JP2007211280A - 成形性と穴拡げ性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板と高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板及び高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法並びに高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法 - Google Patents
成形性と穴拡げ性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板と高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板及び高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法並びに高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法 Download PDFInfo
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Abstract
【解決手段】質量%で、C:0.05〜0.25%未満、Si:1.0〜2.0%、Mn:1.1〜1.9%、O:0.006%以下、P:0.04%以下、S:0.01%以下、Al:0.05%以下、N:0.01%以下を含有し、残部が鉄及び不可避的不純物からなり、さらに、体積分率でフェライトを50%以上、オーステナイトを3〜50%未満含有し、残部がベイナイトまたはマルテンサイトからなる鋼板の表面に溶融亜鉛めっき層を有し、この鋼板と溶融亜鉛めっき層との界面から5μm以内の鋼板内の結晶粒界及び結晶粒内、溶融亜鉛めっき層内のいずれか一方または双方にSiを含む酸化物を平均含有率0.01〜10質量%にて含有してなることを特徴とする。
【選択図】なし
Description
引張試験の全伸び(El)に優れる鋼板としては、鋼板組織を、主相を軟質なフェライトとすることで延性を確保し、第二相として硬質なマルテンサイトを分散させることで強度を確保することにより、強度と延性の両立を図った鋼板が提案されているが、鋼板組織をフェライトとマルテンサイトの二相組織とすると、製造工程にて変形する際に、硬度差の異なる両相の界面にてマイクロボイドが生成することにより、穴拡げ性が低下してしまうという問題点があった(例えば、非特許文献1)。
そこで、穴拡げ性を向上させるために、鋼板組織をベイナイト単相組織とすることで組織内の硬度を均一化するとともにマイクロボイドの形成を抑制した鋼板が提案されている(特許文献1)が、この鋼板では、主相がベイナイト組織であるため、伸びが低く成形性に劣るという問題点があった。
このように優れた延性を確保可能な組織と、優れた曲げ性および穴拡げ性確保可能な組織が異なることから、これら特性の両立が求められていた。
このような問題点に対し、高強度と同時に高成形性を有する鋼板として、残留オーステナイトのマルテンサイト変態を利用したTRIP(TRansformation Induced Plasticity)鋼が提案され、近年用途が拡大しつつある。
しかしながら、この鋼は、成形時のマルテンサイト変態を利用して、優れた成形性を確保していることから、成形性確保のためには、多量の残留オーステナイトが必要であり、その確保のためには、多量のSi添加が必要である。その結果、溶融亜鉛めっきの濡れ性が悪いという問題点、あるいは、合金化反応が進まないことから、溶融めっき鋼板や合金化溶融亜鉛めっき鋼板が製造できないという問題点があった。
しかしながら、この鋼板では、熱処理後の酸洗、及び、めっきラインの通過は、大幅な工程増加を招くこととなり、コスト高を招くことから望ましくない。
一方、残留オーステナイトを含む熱延鋼板を酸洗後、冷延を行うことなく、溶融めっきを施した鋼板が提案されている(特許文献3)。
しかしながら、この鋼板においても、冷延工程を経ないことから、板厚が薄い鋼板の製造は難しいという問題点があった。
これに対し、鋼板中に含まれるSiをAlで置換することで、優れた延性とめっき性を両立した鋼板が提案されている(特許文献5、6)。
しかしながら、この鋼板においても、第二相を硬質組織とし、穴拡げ性と成形性の両立を図ろうとした場合、SiをAlで置換することは、主相と硬質第二相の硬度差低減には寄与しないことから、穴拡げ性はあまり向上しない。加えて、この鋼板は、SiをAlで代替することでめっき性を改善したものであり、Siを多量に含む鋼板のめっき性を改善したものではない。
この鋼板は、最終熱処理前に鋼板表層に含まれるSiやMnを酸化物とすることで、鋼板表層に含まれる固溶SiやMn含有量を低減し、めっき前の熱処理時に酸化物形成可能なSiやMnを低減したものであり、あたかも、SiやMnを含まない鋼板であるかのようなめっき性を有している。
中村 展行、占部 俊明、細谷 佳弘、梅津 亨、「超高強度冷延鋼板の伸びフランジ成形性に及ぼす組織の影響(CAMP−ISIJ)」、日本鉄鋼協会、2000年3月発行、第13巻、第3号、391頁 清水 哲雄、安原 英子、古君 修、森田 正彦、「伸びフランジ性に優れた自動車ホイール用高強度熱延鋼板(CAMP−ISIJ)」、日本鉄鋼協会、2000年3月発行、第13巻、第3号、411頁
更には、連続溶融めっきライン中の雰囲気が、SiやMnが酸化可能な雰囲気であることから、焼鈍時間が長くなった場合、あるいは、焼鈍温度が高い場合には、鋼板内部に含まれるSiやMnが表層に拡散して酸化物を形成してしまい、めっき性の確保が難しくなるという問題点があった。加えて、酸洗時に除去可能な酸化物は、鋼板表層に形成した酸化物であり、粒内に存在している内部酸化物の除去は難しい。その結果、冷延のような強加工を施す場合、鋼板表層に分布した酸化物が亀裂形成の起点となり、冷延中あるいはその後の熱処理ラインを通板する際に、板破断を招く虞があるという問題点があった。
また、めっき性に関しては、熱処理中の炉内の雰囲気をある範囲に制御することで、Siを多量に含む鋼であっても、めっき性を確保することが可能であることを見出した。
さらに、これらを同時に行うことで、成形性と穴拡げ性に優れためっき鋼板の製造が可能となった。
本発明は、上記の知見に基づいてなされたものであり、その要旨とするところは以下の通りである。
前記鋼板と前記溶融亜鉛めっき層との界面から5μm以内の前記鋼板内の結晶粒界及び結晶粒内、前記溶融亜鉛めっき層内のいずれか一方、または双方に、Siを含む酸化物を平均含有率0.01〜10質量%にて含有してなることを特徴とする成形性と穴拡げ性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
(3) さらに、質量%で、Nb:0.005〜0.3%、Ti:0.005〜0.3%の1種または2種を含有してなることを特徴とする(1)または(2)に記載の成形性と穴拡げ性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
(4) さらに、質量%で、B:0.0001〜0.1%を含有してなることを特徴とする(1)ないし(3)のいずれかに記載の成形性と穴拡げ性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
(6) 前記Siを含む酸化物は、SiO2、FeSiO3、Fe2SiO4、MnSiO3、Mn2SiO4の群から選択される1種または2種以上であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項記載の成形性と穴拡げ性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
H2を1〜60体積%含有し、残部をN2、H2O、O2および不可避的不純物からからなる雰囲気とし、この雰囲気中の水分圧PH2Oと水素分圧PH2を下記式
−3≦log(PH2O/PH2)≦−0.5
を満足するように制御することを特徴とする成形性と穴拡げ性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
H2を1〜60体積%含有し、残部をN2、H2O、O2および不可避的不純物からなり、かつ、水分圧PH2Oと水素分圧PH2を下記式
−3≦log(PH2O/PH2)≦−0.5
を満足するように制御する雰囲気下にて、
750℃以上かつ900℃以下で焼鈍し、次いで、650℃まで0.1〜200℃/秒で冷却し、650℃〜500℃間を平均冷却速度3〜200℃/秒にて冷却して(亜鉛めっき浴温度−40)℃〜(亜鉛めっき浴温度+50)℃間の温度とし、その後、亜鉛めっき浴に浸漬することを特徴とする成形性と穴拡げ性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
H2を1〜60体積%含有し、残部をN2、H2O、O2および不可避的不純物からなり、かつ、水分圧PH2Oと水素分圧PH2を下記式
−3≦log(PH2O/PH2)≦−0.5
を満足するように制御する雰囲気下にて、
750℃以上かつ900℃以下で焼鈍し、次いで、650℃まで0.1〜200℃/秒で冷却し、650℃〜500℃間を平均冷却速度3〜200℃/秒にて冷却して(亜鉛めっき浴温度−40)℃〜(亜鉛めっき浴温度+50)℃間の温度とし、次いで、亜鉛めっき浴に浸漬し、次いで、460℃以上の温度にて合金化処理を施し、その後、室温まで冷却することを特徴とする成形性と穴拡げ性に優れた高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
なお、この形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために詳細に説明するものであるから、特に指定の無い限り、本発明を限定するものではない。
質量%で、C:0.05〜0.25%未満、Si:1.0〜2.0%、Mn:1.1〜1.9%、O:0.006%以下、P:0.04%以下、S:0.01%以下、Al:0.05%以下、N:0.01%以下を含有し、残部が鉄及び不可避的不純物からなり、ミクロ組織が、体積分率で主相としてフェライトを50%以上含有し、オーステナイトを3〜50%未満含有し、残部組織がベイナイトまたはマルテンサイトからなる鋼板の表面に、Feを15質量%以下含有し、残部がZn,Alおよび不可避的不純物からなる溶融亜鉛めっき層を有する溶融亜鉛めっき鋼板において、
前記鋼板と前記溶融亜鉛めっき層との界面から5μm以内の前記鋼板内の結晶粒界及び結晶粒内、前記溶融亜鉛めっき層内のいずれか一方、または双方に、Siを含む酸化物を平均含有率0.01〜10質量%にて含有したものである。
一方、穴拡げ性に関しては、鋼中に含まれるO量を低減することが極めて重要である。同時に、Si量を1.0〜2.0質量%とすることで、更なる穴拡げ性と成形性の向上を図ることができる。
また、めっき性に関しては、めっき浴通板前の雰囲気を所定の範囲内とすることで、Siを多量に含有する鋼板であっても、めっき不良が生じる虞の無いめっき層を鋼板上に形成することができる。
Cは、鋼板の強度を上昇させることができる元素である。しかしながら、その含有量が0.05%未満であると、590MPa以上の引張強度と加工性を両立させることが難しくなり、一方、その含有量が0.25%以上となると、スポット溶接性の確保が困難となる。そこで、含有量の範囲を0.05〜0.25%未満に限定した。
Siは、強化元素であり、鋼板の強度を上昇させることに有効である。特に、フェライトを強化することから、第二相である残留オーステナイトとの硬度差を低減することで、穴拡げや曲げ加工時のフェライトと第二相との界面でのマイクロボイドの形成を抑制し、穴拡げ性を向上させる。しかしながら、その含有量が1.0%未満であると、穴拡げ性向上の効果が得難くなり、一方、その含有量が2.0%を超えると、加工性が低下する。そこで、含有量の範囲を1.0〜2.0%の範囲に限定した。
Oは、酸化物を形成し、曲げ性や穴拡げ性を劣化させることから、添加量を抑える必要がある。特に、酸化物は介在物として存在する場合が多く、打抜き端面、あるいは、切断面に存在すると、端面に切り欠き状の傷や粗大なディンプルを形成することから、穴拡げ時や強加工時に、応力集中を招き、また、亀裂形成の起点ともなり、大幅な穴拡げ性あるいは曲げ性の劣化をもたらす。
ただし、本鋼板は鋼板表層、あるいは、めっき層中のいずれか一方、あるいは、両方に酸化物を含むことから、表層のO含有量は鋼板内部に比較して高くなる。しかしながら、これら酸化物は、鋼中に存在する介在物に比較して少ないことから、端面への切り欠き状の傷や粗大なディンプル形成の原因とはならず、したがって、穴拡げ性を劣化させることはない。
Sは、溶接性ならびに鋳造時および熱延時の製造性に悪影響を及ぼす。このことから、含有量の上限値を0.01%とした。Sの下限値は特に定めないが、0.0001%未満とすることは、経済的に不利であることから、この値を下限値とすることが好ましい。また、Sは、Mnと結びついて粗大なMnSを形成し、穴拡げ性を低下させるので、穴拡げ性向上のためには、出来るだけ少なくする必要がある。
Nは、粗大な窒化物を形成し、曲げ性や穴拡げ性を劣化させることから、添加量を抑える必要がある。これは、Nの含有量が0.01%を超えると、この傾向が顕著となることから、含有量の範囲を0.01%以下とした。加えて、溶接時のブローホール発生の原因になることから少ない方が良い。下限は、特に定めることなく本発明の効果は発揮されるが、Nの含有量を0.0005%未満とすることは、製造コストの大幅な増加を招くことから、これが実質的な下限である。
さらに、質量%で、Cr:0.05〜1.0%、Ni:0.05〜1.0%、Cu:0.05〜1.0%を含有してなることが好ましい。
Crは、強化元素であるとともに焼入れ性の向上に重要である。しかしながら、含有量が0.05%未満では、これらの効果が得られないため、下限値を0.05%とした。一方、含有量が1%を越えると、製造時および熱延時の製造性に悪影響を及ぼすため、上限値を1%とした。
Cuは、強化元素であるとともに焼入れ性の向上に重要である。しかしながら、含有量が0.05%未満では、これらの効果が得られないため、下限値を0.05%とした。一方、含有量が1%を越えると、製造時および熱延時の製造性に悪影響を及ぼすため、上限値を1%とした。加えて、濡れ性の向上や合金化反応の促進をもたらすことから添加しても良い。
さらに、質量%で、Nb:0.005〜0.3%、Ti:0.005〜0.3%の1種または2種を含有してなることが好ましい。
Nbは、強化元素である。析出物強化、フェライト結晶粒の成長抑制による細粒強化および再結晶の抑制を通じた転位強化にて、鋼板の強度上昇に寄与する。ここで、含有量が0.005%未満では、これらの効果が得られないため、下限値を0.005%とした。一方、含有量が0.05%を越えると、炭窒化物の析出が多くなり成形性が劣化するため、上限値を0.05%とした。
Tiは、強化元素である。析出物強化、フェライト結晶粒の成長抑制による細粒強化および再結晶の抑制を通じた転位強化にて、鋼板の強度上昇に寄与する。ここで、含有量が0.005%未満では、これらの効果が得られないため、下限値を0.005%とした。一方、含有量が0.05%を越えると、炭窒化物の析出が多くなり成形性が劣化するため、上限値を0.05%とした。
さらに、質量%で、B:0.0001〜0.1%を含有してなることが好ましい。
Bは、0.0001質量%以上の添加で粒界の強化や鋼材の強度化に有効であるが、その含有量が0.0045%を超えると、その効果が飽和するばかりでなく、熱延時の製造製を低下させることから、その上限を0.0045%とした。
さらに、質量%で、Ca:0.0005〜0.01%、Mg:0.0005〜0.01%、La:0.0005〜0.01%、Ce:0.0005〜0.01%、Y:0.0005〜0.01%の群から選択される1種または2種以上を含有してなることが好ましい。
また、これらCa、Mg、La、Ce、Yから選ばれる1種または2種以上の含有量の合計は、0.0005〜0.04%が好ましい。
Ca、Mg、La、Ce及びYは、脱酸に用いる元素であり、1種または2種以上を合計で0.0005%以上含有することが好ましい。しかしながら、含有量が合計で0.04%を超えると、成形加工性の悪化の原因となる。そのため、含有量を合計で0.0005〜0.04%とした。
特に、優れた延性を確保するためには、主相をフェライトとし、かつ、第二相として体積分率で3%以上の残留オーステナイトを含む必要がある。
なお、フェライト相の形態としては、ポリゴナルフェライトの他に、アシキラーフェライト、回復した未再結晶フェライトを含むものとする。主相をフェライトとしたのは、軟質なフェライトにて延性を確保するためである。第二相として、残留オーステナイトを含むことで、高強度化と延性の向上が同時に達成される。
ここで、体積分率(貴社の提案書では「面積率」となっております。以下同)が3%未満では、その効果が得難いことから、その下限を3%とした。ベイナイト組織は、残留オーステナイトの安定化に活用することから、不可避的に含有する。更なる高強度化のために、マルテンサイトを含有しても良い。
なお、回復した未再結晶フェライトとラスベイナイト組織の分離は、FESEM−EBSP法の結晶方位マッピングにより行い、粒内で連続的に方位が変化しているフェライト相あるいは回復して微細なセル構造を有しているフェライト相については、未再結晶フェライト相と判断する。各20視野以上の観察を行い、ポイントカウント法や画像解析により各組織の体積分率を求めることが出来る。
延性に関しては、具体的には、引張最大強度(TS)(MPa)×引張試験の全伸び(El)(%)で21000(MPa×%)以上を有するものを、延性に優れているものと定義する。
また、穴拡げ性に関しては、具体的には、5回の穴拡げ試験を行い、その平均値を穴拡げ率とし、TS(MPa)×穴拡げ率(λ)(%)で35000(MPa×%)以上を有するものを、穴拡げ性に優れているものと定義する。
このSiを含む酸化物の含有量を0.01〜10質量%とすることで、濡れ性とめっき密着性が向上する。
また、めっき層と鋼板との界面から5μm以内の鋼板内としたのは、界面から5μmを越えた鋼板内に内部酸化物を形成させたとしても、その効果が飽和するばかりでなく、その鋼板内に過度に発達した内部酸化物を形成させるためには長時間を要し、生産性に劣るからである。そこで、上限を5μm以内とした。なお、5μmを超えて鋼板内部に内部酸化物を発達させたとしても、本発明の効果である優れためっき性は発揮される。
Siを含有する酸化物の含有率の測定は、Siを含有する酸化物の質量%が測定できればどのような方法でも構わないが、Siを含有する酸化物を含有する層を酸で溶解し、Siを含有する酸化物を分離させた後、質量を測定する方法が確実である。また、Siを含有する酸化物の内部酸化物を含有する鋼層の厚みの測定も特に規定しないが、鋼板の断面を、光学顕微鏡や走査型電子顕微鏡(SEM)により観察する方法が確実である。
このSiを含有する酸化物としては、特に限定する必要はないが、SiO2、FeSiO3、Fe2SiO4、MnSiO3、Mn2SiO4の群から選択される1種または2種以上であることが好ましい。
ただし、SiとMnを複合で含む酸化物が存在する場合に合金化の促進が著しいことから、MnSiO3、Mn2SiO4のいずれか、または双方を含有することが望ましい。
また、上記のSiを含有する酸化物は、他の原子を含む複合酸化物であったり、欠陥を多く含む場合があるが、元素分析及び構造同定からもっとも近いものを見出して判別した。
このめっき層は、Feを15質量%以下含有し、残部がZn,Alおよび不可避的不純物からなるめっき層である。
ここで、上記のめっき層に、スポット溶接性や塗装性が望まれる場合には、合金化処理によってこれらの特性を高めることができる。具体的には、Znメッキ浴に浸漬した後、合金化処理を施すことで、めっき層中にFeが取り込まれ、塗装性やスポット溶接性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板を得ることができる。
ここで、合金化処理後のFe量が7質量%未満では、スポット溶接性が不十分となる。一方、Fe量が15質量%を超えると、めっき層自体の密着性を損ない、加工の際めっき層が破壊・脱落し金型に付着することで、成形時の疵の原因となる。したがって、合金化処理を行う場合のめっき層中Fe量の範囲は7〜15質量%とする。
一方、合金化処理を行わない場合、めっき層中のFe量が7質量%以下であっても、合金化により得られるスポット溶接を除く効果である耐食性と成形性や穴拡げ性は良好である。
なお、本発明におけるめっき鋼板とは、亜鉛めっき鋼板のほか、Alめっき鋼板や各種めっき鋼板を含む。また、亜鉛めっき鋼板についても、溶融亜鉛めっき鋼板に加え、合金化溶融亜鉛めっき鋼板を含む。また、めっき層中には、純亜鉛に加え、Fe、Al、Mg、Mn、Si、Cr、Ni、Cuなどを含有しても構わない。
Siを多量に含有する鋼であっても、連続めっきラインの炉内の雰囲気を、
H2を1〜60体積%含有し、残部をN2、H2O、O2および不可避的不純物からなり、かつ、水分圧PH2Oと水素分圧PH2を下記式
−3≦log(PH2O/PH2)≦−0.5
を満足するように制御する雰囲気とすることで、濡れ性の向上や合金化反応の促進が可能である。
ここで、雰囲気中のH2の濃度を1〜60体積%としたのは、H2の濃度が60体積%を超えると、コスト高を招くことから好ましくなく、また、H2の濃度が1体積%未満であると、鋼板に含まれるFeが酸化する虞があり、したがって、濡れ性やめっき密着性を低下させる虞があるからである。
H2の濃度を60体積%超とすることは、経済的に好ましくないことから、これを上限とする。以上の観点から、雰囲気中のH2の濃度の範囲を、1〜60体積%とした。
−3≦log(PH2O/PH2)≦−0.5
を満足するように制御することで、Siを多量に含む鋼であっても、めっき性が確保される。ここで、log(PH2O/PH2)の下限を−3としたのは、−3未満では、鋼板表面にSiを含む酸化物が形成される割合が多くなり、その結果、濡れ性やめっき密着性が低下する。したがって、下限を−3とした。一方、上限を−0.5としたのは、その効果が飽和するためである。
なお、炉内の雰囲気を制御する方法として、本発明では、水分圧と水素分圧の比を制御したが、例えば、二酸化炭素と一酸化炭素の分圧を制御する方法、または、二酸化窒素と一酸化窒素の分圧を制御する方法、あるいは、炉内に直接酸素を吹き込む方法等でも、同様の効果は得られる。また、炉内の水分圧と水素分圧の比は、炉内に水蒸気を吹き込むことで容易に調整することができ、しかも簡便である。
さらには、めっき前の焼鈍については、「脱脂酸洗後、非酸化雰囲気にて加熱し、H2及びN2を含む還元雰囲気にて焼鈍後、めっき浴温度近傍まで冷却し、めっき浴に侵漬」というゼンジマー法、「焼鈍時の雰囲気を調節し、最初、鋼板表面を酸化させた後、その後還元することによりめっき前の清浄化を行った後にめっき浴に侵漬」という全還元炉方式、あるいは、「鋼板を脱脂酸洗した後、塩化アンモニウムなどを用いてフラックス処理を行って、めっき浴に侵漬」というフラックス法等があるが、いずれの条件で処理を行ったとしても本発明の効果は発揮できる。
熱間圧延スラブ(熱延スラブ)における加熱温度は、特に定めることなく、本発明の効果は発揮されるが、加熱温度を過度に高温にすることは、経済上好ましくないことから、加熱温度の上限は1300℃未満とすることが望ましい。また、過度に低温で加熱すると、仕上げ圧延温度をAr3温度以上とすることが困難となることから、下限温度を1100℃とすることが望ましい。
仕上げ圧延温度は、オーステナイト+フェライトの2相域になると、鋼板内の組織不均一性が大きくなり、焼鈍後の成形性が劣化するので、Ar3温度以上が望ましい。
なお、Ar3温度は次の式により求めることができる。
Ar3=901−325×C+33×Si−92×(Mn+Ni/2+Cr/2+Cu/2+Mo/2)
酸洗した熱延鋼板を圧下率40〜70%で冷間圧延して、連続溶融亜鉛めっきラインを通板する。圧下率が40%未満では、形状を平坦に保つことが困難となり、また、最終製品の延性が劣悪となるので、これを下限とする。一方、70%を越える冷延は、冷延荷重が大きくなりすぎてしまい冷延が困難となることから、これを上限とする。
この圧下率のより好ましい範囲は45〜65%である。圧延パスの回数、各パス毎の圧下率については特に規定することなく本発明の効果は発揮される。
めっきラインを通板する場合の加熱速度は、特に定めることなく本発明の効果は発揮される。0.5℃/秒未満の加熱速度は、生産性が大きく損なわれ、好ましくないので、これが下限となる。一方、加熱速度を100℃超とすることは、過度の設備投資を招き、経済的に好ましくないので、これが実質的な上限となる。
この熱処理は、最高加熱温度にて等温保持を行っても良く、傾斜加熱を行い最高加熱温度に到達した後、直ちに、冷却しても良い。いずれの熱処理によっても本発明の効果は発揮される。
650〜500℃での冷却速度は、3〜200℃/秒とする必要がある。冷却速度が小さすぎると、冷却過程にてオーステナイトがパーライト組織へと変態し、3%以上のオーステナイト体積率の確保が困難となる。そこで、下限を3℃/秒とした。一方、冷却速度を大きくしたとしても、材質上なんら問題はないが、過度に冷却速度を上げることは、製造コスト高を招くこととなる。そこで、上限を200℃/秒とした。冷却方法については、ロール冷却、空冷、水冷およびこれらを併用したいずれの方法でも構わない。
浴浸漬板温度が(亜鉛めっき浴温度−40)℃を下回ると、めっき浴浸漬進入時の抜熱が大きく、溶融亜鉛の一部が凝固してしまいめっき外観を劣化させる場合がある。そこで、下限を(亜鉛めっき浴温度−40)℃とする。ただし、浸漬前の板温度が(亜鉛めっき浴温度−40)℃を下回っても、めっき浴浸漬前に再加熱を行い、板温度を(亜鉛めっき浴温度−40)℃以上としてめっき浴に浸漬させても良い。また、めっき浴浸漬温度が(亜鉛めっき浴温度+50)℃を超えると、めっき浴温度上昇に伴う操業上の問題を誘発する。また、めっき浴は、純亜鉛に加え、Fe、Al、Mg、Mn、Si、Crなどを含有しても構わない。
スキンパスは、インラインで行っても良いし、オフラインで行っても良い。また、一度に目的の圧下率のスキンパスを行っても良いし、数回に分けて行っても構わない。
ここで、有効Al濃度を0.07〜0.110質量%に限定した理由は、有効Al濃度が0.07質量%よりも低い場合には、めっき層と鋼板との界面に脆いΓ層が厚く形成されてしまい、加工時のめっき密着性が劣るからであり、一方、有効Al濃度が0.110質量%よりも高い場合には、合金化が遅く、生産性に劣るからである。
また、本発明の成形性と穴拡げ性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板の素材は、通常の製鉄工程である精錬、製鋼、鋳造、熱延、冷延工程を経て製造されることを原則とするが、その一部あるいは全部を省略して製造されるものでも、本発明に係わる条件を満足する限り、本発明の効果を得ることができる。
表1に示す成分を有するスラブを、1200℃に加熱し、仕上げ熱延温度890℃にて熱間圧延を行い、水冷帯にて水冷の後、表2及び表3に示す温度で巻き取り処理を行った。次いで、これらの熱延板を酸洗した後、厚み3mmの熱延板を1.2mmまで冷延を行い、冷延板とした。その後、これらの冷延板に表2に示す条件で連続合金化溶融亜鉛めっき設備にて、熱処理と溶融亜鉛めっき処理を施した。
ここでは、焼鈍温度から650℃までを平均冷却速度1℃/秒にて冷却し、その後、650℃−460℃間を平均冷却速度3℃/秒にて冷却した。その後、亜鉛めっき浴に浸漬し、その後室温まで冷却した。
一部の鋼板については、亜鉛めっき浴に浸漬後、各条件にて合金化処理を行い、室温まで冷却した。その際の目付け量としては、両面とも約50g/m2とした。最後に、得られた鋼板について0.4%の圧下率でスキンパス圧延を行った。
引張試験は、1.2mm厚の鋼板から圧延方向と直角方向にJIS5号試験片を採取し、引張特性を評価した。
ここでは、強度(TS)−全伸び(El)のバランス(TS×El)が21000(MPa・%)を超えるものを、成形性に優れた高強度鋼板とした。
穴拡げ性は、直径10mmの円形穴を、クリアランスが12.5%となる条件にて打ち抜き、かえりがダイ側となるようにし、次いで、60°円錐ポンチにて成形し、穴拡がり率λ(%)により評価した。各条件とも、5回の穴拡げ試験を実施し、その平均値を穴拡がり率とし、TS(MPa)×穴拡げ率(λ)(%)で35000(MPa×%)以上のものを穴拡げ性に優れているとした。
○:不めっきなし
△:不めっき若干あり
×:不めっき多数あり
合金化反応は下記のように評価した。
○:表面外観に合金化ムラなし
△:表面外観に合金化ムラ若干あり
×:表面外観に合金化ムラ多い
パウダリング性の評価は、引き抜き試験を行ったサンプルに接着用テープ(セロハンテープ)を貼って、はがし、接着用テープに付着しためっきの剥離の程度を目視で観察し、めっき層が全く剥離しないものを「○」(合格)、めっきが剥離したものを「×」(不合格)とした。
測定した引張特性、穴拡げ率、めっき性、合金化反応性、パウダリング性を表4〜表9に示す。
一方、Oを0.006質量%超含む鋼板では、測定値が大きくばらつく場合があり、穴拡げ性の平均値は大きく低下した。
Claims (10)
- 質量%で、C:0.05〜0.25%未満、Si:1.0〜2.0%、Mn:1.1〜1.9%、O:0.006%以下、P:0.04%以下、S:0.01%以下、Al:0.05%以下、N:0.01%以下を含有し、残部が鉄及び不可避的不純物からなり、ミクロ組織が、体積分率で主相としてフェライトを50%以上含有し、オーステナイトを3〜50%未満含有し、残部組織がベイナイトまたはマルテンサイトからなる鋼板の表面に、Feを15質量%以下含有し、残部がZn,Alおよび不可避的不純物からなる溶融亜鉛めっき層を有する溶融亜鉛めっき鋼板において、
前記鋼板と前記溶融亜鉛めっき層との界面から5μm以内の前記鋼板内の結晶粒界及び結晶粒内、前記溶融亜鉛めっき層内のいずれか一方、または双方に、Siを含む酸化物を平均含有率0.01〜10質量%にて含有してなることを特徴とする成形性と穴拡げ性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板。 - さらに、質量%で、Cr:0.05〜1.0%、Ni:0.05〜1.0%、Cu:0.05〜1.0%を含有してなることを特徴とする請求項1記載の成形性と穴拡げ性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
- さらに、質量%で、Nb:0.005〜0.3%、Ti:0.005〜0.3%の1種または2種を含有してなることを特徴とする請求項1または2記載の成形性と穴拡げ性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
- さらに、質量%で、B:0.0001〜0.1%を含有してなることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項記載の成形性と穴拡げ性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
- さらに、質量%で、Ca:0.0005〜0.01%、Mg:0.0005〜0.01%、La:0.0005〜0.01%、Ce:0.0005〜0.01%、Y:0.0005〜0.01%の群から選択される1種または2種以上を含有してなることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項記載の成形性と穴拡げ性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
- 前記Siを含む酸化物は、SiO2、FeSiO3、Fe2SiO4、MnSiO3、Mn2SiO4の群から選択される1種または2種以上であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項記載の成形性と穴拡げ性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
- 請求項1ないし6のいずれか1項記載の溶融亜鉛めっき層を、Feを7〜15質量%含有し、残部がZn,Alおよび不可避的不純物からなり、かつ、合金化処理が施された合金化溶融亜鉛めっき層としたことを特徴とする成形性と穴拡げ性に優れた高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板。
- 請求項1ないし5のいずれか1項記載の化学成分からなる鋼板に溶融亜鉛めっきを施す際の雰囲気を、
H2を1〜60体積%含有し、残部をN2、H2O、O2および不可避的不純物からからなる雰囲気とし、この雰囲気中の水分圧PH2Oと水素分圧PH2を下記式
−3≦log(PH2O/PH2)≦−0.5
を満足するように制御することを特徴とする成形性と穴拡げ性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。 - 請求項1ないし5のいずれか1項記載の化学成分からなる鋳造スラブを直接または一旦冷却した後1200℃以上に加熱し、次いで、Ar3変態点以上の温度にて熱間圧延を施し、次いで、630℃以下の温度域にて巻き取り、次いで、圧下率40〜70%の冷延を施し、その後、溶融亜鉛めっきを施す高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法であって、
H2を1〜60体積%含有し、残部をN2、H2O、O2および不可避的不純物からなり、かつ、水分圧PH2Oと水素分圧PH2を下記式
−3≦log(PH2O/PH2)≦−0.5
を満足するように制御する雰囲気下にて、
750℃以上かつ900℃以下で焼鈍し、次いで、650℃まで0.1〜200℃/秒で冷却し、650℃〜500℃間を平均冷却速度3〜200℃/秒にて冷却して(亜鉛めっき浴温度−40)℃〜(亜鉛めっき浴温度+50)℃間の温度とし、その後、亜鉛めっき浴に浸漬することを特徴とする成形性と穴拡げ性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。 - 請求項1ないし5のいずれか1項記載の化学成分からなる鋳造スラブを直接または一旦冷却した後1200℃以上に加熱し、次いで、Ar3変態点以上の温度にて熱間圧延を施し、次いで、630℃以下の温度域にて巻き取り、次いで、圧下率40〜70%の冷延を施し、その後、溶融亜鉛めっき及び合金化処理を施す高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法であって、
H2を1〜60体積%含有し、残部をN2、H2O、O2および不可避的不純物からなり、かつ、水分圧PH2Oと水素分圧PH2を下記式
−3≦log(PH2O/PH2)≦−0.5
を満足するように制御する雰囲気下にて、
750℃以上かつ900℃以下で焼鈍し、次いで、650℃まで0.1〜200℃/秒で冷却し、650℃〜500℃間を平均冷却速度3〜200℃/秒にて冷却して(亜鉛めっき浴温度−40)℃〜(亜鉛めっき浴温度+50)℃間の温度とし、次いで、亜鉛めっき浴に浸漬し、次いで、460℃以上の温度にて合金化処理を施し、その後、室温まで冷却することを特徴とする成形性と穴拡げ性に優れた高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
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