JP2007246873A - 蛍光体薄膜及びその製造方法、蛍光積層体、並びに発光装置 - Google Patents

蛍光体薄膜及びその製造方法、蛍光積層体、並びに発光装置 Download PDF

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Abstract

【課題】剥離や割れの生じるおそれが少なく、輝度に優れた蛍光体薄膜を提供する。
【解決手段】バインダ物質を実質的に含有せず、蛍光体粒子が互いに融着した構造を有する。
【選択図】なし

Description

本発明は、各種の発光装置に用いられる蛍光体薄膜と、その蛍光体薄膜を製造する方法、並びに、蛍光体薄膜を備えた蛍光積層体及び発光装置に関する。
次世代の汎用光源としてLEDが注目されている。LEDの内部では、電気エネルギーを用いて発生させる励起光(例えば青色光や紫外線)を蛍光体に照射しこれを発光させる。従って、蛍光体を分散した層がLED内部に設けられる。LEDの性能は、少ない消費電力で如何に高効率で蛍光体層を発光させるか、その発光をいかに高効率でLED外部に取り出すか、蛍光体層の経時的安定性の確保、更にこれらに加えて所望の調色(即ち、光の3原色など各発光色の蛍光体の調合)を同時に達成するか、などにより決まる。
従来の汎用蛍光体は、平均粒径が数μmのオーダーの粒子である。かかる蛍光体粒子を所望の濃度で含有する蛍光体薄膜を作る場合、蛍光体粒子自体を適当な媒質(水や有機溶媒など)に分散し透明基板(材質例:ガラス、石英、サファイアなどの無機材料基板)に塗布し、加熱や減圧工程による媒質除去を経て該透明基板に付着させる方法、かかる塗布の際に蛍光体粒子を保持してより安定で強度にも優れる薄膜を形成させる透明なバインダ材料(例えばエポキシ樹脂やトリアセチルセルロースなどの有機高分子材料、シリカなどの無機材料)を併用する方法、などが可能である。この時、前記蛍光体粒子の平均粒径は可視光や紫外線の波長よりも一桁大きく、且つ、蛍光体粒子を包む媒質(例えば、空気や窒素ガス等の気体、前記バインダ材料)と蛍光体粒子の屈折率差が大きいので可視光や紫外線の光散乱が生じ、これが蛍光体層の発光効率や発光の外部取り出し効率を低下させる場合があった。
また、前記平均粒径が数μmのオーダーの蛍光体粒子は、水や有機溶剤よりも比重が大きい。このため、その分散液を基板に塗布する工程において分散液中での沈殿を生じやすいので、例えば、液貯め容器内において攪拌の併用が必要であった。また、塗膜中に粒子が沈殿して厚さ方向の組成にムラが生じる、更には基板密着性が悪く塗膜が剥がれ落ちやすい(膜強度が低い)場合があるなど、成膜性に課題を残していた。
かかる光散乱や成膜性不良などの弊害を低減するために、蛍光体粒子の平均粒径を小さくして種々のバインダ(又はマトリクス)材質中に分散して得る蛍光体薄膜が提案されている。
特許文献1及び特許文献2には、平均粒径が0.5〜100nmの蛍光体粒子をバンドギャップの大きな半導体マトリクス中に分散した薄膜が開示されている。
特許文献3には、平均粒径が50〜1000nmの蛍光体粒子(実施例において好ましくは液相合成品)を高分子バインダ(好ましくはエチルセルロース)中に分散した薄膜が開示されている。
特許文献4には、可視光光源が発する光の波長の半分以下である粒径を有する蛍光体粒子を高分子バインダ(実施例において好ましくはポリアクリルアミド類)中に分散した薄膜が開示されている。
特許文献5には、平均粒径が100〜5000nmの蛍光体粒子を高分子等のマトリクス(実施例において好ましくはシアノエチルセルロース、シリコーン類、エポキシ樹脂、シリケート前駆体からゾル−ゲル法で得られるシリカ、並びに紫外線硬化樹脂)中に分散した薄膜が開示されており、該薄膜中における蛍光体量は好ましくは1〜20g/m2(即ち0.1〜2mg/cm2)と記載されている。
特許文献6には、平均粒径が1〜10nmの硫化物蛍光体粒子のコロイド液と、ここにバインダ樹脂を添加し塗工して得られる蛍光体薄膜が開示されている。
これら従来の蛍光体薄膜は、バインダ物質を必須としているので、紫外線などの励起光の長期照射による劣化や、蛍光体粒子とバインダ材質との界面における屈折率差や空隙の生成(つまり異物質界面の接着不良)による光散乱、更に、かかる異物質界面の接着不良に起因すると考えられる薄膜のひび割れや剥離、といった課題が生じやすいという欠点があった。また、10nm程度までの範囲では小粒径化により蛍光体粒子の輝度が減少することが当業者には知られており(例えば非特許文献1)、これらの従来技術による蛍光体薄膜は、そうした低輝度の小粒径粒子をバインダ材質中に単に分散させたものに過ぎないとも考えられ、かかる理由からも薄膜としての輝度は満足できるレベルになかった。
蛍光体粒子を焼成(高温加熱)すると、粒子界面(粒界)の焼結や結晶子サイズの成長などの推定機構により、実効的な平均粒径の増大により輝度が向上することが当業者において知られている。従って、蛍光体薄膜の輝度を向上させる別の手法として、塗膜された蛍光体薄膜を加熱(又はアニール)する方法が考えられる。
特許文献7には、硫化物蛍光体よりなる発光層を成膜後、光照射(好ましくはエキシマレーザ光の照射)により、好ましくは600℃以下に温度上昇を抑えてアニールする工程を特徴とする蛍光体薄膜の輝度向上方法が開示されている。
しかしながら、この従来技術が教示する方法によると、工業的に重要な金属酸化物系蛍光体の輝度向上は不十分である。また、該アニール温度が600℃以下であることから硫化物蛍光体を含む一般的な蛍光体の薄膜の輝度向上には限界があり、しかも、高価なエキシマレーザ照射装置を必要とすることから特に大面積の蛍光体薄膜の工業的に有利な製造には必ずしも適した方法ではなかった。
特許文献8には、半導体ナノ結晶(例えば粒径が1〜6nmであるII−VI族化合物半導体(周期律表第II族元素と第VI族元素を含有する化合物からなる半導体を指す。以下の記載も同様である。)又はIII−V族化合物半導体のナノ結晶粒子)の融点がμmオーダー以上の粒径のバルク結晶よりも低いことを利用し、まずナノ結晶を塗布し、次いで従来よりもはるかに低温の加熱工程(例えば500℃以下)により均質な化合物半導体結晶の薄膜を製造する方法が開示されている。この方法で確かにナノ結晶を互いに融着させて実効的な平均粒径を増大可能であるが、かかる低温での加熱では工業的に重要な汎用蛍光体(例えば、高融点の金属酸化物系蛍光体)の蛍光体粒子の輝度を向上させることはできない。
特開2003−173878号公報 特開2005−075943号公報 特開2004−063192号公報 特開2004−056767号公報 特開2005−116503号公報 特開2005−239959号公報 特開平9−148070号公報 米国特許第5262357号明細書 R. N. Bhargava, D. Gallagher, X. Hong and A. Nurmikko, "Optical properties of manganese-doped nanocrystals of ZnS", Physical Review Letters, Volume 72, Issue 3, Pages 416-419(1994年)
前記従来技術に鑑み、光学的な原理から理想的な蛍光体薄膜の機構を考えると、入射する励起光を完全に蛍光体粒子が吸収し、該粒子が100%の内部量子効率(粒子自体のエネルギー効率)で発光に変換し、該発光が薄膜から外部に100%の効率で取り出される状況であるといえる(かかる内部量子効率と薄膜からの発光の取り出し効率を合わせた発光効率を、外部量子効率と呼ぶ)。前記光散乱が蛍光体薄膜内部で生じると、たとえ蛍光体濃度を高めても、層内に存在する全蛍光体粒子に励起光が十分に行き渡らず発光しない無駄な蛍光体粒子が増える、発光の層内での光散乱損失が生じる、などの外部量子効率の低下が予想される。
本発明は上述の課題に鑑みてなされたもので、その目的は、剥離や割れの生じるおそれが少なく、輝度に優れた蛍光体薄膜と、その蛍光体薄膜を製造する方法、並びに、蛍光体薄膜を備えた蛍光積層体及び発光装置を提供することである。
本発明者らは、上記課題に鑑みて鋭意検討した結果、平均粒径が1nm以上、500nm以下の蛍光体粒子を融着させることにより、バインダ物質を実質的に用いることなく蛍光体粒子を薄膜化することができ、剥離や割れの生じるおそれが少なく、輝度に優れた蛍光体薄膜が得られることを見出して、本発明を完成させた。
即ち、本発明の要旨は、バインダ物質を実質的に含有せず、蛍光体粒子が互いに融着した構造を有することを特徴とする、蛍光体薄膜に存する(請求項1)。
この蛍光体薄膜は、無機材料基板上に形成されたものであることが好ましい(請求項2)。
また、前記無機材料基板は、少なくとも金属酸化物からなることが好ましい(請求項3)。
また、本発明の別の要旨は、上述の蛍光体薄膜を製造する方法であって、平均粒径が1nm以上、500nm以下の蛍光体粒子を融着させることを特徴とする、蛍光体薄膜の製造方法に存する(請求項4)。
ここで、異なる平均粒径を有する2種類以上の蛍光体粒子を混合して用いることが好ましい(請求項5)。
この場合、前記の平均粒径が1nm以上、500nm以下の蛍光体粒子を、蛍光体粒子全量に対し5重量%以上、95重量%以下の割合で含有することが好ましい(請求項6)。
また、蛍光体粒子を無機材料基板上に塗布する塗布工程と、前記塗布工程において塗布した蛍光体粒子を焼成する焼成工程とを有することが好ましい(請求項7)。
この場合、前記焼成工程を400℃以上で行なうことが好ましい(請求項8)。
また、本発明の別の要旨は、無機材料基板と、該無機材料基板上に形成された蛍光体薄膜とを備え、該蛍光体薄膜が、バインダ物質を実質的に含有せず、蛍光体粒子が互いに融着した構造を有することを特徴とする、蛍光積層体に存する(請求項9)。
ここで、前記無機材料基板が少なくとも金属酸化物からなることが好ましい(請求項10)。
また、本発明の別の要旨は、上述の蛍光体薄膜を少なくとも備えてなることを特徴とする、発光装置に存する(請求項11)。
本発明によれば、剥離や割れの生じるおそれが少なく、輝度に優れた蛍光体薄膜と、その蛍光体薄膜を製造する方法、並びに、蛍光体薄膜を備えた蛍光積層体及び発光装置が提供される。
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の説明に限定されるものではなく、その要旨の範囲内において種々に変更して実施することができる。
なお、本明細書中の蛍光体の組成式において、各組成式の区切りは読点(、)で区切って表わす。また、カンマ(,)で区切って複数の元素を列記する場合には、列記された元素のうち一種又は二種以上を任意の組み合わせ及び組成で含有していてもよいことを示している。例えば、「(Ba,Sr,Ca)Al24:Eu」という組成式は、「BaAl24:Eu」と、「SrAl24:Eu」と、「CaAl24:Eu」と、「Ba1-xSrxAl24:Eu」と、「Ba1-xCaxAl24:Eu」と、「Sr1-xCaxAl24:Eu」と、「Ba1-x-ySrxCayAl24:Eu」とを全て包括的に示しているものとする(但し、前記式中、0<x<1、0<y<1、0<x+y<1)。
[I.蛍光体薄膜]
本発明の蛍光体薄膜は、後述する蛍光体粒子からなり、通常は無機材料基板上に形成され、バインダ物質を実質的に含有せず、蛍光体粒子が互いに融着した構造(以下単に「融着構造」と記す場合がある。)を有することを特徴とするものである。
本発明者らは、蛍光体粒子の製造とその薄膜形成に関する検討の蓄積に基づき、蛍光体薄膜内の光散乱を低下させ、しかも前記無機材料基板への密着性と膜強度を高めるためには、樹脂成分などの有機材料のバインダを使用しないことが好ましく、更に、バインダを使用せず蛍光体粒子のみで蛍光体薄膜を構成できれば蛍光体粒子の充填率においても最良であると考えた。かかるバインダを使用しない蛍光体薄膜の製造方法は、前記焼成による輝度向上の従来知見から、膜強度や透明性を兼ね備えた焼成膜を形成できれば、蛍光体粒子どうしが密接に焼結するので輝度向上の点でも非常に好適であると推測された。
こうした考察を元に、バインダを使用せずに蛍光体粒子を塗膜して焼成する製造方法を系統的に検討した結果、塗膜時に緻密な粒子充填を可能とする平均粒径の小さい蛍光体粒子を使用することが好適であることを見出した。加えて、焼成前の段階である程度の厚膜(例えば、バインダなしで好ましくは2mg/cm2を超える程度)としておくことによって、焼成後の輝度が顕著に向上することを見出した。これは前記仮説、即ち、焼成工程で蛍光体粒子同士の焼結や融着が促進される結果、実効的な平均粒径(結晶子サイズ)が大きな蛍光体粒子として挙動するようになるという機構によるものと推測される。
〔蛍光体粒子〕
本発明の蛍光体薄膜は、少なくとも蛍光体粒子から構成される。なお、本発明において「蛍光体粒子」とは、電磁波(例えば赤外線、可視光線、紫外線、エックス線)や電子線の照射により可視光を放出する性質を有する無機物質の粒子である。
本発明の蛍光体薄膜に使用可能な蛍光体粒子の組成例としては、ZnS:Mn(II)、ZnS:Ag、ZnS:Tb(III)、ZnS:Au,Cu,Al、ZnS:Cu,Al、ZnCdS:Ag、ZnCdS:Cu,Al等の一般式ZnS:Xや一般式ZnCdS:X等で表わされる硫化亜鉛類(但し、本明細書における蛍光体の組成式において、Xは、賦活剤元素、例えばアルミニウム、チタニウム、マンガン、鉄、銅、銀、希土類元素、金、タリウム、鉛、ハロゲン元素等を表わし、Mは金属元素を表わす。)、Y23:Eu(III)、Y22S:Eu(III)、Y22S:Tb(III)、Y23Al23:Tb(III)、Y3Al512:Ce(III)等の一般式Y23:Xや一般式Y22S:X等で表わされる酸化イットリウム類、GaNやGaInN等の窒化ガリウム系に代表されるIII−V族化合物半導体蛍光体、YVO4:Eu(III)、YVO4:Dy(III)、Y(P,V)O4:Eu(III)等の一般式YVO4:X等で表わされるバナジン酸塩系蛍光体、CaWO4、CaWO4:Pb(II)、MgWO4、CdWO4等の一般式MWO4:X等で表わされるタングステン酸塩類、Gd22S:Tb(III)等の一般式Gd22S:X等で表わされる酸化ガドリニウム類、La22S:Eu(III)やLa22S:Tb(III)等の一般式La22S:X等で表わされる酸化ランタン類、CaS:Ce等の一般式CaS:X等で表わされる硫化カルシウム類、Zn2SiO4:Mn(II)、Zn2SiO4:Mn(II)、CaSiO3:Pb(II),Mn(II)、(Ba,Sr,Mg)3Si27:Pb(II)、(Ba,Mg,Zn)3Si27:Pb(II)、BaSi25:Pb(II)、Sr2Si382SrCl2:Eu(II)、Ba3MgSi28:Eu(II)、(Sr,Ba)Al2Si28:Eu(II)、Y2SiO5:Ce(III),Tb(III)、Ca3Sc2Si312:Ce(III)等のケイ酸塩系蛍光体、CaAlSiN3:Eu(III)等の窒化物系蛍光体、Zn3(PO42:Mn(II)、Sr227:Sn(II)、Sr227:Eu(II)、SrMgP27:Eu(II)、Sr3(PO42:Eu(II)、2SrO0.84P250.16B23:Eu(II)、LaPO4:Ce(III),Tb(III)、La230.2SiO20.9P25:Ce(III),Tb(III)、(Sr,Mg)3(PO42:Sn(II)、(Sr,Mg)3(PO42:Cu(I)、Sr10(PO46Cl2:Eu(II)、(Sr,Ca)10(PO46Cl2:Eu(II)、(Sr,Ca)10(PO46Cl2nB23:Eu(II)、(Ba,Ca,Mg)10(PO46Cl2:Eu(II)、3Ca3(PO42Ca(F,Cl)2:Sb(III)、Ca3(PO42:Tl(I)、(Ca,Zn)3(PO42:Tl(I)、3Ca3(PO42Ca(F,Cl)2:Sb(III),Mn(II)、Ba227:Ti(IV)、HfP27等のリン酸塩系又はハロリン酸塩系蛍光体、LiAlO2:Fe(III)、BaAl813:Eu(II)、Y3Al512:Tb(III)、Y3Al512:Ce(III)(以下「YAG系蛍光体」と略称する場合がある。)、BaMg2Al1627:Eu(II)、BaMg2Al1627:Eu(II),Mn(II)、BaMgAl1017:Eu(II)及びBaMgAl1017:Eu(II),Mn(II)等(以下「BAM系蛍光体」と略称する場合がある。)、Sr4Al1425:Eu(II)、SrAl24:Eu(II)、SrMgAl1017:Eu(II)、CeMgAl1119:Tb(III)等のアルミン酸塩系蛍光体、LiF、CaF2:Mn(II)、NaI:Tl、CaF2:Eu(II)、CsI:Na、CsI:Tl、LiI:Eu(II)、TlCl:Be,I、BaFCl:Eu(II)、BaFBr:Eu(II)、CsF、BaF2、KI:Tl、LaOBr:Tb(III)、LaOBr:Tm(III)等のハロゲン化物類、BaSO4:Eu(II)、CaSO4:Mn(II)、CaSO4:Dy(III)、Mg2SiO4:Tb(III)等の硫酸塩類、Li247:Mn(II)、SrB47F:Eu(II)、Cd225:Mn(II)、GdMgB510:Ce(III),Tb(III)、6MgOAs510:Mn(IV)、3.5MgO0.5MgF2GeO2:Mn(IV)、MgGa24:Mn(II)、Y3Al3Ga212:Tb(III)、Bi4Ge312等のその他の蛍光体が挙げられる。前記以外の金属酸化物の蛍光体粒子の組成例としては、MgO、Al23、SiO2、BaO等の非遷移金属酸化物類、TiO2、Mn23、Mn34、α−Fe23、γ−Fe23、Fe34、CoO、NiO、CuO、ZnO、SrO、Y23、ZrO2、MoO3、PdO2、AgO、CdO、In23、SnO2等の遷移金属酸化物類、CeO2、Gd23、Dy23、Ho23、Er23等のランタノイド類酸化物類、Sb23、Bi23、等の第15族元素の酸化物類等が挙げられる。
前記例示の蛍光体粒子の組成のうち、発光波長や物理化学的安定性の点から、本発明の蛍光体薄膜において好ましいものとしては、ZnS:Mn(II)、ZnS:Ag、ZnS:Tb(III)、ZnS:Au,Cu,Al、ZnS:Cu,Al等の一般式ZnS:Xで表わされる硫化亜鉛類、Y23:Eu(III)、Y22S:Eu(III)、Y22S:Tb(III)、Y23Al23:Tb(III)、Y3Al512:Ce(III)等の一般式Y23:Xや一般式Y22S:X等で表わされる酸化イットリウム類、Ca3Sc2Si312:Ce(III)等のケイ酸塩系蛍光体、CaAlSiN3:Eu(III)等の窒化物系蛍光体、Y3Al512:Tb(III)やY3Al512:Ce(III)などのYAG系蛍光体、BaMgAl1017:Eu(II)等のBAM系蛍光体、LiAlO2:Fe(III)、BaAl813:Eu(II)、Sr4Al1425:Eu(II)、SrMgAl1017:Eu(II)、CeMgAl1119:Tb(III)等のアルミン酸塩系蛍光体が挙げられる。中でも、ZnS:Mn(II)、Y23:Eu(III)(以下略称として「イットリア:Eu」と記す場合がある。)、Y22S:Eu(III)、Ca3Sc2Si312:Ce(III)、CaAlSiN3:Eu(III)、Y3Al512:Ce(III)(以下略称として「YAG:Ce」と記す場合がある。)、BaMgAl1017:Eu(II)(以下略称として「BAM:Eu(II)」と記す場合がある。)が更に好ましい。これらの蛍光体のうち、組成や発光色が異なる2種類以上の蛍光体粒子を混合して使用することもできる。
前記蛍光体粒子は、通常、1次粒子(又は結晶子粒子)が凝集して2次粒子を構成し、更にそれらの2次粒子が凝集して大型の凝集粒子を構成する、といった凝集構造を有する。前記1次粒子の粒径は、TEM(Transmission Electron Microscope:透過型電子顕微鏡)観察及び又はXRD(X-ray diffraction:X線回折)スペクトル測定により決定され、前記2次粒子やそれよりも大型の凝集粒子の微細構造は、TEM観察により判別する。後述する平均粒径を規定した製造方法においては、その平均粒径は、蛍光体粒子が分散媒質(例えばエタノール等の溶剤)中にまさに分散している分散粒子についての数値であって、かかる場合の分散粒子は、前記1次粒子、2次粒子、もしくは該2次粒子が凝集した大型の凝集粒子の何れであってもよい。
前記蛍光体粒子の製造方法に制限はないが、例えば、固相法、水熱合成法、噴霧熱分解法(原料溶液を液滴として分散噴霧させるために超音波や減圧を用いてもよく、塩化ナトリウムなどのフラックスを併用してもよい。)、逆ミセル法、晶析法や共沈法などの液相合成法(例えば前記特許文献3に記載がある。)、ゾル−ゲル法など公知の方法により製造可能である。
かかる公知の方法で製造された蛍光体粒子は、後述する蛍光体薄膜の製造方法(本発明の製造方法)に好適な平均粒径とするために、機械的粉砕を施して使用してもよい。かかる機械的粉砕は乾式でも湿式でもよいが、好ましくは湿式である。使用可能な粉砕装置としては、コニカルボールミル等のボールミル、ロッドミル、遠心ミル、遊星ミル等の転動又は振動ミル、粒子分散液を衝突させるインパクトミル、攪拌ミル(アームタイプ、ディスクタイプ等)、ローラーミルやインナーピース式(例えばホソカワミクロン製オングミル)の圧密剪断ミル等が例示される。これらのうちボールミル、遊星ミル、インパクトミルが好ましく用いられ、中でもボールミルが更に好ましい。
〔融着構造〕
本発明の蛍光体薄膜は、樹脂やシリカなどの前記公知のバインダ物質を実質的に含有せず、上述の蛍光体粒子が互いに融着した構造を有する。本発明において「融着」とは、複数の蛍光体粒子が、焼成(即ち加熱)操作によって、互いの粒子表面を介して融合した構造を形成することを意味する。かかる融着構造は、例えばSEM(Scanning Electron Microscope:走査型電子顕微鏡)やTEMなどの顕微鏡的な手段で確認される。即ち、与えられた蛍光体薄膜をSEM及び/又はTEMで観察した場合において、蛍光体粒子どうしがダルマ型や連鎖状に結合した構造、若しくは蛍光体粒子が多数凝集し融合して生成する多孔質構造(例えば、比喩的に菓子の「オコシ」状など)が観察される場合には、本発明でいう融着した構造であると判定できる。また、融着により蛍光体粒子の結晶子サイズが顕著に増大する場合には、焼成の前後でXRDスペクトルの結晶ピークの半値幅が小さくなることで確認できる場合もある。
なお、前記「融着構造」を生じさせる物理現象としては、焼成による蛍光体粒子の融解とその冷却過程での凝固や、蛍光体粒子の形骸(外観、即ち粒子形状や大きさ)は概ね保持されているがその表面を通しての近傍粒子との物質移動を起こし融合する現象である焼結などの機構を例示できる。
蛍光体薄膜において前記融着構造が占める割合(出現頻度)は、任意に選んだ50μm四方の領域をSEM又はTEMにより観察した場合に、互いに5μm以上隔たって存在する前記融着構造が、通常5箇所以上、好ましくは10箇所以上、更に好ましくは20箇所以上観察されることが、輝度と機械的強度の観点から望ましい。与えられた蛍光体薄膜の総面積が前記条件よりも小さい場合には、当該蛍光体薄膜における前記融着構造の出現頻度が、前記範囲に相当する出現頻度以上であればよい。
〔膜厚及び透明性〕
蛍光体薄膜の輝度は、その膜厚と透明性(即ち、薄膜内部での光散乱の程度)の兼ね合いに影響を受ける。つまり、薄膜が不透明(光散乱が大)であれば、励起光は光散乱により薄膜内部に深く侵入できず存在する蛍光体粒子を有効に発光させられないが、同程度の不透明性の場合でも膜厚が小さければ、相対的に発光に寄与する蛍光体粒子の割合は増えると考えられる。また、薄膜が不透明な場合は、発光も同時に薄膜内部で散乱されて外部に取り出され難くなるが、膜厚が小さければ膜厚方向に進行する光が散乱される頻度は低下するので、相対的に発光をより有効に取り出すことができると考えられる。
好ましい膜厚と透明性との関係は、具体的には、平均膜厚と可視光波長領域(例えば、BAM:Eu(II)の発光ピーク波長である456nm)における光線透過率を測定し、それらを輝度の実測結果に照らして、好ましい条件を経験的に知ることができる。
蛍光体薄膜の輝度の点で好ましい条件は、励起光及び発光の波長領域での透明性に優れ、薄膜中の蛍光体粒子含有量と膜厚がともに大きいことである。但し、膜厚が大きすぎると、成膜時の残留応力や使用時の温度変化による熱膨張及び収縮の履歴などの要因により、蛍光体薄膜が割れ易くなるなど、機械的強度が低下する場合がある。
かかる理由から、本発明の蛍光体薄膜における、無機材料基板上の蛍光体粒子の単位面積当たりの重量(これを以下「蛍光体付着量」と記す場合がある。)は、通常0.01mg/cm2以上、好ましくは0.1mg/cm2以上、更に好ましくは0.5mg/cm2以上、また、通常1000mg/cm2以下、好ましくは100mg/cm2以下、更に好ましくは50mg/cm2以下の範囲である。
また、同じ理由から、本発明の蛍光体薄膜の平均膜厚は、通常0.01μm以上、好ましくは0.1μm以上、更に好ましくは0.5μm以上、また、通常2000μm以下、好ましくは1000μm以下、更に好ましくは500μm以下の範囲である。
なお、蛍光体薄膜の平均膜厚は、蛍光体薄膜の断面をSEM観察した場合に、互いに少なくとも50μm隔たった任意の少なくとも5箇所で測定された膜厚の算術平均として求められる。但し、与えられた蛍光体薄膜の断面の長さが前記条件よりも小さい場合は、その断面の長さが許容する範囲内で、同様に任意の少なくとも5箇所で測定された膜厚の算術平均で代用する。
また、蛍光体薄膜の波長456nmにおける光線透過率は、与えられた蛍光体薄膜の互いに少なくとも50μm隔たった任意の少なくとも5箇所で測定された直進透過光の透過率の算術平均として求められる。かかる光線透過率は、汎用のWIランプなどを搭載した分光光度計で測定することが可能である。分光光度計は積分球を備えていないものでもよいが、積分球を備え直進透過光と散乱透過光を区別して測定可能な装置の場合には、直進透過光の透過率を採用する。
〔蛍光体薄膜の密度〕
本発明の蛍光体薄膜の密度(以下「薄膜密度」と記す場合がある。)は、その製造方法や製造時に使用する蛍光体粒子の化学組成にもよるが、輝度の観点から大きいほど好ましく、その下限は通常2g/cm3以上、好ましくは2.5g/cm3以上、更に好ましくは3g/cm3以上の範囲である。一方、薄膜密度の上限は通常5g/cm3以下、好ましくは4g/cm3以下の範囲である。なお、該薄膜密度は、前記平均膜厚と蛍光体付着量から算出可能である。
[II.蛍光体薄膜の製造方法]
本発明の蛍光体薄膜を製造する方法は特に制限されないが、通常は、平均粒径が1nm以上、500nm以下の蛍光体粒子を融着させる方法を用いることが好ましい。以下の記載では、この方法(これを「本発明の蛍光体薄膜の製造方法」或いは単に「本発明の製造方法」と略称する。)について詳細に説明する。
本発明の蛍光体薄膜の製造方法における具体的な手順としては、分散液塗布法、即ち、蛍光体粒子を溶媒に分散させて蛍光体粒子分散液を調製し、これを無機材料基板上に塗布する塗布工程と、得られた塗布膜を焼成する焼成工程とを少なくとも備える方法が例示できる。ここで、例えば塗布工程と焼成工程の間や、塗布工程を繰り返し行なう場合にはその間などに、溶媒を除去する乾燥工程を適宜実施してもよい。
以下の記載では、主にこの分散液塗布法の場合を例として説明するが、本発明の蛍光体薄膜の製造方法はこの分散液塗布法に制限されるわけではなく、平均粒径が1nm以上、500nm以下の蛍光体粒子を融着させるものであればその具体的な手順は任意に選択することが可能である。
〔蛍光体粒子〕
本発明の製造方法では、平均粒径が1nm以上、500nm以下の、従来の汎用品よりも小さな粒径を有する蛍光体粒子(以下「小粒径粒子」と記す場合がある。)を用いる。これにより、緻密であって、薄膜内部における光散乱損失が少なく、機械的強度にも優れる蛍光体薄膜を得ることが可能となる。
具体的に、本発明の製造方法で使用される小粒径粒子の平均粒径は、通常1nm以上、好ましくは10nm以上、更に好ましくは20nm以上、また、通常500nm以下、好ましくは400nm以下、更に好ましくは300nm以下の範囲である。小粒径粒子の平均粒径が小さ過ぎると、得られる蛍光体薄膜の輝度が低下する場合があり、また、小粒径粒子の平均粒径が大き過ぎると、前記融着構造の形成が不十分となり蛍光体薄膜の輝度や機械的強度が低下する場合がある。
なお、本発明において、蛍光体粒子の「平均粒径」とは、蛍光体粒子を23℃においてエタノール中に5重量%の濃度で分散した場合の分散粒子についての数値である。かかる分散粒子は、上述の[I.蛍光体薄膜]における〔蛍光体粒子〕の欄で説明した1次粒子、2次粒子、もしくは該2次粒子が凝集した大型の凝集粒子の何れであってもよい。かかる平均粒径は、汎用の粒度分布計測装置であるコールターカウンター等で測定される個数メジアン径の数値であって、顕微鏡観察と画像処理の組み合わせにより測定値の妥当性を確認可能である。
本発明の製造方法で使用される小粒径粒子は、上述の[I.蛍光体薄膜]における〔蛍光体粒子〕の欄で説明した各種の製造方法を利用することにより製造可能である。具体的には、特開2003−027050号公報に記載された、フラックス塩を併用する噴霧熱分解法や、上述した粉砕装置を利用することにより製造可能である。
〔無機材料基板〕
本発明の製造方法において使用される無機材料基板の材料は、本発明の趣旨を逸脱するものでない限り特に制限されないが、高温の焼成が可能であり化学的安定性にも優れるという点から、金属酸化物が好ましい。具体的には、石英、サファイア、窒化ガリウム、酸化亜鉛等が挙げられる。中でも、石英又はサファイアがより好ましく、サファイアが更に好ましい。なお、無機材料基板は、何れか一種の材料のみからなるものであってもよいが、二種以上の材料を任意の組み合わせ及び比率で含むものであってもよい。
無機材料基板の形状としては、板状、球状、半球状、箱状、レンズ状、ビーズ状、ファイバー状等、任意のものを用いることが可能であるが、通常は板状のものを用いることが好ましい。
無機材料基板が板状の場合、基板の大きさは、得ようとする蛍光体薄膜の大きさに応じて適宜選択することができる。また、基板の厚みは、通常1μm以上、好ましくは10μm以上、また、通常10mm以下、好ましくは2mm以下の範囲である。
〔塗布工程〕
塗布工程では、上述の蛍光体粒子を溶媒に分散させて蛍光体粒子分散液を調製し、これを上述の無機材料基板上に塗布する。
蛍光体粒子分散液の調製に用いる溶媒としては、上述の蛍光体粒子を好適に分散させることができれば特に制限されないが、水又は親水性有機溶媒が好ましい。親水性有機溶媒の例としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル等のグリコール類;N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒;テトラヒドロフラン(THF)、1,3−ジオキソラン等の環状脂肪族エーテル類;アセトン、2−ブタノン等の低級脂肪族ケトン類;などが挙げられる。中でも、蛍光体粒子の分散性が高いという理由から、炭素数3以下の低級アルコール類及び炭素数3以下のグリコール類が好ましく、メタノール又はエタノールが特に好ましい。これらの溶媒は、何れか一種のみを単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
蛍光体粒子分散液中における蛍光体粒子の濃度の下限は、生産性の観点から、通常0.01重量%以上、好ましくは0.1重量%以上、更に好ましくは0.5重量%以上、特に好ましくは1重量%以上である。一方、蛍光体粒子分散液における蛍光体粒子の濃度の上限は、当該分散液や塗膜における組成の均一性を確保する観点から、通常20重量%以下、好ましくは15重量%以下、更に好ましくは10重量%以下、特に好ましくは7重量%以下である。
かかる蛍光体粒子分散液には、分散性の向上などの目的で、適当な分散剤を併用してもよい。分散剤の例としては、クエン酸ナトリウムやポリリン酸類が挙げられる。但し、最終的に焼成後の蛍光体薄膜にかかる分散剤由来の物質が残留すると、輝度を極端に損ねたり、無機材料基板と反応してこれを侵したりする場合があるので、分散剤は使用しないことが好ましい。
塗布の手法は特に制限されないが、その例としては、ディップコート、スピンコート、スプレーコート、ドクターブレードやバーコーターを使用する流延法や、インクジェット法やグラビア法等の各種印刷法の応用などが挙げられる。
〔乾燥工程〕
乾燥工程では、塗布工程で得られた塗布膜を乾燥し、溶媒を揮発させて除去する。乾燥の手法は特に制限されないが、その例としては、自然乾燥、送風下乾燥、減圧乾燥、加熱乾燥等が挙げられる。これらの手法は二種以上を組み合わせてもよい。これらの中でも、加熱による揮発法を用いることが好ましい。
加熱による乾燥は、通常は市販の加熱オーブン(送風してもよい)を用いて行なう。加熱オーブン中の雰囲気には、空気、窒素ガスやアルゴンガスなどの不活性ガスを用いる。
加熱温度は、蛍光体薄膜の剥離やひび割れなどの不都合がない限り特に制限されないが、通常30℃以上、好ましくは50℃以上、更に好ましくは70℃以上、また、通常500℃以下、好ましくは400℃以下、更に好ましくは300℃以下の範囲である。
加熱時間は、蛍光体薄膜の剥離やひび割れなどの不都合がない限り特に制限されない。一般的には、加熱時の温度等の条件によっても異なるが、通常1分以上、好ましくは5分以上、更に好ましくは10分以上、また、通常120時間以下、好ましくは72時間以下、更に好ましくは36時間以下の範囲である。
なお、溶媒の沸点が高く揮発しにくい場合には、揮発がある程度進んで蛍光体薄膜の形体が形成された段階で、低沸点の溶剤を接触させることにより、残存する溶媒を抽出除去してもよい。
〔焼成工程〕
焼成工程では、蛍光体粒子の塗布膜を焼成する。
焼成時の最高温度は、蛍光体粒子の化学組成、無機材料基板の種類(通常はその融点以下で焼成する。)、焼成の時間的条件(昇降温速度や特定温度での保持時間等の加熱パターン)などにもよるが、蛍光体粒子の融着促進の観点から、温度の下限は通常400℃以上、好ましくは600℃以上、更に好ましくは800℃以上である。一方、無機材料基板の耐熱性と蛍光体粒子の化学的安定性を確保する観点から、温度の上限は通常2000℃以下、好ましくは1800℃以下、更に好ましくは1700℃以下である。
特に、好ましい無機材料基板であるサファイア基板を用いる場合、その化学的安定性と焼成効果の観点から、焼成温度は、通常1200℃以上、好ましくは1400℃以上、更に好ましくは1500℃以上、また、通常1900℃以下、好ましくは1800℃以下、更に好ましくは1700℃以下の範囲である。
また、やはり好ましい無機材料基板である石英基板を用いる場合、好ましい焼成温度範囲は、通常800℃以上、好ましくは900℃以上、更に好ましくは1000℃以上、また、通常1300℃以下、好ましくは1250℃以下、更に好ましくは1200℃以下の範囲である。
焼成時における上記最高温度での保持時間は、通常1分以上、好ましくは5分以上、更に好ましくは10分以上、また、通常24時間以下、好ましくは12時間以下、更に好ましくは6時間以下の範囲である。なお、かかる保持時間は、上述の最高温度を連続的に保持することにより満たしていてもよいが、上述の最高温度の範囲を一時的に逸脱する場合があっても、上述の最高温度の範囲内に断続的に保持した結果、その合計時間として満たしても構わない。
焼成時の雰囲気は、使用する蛍光体粒子の種類によって異なる。酸化雰囲気により変質する蛍光体粒子(例えば、酸化されてEu(III)に変化するEu(II)等の賦活剤を用
いた、BAM:Eu(II)等の蛍光体粒子)を使用している場合には、空気等の酸素ガスを含有する気体ではなく、水素を数体積%含有する窒素ガスなどの還元性雰囲気下で行なう。一方、酸化雰囲気により変質するおそれがない蛍光体粒子(例えば、イットリア:EuやYAG:Ce等)を使用する場合には、このような制限はなく、酸化雰囲気を含む任意の雰囲気を採用することが可能であるが、空気下で焼成を行なうのが好適である。
〔その他〕
本発明の蛍光体薄膜は、前記例示のような湿式法(分散液塗布法)ではなく、乾式法、例えば、蛍光体粒子を無機材料基板に吹き付け、若しくは重力落下させて堆積(この時必要に応じて加熱してもよい。)させた後、焼成する方法でも製造可能である。
なお、本発明の蛍光体薄膜の製造において、膜質の緻密化などを目的として「塗り重ね」を行なってもよい。例えば、前記分散液塗布法の場合、前記乾燥工程又は前記焼成工程を経た状態に、新たに蛍光体粒子分散液を塗布し、その後の工程を行なう方法である。かかる塗り重ねにより、蛍光体薄膜の膜質をより緻密なものに改良できる場合がある。これは、単一又は少数回数の塗膜では、乾燥工程又は焼成工程における蛍光体粒子の凝集や融着により、薄膜内部に亀裂や空隙などの欠陥部位が生じる場合があるためである。塗り重ねによりかかる欠陥部位を埋めて、より緻密な膜質とすることが可能である。かかる緻密化により輝度が大幅に改良される場合があり、これは、実効的な蛍光体結晶子サイズの増大や前記欠陥部位における光散乱の低減によるものと推測される。前記塗り重ねは、前記乾式法による製造方法においても可能である。
〔異粒径粒子の混合〕
本発明の蛍光体薄膜を製造する際には、湿式又は乾式を問わず、2種類以上の平均粒径を有する蛍光体粒子を混合して用いる方法(以下「異粒径混合法」と記す場合がある。)を採用することが好ましい。特に、上述の平均粒径が1nm以上、500nm以下の蛍光体粒子(小粒径粒子)を、それよりも大きな径(具体的には通常500nm以上、好ましくは1000nm以上、また、通常100μm以下、好ましくは50μm以下)を有する蛍光体粒子(これを適宜「大粒径粒子」という。)と併用すると、膜強度や成膜性が顕著に向上し、輝度の点でも有利となる。
このような効果が得られる理由は明らかではないが、得られる蛍光体薄膜において、上記の大粒径粒子の隙間を上記の小粒径粒子が埋めるという、緻密化に有利な状態を与えること、輝度に優れるという大粒径粒子本来の性質をそのまま薄膜に反映して利用可能であること、大粒径粒子が薄膜の機械的強度を補強する充填材(フィラー)として働くこと、などが主因と推測される。
大粒径粒子と小粒径粒子とを混合して用いる場合、大粒径粒子の平均粒径と小粒径粒子の平均粒径との比率{(大粒径粒子の平均粒径)/(小粒径粒子の平均粒径)}は、均質な混合性と緻密化の効果の点で、通常2以上、好ましくは5以上、更に好ましくは10以上、また、通常10000以下、好ましくは5000以下、更に好ましくは1000以下の範囲である。
かかる異粒径混合法において、前記小粒径粒子(平均粒径が1nm〜500nm)を用いる場合、蛍光体粒子全量に対する前記小粒径粒子の使用割合は、薄膜の機械的強度の観点から、通常5重量%以上、好ましくは20重量%以上、更に好ましくは30重量%以上の範囲であり、一方、輝度の観点から、通常95重量%以下、好ましくは80重量%以下、好ましくは70重量%以下の範囲である。
前記小粒径粒子を使用する別の利点として、比較的低い温度でも前記融着構造を形成できるという点が挙げられる。このような利点が得られる機構としては、蛍光体結晶の小粒径化により、例えば、前記特許文献8に記載のようにその融点が大粒径粒子よりも下がる機構や、結晶表面の結晶格子欠陥部位が増えるために結晶表面が互いに焼結し易くなる機構などが推測される。従って、前記異粒径混合法において、塗膜された大粒径粒子の隙間をより低温で融着構造を形成する小粒径粒子が埋めることによって、該小粒径粒子が一種のバインダの役割を果たして(それ自身が蛍光体結晶を形成可能である同物質バインダとみなせる。)、該大粒径粒子を固定して薄膜の機械的強度を向上させる効果(以下「自己バインダ効果」と記す場合がある。)、並びに、かかる小粒径粒子が融着構造を作りやすいことから大粒径粒子表面との融着(焼結)も容易に進行する結果として大粒径粒子の実効的な平均粒径を増大させる効果などが得られるものと推測される。
従って、例えば前記特開2003−027050号公報のフラックス塩を併用する噴霧熱分解法により製造可能な一次粒径が20nm以下である蛍光体ナノ結晶を該小粒径粒子として使用すると、かかる蛍光体ナノ結晶がたとえ凝集して大きな二次粒子以上の凝集粒子を形成していたとしても、構成単位である該蛍光体ナノ結晶は極めて融着構造を形成しやすい(つまり低温での融解や焼結を起こしやすい)ので、非常に有効な自己バインダ効果を示す。かかる自己バインダ効果の点で、小粒径粒子として使用される蛍光体粒子の一次粒子の粒径は、通常1nm以上、また、通常15nm以下、中でも10nm以下の範囲とすることが好ましい。
[III.その他]
本発明の蛍光体薄膜は、剥離や割れの生じるおそれが少なく、輝度に優れるという効果を有する。また、このような本発明の蛍光体薄膜は、例えば、平均粒径が通常1nm以上、500nm以下の蛍光体粒子(小粒径粒子)を融着させる方法(本発明の蛍光体薄膜の製造方法)によって得られるが、この方法によれば、蛍光体粒子の成膜性が良好であるとともに、バインダ物質を実質的に用いることなく蛍光体粒子を薄膜化することができる。その結果得られる蛍光体薄膜は、剥離や割れの生じるおそれが少なく、即ち、高い強度を有する。また、粒径分布や融着構造の制御により、薄膜の緻密化とともに、光散乱が少なく透明性に優れたものとすることが可能であり、かかる場合には強度に優れた厚膜の高輝度の蛍光体薄膜となる。
本発明の蛍光体薄膜の用途は特に制限されないが、上述の効果を有することから、蛍光灯や代替照明器具、ブラウン管、LED、液晶テレビ、プラズマテレビ等の、発光機能を有する各種の装置の分野において、好適に用いられる。
特に、上述の無機材料基板上に本発明の蛍光体薄膜が形成された積層体(以下適宜「本発明の蛍光積層体」という。)は、無機材料基板の材料や形状等を目的に応じて適切に選択することにより、そのまま各種の用途に使用することが可能である。本発明の蛍光積層体は、その用途に応じて、適宜他の層を形成したり、無機材料基板や本発明の蛍光体薄膜中に各種の添加物を含有させたりしてもよい。
以下、本発明について実施例を用いて更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
[I.蛍光体粒子及び蛍光体薄膜の測定・評価等]
後述の各合成例、各実施例及び各比較例において、蛍光体粒子の平均粒径の測定及び湿式粉砕、並びに蛍光体薄膜の各種の評価は、以下の手法で行なった。
〔蛍光体粒子の平均粒径の測定〕
蛍光体粒子の平均粒径の測定は、日機装製の分散液粒径測定装置であるマイクロトラックUPAを用いて、23℃における個数メジアン径を測定した。
〔蛍光体粒子の湿式粉砕〕
蛍光体粒子の湿式粉砕は、寿工業社製ビーズミルであるウルトラアペックスミルUAM−015(0.1mm径ジルコニアビーズ使用)を用いて、室温下、ローター周速度10m/secで蛍光体粒子の分散液を循環させることにより行なった。
〔蛍光体薄膜の輝度測定〕
蛍光体薄膜の輝度の測定は、日立製作所製F−4500型分光蛍光光度計(150Wキセノンランプ搭載)を用いて、透過法(励起光の入射側の反対側から輝度を測定する手法)により行なった。後述の表1では、各実施例の蛍光体薄膜の輝度を、その蛍光体粒子の種類毎に、対応する比較例の蛍光体薄膜の輝度に対する相対値(相対輝度)で記載した。但し、BAM:Eu(II)、イットリア:Eu及びYAG:Ceの各蛍光体粒子を用いた場合においては、励起波長はそれぞれ365nm、254nm及び465nmとし、輝度測定波長はそれぞれ青、赤及び黄の発光領域の最大強度を与える波長とした。
〔蛍光体薄膜の融着構造の有無〕
日立製作所製のSEMであるS−4500を用いて蛍光体薄膜を観察することにより、融着構造の有無を判定した。後述の実施例1における焼成前の蛍光体薄膜のSEM写真を図1に、焼成後の蛍光体薄膜のSEM写真を図2に示す。
〔蛍光体薄膜の剥離又は割れ〕
蛍光体薄膜を目視観察することにより、剥離又は割れの有無を判定した。
[II.蛍光体粒子の調製]
〔合成例1(BAM:Eu(II)蛍光体粒子)〕
平均粒径5μmの市販のBAM:Eu(II)蛍光体粒子(化成オプトニクス社製)を、5重量%の濃度となるようにエタノールに分散し、上述の手法で湿式粉砕することにより平均粒径240nmのBAM:Eu(II)蛍光体粒子の分散液を得た。この分散液は、少なくとも数日間は沈殿を生じない分散安定性を示した。
〔合成例2(イットリア:Eu蛍光体粒子)〕
原料水溶液として、酸化イットリウム及び酸化ユウロピウム(これらを併せて以下「蛍光体原料」という。)並びに硝酸を水に溶解させた溶液を準備した。酸化ユウロピウムの使用量は、イットリウム及びユウロピウムの総量に対するユウロピウムの濃度が6モル%となるように調整した。また、硝酸の使用量は、イットリウム及びユウロピウムの総モル数の3倍とした。装置としては、超音波発生器により原料水溶液の霧状の液滴を発生させ、空気により電気炉に送り込み熱分解させる機構を有する噴霧熱分解装置を使用した。フラックスとして塩化ナトリウムを用い、蛍光体原料とフラックスとの使用割合は、フラックスに対する蛍光体原料のモル比{(蛍光体原料のモル数)/(フラックスのモル数)}の値で1/10とした。電気炉温度900℃、空気供給量毎分400リットル、原料水溶液の噴霧量毎時3.0kgの条件で、前記噴霧熱分解装置を作動させることにより、塩化ナトリウムに包含されたイットリア:Eu蛍光体粒子(以下「イットリア:Eu前駆体粒子」と記す場合がある。)を合成した。この合成物を水洗して塩化ナトリウムを溶解除去した後、前述の手順により水中で湿式粉砕を行なうことにより、平均粒径200nmのイットリア:Eu蛍光体粒子が分散した水分散液を得た。このイットリア:Eu蛍光体粒子には、エックス線散乱(XRD)スペクトルのピーク半値幅から算出される平均結晶子サイズ13nmのイットリア:Eu蛍光体ナノ結晶が1次粒子として存在することが判った。従って、得られた水分散液に含まれる平均粒径200nmのイットリア:Eu蛍光体粒子は、前記ナノ結晶を1次粒子とする凝集粒子であると判断される。
〔合成例3(YAG:Ce蛍光体粒子)〕
平均粒径6μmの市販のYAG:Ce蛍光体粒子(化成オプトニクス社製)を、5重量%の濃度となるようにエタノールに分散し、前述の手順により湿式粉砕を行なうことにより、平均粒径が70nmであるYAG:Ce蛍光体粒子の分散液を得た。
[III.蛍光体薄膜の調製]
〔実施例1〕
無機材料基板としては、厚さ0.5mmのサファイア製基板を用いた。この無機材料基板上に、合成例1で得られたBAM:Eu(II)蛍光体粒子(平均粒径240nm)の分散液を、ディップコーター(引上げ速度3mm/分)を用いて塗布しては風乾する、という操作を数回繰り返した。その後、120℃の熱風オーブンで30分間加熱乾燥した。乾燥後における無機材料基板上の蛍光体付着量は2mg/cm3であった。この蛍光体粒子塗布無機材料基板を、4体積%水素ガス含有窒素ガスの還元性雰囲気下、大気圧下で毎分5℃の速度で昇温し、1600℃で3時間維持することにより、焼成を行なった。以上の手順により、蛍光体薄膜を作製した。
〔実施例2〕
上述の実施例1において、合成例1のBAM:Eu(II)蛍光体粒子の分散液の代わりに、合成例2で得られたイットリア:Eu蛍光体粒子(平均粒径200nm)の分散液を用い、この分散液をディップコーターで塗布する代わりに、スプレーガンを用いて無機材料基板上にスプレー塗布し、乾燥後における無機材料基板上の蛍光体付着量を4mg/cm3とし、焼成を空気雰囲気下で行なった他は、実施例1と同様の手順により蛍光体薄膜を作製した。
〔実施例3〕
上述の実施例1において、サファイア製基板の代わりに厚さ1mmの石英製基板を無機材料基板として用い、合成例1のBAM:Eu(II)蛍光体粒子の分散液の代わりに、合成例2で得られたイットリア:Eu蛍光体粒子(平均粒径200nm)の分散液を用い、この分散液をディップコーターで塗布する代わりに、スプレーガンを用いて無機材料基板上にスプレー塗布し、焼成を空気雰囲気下、毎分5℃で昇温し、1100℃で3時間維持するという条件で行なった他は、実施例1と同様の手順により蛍光体薄膜を作製した。
〔実施例4〕
上述の実施例1において、合成例1のBAM:Eu(II)蛍光体粒子の分散液の代わりに、合成例3で得られたYAG:Ce蛍光体粒子(平均粒径70nm)の分散液を用い、この分散液をディップコーターで塗布する代わりに、スプレーガンを用いて無機材料基板上にスプレー塗布し、焼成を空気雰囲気下で行なった他は、実施例1と同様の手順により蛍光体薄膜を作製した。
〔実施例5〕
合成例1のBAM:Eu(II)蛍光体粒子(平均粒径240nm。以下「小粒径粒子」という場合がある。)の分散液に、合成例1で材料として用いた市販のBAM:Eu(II)蛍光体粒子(化成オプトニクス社製、平均粒径5000nm。以下「大粒径粒子」という場合がある。)を、小粒径粒子に対する大粒径粒子の重量比{(大粒径粒子の重量)/(小粒径粒子の重量)}が25/75となるように混合し、小粒径粒子及び大粒径粒子を共に含有する分散液を作製した(これを「第1の混合分散液」という。)。更に、上述の実施例1において、合成例1のBAM:Eu(II)蛍光体粒子の分散液の代わりにこの第1の混合分散液を用い、この分散液をディップコーターで塗布する代わりに、スプレーガンを用いて無機材料基板上にスプレー塗布し、乾燥後における無機材料基板上の蛍光体付着量を4mg/cm3とした他は、実施例1と同様の手順により蛍光体薄膜を作製した。
〔実施例6〕
上述の実施例5において、小粒径粒子に対する大粒径粒子の重量比{(大粒径粒子の重量)/(小粒径粒子の重量)}を50/50とした他は、実施例5と同様の手順で小粒径粒子及び大粒径粒子を共に含有する分散液を調製した(これを「第2の混合分散液」という。)。更に、上述の実施例1において、合成例1のBAM:Eu(II)蛍光体粒子の分散液の代わりにこの第2の混合分散液を用い、この分散液をディップコーターで塗布する代わりに、スプレーガンを用いて無機材料基板上にスプレー塗布し、乾燥後における無機材料基板上の蛍光体付着量を10mg/cm3とした他は、実施例1と同様の手順により蛍光体薄膜を作製した。
〔実施例7〕
上述の実施例5において、小粒径粒子に対する大粒径粒子の重量比{(大粒径粒子の重量)/(小粒径粒子の重量)}を75/25とした他は、実施例5と同様の手順で小粒径粒子及び大粒径粒子を共に含有する分散液を調製した(これを「第3の混合分散液」という。)。更に、上述の実施例1において、合成例1のBAM:Eu(II)蛍光体粒子の分散液の代わりにこの第3の混合分散液を用い、この分散液をディップコーターで塗布する代わりに、スプレーガンを用いて無機材料基板上にスプレー塗布し、乾燥後における無機材料基板上の蛍光体付着量を5mg/cm3とした他は、実施例1と同様の手順により蛍光体薄膜を作製した。
〔実施例8〕
上述の実施例1において、蛍光体粒子の分散液をディップコーターで塗布する代わりにスプレーガンを用いて無機材料基板上にスプレー塗布し、乾燥後における無機材料基板上の蛍光体付着量を10mg/cm3とした他は、実施例1と同様の手順により蛍光体薄膜を作製した。
〔実施例9〕
上述の実施例6において、蛍光体付着量を7mg/cm3とし、焼成条件を1550℃で30分とした他は、実施例6と同様の手順により蛍光体薄膜を作製した。
〔実施例10〕
上述の実施例7において、蛍光体付着量を7mg/cm3とし、焼成条件を1550℃で30分とした他は、実施例7と同様の手順により蛍光体薄膜を作製した。
〔比較例1〕
上述の実施例1において、焼成を行なわなかった他は、実施例1と同様の手順により蛍光体薄膜を作製した。
〔比較例2〕
上述の比較例1において、合成例1のBAM:Eu(II)蛍光体粒子の分散液の代わりに、合成例2で得られたイットリア:Eu蛍光体粒子(平均粒径200nm)の分散液を用い、この分散液をディップコーターで塗布する代わりに、スプレーガンを用いて無機材料基板上にスプレー塗布し、焼成を空気雰囲気下で行なった他は、比較例1と同様の手順により蛍光体薄膜を作製した。
〔比較例3〕
上述の比較例1において、合成例1のBAM:Eu(II)蛍光体粒子の分散液の代わりに、合成例3で得られたYAG:Ce蛍光体粒子(平均粒径70nm)の分散液を用い、この分散液をディップコーターで塗布する代わりに、スプレーガンを用いて無機材料基板上にスプレー塗布し、焼成を空気雰囲気下で行なった他は、比較例1と同様の手順により蛍光体薄膜を作製した。
〔比較例4〕
上述の比較例1において、合成例1のBAM:Eu(II)蛍光体粒子の分散液の代わりに、合成例1で材料として用いた市販のBAM:Eu(II)蛍光体粒子(化成オプトニクス社製、平均粒径5000nm)を5重量%の濃度となるようにエタノールに分散して得られた分散液の分散液を用い、この分散液をディップコーターで塗布する代わりに、スプレーガンを用いて無機材料基板上にスプレー塗布した他は、比較例1と同様の手順により蛍光体薄膜を作製しようとしたところ、蛍光体粒子は無機材料基板上に付着しなかった。
〔比較例5〕
合成例2で得られたイットリア:Eu蛍光体粒子(平均粒径200nm)と、バインダである市販のエポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製エピコート(登録商標)YX8000)とを、エポキシ樹脂に対する蛍光体粒子の重量比{(蛍光体粒子の重量)/(エポキシ樹脂の重量)}が10/90となるように混合し、蛍光体粒子のエポキシ樹脂分散液を調製した。更に、上述の比較例1において、サファイア製基板の代わりに厚さ1mmの石英製基板を無機材料基板として用い、合成例1のBAM:Eu(II)蛍光体粒子の分散液の代わりにこのエポキシ樹脂分散液を用いた他は、比較例1と同様の手順により蛍光体薄膜を作製したところ、乾燥後における無機材料基板上の蛍光体付着量は0.5mg/cm3であった。
〔比較例6〕
ゾル−ゲル法によりシリカを製造した。具体的には、三菱化学社製シリケートオリゴマー(MKCシリケート(登録商標)MS−51)329gと、メタノール667gと、水70gとを混合してなるゾル−ゲル原料液に、触媒としてアルミニウムのアセチルアセトン錯体を添加してゾル−ゲル反応させることにより調製した。上述の比較例5において、市販のエポキシ樹脂の代わりに、前記ゾルゲル法により得られたシリカをバインダとして用い、シリカに対する蛍光体粒子の重量比{(蛍光体粒子の重量)/(シリカの重量)}が30/70となるように調整した他は、比較例5と同様の手順により蛍光体粒子のシリカ分散液を調製した。更に、上述の比較例1において、イットリア:Eu蛍光体粒子のエポキシ樹脂分散液の代わりにこのシリカ分散液を用い、焼成を空気雰囲気下、毎分5℃で昇温し、1100℃で3時間維持するという条件で行なった他は、比較例1と同様の手順により蛍光体薄膜を作製したところ、乾燥後における無機材料基板上の蛍光体付着量は0.005mg/cm3であった。
〔比較例7〕
上記比較例1において、焼成を空気雰囲気下、毎分5℃で昇温し、500℃で3時間維持するという条件で行なった他は、比較例1と同様の手順により蛍光体薄膜を作製した。
〔比較例8〕
上述の実施例9において、焼成を行わなかった他は、実施例9と同様の手順により蛍光体薄膜を作製した。
〔比較例9〕
上述の実施例10において、焼成を行わなかった他は、実施例10と同様の手順により蛍光体薄膜を作製した。
[IV.評価]
上述の各実施例及び各比較例における、蛍光体薄膜の作製に用いた蛍光体粒子の物性を表1に、蛍光体薄膜の作製条件を表2に、得られた蛍光体薄膜の性質を表3に示す。
実施例1〜8の蛍光体薄膜は、何れも対応する比較例(焼成なし。融着構造なし。)に比べて輝度が大きく向上し、また、概ね剥離や割れのない良好なものとなっている。
また、大粒径の蛍光体粒子と小粒径の蛍光体粒子とを併用している実施例5〜7の蛍光体薄膜は、何れも、蛍光体付着量が大きいにもかかわらず、剥離や割れのない良好な厚膜品となっている。また、かかる厚膜化が可能なので、輝度においても有利である。
また、実施例8より、小粒径の蛍光体粒子のみを用いて蛍光体粒子の付着量を増やす(つまり、厚膜化する)と、膜としての相対輝度は高いが剥離や割れが部分的に生じるということが分かる。従って、かかる場合は、微小面積の蛍光体薄膜を製造する場合には好ましく利用可能だが、大面積の蛍光体薄膜を製造する場合には大粒径の蛍光体粒子を併用することが望ましい。
更に、大粒径の蛍光体粒子(以下「大粒子」と略記する。)及び小粒径の蛍光体粒子(以下「小粒子」と略記する。)を併用している実施例9と実施例10との比較より、同じ蛍光体付着量及び焼成条件であっても、大粒子の割合が小さい方が相対輝度に優れることがわかる。興味深いことに、この傾向は焼成を行なわない場合には逆転する(比較例8及び比較例9がそれぞれ対応している)。つまり、焼成を行なわない場合は大粒子が元々輝度に優れるのでこれの含有率が薄膜の輝度を支配するが、適切な焼成を行なうことにより、小粒子が自己バインダ効果により蛍光体粒子どうしを密接に焼結するので、薄膜の輝度挙動が逆転するものと考えられる。
また、従来汎用の蛍光体粒子(平均粒径5μm)をバインダなしで用いた比較例4の蛍光体薄膜では、基板への密着性や粒子同士の結合性が悪く、塗布工程の段階で容易に蛍光体粒子が剥離してしまったのに対して、小粒径の蛍光体粒子(平均粒径500nm以下)を用いた実施例1〜7の蛍光体薄膜は、良好な成膜性を示した。
また、従来汎用の蛍光体粒子をバインダと併用した比較例5及び6の蛍光体薄膜では、実施例1〜8の蛍光体薄膜に比べて、蛍光体付着量に制限があるので輝度を大きくできず、しかもバインダと蛍光体粒子との混合方法(例えば界面密着性)が最適化されていないと剥離や割れが生じやすい。更に、有機バインダ(エポキシ樹脂)を用いた比較例5では、高温の焼成が不可能であるので、輝度向上の点で大きな制約がある。
また、焼成温度が従来技術並みの500℃である比較例7の蛍光体薄膜では、蛍光体粒子の融着構造が生成しないので、剥離や割れを生じ、輝度も低い。
本発明の蛍光体薄膜は、蛍光灯や代替照明器具、ブラウン管、LED、液晶テレビ、プラズマテレビ等の、発光機能を有する各種装置の分野において、好適に用いられる。
実施例1における焼成前の蛍光体薄膜のSEM写真である。 実施例1における焼成後の蛍光体薄膜のSEM写真である。

Claims (11)

  1. バインダ物質を実質的に含有せず、蛍光体粒子が互いに融着した構造を有する
    ことを特徴とする、蛍光体薄膜。
  2. 無機材料基板上に形成されたものである
    ことを特徴とする、請求項1記載の蛍光体薄膜。
  3. 前記無機材料基板が少なくとも金属酸化物からなる
    ことを特徴とする、請求項2記載の蛍光体薄膜。
  4. 請求項1〜3の何れか一項に記載の蛍光体薄膜を製造する方法であって、
    平均粒径が1nm以上、500nm以下の蛍光体粒子を融着させる
    ことを特徴とする、蛍光体薄膜の製造方法。
  5. 異なる平均粒径を有する2種類以上の蛍光体粒子を混合して用いる
    ことを特徴とする、請求項4記載の蛍光体薄膜の製造方法。
  6. 前記の平均粒径が1nm以上、500nm以下の蛍光体粒子を、蛍光体粒子全量に対して5重量%以上、95重量%以下の割合で含有する
    ことを特徴とする、請求項5記載の蛍光体薄膜の製造方法。
  7. 蛍光体粒子を無機材料基板上に塗布する塗布工程と、
    前記塗布工程において塗布した蛍光体粒子を焼成する焼成工程とを有する
    ことを特徴とする、請求項4〜6の何れか一項に記載の蛍光体薄膜の製造方法。
  8. 前記焼成工程を400℃以上で行なう
    ことを特徴とする、請求項7記載の蛍光体薄膜の製造方法。
  9. 無機材料基板と、該無機材料基板上に形成された蛍光体薄膜とを備え、
    該蛍光体薄膜が、バインダ物質を実質的に含有せず、蛍光体粒子が互いに融着した構造を有する
    ことを特徴とする、蛍光積層体。
  10. 前記無機材料基板が少なくとも金属酸化物からなる
    ことを特徴とする、請求項9記載の蛍光積層体。
  11. 請求項1〜3の何れか一項に記載の蛍光体薄膜を少なくとも備えてなる
    ことを特徴とする、発光装置。

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