JP2007239112A - 繊維構造物およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】洗濯耐久性,反発弾性に優れており、且つ、ソフトな風合いを備えた繊維構造物を得る。
【解決手段】本発明にかかる繊維構造物10は、マトリックス繊維12を三次元的に交絡してなる繊維集合体12aを含む繊維構造物であって、マトリックス繊維12同士が交絡している部分の少なくとも一部が、マトリックス繊維12を構成する材料の融点より低い融点の結晶性ポリエステル14により熱接着され、マトリックス繊維12同士を熱接着している結晶性ポリエステル14が、アクリルエマルジョンを含有するバインダ16により覆われている、繊維構造物10である。
【選択図】図1
【解決手段】本発明にかかる繊維構造物10は、マトリックス繊維12を三次元的に交絡してなる繊維集合体12aを含む繊維構造物であって、マトリックス繊維12同士が交絡している部分の少なくとも一部が、マトリックス繊維12を構成する材料の融点より低い融点の結晶性ポリエステル14により熱接着され、マトリックス繊維12同士を熱接着している結晶性ポリエステル14が、アクリルエマルジョンを含有するバインダ16により覆われている、繊維構造物10である。
【選択図】図1
Description
この発明は、繊維構造物およびその製造方法に関するものであり、特に例えば、反撥弾性,洗濯耐久性に優れ、ソフトな風合いを備えた繊維構造物およびその製造方法に関するものである。
ブラジャーカップ,サポーター等の衣類の基材のように人体に直接または間接的に接する繊維構造物としては、繊維構造物のマトリックス繊維と熱接着性繊維とを混合してウェブを形成し、該ウェブを熱処理することで形成した基材(特許文献1)や、マトリックス繊維と繊維の形態を残すことなく溶融する熱接着性繊維とを混合してウェブを形成し熱処理を施して形成した基材(特許文献2)などが開示されている。
特開2003−239107号公報
特開2004−300592号公報
特許文献1に開示されている基材では、主体繊維と芯鞘型熱接着性繊維とを用いて基材が形成されているが、芯鞘型熱接着繊維を用いて主体繊維を熱接着した場合には、主体繊維同士または主体繊維と熱接着繊維の芯部分とが広い面積を以って線状に熱接着するために、主体繊維が自由度の低い状態で接着されている。また、主体繊維に熱接着成分がコーティングされるように付着することも多かった。このため、特許文献1に開示されている基材は、柔軟性に欠け、反撥弾性,ソフト感,洗濯耐久性のいずれも要求されるレベルには満たないものであった。
これに対し特許文献2に開示の基材では、主体繊維同士の交絡点近辺のみが低い融点の結晶性ポリエステルからなる全溶融型熱接着繊維により熱接着されているので、熱接着性繊維のゴムライクな弾性特性が活かされ反撥弾性、ソフト感に優れた繊維構造物を得ることができた。しかし、熱接着樹脂である結晶性ポリエステルの溶融粘度が高いために熱接着樹脂と主体繊維との接着箇所に隙間や、熱接着樹脂にクラックが生じるため、洗濯時にこれらの隙間やクラックに水が浸入し、接着点が剥離するため十分な洗濯耐久性を得ることができなかった。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、洗濯耐久性,反発弾性に優れ、ソフトな風合いを備えた、繊維構造物およびその製造方法を提供することを目的とする。
請求項1に記載の発明は、マトリックス繊維を三次元的に交絡してなる繊維集合体を含む繊維構造物であって、マトリックス繊維同士が交絡している部分の少なくとも一部が、マトリックス繊維を構成する材料の融点より低い融点の結晶性ポリエステルにより熱接着され、マトリックス繊維同士を熱接着している結晶性ポリエステルが、アクリルエマルジョンを含有するバインダにより覆われている、繊維構造物である。この場合には、マトリックス繊維は自由度の高い状態で接着されており、また結晶性ポリエステルに生じているクラックや接着箇所の隙間を埋めるように、バインダが結晶性ポリエステルを覆っている。
請求項2に記載の発明は、結晶性ポリエステルは、テレフタル酸成分とエチレングリコール成分とを含有し、1,4−ブタンジオール成分、脂肪酸ラクトン成分、アジピン酸成分のうちの少なくとも1成分を含有する共重合ポリエステルであって、融点が130〜200°Cである、請求項1に記載の繊維構造物である。この場合には、マトリックス繊維の物性が変化しない温度において、結晶性ポリエステルにより熱接着される。
請求項3に記載の発明は、マトリックス繊維と結晶性ポリエステルとの割合が、マトリックス繊維90〜40重量部に対して、結晶性ポリエステルが10〜60重量部である、請求項1または請求項2に記載の繊維構造物である。この場合には、請求項1または請求項2に記載の効果に加え、さらに優れた洗濯耐久性,反発弾性、ソフトな風合いを備えた繊維構造物となる。
請求項4に記載の発明は、バインダは、アクリルエマルジョン50〜90重量部に対して、シリコンアクリルエマルジョンを50〜10重量部の割合で配合してなるバインダである、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の繊維構造物である。この場合には、請求項1乃至請求項3に記載の発明の効果に加え、さらに洗濯耐久性に優れた繊維構造物を得る。
請求項5に記載の発明は、マトリックス繊維90〜40重量部に対して、マトリックス繊維の融点より低い融点で結晶性ポリエステルを含む全溶融型熱接着繊維を10〜60重量部の割合で混合して繊維集合体を形成する工程と、繊維集合体を、全溶融型熱接着繊維の融点以上であってマトリックス繊維の融点より低い温度に加熱し、全溶融型熱接着繊維を繊維形態が残らないように溶融させ、マトリックス繊維同士が交絡している部分の少なくとも一部を結晶性ポリエステルで熱接着する工程と、マトリックス繊維同士を熱接着している結晶性ポリエステルを、アクリルエマルジョンを含有するバインダで覆う工程とからなる、繊維構造物の製造方法である。この場合には、マトリックス繊維は自由度の高い状態で接着されており、また結晶性ポリエステルに生じているクラックや接着箇所の隙間を埋めるように結晶性ポリエステルを覆った繊維構造物を製造することができる。
以上の説明から明らかなように、本発明にかかる繊維構造物によれば、洗濯耐久性,反発弾性に優れており、且つ、ソフトな風合いを備えた繊維構造物を得ることができる。
図1は、本発明にかかる繊維構造物の一実施形態の一部を拡大した拡大図解図であり、図2は、図1の繊維構造物の一部を破断した拡大断面図解図である。
本発明にかかる繊維構造物10の構造について説明する。繊維構造物10は、大略、マトリックス繊維12を三次元的に交絡してなる繊維集合体12aからなる。繊維集合体12a中のマトリックス繊維12同士が交絡している部分(以下、単に「交絡点」という。)の少なくとも一部は、マトリックス繊維12の融点より低い融点を有する結晶性ポリエステル14により熱接着されている。さらに、マトリックス繊維12を熱接着している結晶性ポリエステル14は、アクリルエマルジョンを含有するバインダによりコーティングされるように覆われている。以下、本発明にかかる繊維構造物10を構成する各要素について詳述し、併せて本発明の繊維構造物10の従来の繊維構造物に対して優れている点などについて説明を行う。
マトリックス繊維12は、繊維構造物10を製造する過程で溶融することなく繊維の形態を保ったまま繊維構造物10の基本構造を構成するものである。マトリックス繊維12には、短繊維が使用される。使用する繊維の種類としては、天然繊維,化学繊維のいずれが使用されてもよく、また、天然繊維と化学繊維とを2種以上を混合して用いられてもよい。繊維構造物10の耐久性を考慮した場合には、主としてポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維、ナイロン繊維などの化学繊維を単独またはこれらを2種以上混合して用いることが好ましい。さらにこれらの中でも、結晶性ポリエステル14により強固に熱接着ができる点で、ポリエステル繊維を用いるのが最も好ましい。使用する繊維は、単一成分からなるものでなく、芯鞘型、サイドバイサイド型、菊花状型、海島型などような複数の成分からなるコンジュゲート繊維が使用されてもよい。単糸繊度については、特に限定されることはなく繊維構造物10が適用される製品に求められる物性等を考慮して、適当な繊度の繊維が使用されればよい。繊維の断面形状については、丸形だけでなく三角形や矩形などの異形のものや、これらの形状のもので中空とされた繊維が使用されてもよい。繊維の捲縮については、レギュラー繊維,潜在捲縮繊維,顕在捲縮繊維のいずれが使用されてもよく、捲縮の度合いについても特に制限されるものではない。
上述したように、繊維集合体12a中のマトリックス繊維12同士の交絡点の一部は、結晶性ポリエステル14により熱接着されている。結晶性ポリエステル14は、繊維集合体12aを形成する過程において繊維集合体12a中に略均等に混合・分散された結晶性ポリエステル14を含む全溶融型熱接着性繊維14aを繊維の形態が残らないように加熱溶融することで得たものである。なお、本発明において全溶融熱接着繊維14aとは、加熱して熱接着を行うときに、熱によりマトリックス繊維12が物性変化を起こさない温度において、繊維全体が溶融して繊維の形態を残すことない繊維のことを指す。結晶性ポリエステル14は、図1乃至図3等に示すように、略球状または略楕円球状に近い外形状をもって交絡点を成すマトリックス繊維12を覆うように固着している。これは、全溶融型熱接着繊維14aが溶融したものがマトリックス繊維12を伝い交絡点に凝集し、表面張力により略球状または略楕円球状となり交絡点上のマトリックス繊維12を包むような状態で凝固することによると思われる。これにより、本実施形態の繊維構造物10は、交絡点近辺のマトリックス繊維12だけを点状に熱接着しているので、特許文献1に開示に繊維構造物に比べ、マトリックス繊維12が自由度の高い状態で熱接着されている。その結果、本発明にかかる繊維構造物10は、柔軟性に富み、反撥弾性、ソフトな風合いを備えた繊維構造体となり得る。なお、交絡点を覆う結晶性ポリエステル14は、必ずしも略球状または略楕円球状に近い外形状を備えている必要はないが、マトリックス繊維12を自由度が大きい状態で強固に熱接着できる点で、略球状または略楕円球状に近い外形状とすることが好ましい。
また、本発明で適用する結晶性ポリエステル14は、テレフタル酸成分、エチレングリコール成分を含有し、かつ、アジピン酸成分、脂肪族ラクトン成分、1,4−ブタンジオール成分のうち少なくとも一成分を含有する共重合ポリエステルであることが好ましい。なぜならば、これらの共重合量を調整することにより、低い融点の結晶性ポリエステルを得ることが可能であるからである。以下、本発明に実施するのに適した低融点の結晶性ポリエステルを得るための前述の各成分の共重合量の範囲について説明を行う。
1,4−ブタンジオール成分は、全グリコール成分(エチレングリコール成分と1,4−ブタンジオール成分の合計)に対して40〜60モル%の比率とすることが好ましい。共重合量が40モル%未満の場合では、ガラス転移点、融点、結晶化開始温度が上昇する傾向となり、本発明に適用可能な範囲から外れたものとなりやすい。他方、共重合量が60モル%を超えると、結晶化開始温度、融点を低くすることが困難となる。
脂肪族ラクトン成分を共重合する場合、全酸成分(テレフタル酸成分及び脂肪族ラクトン成分の合計)に対して10〜20モル%となるようにすることが好ましい。脂肪族ラクトン成分が10モル%未満の場合、結晶性が向上するが、融点が上昇しやすくなる。融点が上昇することにより、熱接着するときに高温での熱処理が必要となり加工性等が悪化し、さらにはマトリックス繊維の変質等が発生する可能性が高まるために好ましくない。他方、20モル%を超えた場合には、ガラス転移点、結晶化温度、融点の各温度が低くなり、紡糸時に密着が発生したり、製糸性が低下しやすい。上述した熱特性を満足する脂肪族ラクトン成分としては、炭素数4〜11のラクトンが好ましく、中でも好適なラクトンとして、ε−カプロラクトンやδ−バレロラクトンなどが挙げられる。
アジピン酸成分を共重合する場合も、全酸成分(テレフタル酸成分及びアジピン酸成分の合計)に対して10〜20モル%となるようにすることが好ましい。その理由は、上述した脂肪族ラクトン成分と同じ理由である。
なお、上述した共重合成分は、単独で用いても併用されてもよい。なお、脂肪族ラクトン成分とアジピン酸成分を併用する場合は、両者の合計が全酸成分に対して10〜20モル%となるようにすることが好ましい。
なお、上述の成分構成の結晶性ポリエステル14は上述したように、全溶融型熱接着繊維14aとして繊維集合体12a中に混合されるが、このとき全溶融型熱接着繊維14aは、結晶性ポリエステル14単一成分からなる繊維としてだけ用いられるのではなく、結晶性ポリエステル14と一成分として多成分からなる複合繊維が用いられてもよい。しかし、上述したように複合繊維を用いた場合でも、熱接着部分の面積が広くならないように、繊維全体が溶融して繊維の形態を残すことないものが使用されなければならない。
交絡点を覆う結晶性ポリエステル14には、結晶性ポリエステル14をコーティングするようにバインダ16が覆われている。バインダ16は、交絡点を覆う結晶性ポリエステル14を覆うことにより、結晶性ポリエステル14に存在するクラックや接着点に生じている隙間を埋めたうえ被覆する。これにより、バインダは、熱接着した交絡点に洗濯時におけるクラックや隙間への水の侵入を防止し、洗濯時に耐え得るだけの耐水性を交絡点に付与するためのものである。バインダ16には、アクリルエマルジョンや、アクリルエマルジョンにその他のバインダ成分を混合したものが使用できる。特に、洗濯時における水の浸食に耐え得る耐水性を繊維構造物10に付与させるためには、アクリルエマルジョンの他に、シリコンアクリルエマルジョンを配合することが非常に効果的である。シリコンアクリルエマルジョンの配合比率としては、10〜50%が好ましいが、より好ましくは20〜40%の比率である。これは、シリコンアクリルエマルジョンが10%未満であると繊維構造物10に十分なソフト感を付与することができず、反対に50%を超えると、シリコンの含有比率が多すぎるためラミネート加工において繊維構造物10とラミネートする生地との接着が困難となるためである。
本発明では、バインダ16は10〜80g/m2で付着されるのが好ましく、さらにこの中でも、20〜60g/m2で付着されるのが好ましい。これは、バインダ16の付着量が10g/m2以下であると交絡点を熱接着している結晶性ポリエステルを覆うようにコーティングすることができず、洗濯耐久性が損なわれるためである。他方、付着量が80g/m2以上となると、バインダ16によりマトリックス繊維12がコーティングされたり、バインダ16によりマトリックス繊維12同士が接着されることで、ソフト感が失われるためである。
引き続いて、本発明にかかる繊維構造物10の製造方法については、説明を行う。
まず、カーディング等の公知のウェブ製造方法により、マトリックス繊維12と全溶融型熱接着性繊維14aとが略均一に分散・混合された繊維集合体12aを形成する(工程1)。
次に、繊維集合体12aに多くの交絡点を設けるために、工程1で得られた繊維集合体12aにニードルパンチ等の公知の繊維交絡処理を施して、マトリックス繊維12および全溶融型熱接着性繊維14aの交絡点を増加させる(工程1a)。なお、本実施の形態では、高い洗濯耐久性を繊維構造物10に具備させるために、本工程を施したが、繊維構造物10に高い洗濯耐久性が要求しない場合には、本工程は省略されてもよい。
次いで、工程1または工程1aで得られた繊維集合体12aを全溶融型熱接着繊維14aの融点以上であってマトリックス繊維12の融点より低い温度に加熱して、全溶融型熱接着繊維14aを繊維の形態が残らないように溶融させ、マトリックス繊維12同士が交絡している部分の少なくとも一部を結晶性ポリエステル14で熱接着する(工程2)。なお、このとき、全溶融型熱接着繊維14aの混合比率が高いと、繊維集合体12aがコンベアの移送面に付着するなどの不具合が発生するが、適宜、全溶融型熱接着繊維14aの混合比率を低下させるか、または、コンベアの移送面に結晶性ポリエステル14が剥離しやすくなるような表面加工を施せばよい。
さらに、工程2で得られた繊維集合体にアクリルエマルジョンを含有するバインダ16を付着させて、交絡点を覆う結晶性ポリエステル14をアクリルエマルジョンを含有するバインダで覆う(工程3)。なお、バインダ16を付着させる方法としては、スプレー法、パディング法、フォームコーティング法、含浸法などの公知の方法のいずれが用いられても良いが、繊維構造物10にソフト感を備えさせ、結晶性ポリエステル14を良好にコーティングできることから、スプレー法を用いることが望ましい。
上記の製造方法で得た繊維構造物10は、マトリックス繊維12同士が交絡点近辺のみにおいて点状に接着され、また、交絡点を覆う結晶性ポリエステル14が水の浸入に耐え得る状態とされている。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
マトリックス繊維12として、中空コンジュゲートポリエステル高捲縮繊維(繊度5.5dtex,繊維長51mm)を使用し、全溶融型接着繊維14aとしては、1,4−ブタンジオール成分を50モル%共重合した融点180°Cの結晶性ポリエステル14のみからなる熱接着繊維(繊度6.6dtex,繊維長51mm)を使用した。マトリックス繊維12である中空コンジュゲートポリエステル高捲縮繊維70重量%に対して、熱接着繊維30重量%を配合し、カーディングにより前述した熱接着繊維が中空コンジュゲートポリエステル高捲縮繊維の繊維集合体中に略均等に分散されている目付け150g/m2の繊維集合体12aを形成した。
さらに、作製した繊維集合体12aにニードルパンチを施して、マトリックス繊維12および熱接着繊維の交絡点を増加させた。
ニードルパンチを施した繊維集合体12aを、185〜190°Cの温度下で5分間加熱処理することにより、全溶融型熱接着繊維14aが繊維の形態を残さないように溶融させ、マトリックス繊維12である中空コンジュゲートポリエステル高捲縮繊維同士間を結晶性ポリエステルにより接着させた。
全溶融型熱接着繊維14aを溶融させて結晶性ポリエステル14により熱接着された繊維集合体12aに、バインダ16としてアクリルエマルジョン70%重量部に対して、アクリルシリコンエマルジョンを30%重量部混合した混合溶液をスプレーした。なお、このとき、バインダ16である混合溶液の固形分濃度は、20%となるように濃度調整を行い、アクリルエマルジョンとアクリルシリコンエマルジョンとの固形分が繊維構造物10に50g/m2付着するようにスプレーを行った。スプレーした後は、140〜150°Cの温度で乾燥処理を施し、目付け200g/m2、厚み5mmの繊維構造物10を得た。
実施例1の同様の構成により繊維集合体12aを作製したものに対して、アクリルエマルジョンのみからなるバインダ16を付着量が固形分50g/m2となるようにスプレー加工により付着させ、実施例1と同様の乾燥処理を施して、目付け200g/m2、厚み5mmの繊維構造物10を作製した。
(比較例1)
比較例1では、実施例1の全溶融熱接着繊維の代わりに、芯部分が融点250°Cのポリエステル樹脂で鞘部分が融点130°Cの低融点ポリエステル樹脂からなる芯鞘型の熱接着繊維(繊度4.4dtex、繊維長51mm)を用いた。その他の構成・工程は実施例1と全く同様にして、比較例1の繊維構造物を作製した。
(比較例2)
実施例1と同じマトリックス繊維と熱接着繊維と使用して、バインダのスプレーを行わずに、結晶性ポリエステル14がバインダにより覆われていない目付け150g/m2、厚み5mmの繊維構造物を比較例2として作製した。
(比較例3)
実施例1で使用した中空のコンジュゲートポリエステル繊維のみを用いてカーディングにより繊維集合体を作製し、ニードルパンチにより繊維を三次元的に交絡させた後、実施例1で用いたバインダをスプレーにより繊維集合体に固着させた。
(比較例1)
比較例1では、実施例1の全溶融熱接着繊維の代わりに、芯部分が融点250°Cのポリエステル樹脂で鞘部分が融点130°Cの低融点ポリエステル樹脂からなる芯鞘型の熱接着繊維(繊度4.4dtex、繊維長51mm)を用いた。その他の構成・工程は実施例1と全く同様にして、比較例1の繊維構造物を作製した。
(比較例2)
実施例1と同じマトリックス繊維と熱接着繊維と使用して、バインダのスプレーを行わずに、結晶性ポリエステル14がバインダにより覆われていない目付け150g/m2、厚み5mmの繊維構造物を比較例2として作製した。
(比較例3)
実施例1で使用した中空のコンジュゲートポリエステル繊維のみを用いてカーディングにより繊維集合体を作製し、ニードルパンチにより繊維を三次元的に交絡させた後、実施例1で用いたバインダをスプレーにより繊維集合体に固着させた。
洗濯試験:JIS L−0217「繊維製品の取扱いに関する表示記号及びその標記方法」別表:記号別の試験方法(1)洗い方(水洗い)番号103に規定の試験方法を10回繰り返し行った。その後、試験前後の寸法変化率、引張り強度保持率、厚み保持率を算出した。 また、洗濯試験後の試験片の外観の変化度合いについて、目視による評価を行った。なお、評価基準は下記のように定義した。
◎:外観の変化が非常に少ない。
○:外観の変化が少ない。
△:外観の変化がやや多い。
×:外観の変化が非常に多い。
◎:外観の変化が非常に少ない。
○:外観の変化が少ない。
△:外観の変化がやや多い。
×:外観の変化が非常に多い。
反撥弾性試験:10枚の試験片の四辺が一致するように重ね置き、その上から重さ50gで大きさ10cm角のガラス板を同様に載せ、四辺それぞれにおいて10枚分の高さを測定した。測定した数値から試験片1枚あたりの厚みの平均値aを算出した。次に、試験片に負荷される重さが合計2000gとなるようにガラス板の上に1950gの錘を載せ30秒後経過した後に、四辺それぞれにおいて重ねた試験片の高さを計測した。この数値から加重時の1枚あたりの厚みの平均値bを算出した。次に、錘を取り除いてから30秒が経過した後に、四辺それぞれにおいて重ねた試験片の高さを計測した。この計測した値から厚み回復時の1枚あたりの厚みの平均値cを算出した。これら計測値を用いて、下記の計算式により、圧縮率と圧縮弾性回復率とを求めた。
上述の試験の結果を下記の表に示す。
10 繊維構造物
12 マトリックス繊維
12a 繊維集合体
14 結晶性ポリエステル
16 バインダ
12 マトリックス繊維
12a 繊維集合体
14 結晶性ポリエステル
16 バインダ
Claims (5)
- マトリックス繊維を三次元的に交絡してなる繊維集合体を含む繊維構造物であって、
前記マトリックス繊維同士が交絡している部分の少なくとも一部が、前記マトリックス繊維を構成する材料の融点より低い融点の結晶性ポリエステルにより熱接着され、
前記マトリックス繊維同士を熱接着している結晶性ポリエステルが、アクリルエマルジョンを含有するバインダにより覆われている、繊維構造物。 - 前記結晶性ポリエステルは、テレフタル酸成分とエチレングリコール成分とを含有し、1,4−ブタンジオール成分、脂肪酸ラクトン成分、アジピン酸成分のうちの少なくとも1成分を含有する共重合ポリエステルであって、融点が130〜200°Cである、請求項1に記載の繊維構造物。
- 前記マトリックス繊維と前記結晶性ポリエステルとの割合が、前記マトリックス繊維90〜40重量部に対して、前記結晶性ポリエステルが10〜60重量部である、請求項1または請求項2に記載の繊維構造物。
- 前記バインダは、アクリルエマルジョン50〜90重量部に対して、シリコンアクリルエマルジョンを50〜10重量部の割合で配合してなるバインダである、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の繊維構造物。
- マトリックス繊維90〜40重量部に対して、前記マトリックス繊維の融点より低い融点で結晶性ポリエステルを含む全溶融型熱接着繊維を10〜60重量部の割合で混合して繊維集合体を形成する工程と、
前記繊維集合体を、前記全溶融型熱接着繊維の融点以上であって前記マトリックス繊維の融点より低い温度に加熱し、前記全溶融型熱接着繊維を繊維形態が残らないように溶融させ、前記マトリックス繊維同士が交絡している部分の少なくとも一部を結晶性ポリエステルで熱接着する工程と、
前記マトリックス繊維同士を熱接着している結晶性ポリエステルを、アクリルエマルジョンを含有するバインダで覆う工程とからなる、繊維構造物の製造方法。
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