN/dtex以上であれば繊維製品の力学物性を向上できるため好ましい。ナノファイバー繊維Aの強度は、より好ましくは2cN/dtex以上である。さらに、前駆体である海島型複合糸を捲縮加工することも可能である。
本発明における繊維Bの製造方法は従来使用されてきた通常の製造方法で得ることができる。ここでは、繊維Bの製造方法は特に限定されるものではないが、溶融紡糸による直接紡糸法によって得られる方法がある。繊維Bの断面形状については、用途・目的によって様々に決定でき、特に限定されるものではないが、安定した製糸性が必要な場合には丸形断面を選択することができる。また、吸水性が必要な場合には、3葉以上の多葉断面、好ましくは3、4、5、6葉断面などのように丸形断面より表面積が大きくなる異形断面形状の方が、繊維間に微細な空隙を多数形成するため毛細管現象による吸水力が増し、より好ましい。なお、異形断面としてはY、W、C、H、X等でもよい。また、繊維間に微細な空隙を多数作り出す、丸型と異形断面を組み合わせたマルチフィラメントでも良い。
本発明でいうナノファイバー繊維Aと異なる染色性を示す繊維Bは、単繊度繊度が0.1dtex以上であることが好ましい。単繊維繊度を0.1dtex以上とすることで、複合加工糸での強度の向上や繊度バラツキ、染色バラツキ等が改善し、工程における生産効率を上げることが可能となる。また、単繊維繊度が8dtex以上であれば、風合いや布帛表面感の悪化などから、好ましく使用されない。このように、ナノファイバー繊維Aを含む複合加工糸においては、その高次通過性や製品の品質安定性のために、ナノファイバー繊維Aと他方の繊維Bの単繊維繊度が0.1dtex以上8dtex以下であることが好ましい。さらに好ましくは、単繊維繊度が0.5dtex以上3dtex以下である。
本発明のナノファイバー繊維Aと繊維Bの複合加工糸においては、ナノファイバー繊維Aを内層側に配置し、繊維Bを外層側に配置する芯鞘型複合加工糸が、吸水素材として好ましく用いられる。このような複合加工糸の布帛では、繊維Bが肌面から水分を吸収し、内層側のナノファイバー繊維Aに移される特徴を有する。このとき、繊維Bの単繊維繊度が細すぎると吸水性が過剰に高くなり、毛細管現象により吸い上げ、一旦内層のナノファイバー繊維Aに取り込まれた水分が吸水性の高い繊維Bに再び吸水され、繊維表面に戻ってくる濡れ戻り現象が生じ、べとつき感の原因になる。また、繊維Bの単繊維繊度が太すぎると、繊維間の空隙が大きくるため、十分な毛細管現象が得られず、吸水性が低下するため適正ではない。よって、吸水素材として用いる場合にも、繊維Bの単繊維繊度が0.1dtex以上8dtex以下であることが重要となる。ここで、鞘糸の繊維Bにポリエステルやポリプロピレンなどの疎水性の繊維を使用した場合には、布帛においてよりべとつき感ががなく、スポーツ用素材などにおいて好ましく使用される。
本発明のナノファイバー繊維Aと繊維Bの複合加工糸において、ナノファイバー繊維Aが繊維Bよりも吸水性が高いことであることが好ましい。ナノファイバー繊維Aが繊維Bよりも吸水性が高いことにより、布帛において表面への濡れ戻り現象がなく、べとつき感のない製品となる。具体的には、ナノファイバー繊維Aの編み地の吸水高さと繊維Bの編み地の吸水高さが下記式(1)を満たすことが好ましい。
AV≧1.1×BV ・・・(1)式
ここで、AV:ナノファイバー繊維Aの編み地の緯、経の吸水高さの合計値、BV:繊維Bの編み地の緯、経の吸水高さの合計値
本発明では、複合加工糸のナノファイバー繊維Aの繊維Bに対する複合比率が5wt%〜70wt%であることが好ましい。繊維Aの複合比率が5w%以下の場合では、吸水性、消臭性などのナノファイバー繊維の特徴を製品に反映させることができず、また、繊維Aの複合比率が70wt%以上となる場合には、繊維Aを染色しない場合に、製品として発色性に乏しいものとなることや、複合加工糸の強度や繊度バラツキ、染色バラツキ等が発生し、高次通過性や製品の品質安定性が低下することとなる。より好ましくは、複合加工糸のナノファイバー繊維Aの複合比率が10wt%〜50wt%となる。
本発明の複合加工糸は、外層の鞘糸と内層の芯糸が完全に分離・独立している必要はなく、見かけ上、層構造になっている状態でも良く、各層を構成する糸条の単繊維と部分的に混ざっていても、また多少逆転していても構わないものである。しかしながら、鞘側に繊維Bを構成することが好ましく、その配置割合が糸条の側面の面積割合で6割以上、より好ましくは6.5割以上であることが好ましい。十分な発色性を得るためのみならず、ナノファイバー繊維Aのために悪化する風合いを改善し、肌触りをソフトにする効果があるため、繊維Bが糸条表面に形成されていることが重要である。繊維Bの割合が糸条の側面の面積割合で6割に満たない場合は十分な発色性及びソフトな風合いが得られなくなり好ましくない。また、内層側にナノファイバー繊維Aが配置されることで優れた吸水性を有することになる。このような、糸条の構成により、外層の鞘糸から取り込まれた水分は内層芯糸であるのナノファイバー繊維Aに移行し、すばやく拡散される。
本発明の複合加工糸の製造方法は、特に限定されるものではない。例えば、流体噴射ノズルを用いた流体噴射加工方法(通称タスラン加工)により、2種類の異なる繊維(繊維B及びポリマーアロイ繊維C)にフィード差を付けて送り出すことにより一方が他方に巻き付きカバーするような状態となり芯鞘構造をなすことができる。流体噴射加工は2種の糸条が芯部、鞘部にそれぞれ配置されやすく、また、鞘部の糸条はループ形成することから、編物等の布帛にした際の風合い向上にもつながる。また、他の製造方法としては、流体噴射加工後に仮撚加工を行う、複合仮撚加工により、それぞれの捲縮度合いによって一方のフィラメントが他方を覆うような構造をとり、その結果層構造を構成するものや、一方のみを仮撚し、仮撚しないもう一方の繊維と流体噴射加工により複合繊維とする方法などもある。また、カバーリング機を用いたカバーリング方法等がある。なお、本発明の複合加工糸は、芯部と鞘部が完全に分離・独立している必要はなく、各部を構成する糸条の単繊維と部分的に混ざっていても、また多少逆転していても構わないものである。繊維B及びポリマーアロイ繊維Cの複合加工糸とした後、ポリマーアロイ繊維Cの海成分をアルカリ処理等で溶出して、ポリマーアロイ繊維Cをナノファイバー化してナノファイバー繊維Aとし、最終的にナノファイバー繊維Aと繊維Bとからなる複合加工糸を得る。
なお、本発明における各種特性値は次の方法で測定するものである。
(1)消臭率
3Lのテドラーバック内にサンプル1gを投入した後、試験ガスを注入し、その濃度をモニタリングすることで消臭性能を評価するものである。通常は試験ガス注入から24時間後のガス濃度をモニタリングするが、今回はより短い時間での評価とするために、50分での消臭性能で評価を行った。また、ガスとしては、衣類による評価として汗や糞尿などの人体、タバコやトイレなどの環境の臭気により多く含まれているアンモニア、酢酸を用い、その平均によって消臭率とする。
(2)蒸れ感、べとつき感
25℃65%RHに調温調湿された部屋内で、Tシャツに縫製したサンプルを被験者20名が試験し、それぞれ5段階(サラサラ感:○、ややサラサラ感:△、べとつき感:×)でもって評価する。
着用者のタイムスケジュール; 20分:安静状態→ 10分:歩行(ランニング機械使用、100m/分)→ 10分:安静状態で評価
(3)風合い
上記(7)項と同様に被験者20名が試験し、20分安静後の風合いについてそれぞれ5段階(ソフト感:○、ややソフト感:△、硬い:×)で評価する。
(4)抗ピル性試験法(ICI法5時間)
JIS L1076(1992)に基づいて評価を行う。
評価結果は、以下の通り5段階で級判定を行う。また、各級の中間レベルの場合は、3.5(3級と4級の中間レベル)のように表示する。
5級:ピリングの発生がほとんどないもの
4級:ピリングの発生が少々あるもの
3級:ピリングの発生がかなりあるもの
2級:ピリングの発生が多いもの
1級:ピリングの発生が著しく多いもの
(5)吸水性
バイレック法による吸水性の測定は、JIS L1096(1999)におけるバイレック法を準用し、次の方法で行った。まず、サンプルとして1cm×約20cmの試験片をたて、よこ方向にそれぞれ5枚づつ採取する。次に10分後の毛細管現象による水の上昇距離(mm)を測定し、たて、よこそれぞれの5回の平均値で表す。
(6)繊維Aの露出率
作成した布帛を顕微鏡を用いて観察し、観察した繊維Aの露出率を算出する。
(繊維Aの露出率)=(繊維Aの面積)/(複合糸全体の面積)
(7)破裂強力
ミューレン形法による破裂強力の測定は、JIS L1096(1999)における「メリヤス生地試験方法」に準じて、次の方法で行った。まず、サンプルとして15cm×15cmの試験片を5枚採取する。次にミューレン形破裂試験機を用い、シワやタルミが生じないように均一な張力を加えてセットし、ゴム膜が試験片を突き破る強さ、及び、破断時のゴム膜だけの強さを測定し、その差の平均を破裂強力(MPa)とする。
(8)ナノファイバー繊維Aの繊度
下記の方法で作成されるポリアミドナノファイバー繊維Aを含んだポリマーアロイ繊維Cから、加水分解促進剤として3重量%の4級アンモニウム塩を含む3重量%、95℃の水酸化ナトリウム水溶液でアルカリ処理を30分行い、易溶解性ポリマーの99%以上を除去して、ナノファイバー繊維Aとした後、JIS L1013(1999)の方法に従い繊度を測定する。
なお、実施例における各種特性値は次の方法で測定したものである。
(1)消臭率
3Lのテドラーバック内にサンプル1gを投入した後、試験ガスを注入し、その濃度をモニタリングすることで消臭性能を評価するものである。通常は試験ガス注入から24時間後のガス濃度をモニタリングするが、今回はより短い時間での評価とするために、50分での消臭性能で評価を行った。また、ガスとしては、衣類による評価として汗や糞尿などの人体、タバコやトイレなどの環境の臭気により多く含まれているアンモニア、酢酸を用い、その平均によって消臭率とした。
(2)蒸れ感、べとつき感
25℃65%RHに調温調湿された部屋内で、Tシャツに縫製したサンプルを被験者20名が試験し、それぞれ5段階(サラサラ感:○、ややサラサラ感:△、べとつき感:×)でもって評価する。
着用者のタイムスケジュール; 20分:安静状態→ 10分:歩行(ランニング機械使用、100m/分)→ 10分:安静状態で評価
(3)風合い
上記(7)項と同様に被験者20名が試験し、20分安静後の風合いについてそれぞれ5段階(ソフト感:○、ややソフト感:△、硬い:×)で評価した。
(4)抗ピル性試験法(ICI法5時間)
JIS L1076(1992)に基づいて評価を行う。
評価結果は、以下の通り5段階で級判定を行った。また、各級の中間レベルの場合は、3.5(3級と4級の中間レベル)のように表示した。
5級:ピリングの発生がほとんどないもの
4級:ピリングの発生が少々あるもの
3級:ピリングの発生がかなりあるもの
2級:ピリングの発生が多いもの
1級:ピリングの発生が著しく多いもの
(5)吸水性
バイレック法による吸水性の測定は、JIS L1096(1999)におけるバイレック法を準用し、次の方法で行った。まず、サンプルとして1cm×約20cmの試験片をたて、よこ方向にそれぞれ5枚づつ採取する。次に10分後の毛細管現象による水の上昇距離(mm)を測定し、たて、よこそれぞれの5回の平均値で表す。
(6)繊維Aの露出率
作成した布帛をKEYENCE製デジタルマイクロスコープVHX−100を用いて○倍で観察し、観察した繊維Aの露出率を算出した。
(繊維Aの露出率)=(繊維Aの面積)/(複合糸全体の面積)
(7)破裂強力
ミューレン形法による破裂強力の測定は、JIS L1096(1999)における「メリヤス生地試験方法」に準じて、次の方法で行った。まず、サンプルとして15cm×15cmの試験片を5枚採取する。次にミューレン形破裂試験機を用い、シワやタルミが生じないように均一な張力を加えてセットし、ゴム膜が試験片を突き破る強さ、及び、破断時のゴム膜だけの強さを測定し、その差の平均を破裂強力(MPa)とする。
(8)ナノファイバー繊維Aの繊度
ポリアミドナノファイバー繊維Aを含んだポリマーアロイ繊維Cから、加水分解促進剤として3重量%の4級アンモニウム塩を含む3重量%、95℃の水酸化ナトリウム水溶液でアルカリ処理を30分行い、易溶解性ポリマーの99%以上を除去して、ナノファイバー繊維Aとした後、JIS L1013(1999)の方法に従い繊度を測定した。
(実施例1〜2)
(1)ポリアミドナノファイバー繊維Aを含んだポリマーアロイ繊維C
溶融粘度250Pa・s(240℃、1216sec−1)のN6を40重量%と重量平均分子量12万、溶融粘度35Pa・s(240℃、1216sec−1)、融点170℃のポリL乳酸(光学純度99.5%以上)を60重量%を混練温度を235℃として参考例1と同様に溶融混練し、ポリマーアロイペレットを得た。なお、ポリ乳酸の重量平均分子量は以下のようにして求めた。試料のクロロホルム溶液にテトラヒドロフラン(THF)を混合し測定溶液とした。これをWaters社製ゲルパーミテーションクロマトグラフィー(GPC)Waters2690を用いて25℃で測定し、ポリスチレン換算で重量平均分子量を求めた。
これを溶融温度240℃、紡糸温度240℃、紡糸速度3000m/分で参考例1と同様に溶融紡糸を行った。この時、口金として口金孔径0.3mmの口金を使用した。紡糸性は良好であり、24時間の連続紡糸で糸切れは0回であった。これにより、92dtex、30フィラメントの高配向未延伸糸を得たが、これの強度は2.4cN/dtex、伸度90%、U%=1.5%と高配向未延伸糸として極めて優れたものであった。
この高配向未延伸糸を延伸温度90℃、延伸倍率1.39倍、熱セット温度130℃として参考例1と同様に延伸熱処理した。得られた延伸糸は78dtex、30フィラメントであり、強度3.6cN/dtex、伸度40%、熱収縮率9%、U%=1.5%の優れた特性を示した。
得られたポリマーアロイ繊維の横断面をTEMで観察したところ、ポリ乳酸が海成分、ナイロン6が島成分の海島構造を示し、直径200nm以上の粗大島は0.1%以下、島N6の数平均による直径は65nmであり、ナイロン6がナノサイズで均一分散化したポリマーアロイ繊維Cが得られた。得られたポリマーアロイ中のナノファイバー繊維Aの繊度は、31dtexであった。
(2)カチオン可染ポリエステル繊維B
ジメチル5−ナトリウムスルホイソフタレート/エチレンテレフタレート共重合体で酸化チタンを0.01重量%含有したチップを用いて通常の方法にて溶融紡糸、延伸して、カチオン可染ポリエステル繊維Bを得た。繊維Bは、84dtex、36フィラメント、単糸繊度2.3dtexで丸断面の延伸糸である。
(3)流体噴射加工
図1に示す流体噴射加工工程において、カチオン可染ポリエステル繊維Bを鞘糸側に給糸し、ポリマーアロイ繊維Cを芯糸側に給糸し、それぞれフィードローラ1および2を介して、4の流体乱流ノズルに送り込み複合させる。この時、より密に複合させるために、芯糸側のポリマーアロイ繊維Cに、水付与ガイド3を用いて、水を付与する。その後デリベリローラ5とフィードローラ7の間で、ヒータ6を用いてループセットした後、テイクアップローラ8に巻き取る。条件の詳細は表1の通りである。
次に、得られた複合加工糸を32Gシングル編機で天竺編地を作製し、98℃の浴槽でリラックス精練し、加水分解促進剤として3重量%の4級アンモニウム塩を含む3重量%、95℃の水酸化ナトリウム水溶液でアルカリ処理を30分行い、易溶解性ポリマーの99%以上を除去して、ナノファイバーが溶出された複合加工糸による布帛を得た。その後、カチオン染料で110℃で染色し、120℃でセットした。表1に布帛の物性を示す。また、顕微鏡拡大観察によるナノファイバー繊維Aの露出率は、実施例1で30%、実施例2で21%であった。得られた布帛は、ナノファイバー繊維A側は染色されておらず、杢感のある布帛であり、染色性のバラツキがなく良好な発色性を示した。この他にも、優れた吸水性、消臭性を有しており、その効果として、触感試験により、濡れ・べとつき感および肌触りの風合いにおいて、スポーツ、インナー素材として好適な結果を得ていることが分かる。
(実施例3)
(1)ポリアミドナノファイバー繊維Aを含んだポリマーアロイ繊維C
実施例1〜2の方法で作成された56dtex、24フィラメントの延伸糸を得た。得られたポリマーアロイ中のナノファイバー繊維Aの繊度は、22dtexであった。
(2)カチオン可染ポリエステル繊維B
実施例1〜2と同一のカチオン可染ポリエステル繊維Bを使用した。
(3)流体噴射加工
実施例1〜2と同様の加工方法にて複合加工糸を作成した。作成した複合加工糸を32Gシングル編機にて布帛を作成し、実施例1〜3と同様の方法で染色、評価を行った。条件の詳細は表1に示す。得られた布帛は、ナノファイバー繊維A側は染色されておらず、杢感のある布帛であり、染色性のバラツキがなく良好な発色性を示した。また、この布帛は優れた吸水性とソフトな風合いを有しており、繊維Aの露出率は22%であった。
(実施例4)
(1)ポリアミドナノファイバー繊維Aを含んだポリマーアロイ繊維C
実施例1〜2と同一のポリマーアロイ繊維Cを使用した。
(2)カチオン可染ポリエステル繊維B
実施例1〜2と同一のカチオン可染ポリエステル繊維Bを使用した。
(3)流体噴射加工
図2に示す流体噴射加工工程において、カチオン可染ポリエステル繊維Bを仮撚ツイスター11にて仮撚した後、鞘糸側に給糸し、ポリマーアロイ繊維Cを芯糸側に給糸し、14の流体乱流ノズルに送り込み複合させた後、テイクアップローラ16に巻き取る。条件の詳細は表1の通りである。作成した複合加工糸を32Gシングル編機にて布帛を作成し、実施例1〜3と同様の方法で染色、評価を行った。条件の詳細は表1に示す。得られた布帛は、ナノファイバー繊維A側は染色されておらず、杢感のある布帛であり、染色性のバラツキがなく良好な発色性を示した。この他にも、優れた吸水性とソフトな風合いを有しており、ナノファイバー繊維Aの露出率は12%であった。
(実施例5)
(1)ポリアミドナノファイバー繊維Aを含んだポリマーアロイ繊維C
実施例1〜2と同一のポリマーアロイ繊維Cを使用した。
(2)カチオン可染ポリエステル繊維B
実施例1〜2と同一のカチオン可染ポリエステル繊維Bを使用した。
(3)流体噴射加工
ポリマーアロイ繊維Cを鞘糸に、カチオン可染ポリエステル繊維Bを芯糸に使用し、実施例1と同様の方法で複合加工糸を作成した。得られた複合加工糸を、32Gシングル編機にて布帛を作成し、これを実施例1〜4と同条件にて染色仕上げを行った。表1に示すように、得られた布帛は、ソフト感がなく、吸水したときにべとつき感となる布帛であった。また、ナノファイバー繊維Aの露出率は59%であり、ナノファイバー繊維A側は染色されておらず、杢感のある布帛であり、染色性にバラツキがなかったが、やや発色性に乏しい布帛であった。
(比較例1)
(1)繊維Aとして細繊度マルチフィラメント繊維
溶融紡糸にて、40デシッテクス92フィラメントのポリアミド細繊度マルチフィラメント延伸糸を得た。
(2)カチオン可染ポリエステル繊維B
実施例と同一のカチオン可染ポリエステル繊維B(84dtex36フィラメント延伸糸)を使用した。
(3)流体噴射加工
実施例1〜3と同様の加工方法において、カチオン可染ポリエステル繊維Bを鞘糸、上記極細マルチフィラメントを芯糸に使用し複合加工糸を作成した。作成した複合加工糸を32Gシングル編機にて布帛を作成し、実施例1〜3と同様の方法で染色、評価を行った。条件の詳細は表1に示す。得られた布帛は、ポリアミド繊維Aは染色されておらず、杢感のある布帛であり、染色性のバラツキがなく良好な発色性を示した。この他に、ソフトな風合いを有し、ナノファイバー繊維Aの露出率は33%であったが、繊維の混繊状態が悪く、布帛の表面感の粗悪なものであり、消臭などの特性も実施例に劣っていた。
(比較例2)
(1)繊維Aとして細繊度マルチフィラメント繊維
実施例1〜2と同一のポリマーアロイ繊維Cを使用した。
(2)ポリアミド繊維B
実施例1に記載したポリアミドポリマーを用いて通常の方法にて溶融紡糸、延伸して、通常繊度のポリアミド繊維Bを得た。繊維Bは、84dtex、36フィラメント、単糸繊度2.3dtexで丸断面の延伸糸である。
(3)流体噴射加工
実施例1と同様の加工方法にて複合加工糸を作成した。作成した複合加工糸を32Gシングル編機にて布帛を作成し、ポリアミド用の酸性染料を使用して染色し、評価を行った。条件の詳細は表1に示す。優れた吸水性とソフトな風合いを有しており、繊維Aの露出率は22%であった。得られた布帛は、ナノファイバー繊維Aが低い発色性、通常ポリアミド繊維Bが高い発色性を示す弱い杢感の布帛となった。この布帛のナノファイバー繊維A側の退色性が大きく、また、他の布帛、特に、ポリアミド素材への汚染が起こる問題が発生した。
(実施例6)
(1)ポリブチレンテレフタレートナノファイバー繊維Aを含んだポリマーアロイ繊維C
溶融粘度120Pa・s(262℃、121.6sec−1)、融点225℃のPBTと実施例1で用いたポリL乳酸を実施例1同様に混練、溶融紡糸した。この時のポリマーのブレンド比はPBTが40重量%、ポリL乳酸が60重量%、溶融温度は255℃、紡糸温度は265℃とした。得られたポリマーアロイ繊維Cは78dtex、30フィラメント、強度3.0cN/dtex、伸度45%、乾熱収縮10%、U%1.6%の優れた特性を示した。
得られたポリマーアロイ繊維の横断面をTEMで観察したところ、ポリ乳酸が海、PBTが島の海島構造を示し、直径200nm以上の粗大島は0.1%以下、島PBTの数平均による直径は62nmであり、PBTが超微分散化したポリマーアロイ繊維Cであった。得られたポリマーアロイ中のナノファイバー繊維Aの繊度は、31dtexであった。
(2)ポリアミド繊維B
比較例2に示したポリアミド繊維Bを使用した。
(3)流体噴射加工
実施例1と同様の加工方法にて複合加工糸を作成した。作成した複合加工糸を32Gシングル編機にて布帛を作成し、実施例1と同様の方法で染色、評価を行った。条件の詳細は表1に示す。得られた布帛は、ナノファイバー繊維A側は染色されておらず、杢感のある布帛であり、染色性のバラツキがなく良好な発色性を示した。また、この布帛は優れた吸水性とソフトな風合いを有しており、繊維Aの露出率は32%であった。
Figure 2007247127
本発明の複合加工糸を得るための加工工程の一例である。 本発明の複合加工糸を得るための加工工程の一例である。
符号の説明
A:鞘糸
B:芯糸
1:フィードローラ
2:フィードローラ
3:水付与ガイド
4:流体噴射ノズル
5:デリベリローラ
6:チューブヒータ
7:フィードローラ
8:テイクアップローラ
9:フィードローラ
10:フィードローラ
11:仮撚ヒータ
12:仮撚ツイスタ
13:デリベリローラ
14:流体噴射ノズル
15:デリベリローラ
16:テイクアップローラ

Claims (9)

  1. 下記ナノファイバー繊維Aと繊維Bからなることを特徴とする複合加工糸。
    ナノファイバー繊維A:熱可塑性ポリマーからなり、数平均による単繊維繊度が0.1×10−6〜500×10−6dtexのナノファイバー繊維群であるナノファイバー集合体。
    繊維B:ナノファイバー繊維Aと異なる染色性を示す繊維。
  2. ナノファイバー繊維Aが染色されていないことを特徴とする請求項1に記載の複合加工糸。
  3. ナノファイバー繊維Aを構成する熱可塑性ポリマーの80重量%以上が、ポリエステル、ポリアミドおよびポリオレフィンからなる群から選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする請求項1または2に記載の複合加工糸。
  4. 繊維Bを構成する繊維の単繊維繊度が0.1dtex以上8dtex以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載の複合加工糸。
  5. ナノファイバー繊維Aが芯糸側に配置された芯鞘型複合加工糸であって、繊維Bに対する繊維Aの複合比率が5wt%〜70wt%であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1に項記載の複合加工糸。
  6. ナノファイバー繊維Aを構成する熱可塑性ポリマーがポリアミドであり、繊維Bがカチオン染色可能なポリエステル繊維であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の複合加工糸。
  7. ナノファイバー繊維Aを構成する熱可塑性ポリマーがポリブチレンテレフタレートであり、繊維Bがカチオン染色可能なポリエステル繊維、または、ポリアミド繊維であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の複合加工糸。
  8. ナノファイバー繊維Aが海島型複合糸から得られるナノファイバー集合体であって、該海成分がポリ乳酸であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の複合加工糸。
  9. 消臭率が80%以上であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の複合加工糸。
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