JP2007211260A - オートマチックトランスミッション部材用冷延鋼板及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】質量%で、C:0.15-0.25%,Si:0.25%以下,Mn:0.3-0.9%,P:0.03%以下,S:0.015%以下,Al:0.01-0.08%,N:0.008%以下,Cr:0.05-0.5%,Ti:0.01-0.05%,B:0.002-0.005%,残部Fe及び不可避不純物からなるスラブの熱延鋼板を、焼鈍することなく冷間圧延してなる冷延鋼板である。所望により冷間圧延の後、レベラーで鋼板の片側面が圧縮応力、他方の面が引張応力となるように残留応力の調整を行う。Cr含有により良好な焼入れ性,樹脂接着性を有する。比較的低い冷延率(≧30%)で所要の硬さ(Hv≧230)が得られ、冷延率の低減により鋼板の残留応力が軽減し、打ち抜き成形品の平坦性が向上する。平坦性を確保し難い大径サイズ,桟部の狭幅サイズに対して上記レベラーによる平坦性の改良効果は顕著である。
【選択図】なし
Description
「製鋼→連続鋳造→熱間圧延→酸洗→焼鈍→冷間圧延→調質圧延→精整」
この製造工程において、ATプレートに要求される硬さ及び表面粗度(Hv≧230,Ra≦0.4μm)を充足させるために、冷間圧延での圧下率は50%以上を要する。冷間圧延に先立って「焼鈍」を行うのは、熱延ままの鋼板では硬質のため、冷間圧延(圧下率≧50%)の安定操業を確保しがたく、また熱延鋼板の粗大なパーライト組織が冷延鋼板に持ち越されるとプレス打ち抜き性が悪く、製品ATプレートの打ち抜き面にムシレ・ザラツキ等を生じ易くなるからである。このような不具合を回避するための上記焼鈍処理(熱延鋼板の軟質化及び炭化物の球状化処理)は、バッチ方式のタイトコイル焼鈍(TCA)として行われる。
上記ATプレート用冷延鋼板の改良についてはいくつかの提案がなされている。
(1)質量%で、C:0.15〜0.25%,Si:0.25%以下,Mn:0.3〜0.9%,P:0.03%以下,S:0.015%以下,Al:0.01〜0.08%,N:0.008%以下,Cr:0.05〜0.5%,Ti:0.01〜0.05%,B:0.002〜0.005%,残部Fe及び不可避不純物からなる鋼スラブを熱間圧延し、その熱延鋼板を焼鈍処理することなく、圧下率30%以上で冷間圧延してなる冷延鋼板(請求項1)。
(3)上記1項又は2項のATプレート用冷延鋼板の冷間圧延における圧下率は、所望により30〜50%の範囲に調整される(請求項3)。
(5)上記4項のATプレート用冷延鋼板における引張残留応力(σT)と圧縮残留応力(σC)との差(σT−σC)が600N/mm2以下であるのが望ましい(請求項5)。
(7)鋼スラブを、熱延仕上げ温度:Ar3変態点以上、巻取り温度:500〜600℃で熱間圧延し、焼鈍処理することなく冷間圧延し、その冷延鋼板を調質圧延した後、レベラー加工を施すことにより、鋼板の片側の面に引張残留応力、他方の面に圧縮残留応力をもたせることを特徴とする上記4項又は5項に記載のオートマチックトランスミッション部材用冷延鋼板の製造方法(請求項7)。
Tiの添加によりTiC,Ti(C,N)等の微細析出物(大きさ:約500〜3000Å)が鋼中に形成され、熱延鋼板のフェライト組織が著しく細粒化される。熱延鋼板では、炭化物がフェライト粒界に優先的に析出するため、細粒化の効果として炭化物は均一微細に鋼中に分散し、耐摩耗性に有利な組織が形成される。またBとTiの共存により鋼中の固溶B量が増加する。これはTiNがBNよりも生成し易く、BNの生成反応が抑制されることによる。固溶Bは、鋼板の焼入れ性を高めるほか、粒界の強化作用及び熱延鋼板のフェライト組織を細粒化する作用を有し、これによりマトリックスが強化され耐摩耗性が一段と高められる。これらの効果により、ATプレート用冷延鋼板として、従来材(S35C材)並の耐摩耗性等の要求特性(Hv≧230,Ra0.4μm以下)および美麗な打抜き面性状等が確保される。
またCrは鋼中に固溶して冷延鋼板の焼入れ性を高め、レーザー焼入れ、高周波焼入れ等によるプレート外周部等の所要領域部分の焼入れ強化を可能にする。
C:0.15〜0.25%
冷延鋼板の硬度・耐摩耗性を高める点からはC量が高いほど有利であるが、0.25%を超えると、熱延鋼板の炭化物の球状化と軟質化のための焼鈍を省略することができなくなる。一方C量が低過ぎると、従来材であるS35C並の耐摩耗性を確保することが困難となるので、これを上限とする。
Siは、鋼の溶製工程における脱酸元素として添加される。そのための添加量は0.25%までで十分である。またそれを超える添加は、熱延鋼板の酸洗処理性の低下および酸洗後のスケール残存による表面欠陥の原因ともなり、ATプレートとしての表面品質を低下させるので、これを上限とする。
Mnは、鋼の熱間脆性の防止及びマトリックスの強化のために添加される。0.3%に満たないとその効果が少なく、マトリックスの強度が不足し、耐摩耗性が低くなる。増量により効果を増すが、0.9%を超えると過度に硬質化して加工性が損なわれる。
Pは不純分であり、鋼中に多量に存在すると、粒界の強度低下を招き、スラブ割れに起因するへげ疵の発生要因となり、ATプレートの表面品質を損なう。0.03%以下であれば、実質的な悪影響を生じないので、これを上限とする。
SはMnSを形成して熱間脆性を抑制する効果を有する反面、多すぎるとMnSを起点とする加工割れの原因となり、ATプレートでは打抜き加工における面性状の低下を招く。また、MnSを起点とする摩耗を生じ易くなり耐摩耗性が低下する。0.015%以下であれば、その実害は回避されるので、これを上限とする。
Alは鋼の溶製過程における脱酸剤として添加される。また鋼中のNをAlNとして固定する作用も有する。0.01%未満では脱酸作用が不足し、他方0.08%を超えると、鋼の清浄度が損なわれ、表面疵が発生し鋼板の表面品質を低下させる原因となる。
Nは不可避的に混入する元素である。含有量が多くなると、窒化物(AlN,TiN等)等の生成量が増加し、過度の硬質化を招くので、0.008%以下であることを要する。
Crは、鋼中に固溶し、一部は炭化物(析出粒子)を形成して固溶強化および析出強化の作用をなす。このマトリックス強化機能により、ATプレートに要求される硬さ(Hv≧230)を確保するのに必要な冷間圧延での圧下率(冷延率)を低く設定することが可能となる。冷延率を低くすることは、冷延鋼板の板厚中心部に生じる圧縮残留応力を低減し、プレス打ち抜き後のATプレートの平坦性を改善するのに有効である。
また、Crの固溶効果として焼入れ性が改善され、炭化物の析出効果として耐摩耗性が高められる。焼入れ性が改善されることにより、ATプレートの外周部等の所要部分のみに特に高い耐摩耗性が要求される場合にも、レーザー焼入れ、高周波焼入れ等による選択的な焼入れ強化(所謂局部焼入れ)により、硬さ調整を効果的に行うことができる。
更にCrは、プレート表面の樹脂接着剤に対する親和性を高め、クラッチ板の組み立てに必要な接着剤層の密着性(耐剥離性)の向上に奏効する。
上記効果を得るには、0.05%以上の含有を必要とする。増量により効果を増すが、過度の増量は、加工性,衝撃特性、疲労特性等の低下を付随するので、0.5%を超えてはならない。好ましくは0.3%以下、より好ましくは0.2%以下である。
Tiは一般的にはTiSを形成して熱間脆性を回避する作用を有する。更に前記したとおり、Tiは鋼中でTiCやTi(C,N)等の微細析出物を形成して熱延鋼板のフェライト組織を細粒化し、その効果として炭化物が均一微細に分散し耐摩耗性が高められる。この効果を確保するために0.01%以上の添加を必要とする。他方多量に添加すると、微細析出物の過剰生成により過度の硬質化を招くので、0.05%を上限とする。
Bは、前記のようにその多くが固溶Bを形成し、固溶Bによる焼入れ性の向上、粒界の強化作用及びフェライト組織の細粒化作用により、マトリックスを強化し、耐摩耗性を高める効果を有する。この効果を得るには少なくとも0.002%の添加が必要である。しかし0.005%を超えると、フェライト組織の過度の細粒化による硬質化をきたすので、これを上限とする。
[鋼の溶製・鋳造]
まず製鋼炉で所定の化学組成に溶製した鋼を、造塊・分塊圧延により又は連続鋳造によりスラブとし、スラブの表面手入れを適宜実施した後、熱間圧延する。連続鋳造による場合、熱鋳片(スラブ)をそのまま加熱炉に装入して熱間圧延するようにしてもよい。
熱間圧延は、常法に従って行なわれ、熱延鋼板の品質及び熱延効率等の点から、熱延仕上げ温度はAr3変態点直上に調整される。巻取りは500〜600℃の温度域で行なうのがよい。500℃未満の低温巻取りでは、結晶粒径が過度に微細化して熱延鋼板の硬質化をきたし、一方600℃を超える高温巻取りでは炭化物が凝集し易く、高耐摩耗性を得るのに必要な炭化物の均一分散の確保が困難になると共に、フェライト組織が粗大化するからである。好ましくは500〜550℃である。
熱延鋼板は、酸洗処理で表面のスケールを除去された後、冷間圧延に付される。冷間圧延における圧下率は30%以上に設定される。これは、ATプレート用冷延鋼板等として必要な硬度・表面粗さ(Hv≧230,Ra≦0.4μm)を確保するためである。
圧下率を高くするほど硬度の増加をみるが、それに伴い板厚中心部に生じる圧縮残留応力が増大し、プレス打ち抜き後のATプレートの平坦性に悪い影響を与える。特に、大径サイズ,桟部の狭幅サイズのATプレートのプレス打ち抜きを行う場合は、その影響が大きくなる。このため、50%以下に制限することが望ましい。冷間圧延後、残留応力制御のためのレベラー加工を実施する場合は、やや高い圧下率が許容されるが、この場合も約60%程度までに制限するのが操業の安定性の点から有利である。
なお、冷間圧延に使用される圧延ロールは、圧下率30%以上の冷間圧延で所要の表面粗さが確保されるように、ロールの表面粗度管理が適宜実施される。
冷延鋼板の形状修正と残留応力の緩和を目的として調質圧延を行う。その伸率は、1%以下に調整するのが望ましい。調質圧延による形状修正効果は、伸率1%でほぼ飽和し、それを超える高い伸率とすることは、鋼板を不必要に硬質化させるだけである。調質圧延は、応力緩和効果の観点から、ワークロールとして300mm以上の大径ロールを適用するのが好ましい。
本発明では、精整工程で通常行われる検査(板厚・板幅等の諸元寸法,表面疵等)のほか、所望により、プレス打ち抜き成形品(ATプレート)の平坦度の向上を目的として、冷延鋼板の板厚方向の残留応力を調整するためのレベラー加工が行われる。
冷延鋼板は、板厚方向の中央部が圧縮の残留応力、表面層が引張の残留応力という応力分布を有する。これは、冷間圧延過程で、鋼板の板厚方向中央部が表面層より大きく塑性変形を起こそうとし、表面層はその塑性変形を拘束しようとするからである。本発明者らは、この冷延鋼板の応力分布をレベラー加工で調整し、その板厚方向の残留応力分布と、プレス打ち抜きで得られるATプレートの平坦度との関係について鋭意詳細な調査を行った結果、図5に示すように、鋼板の片側の面(図では「オモテ面」)が圧縮の残留応力、他方の面(同「ウラ面」)が引張の残留応力となるように予めレベラー加工を施しておき、その圧縮応力側の面をプレス打ち抜き時の上面(ダレ側)、引張応力側の面を下面(カエリ面)としてプレス打ち抜きすることにより、プレス打ち抜き後の平坦性を良好にすることができるという知見を得た。
「板面の脱脂洗浄→粗面化処理→接着剤塗布→接着剤層乾燥(溶剤揮発)→摩擦紙接着」
上記工程中、接着剤塗布前の粗面化処理は、前記のようにプレート表面に対する接着剤層の密着力を高めるための処理である。本発明の冷延鋼板からなるフリクションプレートを使用する場合の粗面化処理は、濃度を調整された酸液(例えば20%塩酸水溶液、液温60℃)を処理液とする酸洗処理(酸液浸漬→水洗→乾燥)により達成され、この酸洗処理で樹脂接着剤層の良好な密着性(耐剥離性)が得られる。そのメカニズムの詳細は十分解明されてはいないが、前記のようにプレートの粗面化(酸液のエッチング作用による微小ピットの形成)の効果のほかに、プレート表面に樹脂との親和性の良いクロム化合物が生成することによるものと考えられる。酸洗処理の後、接着剤の塗布および乾燥(溶剤揮発)ついでホットプレート等による摩擦紙の加熱加圧接着が行われる。
転炉及び脱ガス処理装置により溶製・成分調整を行なった溶鋼を連続鋳造に付してスラブ(200mm厚)とし、下記のA工程(焼鈍省略)又はB工程(焼鈍実施)によりATプレート用冷延鋼板を得る。
A:熱延→酸洗→冷延(1段又は2段圧延)→調質圧延→精整(検査)
B:熱延→酸洗→焼鈍→冷延(1段圧延) →調質圧延→精整(検査)
表1参照。No.1〜6は発明例、No.11〜17は、C,Cr,Ti,Bのいずれかの元素の含有量(下線付記)が本発明の規定から外れている比較例、No.21〜24は従来材(S35C相当材)である。
(2.1) No.1〜6
加熱温度:1230℃,熱延仕上げ温度:860℃,巻取り温度:540℃
熱延板の板厚:2.8〜4.0mm
(2.2)No.11〜17
加熱温度:1230℃,熱延仕上げ温度:860℃,巻取り温度:540℃
熱延板の板厚:3.3〜5.1mm
(2.3) No.21〜24
加熱温度:1230℃,熱延仕上げ温度:850℃,巻取り温度:600℃
熱延板の板厚:4.0mm
No.21〜24(S35C材)において実施(No.1〜6及びNo.11〜17は焼鈍なし)。
焼鈍方式:タイトコイル焼鈍(TCA)
処理温度:700℃
処理時間:10Hr
(4.1)No.1〜6
圧下率(2段圧延の場合は合計圧下率):35〜55%
製品鋼板厚さ:1.8mm
(4.2)No.11〜17
圧下率(2段圧延の場合は合計圧下率):45〜65%
製品鋼板厚さ:1.8mm
(4.3)No.21〜24
圧下率:55%
製品鋼板厚さ:1.8mm
(5)調質圧延
調質圧延率(伸率):0.8%
ロール径:350mm
上記供試冷延鋼板について金属組織の観察および下記の試験を行った。
(1)耐摩耗性試験
大越式迅速摩耗試験機による(図1参照)。
下記条件の試験後、摩耗痕の幅(b0)を測定し、摩耗部の体積から摩耗量A(mm3)を算出する。耐摩耗性は比摩耗量[=A/(P×L) (mm3/kg・m)] で評価した。
試験環境:室温(14℃),大気中
回転円板:SK5/400Hv(焼入れ焼戻しにより調質)
円板半径(r)30mm,円板厚(B)3.0mm
摩耗距離(L):200m
負荷荷重(P):61.7N
摩耗速度(V):4m/sec
セパレートプレートをプレス打ち抜きし、打抜き端面性状を評価した。
(2.1)打抜き加工条件
プレス機:200トンメカプレス
ストローク長さ:250mm
ストローク数:25spm
クリアランス:10%(板厚1.8mm)
打抜き寸法:内径105 mm×外径127 mm
観察方法:走査型電子顕微鏡(倍率×20)により判定
観察断面:鋼板の長手方向断面
評価基準:〇…打抜き端面美麗(ムシレやクラックの発生なし)
×…打抜き端面にムシレ・クラック(1個以上)が認められる
発明例No.2の冷延鋼板を被加工材とし次の条件で行った。
(3.1)レベラー加工条件及び残留応力の測定
図8に示すように、上3段と下2段に配列したロール構成を有するレベラー(ロール径d:いずれも90mm,ロール中心間距離s:105mm)を使用。このレベラーの入り側インターメッシュと出側インターメッシュを種々の値に設定して鋼板を通板(矢符方向)することにより残留応力分布を制御した。
レベラー加工後、短冊状の測定試験片を切り出し、片側の表層より塩化第2鉄溶液でエッチングし、エッチング前後の反りの変化(曲率の変化)を測定することにより、残留応力を求めた(参考:米谷茂著「残留応力の発生と対策」養賢堂発行)。
レベラー加工後、プレス打ち抜きして得たセパレートプレートを定盤上に置き、レーザー変位計でセパレートプレートの周方向の高さ分布を測定し、その最大高さと最小高さの差を平坦度と定義した。セパレートプレートの打ち抜き直後の平坦度は、ATプレートの平坦度規格(0.15mm以下)に準じて次のように評価した。
○:平坦度≦0.15mm
×:平坦度>0.15mm
(1)金属組織
図2,図3及び図4に、発明例No.2、比較例No.17(Ti,B添加なし,Cr量不足,焼鈍省略)及び比較例No. 21(S35C相当材)のそれぞれの組織を示す。比較例No.17は粗いパーライト組織を呈しているのに対し、発明例No.2は、焼鈍を省略されているにも拘わらず、炭化物が均一微細に分散し、比較例No.21(S35C相当材)の焼鈍処理材と同等の細粒化された微細均質な組織を有することが認められた。
表2に、熱延鋼板のフェライト粒径(μm)、製品冷延鋼板の硬さ(Hv)(荷重:98N)及び表面粗度(Ra)の測定結果、並びに前記の試験結果を製造条件と共に示している。
発明例(No.1〜6)は、従来材であるS35C(No.21〜24)と同等ないしそれ以上の耐摩耗性を有し、ATプレート用冷延鋼板として要求される硬さ及び表面粗度のスペック(Hv≧230,Ra≦0.4μm)を十分に満たしている。プレス打ち抜き性も良好であり、従来材(S35C)と同様の美麗な打抜き面性状を有している。
また、発明例(No.1〜6)は、別途行った焼入れ性評価試験(プレート外周部のレーザー焼入れ)において、Cr含有量に応じて部分焼入れ強化を効果的に達成し得ることが観察された。これらの諸特性は、前記した鋼の化学組成と細粒化された均質微細な組織に基づくものである。
表3に、レベラー加工による残留応力の制御とプレス打ち抜き成形品(ATプレート)の平坦度の測定および評価結果を示す(供試材:発明例No.2の冷延鋼板)。
鋼板の表裏各面の表示として、片側の面を「ウラ面」、もう一方の面を「オモテ面」と仮称している。No.101〜103およびNo.201,No.202で使用した冷延鋼板は、レベラー加工により、ウラ面が引張の残留応力σT、オモテ面が圧縮の残留応力σCで、その応力差Δσ(=σT-σC)が600N/mm2以下となるように応力調整を施した鋼板である。
他方No.301,No.302で使用した冷延鋼板は、レベラー加工が施されているが、応力制御効果が不十分な鋼板(オモテ/ウラ面ともに圧縮残留応力)であり、No.401,No.402で使用した冷延鋼板はレベラー加工を省略した鋼板(オモテ/ウラ面とも引張残留応力)である。
他方、No.201,No.202は、上記No.101〜103と同様の応力調整された冷延鋼板を使用していながら、No.101〜103とは逆に、オモテ面(圧縮残留応力の面)をカエリ側、ウラ面(引張残留応力の面)をダレ側としてプレス打ち抜きしたために、残留応力の相殺効果がなく、得られたATプレートは平坦性に劣っている。またNo.301,No.302は、レベラーによる鋼板の応力調整効果が不十分なために、更にNo.401,No.402は鋼板のレベラー加工が省略されているために、いずれのATプレートも平坦性に劣っている。
近年の自動車の高排気量化や軽量化等の動きと関連してATプレートの大径化、抜き桟部の狭幅化が進み、その形状変化に付随して平坦性の確保が困難となっているが、本発明によれば、そのような形状変化に十分に対応でき、ATプレートの平坦度規格を十分に満たす良好な平坦性を保証することができる。
また、ATプレートの外周部等を部分的に焼入れ強化することが要求されるような場合においても、レーザー焼入れや高周波焼入れ等により、所要部分の焼入れ強化および硬度調整を効果的に達成することができ、ATプレートの有用性を高めるものである。
2:回転円板(相手材)
3:打ち抜き成形品(ATプレート)
4:金型
5:ローラー
Claims (7)
- 質量%で、C:0.15〜0.25%,Si:0.25%以下,Mn:0.3〜0.9%,P:0.03%以下,S:0.015%以下,Al:0.01〜0.08%,N:0.008%以下,Cr:0.05〜0.5%,Ti:0.01〜0.05%,B:0.002〜0.005%,残部はFe及び不可避不純物からなる鋼スラブを熱間圧延し、熱間圧延鋼板を、焼鈍処理することなく圧下率30%以上で冷間圧延してなるオートマチックトランスミッション部材用冷延鋼板。
- Cr:0.05〜0.3%である請求項1に記載のオートマチックトランスミッション部材用冷延鋼板。
- 冷間圧延における圧下率が30〜50%である請求項1又は請求項2に記載のオートマチックトランスミッション部材用冷延鋼板。
- 鋼板の片側の面は引張残留応力σTを有し、他方の面は圧縮残留応力σCを有する請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のオートマチックトランスミッション部材用冷延鋼板。
- 引張残留応力σTと圧縮残留応力σCとの差(σT−σC)が600N/mm2以下である請求項4に記載のオートマチックトランスミッション部材用冷延鋼板。
- 鋼スラブを、熱延仕上げ温度:Ar3変態点以上、巻取り温度:500〜600℃で熱間圧延し、焼鈍処理することなく、所定の圧下率で冷間圧延することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のオートマチックトランスミッション部材用冷延鋼板の製造方法。
- 鋼スラブを、熱延仕上げ温度:Ar3変態点以上、巻取り温度:500〜600℃で熱間圧延し、焼鈍処理することなく所定の圧下率で冷間圧延し、その冷延鋼板を調質圧延した後、レベラー加工を施すことにより、鋼板の片側の面に引張残留応力、他方の面に圧縮残留応力をもたせることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載のオートマチックトランスミッション部材用冷延鋼板の製造方法。
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