JP2016108496A - アルカリ土類金属蛍光体、波長変換部材及び発光装置 - Google Patents

アルカリ土類金属蛍光体、波長変換部材及び発光装置 Download PDF

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真治 柴本
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ディー ウェン
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惠美 宮崎
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Abstract

【課題】湿度劣化が少なく長期に亘って高い発光効率を維持することが可能なアルカリ土類金属蛍光体を提供する。【解決手段】アルカリ土類金属蛍光体(1,1A)は、アルカリ土類金属を含有する蛍光体粒子(2)と、蛍光体粒子の表面を覆い、かつ、ケイ素、チタン、アルミニウム、マグネシウム及びニオブからなる群より選ばれる少なくとも一つの元素の酸化物を含有する被膜(3)とを備える。さらにアルカリ土類金属蛍光体は、被膜の内部における空隙に存在し、かつ、アルカリ土類金属の硫酸塩、炭酸塩、リン酸塩及びフッ化物からなる群より選ばれる少なくとも一つを含有する充填材(4)を備える。そして、被膜の内部における充填材の存在量は、被膜の外面(3a)よりも蛍光体粒子と接触する内面(3b)のほうが多い。【選択図】図1

Description

本発明は、光を吸収して当該光とは異なる波長の光を放出するアルカリ土類金属蛍光体、アルカリ土類金属蛍光体を備える波長変換部材、及び波長変換部材を備える発光装置に関する。
従来、発光ダイオードチップ(LEDチップ)を備える発光ダイオードランプ(LEDランプ)は、信号灯や携帯電話機、各種の電飾、車載用表示器、各種の表示装置など、多くの分野で利用されている。また、LEDチップから放射された光により励起して長波長の光を放射する蛍光体とLEDチップとを組み合わせることにより、LEDチップの発光色とは異なる色合いの発光を実現する発光装置の研究開発が行われている。
この種の発光装置としては、例えば、LEDチップと蛍光体とを組み合わせて白色の発光を実現する白色発光装置の商品化がなされている。白色発光装置としては、例えば、蛍光体粒子を媒体中に分散させてなる波長変換部材と、半導体発光素子と組み合わせた発光装置が提案されている。ただ、蛍光体粒子がアルカリ土類金属元素を有するシリケート蛍光体や硫化物系蛍光体の場合、空気中の水蒸気や水分によって表面が分解して劣化し、発光強度の低下や色調の変化を起こしやすいという問題があった。そのため、蛍光体粒子の表面に耐湿性の被膜を設け、長期耐久性を向上させる試みがなされている(例えば、特許文献1及び2参照)。
特許文献1では、アルカリ土類金属の珪酸塩を含有する蛍光体と表面処理層とを有する表面処理蛍光体を製造する方法が開示されている。具体的には、硫酸塩、リン酸塩、炭酸塩及びフッ化物からなる群より選択される少なくとも一種の水溶性化合物を含有する表面処理液と、蛍光体とを接触させることにより、表面処理層を形成する工程を有する表面処理蛍光体の製造方法が開示されている。また、特許文献2では、水分含有量が0.5%未満である有機溶剤に硫化物系蛍光体粒子粉末を分散させた懸濁液中に、金属アルコキシド溶液を添加・攪拌後、100〜400℃にて減圧乾燥することにより得られる耐湿性蛍光体粒子粉末が開示されている。
特開2013−40236号公報 特開2007−91874号公報
特許文献1では、蛍光体表面からアルカリ土類金属が水へ溶出し、水溶性化合物と反応して被膜が形成される。そのため、溶出から膜形成の過程で膜の緻密性が損なわれるため、防湿性が不十分という問題があった。また、防湿性を向上させる方策として表面処理層の厚膜化が考えられるが、蛍光体のアルカリ土類金属を膜原料に使用する関係上、厚膜化による過度の表面処理は蛍光体母体に影響を与え、蛍光体の発光効率が低下する虞があった。
また、特許文献2のようなゾルゲル法は、緻密な被膜を得るには加熱(例えば700℃以上)が必要となる。しかし、アルカリ土類金属蛍光体を400℃以上で加熱すると、蛍光体が熱劣化するという問題があった。
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものである。そして、本発明の目的は、湿度劣化が少なく長期に亘って高い発光効率を維持することが可能なアルカリ土類金属蛍光体を提供することにある。さらに本発明の目的は、当該アルカリ土類金属蛍光体を備える波長変換部材、及び波長変換部材を備える発光装置を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明の態様に係るアルカリ土類金属蛍光体は、アルカリ土類金属を含有する蛍光体粒子を備える。また、アルカリ土類金属蛍光体は、蛍光体粒子の表面を覆い、かつ、ケイ素、チタン、アルミニウム、マグネシウム及びニオブからなる群より選ばれる少なくとも一つの元素の酸化物を含有する被膜を備える。さらにアルカリ土類金属蛍光体は、被膜の内部における空隙に存在し、かつ、アルカリ土類金属の硫酸塩、炭酸塩、リン酸塩及びフッ化物からなる群より選ばれる少なくとも一つを含有する充填材を備える。そして、被膜の内部における充填材の存在量は、被膜の外面よりも蛍光体粒子と接触する内面のほうが多い。
本発明の態様に係るアルカリ土類金属蛍光体は、充填材により空隙が埋められた被膜を備えている。そのため、初期効率が高く、湿度劣化が少なく長期に亘って高い発光効率を維持することが可能となる。
本発明の実施形態に係るアルカリ土類金属蛍光体及び波長変換部材の一例を示す概略図である。 本発明の実施形態に係るアルカリ土類金属蛍光体及び波長変換部材の他の例を示す概略図である。 本発明の実施形態に係る発光装置を説明するための概略図である。 本発明の実施形態に係る半導体発光装置の一例を模式的に示す斜視図である。 (a)は図4におけるA−A線断面図であり、(b)は図4におけるB−B線断面図である。 半導体発光装置における封止部材の形成方法を説明するための図である。
以下、本実施形態に係るアルカリ土類金属蛍光体、波長変換部材及び発光装置について詳細に説明する。なお、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
[アルカリ土類金属蛍光体]
本実施形態に係るアルカリ土類金属蛍光体は、入射した励起光を吸収して励起光よりも長波長の光を放射する機能を有する。そして、アルカリ土類金属蛍光体1は、図1に示すように、アルカリ土類金属を含有する蛍光体粒子2を備えている。さらにアルカリ土類金属蛍光体1は、蛍光体粒子2の表面を覆い、かつ、ケイ素、チタン、アルミニウム、マグネシウム及びニオブからなる群より選ばれる少なくとも一つの元素の酸化物を含有する被膜3を備えている。
アルカリ土類金属を含有する蛍光体は、空気中の水蒸気や水分によって表面が分解して劣化しやすいため、大気中で長期間使用した場合に、発光強度の低下や色調の変化が起こりやすい。しかし、ケイ素、チタン、アルミニウム、マグネシウム及びニオブからなる群より選ばれる少なくとも一つの元素の酸化物は、水に難溶の化合物である。そのため、蛍光体粒子2の表面をこのような酸化物を含む被膜3で覆うことにより、蛍光体と水分との接触を防ぎ、蛍光体の劣化を抑制することが可能となる。
ここで、被膜3は、ケイ素、チタン、アルミニウム、マグネシウム及びニオブからなる群より選ばれる少なくとも一つの元素の酸化物微粒子が、蛍光体粒子2の周囲に凝集することにより形成されている。そのため、被膜3は、酸化物微粒子が集合してなる多孔質体であることから、水分の透過を完全に防ぐことは難しい。したがって、本実施形態のアルカリ土類金属蛍光体1は、被膜3の内部における空隙に存在し、かつ、アルカリ土類金属の硫酸塩、炭酸塩、リン酸塩及びフッ化物からなる群より選ばれる少なくとも一つを含有する充填材4を備える。被膜3を構成する酸化物微粒子の間に存在する空隙に充填材4が設けられ、当該空隙が充填材4で満たされていることにより、蛍光体粒子2と水分との接触がより抑制される。その結果、蛍光体粒子2の表面が分解して劣化し、発光強度の低下や色調の変化が生じることを防ぐことが可能となる。
ここで、後述するように、充填材4は、蛍光体粒子2の表面に被膜3を形成した後、硫酸塩、炭酸塩、リン酸塩及びフッ化物からなる群より選ばれる少なくとも一つの化合物を含有した溶液を、被膜3を設けた蛍光体粒子2に接触させることにより形成される。つまり、まず、当該化合物が溶解した溶液中の硫酸イオン、炭酸イオン、リン酸イオン、フッ素イオンが蛍光体粒子2中のアルカリ土類金属と反応する。そして、この反応により得られたアルカリ土類金属の硫酸塩、炭酸塩、リン酸塩、フッ化物が被膜3の空隙に充填されることで、充填材4が形成される。そのため、充填材4は、最初に蛍光体粒子2と被膜3との界面から形成され、その後、被膜の外面3aに向かって徐々に充填される。したがって、アルカリ土類金属蛍光体1において、被膜3の内部における充填材4の存在量は、被膜3の外面3aよりも蛍光体粒子2と接触する内面3bのほうが多い構成となる。
蛍光体粒子2及び充填材4に含有されるアルカリ土類金属としては、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)及びバリウム(Ba)からなる群より選ばれる少なくとも一つを用いることができる。
蛍光体粒子2の材料はアルカリ土類金属を含有する限り特に限定されるものではないが、蛍光体粒子2は、アルカリ土類金属の珪酸塩を含有することが好ましい。アルカリ土類金属の珪酸塩を含有する蛍光体としては、例えば、母体の結晶構造が、MSiO又はMSiOの結晶構造と実質的に同じ構造を有する蛍光体が挙げられる。なお、MはMg、Ca、Sr及びBaからなる群より選ばれる少なくとも一種を表している。「MSiO又はMSiOの結晶構造と実質的に同じ構造」とは、X線回折法で測定した場合に、MSiO又はMSiOと同様なX線回折パターンを有することを意味する。
アルカリ土類金属の珪酸塩を含有する蛍光体は、付活剤としてFe、Mn、Cr、Bi、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm及びYbからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素を含有することが好ましい。また、当該蛍光体は、アルカリ土類金属以外の金属元素、例えば、Zn、Ga、Al、Y、Gd及びTbを含有してもよい。さらに当該蛍光体は、少量のハロゲン元素(例えば、F、Cl、Br)、硫黄又はリンを含有してもよい。アルカリ土類金属以外の金属元素、ハロゲン元素、硫黄及びリンは、一つの元素を単独で用いてもよく、二つ以上の元素を併用してもよい。
アルカリ土類金属の珪酸塩を含有する蛍光体の例としては、例えば、一般式(1)のような組成を有する橙色蛍光体や、一般式(2)のような組成を有する橙色蛍光体等が挙げられる。
(Sr1−xSiO:Eu2+ (1)
式(1)中、MはBa、Ca、Mg及びZnからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属である。さらに0≦x<1.0であり、2.6≦y≦3.3である。
(Sr1−xSiO:Eu2+D (2)
式(2)中、MはBa、Ca、Mg及びZnからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属である。DはF、Cl及びBrからなる群より選ばれるハロゲンアニオンである。さらに0≦x<1.0であり、2.6≦y≦3.3である。
また、アルカリ土類金属の珪酸塩を含有する蛍光体の他の例として、一般式(3)のような組成を有する緑色又は黄色蛍光体や、一般式(4)のような組成を有する緑色又は黄色蛍光体等が挙げられる。
(Sr1−xSiO:Eu2+ (3)
式(3)中、MはBa、Ca、Mg及びZnからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属であり、0≦x<1.0であり、1.8≦y≦2.2である。
(Sr1−xSiO:Eu2+D (4)
式(4)中、MはBa、Ca、Mg及びZnからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属である。DはF、Cl及びBrからなる群より選ばれるハロゲンアニオンである。さらに0≦x<1.0であり、1.8≦y≦2.2である。
上記蛍光体の具体例としては、例えば、SrSiO:Eu2+、(Sr0.9Mg0.025Ba0.075SiO:Eu2+、(Sr0.9Mg0.05Ba0.052.7SiO:Eu2+等の橙色蛍光体が挙げられる。また、(Sr0.9Mg0.025Ba0.075SiO:Eu2+、(Sr0.9Ba0.1SiO:Eu2+、Sr0.97SiO:Eu2+F等の橙色蛍光体が挙げられる。(Sr0.9Mg0.12.9SiO:Eu2+F、(Sr0.9Ca0.13.0SiO:Eu2+Fの等の橙色蛍光体も挙げられる。
また、(Sr0.4Ba0.6SiO:Eu2+、(Sr0.3Ba0.7SiO:Eu2+、(Sr0.2Ba0.8SiO:Eu2+、(Sr0.57Ba0.4Mg0.03SiO:Eu2+F等の緑色蛍光体が挙げられる。(Sr0.6Ba0.4SiO:Eu2+Cl、(Ba,Sr,Ca)(Mg,Zn)Si:Eu2+等の緑色蛍光体も挙げられる。さらに、(Sr0.7Ba0.3SiO:Eu2+F、(Sr0.9Ba0.1SiO:Eu2+等の黄色蛍光体が挙げられる。0.72[(Sr1.025Ba0.925Mg0.05)Si1.03Eu0.050.12]・0.28[SrSi1.02Eu0.60.13]等の黄色蛍光体も挙げられる。加えて、BaMgSi:Eu2+、BaZnSi:Eu2+等の青色蛍光体が挙げられる。
蛍光体粒子2の平均粒子径(メディアン径、D50)は特に限定されない。ただ、蛍光体粒子2の平均粒子径が大きい方が蛍光体粒子中の欠陥密度が小さくなり、発光時のエネルギー損失が少なくなるため、発光効率が高くなる。このため、発光効率を向上させる観点から、蛍光体粒子2の平均粒子径は1μm以上であることが好ましく、5μm以上であれば更に好ましい。特に蛍光体粒子2の平均粒子径は8μm〜50μmの範囲であることが好ましい。なお、蛍光体粒子2の平均粒子径はレーザー回折式粒度分布測定装置を用いて、レーザー回折・散乱法により求めることができる。
被膜3は、ケイ素、チタン、アルミニウム、マグネシウム及びニオブからなる群より選ばれる少なくとも一つの元素の酸化物を含有する必要がある。つまり、被膜3は、酸化ケイ素(SiO)、酸化チタン(TiO)、酸化アルミニウム(Al)、酸化マグネシウム(MgO)、及び酸化ニオブ(Nb)からなる群より選ばれる少なくとも一つを含有する。
ここで、被膜3は、ケイ素、チタン、アルミニウム、マグネシウム及びニオブからなる群より選ばれる少なくとも一つの元素の酸化物を主成分として含有することが好ましい。つまり、被膜3において、上記酸化物の合計含有量は50mol%以上であることが好ましく、80mol%以上がより好ましく、95mol%以上が特に好ましい。上記酸化物は水に難溶な化合物であることから、被膜3中の含有量が多い方が蛍光体粒子2の水分による劣化を抑制できるため、好ましい。
本実施形態のアルカリ土類金属蛍光体1では、図1に示すように、被膜3は、上述の酸化物の微粒子が凝集することにより形成され、さらに蛍光体粒子2の表面を略均一な厚みで覆っていることが好ましい。被膜3の厚みtとしては、10nm以上1000nm以下が好ましく、10nm以上500nm以下がさらに好ましい。膜厚が10nm以上の場合には、蛍光体粒子2の表面に凹凸が存在しても、ほぼ均一に被覆することが可能となる。また、膜厚が1000nm以下の場合には被膜3に亀裂が入り難く剥離が抑制されるため、蛍光体粒子2と水分との接触を抑えることが可能となる。
被膜3の厚みtは、20nm以上500nm以下が更に好ましく、100nm以上250nm以下が特に好ましい。この範囲とすることにより略均一な被膜となるため、蛍光体粒子2と水分との接触を抑制し、さらに後述するように光の入射効率及び取り出し効率を向上させることが可能となる。なお、被膜3の厚みは、例えば、X線光電子分光法(XPS)により、ケイ素、チタン、アルミニウム、マグネシウム又はニオブの深さ分析(デプスプロファイル測定)を行うことにより測定することができる。
被膜3は、蛍光体粒子2の表面の全体を覆っていることが最も好ましい。ただ、蛍光体粒子2と水分との接触を抑制する観点から、被膜3は蛍光体粒子2の表面の少なくとも60%以上を被覆していることが好ましい。また、被膜3は、蛍光体粒子2の表面の80%以上を被覆していることがより好ましく、90%以上を被覆していることが特に好ましい。なお、蛍光体粒子2の表面における被膜3の被覆率は、例えば、X線光電子分光法(XPS)により、被膜3に含有されるケイ素、チタン、アルミニウム、マグネシウム又はニオブをワイドスキャン分析することにより測定することができる。
被膜3に存在する隙間に設ける充填材4としては、空気中の水分や蛍光体の成分と反応して容易に分解や溶解するものでなければよい。そのため、充填材4は、アルカリ土類金属の硫酸塩、炭酸塩、リン酸塩及びフッ化物からなる群より選ばれる少なくとも一つを含有することが好ましい。具体的には、アルカリ土類金属の硫酸塩としては、例えば硫酸バリウム(BaSO)や硫酸ストロンチウム(SrSO)などが挙げられる。アルカリ土類金属の炭酸塩としては、例えば炭酸バリウム(BaCO)や炭酸ストロンチウム(SrCO)などが挙げられる。アルカリ土類金属のリン酸塩としては、例えばリン酸水素バリウム(BaHPO)やリン酸水素ストロンチウム(SrHPO)などが挙げられる。アルカリ土類金属のフッ化物としては、例えばフッ化バリウム(BaHPO)やフッ化ストロンチウム(SrF)などが挙げられる。
ここで、充填材4は、アルカリ土類金属の硫酸塩、炭酸塩、リン酸塩及びフッ化物からなる群より選ばれる少なくとも一つを主成分として含有することが好ましい。つまり、充填材4において、上記硫酸塩、炭酸塩、リン酸塩及びフッ化物の合計含有量は50mol%以上であることが好ましく、80mol%以上がより好ましく、95mol%以上が特に好ましい。アルカリ土類金属の硫酸塩、炭酸塩、リン酸塩及びフッ化物は水に難溶な化合物であることから、充填材4中の含有量が多い方が蛍光体粒子2の水分による劣化を抑制できる。
本実施形態において、アルカリ土類金属蛍光体0.1gを20℃の純水200gに20分間浸漬して得られた水溶液の導電率は、150μS/cm以下であることが好ましい。上述のように、アルカリ土類金属蛍光体1は、被膜3及び充填材4からなる複合膜により覆われており、蛍光体粒子2と水分との接触が抑制されている。しかし、蛍光体粒子2の表面が複合膜により覆われていない箇所が多く存在すると、アルカリ土類金属蛍光体を純水に浸漬させた場合、蛍光体粒子2からアルカリ土類金属が溶出し、得られる水溶液の導電率が上昇してしまう。そして、導電率が上昇するようなアルカリ土類金属蛍光体は、蛍光体粒子2の表面が外部に露出し、水分による劣化が生じ易くなっている。そのため、上記水溶液の導電率が150μS/cm以下となるように、蛍光体粒子2が被膜3及び充填材4からなる複合膜で覆われていることが好ましい。なお、当該導電率が150μS/cmを超えていても、本実施形態の目的を達成することができる。
上述の導電率測定による蛍光体の簡易評価について、より詳細に説明する。蛍光体の簡易評価とは、所定量の蛍光体粉末を秤量して所定量の純水(イオン交換水)中に分散させ、一定時間経過後の分散液の導電率を測定することにより、純水中に溶け出した蛍光体由来のアルカリ土類金属イオンの量を評価するものである。
そして、評価方法は、次のように行う。まず、密封可能な蓋付きビーカー中にイオン交換水200g中を入れ、蓋を閉め、20℃に保持しながらマグネチックスターラーにて攪拌する。次いで、アルカリ土類金属蛍光体0.1gを加え、さらに20分間攪拌した後に、導電率計を用いて分散液の導電率を測定することにより、蛍光体から溶け出したイオンによる導電率評価を行う。
密封可能な蓋付きビーカーを使用する理由は、大気中の二酸化炭素による導電率への影響を極力排除するためである。つまり、密閉しない場合、大気中の二酸化炭素が純水中に溶け込むことで炭酸イオン(CO 2−)となる。そして、評価中に蛍光体から溶け出したアルカリ土類金属イオンと炭酸イオンとが化学反応することにより、水に不要な炭酸塩を形成することから、導電率の測定結果が低めに測定されてしまう可能性がある。そのため、導電率測定は、蓋付きビーカーなどの密閉空間で測定することが好ましい。
上記導電率測定に要する純水及び蛍光体の量、並びに測定時間は、必ずしも上記の値である必要は無い。ただ、ハンドリング性や経済性、分析感度、分析再現性等を考慮し、上記の値とすることが好ましい。つまり、分散液中の蛍光体の濃度が低いと導電率が低く出るため、導電率計の精度や純水の品質によっては、測定誤差が大きくなる恐れがある。逆に、蛍光体の濃度が高いと、溶解度の関係で飽和状態になり、一定量以上のイオンが蛍光体から溶出し難くなり、結果として導電率の測定結果に有意差が見られなくなる恐れがある。また、導電率測定のための攪拌時間としては、20分程度が望ましい。攪拌時間が10分以下の場合には蛍光体からのイオンの溶解が不十分となり、導電率の数値が安定しない可能性がある。
蛍光体粒子2の水分による劣化を防止する観点から、図1に示すように、充填材4は被膜3の内部における空隙の全体に充填されていることが好ましい。ただ、蛍光体粒子2の劣化が抑制できれば、充填材4は被膜3の空隙全体に充填されていなくてもよい。つまり、図2のアルカリ土類金属蛍光体1Aのように、被膜3における、蛍光体粒子2と接触する内面3b(蛍光体粒子と被膜との界面)の近傍に充填材4が存在していればよく、内面3bの反対側である外面3aに至るまで充填材4が存在している必要はない。そのため、充填材4は、被膜3の内面3bの近傍にのみ存在していてもよい。
上述のように、アルカリ土類金属蛍光体1において、被膜3の内部における充填材4の存在量は、被膜3の外面3aよりも蛍光体粒子2と接触する内面3bのほうが多い構成となっている。しかし、被膜3の内部における充填材4の存在量は、蛍光体粒子2と接触する内面3bから外面3aにかけて徐々に低下する構成となっていることが好ましい。充填材4が、被膜3の内面3bから外面3aにかけて連続的に減少することにより、被膜3の屈折率も内面3bから外面3aにかけて徐々に低くなる。蛍光体粒子2にこのような屈折率傾斜膜が形成されることで、後述するように、屈折率が一定の単層膜に比べて蛍光体の光取り出し性能をより向上させることが可能となる。なお、被膜3の内部における充填材4の分布は、アルカリ土類金属蛍光体の断面を、X線光電子分光法(XPS)でワイドスキャン分析することにより測定することができる。また、被膜3の内部における充填材4の分布は、アルカリ土類金属蛍光体の断面を、SEM−EDX(走査型電子顕微鏡及びそれに付属するエネルギー分散型X線分析装置)で分析することでも測定することができる。
ここで、アルカリ土類金属蛍光体1が被膜3及び充填材4からなる複合膜を備えていると、アルカリ土類金属蛍光体1を透光性媒体5中に分散した場合、被膜3と透光性媒体5との界面(外面3a)における光の反射を抑制することができる。加えて、被膜3と蛍光体粒子2との界面(内面3b)における光の反射も抑制することができる。すなわち、アルカリ土類金属を含有する蛍光体粒子2の屈折率は例えば1.8であり、透光性媒体5の屈折率は例えば1.4である。そして、被膜3及び充填材4からなる複合膜の屈折率は、例えば1.4〜1.8である。このように、複合膜の屈折率を蛍光体粒子2の屈折率と透光性媒体5の屈折率の中間値とすることよって、複合膜と蛍光体粒子2及び透光性媒体5との界面における光の反射を抑制することができる。その結果、蛍光体粒子2への光の入射効率及び蛍光体粒子2から放射される光の取り出し効率を向上させることが可能となる。
また、本実施形態では、被膜3の内部における充填材4の存在量は、被膜3の外面3aよりも蛍光体粒子2と接触する内面3bのほうが多い。そのため、充填材4の屈折率が蛍光体粒子2と近い場合、被膜3の外面3aから内面3bにかけて、複合膜の屈折率が蛍光体粒子2の屈折率に徐々に近づくことになる。そのため、複合膜と蛍光体粒子2及び透光性媒体5との界面における光の反射をより抑制することができる。その結果、蛍光体粒子2への光の入射効率及び蛍光体粒子2から放射される光の取り出し効率をさらに向上させることが可能となる。
本実施形態のアルカリ土類金属蛍光体1,1Aは、アルカリ土類金属を含有する蛍光体粒子2を備える。さらにアルカリ土類金属蛍光体1,1Aは、蛍光体粒子2の表面を覆い、かつ、ケイ素、チタン、アルミニウム、マグネシウム及びニオブからなる群より選ばれる少なくとも一つの元素の酸化物を含有する被膜3を備える。また、アルカリ土類金属蛍光体1,1Aは、被膜3の内部における空隙に存在し、かつ、アルカリ土類金属の硫酸塩、炭酸塩、リン酸塩及びフッ化物からなる群より選ばれる少なくとも一つを含有する充填材4を備える。そして、被膜3の内部における充填材4の存在量は、被膜3の外面3aよりも蛍光体粒子2と接触する内面3bのほうが多い。
このように、本実施形態では被膜3の内部の空隙が充填材4で埋められているため、例えば酸化ケイ素及びアルカリ土類金属の硫酸塩のいずれか一方からなる被膜に比べて緻密なコーティング膜が得られる。その結果、蛍光体粒子2の耐湿性をさらに高め、長期信頼性を向上させることが可能となる。また、被膜3及び充填材4からなる複合膜の屈折率が被膜の外面3aから内面3bにかけて傾斜していることにより、従来のコーティング膜に比べて光取り出し性能が向上し、蛍光体の初期効率をより高めることが可能となる。
[アルカリ土類金属蛍光体の製造方法]
次に、本実施形態に係るアルカリ土類金属蛍光体の製造方法について説明する。本実施形態の製造方法は、まず、蛍光体粒子2の表面に被膜3を形成する。被膜3の形成方法は特に限定されないが、例えばゾルゲル法や、酸化物のコロイド溶液を使用する方法が挙げられる。
具体的には、蛍光体粒子2を分散媒に分散させた後、金属アルコキシド溶液を添加して混合液を調製し、さらに当該混合液を乾燥することにより、被膜3を形成することができる。蛍光体粒子2を分散させる分散媒としては、蛍光体粒子を劣化させないものであれば特に限定されない。このような分散媒としては、例えば、メタノール、エタノール及び2−プロパノール等のアルコール類や、エチレングリコール及びグリセリン等の多価アルコールを使用することができる。
金属アルコキシド溶液は、ケイ素、チタン、アルミニウム、マグネシウム、又はニオブのアルコキシドを含有する溶液を使用することができる。具体的には、メチルシリケート、エチルシリケート、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、アルミニウムトリイソプロポキシド、チタニウムテトライソプロポキシドなどを使用することができる。
蛍光体粒子2と金属アルコキシド溶液の混合液を乾燥する条件は分散媒を除去し、被膜3を構成する酸化物が得られる条件であれば特に限定されないが、例えば100〜400℃で1〜24時間乾燥する条件が好ましい。また、当該混合液を、スプレードライヤー等を用いて噴霧乾燥することによっても被膜3を得ることができる。
また、蛍光体粒子2を上述の分散媒に分散させた後、酸化物のコロイド溶液を添加して混合液を調製し、さらに当該混合液を乾燥することによっても、被膜3を形成することができる。酸化物のコロイド溶液は、ケイ素、チタン、アルミニウム、マグネシウム、ニオブのナノ粒子が分散した溶液、つまりシリカゾル、チタニアゾル、アルミナゾル、マグネシアゾル、酸化ニオブゾルを使用することができる。なお、混合液の乾燥条件も上述と同様に100〜400℃で1〜24時間乾燥してもよく、またスプレードライヤー等を用いて噴霧乾燥してもよい。
次に、上述のようにして得られた蛍光体粒子表面の被膜3の空隙に、充填材4を充填する。具体的には、被膜3を備えた蛍光体粒子2の表面を化学処理することにより充填することができる。つまり、蛍光体粒子2の表面を硫酸系化合物で処理することにより、アルカリ土類金属の硫酸塩の充填材を得ることができる。また、蛍光体粒子2の表面を炭酸系化合物で処理することにより、アルカリ土類金属の炭酸塩の充填材を得ることができる。同様に、蛍光体粒子2の表面をリン酸系化合物で処理することにより、アルカリ土類金属のリン酸塩の充填材を得ることができる。そして、蛍光体粒子2の表面をフッ素化合物で処理することにより、アルカリ土類金属のフッ化物の充填材を得ることができる。
具体的に説明すると、蛍光体粒子2の母体が(Ba,Sr)SiOである場合、蛍光体粒子の表面には、アルカリ土類金属であるストロンチウム及びバリウムの水酸化物(Sr(OH),Ba(OH))が存在する。そして、このストロンチウム及びバリウムの水酸化物を、例えば硫酸系化合物である硫酸アンモニウム((NHSO)で表面処理することにより、以下の反応式(5)及び(6)に示す反応が進行する。その結果、蛍光体粒子2の表面に硫酸バリウム、硫酸ストロンチウムの充填材4を形成することが可能となる。
Sr(OH)+(NHSO→SrSO+2NH+2HO (5)
Ba(OH)+(NHSO→BaSO+2NH+2HO (6)
蛍光体粒子2の表面を化学処理して充填材4を形成する方法としては特に限定されないが、例えば次のような方法が挙げられる。まず、被膜3を備えた蛍光体粒子2を分散媒に分散させ、蛍光体粒子の分散液を調製する。次に、当該分散液に硫酸系化合物、炭酸系化合物、リン酸系化合物及びフッ素化合物からなる群より選ばれる少なくとも一つを添加し、攪拌する。この際、蛍光体粒子2と硫酸系化合物、炭酸系化合物、リン酸系化合物及びフッ素化合物との反応は室温で行ってもよく、反応性を高めるために加熱してもよい。そして、蛍光体粒子2の表面と硫酸系化合物等が反応し、充填材4が形成された後、分散液を濾過等して単離し乾燥することにより、本実施形態のアルカリ土類金属蛍光体1を得ることができる。
硫酸系化合物としては、アルカリ土類金属の硫酸塩を形成することができれば特に限定されない。硫酸系化合物としては、例えば硫酸アンモニウム、硫酸水素アンモニウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸リチウム、硫酸アルミニウム、硫酸ナトリウムアルミニウム、硫酸ナトリウムアンモニウム等を使用することができる。また、炭酸系化合物としては、アルカリ土類金属の炭酸塩を形成することができれば特に限定されない。炭酸系化合物としては、例えば炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウムを使用することができる。リン酸系化合物としては、アルカリ土類金属のリン酸塩を形成することができれば特に限定されない。リン酸系化合物としては、例えばリン酸一水素アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸水素カリウム、リン酸ナトリウムアンモニウム、リン酸カリウムアンモニウムを使用することができる。フッ素化合物としては、アルカリ土類金属のフッ化物を形成することができれば特に限定されない。フッ素化合物としては、フッ化アンモニウム(NHF)、二フッ化アンモニウム(NHHF)、フッ化ナトリウム(NaF)、フッ化カリウム(KF)を使用することができる。なお、硫酸系化合物、炭酸系化合物、リン酸系化合物及びフッ素化合物は、一つの化合物を単独で用いてもよく、二つ以上の化合物を併用してもよい。
蛍光体粒子2を分散させる分散媒としては、硫酸系化合物、炭酸系化合物、リン酸系化合物及びフッ素化合物が溶解し、蛍光体粒子を劣化させないものであれば特に限定されない。このような分散媒としては、例えば、メタノール、エタノール及び2−プロパノール等のアルコール類や、エチレングリコール及びグリセリン等の多価アルコールを使用することができる。
また、充填材4は、被膜3を備えた蛍光体粒子2と硫酸系化合物、炭酸系化合物、リン酸系化合物及びフッ素化合物からなる群より選ばれる少なくとも一つとを乾式で混合し、加熱することによっても得ることができる。つまり、硫酸系化合物、炭酸系化合物、リン酸系化合物及びフッ素化合物と、蛍光体粒子の表面に存在するアルカリ土類金属の水酸化物とを直接反応させることによっても、充填材4を得ることができる。特に、硫酸系化合物、炭酸系化合物、リン酸系化合物及びフッ素化合物に昇華性がある場合には、分散媒を使用しなくても反応後に加熱することで除去することができるため、充填材4をより簡易に得ることができる。
ここで被膜3は、ケイ素、チタン、アルミニウム、マグネシウム及びニオブから選ばれる少なくとも一つの酸化物と、アルカリ土類金属の硫酸塩、炭酸塩、リン酸塩及びフッ化物から選ばれる少なくとも一つの化合物とを含有する複合膜である。このような複合膜を形成する方法としては、当該酸化物と化合物とを予め混合した後に、蛍光体粒子の表面に付着させる方法がある。しかし、当該酸化物の粒子間に存在する空隙に上記化合物を充填するには、粒子径が10nm以下の微細なナノ粒子を空隙に選択的に配置することが必要である。そして、このようなナノ粒子を選択的に配置することは、技術的に困難である。
これに対し本実施形態では、充填材4は、被膜3を蛍光体粒子2の表面に形成した後、硫酸塩、炭酸塩、リン酸塩及びフッ化物からなる群より選ばれる少なくとも一つの化合物の溶液を蛍光体粒子2に接触させることにより充填される。そのため、被膜3及び充填材4からなる緻密な複合膜を簡易な方法で得ることができる。
[波長変換部材]
次に、本実施形態の波長変換部材の一例について説明する。なお、図1及び図2に示す波長変換部材の形状は一例であり、特に制限されるものではない。
本実施形態に係る波長変換部材10,10Aは、図1及び図2に示すように、アルカリ土類金属蛍光体1,1Aと、アルカリ土類金属蛍光体1,1Aを分散させる透光性媒体5とを備えることが好ましい。このようにアルカリ土類金属蛍光体1,1Aを透光性媒体5の内部に分散させることにより、アルカリ土類金属蛍光体1,1Aの化学的安定性及び耐熱性を向上させることが可能となる。また、透光性媒体5を用いることにより、発光装置に用いる際の成形性及びハンドリング性も向上させることが可能となる。
透光性媒体は、シリコーン樹脂及びガラスの少なくともいずれか一方を含有することが好ましい。これらの材質は、耐熱性及び耐光性、特に青色〜紫外線等の短波長の光に対する耐久性に優れる。そのため、アルカリ土類金属蛍光体1,1Aに入射される励起光が一般的な青色光から紫外光にわたる波長域の光であっても、透光性媒体5が劣化することが抑制される。
シリコーン樹脂としては、オルガノシロキサンの加水分解縮合物や、オルガノシロキサンの縮合物などが、公知の重合手法により架橋することで生成する複合樹脂が挙げられる。なお、当該重合手法としては、ヒドロシリル化などの付加重合やラジカル重合などを用いることができる。
また、透光性媒体5としては、例えばアクリル樹脂や、有機成分と無機成分とがナノメートルレベル又は分子レベルで混合及び結合されることで得られる有機・無機ハイブリッド材料などが採用されてもよい。
波長変換部材10,10A中のアルカリ土類金属蛍光体1,1Aの含有量は、アルカリ土類金属蛍光体1,1A及び透光性媒体5の種類、波長変換部材10,10Aの寸法、波長変換部材10,10Aに要求される波長変換能等を考慮して適宜決定される。ただ、波長変換部材10,10A中のアルカリ土類金属蛍光体1,1Aの含有量は、例えば5質量%〜30質量%の範囲であることが好ましい。
この波長変換部材10,10Aに外部から励起光が照射されると、アルカリ土類金属蛍光体1,1Aが励起光を吸収して励起光よりも長波長の蛍光を発する。これにより、波長変換部材10,10Aを光が透過する際に、この光の波長がアルカリ土類金属蛍光体1,1Aによって変換される。そして、波長変換部材10,10Aでは、アルカリ土類金属蛍光体への励起光の入射効率及びアルカリ土類金属蛍光体からの光の取り出し効率(発光効率)を向上させることが可能となる。また、アルカリ土類金属蛍光体1,1Aへの入射効率及びアルカリ土類金属蛍光体1,1Aからの取り出し効率が向上する結果、波長変換部材10,10Aの発光効率も向上することが可能となる。
[発光装置]
次に、本実施形態に係る発光装置を説明する。本実施形態の発光装置は、上記波長変換部材を備えることを特徴とする。上述のように、本実施形態の波長変換部材は、高演色性の蛍光を放出する。このため、本実施形態の発光装置では、上記波長変換部材と当該波長変換部材を励起する励起源とを組み合わせることによって、色調制御された蛍光を出力することが可能となる。
なお、本実施形態の発光装置は、発光する機能を備えた電子装置を広く包含するものであり、何らかの光を発する電子装置であれば特に限定されるものではない。つまり、本実施形態の発光装置は、少なくとも本実施形態の波長変換部材を利用しており、さらに当該波長変換部材が放つ蛍光を少なくとも出力光として利用する発光装置である。
より詳細に説明すると、本実施形態の発光装置は、波長変換部材10,10Aと波長変換部材10,10Aのアルカリ土類金属蛍光体1,1Aを励起する励起源とを組み合わせている。そして、波長変換部材10,10A中のアルカリ土類金属蛍光体1,1Aは、励起源が放つエネルギーを吸収し、吸収したエネルギーを色調制御された蛍光に変換するものである。なお、励起源は、アルカリ土類金属蛍光体1,1Aの励起特性に合わせて、放電装置、電子銃、固体発光素子などから適宜選択すればよい。
従来より、波長変換部材を利用する発光装置は数多くあり、例えば蛍光灯や電子管、プラズマディスプレイパネル(PDP)、白色LED、さらには波長変換部材を利用する検出装置などがこれに該当する。広義には、波長変換部材を利用する照明光源及び発光装置並びに表示装置なども発光装置であり、レーザーダイオードを備えるプロジェクターやLEDバックライトを備える液晶ディスプレイなども発光装置とみなされる。ここで本実施形態の発光装置は、波長変換部材中の蛍光体が放つ蛍光の種別によって分類できるため、この分類について説明する。
電子装置に利用される蛍光現象は、学術的に幾つかに区分されており、フォトルミネッセンス、カソードルミネッセンス、エレクトロルミネッセンスなどの用語で区別されている。「フォトルミネッセンス」とは、蛍光体に電磁波を照射したときに蛍光体が放つ蛍光をいう。なお、「電磁波」という用語は、X線、紫外線、可視光及び赤外線などを総称して指す。「カソードルミネッセンス」とは、蛍光体に電子線を照射したときに蛍光体が放つ蛍光をいう。また、「エレクトロルミネッセンス」とは、蛍光体に電子を注入したり電界をかけたりしたときに放つ蛍光をいう。原理的にフォトルミネッセンスに近い蛍光として、「サーモルミネッセンス」という用語もあるが、これは蛍光体に熱を加えたときに蛍光体が放つ蛍光をいう。また、原理的にカソードルミネッセンスに近い蛍光として、「ラジオルミネッセンス」という用語もあるが、これは蛍光体に放射線を照射したときに蛍光体が放つ蛍光をいう。
先に説明したように、本実施形態の発光装置は、上述の波長変換部材10,10A中のアルカリ土類金属蛍光体1,1Aが放つ蛍光を少なくとも出力光として利用するものである。そして、ここでいう蛍光は少なくとも上述のように区分することができるため、当該蛍光は、上記ルミネッセンスから選ばれる少なくとも一つの蛍光現象として置き換えることができる。
なお、蛍光体のフォトルミネッセンスを出力光として利用する発光装置の典型例としては、X線イメージインテンシファイア、蛍光灯、白色LED、蛍光体とレーザーダイオードを利用する半導体レーザープロジェクター及びPDPが挙げられる。また、カソードルミネッセンスを出力光とする発光装置の典型例としては、電子管、蛍光表示管及びフィールドエミッションディスプレイ(FED)が挙げられる。さらに、エレクトロルミネッセンスを出力光とする発光装置の典型例としては、無機エレクトロルミネッセンスディスプレイ(無機EL)、発光ダイオード(LED)、半導体レーザー(LD)及び有機エレクトロルミネッセンス素子(OLED)が挙げられる。
以下、図面を参考に本実施形態の発光装置を説明する。図3は、本実施形態に係る発光装置の概略を示す。図3(a)及び図3(b)において、励起源20は、本実施形態の波長変換部材10,10A中のアルカリ土類金属蛍光体1,1Aを励起するための一次光を生成する光源である。励起源20は、α線、β線、電子線などの粒子線や、γ線、X線、真空紫外線、紫外線、可視光(特に紫色光の短波長可視光)などの電磁波を放つ放射装置を用いることができる。また励起源20としては、各種の放射線発生装置や電子ビーム放射装置、放電光発生装置、固体発光素子、固体発光装置なども用いることができる。励起源20の代表的なものとしては、電子銃、X線管球、希ガス放電装置、水銀放電装置、発光ダイオード、半導体レーザーを含むレーザー光発生装置、無機又は有機のエレクトロルミネッセンス素子などが挙げられる。
また、図3(a)及び図3(b)において、出力光40は、励起源20が放つ励起線又は励起光30によって励起されたアルカリ土類金属蛍光体1,1Aが放つ蛍光である。そして出力光40は、発光装置において照明光や表示光として利用されるものである。
図3(a)では、励起線又は励起光30を波長変換部材10,10Aに照射する方向に、波長変換部材10,10Aからの出力光40が放出される構造の発光装置を示す。なお、図3(a)に示す発光装置としては、白色LED光源や蛍光ランプ、電子管などが挙げられる。一方、図3(b)では、励起線又は励起光30を波長変換部材10,10Aに照射する方向とは逆の方向に、波長変換部材10,10Aからの出力光40が放出される構造の発光装置を示す。図3(b)に示す発光装置としては、プラズマディスプレイ装置や反射板付き波長変換部材ホイールを利用する光源装置、プロジェクターなどが挙げられる。
本実施形態の発光装置の具体例として好ましいものは、波長変換部材を利用して構成した半導体発光装置、照明光源、発光装置、LEDバックライト付き液晶パネル、LEDプロジェクター、レーザープロジェクターなどである。そして、本実施形態の発光装置は、可視光あるいは紫外光によって、波長変換部材を励起する構造を有することが好ましい。その励起光の波長範囲として、特に440nm以上500nm以下の範囲内に強度最大値を持つものが好適に使用できる。さらに当該発光装置は、短波長可視光を放つ固体発光素子をさらに備えることが好ましい。励起源として固体発光素子を用いることにより、衝撃に強い全固体の発光装置、例えば固体照明を実現することが可能となる。
以下、本実施形態に係る半導体発光装置の具体例を詳細に説明する。図4に示すように、本実施形態に係る半導体発光装置100は、基板110、複数のLEDチップ(発光素子)120、及び複数の封止部材130を備える。基板110は、例えば、セラミック基板や熱伝導樹脂などからなる絶縁層とアルミ板などからなる金属層との二層構造を有する。基板110は略方形の板状であって、基板110の短手方向(X軸方向)の幅W1が12〜30mmであり、長手方向(Y軸方向)の幅W2が12〜30mmである。
図5(a)及び(b)に示すように、LEDチップ120は、例えばGaN系のLEDであって、平面視形状が略長方形である。そしてLEDチップ120は、短手方向(X軸方向)の幅W3が0.3〜1.0mm、長手方向(Y軸方向)の幅W4が0.3〜1.0mm、厚さ(Z軸方向の幅)が0.08〜0.30mmである。
そしてLEDチップ120は、基板110の長手方向(Y軸方向)とLEDチップ120の素子列の配列方向とが一致するように配置されている。LEDチップ120は、一列に並んだ複数のLEDチップ120ごと素子列を構成しており、それら素子列が基板110の短手方向(X軸方向)に沿って複数列並べて実装されている。具体的には、例えば、25個のLEDチップ120が5列5行でマトリックス状に実装されている。すなわち、1つの素子列は5個のLEDで構成され、そのような素子列が5行並べて実装されている。
各素子列では、LEDチップ120が長手方向(Y軸方向)に直線状に配列されている。このようにLEDチップ120を直線状に配列することによって、それらLEDチップ120を封止する封止部材130も直線状に形成することができる。
図5(b)に示すように、各素子列は、それぞれ長尺状の封止部材130によって個別に封止されている。そして、1つの素子列とその素子列を封止する1つの封止部材130とによって、1つの発光部101を構成している。したがって、半導体発光装置100は5つの発光部101を備えていることになる。
封止部材130は、上述の波長変換部材10,10Aで形成されている。ただ、波長変換部材10,10A中に含有する蛍光体としては、アルカリ土類金属蛍光体1,1Aのみならず、例えば、Eu2+、Ce3+、Tb3+、Mn2+の少なくともいずれかで付活した酸化物や酸ハロゲン化物などの酸化物系蛍光体も用いることができる。また、蛍光体としては、Eu2+、Ce3+、Tb3+、Mn2+の少なくともいずれかで付活した窒化物や酸窒化物などの窒化物系蛍光体、又は硫化物や酸硫化物などの硫化物系蛍光体も用いることができる。また、上述の青色蛍光体、緑青又は青緑色蛍光体、緑色蛍光体、黄又は橙色蛍光体、赤色蛍光体も用いることができる。
図5に示すように、封止部材130は、短手方向(X軸方向)の幅W5が0.8〜3.0mm、長手方向(Y軸方向)の幅W6が3.0〜40.0mmであることが好ましい。また、LEDチップ120を含めた最大厚さ(Z軸方向の幅)T1が0.4〜1.5mm、LEDチップ120を含めない最大厚さT2が0.2〜1.3mmであることが好ましい。封止信頼性を確保するためには、封止部材130の幅W5はLEDチップ120の幅W3に対して2〜7倍であることが好ましい。
封止部材130の短手方向に沿った断面の形状は図5(a)に示すように、略半楕円形である。また、封止部材130の長手方向の両端部131,132は、R形状になっている。具体的には、両端部131,132の形状は、図4に示すように、平面視における形状が略半円形であり、図5(b)に示すように、長手方向に沿った断面の形状が約90°の中心角を有する略扇形である。封止部材130の両端部131,132がこのようにR形状になっている場合は、それら両端部131,132において応力集中が生じ難いと共に、LEDチップ120の出射光を封止部材130の外部に取り出し易い。
各LEDチップ120は、基板110にフェイスアップ実装される。そして基板110に形成された配線パターン140によって、LEDチップ120に電力が供給する図示しない点灯回路ユニットと電気的に接続されている。配線パターン140は、一対の給電用のランド141,142と、各LEDチップ120に対応する位置に配置された複数のボンディング用のランド143とを有する。
図5に示すように、LEDチップ120は、例えば、ワイヤボンディングによりワイヤ(例えば、金ワイヤ)150を介してランド143と電気的に接続されている。ワイヤ150の一方の端部151はLEDチップ120と接合され、他方の端部152はランド143と接合されている。各ワイヤ150は、それぞれ接続対象である発光素子の属する素子列に沿って配置されている。さらに各ワイヤ150の両端部151,152も素子列に沿って配置されている。各ワイヤ150は、LEDチップ120やランド143と共に封止部材130により封止されているため劣化し難く、また絶縁されていて安全性も高い。なお、LEDチップ120の基板110への実装方法は、上記のようなフェイスアップ実装に限定されず、フリップチップ実装であってもよい。
LEDチップ120は、図4に示すように、同じ素子列に属する5個のLEDチップ120が直列接続され、5つの素子列が並列接続されている。なお、LEDチップ120の接続形態はこれに限定されず、素子列に関係なくどのように接続されていてもよい。ランド141,142には、図示しない点灯回路ユニットの一対のリード線が接続され、それらリード線を介して点灯回路ユニットから各LEDチップ120に電力が供給され、これにより各LEDチップ120が発光する。
封止部材130は、以下のような手順で形成することができる。まず、図4に示すように、一列に並んだ複数のLEDチップ120からなる素子列がX軸方向に複数列並べて実装された基板110を用意する。次に図6に示すように、基板110に、例えばディスペンサ160を用いて、素子列に沿って樹脂ペースト135をライン状に塗布する。その後、塗布後の樹脂ペースト135を固化させることによって、素子列ごとに個別に封止部材130を形成する。
本実施形態の半導体発光装置は、照明光源用や液晶ディスプレイのバックライト用、表示装置用の光源など広く利用可能である。つまり上述のように、本実施形態の波長変換部材におけるアルカリ土類金属蛍光体は、視認性が良好な光を放ち得る。そのため、当該波長変換部材を照明光源等に用いた場合、高演色性かつ高効率の照明光源や、高輝度画面の広色域表示が可能な表示装置を提供することができる。
このような照明光源としては、本実施形態の半導体発光装置と、当該半導体発光装置を動作させる点灯回路と、口金など照明器具との接続部品とを組み合わせて構成することができる。また、必要に応じて照明器具を組み合わせれば、発光装置や照明システムを構成することにもなる。
このように、本実施形態の発光装置は、発光ダイオードチップと、発光ダイオードチップからの放射光の少なくとも一部を放射光よりも長波長の光に変換する波長変換部材とを備える。そのため、視感度や視認性の面で良好な特性を有することから、上述の半導体発光装置や光源装置以外にも広く利用することができる。
以下、本実施形態を実施例及び比較例によりさらに詳細に説明するが、本実施形態はこれら実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
まず、BOSE蛍光体(ユーロピウム付活バリウム・ストロンチウム・オルソシリケート蛍光体)10gを分散媒としてのエタノール1000mL中に分散させた。さらに、この分散液にエチルシリケート加水分解物(製品名エチルシリケート40、コルコート株式会社製)1gを添加し、マグネチックスターラーを用いて室温(25℃)で3時間攪拌した。そして、被覆蛍光体スラリーを濾紙を用いて吸引濾過し、被覆蛍光体の回収を行った。その後、付着水を除去するために、得られた被覆蛍光体を150℃で1時間乾燥した。
さらに、BOSE蛍光体の周囲に形成された酸化ケイ素被膜を緻密にする目的で、電気炉を用いて300℃、1時間加熱した。これにより、酸化ケイ素からなる被膜を設けた蛍光体(酸化物被覆蛍光体)を作製した。
次に、得られた酸化物被覆蛍光体10gを分散媒としてのエチレングリコール200mL中に分散させた。さらに、この分散液に、硫酸水素アンモニウムのエチレングリコール溶液100mLを添加し、マグネチックスターラーを用いて室温(25℃)で1時間攪拌した。なお、硫酸水素アンモニウムのエチレングリコール溶液は、硫酸水素アンモニウム0.1gをエチレングリコール100mLに溶解したものである。そして、酸化物被覆蛍光体スラリーを濾紙を用いて吸引濾過し、酸化物被覆蛍光体の回収を行った。さらに分散媒を除去するために、得られた酸化物被覆蛍光体を150℃で1時間乾燥した。このようにして本例のアルカリ土類金属蛍光体を調製した。
[実施例2]
まず、実施例1と同様のBOSE蛍光体10gを分散媒としてのエタノール1000mL中に分散させた。さらに、この分散液に酸化物ナノ粒子分散液10gを添加し、マグネチックスターラーを用いて室温(25℃)で3時間攪拌した。なお、酸化物ナノ粒子分散液は、エタノール分散シリカコロイド(シリカ粒子径:5nm、固形分:10質量%)を使用した。
そして、スプレードライ装置を用いて、被覆蛍光体スラリーを200℃、窒素気流中で噴霧乾燥することにより、酸化ケイ素からなる被膜を設けた蛍光体(酸化物被覆蛍光体)を作製した。
次に、実施例1と同様に、得られた酸化物被覆蛍光体を硫酸水素アンモニウムと反応させることにより、本例のアルカリ土類金属蛍光体を調製した。
[実施例3]
まず、実施例1と同様に、エチルシリケート加水分解物を用いて、BOSE蛍光体の周囲に酸化ケイ素からなる被膜を設けた酸化物被覆蛍光体を作製した。
次に、得られた酸化物被覆蛍光体10gと炭酸水素アンモニウム粉末5gとを混合し、200℃で1時間加熱した。このようにして本例のアルカリ土類金属蛍光体を調製した。
[実施例4]
まず、実施例2と同様に、エタノール分散シリカコロイドを用いて、BOSE蛍光体の周囲に酸化ケイ素からなる被膜を設けた酸化物被覆蛍光体を作製した。
次に、実施例3と同様に、得られた酸化物被覆蛍光体を炭酸水素アンモニウムと反応させることにより、本例のアルカリ土類金属蛍光体を調製した。
[比較例1]
実施例1のBOSE蛍光体に対して表面処理を行わず、そのまま本例の蛍光体として用いた。
[比較例2]
実施例1と同様に、エチルシリケート加水分解物を用いて、BOSE蛍光体の周囲に酸化ケイ素からなる被膜を設けた酸化物被覆蛍光体を作製した。この酸化物被覆蛍光体に対して、充填材を形成する化合物との反応を行わず、そのまま本例の蛍光体として用いた。
[比較例3]
実施例2と同様に、エタノール分散シリカコロイドを用いて、BOSE蛍光体の周囲に酸化ケイ素からなる被膜を設けた酸化物被覆蛍光体を作製した。この酸化物被覆蛍光体に対して、充填材を形成する化合物との反応を行わず、そのまま本例の蛍光体として用いた。
[比較例4]
実施例1と同様のBOSE蛍光体10gを分散媒としてのエチレングリコール200mL中に分散させた。さらに、この分散液に、硫酸水素アンモニウムのエチレングリコール溶液100mLを添加し、マグネチックスターラーを用いて室温(25℃)で1時間攪拌した。なお、硫酸水素アンモニウムのエチレングリコール溶液は、硫酸水素アンモニウム0.1gをエチレングリコール100mLに溶解したものである。そして、硫酸塩被覆蛍光体スラリーを濾紙を用いて吸引濾過し、硫酸塩被覆蛍光体の回収を行った。さらに分散媒を除去するために、得られた硫酸塩被覆蛍光体を150℃で1時間乾燥した。このようにして本例の硫酸塩被覆蛍光体を調製した。
[比較例5]
実施例1と同様のBOSE蛍光体10gと炭酸水素アンモニウム粉末5gとを混合し、200℃で1時間加熱した。このようにして本例の炭酸塩被覆蛍光体を調製した。
[評価]
実施例1〜4及び比較例1〜5で得られた蛍光体について、内部量子効率を測定した。さらに、各例の蛍光体について、簡易耐水性試験を行った。
(内部量子効率測定)
実施例及び比較例で得られた蛍光体の内部量子効率を、量子効率測定装置(製品名QE−1100、ハーフムーン型積分球、大塚電子株式会社製)を用いて測定した。測定条件は、励起波長を450nm、測定波長範囲を460〜800nm、積算回数30回とした。各例の内部量子効率を表1に示す。
Figure 2016108496
(簡易耐水性試験)
まず、密封可能な蓋付きビーカー中にイオン交換水200g中を入れ、蓋を閉め、20℃に保持しながらマグネチックスターラーにて攪拌した。次に、各例の蛍光体0.1gを加え、さらに20分間攪拌した後に、導電率計を用いて分散液の導電率を測定した。各例の導電率を表2に示す。
Figure 2016108496
表1より、被膜及び充填材の両方を有する実施例1〜4は、これらを有さない比較例1と比べても内部量子効率が低下することなく、むしろ内部量子効率が向上する結果となった。
また、表2より、酸化ケイ素からなる被膜及びアルカリ土類金属の硫酸塩からなる充填材を有する実施例1及び2は、充填材を有さない比較例1〜3と比べて導電率が大きく低下していることが分かる。また、実施例1及び2は、アルカリ土類金属の硫酸塩の被膜のみを有する比較例4と比べても導電率が低下していることが分かる。さらに、酸化ケイ素からなる被膜及びアルカリ土類金属の炭酸塩からなる充填材を有する実施例3及び4は、充填材を有さない比較例1〜3と比べて導電率が大きく低下していることが分かる。また、実施例3及び4は、アルカリ土類金属の炭酸塩の被膜のみを有する比較例5と比べても導電率が低下していることが分かる。このように、被膜と充填材の両方を有することにより、湿度劣化を大幅に抑制できることが分かる。
以上、実施例に沿って本実施形態の内容を説明したが、本実施形態はこれらの記載に限定されるものではなく、種々の変形及び改良が可能であることは、当業者には自明である。
1,1A アルカリ土類金属蛍光体
2 蛍光体粒子
3 被膜
3a 外面
3b 内面
4 充填材
5 透光性媒体
10,10A 波長変換部材
100 発光装置(半導体発光装置)

Claims (6)

  1. アルカリ土類金属を含有する蛍光体粒子と、
    前記蛍光体粒子の表面を覆い、かつ、ケイ素、チタン、アルミニウム、マグネシウム及びニオブからなる群より選ばれる少なくとも一つの元素の酸化物を含有する被膜と、
    前記被膜の内部における空隙に存在し、かつ、アルカリ土類金属の硫酸塩、炭酸塩、リン酸塩及びフッ化物からなる群より選ばれる少なくとも一つを含有する充填材と、
    を備え、
    前記被膜の内部における前記充填材の存在量は、前記被膜の外面よりも前記蛍光体粒子と接触する内面のほうが多いことを特徴とするアルカリ土類金属蛍光体。
  2. 前記アルカリ土類金属蛍光体0.1gを20℃の純水200gに20分間浸漬して得られた水溶液の導電率が150μS/cm以下であることを特徴とする請求項1に記載のアルカリ土類金属蛍光体。
  3. 前記被膜の厚みは、10nm以上1000nm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のアルカリ土類金属蛍光体。
  4. 請求項1乃至3のいずれか一項に記載のアルカリ土類金属蛍光体と、
    前記アルカリ土類金属蛍光体を分散させる透光性媒体と、
    を備えることを特徴とする波長変換部材。
  5. 前記透光性媒体は、シリコーン樹脂及びガラスの少なくともいずれか一方を含有することを特徴とする請求項4に記載の波長変換部材。
  6. 発光ダイオードチップと、
    前記発光ダイオードチップからの放射光の少なくとも一部を前記放射光よりも長波長の光に変換する、請求項4に記載の波長変換部材と、
    を備えることを特徴とする発光装置。
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