JP2009299136A - 伸びフランジ性と疲労特性に優れた高強度鋼板およびその溶鋼の溶製方法 - Google Patents

伸びフランジ性と疲労特性に優れた高強度鋼板およびその溶鋼の溶製方法 Download PDF

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Abstract

【課題】伸びフランジ性と疲労特性に優れた高強度熱延鋼板を提供する。
【解決手段】C:0.10%超、かつ0.20%以下、Si:0.08〜1.5質量%、Mn:1.0〜3.0質量%、P:0.05質量%以下、S:0.0005質量%以上、N:0.0005〜0.01質量%、酸可溶Al:0.01質量%以下、酸可溶Ti:0.008質量%未満、CeもしくはLaの1種または2種の合計:0.0005〜0.04質量%、さらに質量ベースで、(Ce+La)/酸可溶Al≧0.15、かつ、(Ce+La)/Sが0.7〜50で、残部が鉄および不可避的不純物からなる鋼板であり、その鋼板中に存在する円相当直径2μm以下の介在物の個数密度が、15個/mm以上であることを特徴とする伸びフランジ性と疲労特性に優れた高強度鋼板。
【選択図】なし

Description

本発明は、自動車用足回り部材の素材として好適な、伸びフランジ性と疲労特性に優れた高強度熱延鋼板およびその溶鋼の溶製方法に関するものである。
自動車の安全性向上と環境保全につながる燃費向上の観点から自動車用熱延鋼板の高強度軽量化に対する要求が高まっている。自動車用部品の中でも特に足回り系と呼ばれるフレーム類やアーム類等の質量は、車体全体の質量に占める割合が高いため、こうした部位に用いられる素材を高強度化することによって薄肉化することにより、その軽量化を実現することが可能となる。また、この足回り系に使用される材料は、走行中の振動に対する耐久性の観点から高い疲労特性が要求される。
しかし、高強度化、耐疲労性に伴って穴拡げ性は延性と同様に低下する傾向を示し、複雑な形状をしている自動車の足回り系等への高強度鋼板の適用にあたっては、その穴拡げ性が重要な検討課題となる。
このため、機械的強度特性と、疲労特性や穴拡げ性(加工性)を両立させることを目的とした幾つかの鋼板が提案されている。例えば、特許文献1にはフェライト相とマルテンサイト相の複合組織鋼板(以降、「DP鋼板」と記載する場合がある。)中に微細なCuの析出または固溶体を分散させた鋼板が提案されている。この特許文献1に示す技術においては、固溶しているCuもしくはCu単独で構成される粒子サイズが2nm以下のCu析出物が疲労特性向上に非常に有効であり、かつ加工性も損なわないことを見出して、各種成分の組成比を限定している。
こうしたDP鋼板は、強度と延性のバランスや疲労特性には優れるものの、穴拡げ試験で評価される伸びフランジ性は依然として劣ることが知られている。その理由の一つは、DP鋼板は軟質なフェライト相と硬質なマルテンサイト相の複合体であるため、穴拡げ加工時に両相の境界部が変形に追随できず破断の起点になり易いからであると考えられる。
これに対して疲労特性のみならず、最近のホイールや足廻り部材の材料に要求される厳しい伸びフランジ性の要求を満たした高強度熱延鋼板が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。この特許文献2の開示技術においては、できるだけ低C化することにより主相をベイナイト組織とするとともに、固溶強化または析出強化したフェライト組織を適切な体積比率で含有させ、これらフェライトとベイナイトの硬度差を小さくし、更に粗大な炭化物の生成を回避すること等を要旨としている。
また、鋳片中に存在するMnS系の粗大な介在物を微細な球状介在物としてのMnSとして鋼板中に分散させることにより、疲労特性を劣化させずに伸びフランジ性に優れた高強度鋼板が提案されている(例えば、特許文献3参照。)。この特許文献3の開示技術においては、Alを実質的に添加することなく、Ce、Laの添加による脱酸で生成した微細で硬質なCe酸化物、La酸化物、セリュウムオキシサルファイド、ランタンオキシサルファイド上に微細なMnSを析出させ、圧延時に延伸変形しないため、割れ発生の起点や亀裂伝播の経路となり難くし、耐疲労性等の向上につながること等を技術的特徴としている。
特開平11−199973号公報 特開2001−200331号公報 特開2007−146280号公報
ところで、上記特許文献2に開示されている様な、鋼板組織をベイナイト相主体とし、粗大な炭化物の生成を抑制した高強度熱延鋼板は、確かに優れた伸びフランジ性を示すものの、Cuを含有したDP鋼板に比べてその疲労特性は必ずしも優れているとは言えない。 また、粗大な炭化物の生成を抑制しただけでは厳しい穴拡げ加工を行った場合に亀裂の発生を防止することができない。本発明者らの研究によれば、これらの原因は、鋼板中のMnSを主体とする延伸した硫化物系介在物の存在にあることが分かった。繰り返し変形を受けると表層またはその近傍に存在する延伸した粗大なMnS系介在物の周辺に内部欠陥が発生し、亀裂として伝播することによって疲労特性を劣化させると共に、やはり延伸した粗大なMnS系介在物は穴拡げ加工時の割れ発生の起点となり易いためである。
このため、鋼中のMnS系介在物をできる限り延伸させず微細球状化することが望ましい。
しかしながら、Mnは、CやSiとともに材料の高強度化に有効に寄与する元素であるところ、高強度鋼板では強度確保のためMnの濃度を高く設定するのが一般的であり、さらに二次精錬工程で脱Sの重処理を実施しなければS濃度も50ppm以上は含まれてしまう。このため、鋳片中にはMnSが存在するのが通常である。鋳片が熱間圧延および冷間圧延されると、MnSは変形し易いため、延伸したMnS系介在物となり、これが疲労特性と伸びフランジ性(穴拡げ加工性)を低下させる原因となる。
このような特許文献2の開示技術に対して、特許文献3の開示技術は、鋳片中に微細なMnSとして析出させ、さらに圧延時に変形を受けず、割れ発生の起点となり難い微細球状介在物として鋼板中に分散させるため、フランジ性と疲労特性に優れる熱延鋼板を製造することが可能となる。
しかしながら、上記特許文献3に開示されているように、実質的にAlを添加することなく、Ce、Laの添加による脱酸のみで、MnS系介在物を制御しようとすると、脱酸に必要なCe、Laの添加量が非常に多くなり、しかも、Al脱酸よりも、鋼中の酸素ポテンシャルが高くなるため、Sや、他の合金添加元素の成分調整にバラツキを生み、得られる溶鋼中の成分が不安定になるという問題が生じる場合があり、さらなる改善が望まれていた。
そこで、本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、Al脱酸とCe、Laの添加による脱酸を併用することで、成分調整のバラツキ問題をなくし、かつ粗大なアルミナクラスターを生成させることなく、鋳片中に微細な介在物上にMnSを析出させ、さらに圧延時に変形を受けず、割れ発生の起点となり難い微細球状介在物として鋼板中に分散させることにより、伸びフランジ性と疲労特性に優れた高強度鋼板およびその溶鋼の溶製方法を提供することにある。
上述の如き問題点を解決するために、本発明者は、Al脱酸を行うことで、溶鋼の成分調整の安定化を図りつつ、粗大なアルミナ介在物の生成を抑制し、さらに鋳片中に微細介在物上にMnSを析出させ、圧延時に変形を受けず、割れ発生の起点となり難い微細球状介在物として鋼板中に分散させる方法、および疲労特性を劣化させない添加元素の解明、添加元素の添加方法の解明を中心に鋭意研究を進めた。
その結果、Al脱酸を行いつつ、Ce、Laの添加を行い、かつ成分範囲として、質量ベースで(Ce+La)/酸可溶Al比、(Ce+La)/S比を制御することで、粗大なアルミナクラスターの生成を抑制でき、生成した微細で硬質なCe酸化物、La酸化物、セリュウムオキシサルファイド、ランタンオキシサルファイド上にMnSが析出し、圧延時にもこの析出したMnSの変形が起こり難いため、鋼板中には延伸した粗大なMnSが著しく減少し、繰り返し変形時や穴拡げ加工時において、これらのMnSが析出した微細介在物(以降、「MnS系介在物」と記載する場合がある。)が割れ発生の起点や亀裂伝播の経路となり難くなり、これが上述の如き耐疲労性等の向上につながることを解明した。
本発に係る伸びフランジ性と疲労特性に優れた高強度鋼板の要旨は、以下の通りである。
(1)質量%で、C:0.03〜0.20%、Si:0.08〜1.5%、Mn:0.5〜3.0%、P:0.05%以下、S:0.0005%以上、N:0.0005〜0.01%、酸可溶Al:0.01%超、酸可溶Ti:0.008%未満、CeもしくはLaの1種または2種の合計:0.0015〜0.04%、さらに、質量ベースで、(Ce+La)/酸可溶Al≧0.15、かつ、(Ce+La)/Sが0.7〜50で、残部が鉄および不可避的不純物からなる鋼板であり、その鋼板中に存在する円相当直径2μm以下の介在物の個数密度が、15個/mm以上であることを特徴とする伸びフランジ性と疲労特性に優れた高強度鋼板。
(2)質量%で、C:0.03〜0.20%、Si:0.08〜1.5%、Mn:0.5〜3.0%、P:0.05%以下、S:0.0005%以上、N:0.0005〜0.01%、酸可溶Al:0.01%超、酸可溶Ti:0.008%未満、CeもしくはLaの1種または2種の合計:0.0015〜0.04%、さらに、質量ベースで、(Ce+La)/酸可溶Al≧0.15、かつ、(Ce+La)/Sが0.7〜50で、残部が鉄および不可避的不純物からなる鋼板であり、その鋼板中に存在する円相当直径1μm以上の介在物で、かつ、長径/短径が5以上の延伸介在物の個数割合が20%以下であることを特徴とする伸びフランジ性と疲労特性に優れた高強度鋼板。
(3)質量%で、C:0.03〜0.20%、Si:0.08〜1.5%、Mn:0.5〜3.0%、P:0.05%以下、S:0.0005%以上、N:0.0005〜0.01%、酸可溶Al:0.01%超、酸可溶Ti:0.008%未満、CeもしくはLaの1種または2種の合計:0.0015〜0.04%、さらに、質量ベースで、(Ce+La)/酸可溶Al≧0.15、かつ、(Ce+La)/Sが0.7〜50であり、残部が鉄および不可避的不純物からなる鋼板であり、その鋼板中にはCeもしくはLaの1種または2種からなる酸化物またはオキシサルファイドにMnSが析出した介在物を個数割合で10%以上含むことを特徴とする伸びフランジ性と疲労特性に優れた高強度鋼板。
(4)質量%で、C:0.03〜0.20%、Si:0.08〜1.5%、Mn:0.5〜3.0%、P:0.05%以下、S:0.0005%以上、N:0.0005〜0.01%、酸可溶Al:0.01%超、酸可溶Ti:0.008%未満、CeもしくはLaの1種または2種の合計:0.0015〜0.04%、さらに、質量ベースで、(Ce+La)/酸可溶Al≧0.15、かつ、(Ce+La)/Sが0.7〜50で、残部が鉄および不可避的不純物からなる鋼板であり、その鋼板中に存在する円相当直径1μm以上の介在物で、かつ、長径/短径が5以上の延伸介在物の体積個数密度が1.0×10個/mm以下であることを特徴とする伸びフランジ性と疲労特性に優れた高強度鋼板。
(5)質量%で、C:0.03〜0.20%、Si:0.08〜1.5%、Mn:0.5〜3.0%、P:0.05%以下、S:0.0005%以上、N:0.0005〜0.01%、酸可溶Al:0.01%超、酸可溶Ti:0.008%未満、CeもしくはLaの1種または2種の合計:0.0015〜0.04%、さらに、質量ベースで、(Ce+La)/酸可溶Al≧0.15、かつ、(Ce+La)/Sが0.7〜50で、残部が鉄および不可避的不純物からなる鋼板であり、その鋼板中にはCeもしくはLaの1種または2種からなる酸化物またはオキシサルファイドにMnSが析出した介在物の体積個数密度が1.0×10個/mm以上であることを特徴とする伸びフランジ性と疲労特性に優れた高強度鋼板。
(6)質量%で、C:0.03〜0.20%、Si:0.08〜1.5%、Mn:0.5〜3.0%、P:0.05%以下、S:0.0005%以上、N:0.0005〜0.01%、酸可溶Al:0.01%超、酸可溶Ti:0.008%未満、CeもしくはLaの1種または2種の合計:0.0015〜0.04%、さらに、質量ベースで、(Ce+La)/酸可溶Al≧0.15、かつ、(Ce+La)/Sが0.7〜50で、残部が鉄および不可避的不純物からなる鋼板であり、その鋼板中に存在する円相当直径1μm以上の介在物で、かつ、長径/短径5以上の延伸介在物の平均円相当直径が10μm以下であることを特徴とする伸びフランジ性と疲労特性に優れた高強度鋼板。
(7)質量%で、C:0.03〜0.20%、Si:0.08〜1.5%、Mn:0.5〜3.0%、P:0.05%以下、S:0.0005%以上、N:0.0005〜0.01%、酸可溶Al:0.01%超、酸可溶Ti:0.008%未満、CeもしくはLaの1種または2種の合計:0.0015〜0.04%、さらに、質量ベースで、(Ce+La)/酸可溶Al≧0.15、かつ、(Ce+La)/Sが0.7〜50で、残部が鉄および不可避的不純物からなる鋼板であり、その鋼板中にはCeもしくはLaの1種または2種からなる酸化物またはオキシサルファイドにMnSが析出した介在物が存在し、該介在物中に平均組成でCeもしくはLaの1種または2種の合計を0.5〜50質量%含有することを特徴とする伸びフランジ性と疲労特性に優れた高強度鋼鈑。
(8)質量%で、Nb:0.01〜0.10%、V:0.01〜0.05%のいずれか1種または2種含有していることを特徴とする(1)〜(7)のいずれかに記載の伸びフランジ性と疲労特性に優れた高強度鋼板。
(9)質量%で、Cr:0.01〜0.6%、Mo:0.01〜0.4%、B:0.0003〜0.003%のいずれか1種または2種以上含有していることを特徴とする(1)〜(8)のいずれかに記載の伸びフランジ性と疲労特性に優れた高強度鋼板。
(10)質量%で、Ca:0.0001〜0.004%Zr:0.001〜0.01%のいずれか1種または2種含有していることを特徴とする(1)〜(9)のいずれかに記載の伸びフランジ性と疲労特性に優れた高強度鋼板。
(11)製鋼における精錬工程において、質量%で、Pが0.05%以下、Sが0.0005%以上に処理された溶鋼に、Cを0.03%〜0.20%、Siを0.08〜1.5%、Mnを0.5〜3.0%、Nを0.0005〜0.01%となる様に添加もしくは調整し、その後、Alを酸可溶Alで0.01%超となるように添加し、さらにその後、CeもしくはLaの1種または2種を添加して、CeもしくはLaの1種または2種の合計を0.0015〜0.04%とする方法であって、質量ベースで、(Ce+La)/酸可溶Al≧0.15、かつ、(Ce+La)/Sが0.7〜50であることを特徴とする(1)〜(7)のいずれかに記載の伸びフランジ性と疲労特性に優れた高強度鋼板用の溶鋼の溶製方法。
(12)前記精錬工程においてCeもしくはLaの1種または2種を添加する前に、さらに、質量%で、Nbを0.01〜0.10%、Vを0.01〜0.05%のいずれか1種または2種添加することを特徴とする(11)に記載の伸びフランジ性と疲労特性に優れた高強度鋼板用の溶鋼の溶製方法。
(13)前記精錬工程においてCeもしくはLaの1種または2種を添加する前に、さらに、質量%で、Crを0.01〜0.6%、Moを0.01〜0.4%、Bを0.0003〜0.003%のいずれか1種または2種以上となるように添加することを特徴とする(11)または(12)に記載の伸びフランジ性と疲労特性に優れた高強度鋼板用の溶鋼の溶製方法。
(14)前記精錬工程においてCeもしくはLaの1種または2種を添加する前に、さらに、質量%で、Caを0.001〜0.004%、Zrを0.001〜0.01%のいずれか1種または2種となるように添加することを特徴とする(11)〜(13)のいずれかに記載の伸びフランジ性と疲労特性に優れた高強度鋼板用の溶鋼の溶製方法。
上述した構成からなる本発明に係る伸びフランジ性と疲労特性に優れた高強度鋼板では、Al脱酸とCe、Laの添加による脱酸が併用されていることで溶鋼の成分調整の安定化が図られており、粗大なアルミナ介在物の生成が抑制されており、鋳片中に微細なMnS系介在物として析出されていることで圧延時に変形を受けず、割れ発生の起点となり難い微細球状介在物として鋼板中に分散されているため、伸びフランジ性と疲労特性を向上させることができる。
また、上述した構成からなる本発明に係る伸びフランジ性と疲労特性に優れた高強度鋼板の溶鋼の溶製方法では、Al脱酸とCe、Laの添加による脱酸を併用することで溶鋼の成分調整の安定化を図りつつ、粗大なアルミナ介在物の生成を抑制でき、鋳片中に微細なMnS系介在物として析出させることで圧延時に変形を受けず、割れ発生の起点となり難い微細球状介在物として鋼板中に分散させることができ、伸びフランジ性と疲労特性に優れた高強度熱延鋼板を得ることができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態として、伸びフランジ性と疲労特性に優れた高強度鋼板について、詳細に説明をする。以下、組成における質量%は、単に%と記載する。
先ず、本発明を完成するに至った実験について説明する。
本発明者は、C:0.15%、Si:0.4%、Mn:1.4%、P:0.02%以下、S:0.005%、N:0.003%を含有し残部がFeである溶鋼に対して様々な元素を用いて脱酸を行い、鋼塊を製造した。得られた鋼塊を熱間圧延して3mmの熱延鋼板とした。これら製造した熱延鋼板を穴拡げ試験および疲労試験に供すると共に、鋼板中の介在物個数密度、形態および平均組成を調査した。
まず、Alで殆ど脱酸することなく、Siを添加した後、少なくともCe、Laを添加して脱酸した鋼板について伸びフランジ性及び疲労特性を調査したところ、これらの各特性が最も優れることを確認することができた。その理由は、Ce、Laの添加による脱酸により生成した微細で硬質なCe酸化物、La酸化物、セリュウムオキシサルファイド、ランタンオキシサルファイド上にMnSが析出する。この析出したMnSは、割れ発生の起点となり難い微細球状介在物として構成され圧延時においても変形が起こり難いため、疲労特性等を劣化させる原因となる粗大なMnS系介在物が鋼板中に発生するのを極力抑えることが可能となる。その結果、繰り返し変形時や穴拡げ加工時において、これらの微細なMnS系介在物が割れ発生の起点や亀裂伝播の経路となり難くなり、これが上述の如き耐疲労性等の向上につながるためであると考えられる。
なお、Ce酸化物、La酸化物、セリュウムオキシサルファイドおよびランタンオキシサルファイドが微細化する理由は、最初にSi脱酸で生成したSiO系介在物を後から添加したCe、Laが還元分解して微細なCe酸化物、La酸化物、セリュウムオキシサルファイドおよびランタンオキシサルファイドを形成すること、さらに生成したCe酸化物、La酸化物、セリュウムオキシサルファイドおよびランタンオキシサルファイド自体と溶鋼との界面エネルギーが低いため生成後の凝集合体も抑制されるためである。
この様に、Alで殆ど脱酸しない場合、非常に良好な材質特性が得られたが、その代わりにCe、Laで脱酸することになり、所望の脱酸を実現するためにはこれらCe、Laの投入量を増加させる必要が生じる。しかし、Ce、Laで脱酸する場合は、Al脱酸の場合に比べて酸素ポテンシャルが高くなるため、溶鋼中の成分調整において、目標とする成分組成に対するばらつきが大きくなり、所望の化学成分を得ることが困難になるという問題が生じ得ることがわかった。
従って、本発明者らは、引き続き、Al脱酸を行いながら、Ce、Laの組成を変化させつつ脱酸を行い、鋼塊を製造した。得られた鋼塊を熱間圧延して3mmの熱延鋼板とした。これら製造した熱延鋼板を穴拡げ試験および疲労試験に供すると共に、鋼板中の介在物個数密度、形態および平均組成を調査した。
このような実験を通じて、Siを添加した後、Alで脱酸し、その後、Ce、Laの1種または2種を添加して脱酸した溶鋼において、質量ベースで、所定の(Ce+La)/酸可溶Al比、かつ、(Ce+La)/S比が得られている場合、急激に溶鋼中の酸素ポテンシャルが低下し、生成するAl濃度が低くできるため、Alで殆ど脱酸することなく製造した鋼板と同様に、伸びフランジ性と疲労特性に優れる鋼板が得られることが分かった。
その理由は、以下の通りと考えられる。
すなわち、Siを添加した際にSiO介在物が生成するが、その後Alを添加することによりSiO介在物はSiに還元される。また、AlはSiO介在物を還元するとともに、溶鋼中の溶存酸素も脱酸して、Al系介在物を生成し、一部のAl系介在物は浮上除去され、残りのAl系介在物は溶鋼中に残る。その後に添加したCe、Laにより、溶鋼中のAl系介在物は、還元分解されて微細なCe酸化物、La酸化物、セリュウムオキシサルファイドおよびランタンオキシサルファイドを形成するため、Ce、Laの添加による脱酸により、若干Alが残るものの、大部分は微細で硬質なCe酸化物、La酸化物、セリュウムオキシサルファイド、ランタンオキシサルファイドが生成したものと考えられる。
従って、Al脱酸を上述した脱酸方法に基づいて適切に行わせることにより、Al脱酸を殆ど行わない場合と同様に、Ce、Laの添加による脱酸により生成した微細で硬質なCe酸化物、La酸化物、セリュウムオキシサルファイド上にMnSを析出させることができ、圧延時にもこの析出したMnSの変形を抑制することができるため、鋼板中には延伸した粗大なMnSを著しく減少させることにより疲労特性等を向上できるという効果が得られることに加えて、Al脱酸により溶鋼の酸素ポテンシャルを低下できることにより、成分組成のばらつきを小さくできることを新たに知見した。
これら実験的検討から得られた知見に基づいて、本発明者らは、以下に説明するように、鋼板の化学成分条件の検討を行い、本発明を完成させるに至った。
以下、本発明において化学成分を限定した理由について説明をする。
C:0.03〜0.20%
Cは、鋼の焼き入れ性と強度を制御する最も基本的な元素であり、焼入れ硬化層の硬さおよび深さを高めて疲労強度の向上に対して有効に寄与する。即ち、このCは、鋼板の強度を確保するために必須の元素であり、所望の高強度・高疲労強度鋼板を得るための残留オーステナイトや低温変態相を生成するためには、本発明では少なくとも0.03%以上が必要である。しかし、このCが過剰に含まれ0.20%を超えると、加工性ならびに溶接性が劣化する。このため、必要な強度を達成しつつ、加工性・溶接性を確保するために、本発明においては、Cの濃度を0.20%以下とする。
Si:0.08〜1.5%
Siは主要な脱酸元素のひとつである。また、Siは、焼入れ加熱時にオーステナイトの核生成サイト数を増加させ、オーステナイトの粒成長を抑制するとともに、焼入れ硬化層の粒径を微細化させる機能を担う。このSiは、炭化物生成を抑制し、炭化物による粒界強度の低下を抑制する。さらに、このSiは、ベイナイト組織の生成に対しても有効であり、材料全体の強度確保の観点において重要な役割を担う。この様な効果を発現させるためには、Siを0.08%以上添加する必要があるため、本発明においては、Siの下限を0.08%とした。これに対して、Siの濃度が高すぎると、Al脱酸を行っているものの、やはり介在物中のSiO2濃度が高くなって大型介在物が生成し易くなり、また靭延性が極端に悪くなり、表面脱炭や表面疵が増加するため疲労特性が却って悪くなる。これに加えて、Siを過剰に添加すると溶接性や延性に悪影響を及ぼす。このため、本発明においては、Siの上限を1.5%とした。
Mn:0.5〜3.0%
Mnは、製綱段階での脱酸に有用な元素であり、C、Siとともに鋼板の高強度化に有効な元素である。このような効果を得るためには、このMnを0.5%以上は含有させる必要がある。しかしながら、Mnを、3.0%を超えて含有させるとMnの偏析や固溶強化の増大により延性が低下する。また、溶接性や母材靭性も劣化するのでこのMnの上限を3.0%とする。
P:0.05%以下
Pは、Fe原子よりも小さな置換型固溶強化元素として作用する点において有効である。しかし、このP濃度が0.05%を超えると、オーステナイトの粒界に偏析し、粒界強度を低下させることにより、ねじり疲労強度を低下させ、加工性の劣化を引き起こす原因にもなりえるため、上限を0.05%とする。また固溶強化の必要がなければPを添加する必要はなく、Pの下限値は0%を含むものとする。
S:0.0005%以上
Sは、不純物として偏析して、SはMnSの粗大な延伸介在物を形成して伸びフランジ性を劣化させるため、極力低濃度であることが望ましい。従来は、伸びフランジ性を確保すべく、Sの濃度を極低硫化させる必要があった。
しかし、本発明では微細で硬質なCe酸化物、La酸化物、セリュウムオキシサルファイド、ランタンオキシサルファイド上にMnSを析出させ、圧延時にも変形が起こり難く、介在物の延伸を防止しているため、Sの濃度の上限値は、後述の通り、CeもしくはLaの1種または2種の合計量との関係で規定される。
また、S濃度を0.0005%未満に低減するためには、二次精錬での強脱硫処理が必ず必要となってくる。またこれに伴って、S濃度が0.0005%未満に至る極低硫鋼を得るためには、脱硫処理コストが高くなり過ぎることからS濃度の下限値は0.0005%とする。
そして、本発明ではMnSをCe酸化物、La酸化物、セリュウムオキシサルファイド、ランタンオキシサルファイドで形態制御するため、Sの濃度が高くても、それに応じた量のCeもしくはLaの1種または2種を添加することで、材質に悪影響を及ぼすことを防止できる。すなわち、Sの濃度がある程度高くても、これに応じたCe又はLaの添加量を調整することにより、実質的な脱硫効果が得られ、極低硫鋼と同様の材質が得られる。換言すれば、このS濃度は、Ce、Laとの合計量との間で適切に調整することにより、その上限についての自由度を高くすることが可能となる。したがって、本発明では、極低硫鋼を得るための二次精錬での溶鋼脱硫を行う必要がなく、省略することも可能となり、製造プロセスの簡略化、またこれに伴う脱硫処理コストの低減を実現することが可能となる。
N:0.0005〜0.01%
Nは、溶鋼処理中に空気中の窒素が取り込まれることから、鋼中に不可避的に混入する元素である。Nは、Al、Ti等と窒化物を形成して母材組織の細粒化を促進する。しかしながら、このNは0.01%を超えて含有すると、微量Alや微量Tiであっても粗大な析出物を生成し、伸びフランジ性を劣化させる。このため、本発明においては、Nの濃度の上限を0.01%とする。一方、Nの濃度を0.0005%未満とするにはコストが高くなるので、工業的に実現可能な観点から0.0005%を下限とする。
酸可溶Al:0.01%超、
酸可溶Alは一般的には、その酸化物がクラスター化して粗大になり易く、伸びフランジ性や疲労特性を劣化させるため極力抑制することが望ましい。しかしながら、本発明においては、Al脱酸を行いつつも、その濃度に応じたCe、La濃度とすることにより、上述の通り、最初にAl脱酸で生成したAl系介在物について、一部のAl系介在物は浮上除去され、残りのAl系介在物は、後から添加したCe、Laが還元分解して微細な介在物を形成し、アルミナ系酸化物がクラスター化して粗大にならない領域を新たに見出した。
このため、本発明においては、従来のように実質的にAlを添加しないという制限を設ける必要もなくなり、特にこの酸可溶Alの濃度に関して自由度を高くすることが可能となる。酸可溶Alを0.01%超とすることにより、Al脱酸と、Ce、Laの添加による脱酸を併用させることが可能となり、従来のように脱酸に必要なCe、Laの添加量を必要以上に多くすることもなくなり、Ce、La脱酸による鋼中の酸素ポテンシャルの上昇の問題を解消でき、各成分元素の組成のバラツキを抑制できるという効果も享受できる。
酸可溶Alの濃度の上限値は、後述の通り、CeもしくはLaの1種または2種の合計量との関係で規定される。
また、ここでいう酸可溶Al濃度とは、酸に溶解したAlの濃度を測定したもので、溶存Alは酸に溶解し、Alは酸に溶解しないことを利用した分析方法である。ここで、酸とは、例えば塩酸1、硝酸1、水2の割合(質量比)で混合した混酸が例示できる。この様な酸を用いて、酸に可溶なAlと、酸に溶解しないAlとに分別でき、酸可溶Al濃度が測定できる。
酸可溶Ti:0.008%未満
酸可溶Tiは、鋼中のNと結びついて粗大なTiNの介在物を生成し易い。この粗大なTiNは、熱延前の加熱条件を1200℃を超える様な厳しい条件にすることで、TiNを固溶して無害化することはできるが、熱延工程の稼動状況から、例えば、稼動率が高い場合などは、必ずしも充分な加熱を行うことはできない。また、熱延工程において、充分な加熱能力のない場合も想定される。従って、いかなる熱延工程の加熱条件においても安定して製造することができるようにするためには、酸可溶Tiを極力少なくしておくことが重要である。
そこで、粗大なTiNを生成しない範囲として、実験的知見により、酸可溶Tiは0.008%未満とした。また、この酸可溶Tiの下限値は0%を含む。
ちなみに、酸可溶Ti濃度とは、酸に溶解したTiの濃度を測定したもので、溶存Tiは酸に溶解し、Ti酸化物は酸に溶解しないことを利用した分析方法である。ここで、酸とは、例えば塩酸1、硝酸1、水2の割合(質量比)で混合した混酸が例示できる。この様な酸を用いて、酸に可溶なTiと、酸に溶解しないTi酸化物とに分別でき、酸可溶Ti濃度が測定できる。
CeもしくはLaの1種または2種の合計:0.0015〜0.04%
Ce、Laは、Al脱酸により生成したAlや、Si脱酸により生成したSiOを還元し、MnSの析出サイトとなり易く、且つ硬質、微細で圧延時に変形し難いCe酸化物(例えば、Ce、CeO)、セリュウムオキシサルファイド(例えば、CeS)、La酸化物(例えば、La、LaO)、ランタンオキシサルファイド(例えば、LaS)、Ce酸化物−La酸化物、或いはセリュウムオキシサルファイド−ランタンオキシサルファイドを主相(50%以上を目安とする。)とする介在物を形成する効果を有している。
ここで、上記介在物中には、脱酸条件によりMnO、SiO、或いはAlを一部含有する場合もあるが、主相が上記酸化物であればMnSの析出サイトとして十分機能し、且つ介在物の微細・硬質化の効果も損なわれることはない。
このような介在物を得るためには、CeもしくはLaの1種または2種の合計濃度を0.0015%以上0.04%以下にする必要があることを、実験的に知見した。
CeもしくはLaの1種または2種の合計濃度が0.0015%未満ではAl介在物やSiO介在物を還元できず、0.04%超ではセリュウムオキシサルファイド、ランタンオキシサルファイドが多量に生成し、粗大な介在物となり伸びフランジ性や疲労特性を劣化させる。
また、上記で述べた本発明の鋼板中における、CeもしくはLaの1種または2種からなる酸化物またはオキシサルファイドにMnSが析出した形態の介在物の存在条件として、MnSがCeもしくはLaの1種または2種からなる酸化物またはオキシサルファイドで如何に改質されているかを捉えることをSの濃度を用いて規定できる点に着目し、鋼板の化学成分(Ce+La)/S質量比で規定し、整理することを着想した。具体的には、この質量比が小さいときには、CeもしくはLaの1種または2種からなる酸化物またはオキシサルファイドが少なく、MnSが単独で多数析出することになる。この質量比が大きくなってくると、MnSに比し、CeもしくはLaの1種または2種からなる酸化物またはオキシサルファイドが多くなってきて、これらCeもしくはLaの1種または2種からなる酸化物またはオキシサルファイドにMnSが析出した形態の介在物が多くなってくる。すなわち、MnSがCeもしくはLaの1種または2種からなる酸化物またはオキシサルファイドで改質されてくる。こうして、伸びフランジ性と疲労特性を向上させるために、CeもしくはLaの1種または2種からなる酸化物またはオキシサルファイドにMnSを析出させ、MnSの延伸を防止することに繋がる。このため、上記質量比は、これらの効果を奏するか否かを識別するためのパラメータとして整理することが可能となる。
そこで、MnS系介在物の延伸抑制に有効な化学成分比を明らかにするため、鋼板の(Ce+La)/S質量比を変化させて、介在物の形態、伸びフランジ性と疲労特性を評価した。
その結果、(Ce+La)/S質量比が0.7〜50であると、伸びフランジ性と疲労特性が共に飛躍的に向上することが判明した。(Ce+La)/S質量比が0.1未満になると、CeもしくはLaの1種または2種からなる酸化物またはオキシサルファイドにMnSが析出した形態の介在物個数割合が大きく減少するため、これに対応して、割れ発生の起点となり易いMnS系延伸介在物の個数割合が多くなり過ぎ、伸びフランジ性と疲労特性が低下する。これに対して、(Ce+La)/S質量比が0.1以上0.7未満になると、CeもしくはLaの1種または2種からなる酸化物またはオキシサルファイドにMnSが析出した形態の介在物個数割合が、上記質量比が0.1未満の場合と比較してある程度増加し、これに対応して、割れ発生の起点となり易いMnS系延伸介在物の個数割合が減少し、伸びフランジ性と疲労特性はある程度上昇するが、飛躍的に向上させるまではない。従って(Ce+La)/S質量比の下限を0.7としている。
一方、(Ce+La)/S質量比が70超になると、セリュウムオキシサルファイド、ランタンオキシサルファイドが多量に生成し、円相当直径が50μm程度以上の粗大な介在物となるため、伸びフランジ性や疲労特性を劣化させる。これに対して(Ce+La)/S質量比が50超70以下になると、セリュウムオキシサルファイド、ランタンオキシサルファイドにMnSを析出させ、伸びフランジ性と疲労特性は、上記質量比70超の場合と比較してある程度高いものが得られるが、その効果が飽和してしまいコスト的に見合わなくなる。以上の結果から、(Ce+La)/S比は0.7〜50と限定する。
一方、Siで脱酸した後、Alで脱酸し、Ce、Laの1種または2種を添加して脱酸した溶鋼から得られた本発明の鋼板中において、酸可溶Alに対するCeもしくはLaの1種または2種の最適な量との関係に着目し、鋼板の化学成分(Ce+La)/酸可溶Al質量比を通じて、上述した効果を奏するか否かを識別するためのパラメータとして整理することを着想した。
その結果、Siで脱酸した後、Alで脱酸し、その後、少なくともCe、Laを添加して脱酸した溶鋼において、質量ベースで、(Ce+La)/酸可溶Al≧0.15を満足する場合に、急激に溶鋼中の酸素ポテンシャルが低下し、生成するAl濃度が低くでき、このためAlで殆ど脱酸することなく製造した鋼板と同様に、伸びフランジ性と疲労特性に優れる鋼板が得られることを実験的に知見した。
すなわち、質量ベースで、(Ce+La)/酸可溶Al<0.15の場合は、CeもしくはLaの1種または2種を添加しても、Al添加量が多すぎて、伸びフランジ性や疲労特性を劣化させる粗大なアルミナクラスターが生成してしまうことを確認したことによる。
以下、本発明においての、選択元素について化学成分を限定した理由について説明をする。これらの元素は選択元素であり、1種だけ加えても良く、2種以上加えてもよい。
Nb、Vについて
Nb、Vは、CもしくはNと炭化物、窒化物、炭窒化物を形成して母材組織の細粒化を促進し、靭性向上に寄与する。
Nb:0.01〜0.10%
上述した複合炭化物、複合窒化物等を得るためには少なくともこのNb濃度を0.01%以上とするのが好ましい。しかし、このNb濃度が0.10%を超えて多量に含有してもかかる母材組織の細粒化の効果が飽和し、製造コストが高くなる。このため、Nb濃度は0.10%を上限とする。
V:0.01〜0.05%
上述した複合炭化物、複合窒化物等を得るためには少なくともこのV濃度を0.01%以上とするのが好ましい。しかし、このV濃度が0.05%を超えて多量に含有しても効果が飽和し、製造コストが高くなる。このため、V濃度は0.05%を上限とする。
Cr、Mo、Bは、鋼の焼き入れ性を向上させる。
Cr:0.01〜0.6%
Crは、さらに鋼板の強度を確保するために、必要に応じて含有することができ、これらの効果を得るためには0.01%以上添加することが好ましい。しかし、このCrの多量の含有はかえって強度−延性のバランスを劣化させる。そのため、0.6%を上限とする。
Mo:0.01〜0.4%
Moは、さらに鋼板の強度を確保するために、必要に応じて含有することができ、これらの効果を得るためには0.01%以上添加することが好ましい。しかし、このMo多量の含有はかえって初析フェライトの生成を抑制効果の低減につながり、強度−延性のバランスを劣化させる。そのため、0.4%を上限とする。
B:0.0003〜0.003%
Bは、さらに粒界を強化し、加工性を向上するために、必要に応じて含有することができ、これらの効果を得るためには0.0003%以上添加することが好ましい。しかし、このBを多量に含有させてもその効果は飽和し、かえって鋼の清浄性を損ない、延性を劣化させる。そのため、0.003%を上限とする。
Ca、Zrについて
Ca、Zrは、硫化物の形態制御により、粒界を強化し、加工性を向上するために、必要に応じて含有することができる。
Ca:0.0001〜0.004%
Caは、硫化物を球状化させる等、脱硫の形態制御により、粒界を強化し、加工性を向上することもでき、これらの効果を得るためにはCaの添加量を0.0001%以上とすることが好ましい。しかし、このCaを多量に含有させても効果は飽和し、かえって鋼の清浄性を損ない、延性を劣化させる。そのため、0.004%を上限とする。
Zr:0.001〜0.01%
Zrは、上述した硫化物を球状化して母材の靭性を改善する効果を得るためには0.001%以上添加することが好ましい。しかし、このZrの多量の含有はかえって鋼の清浄性を損ない、延性を劣化させる。そのため、0.01%を上限とする。
次に、本発明の鋼板中における介在物の存在条件について説明する。ここでいう鋼鈑とは、熱間圧延、或いはさらに冷間圧延を経て得られた圧延後の板を意味している。また、本発明の鋼板中における介在物の存在条件を、種々の観点から規定している。
伸びフランジ性と疲労特性に優れた鋼板を得るためは、割れ発生の起点や割れ伝播の経路となり易い延伸した粗大なMnS系介在物を鋼板中でできるだけ低減することが重要である。
そこで、本発明者は、上述の通り、Siで脱酸した後、Alで脱酸し、その後、少なくともCe、Laを添加して脱酸した鋼板で、質量ベースで、前記の(Ce+La)/酸可溶Al比、かつ、(Ce+La)/S比が得られている場合、複合脱酸により急激に溶鋼中の酸素ポテンシャルが低下するとともに、生成する介在物のAl濃度が低くなるため、Alで殆ど脱酸することなく製造した鋼板と同様に、伸びフランジ性と疲労特性に優れることを知見した。
また、Ce、Laの添加による脱酸により、若干Alを含むものの大部分を占める生成した微細で硬質なCe酸化物、La酸化物、セリュウムオキシサルファイド、ランタンオキシサルファイド上にMnSが析出し、圧延時にもこの析出したMnSの変形が起こり難いため、鋼板中には延伸した粗大なMnSが著しく減少することも併せて知見した。
そこで、質量ベースで、前記の(Ce+La)/酸可溶Al比、かつ、(Ce+La)/S比が得られている場合、円相当直径2μm以下の微細な介在物個数密度が急増し、その微細な介在物が鋼中に分散することがわかった。
この微細な介在物は、凝集しづらいため、その形状は殆どが球状あるいは紡錘状のものである。また、長径/短径(以降、「延伸割合」と記載する場合がある。)で表記すると3以下、好ましくは2以下である。
実験的には、走査型電子顕微鏡(SEM)等による観察で同定が容易であり、円相当直径2μm以下の介在物の個数密度に着目した。ちなみに、円相当直径の下限値は特に規定するものではないが、数字でカウントできる大きさとして、0.5μm程度以上の介在物を対象とすることが好適である。ここで、円相当直径とは、断面観察した介在物の長径と短径から、(長径×短径)0.5として求めたものと定義する。
メカニズムの詳細は不明であるが、これら2μm以下の微細な介在物が15個/mm以上分散しているのは、Al脱酸による溶鋼の酸素ポテンシャルの低下と、MnS系介在物の微細化の相乗効果によるものと考えられる。これにより、伸びフランジ成形時等に生じる応力集中を緩和する機構が働き、穴拡げ性を急激に向上する効果があると推察され、その結果、繰り返し変形時や穴拡げ加工時において、これらのMnS系介在物が割れ発生の起点や亀裂伝播の経路となり難くなり、かえって微細であるため応力集中の緩和に寄与し、伸びフランジ性、耐疲労特性等の向上につながっているものと考えられる。
一方、本発明者は、割れ発生の起点や割れ伝播の経路となり易い延伸した粗大なMnS系介在物を鋼板中でできるだけ低減できているかを調査した。
本発明者は、円相当径1μm未満であれば、延伸したMnSでも割れ発生起点としては無害であり、伸びフランジ性や疲労特性を劣化させないことを実験的に知見しており、また、円相当直径1μm以上の介在物は走査型電子顕微鏡(SEM)等による観察も容易であることから、鋼板における円相当直径が1μm以上の介在物を対象として、その形態および組成を調査し、延伸したMnSの分布状態を評価した。
なお、MnSの円相当直径の上限は特に規定するものではないが、現実的には1mm程度のMnSが観察される場合がある。
延伸介在物の個数割合は、SEMを用いてランダムに選んだ円相当直径1μm以上の複数個(例えば50個程度)の介在物を組成分析すると共に、介在物の長径と短径をSEM像から測定する。ここで延伸介在物を、長径/短径(延伸割合)が5以上の介在物と定義して、検出した上記延伸介在物の個数を、調査した全介在物個数(上述の例でいうと50個程度)で除すことにより、上記延伸介在物の個数割合を求めることができる。
この延伸割合を5以上とした理由は、Ce、Laを添加しない比較鋼板中の延伸割合5以上の介在物は、殆どMnSであったためである。尚、MnSの延伸割合の上限は特に規定するものではないが、現実的には延伸割合50程度のMnSが観察される場合もある。
その結果、延伸割合5以上の延伸介在物の個数割合が20%以下に形態制御された鋼板では、伸びフランジ性と疲労特性が向上することが判明した。即ち、延伸割合5以上の延伸介在物の個数割合が20%を超えると、割れ発生の起点となり易いMnS系延伸介在物として存在するため伸びフランジ性と疲労特性が低下する。また、この延伸割合5以上の延伸介在物で大きなものほど、すなわち円相当直径が大きなものほど、加工・変形時に応力・集中を受けやすいため、破壊の起点や亀裂の伝播経路になりやすく、疲労強度を急激に減少する。また、本発明においては、延伸割合5以上の延伸介在物の個数割合は20%以下とする。また、伸びフランジ性や疲労特性は延伸したMnS系介在物が少ないほど良好であるため、その延伸割合5以上の延伸介在物の個数割合の下限値は0%を含む。
ここで、円相当直径1μm以上の介在物で、かつ、延伸割合5以上の延伸介在物の個数割合の下限値が0%の意味するところは、円相当直径が1μm以上の介在物であるが延伸割合5以上のものが存在しない場合、又は延伸割合5以上の延伸介在物であっても、円相当直径がすべて1μm未満という場合である。
また、延伸介在物の最大円相当直径も、組織の結晶の平均粒径に比し小さいことが確認され、これにより、伸びフランジ性と疲労特性が飛躍的に向上できた要因と考えられる。
また、CeもしくはLaの1種または2種からなる酸化物またはオキシサルファイドにMnSが析出した介在物は、圧延時にも変形が起こり難いため、鋼板中でも延伸していない形状、すなわち、球状または紡錘状の介在物となっている。
ここで、延伸していないと判断される球状介在物とは、特に規定するものではないが、鋼鈑中の延伸割合3以下の介在物、好ましくは2以下の介在物である。これは、圧延前の鋳片段階においてCeもしくはLaの1種または2種からなる酸化物またはオキシサルファイドにMnSが析出した形態の介在物における延伸割合が3以下であったためである。また、延伸していないと判断される球状介在物は、完全に球状であれば、延伸割合が1になるため、延伸割合の下限は1である。
この介在物の個数割合の調査を延伸介在物の個数割合調査と同様の方法で実施した。その結果、CeもしくはLaの1種または2種からなる酸化物またはオキシサルファイドにMnSが析出した形態の介在物の個数割合が10%以上に析出制御された鋼板では、伸びフランジ性と疲労特性が向上することが判明した。CeもしくはLaの1種または2種からなる酸化物またはオキシサルファイドにMnSが析出した形態の介在物の個数割合が10%未満になると、これに対応して、MnS系の延伸介在物の個数割合が多くなり過ぎ、伸びフランジ性と疲労特性が低下する。このため、CeもしくはLaの1種または2種からなる酸化物またはオキシサルファイドにMnSが析出した形態の介在物の個数割合は10%以上とする。また、伸びフランジ性や疲労特性は、CeもしくはLaの1種または2種からなる酸化物またはオキシサルファイドにMnSを多数析出させた方が良好であるため、その個数割合の上限値は100%を含む。
なお、CeもしくはLaの1種または2種からなる酸化物またはオキシサルファイドにMnSが析出した形態の介在物は、圧延時にも変形が起こり難いため、その円相当直径は特に規定するものではない。但し、あまり大きすぎると割れ発生起点となることが懸念されるため、上限は50μm程度が好ましい。
一方、この介在物は、圧延時にも変形が起こり難い上に、円相当直径が1μm未満の場合は、割れ発生起点とならないことから、円相当直径の下限は特に規定するものではない。
次に、上記で述べた本発明の鋼板中における介在物の存在条件として、介在物の単位体積当たりの個数密度で規定することとした。
介在物の粒径分布は、スピード法による電解面のSEM評価で実施した。スピード法による電解面のSEM評価とは、試料片の表面を研磨後、スピード法による電解を行い、試料面を直接SEM観察することにより介在物の大きさや個数密度を評価するものである。
なお、スピード法とは、10%アセチルアセトン−1%テトラメチルアンモニュウムクロライド−メタノールを用いて試料表面を電解し、介在物を抽出する方法であるが、電解量としては試料表面の面積1cm当たり1Cを電解した。このようにして電解した表面のSEM像を画像処理して、円相当直径に対する頻度(個数)分布を求めた。この粒径の頻度分布から平均円相当直径を算出すると共に、観察した視野の面積と、電解量から求めた深さで頻度を除すことにより介在物の体積当たりの個数密度も算出した。
割れ発生の起点となり伸びフランジ性や疲労特性を劣化させる円相当直径1μm以上、延伸割合5以上の介在物の体積個数密度を評価した結果、1.0×10個/mm以下であると伸びフランジ性と疲労特性が向上することが判明した。円相当直径1μm以上、かつ、延伸割合5以上の延伸介在物の体積個数密度が1.0×10個/mmを超えると、割れ発生の起点となり易いMnS系延伸介在物の個数密度が多くなり過ぎ、伸びフランジ性と疲労特性が低下するため、円相当直径1μm以上、かつ、延伸割合5以上の延伸介在物の体積個数密度を1.0×10個/mm以下とする。また、伸びフランジ性や疲労特性は延伸したMnS系介在物が少ないほど良好であるため、円相当直径1μm以上、かつ、延伸割合5以上の延伸介在物の体積個数密度の下限値は0%を含む。
ここで、円相当直径1μm以上、かつ、延伸割合5以上の延伸介在物の体積個数密度の下限値が0%の意味するところは、上記と同様である。
また、直径1μm以上、かつ、延伸率5以上の延伸介在物の体積個数密度を1.0×10個/mm以下に形態制御された鋼板では、これに対応して、延伸していないMnS系介在物はCeもしくはLaの1種または2種からなる酸化物またはオキシサルファイドにMnSが析出した形態となり、その形状はほぼ球状介在物となっていた。
この介在物の形態としては、上記と同様に、CeもしくはLaの1種または2種からなる酸化物またはオキシサルファイドにMnSが析出していれば良く、特に規定するものではないが、CeもしくはLaの1種または2種からなる酸化物またはオキシサルファイドを核としてその周囲にMnSが析出している場合が多い。
また、球状介在物とは、特に規定するものではないが、鋼鈑中の延伸割合3以下の介在物、好ましくは2以下の介在物とする。ここで、完全に球状であれば、延伸割合が1になるため、延伸割合の下限は1である。
このような介在物の体積個数密度を調査した結果、CeもしくはLaの1種または2種からなる酸化物またはオキシサルファイドを核としてその周囲にMnSが析出した形態の介在物の体積個数密度が1.0×10個/mm以上に析出制御された鋼板では、伸びフランジ性と疲労特性が向上することが判明した。CeもしくはLaの1種または2種からなる酸化物またはオキシサルファイドにMnSが析出した形態の介在物の体積個数密度が1.0×10個/mm未満になると、これに対応して、MnS系の延伸介在物の個数割合が多くなり過ぎ、伸びフランジ性と疲労特性が低下するため、CeもしくはLaの1種または2種からなる酸化物またはオキシサルファイドにMnSが析出した形態の介在物の体積個数密度は1.0×10個/mm以上に規定する。また、伸びフランジ性や疲労強度は、CeもしくはLaの1種または2種からなる酸化物またはオキシサルファイドを核としてMnSを多数析出させた方が良好であるため、その体積個数密度の上限値は特に規定するものではない。
なお、CeもしくはLaの1種または2種からなる酸化物またはオキシサルファイドにMnSが析出した形態の介在物の円相当直径は、上記と同様に、特に規定するものではない。但し、この円相当直径があまり大きすぎると割れ発生起点となることが懸念されるため、上限は50μm程度が好ましい。
一方、この介在物の円相当直径が1μm未満の場合は、全く問題はないため、下限は特に規定するものではない。
次に、上記で述べた本発明の鋼板中における延伸介在物の存在条件として、円相当直径の上限値で規定した。具体的には、割れ発生の起点となり伸びフランジ性や疲労特性を劣化させる円相当直径1μm以上、かつ、延伸割合5以上の介在物の平均円相当直径を評価した結果、この延伸介在物の平均円相当直径が10μm以下であると、伸びフランジ性と疲労特性が向上することが分かった。これは、円相当直径1μm以上、かつ、延伸割合5以上の延伸介在物の個数割合が増加するにつれて、この延伸介在物の平均円相当直径が大きくなることに着目し、延伸介在物の平均円相当直径を指標として規定したものである。
これは、溶鋼中のMnやSの量が増加するにつれて、生成するMnSの個数が増加するとともに、生成するMnSの大きさも粗大化するものと推定される。
そこで、円相当直径1μm以上、かつ、延伸割合5以上の延伸介在物が10μmを超えて大きくなると、これに応じて、この延伸介在物の個数割合が20%を超えるため、割れ発生の起点となり易い粗大なMnS系延伸介在物の個数割合が多くなり過ぎ、伸びフランジ性と疲労特性が低下するため、円相当直径1μm以上、かつ、延伸割合5以上の延伸介在物の平均円相当直径を10μm以下とする。
なお、円相当直径1μm以上、かつ、延伸割合5以上の延伸介在物の平均円相当直径を10μm以下という規定は、円相当直径1μm以上の介在物が鋼鈑中に存在する場合であることを意味しているため、円相当直径の下限値は1μmとなる。
一方で、上記で述べた本発明の鋼板中における、CeもしくはLaの1種または2種からなる酸化物またはオキシサルファイドにMnSが析出した形態の介在物の存在条件として、MnSが析出した介在物中のCeもしくはLaの平均組成の含有量で規定した。
具体的には、上述したように、伸びフランジ性と疲労特性を向上させる上で、CeもしくはLaの1種または2種からなる酸化物またはオキシサルファイドにMnSを析出させ、MnSの延伸を防止することが重要である。
この介在物の形態としては、上記と同様に、CeもしくはLaの1種または2種からなる酸化物またはオキシサルファイドにMnSが析出していれば良く、通常はCeもしくはLaの1種または2種からなる酸化物またはオキシサルファイドを核としてその周囲にMnSが析出している。
また、球状介在物とは、特に規定するものではないが、鋼鈑中の延伸割合3以下の介在物、好ましくは2以下の介在物とする。ここで、完全に球状であれば、延伸割合が1であるため、延伸割合の下限は1である。
そこで、MnS系介在物の延伸抑制に有効な組成を明らかにするため、CeもしくはLaの1種または2種からなる酸化物またはオキシサルファイドにMnSが析出した形態の介在物の組成分析を実施した。
但し、この介在物の円相当直径が1μm以上であれば観察が容易なことから、便宜的に、円相当直径1μm以上を対象とした。但し、観察が可能であれば、円相当直径が1μm未満の介在物も含めても良い。
また、CeもしくはLaの1種または2種からなる酸化物またはオキシサルファイドにMnSが析出した形態の介在物は、延伸していないため、延伸割合はすべて3以下の介在物となっていることが確認された。従って、円相当直径1μm以上、かつ、延伸割合3以下の介在物を対象に組成分析を実施した。
その結果、円相当直径1μm以上、かつ、延伸割合3以下の介在物中に平均組成でCeもしくはLaの1種または2種の合計を0.5〜50%含有させると、伸びフランジ性と疲労特性が向上することが判明した。円相当直径1μm以上、かつ、延伸割合3以下の介在物中におけるCeもしくはLaの1種または2種の合計の平均含有率が0.5質量%未満になると、CeもしくはLaの1種または2種からなる酸化物またはオキシサルファイドにMnSが析出した形態の介在物個数割合が大きく減少するため、これに対応して、割れ発生の起点となり易いMnS系延伸介在物の個数割合が多くなり過ぎ、伸びフランジ性と疲労特性が低下する。
一方、円相当直径1μm以上、かつ、延伸割合3以下の介在物中におけるCeもしくはLaの1種または2種の合計の平均含有率が50%超になると、セリュウムオキシサルファイド、ランタンオキシサルファイドが多量に生成し、円相当直径が50μm程度以上の粗大な介在物となるため、伸びフランジ性や疲労特性を劣化させる。
次に、鋼板の組織について説明する。
本発明では、伸びフランジ性と疲労特性をMnS系介在物制御により向上させるものであり、鋼板のミクロ組織は特に限定するものではないが、優れた伸びフランジ性を得るためにはベイニティック・フェライトを主相とする組織にすることが好ましい。鋼板中のベイニティック・フェライト相の面積率は、好ましくは50%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは100%である。また、残部はベイナイト相またはポリゴナル・フェライト相を20%以上含有することができ、マルテンサイト相が含まれることは極力避けることが望ましい。
但し、優れた疲労特性を得るためには、硬質相であるマルテンサイト相を含んだ複相組織としても良い。
ちなみに、いずれの組織であっても、結晶粒径を微細化することにより、穴拡げ性と疲労特性を向上させることができるが、その際に、鋼板中に存在するMnS系介在物の最大円相当直径を、組織の粒径以下とすることで、伸びフランジ性と疲労特性を更に向上させることができる。
次に製造条件を説明する。
本発明では転炉で吹錬して脱炭した溶鋼中に、C、Si、Mn等の合金を添加し撹拌して、以下の通り、脱酸と成分調整を行う。
また、Sについては、前述の通り、精錬工程で脱硫を行わなくても良いため、脱硫工程を省略できる。但し、S≦20ppm程度の極低硫鋼を溶製するために二次精錬で溶鋼脱硫が必要な場合は、脱硫を行って、成分調整を実施することでも良い。
上記のSiを添加してから3分程度してから、Al脱酸を行い、Alとして浮上分離するために、約3分程度の浮上時間を確保することが好ましい。その後、CeもしくはLaの1種または2種を添加して、質量ベースで、(Ce+La)/酸可溶Al比≧0.15、かつ、(Ce+La)/S比を0.7〜50となる様に成分調整を行う。
この時に、Tiは実質的に添加しないこととするが、酸可溶Tiが僅かに残る程度の少量のTiを添加する程度であれば脱酸しても良く、この程度の少量添加については、実質的に添加しないことに含むこととする。その際、少量のTiにより生成するTiO,Tiに応じた約3分程度の浮上時間を確保することが好ましい。
ここで、選択元素を添加する場合は、CeもしくはLaの1種または2種を添加する前までに行い、十分撹拌し、必要に応じて選択元素の成分調整が行われた後に、CeもしくはLaの1種または2種の添加を行う。このようにして溶製された溶鋼を連続鋳造して鋳片を製造する。
連続鋳造については、通常の250mm厚み程度のスラブ連続鋳造に適用されるだけでなく、ブルームやビレット、さらにはスラブ連続鋳造機の鋳型厚みが通常より薄い、例えば150mm以下の薄スラブ連続鋳造に対して十分に適用可能である。
高強度熱延鋼板を製造するための熱延条件について述べる。
熱延前のスラブの加熱温度は、熱延が可能な温度として、1150℃以上とすることが好ましい。一方、本発明の鋼はTiを殆ど含有していないため、鋼中に炭窒化物が生成していないため、これらを固溶させる必要がない。従って、加熱温度は1200℃以下で実施できる。加熱温度が1200℃を超えても支障はないが、コスト的な観点から1200℃以下が好適である。
上記の温度範囲に加熱された後に、通常の熱間圧延を行うが、その工程の中で仕上げ圧延完了温度は鋼板の組織制御を行う場合に重要である。仕上げ圧延完了温度が、Ar3点+30℃未満では表層部の結晶粒径が粗大になり易く、疲労特性上好ましくない。一方、Ar3点+200℃超では伸びフランジ性にとって好ましくないポリゴナル・フェライト相が生成し易くなるので、上限をAr3点+200℃とすることが好ましい。
また、仕上げ圧延後の鋼板の平均の冷却速度を40℃/秒以上とし、300〜500℃の範囲まで冷却することが、ポリゴナル・フェライト相の生成を抑制し、ベイニティック・フェライト相を主体とする組織を得るために有効である。
上記の平均の冷却速度が40℃/秒未満ではポリゴナル・フェライト相が生成しやすくなり好ましくない。一方、組織制御の上では冷却速度に上限を設ける必要はないが、余りに速い冷却速度は鋼板の冷却を不均一にするおそれがあり、またそうした冷却を可能にするような設備の製造には多額の費用が必要となり、そのことで鋼板の価格上昇を招くと考えられる。このような観点から、冷却速度の上限は100℃/秒とするのが好ましい。
また、冷却停止温度が300℃より低くなると伸びフランジ性に好ましくないマルテンサイト相が生成するので、下限を300℃とする。従って、熱延コイルの巻き取り温度は伸びフランジ性を極端に悪化させるマルテンサイト相の生成を抑制するため300℃以上とすることが好ましい。
一方、500℃超ではポリゴナル・フェライト相の生成が抑制できず、またCuを含有している鋼ではフェライト相中にCuが局材的に析出して疲労特性向上効果を低下させるおそれがあるので巻き取り温度を500℃以下とすることが好ましい。従って、500℃以下で巻き取ることにより、その後の冷却過程で炭窒化物が析出し、フェライト相中の固溶C、N量を減少させ、伸びフランジ性の向上をもたらす。
以下、本発明の実施例を比較例とともに説明する。
表1に化学成分を示すスラブを表2に示す条件にて熱間圧延し、厚さ3.2mmの熱延板を得た。
Figure 2009299136
Figure 2009299136
この表1においては、鋼番号(以下、鋼番という。)1、3、5、7、9、11、13、15については、本発明に係る高強度鋼板の範囲内の組成で構成し、鋼番2、4、6、8、10、12、14、16については、質量ベースで(Ce+La)/酸可溶Al比、(Ce+La)/S比を本発明に係わる高強度鋼板の範囲から逸脱させたスラブとして構成したものである。
ちなみに、この表1において、鋼番1と鋼番2、鋼板3と鋼番4、鋼番5と鋼番6、鋼番7と鋼番8、鋼番9と鋼番10、鋼番11と鋼番12、鋼番13と鋼番14、鋼番15と鋼番16との間でそれぞれ比較をすることができるように、互いにほぼ同一組成で構成した上で、Ce+La等を互いに異ならせている。
また、この表2においては、条件Aとして、加熱温度を1200℃、仕上圧延完了温度を845℃、仕上げ圧延後の冷却速度を75℃/秒、巻き取り温度を450℃とし、条件Bとして、加熱温度を1150℃、仕上圧延完了温度を825℃、仕上げ圧延後の冷却速度を45℃/秒、巻き取り温度を450℃としている。
鋼番1と鋼番2に対しては、条件Aを、また、鋼番3と鋼番4に対しては、条件Bを、鋼番5と鋼番6に対しては、条件Aを、更に鋼番7と鋼番8に対しては、条件Bを、鋼番9と鋼番10に対しては、条件Aを、また、鋼番11と鋼番12に対しては、条件Bを、鋼番13と鋼番14に対しては、条件Aを、更に鋼番15と鋼番16に対しては、条件Bを適用するようにすることで、同一製造条件下で化学組成の影響を比較できるようにしている。
このようにして得られた鋼板の基本特性として、強度、延性、伸びフランジ性、疲労限度比を調べた。
また、鋼板中の延伸介在物の存在状態として、光学顕微鏡による観察もしくはSEMによる観察で、すべて円相当直径1μm程度以上の介在物を対象として、2μm以下の介在物の面積個数密度、延伸割合5以上の介在物については個数割合、体積個数密度、平均円相当直径を調べた。
さらに、鋼板中の延伸していない介在物の存在状態として、すべて1μm程度以上の介在物を対象として、CeもしくはLaの1種または2種からなる酸化物またはオキシサルファイドにMnSが析出した介在物の個数割合および体積個数密度と、延伸割合3以下の介在物中におけるCeもしくはLaの1種または2種の合計の含有量の平均値を調べた。
なお、1μm程度以上の介在物を対象としたのは、観察が容易であることに加えて、1μm程度未満の介在物は伸びフランジ性や疲労特性の劣化に影響しないためである。
その結果を鋼と圧延条件の組み合わせ毎に表3に示す。
Figure 2009299136
強度と延性は、圧延方向と平行に採取したJIS5号試験片の引張試験により求めた。伸びフランジ性は、150mm×150mmの鋼板の中央に開けた直径10mmの打ち抜き穴を60°の円錐パンチで押し拡げ、板厚貫通亀裂が生じた時点での穴径D(mm)を測定し、穴拡げ値λ=(D−10)/10で求めたλで評価した。また、疲労特性を表す指標として用いた疲労限度比は、JIS Z 2275に準拠した方法で求めた2×10回時間強さ(σW)を鋼板の強度(σB)で除した値(σW/σB)で評価した。
なお、試験片は同規格に規定の1号試験片であり、平行部が25mm、曲率半径Rが100mm、原板(熱延板)の両面を等しく研削した厚さ3.0mmのものを用いた。
さらに、介在物はSEM観察を行い、ランダムに選んだ円相当直径1μm以上の介在物50個について長径と短径を測定した。さらに、SEMの定量分析機能を用いて、ランダムに選んだ円相当直径1μm以上の介在物50個について組成分析を実施した。それらの結果を用いて、延伸割合5以上の介在物の個数割合、延伸割合5以上の介在物の平均円相当直径、CeもしくはLaの1種または2種からなる酸化物またはオキシサルファイドにMnSが析出した介在物の個数割合、さらに延伸割合3以下の介在物中におけるCeもしくはLaの1種または2種の合計の平均値を求めた。また、介在物の形態別体積個数密度は、スピード法により電解面のSEM評価により算出した。
表3から明らかなように、本発明の方法を適用した鋼番1、3、5、7、9、11、13、15では、CeもしくはLaの1種または2種からなる酸化物またはオキシサルファイドにMnSを析出させることにより、延伸したMnS系介在物を鋼板中で低減することができた。即ち、鋼鈑中に存在する円相当直径2μm以下の介在物の個数密度が15個/mm以上、CeもしくはLaの1種または2種からなる酸化物またはオキシサルファイドにMnSが析出した介在物の個数割合を10%以上、その介在物の体積個数密度を1.0×103個/mm3以上、鋼鈑中に存在する延伸割合3以下の介在物中のCeもしくはLaの1種または2種の合計の平均含有率を0.5%〜50%とすることにより、円相当直径1μm以上で延伸割合5以上の延伸介在物の個数割合を20%以下、その介在物の体積個数密度を1.0×104個/mm3以下、その介在物の平均円相当直径を10μm以下とすることができた。なお、いずれの鋼板の組織においても、平均結晶粒径は、本発明と比較例とはほぼ同一の平均結晶粒径であったその結果、比較鋼と比べて、本発明鋼としての鋼番1、3、5、7、9、11、13、15では、伸びフランジ性と疲労特性に優れた鋼板を得ることができた。しかし、比較鋼(鋼番2、4、6、8、10、12、14、16)では、延伸したMnS系介在物とCeもしくはLaの1種または2種からなる酸化物またはオキシサルファイドにMnSを析出させた介在物の分布状態が本発明で規定する分布状態と異なるため、鋼板加工時に延伸したMnS系介在物が割れ発生の起点となり、伸びフランジ性と疲労特性が低下していた。

Claims (14)

  1. 質量%で、
    C:0.03〜0.20%、
    Si:0.08〜1.5%、
    Mn:0.5〜3.0%、
    P:0.05%以下、
    S:0.0005%以上、
    N:0.0005〜0.01%、
    酸可溶Al:0.01%超、
    酸可溶Ti:0.008%未満、
    CeもしくはLaの1種または2種の合計:0.0015〜0.04%、
    さらに、質量ベースで、(Ce+La)/酸可溶Al≧0.15、かつ、(Ce+La)/Sが0.7〜50で、
    残部が鉄および不可避的不純物からなる鋼板であり、
    その鋼板中に存在する円相当直径2μm以下の介在物の個数密度が、15個/mm以上であることを特徴とする伸びフランジ性と疲労特性に優れた高強度鋼板。
  2. 質量%で、
    C:0.03〜0.20%、
    Si:0.08〜1.5%、
    Mn:0.5〜3.0%、
    P:0.05%以下、
    S:0.0005%以上、
    N:0.0005〜0.01%、
    酸可溶Al:0.01%超、
    酸可溶Ti:0.008%未満、
    CeもしくはLaの1種または2種の合計:0.0015〜0.04%、
    さらに、質量ベースで、(Ce+La)/酸可溶Al≧0.15、かつ、(Ce+La)/Sが0.7〜50で、
    残部が鉄および不可避的不純物からなる鋼板であり、
    その鋼板中に存在する円相当直径1μm以上の介在物で、かつ、長径/短径が5以上の延伸介在物の個数割合が20%以下であることを特徴とする伸びフランジ性と疲労特性に優れた高強度鋼板。
  3. 質量%で、
    C:0.03〜0.20%、
    Si:0.08〜1.5%、
    Mn:0.5〜3.0%、
    P:0.05%以下、
    S:0.0005%以上、
    N:0.0005〜0.01%、
    酸可溶Al:0.01%超、
    酸可溶Ti:0.008%未満、
    CeもしくはLaの1種または2種の合計:0.0015〜0.04%、
    さらに、質量ベースで、(Ce+La)/酸可溶Al≧0.15、かつ、(Ce+La)/Sが0.7〜50で、
    残部が鉄および不可避的不純物からなる鋼板であり、
    その鋼板中にはCeもしくはLaの1種または2種からなる酸化物またはオキシサルファイドにMnSが析出した介在物を個数割合で10%以上含むことを特徴とする伸びフランジ性と疲労特性に優れた高強度鋼板。
  4. 質量%で、
    C:0.03〜0.20%、
    Si:0.08〜1.5%、
    Mn:0.5〜3.0%、
    P:0.05%以下、
    S:0.0005%以上、
    N:0.0005〜0.01%、
    酸可溶Al:0.01%超、
    酸可溶Ti:0.008%未満、
    CeもしくはLaの1種または2種の合計:0.0015〜0.04%、
    さらに、質量ベースで、(Ce+La)/酸可溶Al≧0.15、かつ、(Ce+La)/Sが0.7〜50で、
    残部が鉄および不可避的不純物からなる鋼板であり、
    その鋼板中に存在する円相当直径1μm以上の介在物で、かつ、長径/短径が5以上の延伸介在物の体積個数密度が1.0×10個/mm以下であることを特徴とする伸びフランジ性と疲労特性に優れた高強度鋼板。
  5. 質量%で、
    C:0.03〜0.20%、
    Si:0.08〜1.5%、
    Mn:0.5〜3.0%、
    P:0.05%以下、
    S:0.0005%以上、
    N:0.0005〜0.01%、
    酸可溶Al:0.01%超、
    酸可溶Ti:0.008%未満、
    CeもしくはLaの1種または2種の合計:0.0015〜0.04%、
    さらに、質量ベースで、(Ce+La)/酸可溶Al≧0.15、かつ、(Ce+La)/Sが0.7〜50で、
    残部が鉄および不可避的不純物からなる鋼板であり、
    その鋼板中にはCeもしくはLaの1種または2種からなる酸化物またはオキシサルファイドにMnSが析出した介在物の体積個数密度が1.0×10個/mm以上であることを特徴とする伸びフランジ性と疲労特性に優れた高強度鋼板。
  6. 質量%で、
    C:0.03〜0.20%、
    Si:0.08〜1.5%、
    Mn:0.5〜3.0%、
    P:0.05%以下、
    S:0.0005%以上、
    N:0.0005〜0.01%、
    酸可溶Al:0.01%超、
    酸可溶Ti:0.008%未満、
    CeもしくはLaの1種または2種の合計:0.0015〜0.04%、
    さらに、質量ベースで、(Ce+La)/酸可溶Al≧0.15、かつ、(Ce+La)/Sが0.7〜50で、
    残部が鉄および不可避的不純物からなる鋼板であり、
    その鋼板中に存在する円相当直径1μm以上の介在物で、かつ、長径/短径5以上の延伸介在物の平均円相当直径が10μm以下であることを特徴とする伸びフランジ性と疲労特性に優れた高強度鋼板。
  7. 質量%で、
    C:0.03〜0.20%、
    Si:0.08〜1.5%、
    Mn:0.5〜3.0%、
    P:0.05%以下、
    S:0.0005%以上、
    N:0.0005〜0.01%、
    酸可溶Al:0.01%超、
    酸可溶Ti:0.008%未満、
    CeもしくはLaの1種または2種の合計:0.0015〜0.04%、
    さらに、質量ベースで、(Ce+La)/酸可溶Al≧0.15、かつ、(Ce+La)/Sが0.7〜50で、
    残部が鉄および不可避的不純物からなる鋼板であり、
    その鋼板中にはCeもしくはLaの1種または2種からなる酸化物またはオキシサルファイドにMnSが析出した介在物が存在し、該介在物中に平均組成でCeもしくはLaの1種または2種の合計を0.5〜50質量%含有することを特徴とする伸びフランジ性と疲労特性に優れた高強度鋼鈑。
  8. 質量%で、
    Nb:0.01〜0.10%、
    V:0.01〜0.05%、
    のいずれか1種または2種を含有していることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の伸びフランジ性と疲労特性に優れた高強度鋼板。
  9. 質量%で、
    Cr:0.01〜0.6%、
    Mo:0.01〜0.4%、
    B:0.0003〜0.003%、
    のいずれか1種または2種以上を含有していることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の伸びフランジ性と疲労特性に優れた高強度鋼板。
  10. 質量%で、
    Ca:0.0001〜0.004%、
    Zr:0.001〜0.01%、
    のいずれか1種または2種を含有していることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の伸びフランジ性と疲労特性に優れた高強度鋼板。
  11. 製鋼における精錬工程において、質量%で、Pが0.05%以下、Sが0.0005%以上に処理された溶鋼に、Cを0.03%〜0.20%、Siを0.08〜1.5%、Mnを0.5〜3.0%、Nを0.0005〜0.01%となる様に添加もしくは調整し、その後、Alを酸可溶Alで0.01%超となるように添加し、さらにその後、CeもしくはLaの1種または2種を添加して、CeもしくはLaの1種または2種の合計を0.0015〜0.04%とする方法であって、質量ベースで、(Ce+La)/酸可溶Al≧0.15、かつ、(Ce+La)/Sが0.7〜50であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の伸びフランジ性と疲労特性に優れた高強度鋼板用の溶鋼の溶製方法。
  12. 前記精錬工程においてCeもしくはLaの1種または2種を添加する前に、さらに、質量%で、Nbを0.01〜0.10%、Vを0.01〜0.05%のいずれか1種または2種となるように添加することを特徴とする請求項11に記載の伸びフランジ性と疲労特性に優れた高強度鋼板用の溶鋼の溶製方法。
  13. 前記精錬工程においてCeもしくはLaの1種または2種を添加する前に、さらに、質量%で、Crを0.01〜0.6%、Moを0.01〜0.4%、Bを0.0003〜0.003%のいずれか1種または2種以上となるように添加することを特徴とする請求項11または12に記載の伸びフランジ性と疲労特性に優れた高強度鋼板用の溶鋼の溶製方法。
  14. 前記精錬工程においてCeもしくはLaの1種または2種を添加する前に、さらに、質量%で、Caを0.001〜0.004%、Zrを0.001〜0.01%のいずれか1種または2種となるように添加することを特徴とする請求項11〜13のいずれか1項に記載の伸びフランジ性と疲労特性に優れた高強度鋼板用の溶鋼の溶製方法。
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