JP2007146280A - 伸びフランジ性と疲労特性に優れた高強度鋼板 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】C:0.03〜0.10質量%、Si:0.08〜1.5質量%、Mn:1.0〜3.0質量%、P:0.05質量%以下、S:0.002〜0.02質量%、N:0.0005〜0.01質量%、酸可溶Al:0.01質量%以下、酸可溶Ti:0.008質量%未満、CeもしくはLaの1種または2種の合計:0.0005〜0.04質量%を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなる鋼板であり、その鋼板中に存在する円相当直径1μm以上の介在物で、かつ、長径/短径が5以上の延伸介在物の個数割合が20%以下である。
【選択図】なし
Description
Cは、鋼の焼き入れ性と強度を制御する最も基本的な元素であり、焼入れ硬化層の硬さおよび深さを高めて疲労強度の向上に対して有効に寄与する。即ち、このCは、鋼板の強度を確保するために必須の元素であり、高強度鋼板を得るためには少なくとも0.03%が必要である。しかし、このCが過剰に含まれると、従来のようにTi炭化物生成によりCを固定したり、冷却条件を駆使しても、セメンタイト相が生成されてしまう。このセメンタイト相は、鋼板の加工硬化を誘起し、伸びフランジ特性の向上に好ましくない。このため、本発明においては、加工性を向上させる観点から、Cの濃度を0.10%以下とする。
Siは本発明のようにAlやTiを極力添加しない溶鋼において主要な脱酸元素となるため、本発明において極めて重要である。また、Siは、焼入れ加熱時にオーステナイトの核生成サイト数を増加させ、オーステナイトの粒成長を抑制するとともに、焼入れ硬化層の粒径を微細化させる機能を担う。このSiは、炭化物生成を抑制し、炭化物による粒界強度の低下を抑制する。さらに、このSiは、ベイナイト組織の生成に対しても有効であり、材料全体の強度確保の観点において重要な役割を担う。溶鋼中の溶存酸素濃度を低下させ、一旦SiO2系介在物を生成させるためには(このSiO2系介在物を後から添加するCe、Laで還元することにより介在物を微細化させるため)、Siを0.08%以上添加する必要がある。このため、本発明においては、Siの下限を0.08%とした。これに対して、Siの濃度が高すぎると、介在物中のSiO2濃度が高くなって大型介在物が生成し易くなり、また靭延性が極端に悪くなり、表面脱炭や表面疵が増加するため疲労特性が却って悪くなる。これに加えて、Siを過剰に添加すると溶接性や延性に悪影響を及ぼす。このため、本発明においては、Siの上限を1.5%とした。
Mnは、製綱段階での脱酸に有用な元素であり、C、Siとともに鋼板の高強度化に有効な元素である。このような効果を得るためには、このMnを1.0%以上は含有させる必要がある。しかしながら、Mnを、3.0%を超えて含有させるとMnの偏析や固溶強化の増大により延性が低下する。また、溶接性や母材靭性も劣化するのでこのMnの上限を3.0%とする。
PはFe原子よりも小さな置換型固溶強化元素として作用する点において有効であるが、オーステナイトの粒界に偏析し、粒界強度を低下させることにより、ねじり疲労強度を低下させ、加工性の劣化が懸念されるので0.05%以下とする。また固溶強化の必要がなければPを添加する必要はなく、Pの下限値は0%を含むものとする。
Sは、不純物として偏析して、SはMnSの粗大な延伸介在物を形成して伸びフランジ性を劣化させるため、極力低濃度であることが望ましい。従来は、伸びフランジ性確保すべく、Sの濃度を0.002%未満まで極低硫化させる必要があった。しかし、本発明では微細で硬質なCe酸化物、La酸化物、セリュウムオキシサルファイド、ランタンオキシサルファイド上にMnSを析出させ、圧延時にも変形が起こり難く、介在物の延伸を防止しているため、Sの濃度の上限値は特に規定しない。
Nは、溶鋼処理中に空気中の窒素が取り込まれることから、鋼中に不可避的に混入する元素である。Nは、Al、Ti等と窒化物を形成して母材組織の細粒化を促進する。しかしながら、このNを添加し過ぎると、微量Alや微量Tiであっても粗大な析出物を生成し、伸びフランジ性を劣化させる。このため、本発明においては、Nの濃度の上限を0.01%とする。一方、Nの濃度を0.0005%未満とするにはコストが高くなるので0.0005%を下限とする。
酸可溶Alはその酸化物がクラスター化して粗大になり易く、伸びフランジ性や疲労特性を劣化させるため極力抑制することが望ましい。しかしながら、予備的な脱酸材として0.01%までは用いることが許容される。これは、酸可溶Al濃度が0.01%超になると、介在物中のAl2O3含有率が50%を超え、介在物のクラスター化が起こるためである。クラスター化防止の観点から酸可溶Al濃度は低い方が良く、下限値は0%を含む。また、酸可溶Al濃度とは、酸に溶解したAlの濃度を測定したもので、溶存Alは酸に溶解し、Al2O3は酸に溶解しないことを利用した分析方法である。ここで、酸とは、例えば塩酸1、硝酸1、水2の割合(質量比)で混合した混酸が例示できる。この様な酸を用いて、酸に可溶なAlと、酸に溶解しないAl2O3とに分別でき、酸可溶Al濃度が測定できる。
酸可溶Tiもその酸化物がクラスター化して粗大になり易いこと、鋼中のNと結びついて粗大なTiNの介在物を生成し易いことから、酸可溶Tiは0.008%未満とし、下限値は0%を含む。また、酸可溶Ti濃度とは、酸に溶解したTiの濃度を測定したもので、溶存Tiは酸に溶解し、Ti酸化物は酸に溶解しないことを利用した分析方法である。ここで、酸とは、例えば塩酸1、硝酸1、水2の割合(質量比)で混合した混酸が例示できる。この様な酸を用いて、酸に可溶なTiと、酸に溶解しないTi酸化物とに分別でき、酸可溶Ti濃度が測定できる。
Ce、LaはSi脱酸により生成したSiO2を還元し、MnSの析出サイトとなり易く、且つ硬質、微細で圧延時に変形し難いCe酸化物(例えば、Ce2O3、CeO2)、セリュウムオキシサルファイド(例えば、Ce2O2S)、La酸化物(例えば、La2O3、LaO2)、ランタンオキシサルファイド(例えば、La2O2S)、Ce酸化物−La酸化物、或いはセリュウムオキシサルファイド−ランタンオキシサルファイドを主相(50%以上を目安とする。)とする介在物を形成する効果を有している。
なお、MnS系介在物の円相当直径の上限は特に規定するものではないが、現実的には1mm程度のMnS系介在物が観察される場合がある。
ここで、円相当直径1μm以上の介在物で、かつ、延伸割合5以上の延伸介在物の個数割合の下限値が0%の意味するところは、円相当直径が1μm以上の介在物であるが延伸割合5以上のものが存在しない場合、又は延伸割合5以上の延伸介在物であっても、円相当直径がすべて1μm未満という場合である。
Claims (6)
- 質量%で、
C:0.03〜0.10%、
Si:0.08〜1.5%、
Mn:1.0〜3.0%、
P:0.05%以下、
S:0.002%以上、
N:0.0005〜0.01%、
酸可溶Al:0.01%以下、
酸可溶Ti:0.008%未満、
CeもしくはLaの1種または2種の合計:0.0005〜0.04%を含有し、
残部が鉄および不可避的不純物からなる鋼板であり、
その鋼板中に存在する円相当直径1μm以上の介在物で、かつ、長径/短径が5以上の延伸介在物の個数割合が20%以下であることを特徴とする伸びフランジ性と疲労特性に優れた高強度鋼板。 - 質量%で、
C:0.03〜0.10%、
Si:0.08〜1.5%、
Mn:1.0〜3.0%、
P:0.05%以下、
S:0.002%以上、
N:0.0005〜0.01%、
酸可溶Al:0.01%以下、
酸可溶Ti:0.008%未満、
CeもしくはLaの1種または2種の合計:0.0005〜0.04%を含有し、
残部が鉄および不可避的不純物からなる鋼板であり、
その鋼板中にはCeもしくはLaの1種または2種からなる酸化物またはオキシサルファイドにMnSが析出した介在物を個数割合で10%以上含むことを特徴とする伸びフランジ性と疲労特性に優れた高強度鋼板。 - 質量%で、
C:0.03〜0.10%、
Si:0.08〜1.5%、
Mn:1.0〜3.0%、
P:0.05%以下、
S:0.002%以上、
N:0.0005〜0.01%、
酸可溶Al:0.01%以下、
酸可溶Ti:0.008%未満、
CeもしくはLaの1種または2種の合計:0.0005〜0.04%を含有し、
残部が鉄および不可避的不純物からなる鋼板であり、
その鋼板中に存在する円相当直径1μm以上の介在物で、かつ、長径/短径が5以上の延伸介在物の体積個数密度が1.0×104個/mm3以下であることを特徴とする伸びフランジ性と疲労特性に優れた高強度鋼板。 - 質量%で、
C:0.03〜0.10%、
Si:0.08〜1.5%、
Mn:1.0〜3.0%、
P:0.05%以下、
S:0.002%以上、
N:0.0005〜0.01%、
酸可溶Al:0.01%以下、
酸可溶Ti:0.008%未満、
CeもしくはLaの1種または2種の合計:0.0005〜0.04%を含有し、
残部が鉄および不可避的不純物からなる鋼板であり、
その鋼板中にはCeもしくはLaの1種または2種からなる酸化物またはオキシサルファイドにMnSが析出した介在物の体積個数密度が1.0×103個/mm3以上であることを特徴とする伸びフランジ性と疲労特性に優れた高強度鋼板。 - 質量%で、
C:0.03〜0.10%、
Si:0.08〜1.5%、
Mn:1.0〜3.0%、
P:0.05%以下、
S:0.002%以上、
N:0.0005〜0.01%、
酸可溶Al:0.01%以下、
酸可溶Ti:0.008%未満、
CeもしくはLaの1種または2種の合計:0.0005〜0.04%を含有し、
残部が鉄および不可避的不純物からなる鋼板であり、
その鋼板中に存在する円相当直径1μm以上の介在物で、かつ、長径/短径5以上の延伸介在物の平均円相当直径が10μm以下であることを特徴とする伸びフランジ性と疲労特性に優れた高強度鋼板。 - 質量%で、
C:0.03〜0.10%、
Si:0.08〜1.5%、
Mn:1.0〜3.0%、
P:0.05%以下、
S:0.002%以上、
N:0.0005〜0.01%、
酸可溶Al:0.01%以下、
酸可溶Ti:0.008%未満、
CeもしくはLaの1種または2種の合計:0.0005〜0.04%を含有し、
残部が鉄および不可避的不純物からなる鋼板であり、
その鋼板中にはCeもしくはLaの1種または2種からなる酸化物またはオキシサルファイドにMnSが析出した介在物が存在し、該介在物中に平均組成でCeもしくはLaの1種または2種の合計を0.5〜50質量%含有することを特徴とする伸びフランジ性と疲労特性に優れた高強度鋼鈑。
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