JP2007237707A - セラミックハニカム構造体成形用金型 - Google Patents

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Abstract

【課題】 窒化層の表面に存在する脆弱な白層を安価で容易に除去し、窒化層の表面に設けたメッキ層の窒化層との付着性を向上したセラミックハニカム構造体成形用金型を得ること。
【解決手段】 成形溝と、この成形溝に連通する坏土供給孔とを有するセラミックハニカム構造体成形用金型であって、前記成形溝、および、前記坏土供給孔の表面に窒化層を設け、該窒化層の表面の白層を研磨剤により研磨除去した後に、窒化層の表面にメッキ層を設ける。
【選択図】 図1

Description

本発明は、セラミックハニカム構造体成形用金型に関する。
排気ガス浄化用フィルタなどに用いられるセラミックハニカム構造体(以下、「ハニカム構造体」と略す)は、セラミック坏土をハニカム構造体成形用金型(以下、「成形用金型」と略す)を用いて押出し成形し、その後乾燥、焼成することで製造されている。図2は、成形用金型10の一例を示し、(a)は格子状とした成形溝20側から見た斜視図、(b)は坏土供給孔30側からみた斜視図である。また、図3は、成形用金型10の坏土供給孔30の軸方向断面模式図である。セラミック坏土は坏土供給孔30より成形用金型10内に導入され、成形溝20より成形されたハニカム構造体として排出される。
成形用金型は、耐摩耗性を向上させるために成形溝と坏土供給孔の表面にコーティング層を設けることが行われており、例えば特許文献1に記載のようにCVD(化学蒸着)により耐摩耗性のコーティング層を設けた成形用金型が知られている。しかしながら、上記CVDの処理装置は非常に高価であり、金型の製造コストを上昇させ、延いてはハニカム構造体の製造コストを上昇させる。
特開2002−219705号公報 特開平5−148612号公報
成形用金型の耐摩耗性を向上させる別の方法として、成形溝と坏土供給孔の表面を窒化処理により硬化することが考えられる。この場合は、窒化層の表面の粗さが若干悪化し、押出し抵抗が増し成形性が悪化するため、窒化層の表面にさらにメッキ層を設けることが好ましいが、窒化層の表面には白層と呼ばれる非常に脆弱な層が存在するためにメッキの付着性が悪いことが知られている。実際に本発明者が図4(a)に示すような窒化処理を施し、窒化層40の上にNiメッキ層50を形成した成形用金型を用いてハニカム構造体を成形すると、白層60の存在のために特に図4(b)に示すように坏土供給孔30と成形溝20とが連通する角部23のメッキ層50が短時間で剥離することを確認した。
窒化層とメッキ層の付着性を向上するために、成形用金型に関するものではないが特許文献2に記載のように、窒化層の表面の白層を除去した後にメッキ層を設けることも知られている。しかしながら、従来白層を除去するためには薬品処理や機械研削を用いており、薬品処理では廃液処理にコストがかかる問題が発生し、機械研削により白層を除去しようとしても、坏土供給孔30と成形溝20の数が多いので多大な工数がかかるだけでなく、上記のメッキ層が剥離しやすい坏土供給孔と成形溝とが連通する角部23は白層の除去が非常に困難であった。
したがって本発明の目的は、安価で容易に白層を除去し、窒化層とメッキ層の付着性を向上した成形用金型を得ることである。
本発明の成形用金型は、成形溝と該成形溝に連通する坏土供給孔を有するセラミックハニカム構造体成形用金型であって、前記成形溝および前記坏土供給孔の表面に窒化層を設け、該窒化層表面の少なくとも一部の白層を研磨剤により研磨除去した表面に、メッキ層を設けることを特徴とする。
また本発明の成形用金型は、前記研磨剤がセラミック坏土であることもできる。
また本発明の成形用金型は、前記セラミックハニカム構造体成形用金型の母材がプリハードン鋼であることが好ましい。
(本発明の作用効果)
本発明の作用と効果を、図を用いて説明する。図1は本発明を説明するための図2に示す金型10の部分拡大模式図であり、(a)は成形用金型10の成形溝20側から見た部分拡大図、(b)は(a)におけるA−A断面図、(c)は(a)におけるB−B断面図である。図1(b)(c)に示すように、成形溝20および坏土供給孔30の表面に窒化層40を設け、窒化層40の表面にさらにメッキ層50を設けている。本発明の成形用金型を製造するには、まず金型母材70に坏土供給孔30と成形溝20を機械加工または放電加工により設け、次に坏土供給孔30と成形溝20の表面に公知の方法で窒化処理を施し窒化層40を設ける。この窒化層40の表面には図5に示すように非常に脆弱な白層60が存在し、白層60の表面に直接メッキ層50を設けると押出し成形時にメッキ層50が剥離しやすいので、白層60を除去した後にメッキ層50を設ける必要があるが、坏土供給孔30および成形溝20の表面の白層60を除去するのは困難であり、特に坏土供給孔30と成形溝20とが連通する角部23の白層60を除去するのは非常に困難である。本発明では、研磨剤を用いて、詳しくは研磨剤をセラミックハニカム構造体押出し成形時と同様に、坏土供給孔30から導入し成形溝20から排出することで白層60を除去する方法を用いて、安価で容易に白層60を除去することが可能となる。そして、図6に示すように白層60を除去した後の窒化層40の表面に設けたメッキ層50は付着性が良好となる。なお、坏土供給孔30と成形溝20の窒化層40の表面に存在する白層60は、その全てを研磨剤により除去する必要はないが、少なくともメッキ層が最も剥離する虞のある坏土供給孔30と成形溝20とが連通する角部23の白層が除去されるように坏土供給孔30と成形溝20とに適当量の研磨剤を通過させることが好ましい。
また、上記の研磨剤として、ハニカム構造体の材料であるセラミック坏土を用いることで、特別な研磨剤を用意することなく、安価で容易に白層の研磨除去を行うことができる。
また成形用金型10は、多数の坏土供給孔30と成形溝20を精度良く多数加工する必要があるが、成形用金型10の母材70に、加工後、焼入れ焼もどしの熱処理を行なう必要がない高硬度と被切削性を両立させたいわゆるプリハードン鋼を用いることで、機械加工でも容易に早く加工することが可能となるとともに、窒化層とメッキ層を設けた後の成形用金型は坏土の押出し圧力に対応する適度な靭性を有し、かつ耐摩耗性の高いものとすることができる。特に硬度がHRC28〜35のプリハードン鋼を用いることで、坏土供給孔30と成形溝20を容易に早く加工することが可能となるとともに、窒化処理後にメッキ層50を設けた後の表面硬度はHv800以上となり、耐摩耗性の高い金型を得ることができる。
なお、坏土供給孔30と成形溝20の表面に設けた窒化層40は、その硬化層の厚さが50〜150μmであることが好ましい。研磨剤により坏土供給孔30と成形溝20の窒化層40の表面に存在する白層60を広範囲にわたり除去しようとした場合には、部位により研磨量が異なり、部位によっては白層60と共に窒化層40が研磨・摩耗し、硬化層が薄くなり硬度の低い金型母材70が露出する虞がある。硬化層の厚さが50μm以上とすることで金型母材70が露出することを防止する。一方硬化層が150μmより大きくなると、成形用金型10の靭性が低下し、セルブロック80の折損の原因となる場合がある。なお、上記硬化層とは、金型母材硬度の1.1倍以上の硬度を有する範囲とする。
本発明により、安価で容易に白層を除去し、窒化層とメッキ層の付着性を向上した成形用金型を得ることができる。
以下、本発明を実施例により説明する。
(実施例1)
図1は、本実施例1の成形用金型を示す。この成形用金型を製造するために、先ず金型母材70としてSCM420相当のプリハードン鋼(HRC32)を用いた。そしてこの金型母材70に坏土供給孔30をドリルにより、成形溝20を回転砥石により加工して設けた。この際、成形溝20の溝幅は0.26mm、溝ピッチは1.50mmとし、坏土供給孔30の直径は1.2mmとした。次にガス窒化(410℃×48時間)を施し坏土供給孔30の表面、成形溝20の表面、および金型10の外面に窒化層40を設けた。このガス窒化にあたり金型母材70と同材質のテストピースに同時に窒化処理を施した結果、硬化層の厚さは50μmであった。次に窒化層40を設けた成形用金型10を押出成形装置(図示せず)に取り付け、コーディエライト系セラミック坏土を通常のハニカム構造体の押出し成形時と同条件で坏土供給孔より導入し、窒化層40表面の白層60を除去した。坏土供給孔30より導入したセラミック坏土は、成形溝20よりハニカム構造体の形状となり排出されるが、この排出されたハニカム構造体の軸方向長さ(坏土排出方向長さ)が延べ30mとなった時点で成形用金型10を押出成形装置より取り外し、坏土供給孔30および成形溝20内のセラミック坏土を洗浄除去した。
次に、公知の方法で坏土供給孔30および成形溝20の表面の窒化層40上にNiメッキ層50を設けた。メッキ層50の厚さは10μmとした。メッキ層表面の硬度はHv1000であった。以上の工程により製造した成形用金型10を用いて、コーディエライト質ハニカム構造体を押出成形し、成形したハニカム構造体の延べ長さが30mとなった後に、成形用金型10の切断による破壊検査を行った結果、メッキ層50の剥離は確認できなかった。
(比較例1)
本比較例1は、窒化層40表面の白層60の除去を行わないこと以外は実施例1と同様に成形用金型を製造した。なお、メッキ層表面の硬度はHv1000であった。本比較例1の成形用金型を用いて実施例1と同様にコーディエライト質ハニカム構造体を押出成形し、成形したハニカム構造体の延べ長さが30mとなった後に、成形用金型の切断による破壊検査を行った結果、坏土供給孔30と成形溝20の連通部の角部23にメッキ層50の剥離が確認された。
本発明の成形用金型の構造を示す模式図である。 成形用金型の外観を示す模式図である。 成形用金型の端面形状を示す模式図である。 比較例1におけるメッキ層の剥離状態を示す図である。 窒化層表面の白層を示す角部23の拡大図である。 窒化層表面の白層を除去した後にメッキ層を設けた角部23の拡大図である。
符号の説明
10:成形用金型
20:成形溝
30:坏土供給孔
40:窒化層
50:メッキ層
60:白層
70:金型母材
80:セルブロック

Claims (3)

  1. 成形溝と該成形溝に連通する坏土供給孔を有するセラミックハニカム構造体成形用金型であって、前記成形溝および前記坏土供給孔の表面に窒化層を設け、該窒化層表面の少なくとも一部の白層を研磨剤により研磨除去した表面に、メッキ層を設けることを特徴としたセラミックハニカム構造体成形用金型。
  2. 前記研磨剤がセラミック坏土であることを特徴とする請求項1に記載のセラミックハニカム構造体成形用金型。
  3. 前記セラミックハニカム構造体成形用金型の母材がプリハードン鋼であることを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載のセラミックハニカム構造体成形用金型。
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