JP2013090658A - クッション - Google Patents

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Abstract

【課題】連続線状体の三次元ランダムループ接合構造体を用いた寝具であって、クッション性および静粛性に優れた寝具を提供する。
【解決手段】100〜100000デシテックスの連続線状体を曲がりくねらせランダムループを形成し、夫々のループを互いに溶融状態で接触せしめて、接触部の大部分を融着させてなる三次元ランダムループ接合構造体と、三次元ランダムループ接合構造体を包み込む包装体と、を備え、連続線状体が少なくとも異なる2種の熱可塑性エラストマーで複合構造化されており、連続線状体の23℃でのTanδが0.10以上であり、三次元ランダムループ接合構造体の25%圧縮時硬さが10kg/Φ200以上である寝具である。
【選択図】図2

Description

本発明は、連続線状体の三次元ランダムループ接合構造体を用いたクッションに関する。
たとえば、特許文献1には、耐熱性、耐久性、クッション性に優れ、蒸れ難く、リサイクルが容易なクッション用網状構造体をクッション材に用いることが提案されている。特許文献1に記載のクッション用網状構造体は、ポリエステル系共重合熱可塑性弾性樹脂からなる300デニール以上の連続線状体を曲がりくねらせランダムループを形成し、夫々のループを互いに溶融状態で接触せしめて、接触部の大部分を融着させてなる三次元ランダムループ接合構造体から構成されている。
しかしながら、クッション材の圧縮時および回復時にランダムループ同士がこすれたような音やランダムループ同士がはじけたような音がするため、うるさいという問題がある。
そこで、たとえば特許文献2には、クッション性および静粛性に優れたポリエステル系弾性網状構造体として、ポリエステル共重合体からなる繊度が300デシテックス以上の連続線状体を曲がりくねらせランダムループを形成し、夫々のループを互いに溶融状態で接触せしめて、接触部の大部分を融着させてなる三次元ランダムループ接合構造体のランダムループ表面に、シリコーン系樹脂を含む樹脂が0.4〜4重量%付着させたポリエステル系弾性網状構造体をクッション体に用いることが提案されている。
特許文献2に記載のポリエステル系弾性網状構造体を用いたクッション体は、クッション体の圧縮時および回復時にランダムループ同士が擦れたような音は低減されているものの、ランダムループ同士が弾けたような音は依然として残っており、静粛性の観点で改善の余地はあった。
特開平7−68061号公報 特開2010−43376号公報
上記の事情に鑑みて、本発明の目的は、連続線状体の三次元ランダムループ接合構造体を用いたクッションであって、クッション性および静粛性に優れたクッションを提供することにある。
本発明は、100〜100000デシテックスの連続線状体を曲がりくねらせランダムループを形成し、夫々のループを互いに溶融状態で接触せしめて、接触部の大部分を融着させてなる三次元ランダムループ接合構造体と、三次元ランダムループ接合構造体を包み込む包装体と、を備え、連続線状体が少なくとも異なる2種の熱可塑性エラストマーで複合構造化されており、連続線状体の23℃でのTanδが0.10以上であり、三次元ランダムループ接合構造体の25%圧縮時硬さが10kg/Φ200以上であるクッションである。
ここで、本発明のクッションにおいて、連続線状体は、線状のコア部と、コア部を被覆するシース部とを有することが好ましい。
また、本発明のクッションにおいて、熱可塑性エラストマーの少なくとも1種がポリエステル系熱可塑性エラストマーであることが好ましい。
また、本発明のクッションにおいては、連続線状体が中空断面を有することが好ましい。
また、本発明のクッションにおいては、連続線状体が異形断面を有することが好ましい。
本発明によれば、連続線状体の三次元ランダムループ接合構造体を用いたクッションであって、クッション性および静粛性に優れたクッションを提供することができる。
本発明のクッションの一例である実施の形態のクッションの模式的な斜視図である。 図1のII−IIに沿った模式的な拡大断面図である。 (a)は実施の形態のクッションに用いられる三次元ランダムループ接合構造体の一例の模式的な斜視図であり、(b)は(a)に示す三次元ランダムループ接合構造体の模式的な拡大斜視図である。 図3(a)および図3(b)に示す連続線状体の一例の模式的な断面図である。 連続線状体の中空断面の一例を図解する模式的な断面図である。 (a)〜(c)は連続線状体の異形断面の一例を図解する模式的な断面図である。 三次元ランダムループ構造体の製造装置の一例の一部を図解する模式的な構成図である。 三次元ランダムループ構造体の製造装置の一例を図解する模式的な構成図である。 実施の形態のクッションの他の一例を図解する模式的な斜視図である。
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、本発明の図面において、同一の参照符号は、同一部分または相当部分を表わすものとする。
<クッション>
図1に、本発明のクッションの一例である実施の形態のクッションの模式的な斜視図を示し、図2に図1のII−IIに沿った模式的な拡大断面図を示す。図1および図2に示すように、本実施の形態のクッション1は、三次元ランダムループ接合構造体10と、三次元ランダムループ接合構造体10を包み込む包装体11と、を備えている。
三次元ランダムループ接合構造体10としては、100〜100000デシテックスの線条(連続線状体21)を曲がりくねらせランダムループ22を形成し、夫々のループ22を互いに溶融状態で接触せしめて、接触部の大部分を融着させてなるものが用いられる。
包装体11としては、三次元ランダムループ接合構造体10を包み込むことができるものであれば特に限定なく用いることができ、たとえば従来からクッションに用いられているカバーを好適に用いることができる。
実施の形態のクッション1においては、三次元ランダムループ接合構造体10が以下の(i)〜(iii)の3つの要件を備えている。そのため、良好なクッション性を有するとともに、従来よりも静粛性に優れたクッションとすることができる。
(i)連続線状体21が少なくとも異なる2種の熱可塑性エラストマーで複合構造化されている。
(ii)連続線状体21の23℃でのTanδ(タンジェント・デルタ)が0.10以上である。
(iii)三次元ランダムループ接合構造体10の25%圧縮時硬さが10kg/Φ200以上である。
本発明者らは、振動減衰性の高い連続線状体からなる三次元ランダムループ接合構造体であれば、はじける音やこすれる音のような圧縮時および回復時の音が低減された網状構造体となることを見出した。しかしながら、振動減衰性を高めることは弾性の減少と比例し、いわゆる柔らかい網状構造体となって、クッション性が損なわれる結果となった。
そこで、本発明者らが更に鋭意検討した結果、三次元ランダムループ接合構造体10を構成する連続線状体21を異なる2種以上の熱可塑性エラストマーで複合構造化することにより、驚くべきことに、弾性を確保しつつ、圧縮時および回復時に発生する音が低減された網状構造体を見出し、本発明を完成するに至った。
たとえば特許文献1や特許文献2に記載されているような従前の網状構造体は、ランダムループ同士が擦れたような音やランダムループ同士が弾けるような音が圧縮時や圧縮回復時に発生していたが、本実施の形態のクッション1においては、上記の(i)〜(iii)の3つの要件を備えた三次元ランダムループ接合構造体10を備えているため、これらの音を大幅に低減しつつ、圧縮時の弾性を従前の網状構造体と同レベルに保つ点で優れた効果を有する。
<連続線状体の複合構造化>
図3(a)に、実施の形態のクッション1に用いられる三次元ランダムループ接合構造体10の一例の模式的な斜視図を示し、図3(b)に、図3(a)に示す三次元ランダムループ接合構造体10の模式的な拡大斜視図を示す。
図3(a)および図3(b)に示すように、三次元ランダムループ接合構造体10は、繊度が100〜100000デシテックスの連続した線条(連続線状体21)を曲がりくねらせ、連続線状体21同士がその少なくとも一部において接合された3次元網状構造を有している。
連続線状体21は、連続線状体21の曲がりくねりによって、完全な輪状または完全な輪にはなっていない曲線状のランダムループ22を有している。そして、三次元ランダムループ接合構造体10は、連続線状体21のランダムループ22が他の連続線状体21のランダムループ22と接合している接合部23を有している。ここで、ランダムループ22の接合部23は、連続線状体21のランダムループ22を互いに溶融状態で接触せしめて、接触部の大部分を融着させることによって形成されている。
連続線状体21は、異なる2種以上の熱可塑性エラストマーで複合構造化されている。一般的には、連続線状体21のTanδを大きくすることと、三次元ランダムループ接合構造体10の25%圧縮時硬さを大きくすることとは、トレードオフ(二律背反)の関係にある。すなわち、連続線状体21のTanδが大きくなるほど三次元ランダムループ接合構造体10の25%圧縮時硬さが小さくなり、連続線状体21の25%圧縮時硬さが大きくなるほど連続線状体21のTanδが小さくなる。なお、Tanδとは、動的粘弾性測定装置を用いて測定した損失弾性率E''と貯蔵弾性率E'との比E''/E'であり、数値が高い程、振動減衰性が高くなり、振動音の低減効果が高くなる。
そこで、本実施の形態においては、連続線状体21を異なる2種以上の熱可塑性エラストマーで相補的に複合構造化することにより、Tanδの大きさと25%圧縮時硬さの大きさを両立した、すなわちクッション性に優れ、かつ静粛性の高い三次元ランダムループ接合構造体10を用いたクッション1を実現している。
図4に、図3(a)および図3(b)に示す連続線状体21の一例の模式的な断面図を示す。ここで、連続線状体21は、少なくとも異なる2種の熱可塑性エラストマーで複合構造化されており、たとえば図4に示すように、高Tanδ熱可塑性エラストマーからなる線状のコア部31と、高弾性率熱可塑性エラストマーからなるシース部32とを有しており、コア部31はシース部32で被覆されている。なお、本実施の形態においては、主に、コア部31が高Tanδ熱可塑性エラストマーからなり、シース部32が高弾性率熱可塑性エラストマーからなる場合について説明するが、本発明においては、コア部31が高弾性率熱可塑性エラストマーからなっていてもよく、シース部32が高Tanδ熱可塑性エラストマーからなっていてもよい。
高Tanδ熱可塑性エラストマーとしては、スチレン系熱可塑性エラストマーおよび/またはポリオレフィン系熱可塑性エラストマーを用いることが好ましく、スチレン系熱可塑性エラストマーを用いることがより好ましく、水素添加された部位を含むスチレン系熱可塑性エラストマーを用いることがさらに好ましい。これらの場合には、クッション1のクッション性および静粛性が共に優れたものとなる傾向にある。
スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、たとえば、スチレン−ブタジエンランダム共重合体、スチレン−イソプレンランダム共重合体、またはそれらを水素添加したスチレン系熱可塑性エラストマーなどを用いることができる。
ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、たとえば、エチレン−プロピレンランダム共重合体、またはエチレン−イソプレンランダム共重合体などを用いることができる。
また、クッション1のクッション性および静粛性をさらに優れたものとする観点からは、コア部31を構成する高Tanδ熱可塑性エラストマーとして、動的粘弾性測定装置を用いて測定した23℃でのTanδが0.20以上の熱可塑性エラストマーの1種以上を用いることが好ましい。
高弾性率熱可塑性エラストマーとしては、ポリエステル系熱可塑性エラストマーおよび/またはポリアミド系熱可塑性エラストマーを用いることが好ましく、ポリエステル系熱可塑性エラストマーを用いることがより好ましく、ポリエステルエーテルブロック共重合体を用いることがさらに好ましい。これらの場合には、クッション1のクッション性および静粛性が共に優れたものとなる傾向にある。
ポリエステル系熱可塑性エラストマーとしては、たとえば、熱可塑性ポリエステルをハードセグメントとし、ポリアルキレンジオールをソフトセグメントとするポリエステルエーテルブロック共重合体、または脂肪族ポリエステルをソフトセグメントとするポリエステルエステルブロック共重合体などを用いることができる。
ポリエステルエーテルブロック共重合体としては、たとえば、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸、ジフェニル−4,4’−ジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸ダイマ−酸等の脂肪族ジカルボン酸またはこれらのエステル形成性誘導体などから選ばれたジカルボン酸の少なくとも1種と、1,4−ブタンジオール、エチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール等の脂肪族ジオール、1,1−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂環族ジオールまたはこれらのエステル形成性誘導体などから選ばれたジオール成分の少なくとも1種と、平均分子量が約300〜5000のポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールまたはエチレンオキシド−プロピレンオキシド共重合体などから選ばれたポリアルキレンジオールのうち少なくとも1種と、から構成される三元ブロック共重合体を用いることができる。
ポリエステルエステルブロック共重合体としては、たとえば、上記のジカルボン酸の少なくとも1種と、上記のジオール成分の少なくとも1種と、平均分子量が約300〜5000のポリラクトン等のポリエステルジオールのうち少なくとも1種と、から構成される三元ブロック共重合体を用いることができる。
熱接着性、耐加水分解性、伸縮性、耐熱性等を考慮すると、高弾性率熱可塑性エラストマーとしては、(1)テレフタル酸または/およびイソフタル酸からなるジカルボン酸と、1,4−ブタンジオールからなるジオール成分と、ポリテトラメチレングリコールからなるポリアルキレンジオールとからなる3元ブロック共重合体、または(2)テレフタル酸または/およびナフタレン−2,6−ジカルボン酸からなるジカルボン酸と、1,4−ブタンジオールからなるジオール成分と、ポリラクトンからなるポリエステルジオールとから構成される三元ブロック共重合体を用いることが好ましく、(1)テレフタル酸または/およびイソフタル酸からなるジカルボン酸と、1,4−ブタンジオールからなるジオ−ル成分と、ポリテトラメチレングリコールからなるポリアルキレンジオールとからなる3元ブロック共重合体を用いることが特に好ましい。なお、高弾性率熱可塑性エラストマーとしては、ポリシロキサン系のソフトセグメントを導入したものを用いてもよい。
また、クッション1のクッション性および静粛性をさらに優れたものとする観点からは、シース部32を構成する高弾性率熱可塑性エラストマーとして、曲げ弾性率が0.1GPa以上の高弾性率熱可塑性エラストマーの1種以上を用いることが好ましい。なお、曲げ弾性率とは、矩形断面をもつ棒状試験片を一定の支点間隔(スパン)をもって支え、その中央に加圧くさびをあてて曲げ荷重を加えた時の荷重−たわみ曲線から算出される弾性率である。
連続線状体21のコア部31とシース部32との比率は、体積比(コア部31/シース部32)で、95/5〜5/95であることが好ましく、90/10〜10/90であることがより好ましく、85/15〜15/85であることがさらに好ましい。連続線状体21のコア部31とシース部32との体積比(コア部31/シース部32)が、95/5〜5/95である場合、より好ましくは90/10〜10/90である場合、さらに好ましくは85/15〜15/85である場合には、三次元ランダムループ接合構造体10を用いたクッション1のクッション性と静粛性とをともに良好にすることができる傾向にある。
連続線状体21の繊度は、100〜100000とされる。連続線状体21の繊度が100以上である場合には、抗圧縮力が大きくなって、反発力が大きくなり、三次元ランダムループ接合構造体10を用いたクッション1のクッション性が良好となる。一方、連続線状体21の繊度が100000以下である場合には、連続線状体21の個々の抗圧縮力が大きくなるとともに、三次元ランダムループ接合構造体10を構成する連続線状体21の本数も少なくなりすぎないため、たとえば100kg/cm2以上といった著しく大きい圧縮力を受けた場合でもその圧縮力を分散し、応力集中によるへたり(圧縮永久歪み)の発生を抑えることができる。クッション1のクッション性を良好なものとするとともに、応力集中によるへたりの発生を効果的に抑える観点からは、連続線状体21の繊度は300〜50000デシテックスであることが好ましく、500〜30000デシテックスであることがより好ましい。
なお、本発明において、連続線状体21としては、単一繊度の線条からなる連続線状体21だけでなく、繊度の異なる線条からなる連続線状体21も使用し、見掛け密度との組合せで最適な構成とすることもできる。
連続線状体21の樹脂部分は、示差走査型熱量計(Differential Scanning Calorimetry:DSC)にて測定した融解曲線において、融点以下に吸熱ピークを有することが好ましい。連続線状体21の樹脂部分が融点以下に吸熱ピークを有する場合には、連続線状体21の耐熱性および耐へたり性が吸熱ピ−クを有しないものよりも著しく向上する。
たとえば、シース部32を構成するポリエステル系熱可塑性エラストマーとして、ハードセグメントの酸成分に、剛直性を有するテレフタル酸および/またはナフタレン−2,6−ジカルボン酸などを90モル%以上、より好ましくは95モル%以上、特に好ましくは100モル%含有するものと、グリコ−ル成分をエステル交換後、必要な重合度まで重合し、次いで、ポリアルキレンジオールとして、好ましくは平均分子量が500以上5000以下、より好ましくは1000以上3000以下のポリテトラメチレングリコールと、を10重量%以上70重量%以下、より好ましくは20重量%以上60重量%以下で共重合させた場合には、ハードセグメントの酸成分に剛直性のあるテレフタル酸やナフタレン−2,6−ジカルボン酸の含有量が多くなり、ハ−ドセグメントの結晶性が向上し、塑性変形しにくく、かつ、耐熱性および耐へたり性が向上する。
加えて、溶融熱接着後に、融点より少なくとも10℃以上低い温度でアニーリング処理した場合には、連続線状体21の耐熱性および耐へたり性がより向上する。連続線状体21に圧縮歪みを付与した後にアニーリング処理した場合には、連続線状体21の耐熱性および耐へたり性がさらに向上する。
以上のような処理をした連続線状体21は、示差走査型熱量計で測定した融解曲線の室温以上融点以下の温度範囲において、吸熱ピークがより明確に発現する。なお、アニーリング処理しない場合には、示差走査型熱量計で測定した融解曲線の室温以上融点以下の温度範囲において、吸熱ピ−クが発現しない。このことから類推するに、アニーリング処理によって、ハードセグメントが再配列され、疑似結晶化様の架橋点が形成され、連続線状体21の耐熱性および耐へたり性が向上しているのではないかとも考えられる(以下、このアニーリング処理を「疑似結晶化処理」ということがある。)。
また、連続線状体21の断面形状は特には限定されないが、連続線状体21は、たとえば図5の模式的断面図に示すように、コア部31の内部に中空部33を有する中空断面を有していてもよく、図6(a)〜図6(c)の模式的断面図に示すように、三角形状(図6(a))、Y字状(図6(b))または星形状(図6(c))のような円形断面とは異なる異形断面を有していてもよい。連続線状体21の断面形状を中空断面や異形断面にすることによって、連続線状体21に抗圧縮性や嵩高性を付与することができるとともに、繊度を低くすることができる。
三次元ランダムループ接合構造体10の抗圧縮性は、連続線状体21に用いる素材のモジュラスにより調整することができる。たとえば、連続線状体21に柔らかい素材を用いた場合には、中空率や異形度を高くすることによって、初期圧縮応力の勾配を調整することができる。また、たとえば、連続線状体21にややモジュラスの高い素材を用いた場合には、中空率や異形度を低くすることによって、座り心地が良好な抗圧縮性を付与することができる。連続線状体21の断面形状を中空断面や異形断面としたときの他の効果として、中空率や異形度を高くすることで、同一の抗圧縮性を付与した場合には、三次元ランダムループ接合構造体10をより軽量化することが可能となる。
<連続線状体のTanδ>
連続線状体21の23℃でのTanδは、0.10以上とされるが、好ましくは0.12以上とされ、さらに好ましくは0.15以上とされる。連続線状体21の23℃でのTanδが0.10以上である場合、好ましくは0.12以上である場合、特に0.15以上である場合には、三次元ランダムループ接合構造体10を用いたクッション1の圧縮時または圧縮後の回復時にランダムループ22が弾けることによる振動音を十分に低減することができる。
また、連続線状体21のTanδは、0℃〜23℃のすべての温度範囲において、0.10以上であることが特に好ましい。この場合には、広範囲の温度域でクッション1の静粛性を保つことができる。
連続線状体21の23℃でのTanδの上限は特に限定されないが、連続線状体21の23℃でのTanδは、1.00以下であることが好ましく、0.80以下であることがより好ましく、0.50以下であることがさらに好ましい。連続線状体21の23℃でのTanδが1.00以下である場合、好ましくは0.80以下である場合、特に0.50以下である場合には、クッション1のクッション性を良好なものとすることができる。
<三次元ランダムループ接合構造体の25%圧縮時硬さ>
三次元ランダムループ接合構造体10の25%圧縮時硬さは、10kg/Φ200以上とされるが、好ましくは15kg/Φ200以上とされ、さらに好ましくは20kg/Φ200以上とされる。三次元ランダムループ接合構造体10の25%圧縮時硬さが、10kg/Φ200以上である場合、好ましくは15kg/Φ200以上である場合、特に20kg/Φ200以上である場合には、三次元ランダムループ接合構造体10が十分な反発力を有するため、クッション1のクッション性がより優れたものとなる。なお、三次元ランダムループ接合構造体10の25%圧縮時硬さとは、三次元ランダムループ接合構造体10をΦ200mm径の円形状の圧縮板にて75%まで圧縮して得られた応力−歪み曲線の25%圧縮時の応力である。
三次元ランダムループ接合構造体10の25%圧縮時硬さの上限は特に限定されないが、三次元ランダムループ接合構造体10の25%圧縮時硬さは、好ましくは50kg/Φ200以下とされ、より好ましくは45kg/Φ200以下とされ、さらに好ましくは40kg/Φ200以下とされる。三次元ランダムループ接合構造体10の25%圧縮時硬さが、50kg/Φ200以下である場合、好ましくは45kg/Φ200以下である場合、特に40kg/Φ200以下である場合には、クッション1のクッション性がより優れたものとなる。
<三次元ランダムループ接合構造体>
三次元ランダムループ接合構造体10の見掛け密度は、0.005g/cm3以上0.2g/cm3以下であることが好ましく、0.01g/cm3以上0.1g/cm3以下であることがより好ましく、0.03g/cm3以上0.06g/cm3以下であることがさらに好ましい。三次元ランダムループ接合構造体10の見掛け密度が0.005g/cm3以上0.2g/cm3以下である場合、より好ましくは0.01g/cm3以上0.1g/cm3以下である場合、さらに好ましくは0.03g/cm3以上0.06g/cm3以下である場合には、三次元ランダムループ接合構造体10に好適な大きさの反発力が発現し、クッション1の座り心地が良好となる傾向にある。
三次元ランダムループ接合構造体10は、たとえば繊度の異なる連続線状体21を用いた三次元ランダムループ接合構造体の複数層を積層してなる複数層構造としてもよい。この場合には、各層の見掛け密度を変えることによって、好ましい特性を付与することができる。たとえば、三次元ランダムループ接合構造体10が、繊度の大きい連続線状体21を用いた基本層と、基本層上に設けられた繊度の小さい連続線状体21を用いた表面層とからなる場合を考慮する。この場合には、表面層の見掛け密度をやや高くして連続線状体21の構成本数を多くし、連続線状体21の1本が受ける応力を小さくして効率的に応力を分散して、クッション1に良好なクッション性を付与するとともに、基本層は繊度の大きい連続線状体21を用いることによって少し硬くし、見掛け密度を表面層よりも高くして、クッション1の振動吸収と体型保持とを有する緻密な層とすることができる。
このように、三次元ランダムループ接合構造体10が複数層からなる場合には、三次元ランダムループ接合構造体10を構成する各層は、その目的に応じて、好ましい見掛け密度と繊度とを任意に選択することができる。
なお、三次元ランダムループ接合構造体10が複数層からなる場合の各層の厚みは、特に限定されないが、3mm以上とすることが好ましく、5mm以上とすることがより好ましい。この場合には、クッション1の良好なクッション性が発現しやすい傾向にある。
三次元ランダムループ接合構造体10の外表面は、曲がりくねらせた連続線状体21が途中で30°以上、好ましくは45°以上曲げられ、連続線状体21同士の接触部の大部分が融着して実質的にフラット化されていることが好ましい。この場合には、三次元ランダムループ接合構造体10の外表面の連続線状体21の接触点が大幅に増加して接着点を形成するため、クッション1に圧縮力が加えられたときに、クッション1の外表面全体が変形して、これによりクッション1の内部構造全体も変形して応力を吸収し、応力が解除されると、連続線状体21のゴム弾性が発現して、クッション1は元の形態に回復することができる。これにより、クッション1に座ったときに臀部に異物感を与えられないことから、クッション1への座り心地が良好となる。
三次元ランダムループ接合構造体10の外表面がフラット化された場合には、ワディング層を使用しないで、または非常に薄いワディング層を積層して、クッション1を形成することもできる。
三次元ランダムループ接合構造体10の外表面が実質的にフラット化されてない場合には、クッション1の外表面に局部的な外力が掛かり、三次元ランダムループ接合構造体10の外表面の連続線状体21および連続線状体21の接着点部分までに選択的に応力集中が発生して、応力集中による疲労により、クッション1の耐へたり性が低下する場合がある。また、三次元ランダムループ接合構造体10の外表面が実質的にフラット化されてない場合には、比較的厚め(好ましくは10mm以上)のワディング層を積層して、クッション1を形成することもできる。また、三次元ランダムループ接合構造体10の外表面が実質的にフラット化されてない場合には、ワディング層との接着が不完全になるおそれがある。
<クッションの製造方法>
以下、図7および図8の模式的構成図を参照して、本実施の形態のクッション1の製造方法の一例について説明する。クッション1の三次元ランダムループ構造体10は、たとえば溶融紡糸によって作製される。
まず、図7に示すように、高弾性率熱可塑性エラストマー41をエクストルーダー43に投入し、高Tanδ熱可塑性エラストマー42をエクストルーダー44に投入する。そして、高弾性率熱可塑性エラストマー41および高Tanδ熱可塑性エラストマー42は、エクストルーダー43およびエクストルーダー44からそれぞれ吐出装置46に排出される。
ここで、オリフィス45から吐出された連続線状体前駆体21aを少なくとも異なる2種の熱可塑性エラストマーで複合構造化できるように、オリフィス45の手前で高弾性率熱可塑性エラストマー41と高Tanδ熱可塑性エラストマー42とが分配される。
そして、吐出装置46の複数のオリフィス45のそれぞれから高弾性率熱可塑性エラストマー41の周囲を高Tanδ熱可塑性エラストマー42で被覆した構成の連続線状体前駆体21aが下方に向けて吐出される。
ここで、オリフィス45から吐出された連続線状体前駆体21aを構成する高弾性率熱可塑性エラストマー41と高Tanδ熱可塑性エラストマー42のうち、高融点である方の熱可塑性エラストマーの融点の10℃以上であって、かつ低融点である方の熱可塑性エラストマーの融点よりも120℃高い温度以下で連続線状体前駆体21aを吐出することが好ましい。高融点である方の熱可塑性エラストマーの融点の10℃以上の温度で連続線状体前駆体21aを吐出することによって、メルトフラクチャーの発生を抑制して、正常な形状の連続線状体前駆体21aを形成することができる。また、低融点である方の熱可塑性エラストマーの融点よりも120℃高い温度以下で連続線状体前駆体21aを吐出することによって、熱可塑性エラストマーの熱分解を抑制して、熱可塑性エラストマーの特性の悪化を効果的に抑止することができる。
また、メルトフラクチャーの発生および熱可塑性エラストマーの熱分解を抑制する観点からは、高融点である方の熱可塑性エラストマーの融点の好ましくは15℃以上40℃以下、より好ましくは20℃以上30℃以下であって、低融点である方の熱可塑性エラストマーの融点よりも好ましくは20℃以上100℃以下高い温度、より好ましくは30℃以上80℃以下高い温度でオリフィス45の手前でこれらの熱可塑性エラストマーを合流させ、連続線状体前駆体21aを吐出することが好ましい。
なお、高弾性率熱可塑性エラストマー41と高Tanδ熱可塑性エラストマー42との合流直前の温度差は10℃以下であることが好ましい。これらの熱可塑性エラストマーの合流直前の温度差を10℃以下とした場合には、熱可塑性エラストマーの異常流動の発生を抑制し、連続線状体前駆体21aの形態が損なわれるのを抑制することができる。
また、オリフィス45の形状は特に限定されないが、オリフィス45を異形断面(たとえば、三角形、Y型、星型等の断面二次モーメントが高くなる形状)または中空断面(たとえば、三角中空、丸型中空、突起付きの中空等の形状)を有する形状とすることが好ましい。この場合には、溶融状態の連続線状体前駆体21aが流動緩和し難くなり、連続線状体前駆体21aの接触点での流動時間を長く保持することによって、連続線状体前駆体21aの接着点を強固にすることができる。また、この場合には、三次元ランダムループ接合構造体10の見掛けの嵩を高くすることができるとともに、軽量化することができ、また抗圧縮性が向上し、弾発性も改良することができるため、クッション1をへたりにくくすることができる。
また、オリフィス45が中空断面を有する場合には、中空率が80%を越える場合には連続線状体前駆体21aの断面の中空部が潰れやすくなるため、オリフィス45に中空断面を採用する場合の中空率は、好ましくは軽量化の効果が発現できる10%以上70%以下であり、より好ましくは20%以上60%以下である。
また、オリフィス45間のピッチは、3mm以上20mm以下であることが好ましく、5mm以上10mm以下であることがより好ましい。オリフィス45間のピッチが3mm以上20mm以下である場合、特に5mm以上10mm以下である場合には、連続線状体前駆体21aが形成するランダムループ同士を十分に接触させることができる。なお、三次元ランダムループ接合構造体10を密な構造にするためには、オリフィス45間のピッチは短い方が好ましく、粗な構造とするためには、オリフィス45間のピッチは長い方が好ましい。
なお、オリフィス45の列間のピッチあるいは孔間のピッチを変えた構成、または列間のピッチと孔間のピッチとの双方を変えた構成とすることなどによって、三次元ランダムループ接合構造体10に異なる見掛け密度を設けることもできる。
また、オリフィス45の断面積を変更することによって連続線状体前駆体21aの吐出時の圧力損失を付与した場合には、溶融状態の熱可塑性エラストマーを同一ノズルから一定の圧力で吐出した場合に、圧力損失の大きいオリフィス45ほど、連続線状体前駆体21aの吐出量が小さくなる。この原理を利用して、各オリフィス45から吐出される連続線状体前駆体21aによって形成される連続線状体21の異繊度化が可能となる。
そして、図8に示すように、連続線状体前駆体21aは、複数のオリフィス45から、その融点よりも高い温度の雰囲気に吐出され、曲がりくねらせることにより溶融状態でランダムループを形成する。そして、それぞれのランダムループが互いに接触し、融着しつつ、たとえば水などの冷却媒体53が収容された冷却槽54に設けられた対向する一対の引き取りコンベア51,52のエンドレスネット55間に挟み込まれ、引っ張られながら、冷却槽54中で冷却されて三次元ランダムループ構造体10が得られる。
ここで、引き取りコンベア51,52において、溶融状態の三次元ランダムループ構造体10の両側の外表面の曲りくねった連続線状体前駆体21aを好ましくは30°以上、より好ましくは45°以上折り曲げて変形させ、三次元ランダムループ構造体10の外表面をフラット化すると同時に、曲げられていない連続線状体前駆体21aとの接触点で接着するように三次元ランダムループ構造体10を形成することが好ましい。
その後、三次元ランダムループ構造体10をアニーリング処理することによって、疑似結晶化処理を行なうことが好ましい。疑似結晶化処理のための三次元ランダムループ構造体10のアニーリング温度は、Tanδのα分散立ち上がり温度(Tαcr)以上、かつ高Tanδ熱可塑性エラストマーまたは高弾性率熱可塑性エラストマーのうち高融点である方の熱可塑性エラストマーの融点(Tm)よりも10℃以上低い温度であることが好ましく、(Tαcr+10℃)以上(Tm−20℃)以下であることがより好ましい。この場合には、融点以下に吸熱ピ−クを有し、疑似結晶化処理しないもの(吸熱ピ−クを有しないもの)よりも、三次元ランダムループ構造体10の耐熱性および耐へたり性が著しく向上する。
疑似結晶化処理は、単にアニーリング処理のみによって行なうこともできるが、三次元ランダムループ構造体10を一旦冷却した後に10%以上の圧縮変形を付与してからアニーリング処理を行なってもよい。また、三次元ランダムループ構造体10を一旦冷却した後に乾燥工程を経る場合には、乾燥温度をアニーリング温度とすることによって、乾燥と同時に三次元ランダムループ構造体10の疑似結晶化処理を行なうことができる。また、乾燥工程とは別にアニーリング処理を行なってもよい。
そして、上記のようにして得られた三次元ランダムループ構造体10を所望の長さおよび形状に切断し、図1に示す包装体11で包み込むことによって、本実施の形態のクッション1を製造することができる。
三次元ランダムループ構造体10をクッション1に用いる場合には、その使用目的および使用部位に応じて、熱可塑性エラストマーの材質、連続線状体21の繊度、連続線状体21のランダムループ21の径、および三次元ランダムループ構造体10の見掛け密度等を適宜選択することができる。
たとえば、三次元ランダムループ構造体10をクッション1の表層のワディングに用いる場合には、ソフトなタッチと、適度の沈み込みと、張りのある膨らみとを付与するために、低密度で、小さい繊度および小さいランダムループ21の径にすることが好ましい。また、たとえば、三次元ランダムループ構造体10をクッション1の中層のクッション体として用いる場合には、共振振動数を低くするとともに適度の硬さを付与し、圧縮時のヒステリシスを直線的に変化させて体型保持性を良くし、耐久性を保持させるために、中程度の見掛け密度で、太い繊度、やや大きいランダムループ21の径にすることが好ましい。
また、用途との関係で、要求性能に合わせるべく、たとえば不織布等の短繊維の集合体からなる硬綿クッション材と組み合わせて三次元ランダムループ構造体10を用いることも可能である。
また、熱可塑性エラストマーの製造工程以外でも、三次元ランダムループ構造体10の性能を低下させない範囲で、熱可塑性エラストマーの製造過程から三次元ランダムループ構造体10に加工し、クッション1を製品化する任意の段階で、クッション1の難燃化、防虫抗菌化、耐熱化、撥水撥油化、着色および芳香等の機能の付与を薬剤添加等の処理により行なってもよい。
上記のようにして作製されたクッション1は、就寝時以外にクッションとして機能する用品であればよい。図9の模式的斜視図に、クッション1の他の一例を図解する。
<合成例1>
ジメチルテレフタレート(DMT)と、1,4−ブタンジオール(1,4−BD)と、ポリテトラメチレングリコール(PTMG:平均分子量1000)とを少量の触媒と仕込み、常法によりエステル交換した後、昇温減圧しつつ重縮合することによって、DMT/1,4−BD/PTMG=100/93/7mol%のポリエステルエーテルブロック共重合エラストマーを生成した。次に、ポリエステルエーテルブロック共重合エラストマーに抗酸化剤を1%添加し、混合して練込んだ後にペレット化し、温度50℃で48時間真空乾燥させることによって、ポリエステル系熱可塑性エラストマー原料(A−1)を得た。そして、以下のようにして、ポリエステル系熱可塑性エラストマー原料(A−1)の融点(Tm)、曲げ弾性率およびTanδを測定した。その結果を表1に示す。
<合成例2>
ジメチルテレフタレート(DMT)と、1,4−ブタンジオール(1,4−BD)と、ポリテトラメチレングリコール(PTMG:平均分子量1000)とを少量の触媒と仕込み、常法によりエステル交換した後、昇温減圧しつつ重縮合することによって、DMT/1,4−BD/PTMG=100/84/16mol%のポリエステルエーテルブロック共重合エラストマーを生成した。次に、ポリエステルエーテルブロック共重合エラストマーに抗酸化剤を1%添加し、混合して練込んだ後にペレット化し、温度50℃で48時間真空乾燥させることによって、ポリエステル系熱可塑性エラストマー原料(A−2)を得た。そして、以下のようにして、ポリエステル系熱可塑性エラストマー原料(A−2)の融点(Tm)、曲げ弾性率およびTanδを測定した。その結果を表1に示す。
<合成例3>
ジメチルテレフタレート(DMT)と、1,4−ブタンジオール(1,4−BD)と、ポリテトラメチレングリコール(PTMG:平均分子量1000)とを少量の触媒と仕込み、常法によりエステル交換した後、昇温減圧しつつ重縮合することによって、DMT/1,4−BD/PTMG=100/72/28mol%のポリエステルエーテルブロック共重合エラストマーを生成した。次に、ポリエステルエーテルブロック共重合エラストマーに抗酸化剤を1%添加し、混合して練込んだ後にペレット化し、温度50℃で48時間真空乾燥させることによって、ポリエステル系熱可塑性エラストマー原料(A−3)を得た。そして、以下のようにして、ポリエステル系熱可塑性エラストマー原料(A−3)の融点(Tm)、曲げ弾性率およびTanδを測定した。その結果を表1に示す。
<熱可塑性エラストマーの特性の測定方法>
(1) 融点(Tm)
株式会社島津製作所製のTA50、DSC50型示差熱分析計を使用し、10gの試料を昇温速度20℃/分で20℃〜250℃まで測定した吸発熱曲線から吸熱ピーク(融解ピーク)温度を求めることによって、ポリエステル系熱可塑性エラストマー原料の融点(Tm)を測定した。
(2) 曲げ弾性率
射出成形機によって長さ125mm×幅12mm×厚み6mmの試験片を作成し、ASTM D790規格に沿って、ポリエステル系熱可塑性エラストマー原料の曲げ弾性率を測定した。
(3) Tanδ
設定温度230℃のヒートプレスによって厚さ300umのシートサンプルに成形し、動的粘弾性測定装置(UBM社製Rheogel−E−4000)を用い、周波数11Hz、昇温速度2℃/分で測定した23℃のTanδ(損失弾性率E''と貯蔵弾性率E'との比E”/E’)値を測定した。
Figure 2013090658
<実施例1>
合成例1で得られたポリエステル系熱可塑性エラストマー(A−1)と、水添スチレン−ブタジエンランダム共重合体(SBR)(旭化成ケミカルズ社製「S.O.E.S1611」)とが、重量比50%/50%となるように、オリフィス前で合流させた。そして、それぞれのオリフィスから、240℃で1000g/分の吐出量で、オリフィス下方25cmの冷却水の水面に向けて、水添スチレン−ブタジエンランダム共重合体(SBR)からなるコア部の外周を、ポリエステル系熱可塑性エラストマー(A−1)からなるシース部で被覆した連続線状体前駆体を吐出した。
ここで、オリフィスは、幅50cm×長さ5cmのノズル有効面に、長さ方向に列間ピッチ5mm、幅方向に孔間ピッチ10mmで設けられており、オリフィスの形状は円形中実であった。
そして、オリフィスから吐出された連続線状体前駆体を、水面の上方に一部を露出させた一対の引き取りコンベアに設けられた幅60cmのステンレス製エンドレスネットで引き取った。ここで、ステンレス製エンドレスネットは、一対の引き取りコンベアのそれぞれに設けられており、互いに向かい合うようにして、平行に5cmの間隔をあけるようにして配置された。
ステンレス製エンドレスネットで引き取られて、曲がりくねった連続線状体前駆体にはランダムループが形成され、連続線状体前駆体のそれぞれのランダムループを互いに溶融状態で接触させ、接触部の大部分が融着することによって三次元ランダムループ接合構造体が形成された。
このようにして形成された三次元ランダムループ接合構造体の両側の外表面をステンレス製エンドレスネットで挟み込みつつ、毎分1mの速度で、25℃の冷却水中へ引込んで固化させた。
そして、冷却水から引き出された三次元ランダムループ接合構造体を、100℃の熱風乾燥機中で20分間乾燥および加熱することによって疑似結晶化処理した後、所定の大きさに切断した。そして、このようにして得られた三次元ランダムループ接合構造体について、以下のようにして、連続線状体の中空率、連続線状体の繊度、連続線状体のTanδ、三次元ランダムループ接合構造体の見掛け密度、および三次元ランダムループ接合構造体の25%圧縮時硬さを測定した。
<三次元ランダムループ接合構造体の特性の測定方法>
(1) 連続線状体の中空率(%)
三次元ランダムループ接合構造体から連続線状体を採取し、液体窒素で冷却した後に切断し、その切断面を電子顕微鏡で倍率50倍にて観察し、得られた画像をCADシステムにて解析して、連続線状体の断面積(A)と中空部分の断面積(B)とを測定し、{B/(A+B)}×100の式により中空率(%)を算出した。
(2) 連続線状体の繊度(デシテックス)
三次元ランダムループ接合構造体を幅20cm×長さ20cmの大きさに切断し、10ヶ所から連続線状体を採取した。10ヶ所から採取した連続線状体の比重を密度勾配管を用いて測定した。さらに、上記10ヶ所で採取した連続線状体の断面積を顕微鏡で拡大した写真から求め、その断面積から、連続線状体の長さ10000m分の体積を求めた。上記のようにして得られた比重と体積とを乗じた値を繊度(連続線状体10000m分の重量)とした(n=10の平均値)。
(3) 連続線状体のTanδ
三次元ランダムループ接合構造体を設定温度230℃のヒートプレスによって厚さ300umのシートサンプルに成形し、動的粘弾性測定装置(UBM社製Rheogel−E−4000)を用いて、周波数11Hz、昇温速度2℃/分で測定した23℃のTanδ(損失弾性率E''と貯蔵弾性率E'との比E''/E')値を用いた。
(4) 三次元ランダムループ接合構造体の見掛け密度(g/cm3
三次元ランダムループ接合構造体を幅15cm×長さ15cmの大きさに切断し、4ヶ所の高さを測定し、体積を求め、三次元ランダムループ接合構造体の重量を体積で徐して算出した(n=4の平均値)。
(5) 三次元ランダムループ接合構造体の25%圧縮時硬さ(kg/Φ200)
三次元ランダムループ接合構造体を幅30cm×長さ30cmの大きさに切断し、試料を30cm×30cmの大きさに切断して、オリエンテック社製テンシロンにてΦ200mm圧縮板にて75%まで圧縮して得た応力−歪み曲線の25%圧縮時の応力を算出した(n=3の平均値)。
また、上記のようにして作製した見掛け密度0.04〜0.05g/cm3の三次元ランダムループ接合構造体を幅50cm×長さ50cm×厚さ5cmの大きさに切断し、布製のカバーで被覆して作製したクッションについて、以下のようにして、クッション性および静粛性を測定した。その結果を表2に示す。
(6) クッション性および静粛性
体重40kg〜100kgの範囲にあるパネラー30名(20歳〜39歳の男性;5名、20歳〜39歳の女性:5名、40歳〜59歳の男性:5名、40歳〜59歳の女性:5名、60歳〜80歳の男性:5名、60歳〜80歳の女性:5名)に、上記のようにして作製したクッションに座ってもらい、座ってもらった時の「どすん」と床に当たった感じの程度(クッション性)および発生音(静粛性)を感覚的に下記の分類で定性評価した。
A:感じない
B:ほとんど感じない
C:やや感じる
D:感じる
<実施例2>
オリフィスの形状を円形中空とし、吐出量を1400g/分としたこと以外は実施例1と同様にして、実施例2の三次元ランダムループ接合構造体およびクッションを作製した。そして、実施例2の三次元ランダムループ接合構造体およびクッションについて、実施例1と同様にして、連続線状体の中空率、連続線状体の繊度、連続線状体のTanδ、三次元ランダムループ接合構造体の見掛け密度、三次元ランダムループ接合構造体の25%圧縮時硬さ、クッション性および静粛性を測定した。その結果を表2に示す。
<実施例3>
オリフィスの形状をY字形中実とし、吐出量を1100g/分としたこと以外は実施例1と同様にして、実施例3の三次元ランダムループ接合構造体およびクッションを作製した。そして、実施例3の三次元ランダムループ接合構造体およびクッションについて、実施例1と同様にして、連続線状体の中空率、連続線状体の繊度、連続線状体のTanδ、三次元ランダムループ接合構造体の見掛け密度、三次元ランダムループ接合構造体の25%圧縮時硬さ、クッション性および静粛性を測定した。その結果を表2に示す。
<比較例1>
合成例1で得られたポリエステル系熱可塑性エラストマー(A−1)のみを用い、水添スチレン−ブタジエンランダム共重合体(SBR)(旭化成ケミカルズ社製「S.O.E.S1611」)を用いなかったこと以外は実施例1と同様にして、円形中空の連続線状体からなる比較例1の三次元ランダムループ接合構造体およびクッションを作製した。そして、比較例1の三次元ランダムループ接合構造体およびクッションについて、実施例1と同様にして、連続線状体の中空率、連続線状体の繊度、連続線状体のTanδ、三次元ランダムループ接合構造体の見掛け密度、三次元ランダムループ接合構造体の25%圧縮時硬さ、クッション性および静粛性を測定した。その結果を表2に示す。
<比較例2>
合成例2で得られたポリエステル系熱可塑性エラストマー(A−2)のみを用い、水添スチレン−ブタジエンランダム共重合体(SBR)(旭化成ケミカルズ社製「S.O.E.S1611」)を用いなかったこと以外は実施例1と同様にして、円形中空の連続線状体からなる比較例2の三次元ランダムループ接合構造体およびクッションを作製した。そして、比較例2の三次元ランダムループ接合構造体およびクッションについて、実施例1と同様にして、連続線状体の中空率、連続線状体の繊度、連続線状体のTanδ、三次元ランダムループ接合構造体の見掛け密度、三次元ランダムループ接合構造体の25%圧縮時硬さ、クッション性および静粛性を測定した。その結果を表2に示す。
<比較例3>
合成例3で得られたポリエステル系熱可塑性エラストマー(A−3)のみを用い、水添スチレン−ブタジエンランダム共重合体(SBR)(旭化成ケミカルズ社製「S.O.E.S1611」)を用いなかったこと以外は実施例1と同様にして、円形中空の連続線状体からなる比較例3の三次元ランダムループ接合構造体およびクッションを作製した。そして、比較例3の三次元ランダムループ接合構造体およびクッションについて、実施例1と同様にして、連続線状体の中空率、連続線状体の繊度、連続線状体のTanδ、三次元ランダムループ接合構造体の見掛け密度、三次元ランダムループ接合構造体の25%圧縮時硬さ、クッション性および静粛性を測定した。その結果を表2に示す。
<比較例4>
合成例1で得られたポリエステル系熱可塑性エラストマー(A−1)を用いずに、水添スチレン−ブタジエンランダム共重合体(SBR)(旭化成ケミカルズ社製「S.O.E.S1611」)のみを用いたこと以外は実施例1と同様にして、円形中空の連続線状体からなる比較例4の三次元ランダムループ接合構造体およびクッションを作製した。そして、比較例4の三次元ランダムループ接合構造体およびクッションについて、実施例1と同様にして、連続線状体の中空率、連続線状体の繊度、連続線状体のTanδ、三次元ランダムループ接合構造体の見掛け密度、三次元ランダムループ接合構造体の25%圧縮時硬さ、クッション性および静粛性を測定した。その結果を表2に示す。
Figure 2013090658
表2に示すように、異なる2種の熱可塑性エラストマーで複合構造化された100〜100000デシテックスの連続線状体を曲がりくねらせランダムループを形成し、夫々のループを互いに溶融状態で接触せしめて、接触部の大部分を融着させてなる三次元ランダムループ接合構造体を布製のカバーで包み込み、連続線状体の23℃でのTanδが0.10以上であって、三次元ランダムループ接合構造体の25%圧縮時硬さが10kg/Φ200以上である実施例1〜3のクッションは、比較例1〜4のクッションと比較して、クッション性および静粛性に優れていることが確認された。
本発明は、就寝時以外の日常生活で用いられるクッションに利用することができる。
1 クッション、10 三次元ランダムループ接合構造体、11 包装体、21 連続線状体、21a 連続線状体前駆体、22 ランダムループ、31 コア部、32 シース部、33 中空部、41 高弾性率熱可塑性エラストマー、42 高Tanδ熱可塑性エラストマー、43 ,44 エクストルーダー、45 オリフィス、46 吐出装置、51,52 引き取りコンベア、53 冷却媒体、54 冷却槽、55 エンドレスネット、61 ベッド台。

Claims (5)

  1. 100〜100000デシテックスの連続線状体を曲がりくねらせランダムループを形成し、夫々のループを互いに溶融状態で接触せしめて、接触部の大部分を融着させてなる三次元ランダムループ接合構造体と、
    前記三次元ランダムループ接合構造体を包み込む包装体と、を備え、
    前記連続線状体が少なくとも異なる2種の熱可塑性エラストマーで複合構造化されており、
    前記連続線状体の23℃でのTanδが0.10以上であり、
    前記三次元ランダムループ接合構造体の25%圧縮時硬さが10kg/Φ200以上である、クッション。
  2. 前記連続線状体は、線状のコア部と、前記コア部を被覆するシース部とを有する、請求項1に記載のクッション。
  3. 前記熱可塑性エラストマーの少なくとも1種がポリエステル系熱可塑性エラストマーである、請求項1または2に記載のクッション。
  4. 前記連続線状体が中空断面を有する、請求項1〜3のいずれかに記載のクッション。
  5. 前記連続線状体が異形断面を有する、請求項1〜3のいずれかに記載のクッション。
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