JP4525383B2 - 焼付硬化特性に優れる低降伏比高強度鋼板およびその製造方法 - Google Patents

焼付硬化特性に優れる低降伏比高強度鋼板およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、例えば、ドア、フード、ルーフなどの張出成形を主体とする自動車外板部品に適用可能な、優れた焼付硬化性を有する低降伏比高強度鋼板およびその製造方法に関する。
近年、自動車用鋼板に対しては、車体軽量化による燃費向上を目的とした鋼板の薄肉化および安全性向上のための高強度化が進められている。一般に鋼板の高強度化は成形性の劣化を招くという問題があるが、この課題を克服するために、プレス成形時には軟質で成形し易く、プレス成形後の焼付け塗装工程において、強度上昇を得る、いわゆる焼付硬化(BH)性を有する鋼板が開発されてきた。特に、自動車用外板部品では、この特性を活かして最終製品の局所的な残留へこみに対する抵抗力を高める効果が得られるため、BH性が重要視される。このBH鋼板は固溶C、Nを活用した歪時効現象により硬化させる技術であるが、一方でこの回溶CおよびNは常温においても時効が進行し、降伏強度の上昇、降伏点伸びが発生するため、長期間保持された場合は成形時にストレッチャーストレインが発生し、表面外観を損なうことがある。このような相反する特性である耐時効性とBH特性を両立させるために、例えば特許文献1には低炭素鋼においてSi、Mn、Pの少なくとも2種以上の添加量を最適化することでCの転位への偏析を抑制し、耐時効特性を向上させる方法が開示されている。
また、特許文献2には極低炭素鋼で変態時に多量の可動転位を導入することが可能な低温変態相を活用することで、常温非時効性で高いBH性を付与させる方法が開示されている。さらに、特許文献3にはマルテンサイト相の体積率を高めることにより、超高強度で、かつ優れたBH性を有する鋼板を得る方法が開示されている。
しかしながら上記の個々の従来技術には、以下のような問題点がある。
特許文献1の方法はSi、Mn、P等の固溶強化元素の上限を規定し、かつ合金元素を添加しない低炭素鋼板を用いるため、自動車外板パネル部材等の高強度化の目標である440MPa以上の強度を確保することは困難である。また降伏比が高いため、例えばプレス加工時の負荷が大きく、プレス加工そのものが困難になるばかりでなく、成形後の面ひずみやスプリングバック量の増大など、いわゆる形状不良が発生するため、本発明の対象とする自動車外板部品に適用可能なプレス成形性を有しているとは言い難い。
また、特許文献2の方法は、極低炭素鋼をベースにするため、必要とされる440MPa以上の高強度化を達成するためには、Si、P等の固溶強化元素を多量に添加するか、または低温変態相の硬度を上昇させるためにMn、Cr等を多量に添加する必要がある。また、オーステナイト相を安定化させ、低温変態相の単相組織を得るという点からも、Mn、Cr等の多量添加が必要となる。
しかしながら、Si、Pを多量に添加すると、赤スケールの発生や不めっき、化成処理不良などを発生させ、得られた鋼板は良好な表面性状を有しているとは言い難い状態となる。さらには、本発明が対象とする外板パネル用鋼板は、極めて優れた表面品質が求められるため、多量のMn、Cr添加も表面性状の観点から不利になるとともに製造コストの著しい増加を引き起こす。
また、特許文献3の方法は、体積率で30〜95%のマルテンサイト相を生じさせることで高いBH性を付与することが可能とされるが、マルテンサイト相分率の増加は同時に高強度化をもたらし、成形性が劣化する。
特開平5−105985号公報 特開平6−116650号公報 特開平3−87320号公報
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであって、引張強度が440MPa以上640MPa以下と高く、かつYRが55%以下の低降伏比であり、さらに優れた焼付硬化性を有しつつ、自動車内外板用途へ適用可能な成形性および表面品質を有する低降伏比高強度鋼板およびその製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明は、質量%で、C:0.01%以上0.040%未満、Si:1.0%以下、Mn:0.3〜1.6%、P:0.07%未満、S:0.03%以下、Al:0.01〜0.10%、N:0.01%以下、Cr:0.5%以下(無添加の場合を含む)、Mo:0.5%以下(無添加の場合を含む)を含有し、さらに、以下の式(1)を満足し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、鋼板組織として、体積分率で、フェライト相を70%以上、マルテンサイト相を1〜15%含むことを特徴とする焼付硬化特性に優れる低降伏比高強度鋼板を提供する。
1.3%≦Mn+1.29Cr+3.29Mo≦2.1% ・・・(1)
ただし、(1)式中Mn、Cr、Moは各元素の含有量を表す。
また、本発明は、上記鋼板において、質量%で、さらに、V:0.001〜0.1%、B:0.0001〜0.01%、Ti:0.001〜0.1%、Nb:0.001〜0.1%のうち1種または2種以上を含有することを特徴とする焼付硬化特性に優れる低降伏比高強度鋼板を提供する。
さらに、本発明は、上記いずれかの化学成分組成を有する鋼の熱延板を、冷間圧延し、Ac点以上Ac点以下の温度範囲で焼鈍した後、3〜20℃/secの冷却速度で550〜750℃の温度範囲まで1次冷却し、さらに100℃/sec以上の冷却速度で200℃以下まで2次冷却することを特徴とする焼付硬化特性に優れる低降伏比高強度鋼板の製造方法を提供する。
本発明者らは、良好な焼付硬化特性を有し、引張強度が440〜640MPaで、かつYRが55%以下となる低降伏比高強度鋼板を得るための成分設計を鋭意検討した。
その結果、C添加量が多くなると、固溶C量を増やすことが容易になるが、同時にマルテンサイト相や炭化物など第2相の増加をも招き易く、加工性が劣化するため、第2相による加工時の局部的な歪集中を避ける観点から、C量を所定の強度に対して必要最低限量とし、マルテンサイト相分率を体積比で1〜15%とすることが有効であることを見出した。
また、必要最低限のC量でマルテンサイト相を得るためには、焼入れ性向上元素であるMn、Cr、Moを制御することが極めて重要となる。Mn、Cr、Moはγ相を安定化させることで、焼入れ性を高める効果が得られるが、その効果の度合いはそれぞれ異なる。したがって、この度合いを反映させた重み付き合計量に着目し、検討を重ねた結果、マルテンサイト組織を得、かつ所望の焼付硬化性、成形性を満足させるためには、Mn、Cr、Moの重み付き合計量Mn+1.29Cr+3.29Moに最適な範囲が存在することを新たに知見した。
さらに、焼付硬化特性を最大限に高めるための製造条件として、連続焼鈍工程における2次冷却速度を大きくとることが有効であり、このとき同時に、焼入れ性向上元素の添加量を低減することができるため、優れたBH特性を有しつつ、同時に良好な加工性、表面性状を具備することが可能となる。
上記の検討結果より、良好な焼付硬化特性を有し、引張強度が440〜640MPaで、かつYRが55%以下となる低降伏比高強度鋼板を得るための条件が明確となった。
さらに本発明に係る鋼板においては、必要強度をマルテンサイト相による組織強化を主として目標強度を得るため、固溶強化元素であるSi、Pの多量添加を必要とせず、表面性状の面からも優位である。
上記構成を有する本発明は、以上のような知見に基づいて完成されたものであり、セミ極低炭素鋼板において、焼付硬化特性を向上させるために、焼入れ性向上元素を最適にし、かつ成形性の観点より、マルテンサイト相分率を特定の範囲に制御するものであるが、このような思想は、先行技術には存在しない。
本発明によれば、ドア、フード、ルーフなどの張出成形を主体とする自動車外板部品に適した成形性を有し、かつ軽量化を進める際に同等の耐デント特性を確保することが可能な優れた焼付硬化性を有し、現存の設備で工業的に製造することが可能な、引張強度が440〜640MPaで、かつYRが55%以下となる低降伏比高強度鋼板を提供することができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
まず、鋼板の化学成分組成について説明する。以下の説明において%は質量%を示す。
C:0.01%以上0.040%未満
Cは本発明において極めて重要な元素の1つであり、低温変態相を生成させ、高強度化を図る上で非常に有効である。しかし、C含有量が0.040%以上になると、加工性の著しい低下を招き、さらに溶接性も劣化させる。したがって、C含有量を0.040%未満とする。好ましくは0.03%以下である。一方、一定体積率の低温変態相を形成させ、十分な可動転位を導入する、または一定量の固溶Cを確保するためには、ある程度のCを含有させることが必要であるため、0.01%以上とする。
Si:1.0%以下
Siは複合組織を安定して得るために有効な元素である。しかし、Si含有量が1.0%を超えると表面性状および化成処理性が著しく低下する。したがって、Si含有量を1.0%以下とする。好ましくは0.8%以下、さらに好ましくは0.5%以下である。
Mn:0.3〜1.6%
Mnは低温変態相の生成に極めて重要な元素であり、焼入性を向上させる作用や、鋼中のSをMnSとして固定することにより、Sの粒界脆化作用に起因して発生する熟間圧延時のスラブ割れを防止する作用を有する必須元素であり、上記作用を有効に発揮させるため0.3%以上含有する必要がある。好ましくは0.6%以上、さらに好ましくは、硬質な低温変態相を得ることで低降伏比とする観点から1.0%以上である。しかし、Mn含有量が1.6%を超えると、スラブコストの著しい上昇とともに、外観不良や高強度化にともなって上昇する降伏強度により、プレス成形性の劣化や形状不良が発生する。したがって、Mn含有量を1.6%以下とする。
P:0.07%未満
Pは高強度化および低温変態相を安定させるために有効な元素である。しかし、P含有量が0.07%以上になると、亜鉛めっき層の合金化速度を低下させ、めっき不良や不めっきの原因となるとともに、鋼板の粒界に偏析して耐二次加工脆性を劣化させる。したがって、P量を0.07%未満とする。
S:0.03%以下
Sは、熱間圧延時に粒界に偏析し、スラブ割れを発生させるため、表面疵の発生割合を高くする。そのため、Mnを添加することで、SをMnSとして固定するが、過剰のMnSは加工時におけるボイドの起点となるために、加工性の低下を招く。したがって、Sの含有量は少ない方が望ましく、S量が0.03%を超えると加工性が著しく劣化することから、S含有量を0.03%以下とする。
Al:0.01〜0.1%
Alは脱酸元素として鋼中の介在物を減少させる作用を有している。しかし、Al含有量が0.01%未満では上述した作用が安定して得られない。一方、Al量が0.1%を超えると、クラスター状のアルミナ系介在物が増加し、加工性を劣化させる。したがって、Al含有量を0.01〜0.1%の範囲内とする。
N:0.01%以下
Nは加工性および時効性の観点から少ない方がよく、N含有量が0.01%を超えると、過剰な窒化物の生成により、延性および靭性が劣化する。したがって、N含有量を0.01%以下とする。
Mn+1.29Cr+3.29Mo:1.3〜2.1%
(ただし、Cr:0.5%以下、Mo:0.5%以下)
Mn、Cr、Moは焼き入れ性を向上させる元素であり、低温変態相を生成させるために最適に制御することが極めて重要となる。Mn+1.29Cr+3.29Moは、これら各元素の焼入れ性の寄与に重みをつけた重み付き合計量であり、この重み付き合計量が1.3%未満になると、本発明が意図するDP(Dual Phase)組織を得ることが困難となり、マルテンサイト変態時に導入される可動転位の不足により耐時効性およびBH特性を損なう。さらには高降伏比となり、プレス加工そのものが困難になるばかりでなく、形状不良が発生しやすくなる。安定して優れたBH特性を得る観点からは、1.6%以上が好ましい。上記重み付き合計量を増加させるに従い、変態時に導入される可動転位が増加し、焼付塗装時に良好なBH特性が得られるようになるが、その重み付き合計量が2.1%を超える場合には、その効果が飽和するばかりか、合金元素多量添加による製造コストの増大を引き起こすとともに、高強度化に従って増加する降伏強度により、やはりプレス成形性が著しく低下する。本発明ではMnを必須添加とし、Cr、Moは必要に応じて添加するが、Cr、Moの含有量が0.5%を超える場合は、その効果が飽和するばかりか、製造コストの増加を招くため、これらを添加する場合には、それぞれ上限を0.5%とする。
本発明では、以上の他、選択成分として、V、B、Ti、Nbのうち1種以上を以下の範囲で含有してもよい。
V:0.001〜0.1%
Vは焼入性向上元素であり、低温変態相を安定して生成させるために必要に応じて添加することができ、その効果は0.001%以上で有効に発揮される。しかし、その含有量が0.1%を超えても、その効果は飽和するばかりか、コスト面でも不利となる。したがって、Vを添加する場合には、その含有量を0.001〜0.1%とする。
B:0.0001〜0.01%
Bは焼入性向上に有効な元素であり、低温変態相を安定して得るために必要に応じて添加することができ、その効果は0.0001%以上で有効に発揮される。しかし、その含有量が0.1%を超えても、コストに見合う効果が得られない。したがって、Bを添加する場合には、その含有量を0.0001〜0.01%とする。
Ti、Nb:それぞれ0.001〜0.1%
Ti、Nbは、炭窒化物を形成して、深絞り性を向上させるために有効な元素であり、その効果は0.001%以上で有効に発揮される。しかし、いずれもその含有量が0.1%を超えても、その効果は飽和し、焼鈍時の再結晶温度が高くなって製造性が低下する。したがって、Ti、Nbを添加する場合には、その含有量をそれぞれ0.001〜0.1%とする。
なお、以上の元素および残部のFeの他、製造過程で各種不純物元素および製造過程で必須な微量添加元素等が不可避的に混入するが、このような不可避的な不純物は本発明の効果に特に影響を及ぼすものではなく、許容される。
次に、鋼板の組織について説明する。
本発明では、上記化学成分組成を満たす他、鋼板組織が、体積分率で、フェライト相70%以上、マルテンサイト相1〜15%であることが必要である。
本発明では、高い成形性を具備するために、軟質なフェライト相を主体とし、さらに、従来のDP鋼と比較してマルテンサイト相分率を抑えた組織を得ることが重要となる。ただし、マルテンサイト相は、変態時に導入される可動転位が固溶C、Nにより固着されることで高いBH性を得ることができるため、一定量のマルテンサイト相が必要であり、最適な分率に制御する必要がある。このような観点から、フェライト相の体積分率を70%以上とし、マルテンサイト相の体積分率を1〜15%とする。フェライト相の体積分率は好ましくは80%以上である。また、マルテンサイト相の体積分率は、成形性の観点から10%以下とすることが好ましく、さらに好ましくは8%以下である。なお、その他の組織として、残留γ相、ベイナイト相、炭化物が含まれてもよい。
次に、製造条件について説明する。
本発明の鋼板は、上記化学成分組成を有する鋼の熱延板を、冷間圧延し、Ac点以上Ac点以下の温度範囲で焼鈍した後、3〜20℃/secの冷却速度で550〜750℃の温度範囲まで1次冷却を行い、さらに100℃/sec以上の冷却速度で200℃以下まで2次冷却することにより得ることができる。
焼鈍温度:Ac点以上Ac点以下
焼鈍温度は、フェライト相十低温変態相のミクロ組織を得るため、適切な温度に加熟する必要がある。焼鈍温度がAc点未満では、オーステナイト相が生成せず、低温変態相を得ることができない。一方、焼鈍温度がAc点を超えると、フェライト相が全量オーステナイト化するため、再結晶により得られた成形性等の特性が劣化する。したがって、焼鈍温度をAc点以上Ac点以下とする。好ましくはAc点以上Ac点+100℃以下とすることが好ましく、さらにAc点+80℃以下とすることがより好ましい。
1次冷却:冷却速度3〜20℃/sec、冷却停止温度550〜750℃
1次冷却の冷却速度および冷却停止温度は、パーライト析出を抑制し、オ―ステナイトの体積率を確保するために、適切に制御する必要がある。冷却速度が20℃/secを超えると、フェライト相とオーステナイト相の2相分離が十分に進まない場合もある。その場合、硬質な低温変態相が得られなくなり、所望の特性が得られなくなる。また、1次冷却速度が3℃/sec未満の場合、パーライト変態が起こり、成形性が劣化する。したがって、1次冷却の冷却速度を3〜20℃/secとする。また、冷却停止温度が750℃より高い場合は、オーステナイトの体積率が高い状態で2次冷却されるため、低温変態相の体積率が大きくなり、加工性の劣化を招く。一方、冷却停止温度が550℃より低くなると冷却中にベイナイト変態が起こりやすく、所望のマルテンサイト体積率を得ることが困難になる。したがって、1次冷却の冷却停止温度は550〜750℃の範囲内とする。
2次冷却:冷却速度100℃/sec以上、冷却停止温度200℃以下
2次冷却の冷却速度が100℃/sec未満であるか、または、冷却停止温度が200℃を超える場合には、マルテンサイト変態に対する駆動力が不十分となり、所望のマルテンサイト相分率が得られなくなる。また、冷却速度が不十分の場合、フェライト相中の固溶C量が少なくなり、所望のBH特性が得られなくなる。本発明の求めるBH特性を得るためには、上述の冷却速度を必要とするが、この2次冷却条件はマルテンサイト変態の駆動力を得るために必要十分な過冷却条件でもあるため、一般のDP鋼に対して合金元素添加量を低減することができ、優れたBH特性を有しつつ、同時に良好な加工性を得ることが可能となる。したがって、2次冷却速度を100℃/sec以上とし、かつ冷却停止温度を200℃以下とする。好ましくは冷却速度200℃/sec以上、かつ冷却停止温度100℃以下である。この際、冷却方法は限定しないが、例えば噴流水中に焼入れる方法により、このような2次冷却条件を満足することが可能である。なお、1次冷却停止温度で保持した場合は、パーライト変態が開始し、所望のマルテンサイト分率が得られなくなる場合があるため、2次冷却は1次冷却に引き続いて行うことが好ましく、1次冷却終了から10sec以内に行うことが望ましい。
また、2次冷却後、靭性を回復させるために400℃以下で焼き戻し処理を行うことが好ましい。焼き戻し処理温度が400℃を超える場合、著しく強度が低下し、さらに、固溶Cが析出することでBH特性が低下するため、好ましくない。望ましくは300℃以下である。
以上のようにして得られた冷延鋼板に、さらに調質圧延を行ってもよい。ただし、大きな調圧の付加は延性の低下および降伏応力の上昇を引き起こすため調圧率1.5%以下が望ましい。
なお、本発明においては、スラブを熱間圧延するにあたって、加熱炉で再加熱後に圧延してもよいし、または加熱することなく直送圧延することもできる。また、熱延仕上圧延温度は、Ar点以上で実施するのがよい。冷圧率については、通常の操業範囲内の50〜85%とすればよい。
また、本発明では、以上のような冷延鋼板に電気亜鉛系めっきあるいは溶融亜鉛系めっきを施してもよく、溶融亜鉛系めっき鋼板の場合、合金化処理を施してもよい。また、このようなめっき鋼板には、めっき後さらに有機皮膜処理を施してもよい。
以下、本発明の実施例について説明する。
(実施例1)
表1に示すNo.1〜15の鋼を溶製後、連続鋳造によりスラブを製造した。これらのうちNo.1〜9は本発明の範囲内であり、No.10〜15は、C量、Mn量、Cr量、Mn+1.29Cr+3.29Moのいずれかが本発明の範囲外のものである。
これらスラブを1200℃に加熱後、Ar点以上の温度で仕上圧廷を行い、巻取り温度550℃で厚さ3.2mmの熱延板とし、酸洗後、厚さ0.75mmに冷間圧延した。次いで、連続焼鈍工程において770℃で焼鈍し、冷却速度8℃/sec、冷却停止温度600℃で1次冷却を行った後、冷却速度1000℃/secの水冷により室温まで2次冷却を行った。その後、150℃で10min保持する焼戻し処理を行い、表2のNo.1〜15の焼鈍板を得た。
得られた焼鈍板について、機械特性の評価、BH性の評価、組織観察、および成形性の評価を行った。機械的特性は、焼鈍板からJIS5号引張試験片を採取して評価した。BH性は、JIS5号引張試験片を採取し、2%の予歪を付加後、170℃×20minの熱処理を施し、その後再度引張試験を行った時のYP増加量で評価した。また、組織観察は、試験片をナイタール腐食し、2000倍で板厚中央部を連続的に縦100μm×横200μmの視野をSEM観察し、フェライト相分率およびマルテンサイト相分率を測定した。
また、成形性は、ブランク角160mmのサンプルを採取後、800mmR円筒面のポンチでプレス成形を行い、割れ、しわが発生しない場合は○、発生した場合は×で評価した。
以上により評価した機械特性、BH特性、フェライト相分率、マルテンサイト相分率、そして成形性を表2に示す。比較例であるNo.10はC含有量が本発明の範囲より低いため、マルテンサイト相組織が得られず、BH特性が劣っていた。また比較例であるNo.11はC含有量が本発明の範囲を超えており、マルテンサイト相分率が高く、成形性が劣っていた。
C量が規定範囲外となるNo.10、11を除き、Mn、Cr、Moの重み付き合計量Mn+1.29Cr+3.29MoがBH量に及ぼす影響を調査した。その結果を図1に示す。図1に示すように、Mn+1.29Cr+3.29Moが1.3%以上でBH量が60MPa以上を有していた。60MPa以上のBH量は、現状、自動車の外板パネルに適用されている鋼板に対し、高張力鋼適用による軽量化を行う場合に、同等の耐デント特性を確保するために必要なBH量である。また、Mn+1.29Cr+3.29Moが1.6%以上になると、BH量が80MPa以上となり、より好ましいことがわかる。一方、Mn+1.29Cr+3.29Moが1.3%未満のNo.14は、マルテンサイト相組織が得られず、BH量が低下しており、かつ高YRによりプレス成形性が劣っていた。また、Mn+1.29Cr+3.29Moが2.1%を超えるNo.13は、BH特性向上効果は飽和しており、合金元素の多量添加により成形性が劣っていることがわかる。
また、それぞれ、Mn、Crの含有量が多いNo.12、No.15は、BH特性は良好であったが成形性が劣っていた。
これに対し、Mn+1.29Cr+3.29Moのほか、他の要件も本発明を満足する本発明例のNo.1〜9は、上述のようにBH量が60MPa以上と優れたBH特性を有している他、引張強度が440〜640MPaの範囲内であり、さらにYRが55%以下と低降伏比であり、かつ良好な成形性を有していることが確認された。
Figure 0004525383
Figure 0004525383
(実施例2)
表1に示すNo.1〜3の鋼を溶製後、連続鋳造によりスラブとし、このスラブに対して、実施例1と同じ条件で、熱間圧延および冷間圧延を行った後、表3に示す条件で連続焼鈍工程を行い、さらに150℃で10min保持する焼戻し処理を行い、No.16〜31の焼鈍板を得た。得られた焼鈍板のそれぞれについて、実施例1と同様に機械特性の評価、BH性の評価、組織観察、および成形性の評価を行った。機械特性、BH特性、フェライト相分率、マルテンサイト相分率、成形性の評価結果を併せて表3に示す。
表3に示すように、本発明例であるNo.16、17、21、22、23、24、27、28は、いずれも引張強度が440〜640MPaの範囲内であり、かつBH量が60MPa以上の優れたBH特性を有しており、さらにYRが55%以下と低降伏比を有している。ただし、No.23、24はNo.21、22と比較して、降伏比が高く、BH量が低かった。これはNo.23の2次冷却停止温度が180℃と高く、またNo.24の2次冷却速度が150℃/secと他の本発明例より遅かったためと考えられ、2次冷却速度は200℃/sec以上、2次冷却停止温度は100℃以下が好ましいことがわかった。
一方、比較例であるNo.18〜20、25、26、29〜31は、いずれも成分組成が本発明範囲内であるにもかかわらず、焼鈍条件が本発明範囲外であるため、いずれかの特性が劣っていた。例えば、No.19、25、30はマルテンサイト相組織が得られず、BH特性の劣化および降伏比の上昇がみられる。No.29はマルテンサイト相分率が高く、成形性が劣っていた。No.18、20はオーステナイト相が安定化せず、炭化物が多数析出するため、降伏比が高く、成形性が劣っていた。No.26は冷却不足により、BH量が低下していた。No.31は、2次冷却時に200℃以下まで冷却しなかったため、硬質なマルテンサイト相が得られず、降伏比(YR)が高く、成形性が劣っていた。
Figure 0004525383
Mn、Cr、Moの重み付き合計量であるMn+1.29Cr+3.29MoがBH量に及ぼす影響を示す図。

Claims (3)

  1. 質量%で、C:0.01%以上0.040%未満、Si:1.0%以下、Mn:0.3〜1.6%、P:0.07%未満、S:0.03%以下、Al:0.01〜0.10%、N:0.01%以下、Cr:0.5%以下(無添加の場合を含む)、Mo:0.5%以下(無添加の場合を含む)を含有し、さらに、以下の式(1)を満足し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、鋼板組織として、体積分率で、フェライト相を70%以上、マルテンサイト相を1〜15%含むことを特徴とする焼付硬化特性に優れる低降伏比高強度鋼板。
    1.3%≦Mn+1.29Cr+3.29Mo≦2.1% ・・・(1)
    ただし、(1)式中Mn、Cr、Moは各元素の含有量を表す。
  2. 質量%で、さらに、V:0.001〜0.1%、B:0.0001〜0.01%、Ti:0.001〜0.1%、Nb:0.001〜0.1%のうち1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の焼付硬化特性に優れる低降伏比高強度鋼板。
  3. 請求項1または請求項2に記載の化学成分組成を有する鋼の熱延板を、冷間圧延し、Ac点以上Ac点以下の温度範囲で焼鈍した後、3〜20℃/secの冷却速度で550〜750℃の温度範囲まで1次冷却し、さらに100℃/sec以上の冷却速度で200℃以下まで2次冷却することを特徴とする焼付硬化特性に優れる低降伏比高強度鋼板の製造方法。
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