JP2005200712A - 残留応力を低減したatプレート用冷延鋼板及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 従来材と同等以上の耐摩耗性及び打抜き加工性を有し、打抜き材を加熱保持した際に熱歪みに伴う変形を引き起こす要因である残留応力を極力低減したATプレート用冷延鋼板を得る。
【解決手段】 C:0.15〜0.25質量%,Si:0.25質量%以下,Mn:0.3〜0.9質量%,P:0.03質量%以下,S:0.015質量%以下,Al:0.01〜0.08質量%,N:0.008質量%以下,Ti:0.01〜0.05質量%,B:0.002〜0.005質量%を含有し、残部が実質的にFeの組成をもつスラブを、熱延仕上げ温度:Ar3変態点以上,巻取り温度:500〜600℃で熱間圧延し、熱延鋼板を酸洗処理した後、焼鈍処理することなく圧下率50%以上で冷間圧延し、さらにその後、径が300mm以上のロールを使用して圧下率1%以下の軽圧下圧延を施すことにより、冷延時に生成された残留応力をキャンセルする。
【選択図】 なし
【解決手段】 C:0.15〜0.25質量%,Si:0.25質量%以下,Mn:0.3〜0.9質量%,P:0.03質量%以下,S:0.015質量%以下,Al:0.01〜0.08質量%,N:0.008質量%以下,Ti:0.01〜0.05質量%,B:0.002〜0.005質量%を含有し、残部が実質的にFeの組成をもつスラブを、熱延仕上げ温度:Ar3変態点以上,巻取り温度:500〜600℃で熱間圧延し、熱延鋼板を酸洗処理した後、焼鈍処理することなく圧下率50%以上で冷間圧延し、さらにその後、径が300mm以上のロールを使用して圧下率1%以下の軽圧下圧延を施すことにより、冷延時に生成された残留応力をキャンセルする。
【選択図】 なし
Description
本発明は、自動車のオートマチックトランスミッションの構成部材であるセパレートプレート,フリクションプレート,バッキングプレート等として好適に使用される耐摩耗性及び打抜き加工性に優れるとともに残留応力の少ない冷延鋼板及びその製造方法に関する。
自動車のオートマチックトランスミッション(AT)を構成するセパレートプレート(ドリブンプレート又はメーティングプレートとも称される)、フリクションプレート(ドライブプレート,コア−プレート又はディスクとも称される),バッキングプレート(リテーニングプレート,リアクションプレート又はエンドプレートとも称される)等の部材(以下、「ATプレート」と称する)は、鋼板をほぼ円環形状にプレス打抜きした成形品である。セパレートプレートとフリクションプレートは摩擦材を介して交互に配置され、これにバッキングプレート等を組付けられてトルクの伝達機構を構成する部材であり、その機能上、耐摩耗性は非常に重要な特性である。また、プレス打抜きされて成形されるため、打抜き性も重要な特性である。
従来、このようなATプレート用素材として、JIS G3311に規定される機械構造用鋼、主としてS35Cの冷延鋼板が使用されている。また、本出願人は、特許文献1で、打抜き加工性の優れた冷延鋼板及びその製造方法について提案した。
ところで、ATプレート用冷延鋼板は、「製鋼→連続鋳造→熱間圧延→酸洗→焼鈍→冷間圧延→脱脂→精整」の工程で製造される。
冷間圧延の前に熱延鋼板を焼鈍することが必須とされており、この焼鈍も通常タイトコイル焼鈍として実施されているために、全体としてコストアップの大きな要因となっている。このため、本出願人は、冷間圧延の前の熱延板焼鈍を省略して冷間圧延を施したものにあっても、打抜き性を向上させたATプレート用冷延鋼板及びその製造方法を特許文献2で提案している。
ところで、ATプレート用冷延鋼板は、「製鋼→連続鋳造→熱間圧延→酸洗→焼鈍→冷間圧延→脱脂→精整」の工程で製造される。
冷間圧延の前に熱延鋼板を焼鈍することが必須とされており、この焼鈍も通常タイトコイル焼鈍として実施されているために、全体としてコストアップの大きな要因となっている。このため、本出願人は、冷間圧延の前の熱延板焼鈍を省略して冷間圧延を施したものにあっても、打抜き性を向上させたATプレート用冷延鋼板及びその製造方法を特許文献2で提案している。
上記特許文献1,2の発明により、熱延板焼鈍なしに冷間圧延した冷延鋼板であっても打抜き性に優れ、従来材と同等以上の耐摩耗性を有し、ATプレートの要求特性を十分に満足する冷延鋼板が得られている。
しかしながら、各所望形状に打抜かれたプレート材を組み合わせて実際のオートマチックトランスミッションを製造する際には、打抜かれたプレート材に接着剤を塗布し、摩擦材を貼り付けている。接着剤の乾燥・固化時間を短縮するために高温にすると、冷延時に生じた残留応力の開放により、プレート材に熱歪みに伴う変形が発現することがある。この熱歪みに伴う変形を発現させないために、場合によっては、打抜き後のプレート材に荷重をかけた状態で高温に加熱・保持するプレステンパー処理を施して残留応力を除去して各プレート材に平面出しを行っている。このため、変形の発生を抑えようとすると、却ってコスト高になることもあった。
しかしながら、各所望形状に打抜かれたプレート材を組み合わせて実際のオートマチックトランスミッションを製造する際には、打抜かれたプレート材に接着剤を塗布し、摩擦材を貼り付けている。接着剤の乾燥・固化時間を短縮するために高温にすると、冷延時に生じた残留応力の開放により、プレート材に熱歪みに伴う変形が発現することがある。この熱歪みに伴う変形を発現させないために、場合によっては、打抜き後のプレート材に荷重をかけた状態で高温に加熱・保持するプレステンパー処理を施して残留応力を除去して各プレート材に平面出しを行っている。このため、変形の発生を抑えようとすると、却ってコスト高になることもあった。
本発明は、このような問題を解消すべく案出されたものであり、従来材と同等以上の耐摩耗性及び打抜き加工性を有し、打抜き材を加熱保持した際に熱歪みに伴う変形を引き起こす要因である残留応力を極力低減したATプレート用冷延鋼板を提供することを目的とする。
本発明の残留応力を低減したATプレート用冷延鋼板の製造方法は、その目的を達成するため、C:0.15〜0.25質量%,Si:0.25質量%以下,Mn:0.3〜0.9質量%,P:0.03質量%以下,S:0.015質量%以下,Al:0.01〜0.08質量%,N:0.008質量%以下,Ti:0.01〜0.05質量%,B:0.002〜0.005質量%を含有し、残部が実質的にFeの組成をもつスラブを、熱延仕上げ温度:Ar3変態点以上,巻取り温度:500〜600℃で熱間圧延し、熱延鋼板を酸洗処理した後、焼鈍処理することなく圧下率50%以上で冷間圧延し、さらにその後、径が300mm以上のロールを使用して圧下率1%以下の軽圧下圧延を施すことを特徴とする。
冷間圧延を酸洗工程の前後に分け、酸洗処理前に圧下率25%以下で冷間圧延し、酸洗処理の後、全圧下率(酸洗処理前後の圧下率の合計)が50%以上となる圧下率で冷間圧延してもよい。
このような方法で製造されたATプレート用冷延鋼板は、冷間圧延に伴う残留応力が低減されており、打抜き加工後に接着剤を嵌挿・固化させるために高温下に保持しても、熱歪みに伴う変形が発現することはない。
冷間圧延を酸洗工程の前後に分け、酸洗処理前に圧下率25%以下で冷間圧延し、酸洗処理の後、全圧下率(酸洗処理前後の圧下率の合計)が50%以上となる圧下率で冷間圧延してもよい。
このような方法で製造されたATプレート用冷延鋼板は、冷間圧延に伴う残留応力が低減されており、打抜き加工後に接着剤を嵌挿・固化させるために高温下に保持しても、熱歪みに伴う変形が発現することはない。
本発明によれば、スラブの鋼組成を規制することにより、従来の自動車用ATプレート用冷延鋼板の製造の際に不可欠とされていた焼鈍処理が不要となり、焼鈍工程を省略した製造工程により、製造コストを大幅に削減しながら、従来材(S35C)並みの耐摩耗性等の要求特性及び美麗な打抜き面性状等を確保することができている。しかも、冷延後に、大径ロールを使用した軽圧下圧延を施すことにより、冷延時に生成された残留応力は除去され、その後、ある程度の温度に加熱・保持しても残留応力の開放に起因する熱歪みに伴う変形が発生するようなことがない。
このため、本発明によるATプレート用冷延鋼板は、所定形状に打抜かれた後、調質のための熱処理等を必要とせず、そのまま実機に使用することができる。
このため、本発明によるATプレート用冷延鋼板は、所定形状に打抜かれた後、調質のための熱処理等を必要とせず、そのまま実機に使用することができる。
本発明では、スラブの鋼組成を規制すること、特にC含有量を制限するとともに一定量のTiとBを複合添加することにより、従来不可欠とされていた冷間圧延前の焼鈍処理を省略しながら、圧下率50%以上の冷間圧延を安定的に操業可能とするとともに、セパレートプレート,フリクションプレート,バッキングプレート等のATプレート用冷延鋼板として、従来材(S35C)並みの耐摩耗性等の要求特性及び美麗な打抜き面性状等を確保することができている。しかも、本発明による冷延鋼板は、打抜き後、調質のための熱処理を必要とせず、打抜いたままATプレートとして使用することができている。
まず、本発明ではC含有量を従来のS35Cよりも低くすることにより、熱延鋼板のパーライト量を少なくし、かつ熱延鋼板を軟質化することができ、その効果として、冷間圧延前の熱処理鋼板の軟質化及び炭化物(Fe3C)の球状化を目的とする焼鈍処理を省略することができている。
さらに、上記C含有量の低減と併せてTi及びBを複合添加することに基づいて鋼組織が制御でき、またそれによって材質を改善することができている。すなわち、Tiの添加により、TiC,Ti(C,N)等を微細(大きさ:約500〜3000Å)な析出物として鋼中に析出させ、熱延鋼板のフェライト組織を著しく細粒化している。熱延鋼板では、炭化物がフェライト粒界に優先的に析出するため、細粒化の効果として炭化物は均一微細に分散され、耐摩耗性に有利な組織が形成されることになる。
さらに、上記C含有量の低減と併せてTi及びBを複合添加することに基づいて鋼組織が制御でき、またそれによって材質を改善することができている。すなわち、Tiの添加により、TiC,Ti(C,N)等を微細(大きさ:約500〜3000Å)な析出物として鋼中に析出させ、熱延鋼板のフェライト組織を著しく細粒化している。熱延鋼板では、炭化物がフェライト粒界に優先的に析出するため、細粒化の効果として炭化物は均一微細に分散され、耐摩耗性に有利な組織が形成されることになる。
さらにまた、Bの添加により鋼中に固溶Bが形成される。BNよりもTiNの方が生成しやすいため、TiとBが共存しているとBNの生成が抑制され固溶B量が増加するのである。この固溶Bは、粒界を強化する作用及び熱延鋼板のフェライト組織を細粒化する作用を有し、これらの作用によりマトリックスが強化され、耐摩耗性が一段と高められる。
なお、C含有量を従来材(S35C)より少なくすることは、球状化焼鈍の省略というメリットがある反面、C含有量が少なくなる分、耐摩耗性の面で不利になる。しかしながら、上記のようにTi,Bの添加に基づく炭化物の均一分散作用及びマトリックスの強化作用により、C含有量の低減による不利を十分に補って余りある改善効果が得られることになる。
なお、C含有量を従来材(S35C)より少なくすることは、球状化焼鈍の省略というメリットがある反面、C含有量が少なくなる分、耐摩耗性の面で不利になる。しかしながら、上記のようにTi,Bの添加に基づく炭化物の均一分散作用及びマトリックスの強化作用により、C含有量の低減による不利を十分に補って余りある改善効果が得られることになる。
本発明者等は、さらに、打抜かれたプレート材に接着剤を塗布し、摩擦材を貼り付けオートマチックトランスミッションを製造する際に、接着剤の乾燥・固化時間を短縮するために高温に加熱したときにプレート材に発生する熱歪みに伴う変形が、冷間圧延時に蓄積された残留応力の開放に起因することを確認し、この残留応力を簡潔な手段で除去する方法について検討した。
その結果、所要の機械的特性を付与させるために施される50%以上の冷間圧延に伴って導入された残留応力は、その後の大径のロールを使用した軽圧下圧延によりキャンセルされ、軽圧下圧延鋼板を高温に加熱しても熱歪みに伴う変形が発現しないことを確認した。
その結果、所要の機械的特性を付与させるために施される50%以上の冷間圧延に伴って導入された残留応力は、その後の大径のロールを使用した軽圧下圧延によりキャンセルされ、軽圧下圧延鋼板を高温に加熱しても熱歪みに伴う変形が発現しないことを確認した。
大径のロールを使用した軽圧下圧延により、冷延工程で導入された残留応力がキャンセルされる理由(機構)は、次の通りと推測される。
通常の圧延の場合、板厚全域において塑性変形を受け、中央部の方が表面部よりも大きな塑性変形を起こそうとするが、表面層に拘束される。この結果、中央部に圧縮応力、表面部に引張応力が残存する。ところが、大径ロールで軽圧下した場合、板厚中央部は塑性変形せずに、板厚の表面層のみが伸ばされようとするため、板厚中央部の拘束を受け、中央部に引張応力、表面部に圧縮応力が残存する。
このため、冷間圧延で作りこまれる残留応力を大径ロールで軽圧下することにより逆方向の残留応力を作りこもうとするために、残留応力がキャンセルされて減少する。
通常の圧延の場合、板厚全域において塑性変形を受け、中央部の方が表面部よりも大きな塑性変形を起こそうとするが、表面層に拘束される。この結果、中央部に圧縮応力、表面部に引張応力が残存する。ところが、大径ロールで軽圧下した場合、板厚中央部は塑性変形せずに、板厚の表面層のみが伸ばされようとするため、板厚中央部の拘束を受け、中央部に引張応力、表面部に圧縮応力が残存する。
このため、冷間圧延で作りこまれる残留応力を大径ロールで軽圧下することにより逆方向の残留応力を作りこもうとするために、残留応力がキャンセルされて減少する。
残留応力が低減された冷延鋼板の具体的製造方法について説明する。
まず、本発明における鋼組成に説明する。以下各成分の含有量はすべて質量%で表示している。
C:0.15〜0.25%
冷延鋼板の硬度・耐摩耗性を高める点においては、C含有量は高いほど有利である。しかし、C含有量が多くなると熱延鋼板の炭化物の球状化と軟質化のための焼鈍を省略することができなくなる。本発明は、C含有量を0.25%以下に規制することにより、熱延鋼板を軟質化することができ、その効果として冷間圧延前の熱処理鋼板の軟質化及び炭化物(Fe3C)の球状化を目的とする焼鈍処理を省略することができている。一方、C含有量が少なすぎると、従来材であるS35C並みの耐摩耗性を確保することが困難になる。このため、C含有量は0.15〜0.25%の範囲にしなければならない。
まず、本発明における鋼組成に説明する。以下各成分の含有量はすべて質量%で表示している。
C:0.15〜0.25%
冷延鋼板の硬度・耐摩耗性を高める点においては、C含有量は高いほど有利である。しかし、C含有量が多くなると熱延鋼板の炭化物の球状化と軟質化のための焼鈍を省略することができなくなる。本発明は、C含有量を0.25%以下に規制することにより、熱延鋼板を軟質化することができ、その効果として冷間圧延前の熱処理鋼板の軟質化及び炭化物(Fe3C)の球状化を目的とする焼鈍処理を省略することができている。一方、C含有量が少なすぎると、従来材であるS35C並みの耐摩耗性を確保することが困難になる。このため、C含有量は0.15〜0.25%の範囲にしなければならない。
Si:0.25%以下
Siは、鋼の溶製工程において脱酸元素として添加される。脱酸のためでは0.25%までの範囲で十分である。0.25%を超える添加は、熱延鋼板の酸洗処理性の低下及び酸洗後のスケール残存による表面欠陥の原因ともなり、ATプレートとしての性質を低下させることになる。したがって、0.25%を上限とする。
Siは、鋼の溶製工程において脱酸元素として添加される。脱酸のためでは0.25%までの範囲で十分である。0.25%を超える添加は、熱延鋼板の酸洗処理性の低下及び酸洗後のスケール残存による表面欠陥の原因ともなり、ATプレートとしての性質を低下させることになる。したがって、0.25%を上限とする。
Mn:0.3〜0.9%
Mnは、鋼の熱間脆性の防止及びマトリックスの強化のために添加される。0.3%に満たないとその効果が少なく、マトリックスの強度が不足し、耐摩耗性が低くなる。増量により効果は増すが、0.9%を超えると過度に硬質化して加工性が損なわれる。
P:0.03%以下
Pは不純物であり、鋼中に多量に存在すると、粒界の強度低下を招き、スラブ割れに起因するヘゲ疵の発生原因となって、ATプレートの表面品質を損なう。0.03%以下であれば、実質的に悪影響を生じないので、これを上限とする。
Mnは、鋼の熱間脆性の防止及びマトリックスの強化のために添加される。0.3%に満たないとその効果が少なく、マトリックスの強度が不足し、耐摩耗性が低くなる。増量により効果は増すが、0.9%を超えると過度に硬質化して加工性が損なわれる。
P:0.03%以下
Pは不純物であり、鋼中に多量に存在すると、粒界の強度低下を招き、スラブ割れに起因するヘゲ疵の発生原因となって、ATプレートの表面品質を損なう。0.03%以下であれば、実質的に悪影響を生じないので、これを上限とする。
S:0.015%以下
SはMnSを形成して熱間脆性を抑制する効果を有する反面、多すぎるとMnSを起点とする加工割れの原因となる。このためATプレートでは打抜き加工における面性状の低下を招く。また、MnSを起点とする摩耗が生じやすくなり耐摩耗性が低下する。0.015%以下であれば、その実害は回避されるので、これを上限とする。
SはMnSを形成して熱間脆性を抑制する効果を有する反面、多すぎるとMnSを起点とする加工割れの原因となる。このためATプレートでは打抜き加工における面性状の低下を招く。また、MnSを起点とする摩耗が生じやすくなり耐摩耗性が低下する。0.015%以下であれば、その実害は回避されるので、これを上限とする。
Al:0.01〜0.08%
Alは鋼の溶製工程において脱酸剤として添加される。また鋼中のNをAlNとして固定する作用も有している。0.01%に満たないと脱酸作用が不足し、他方0.08%を超えると鋼の清浄度が損なわれ、表面疵は発生して鋼板の表面品質を低下させる原因となる。このためAl含有量は0.01〜0.08%とする。
N:0.008%以下
Nは不可避的に混入する元素である。含有量が多くなるとAlN,TiN等の窒化物生成量が増加し、過度の硬質化を招くことになる。したがって、その含有量は0.008%以下に抑える必要がある。
Alは鋼の溶製工程において脱酸剤として添加される。また鋼中のNをAlNとして固定する作用も有している。0.01%に満たないと脱酸作用が不足し、他方0.08%を超えると鋼の清浄度が損なわれ、表面疵は発生して鋼板の表面品質を低下させる原因となる。このためAl含有量は0.01〜0.08%とする。
N:0.008%以下
Nは不可避的に混入する元素である。含有量が多くなるとAlN,TiN等の窒化物生成量が増加し、過度の硬質化を招くことになる。したがって、その含有量は0.008%以下に抑える必要がある。
Ti:0.01〜0.05%
Tiは一般的にはTiSを形成して熱間脆性を回避する作用を有する。さらに前記したように、Tiは鋼中でTiCやTi(C,N)等の微細析出物を形成して熱延鋼板のフェライト組織を細粒化し、その効果として炭化物が均一微細に分散して耐摩耗性が高められる。この効果を確保するためには0.01%以上の添加を必要とする。しかし多量に添加すると、微細析出物の過剰生成により過度の硬質化を招くので、0.05%を上限とする。
Tiは一般的にはTiSを形成して熱間脆性を回避する作用を有する。さらに前記したように、Tiは鋼中でTiCやTi(C,N)等の微細析出物を形成して熱延鋼板のフェライト組織を細粒化し、その効果として炭化物が均一微細に分散して耐摩耗性が高められる。この効果を確保するためには0.01%以上の添加を必要とする。しかし多量に添加すると、微細析出物の過剰生成により過度の硬質化を招くので、0.05%を上限とする。
B:0.002〜0.005%
Bは、前記したようにその多くが固溶Bを形成し、固溶Bによる粒界の強化作用及びフェライト組織の細粒化作用によりマトリックスを強化し、耐摩耗性を高める効果を有する。この効果を得るには少なくとも0.002%の添加が必要である。しかし0.005%を超えると、フェライト組織の過度の細粒化による硬質化をきたすので、0.005%を上限とする。
Bは、前記したようにその多くが固溶Bを形成し、固溶Bによる粒界の強化作用及びフェライト組織の細粒化作用によりマトリックスを強化し、耐摩耗性を高める効果を有する。この効果を得るには少なくとも0.002%の添加が必要である。しかし0.005%を超えると、フェライト組織の過度の細粒化による硬質化をきたすので、0.005%を上限とする。
次に、製造工程について説明する。
[鋼の溶製・鋳造]
所定の成分組成に溶製した鋼を、造塊・分塊圧延によりまたは連続鋳造によりスラブとし、スラブに適宜表面手入れ処理を施した後、熱間圧延する。
連続鋳造の場合、熱鋳片(スラブ)をそのまま加熱炉に装入して熱間圧延するようにしても良い。
[鋼の溶製・鋳造]
所定の成分組成に溶製した鋼を、造塊・分塊圧延によりまたは連続鋳造によりスラブとし、スラブに適宜表面手入れ処理を施した後、熱間圧延する。
連続鋳造の場合、熱鋳片(スラブ)をそのまま加熱炉に装入して熱間圧延するようにしても良い。
[熱間圧延]
熱間圧延は、常法に従って行われる。
熱延鋼板の品質及び熱延効率等の点から、熱延仕上げ温度はAr3変態点の直上に調整することが好ましい。巻取りは500〜600℃の温度域で行う。500℃に満たないと、結晶粒径が過度に微細化して熱延鋼板の硬質化をきたす。一方、600℃を超える高温巻取りでは,炭化物が凝集しやすく、高耐摩耗性を得るのに必要な炭化物の均一分散の確保が困難になるとともに、フェライト組織が粗大化してしまう。好ましくは500〜550℃である。
熱間圧延は、常法に従って行われる。
熱延鋼板の品質及び熱延効率等の点から、熱延仕上げ温度はAr3変態点の直上に調整することが好ましい。巻取りは500〜600℃の温度域で行う。500℃に満たないと、結晶粒径が過度に微細化して熱延鋼板の硬質化をきたす。一方、600℃を超える高温巻取りでは,炭化物が凝集しやすく、高耐摩耗性を得るのに必要な炭化物の均一分散の確保が困難になるとともに、フェライト組織が粗大化してしまう。好ましくは500〜550℃である。
巻取りを500〜600℃の温度域で行うことにより、結晶粒径は、JIS G0552「附属書2(規定)交差線分(粒径)による判定方法」による測定で、5〜15μmの細粒化されたフェライト組織になっている。5μmに満たない微細なフェライト組織では、過度の硬質化をきたし、他方15μmを超える粗い組織では耐摩耗性の不足等の不具合を招くことになる。この5〜15μmなる結晶粒径は、前記したようにC含有量を制限するとともに一定量のTi,Bを複合添加した鋼に対して、上記特定条件の熱間圧延を施すことにより安定して得られる。このように細粒化されたフェライト組織とすることにより、最終製品である冷延鋼板における鋼中炭化物がより均一微細に分散され、耐摩耗性やプレス打抜き端面の性状改善の効果を得ることができている。
[冷間圧延]
熱延鋼板は、酸洗処理で表面のスケールを除去した後、冷間圧延に付される。ATプレート用冷延鋼板として必要な硬度(Hv≧230)と表面粗さ(Ra≦0.4μm)を得るためには、圧下率50%以上で冷間圧延する必要がある。圧下率の上限は特に制限されないが、60%を超えるような高い圧下率を適用する必要はない。
なお、硬さは望ましくはHv:240〜280である。240に満たないとスペック加減に近くATプレート材としての機能安定性の面で得策ではなく、他方280を超えるとATプレートのプレス打抜きの作業負担が大きくなる。この硬さ(Hv)の調節は圧下率の調整により行うことができる。
熱延鋼板は、酸洗処理で表面のスケールを除去した後、冷間圧延に付される。ATプレート用冷延鋼板として必要な硬度(Hv≧230)と表面粗さ(Ra≦0.4μm)を得るためには、圧下率50%以上で冷間圧延する必要がある。圧下率の上限は特に制限されないが、60%を超えるような高い圧下率を適用する必要はない。
なお、硬さは望ましくはHv:240〜280である。240に満たないとスペック加減に近くATプレート材としての機能安定性の面で得策ではなく、他方280を超えるとATプレートのプレス打抜きの作業負担が大きくなる。この硬さ(Hv)の調節は圧下率の調整により行うことができる。
上記冷間圧延は、所望により、酸洗処理前のプレ圧延と酸洗処理後の仕上げ圧延の2段階に分けて実施することができる。酸洗処理前のプレ圧延によってスケールが破砕され、脱スケール性が大きく改善される。したがって、酸洗処理時間の大幅な短縮とコスト低減が可能となる。
この場合、酸洗処理前のプレ圧延と酸洗処理後の仕上げ圧延は連続させなくても構わないが、酸洗槽の入側にプレ圧延機を、出側に仕上げ圧延機をそれぞれ設置し、プレ圧延−酸洗処理−仕上げ圧延を連続的に行うようにすることが好ましい。生産効率を高くすることができる。
この場合、酸洗処理前のプレ圧延と酸洗処理後の仕上げ圧延は連続させなくても構わないが、酸洗槽の入側にプレ圧延機を、出側に仕上げ圧延機をそれぞれ設置し、プレ圧延−酸洗処理−仕上げ圧延を連続的に行うようにすることが好ましい。生産効率を高くすることができる。
2段階冷延工程を採用する際には、酸洗処理前のプレ圧延の圧下率は25%以下にする必要がある。25%を超える高い圧下率でプレ圧延すると、鋼板表面へのスケールの押込みによる疵が発生し、表面品質を損なうおそれが生じる。
酸洗後の仕上げ圧延における圧下率は、全圧下率(酸洗処理前後の圧下率の合計)が50%以上になるように設定される。全圧下率をこのように調整する理由は、冷間圧延を酸洗後の1段階で実施する場合と同様に、ATプレートとしての要求特性(硬さ:Hv≧230,表面粗さ≦0.4μm)を充足させるためである。
酸洗後の仕上げ圧延における圧下率は、全圧下率(酸洗処理前後の圧下率の合計)が50%以上になるように設定される。全圧下率をこのように調整する理由は、冷間圧延を酸洗後の1段階で実施する場合と同様に、ATプレートとしての要求特性(硬さ:Hv≧230,表面粗さ≦0.4μm)を充足させるためである。
[大径ロールによる軽圧下圧延]
上記のような冷間圧延は、通常クラスター圧延機のような、小径のワークロールを配した多段圧延機で実施される場合が多い。
このような小径のワークロールを用いて比較的高い圧下率で冷間圧延すると、圧延材には大きな残留応力が発生する。残留応力が発生した鋼板をある程度の高温下に曝すと、残留応力の開放に起因する熱歪みに伴って変形が発現する。したがって、高温に曝しても熱歪みに伴う変形を起させないためには、冷延時の残留応力を極力小さくする必要がある。
上記のような冷間圧延は、通常クラスター圧延機のような、小径のワークロールを配した多段圧延機で実施される場合が多い。
このような小径のワークロールを用いて比較的高い圧下率で冷間圧延すると、圧延材には大きな残留応力が発生する。残留応力が発生した鋼板をある程度の高温下に曝すと、残留応力の開放に起因する熱歪みに伴って変形が発現する。したがって、高温に曝しても熱歪みに伴う変形を起させないためには、冷延時の残留応力を極力小さくする必要がある。
本発明のもう一つの特徴である、冷間圧延材に大径ロールを用いた軽圧下圧延を施すことにより、上記冷延時の残留応力を低減することができる。
直径300mm以上の大径ロールを使用して圧下率1%以下の軽圧下圧延を施すことにより、前記冷延工程で発生した残留応力はキャンセルされ、軽圧下圧延した冷延材には極めて小さい残留応力しか残されていない。残留効力を効率的にキャンセルするためには0.2%以上の圧下率で軽圧下することが好ましい。しかし、圧下率が1%を超えると、塑性変形が表層だけでなく、板厚中央部近くまで及ぶために残留応力のキャンセルができなくなって、その後の熱歪みによる変形の抑制には結び付かない。また、軽圧下圧延するロール径が300mmに満たないと圧延荷重が低下するために、1%以下の軽圧下圧延を行う際に作りこまれる残留応力の絶対値が小さくなって、冷間圧延時に発生した残留応力をキャンセルすることができない。
直径300mm以上の大径ロールを使用して圧下率1%以下の軽圧下圧延を施すことにより、前記冷延工程で発生した残留応力はキャンセルされ、軽圧下圧延した冷延材には極めて小さい残留応力しか残されていない。残留効力を効率的にキャンセルするためには0.2%以上の圧下率で軽圧下することが好ましい。しかし、圧下率が1%を超えると、塑性変形が表層だけでなく、板厚中央部近くまで及ぶために残留応力のキャンセルができなくなって、その後の熱歪みによる変形の抑制には結び付かない。また、軽圧下圧延するロール径が300mmに満たないと圧延荷重が低下するために、1%以下の軽圧下圧延を行う際に作りこまれる残留応力の絶対値が小さくなって、冷間圧延時に発生した残留応力をキャンセルすることができない。
[脱脂・精整]
冷間圧延の後、電解洗浄等の脱脂処理により鋼板表面を浄化し、次いで所定の検査(板厚・板幅等の諸元寸法や表面疵等)及び形状修正等の精整工程を経て冷延鋼板製品を得る。これらの処理工程は常法に従って行えばよい。
このようにして製造された冷延鋼板は、そのままプレス打抜き加工を行って所要の円環形状に成形すればよく、得られた成形品は調質のための熱処理を必要とせずに、そのままATプレートとして実機使用に供することができる。
冷間圧延の後、電解洗浄等の脱脂処理により鋼板表面を浄化し、次いで所定の検査(板厚・板幅等の諸元寸法や表面疵等)及び形状修正等の精整工程を経て冷延鋼板製品を得る。これらの処理工程は常法に従って行えばよい。
このようにして製造された冷延鋼板は、そのままプレス打抜き加工を行って所要の円環形状に成形すればよく、得られた成形品は調質のための熱処理を必要とせずに、そのままATプレートとして実機使用に供することができる。
[1]供試鋼板の製造
転炉及び脱ガス処理設備により溶製し、表1に示すように成分調整を行った溶鋼を連続鋳造に付して200mm厚のスラブとした後、熱延→酸洗→冷延(1段又は2段)→軽圧下圧延→脱脂→精整(検査)により、ATプレート用冷延鋼板を得た。なお、冷延は
総圧下率55%で行った。
転炉及び脱ガス処理設備により溶製し、表1に示すように成分調整を行った溶鋼を連続鋳造に付して200mm厚のスラブとした後、熱延→酸洗→冷延(1段又は2段)→軽圧下圧延→脱脂→精整(検査)により、ATプレート用冷延鋼板を得た。なお、冷延は
総圧下率55%で行った。
なお、上記各工程において、熱間圧延は、鋼板を1230℃に加熱し、仕上げ温度:860℃,巻取り温度:540℃で行った。焼鈍を行うものにあっては、700℃×10Hrのタイトコイル焼鈍を施した。冷間圧延は、圧延率が(2段圧延の場合は合計圧下率が)55%になるように、鋼板厚さ0.8mmに圧延した。
また、本発明の特徴の一つである軽圧下圧延については、ロール径と圧下率を変えて行った。軽圧下圧延後、オルト珪酸ソーダ液を使用して電解洗浄を行った。
また、本発明の特徴の一つである軽圧下圧延については、ロール径と圧下率を変えて行った。軽圧下圧延後、オルト珪酸ソーダ液を使用して電解洗浄を行った。
得られた各種鋼板について、次に示すような評価試験を施した。
[2]耐摩耗性試験
図1に示す大越式迅速摩耗試験機を使用し、試験片Mに回転円板を接触させ、下記条件で摩耗試験を行った後、摩耗痕の幅(b0)を測定し、摩耗部の体積から摩耗量A(mm3)を算出した。
耐摩耗性は比摩耗量[=A/(P×L)(mm3/kg・m)]で評価した。
試験環境:室温(14℃),大気中
回転円板:SK5/400Hv(焼入れ・焼戻しにより調質)
円板半径(r)30mm,円板厚(B)3.0mm
摩耗距離(L):200m
負荷荷重(P):6.3kg
摩耗速度(V):4m/秒
[2]耐摩耗性試験
図1に示す大越式迅速摩耗試験機を使用し、試験片Mに回転円板を接触させ、下記条件で摩耗試験を行った後、摩耗痕の幅(b0)を測定し、摩耗部の体積から摩耗量A(mm3)を算出した。
耐摩耗性は比摩耗量[=A/(P×L)(mm3/kg・m)]で評価した。
試験環境:室温(14℃),大気中
回転円板:SK5/400Hv(焼入れ・焼戻しにより調質)
円板半径(r)30mm,円板厚(B)3.0mm
摩耗距離(L):200m
負荷荷重(P):6.3kg
摩耗速度(V):4m/秒
[3]残留応力評価
鋼板の残留応力については以下のように評価した。
短冊状に切断した鋼板の片側の表層より0.05mmずつ塩化第2鉄溶液にてエッチングを行ない、エッチング前後の反りの変化(曲率の変化)を測定することにより残留応力を求めた(参考:米谷茂著,「残留応力の発生と対策」,養賢堂発行)。
板厚中央部と表層部の残留応力の差により評価した。
鋼板の残留応力については以下のように評価した。
短冊状に切断した鋼板の片側の表層より0.05mmずつ塩化第2鉄溶液にてエッチングを行ない、エッチング前後の反りの変化(曲率の変化)を測定することにより残留応力を求めた(参考:米谷茂著,「残留応力の発生と対策」,養賢堂発行)。
板厚中央部と表層部の残留応力の差により評価した。
[4]プレス打抜き性試験
下記の打抜き条件で、フリクションプレートを打抜いた後、得られた打抜き製品の打抜き端面性状を、鋼板の長手方向断面を観察断面に採用して20倍の走査型電子顕微鏡で観察し、打抜き端面にムシレやクラックが発生しておらず美麗なものを○,打抜き端面にムシレやクラックが1個でも認められたものを×で評価した。
プレス機:200トンメカプレス
ストローク長さ:250mm
ストローク数:25spm
クリアランス:10%(板厚0.8mm)
打抜き寸法:内径105mm×外径127mm
下記の打抜き条件で、フリクションプレートを打抜いた後、得られた打抜き製品の打抜き端面性状を、鋼板の長手方向断面を観察断面に採用して20倍の走査型電子顕微鏡で観察し、打抜き端面にムシレやクラックが発生しておらず美麗なものを○,打抜き端面にムシレやクラックが1個でも認められたものを×で評価した。
プレス機:200トンメカプレス
ストローク長さ:250mm
ストローク数:25spm
クリアランス:10%(板厚0.8mm)
打抜き寸法:内径105mm×外径127mm
[平坦度変形試験]
打抜いたフリクションプレートを、定盤上に置き、レーザー変位計にてフリクションプレートの周方向の高さ分布を測定し、最大高さ−最小高さを平坦度と定義する。
ATプレートの平坦度規格は0.2mm以下を要求しているので、ローラーレベラー条件の調整により、打抜き直後のフリクションプレートの平坦度を0.15mm以下とする。その後、フリクションプレートを300℃で10分間保持した後の熱歪みに伴う変形により、平坦度が0.2mmを超えたものを×とし、0.2mm以下を○と評価した。
各種評価結果を、鋼板の製造条件とともに、表2に示す。表2中の鋼種の成分は、表1に示しているものと同じである。
打抜いたフリクションプレートを、定盤上に置き、レーザー変位計にてフリクションプレートの周方向の高さ分布を測定し、最大高さ−最小高さを平坦度と定義する。
ATプレートの平坦度規格は0.2mm以下を要求しているので、ローラーレベラー条件の調整により、打抜き直後のフリクションプレートの平坦度を0.15mm以下とする。その後、フリクションプレートを300℃で10分間保持した後の熱歪みに伴う変形により、平坦度が0.2mmを超えたものを×とし、0.2mm以下を○と評価した。
各種評価結果を、鋼板の製造条件とともに、表2に示す。表2中の鋼種の成分は、表1に示しているものと同じである。
表2中、No.1〜5が本発明例である。耐摩耗性やプレス打抜き性も良好であり、硬度もATプレート用途に好適な範囲(HV240〜280)を満たしている。また鋼板の残留応力が小さいため、ATプレートに打抜いた後に熱処理を行っても熱変形が小さく平坦度に優れていた。
これに対して、比較例であるNo.6は、冷間圧延後に軽圧下圧延を施さずにそのままATプレート素材として使用したものであり、冷間圧延後の残留応力が高く、熱変形が大きくなっている。また比較例No.7,8は冷間圧延後に小さいロール径のワークロールで軽圧下圧延したものである。軽圧下圧延後に残留応力は低減しているものの、低減率は小さく、ATプレートの熱変形が大きくなっている。さらに、比較例No.9,10は冷間圧延後に1%を超える圧延率で圧延を施しているために、圧下率が大きすぎて、冷間圧延により生成した残留応力の低減が小さくなっており、ATプレートの熱変形が大きくなっている。
これに対して、比較例であるNo.6は、冷間圧延後に軽圧下圧延を施さずにそのままATプレート素材として使用したものであり、冷間圧延後の残留応力が高く、熱変形が大きくなっている。また比較例No.7,8は冷間圧延後に小さいロール径のワークロールで軽圧下圧延したものである。軽圧下圧延後に残留応力は低減しているものの、低減率は小さく、ATプレートの熱変形が大きくなっている。さらに、比較例No.9,10は冷間圧延後に1%を超える圧延率で圧延を施しているために、圧下率が大きすぎて、冷間圧延により生成した残留応力の低減が小さくなっており、ATプレートの熱変形が大きくなっている。
さらにまた、比較例No.11〜13は、Ti,Bの添加量が本発明で規定する量よりも少ないために、耐摩耗性や打抜き性に劣っている。比較例No.14では、C量が不足しており、耐摩耗性や打抜き性に劣るとともに、硬度がスペックの下限よりも下回っている。比較例No.15では、C量が過剰であるために、過度に硬質化しており、打抜き性に劣っていた。
Claims (3)
- C:0.15〜0.25質量%,Si:0.25質量%以下,Mn:0.3〜0.9質量%,P:0.03質量%以下,S:0.015質量%以下,Al:0.01〜0.08質量%,N:0.008質量%以下,Ti:0.01〜0.05質量%,B:0.002〜0.005質量%を含有し、残部が実質的にFeの組成をもつスラブを、熱延仕上げ温度:Ar3変態点以上,巻取り温度:500〜600℃で熱間圧延し、熱延鋼板を酸洗処理した後、焼鈍処理することなく圧下率50%以上で冷間圧延し、さらにその後、径が300mm以上のロールを使用して圧下率1%以下の軽圧下圧延を施すことを特徴とする残留応力を低減したATプレート用冷延鋼板の製造方法。
- C:0.15〜0.25質量%,Si:0.25質量%以下,Mn:0.3〜0.9質量%,P:0.03質量%以下,S:0.015質量%以下,Al:0.01〜0.08質量%,N:0.008質量%以下,Ti:0.01〜0.05質量%,B:0.002〜0.005質量%を含有し、残部が実質的にFeの組成をもつスラブを、熱延仕上げ温度:Ar3変態点以上,巻取り温度:500〜600℃で熱間圧延し、熱延鋼板を焼鈍処理することなく、酸洗処理前に圧下率25%以下で冷間圧延し、酸洗処理の後、全圧下率(酸洗処理前後の圧下率の合計)が50%以上となる圧下率で冷間圧延し、さらにその後、径が300mm以上のロールを使用して圧下率1%以下の軽圧下圧延を施すことを特徴とする残留応力を低減したATプレート用冷延鋼板の製造方法。
- 請求項1または2の方法で得られた残留応力を低減したATプレート用冷延鋼板。
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---|---|---|---|
JP2004009159A JP2005200712A (ja) | 2004-01-16 | 2004-01-16 | 残留応力を低減したatプレート用冷延鋼板及びその製造方法 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2008266731A (ja) * | 2007-04-20 | 2008-11-06 | Sumitomo Metal Ind Ltd | フルハード冷延鋼板 |
KR101230126B1 (ko) * | 2009-12-29 | 2013-02-05 | 주식회사 포스코 | 에지크랙을 저감하기 위한 페라이트계 스테인리스강의 열간압연재 제조방법 |
JP2014201774A (ja) * | 2013-04-02 | 2014-10-27 | Jfeスチール株式会社 | 冷間圧延用高炭素熱延鋼板の製造方法 |
KR20150119097A (ko) | 2013-04-02 | 2015-10-23 | 제이에프이 스틸 가부시키가이샤 | 냉연 강판 및 그 제조 방법 |
-
2004
- 2004-01-16 JP JP2004009159A patent/JP2005200712A/ja not_active Withdrawn
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