JP4980253B2 - 強度延性バランスと打ち抜き性に優れた高強度熱延鋼板及びその製造方法 - Google Patents

強度延性バランスと打ち抜き性に優れた高強度熱延鋼板及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、強度延性バランスと打ち抜き性に優れた高強度熱延鋼板及びその製造方法に関し、特に、大型の乗用車やトラックなどの輸送機械に好適に用いられる高強度熱延鋼板及びその製造方法に関するものである。
比較的大型の乗用車の足回り部品やトラックの荷台フレームなどには、厚手の熱延鋼板が多く用いられている。これらの部品は、通常の使用時には直接に使用者の目に触れ難いことや、少しでも価格を抑制する目的などから、めっきなどは行わず、スケールを除去せずそのまま、又は酸洗後、熱延鋼板に塗装を施す程度の処理で用いられる。
したがって、これらの部品に用いられる鋼板は、使用中に全面腐食が進行することを織り込んで、想定使用期間中の腐食による板厚減少、すなわち腐食代を差し引いた上で必要な強度が維持できる厚さに設定されることが多く、通常、5〜8mm程度である。
また、これらの熱延鋼板に施される加工は、主に、単純な曲げ加工ではあるものの、板厚が厚いため、プレス成形時の負荷が高くなる。このため、鋼板の引張強さはせいぜい440MPa程度に抑えられていた。
しかしながら、近年は、燃費改善に対する要求が強くなってきており、従来は腐食代を見込んで厚手の熱延鋼板が用いられていた部品にも、薄肉化が要求されるようになっている。このため、腐食によって板厚が減少した後であっても強度の維持が可能である、厚手の熱延鋼板の高強度化が進められつつある。
鋼板の強度が440MPa程度であれば、汎用のフェライト・パーライト鋼であっても延性は十分足り、加工性が問題とされることは皆無であった。しかしながら、薄肉化に起因する部品剛性の低下を形状の変更により補う必要性も考えられる。この場合、高強度化による延性の低下に加え、加工性に対する要求も高くなる。しかしながら、強度と延性の積、いわゆる強度延性バランスが従来鋼板と同等では不十分であることが明らかとなってきた。
特に、トラックのフレームには、組み立て工程上での必要性や、オプション部品の取付に対応するため、多数の打ち抜き穴が設けられる。これらの打ち抜き穴は、主にコスト上の理由から特別な用途や部位を除いてはコイニングなどの手入れをされずにそのまま使用される。
従来のように、引張強さが440MPa程度以下の鋼板であれば、打ち抜き穴の性状は良好で問題視されることもなかったが、強度を高くすると剪断割れの発生が危惧される。以上のことから、大型の乗用車の足回り部品やトラックの荷台フレームに用いられる、厚手の熱延鋼板には、従来鋼以上の強度延性バランスと、打ち抜き性が求められる。
強度延性バランスを向上させた鋼板としては、いわゆるDP(デュアル・フェイズ)鋼板(例えば、特許文献1、2などを参照。)や、TRIP(残留オーステナイト)鋼板(例えば、特許文献3、4などを参照。)が提案されている。しかしながら、これらは、何れも硬質相と軟質相の複合組織鋼板であるから打ち抜き性に乏しく、かつ、圧延後のプロセスで急速冷却を必須とするものであるから、厚手材の製造は容易ではないという問題がある。
また、本発明者らの一部は、打ち抜き性や、延びフランジ性を向上させた鋼板として、Ceを添加した、ベーニティック・フェライトを主相とする熱延鋼板を提案している(例えば、特許文献5〜8などを参照。)。しかしながら、これらは、板厚が4mm程度であり、板厚が5mm以上の熱延鋼板の打ち抜き性や、強度延性バランスについて検討したものではない。
特開2001−220641号公報 特開2003−55740号公報 特開2001−32041号公報 特開2001−152254号公報 特開2003−171734号公報 特開2004−315902号公報 特開2005−256115号公報 特開2006−70302号公報
本発明は、このような従来の事情に鑑みて提案されたものであり、強度延性バランスと打ち抜き性に優れた高強度熱延鋼板及びその製造方法、すなわち、従来鋼以上の強度延性バランスと、打ち抜き性を具備し、特に、板厚が5mm以上の、厚手の熱延鋼板及びその製造方法を提供することを目的とするものである。
上記課題を解決することを目的とした本発明の要旨は、以下のとおりである。
(1) 質量%で、C:0.025〜0.08%、Si:0.005〜0.09%、Mn:1.0〜2.0%、Ti:0.05〜0.15%を含有し、P:0.02%以下、S:0.01%以下、Al:0.05%以下、N:0.01%以下に制限し、更に、Si/16≦Ce≦0.0060%を満たすようにCeを含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、ベーニティック・フェライト相を体積率で90%以上とする金属組織を有し、板厚が5mm以上であることを特徴とする強度延性バランスと打ち抜き性に優れた高強度熱延鋼板。
(2) 更に、Nb:0.01〜0.1%を含有することを特徴とする上記(1)に記載の強度延性バランスと打ち抜き性に優れた高強度熱延鋼板。
(3) 更に、B:0.0003〜0.0020%を含有することを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の強度延性バランスと打ち抜き性に優れた高強度熱延鋼板。
(4) 上記(1)〜(3)の何れか一項に記載の化学成分を有する鋼片を、1150〜1300℃に再加熱し、板厚が5mm以上になるように、圧延率を60〜90%、仕上げ温度を850〜950℃とする熱間圧延を行い、平均冷却速度を20℃/s以上として冷却し、450〜650℃にて巻取ることを特徴とする強度延性バランスと打ち抜き性に優れた高強度熱延鋼板の製造方法。
以上のように、本発明によれば、強度延性バランスと打ち抜き性を兼備した厚手の熱延鋼板、特に、板厚5mm以上の熱延鋼板及びその製造方法を提供することが可能になり、産業上の貢献が極めて顕著である。さらに、本発明の熱延鋼板によれば、従来、軽量化が余り進んでいなかった大型の乗用車の足回り部品やトラックの荷台フレームなどの分野での軽量化が期待でき、燃費の改善を通して二酸化炭素排出量の削減に寄与できる。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明者らは、先ず、厚手高強度鋼板として適切なミクロ組織について検討を行った。具体的には、固溶強化と析出強化を活用したポリゴナル・フェライト鋼板及びベーニティック・フェライト鋼板の金属組織について検討を行った。その結果、ポリゴナル・フェライト鋼板では、固溶強化や析出強化を活用しても得られる引張強さは高々500MPa程度であり、十分とはいえなかった。なお、DP鋼板やTRIP鋼板では、上述のように、打ち抜き性の向上が期待できず、また、厚手材の製造も困難である。
これに対して、ベーニティック・フェライト鋼板と析出強化を組み合わせると590MPa以上の引張強さが安定的に得られた。しかしながら、析出強化したベーニティック・フェライト鋼板の強度延性バランス、すなわち、引張強度と伸びの積については、440MPa級フェライト・パーライト鋼板に比べて、板厚が4.5mm以下においては優れるものの、5.0mm以上では大差ないことがわかった。一方、ベーニティック・フェライト鋼板の打ち抜き性は、440MPa級フェライト・パーライト鋼板と比べて遜色のない、優れたものであった。
そこで、本発明者らは、5.0mm以上の熱延鋼板において、打ち抜き性を劣化させず、あるいは向上させ、かつ強度延性バランスを440MPa級フェライト・パーライト鋼板以上とするため、更に検討を進めた。
具体的には、先ず、条件を変化させて熱延を繰り返し、得られた鋼板のミクロ組織と強度延性を調べた。そして、板厚が5.0mm以上の場合に強度延性バランスが改善しない原因が、板厚方向の結晶粒径の不均一性であることを見出した。
次に、板厚の増加により、板厚方向の結晶粒径が不均一になる原因を明らかにするため、検討を行った。その結果、ベーニティック・フェライト鋼板を得るためには、オーステナイト域で圧延を完了し、セメンタイトを生成させないよう急速に冷却する必要があるが、板厚が厚くなるにつれて表層部分と内部の冷却速度の差が大きくなり、結晶粒径が不均一になることがわかった。そして、板厚が5mm以上になると、冷却速度の差が臨界の大きさを超えて、強度延性バランスに影響するものと推論した。
しかしながら、表層と内部の冷却速度の差を縮めるために冷却速度を遅くすると、特に、板厚の中央部では、セメンタイトが生成し、打ち抜き性の低下が懸念される。また、冷却速度を遅くすると、結晶粒径が大きくなって、打ち抜き性の劣化要因にもなる。したがって、ある程度の冷却速度を確保し、結晶粒径の不均一を許容することが可能な、強度延性バランスの改善が必要である。
そこで、本発明者らは、析出強化を何らかの形で制御できないかという視点に立って、結晶粒径の不均一を許容し得る、強度延性バランスの改善について検討を行った。具体的には、微量元素の活用によって析出強化能を板厚方向に変化させる方法について検討し、以下の試験に基づいて、Si量とCe量の関係を決定した。
この試験においては、先ず、質量%で、C:0.025〜0.08%、Si:0.005〜0.09%、Mn:1.0〜2.0%、P:0.02%以下、S:0.01%以下、Al:0.05%以下、N:0.01%以下、Ti:0.05〜0.15%を含有し、更に、種々の量のCeを含有し、選択的に、Nb:0.01〜0.1%、B:0.0003〜0.0020%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる鋼片を製造した。
次に、これらを1150〜1300℃に再加熱し、圧延率を60〜90%、仕上げ温度を850〜950℃とする熱間圧延を行い、平均冷却速度を20℃/s以上として冷却し、450〜650℃にて巻取り、板厚8mmの熱延鋼板とした。
次に、得られた鋼板から、圧延方向と直角方向を引張方向として、JIS Z 2201の5号引張試験片を採取し、JIS Z 2241に準拠して引張試験を行った。また、金属組織の観察は光学顕微鏡を用いて行った。さらに、パンチ径22mm、ダイ内径24mmの打ち抜き工具を使用して、それぞれの鋼板に10個の穿孔を行った。
そして、断面を目視で観察し、剪断割れの有無を調べたところ、圧延割れが発生したため評価を行わなかった鋼を除く全ての鋼板で、ミクロ組織はベーニティック・フェライト相であり、かつ、打ち抜きによる剪断割れの発生はなかった。
図1は、Si量及びCe量を、それぞれ横軸及び縦軸として、引張強度と全伸びの積の改善率をプロットしたものである。なお、図1には、改善率が10%未満を黒丸(●)、10%以上を白丸(○)で表した。また、圧延割れが発生した条件はバツ(×)で表した。
ここで、基準鋼は、板厚5mmの汎用的な熱延鋼板であり、金属組織はフェライト・パーライト鋼である。なお、基準鋼の成分組成は、質量%で、C:0.048%、Si:0.01%、Mn:1.64%、P:0.012%、S:0.002%、Al:0.03%、N:0.0029%、残部がFe及び不可避的不純物である。製造条件は、鋼片の再加熱温度:1220℃、熱間圧延の圧延率:85%、仕上げ温度:910℃、熱間圧延後の平均冷却速度:15℃/s、巻取温度:540℃である。
なお、改善率は、基準鋼の強度延性の積=引張強度×全伸び=450MPa×39.9%を基準として、以下の式から求められる。
改善率(%)={(対象鋼の強度延性の積−基準鋼の強度延性の積)/(基準鋼の強度延性の積)}×100
そして、強度延性の積の改善率と、Si量及びCe量の相関について検討したところ、改善率が10%以上となる範囲が、図1の実線で示したCe量≧Si量/16であるとの結論に至った。
また、Ce量とSi量とを所定の関係にすると、強度延性バランスが向上する理由は、必ずしも明確ではないが、次のように考えられる。すなわち、Ceは、硫化物を形成してSを固定する元素である。このため、Ceを添加すると、いわゆるスカベンジング効果によって、Ceを含有しない場合に比べて、TiSの生成が抑制される。これにより、TiCの形成にTiをより有効に寄与させることが可能になる。
しかしながら、鋼板の表層領域では、酸化物が生成し、Ce硫化物の生成に影響を及ぼす。例えば、鋼中のSiは、Ceと競合しつつ、酸化物を形成するが、Siの酸化は、表層及び表層近傍で優先的に進む傾向が強く、それと競合関係にあるCeの酸化反応も表層及び表層近傍で活発に起こるものと予想される。その結果、表層及びその近傍におけるCeの硫化物形成は、内部に比べ抑制され、結果的にTiCの形成が抑制される。このため、表層領域では、析出するTiCが少なくなり、鋼板の表面では板厚の中央部に比べて、析出強化が抑制されるのではないかと考えられる。
本発明者らは、以上のような知見に基づいて、さらに鋭意検討を行った結果、従来鋼以上の強度延性バランスと、打ち抜き性を具備し、特に、板厚が5mm以上の、厚手の熱延鋼板を製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の強度延性バランスと打ち抜き性に優れた高強度熱延鋼板は、質量%で、C:0.025〜0.08%、Si:0.005〜0.09%、Mn:1.0〜2.0%、Ti:0.05〜0.15%を含有し、P:0.02%以下、S:0.01%以下、Al:0.05%以下、N:0.01%以下に制限し、更に、Si/16≦Ce≦0.0060%を満たすようにCeを含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、ベーニティック・フェライト相を主相とする金属組織を有し、板厚が5mm以上であることを特徴とする。
以下、上記強度延性バランスと打ち抜き性に優れた高強度熱延鋼板の各組成を限定した理由について説明する。なお、以下の説明では、特に断らない限り、各成分の%は、質量%を表すものとする。
(C:0.025〜0.08%)
Cは、鋼板の強度を確保するために必須の元素であり、高強度鋼板を得るためには0.025%以上の添加が必要である。しかしながら、Cを過剰に含有すると、セメンタイト相が生成し、打ち抜き性が低下するため、C量の上限を0.08%とする。
(Si:0.005〜0.09%)
Siは、脱酸元素であり、0.005%未満に低減しようとすると、製鋼上の負荷が増大するため、0.005%を下限とする。一方、Siを0.09%超含有すると表面性状を損なうため、上限を0.09%とする。
(Mn:1.0〜2.0%)
Mnは、鋼板の強度を上昇させる元素であり、高強度化のため、1.0%以上の含有が必要である。一方、2.0%を超えるMnを含有させると、板厚方向の偏析により、打ち抜き性を損なう恐れがあるため、上限を2.0%とする。
(P:0.02%以下)
Pは、不純物であり、固溶強化元素として有効ではあるものの、偏析による加工性の劣化が危惧されるので0.02%以下にすることが必要である。
(S:0.01%以下)
Sは、不純物であり、MnSなどの介在物を形成して打ち抜き性を劣化させ、また、Tiと結合してTiCの析出を阻害する。したがって、S量の上限値を0.01%とする。
(Al:0.05%以下)
Alは、脱酸元素であり、0.05%を超えて含有すると生成物が凝集粗大化して連続鋳造ノズルの目詰まりを引き起こしたり、打ち抜き時の剪断割れ発生の起点となったりし易い。したがって、Al量の上限を0.05%とする。
(N:0.01%以下)
Nは、不純物であり、AlNなどの介在物を形成して打ち抜き性に影響を与える可能性がある。したがって、N量の上限を0.01%とする。
(Ti:0.05〜0.15%)
Tiは、炭化物を形成して鋼板の高強度化を担う重要な元素である。その効果は、本発明の製造方法では、0.05%以上で有効となる。一方、0.15%を超えてTiを添加しても析出強化能力は飽和する。また、Tiを過剰に添加すると、固溶状態で鋼中に存在し、再結晶温度を上昇させるため、熱間加工組織が残存し易くなり、延性の低下が懸念される。したがって、Ti量の上限を0.15%とする。
(Si/16≦Ce≦0.0060%)
Ceは、本発明においては最も重要な元素であり、鋼中で酸化物や硫化物を形成し、板厚方向でのTiCによる析出強化を制御し、強度延性バランスを向上させる。上述のように、Ce量は、Si/16≦Ceの関係を満足して含有させることが必要である。一方、Ce量が0.0060%を超えると、熱間圧延時に割れが発生する可能性が高くなるため、上限を0.0060%とする。
更に、本発明の強度延性バランスと打ち抜き性に優れた高強度熱延鋼板には、Nb、Bを添加してもよい。
(Nb:0.01〜0.1%)
Nbは、Ti同様、炭化物を形成して鋼板の高強度化に寄与する元素であり、Nbを添加する場合は、0.01%以上とすることが好ましい。一方、0.1%を超えるNbを添加しても、析出強化能力は飽和する。
(B:0.0003〜0.0020%)
Bは、焼き入れ性を高めるので、ベーニティック・フェライト組織の造り込みには有効な元素であり、Bを添加する場合は、0.0003%以上とすることが好ましい。しかしながら、過剰に添加すると、延性を低下させることがあるため、0.0020%を上限とすることが好ましい。
なお、本発明において上記以外の成分はFeとなるが、スクラップなどの溶解原料から混入する不可避的不純物は許容される。
上記成分からなる鋼板において、強度延性バランスを確保し、優れた打ち抜き性を得るためには、ベーニティック・フェライトを主相とする金属組織を有する必要がある。また、マルテンサイト相やパーライトなどの硬質相の存在は打ち抜き性を損ねるため、体積率で10%未満、好ましくは5%未満とすることが好ましい。
次に、本発明による強度延性バランスと打ち抜き性に優れた高強度熱延鋼板の製造条件について説明する。
本発明の強度延性バランスと打ち抜き性に優れた高強度熱延鋼板の製造方法は、上記化学成分を有する鋼片を、1150〜1300℃に加熱し、板厚が5mm以上になるように、圧延率を60〜90%、仕上げ温度を850〜950℃とする熱間圧延を行い、平均冷却速度を20℃/s以上として冷却し、450〜650℃にて巻き取ることを特徴とする。
上記化学成分を有する鋼片は、常法の溶製及び鋳造によって製造される。また、鋼片を製造する際は、生産性の観点から、連続鋳造が好ましい。そして、上記化学成分を有する鋼片を上記製造条件により熱間圧延することで、板厚5mm以上の熱延鋼板を製造する。
具体的に、鋼片の加熱温度は、Ti及びCの固溶量を増加させ、TiCの析出を促進させるために、1150℃以上とする必要がある。一方、1300℃を超えて加熱すると、酸化による表面の荒れが熱延鋼板の表面性状を損なうため、1300℃を上限とする。
熱間圧延の圧延率は、結晶粒径を微細にして打ち抜き性を確保するため、60%以上とすることが必要である。一方、圧延率が90%を超えると、厚手の熱延鋼板の製造の場合は、仕上げ圧延に多大な負荷がかかるため、90%を上限とする。
熱間圧延の仕上げ温度は、強度延性バランスと打ち抜き性にとって好ましいベーニティック・フェライト相を主体とする組織を得るために、850℃以上とすることが必要がある。一方、仕上げ温度が950℃を超えると結晶粒径が粗大化し、強度延性バランス、打ち抜き性ともに劣化するので、上限温度を950℃とする。
熱間圧延後の冷却は、平均冷却速度を20℃/s以上として行う。これは、フェライト・パーライト組織の生成を抑えてベーニティック・フェライト相を得るためである。一方、冷却速度が速すぎると、熱延鋼板の幅方向及び圧延方向の冷却が不均一になる恐れがあるため、冷却速度の上限は70℃/sとすることが好ましい。
ベーニティック・フェライトを主相とするには、平均冷却速度を20℃/s以上として650℃以下まで冷却することが必要である。そのため、巻取温度の上限は、650℃とする。一方、巻取温度が450℃未満になると、マルテンサイト相が生成し、打ち抜き性を損なう。また、TiCの析出の促進により、鋼板を高強度化するためにも、450℃以上で巻取ることが必要である。
以上のように、本発明によれば、強度延性バランスと打ち抜き性を兼備した厚手の熱延鋼板、特に、板厚5mm以上の熱延鋼板において、打ち抜き性を劣化させず、あるいは向上させ、かつ強度延性バランスを440MPa級フェライト・パーライト鋼板以上とすることができる。さらに、本発明の熱延鋼板によれば、従来、軽量化が余り進んでいなかった大型の乗用車の足回り部品やトラックの荷台フレームなどの分野での軽量化が期待でき、燃費の改善を通して二酸化炭素排出量の削減に寄与できる。
以下、実施例により本発明の効果をより明らかなものとする。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することができる。
(実施例1)
実施例1では、表1に示す化学成分を有する鋼片を製造し、表2に示す条件で種々の板厚の熱延鋼板とした。そして、得られた熱延鋼板を酸洗し、JIS Z 2201の5号引張試験片を採取し、JIS Z 2241に準拠して引張試験を行った。なお、本引張試験では、圧延方向と直角方向を引張方向とした。
また、実施例1では、パンチ径10mm、ダイ内径11.5mmの打ち抜き工具を使用して、試験材のそれぞれについて10個の穿孔を行った。そして、打ち抜き穴の断面を目視で観察し、剪断割れが生じた打ち抜き穴の数を調査した。その結果を表3に示す。
Figure 0004980253
Figure 0004980253
Figure 0004980253
表3に示すように、鋼No.D(本発明例)を用いた製造No.10(板厚5.0mm)の鋼板及び製造No.11(板厚5.5mm)の鋼板は、何れにおいても、化学成分が本発明の範囲外である鋼No.A〜C(比較例)を用いた製造No.1〜9の鋼板よりも、強度延性バランスが上回ることが明らかとなった。また、本発明例の鋼板では、剪断割れは全く発生しなかった。
一方、比較例の製造No.1〜3(板厚4.5mm)の鋼板のうち、金属組織がベーニティック・フェライトである製造No.3の鋼板は、引張強さ590MPa以上であり、金属組織がフェライト・パーライトである製造No.1及び2の鋼板よりも強度延性バランスが上回っている。しかしながら、比較例の製造No.4、5及び6(板厚が5.0mm)の鋼板、及び製造No.7、8及び9(板厚が5.5mm)の鋼板では、金属組織に因らず、強度延性バランスは同等である。
(実施例2)
実施例2では、表4に示す化学成分を有する鋼片を製造し、表5に示す条件で種々の板厚の熱延鋼板とした以外は、実施例1と同様にして、各鋼板の引張試験及び金属組織の観察を行った。その結果を表6に示す。
また、実施例2では、パンチ径30mm、ダイ内径31.6mmの打ち抜き工具を使用して、試験材のそれぞれについて10個の穿孔を行った。そして、打ち抜き穴の断面を目視で観察し、剪断割れの有無を調べたところ、金属組織は、何れの鋼板も、ベーニティック・フェライト相であり、また剪断割れは全ての鋼板で認められなかった。
Figure 0004980253
Figure 0004980253
Figure 0004980253
表6に示すように、鋼No.F(本発明例)を用いた製造No.16〜19の鋼板は、鋼No.E(比較例)を用いた製造No.12〜15の鋼板に比べて、強度延性バランスが良好である。一方、比較例の鋼板のうち、製造No.13〜15(板厚5mm超)の鋼板は、製造No.12(5mm以下)の鋼板に比べて強度延性バランスが低下している。
また、鋼No.F(本発明例)を用いた製造No.16〜19の鋼板のうち、本発明例の製造No.15〜19(板厚5mm超)の鋼板は、比較例の製造No.16(板厚が5mm以下)の鋼板に比べて、強度延性バランスが向上することが明らかとなった。
(実施例3)
実施例3では、表7に示す化学成分を有する鋼片を製造し、これらを1250℃に加熱し、圧延率85%、仕上温度900℃で熱間圧延を行い、平均冷却速度35℃/sで冷却して、620℃で巻取り、板厚8.0mmの熱延鋼板とした以外は、実施例1と同様にして、各鋼板の引張試験及び金属組織の観察を行った。その結果を表8に示す。
また、実施例3では、パンチ径22mm、ダイ内径24mmの打ち抜き工具を使用して、試験材のそれぞれについて10個の穿孔を行った。そして、打ち抜き穴の断面を目視で観察し、剪断割れの有無を調べたところ、圧延割れが発生したため評価を行わなかった鋼を除く全ての鋼板で、ミクロ組織はベーニティック・フェライト相であり、かつ、打ち抜きによる剪断割れの発生はなかった。
また、実施例3では、実施例1の製造No.4の鋼板を基準鋼とし、その強度延性の積(450MPa×39.9%)を基準にして、以下の式から表7に示す各対象鋼の改善率を求めた。
改善率(%)={(対象鋼の強度延性の積−基準鋼の強度延性の積)/(基準鋼の強度延性の積)}×100
なお、一部の鋼板では、表8中に「−」で示すように、圧延割れが発生したため改善率の評価を行わなかった。
Figure 0004980253
Figure 0004980253
表8に示すように、製造No.21,25,26,28,30,31,34(本発明例)の鋼板は、製造No.22〜24,27,29,32,33(比較例)の鋼板に比べて、強度延性バランスが向上することが明らかとなった。
以上のように、本発明によれば、従来鋼を上回る強度延性バランスを有し、打ち抜き性にも優れた厚手の熱延鋼板を得ることができる。
強度延性の積の改善率と、Si量及びCe量との関係を示す特性図である。

Claims (4)

  1. 質量%で、
    C :0.025〜0.08%、
    Si:0.005〜0.09%、
    Mn:1.0〜2.0%、
    Ti:0.05〜0.15%
    を含有し、
    P :0.02%以下、
    S :0.01%以下、
    Al:0.05%以下、
    N :0.01%以下
    に制限し、更に、
    Si/16≦Ce≦0.0060%
    を満たすようにCeを含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、
    ベーニティック・フェライト相を体積率で90%以上とする金属組織を有し、板厚が5mm以上であることを特徴とする強度延性バランスと打ち抜き性に優れた高強度熱延鋼板。
  2. 更に、
    Nb:0.01〜0.1%
    を含有することを特徴とする請求項1に記載の強度延性バランスと打ち抜き性に優れた高強度熱延鋼板。
  3. 更に、
    B :0.0003〜0.0020%
    を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の強度延性バランスと打ち抜き性に優れた高強度熱延鋼板。
  4. 請求項1〜3の何れか一項に記載の化学成分を有する鋼片を、1150〜1300℃に加熱し、板厚が5mm以上になるように、圧延率を60〜90%、仕上げ温度を850〜950℃とする熱間圧延を行い、平均冷却速度を20℃/s以上として冷却し、450〜650℃にて巻き取ることを特徴とする強度延性バランスと打ち抜き性に優れた高強度熱延鋼板の製造方法。
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