JPH11343535A - 塗装焼付硬化型高張力鋼板およびその製造方法 - Google Patents
塗装焼付硬化型高張力鋼板およびその製造方法Info
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- JPH11343535A JPH11343535A JP14915998A JP14915998A JPH11343535A JP H11343535 A JPH11343535 A JP H11343535A JP 14915998 A JP14915998 A JP 14915998A JP 14915998 A JP14915998 A JP 14915998A JP H11343535 A JPH11343535 A JP H11343535A
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Abstract
プレス成形後の降伏応力が380MPa以上で、BH量が30MP
a 以上である加工用高張力鋼板およびその製造方法を提
供する。 【解決手段】 C:0.03〜0.20%、Si:0.005 〜1.5
%、Mn:0.05〜3.5 %、P:0.005 〜0.15%、Al:0.00
5 〜0.2 %、N:0.020 %以下を含み、さらにNb、Ti、
Vのうちから選ばれた1種または2種以上、Cu、Ni、C
r、Moのうちから選ばれた1種または2種以上、Bを必
要に応じ含有する鋼素材に、Ar3変態点〜(Ar3変態点
−100 ℃)の温度範囲における圧下率が50%以上、最終
パスの圧下率が15%以下で、かつ仕上げ圧延温度が(A
r3変態点−100 ℃)以上、巻取温度が600 ℃以下とする
熱間圧延を施し、フェライトを母相とし、第2相として
5%以上のマルテンサイトを含む組織とする。
Description
どの加工を施して自動車車体などに用いて好適な鋼板に
係り、とくに低ヤング率を有し、かつ、塗装焼付処理を
施される用途に用いて好適な塗装焼付硬化性(BH性)
を有する高張力鋼板およびその製造方法に関する。本発
明における鋼板とは、鋼帯をも含むものとする。
スの排出を規制する動きが活発となっており、自動車の
軽量化による燃費改善が注目されている。自動車の軽量
化を進めるうえでは、自動車車体で多くの割合を占める
鋼板を薄肉化するのが有効な手段であり、使用される鋼
板が薄肉化される傾向にある。鋼板の薄肉化を目的とし
て、最近では、340MPa以上の引張強さを有する高張力鋼
板が開発され、広く使用されている。しかし、鋼板の高
強度化は、鋼板のプレス成形性を劣化させる傾向があ
り、プレス成形性と高強度化とを両立させた鋼板が要望
され、塗装焼付硬化型の鋼板が開発されている。この鋼
板は、プレス加工後に通常100 〜200 ℃の高温保持を含
む塗装焼付処理を施すと、降伏応力が上昇する鋼板であ
る。このような塗装焼付硬化型鋼板では、概ね30MPa 以
上の塗装焼付硬化量(BH量)が必要とされている。
使用する鋼板が薄肉化されると、一般的に、車体の剛性
が低下することは避けられず、薄肉化における技術的壁
となっていた。このため、最近になって、車体の設計に
あたり、部品によっては弾性範囲内である程度の歪を生
じることを許容することが検討されている。このような
設計指針のもとでは、同じ降伏応力を有する鋼板であれ
ば、塑性変形が生じるまでの歪が大きいこと、すなわち
ヤング率が小さい鋼板であることが望ましい。
されると、部材をプレス成形後、組立てまでの搬送工程
中に衝撃等の負荷により、容易に部材の塑性変形が発生
しデントなどの欠陥が生じるという問題があった。ま
た、組立て時にスポット溶接などで接合されるフランジ
部なども衝撃等による変形が大きくなる傾向があり、組
立工程で不良が発生するという問題があった。低ヤング
率でかつ高降伏応力である鋼板であれば、このような衝
撃等による負荷を弾性変形内で吸収し塑性変形を防止す
ることが可能となる。
る方法については、現在までほとんど知られていない。
鋼板のヤング率に関する従来の知見は、例えば、特開平
4-143216号公報に開示されているように、高ヤング率を
得ようするものばかりであり、ヤング率を低下させよう
とするものは皆無である。なお、ヤング率が低い鉄系材
料として鋳鉄が知られているが、板形状に製造すること
が工業的に困難であり、また安定して低ヤング率を得る
ことが難しいといった問題があった。
開示されているように、鉄単結晶では<100 >方向のヤ
ング率が低いことが知られており、また、特開昭62-284
016号公報には、ND//<100 >(圧延面法線方向に結晶
の<100 >方向が平行となる結晶方位)集合組織を発達
させるためにAr3変態点以下で仕上げ圧延を行うことが
提案されている。しかしながら、実際には、単にAr3変
態点以下で仕上げ圧延を行っても、低ヤング率鋼板の熱
延条件の適正化についてはまだよく知られておらず、低
ヤング率鋼板を安定して製造することは困難であるのが
現状である。
100 >集合組織を発達させる方法も考えられるが、Siな
どの合金元素を多量に添加するのため、加工性が劣化し
加工用鋼板として十分な成形性を具備させることが困難
となる。すなわち、加工用高張力鋼板としては、プレス
成形性(延性で30%以上)と高強度化とを両立させ、し
かも低ヤング率を具備する高張力鋼板を安定して製造す
ることができなかった。
とえばオーステナイト系ステンレス鋼は、ヤング率は低
めであるが、加工用鋼板としては、コスト高となる。
指針に適応し、塗装焼付処理を施される用途に好適な、
高強度化と成形性が両立し、しかも低ヤング率を有し、
かつプレス成形後の降伏応力が380MPa以上である塗装焼
付硬化型高張力鋼板およびその製造方法を提供すること
を目的とする。低ヤング率を有し、かつプレス成形後の
降伏応力が380MPa以上となる高張力鋼板であれば、プレ
ス成形後成形部材組立てまでの搬送工程で受ける衝撃等
を弾性変形で吸収し塑性変形を防止でき、組立て時の欠
陥発生を防止できる。なお、低ヤング率とは、具体的に
は、ヤング率Eが室温で200GPa以下を目標とする。
課題を達成するため、鋭意実験、検討を行った。その結
果、強度を確保し、かつBH性を高めるため母相フェラ
イト中に面積率で5%以上のマルテンサイトを存在さ
せ、さらに、Ar3変態点〜(Ar3変態点−100 ℃)の温
度範囲で、圧延時の歪蓄積を回避しつつ、所定量以上の
圧下を加える熱間圧延を施すことにより、低ヤング率を
有し、かつプレス成形後の降伏応力が380MPa以上とな
り、さらにBH量が高い高張力鋼板を得ることができる
ことを知見した。
を説明する。0.05wt%C−0.01wt%Si−1.2wt %Mn−0.
05wt%Al−0.002wt %N−0.5wt %Cr−0.0003wt%B組
成の鋼素材を、実験室で1100℃に加熱し、粗圧延し、さ
らに仕上げ圧延として、3パスで全圧下率40、50、60%
の圧延もしくは5パスで全圧下率50%の圧延を650 〜95
0 ℃の各温度で行い、ついで仕上げ圧延終了後、30℃/s
以上の冷却速度で約750 ℃まで急冷し、約10sec 間空冷
ののち、30℃/s以上の冷却速度で冷却し、約450 ℃でコ
イルに巻き取り、熱延板とした。なお、仕上げ圧延中は
適宜炉内で保温し、各パスにおける圧延温度を一定に保
った。また、各パスの圧下率は、全圧下率40%の場合は
20-15-10%、全圧下率50%の場合は30-20-10%、全圧下
率60%の場合は30-30-15%、全圧下率50%(5パス)の
場合は15-15-15-10-10%、とした。この処理により、こ
れら熱延板はフェライト相を母相とし、面積率で5%以
上のマルテンサイト相を有する組織と、BH量30MPa 以
上、プレス成形後の降伏応力380MPaを有する鋼板となっ
た。
(測定温度:室温(20℃))によりヤング率を測定し
た。ヤング率Eは、次(1) 式 E=(E0 +2E45+E90)/4 …………(1) ただし、E0 、E45、E90はそれぞれ圧延方向、圧延方
向に45°、圧延方向に90°の方向のヤング率(GPa )。
で定義される平均のヤング率を用いている。その結果を
図1に示す。
変態点〜(Ar3変態点−100 ℃)の温度範囲で50%以上
の圧下率で熱間圧延することにより、ヤング率Eが急激
に低下することがわかる。同じ圧下率ではパス数が多い
5パス圧延のほうが、圧延温度の広い範囲で安定してヤ
ング率が低下している。本発明は、上記した知見に基づ
いて完成されたものである。
とし、第2相としてマルテンサイト相を面積率で5%以
上含み、かつ次(1)式 E=(E0 +2E45+E90)/4 …………(1) (ただし、E0 、E45、E90はそれぞれ圧延方向、圧延
方向に45°、圧延方向に90°の方向のヤング率(GPa
))で定義されるヤング率Eが200GPa以下であり、プ
レス成形後の降伏応力が380MPa以上、塗装焼付硬化量
(BH量)が30MPa 以上であることを特徴とする塗装焼
付硬化型高張力鋼板である。また、本発明では、さらに
次(2)式 YR=(YS0 +2YS45+YS90)/(TS0 +2TS45 +TS90)…(2) (ただし、YS0 、YS45、YS90はそれぞれ圧延方向、圧延
方向に45°、圧延方向に90°の方向の降伏応力(MPa )
で、TS0 、TS45、TS90はそれぞれ圧延方向、圧延方向に
45°、圧延方向に90°の方向の引張強さ(MPa )であ
る。)で定義されるYRが0.7 以下であるのが好ましい。
0.20%、Si:0.005 〜1.5 %、Mn:0.05〜3.5 %、P:
0.005 〜0.15%、S:0.02%以下、Al:0.005 〜0.2
%、N:0.020 %以下を含み、残部Feおよび不可避的不
純物からなる組成を有し、フェライト相を母相とし、第
2相としてマルテンサイト相を面積率で5%以上含有す
る組織を有し、かつ前記(1)式で定義されるEが200G
Pa以下であり、プレス成形後の降伏応力が380MPa以上、
塗装焼付硬化量(BH量)が30MPa 以上であることを特
徴とする塗装焼付硬化型高張力鋼板である。また、本発
明では、さらに前記(2)式で定義されるYRが0.7 以下
であるのが好ましい。また、本発明では、前記組成に加
えて、さらに、Nb、Ti、Vのうちから選ばれた1種また
は2種以上を合計で0.005 〜0.20%、またはCu、Ni、C
r、Moのうちから選ばれた1種または2種以上を合計で
0.005 〜1.0 %、あるいはNb、Ti、Vのうちから選ばれ
た1種または2種以上を合計で0.005 〜0.20%およびC
u、Ni、Cr、Moのうちから選ばれた1種または2種以上
を合計で0.005 〜1.0 %、を含有してもよい。また、本
発明では、前記組成に加えて、さらにB:0.0005〜0.00
5 %を含有してもよい。
E90は室温での値とする。室温とは、0〜30℃を意味
し、ヤング率の測定温度としては、10〜25℃が好適であ
る。また、本発明は、重量%で、C:0.03〜0.20%、S
i:0.005 〜1.5 %、Mn:0.05〜3.5 %、P:0.005 〜
0.15%、S:0.02%以下、Al:0.005 〜0.2 %、N:0.
020 %以下を含有する組成の鋼素材に、Ar3変態点〜
(Ar3変態点−100 ℃)の温度範囲における圧下率が50
%以上、最終パスの圧下率が15%以下で、かつ仕上げ圧
延温度が(Ar3変態点−100 ℃)以上とし、巻取温度が
600 ℃以下とする熱間圧延を施すことを特徴とする塗装
焼付硬化型高張力熱延鋼板の製造方法である。ここで、
前記熱間圧延を、Ar3変態点以下での、最終パスを除く
パスの圧下率が30%/パス以下、圧延パス数が5パス以
上となる熱間圧延とするのが好ましい。また、本発明で
は、前記組成に加えて、さらに重量%で、Nb、Ti、Vの
うちから選ばれた1種または2種以上を合計で0.005 〜
0.20%またはCu、Ni、Cr、Moのうちから選ばれた1種ま
たは2種以上を合計で0.005 〜1.0 %、あるいはNb、T
i、Vのうちから選ばれた1種または2種以上を合計で
0.005 〜0.20%およびCu、Ni、Cr、Moのうちから選ばれ
た1種または2種以上を合計で0.005 〜1.0 %、を含有
してもよい。また、本発明では、前記組成に加えて、さ
らにB:0.0005〜0.005 %を含有してもよい。
20%、Si:0.005 〜1.5 %、Mn:0.05〜3.5 %、P:0.
005 〜0.15%、S:0.02%以下、Al:0.005 〜0.2 %、
N:0.020 %以下を含有する組成の鋼素材に、Ar3変態
点〜(Ar3変態点−100 ℃)の温度範囲における圧下率
が50%以上、最終パスの圧下率が15%以下で、かつ仕上
げ圧延温度が(Ar3変態点−100 ℃)以上とし、巻取温
度が600 ℃以下とする熱間圧延を施したのち、冷間圧
延、再結晶焼鈍を施すことを特徴とする塗装焼付硬化型
高張力冷延鋼板の製造方法であり、前記熱間圧延を、A
r3変態点以下での、最終パスを除くパスの圧下率が30%
/パス以下、圧延パス数が5パス以上となる熱間圧延と
するのが好ましい。また、本発明では、前記組成に加え
て、さらに重量%で、Nb、Ti、Vのうちから選ばれた1
種または2種以上を合計で0.005 〜0.20%またはCu、N
i、Cr、Moのうちから選ばれた1種または2種以上を合
計で0.005 〜1.0 %、あるいはNb、Ti、Vのうちから選
ばれた1種または2種以上を合計で0.005 〜0.20%およ
びCu、Ni、Cr、Moのうちから選ばれた1種または2種以
上を合計で0.005 〜1.0 %、を含有してもよく、また、
前記組成に加えて、さらにB:0.0005〜0.005 %を含有
してもよい。
加工性向上および微視組織の調整を目的とした熱延板焼
鈍を施してもよいことは言うまでもない。また、得られ
た鋼板にYRの向上を目的とした適正範囲の調質圧延を施
すことは、なんら本発明の趣旨を損なうものではない。
鋼板、およびこれら鋼板を原板とした表面処理鋼板を含
む。熱延鋼板は、熱間圧延後焼鈍などの熱処理を施され
た熱延焼鈍鋼板を含み、冷延鋼板は、冷間圧延後焼鈍を
施された冷延焼鈍鋼板、さらに冷延焼鈍後調質圧延を施
された冷延焼鈍調質鋼板が含まれる。また、熱延鋼板に
も、熱延後もしくは熱延焼鈍後に、調質圧延を施したも
のが含まれる。さらに、本発明の鋼板においては、表面
の酸化スケール層の有無は問わない。
るために、フェライト相を母相とする。フェライト以外
の組織を母相とすると、均一伸びが顕著に低下するた
め、プレス成形性が大きく低下する。本発明の鋼板は、
第2相としてマルテンサイト相を面積率で5%以上含
む。目標強度の増加とともに第2相の組織分率は高くな
るが、第2相が 30 %を超えると、同じく延性がが劣化
する。第2相として、マルテンサイトが最も望ましい
が、母相に対して10%以下のベイナイト、パーライトを
含んでいてもマルテンサイトが5%以上存在すれば所望
する有利な特性が発揮される。
方向に45°、圧延方向に90°の方向のヤング率(GPa
))で定義されるEが室温で200GPa以下である。ここ
で、室温とは、0〜30℃を意味し、ヤング率の測定温度
としては、10〜25℃が好適である。
るEが200GPaを超えると、組立て完了までに加えられた
衝撃等を弾性変形で吸収することが困難となり、部材に
塑性変形を生じる。なお、Eは好ましくは180GPa以下で
ある。ヤング率が低くなると、鋼板としての共振周波数
が低下し、車体としての防振範囲が広がる。
方向に45°、圧延方向に90°の方向の降伏応力(MPa )
で、TS0 、TS45、TS90はそれぞれ圧延方向、圧延方向に
45°、圧延方向に90°の方向の引張強さ(MPa )であ
る。)で定義されるYRが0.7 以下を有することが好まし
い。
性をはじめとして、いわゆる成形性が大きく改善される
という効果がある。YRを低くするには、鋼板の微視組織
をフェライト母相と、適正量のマルテンサイトを第2相
とし、ベイナイト等のマルテンサイト以外の組織分率を
マルテンサイトの50%以下とするのが好ましい。また、
調質圧延を施してもよいが、調質圧延によりYRが増加す
るため、使用目的に対しYRが適正範囲内となるよう調質
圧延圧下率を調整することが望ましい。本発明の鋼板
は、プレス成形後の降伏応力を380MPa以上となる降伏応
力を有する。ここに、プレス成形後とは一軸相当の歪が
10%以上となる加工をいう。塑性変形が生じるまでの弾
性変形エネルギーは(降伏応力)2/(2E)で表される。こ
のことから、弾性変形のエネルギーを大きくするために
は、Eを低くするか、プレス成形後の降伏応力を高める
ことが有効であり、プレス成形後の降伏応力を380MPa以
上と高めることにより、プレス成形後組立てまでの搬送
工程で受ける衝撃等の負荷による塑性変形を防止するこ
とができる。さらに、自動車外板として使用された場合
には、このようなヤング率が低く、降伏応力が高く、部
品となった時にYRが高い鋼板は、小石が衝突してもその
外力を弾性変形のみで吸収でき、凹み等の疵を残さない
という大きな利点がある。
の歪を生じる加工を施したのちの降伏応力が380MPa未満
では、低いヤング率を低くしても降伏を生じ変形してし
まう。さらに、本発明の鋼板は、塗装焼付硬化性(B
H)を有し、BH量:30MPa 以上の高BH性を有する。
BH性を付与するためには、フェライトと適正量のマル
テンサイトからなる微視組織とすることと、固溶C、N
を適正量残存させることが好ましい。これにより、プレ
ス成形が容易であり、塗装焼付処理後に高強度を有す
る。なお、仮に、10%までの歪が加えられない部分があ
っても同じく時効で強度が増加するため、凹み等の疵発
生防止に有効である。
限定について説明する。 C:0.03〜0.20% Cは、鋼板の強度を確保するうえで重要な元素である。
C量が0.03%未満では、目標とするフェライトとマルテ
ンサイトを有する微視組織を得ることは困難であり、ま
た所望の目標強度を満足しない。一方、C量が0.20%を
超えると、スポット溶接性、延性が劣化し、成形性が劣
化する。このため、Cは0.03〜0.20%に限定した。な
お、これら総合特性のバランスという観点から好ましく
は0.05〜0.15%である。
ために有効な元素である。この効果は0.005 %以上の添
加で認められる。しかし、1.5 %を超える添加は、鋼板
の強度を著しく増加させるため、例えば熱間変形抵抗の
増加等の鋼板製造工程における負荷が大きく製造にあた
り障害となる。このため、Siは0.005 〜1.5 %の範囲に
限定した。なお、高強度化の観点からは0.20%以上とす
るのが好ましく、主としてSi量増加により高強度化を達
成するためには1.2 %以上とするのがより好ましい。
組織の微細化および低温変態組織の形成に有効がある。
このような効果は0.05%以上の添加で認められるが、3.
5 %を超えて添加するとAr3変態点が低くなりすぎ、さ
らに圧延荷重の増大のためフェライト域での圧延が困難
となる。このため、Mnは0.05〜3.5 %に限定した。な
お、延性の低下を最小限とし、強度をプレス成形後の降
伏応力が380MPa以上となる高強度とするため、またフェ
ライトとマルテンサイトからなる微視組織とするために
は、Mnは0.5 %以上、好ましくは 0.8%以上添加するの
が望ましい。
この効果が認められるためには0.005 %以上の添加が必
要である。一方、0.15%を超えて添加した場合には鋼板
の延性が著しく低下する。このため、Pは0.005 〜0.15
%の範囲に限定した。なお、延性の低下を最小限とし、
Pを主たる強化元素として強度をプレス成形後の降伏応
力が380MPa以上となる高強度とするためには、Pは0.04
%以上とするのが好ましい。
るのが好ましい。延性確保の観点からは、0.02%まで許
容できる。とくに高い延性が要求される場合には、0.00
8 %以下とするのが好ましい。 Al:0.005 〜0.2 % Alは、脱酸元素として作用し、0.005 %以上の添加で鋼
中の酸化物量を十分低減できる。0.2 %を超える添加
は、アルミナクラスターを形成し表面欠陥が多発すると
ともに、熱間延性が低下する。このため、Alは0.005 〜
0.2 %の範囲に限定した。表面性状の観点からは0.005
〜0.15%の範囲とするのが好ましい。なお、Ti、Ca等の
他の脱酸元素を用いてAlを実質的に無添加としてもよ
い。
が、耐時効性を劣化させるため、耐時効性を劣化させな
い範囲で添加し高強度化を図ることができる。さらに、
塗装焼付処理時の硬化量を30MPa 以上とするために0.00
10%以上とするのが好ましい。しかし、過剰な添加は、
鋼板表面にブローホールを発生させるため、Nは0.02%
以下に限定する。とくに、延性が要求される用途の場合
には、Nは0.0050%以下とするのが好ましい。
2種以上を合計で0.005 〜0.20% Nb、Ti、Vは、いずれも炭化物あるいは窒化物を形成し
基地中に微細析出して鋼板の強度を増加させるととも
に、鋼板組織を均一かつ微細化する有効な元素であり、
必要に応じ添加できる。これら元素の1種または2種以
上複合して添加でき、合計量で0.005 %以上添加するこ
とにより効果が認められ。しかし、Nb、Ti、Vの合計で
0.20%を超えて添加すると効果が飽和し、添加量に見合
う効果が期待できない。そのため、Nb、Ti、Vは合計量
で0.005 〜0.20%の範囲に限定した。
たは2種以上を合計で0.005 〜1.0% Cu、Ni、Cr、Moは、固溶強化で鋼板の強度(降伏応力)
を増加させる元素であり、必要に応じ、これら元素のう
ちから1種または2種以上添加できる。Cu、Ni、Cr、Mo
はそれぞれ0.005 %以上の添加で効果が認められるが、
1.0 %を超える添加は鋼板を顕著に硬質化し、成形性を
劣化させる。このため、Cu、Ni、Cr、Moはそれぞれ0.00
5 〜1.0 %の範囲とするのが好ましい。また、複合して
添加する場合は、合計量で1.0 %を超える添加は、延性
を著しく低下させ、成形性を劣化させる。このため各元
素の合計量を1.0 %以下に限定するのが好ましい。
トからなる組織とするために、必要に応じ添加できる。
Bが0.0005%未満では、上記した効果が期待できない。
一方、0.005 %を超える添加では、表面性状が劣化す
る。このため、Bは0.0005〜0.005 %の範囲とするのが
好ましい。なお、材質の安定性の観点からより好ましく
は0.0005〜0.0030%である。
避的不純物としては、例えば、主としてスクラップより
混入するSnについては0.01%以下が許容できる。上記し
たように、主としてマルテンサイトによる変態組織強化
で鋼板の強度を増加させ、塗装焼付処理時の硬化量を30
MPa 以上とするためには、C:0.05%以上、Mn:0.8 %
以上を満足する組成とするのが好ましい。
造条件のもとで塗装焼付処理時の硬化量が30MPa 以上、
プレス成形後の降伏応力が380MPa以上となる高張力鋼板
となる。つぎに、上記した特性を有する鋼板の製造方法
について説明する。上記した組成範囲の鋼素材を加熱、
均熱したのち熱間圧延を施し熱延鋼板とする。本発明に
おいては、熱間圧延の加熱温度はとくに限定する必要は
ないが、コイル全長にわたり均一な材質とするため、熱
間圧延の加熱温度は1300℃以下とするのが好ましい。
圧延、より正確にはフェライトとオーステナイト2相共
存域圧延とし、圧延集合組織として、ヤング率の低減に
有効な、ND//<100 >集合組織を優先的に形成させる。
このためには、Ar3変態点〜(Ar3変態点−100 ℃)の
温度範囲で50%以上の圧下率で、最終パスの圧下率を15
%以下とし、圧延終了温度を(Ar3変態点−100 ℃)以
上とする圧延とするのが望ましい。フェライト域圧延に
より、圧延集合組織として、ND//<100 >、ND//<211
>、ND//<111 >が発達するが、この圧延条件では、い
ずれの集合組織も再結晶を生じるほど歪が蓄積しないた
め、結晶の回転が速いND//<100 >が他の集合組織の結
晶粒を侵食し、ND//<100 >集合組織を優先的に形成さ
れるものと考えられる。上記した範囲の圧延条件を外
れ、歪の蓄積が多くなると、再結晶の進行によりND//<
111 >集合組織の形成が促進され、また、蓄積された歪
により結晶の回転が阻害される。そのためND//<100 >
集合組織の形成が弱められ、低ヤング率が達成されない
うえ、組織の均一性が大きく低下する。
を超えると、フェライト域圧延とならないため、変態に
よる結晶粒のランダム化等によりND//<100 >集合組織
が形成されない。一方、(Ar3変態点−100 ℃)未満で
圧延すると歪が蓄積し、その結果、とくに歪が蓄積しや
すいND//<111 >が優先的に再結晶、成長する。なお、
Ar3変態点以下の圧延パス数は3パス以上とするのが望
ましい。
では、結晶の回転が少なくND//<100 >集合組織が形成
されない。最終パスは、最終的に蓄積される歪にもっと
も影響するため、このパスの圧下量を規制する。最終パ
スの圧下率が15%超えでは、歪の蓄積量が多くなる。ま
た、圧延終了温度が(Ar3変態点−100 ℃)未満では、
ND//<111 >方位の結晶粒が再結晶・成長しやすくな
り、ND//<100 >集合組織の形成が促進されない。
を除くパスの圧下率が30%/パス以下、圧延パス数が5
パス以上となる熱間圧延とするのが好ましい。これによ
り、ヤング率Eは180GPa以下となる。この条件を外れる
と、歪蓄積が増し、ND//<111 >集合組織の形成が促進
され、ND//<100 >集合組織の形成が弱められる。さら
に、熱間圧延終了後、鋼板はコイル状に巻取られる。巻
取温度は、微視組織形成の観点から600 ℃以下とするの
が好ましい。巻取温度が600 ℃を超えると、望ましい微
視組織とならずBH性が低下する。
低ヤング率化に有効な集合組織を効果的に形成できるよ
うになる。また、熱間圧延において、圧延荷重の低減を
目的とした潤滑圧延を行うことは、組織の均一化( とく
に、板厚方向)にも有効である。なお、フェライト相を
母相とし、マルテンサイト相を5%以上有する熱延組織
とするには、熱間圧延終了後の冷却過程において、フェ
ライト変態の進行領域(好ましくはフェライト変態ノー
ズ近辺の温度)で、炭素等を第2相に十分拡散させたの
ち、マルテンサイト変態温度を急冷で通過させればよ
い。鋼成分により具体的な条件は異なるが、概ね、次の
2つの冷却パターン、 フェライト変態ノーズ温度近辺まで急冷後、数秒間保
持し再びマルテンサイト変態温度以下まで急冷する。
後、マルテンサイト変態温度以下まで急冷する。 が好適である。後述の引張強さ、YR(降伏比)、BH量の
制御を含め、第2相の組織・比率・分布の制御自体は、
従来の種々の知見を活用して熱間圧延後の冷却パターン
を制御するなどすればよい。たとえば、の冷却パター
ンは特公昭61-11291号公報などに記載されている。ま
た、加工後の降伏応力は、本発明の鋼成分および組織に
おいては、引張強さを概ね500MPa以上とすることで、38
0MPa以上とすることができる。このため、熱延後の冷却
制御によりマルテンサイト量を確保するなどして引張強
さを所望の値に制御すればよい。YR、BH量はそれぞれ主
として冷却制御による熱延組織制御により所望の値を得
ることができる。具体的には、YRを0.7 以下とするに
は、既に述べたごとく第2相中のマルテンサイト比率を
確保するなどすればよい。また、BH量を30MPa 以上とす
るには、たとえば、における後段の冷却速度を速め
に設定するなどすればよい。
されて冷延鋼板とされる。熱間圧延のままでND//<100
>集合組織が十分に発達すれば、その後この熱延鋼板を
焼鈍しても、ND//<100 >集合組織が維持されることを
確認した。その後、冷間圧延−焼鈍、熱延板焼鈍−冷間
圧延−再結晶焼鈍工程を経ても、ND//<100 >集合組織
が維持され、鋼板は低ヤング率のままである。さらに、
調質圧延はヤング率にはほとんど影響しないため、鋼板
に調質圧延を施すことにより、低ヤング率のままで、鋼
板の降伏応力を高めることができる。
変態点以上、Ar3変態点以下、好ましくは、680 〜 850
℃(連続焼鈍)の温度で、必要に応じ行うことができ
る。また、冷間圧延は、40〜 95 %の圧下率で行うのが
操業安定性の観点から望ましい。圧下率が40%未満で
は、組織が不均一となり、95%を超えると圧延性が大き
く低下する。
炉で、Ac1変態点以上、Ar3変態点以下、好ましくは、
680 〜850 ℃(連続焼鈍)の温度で行うことができる。
なお、冷延焼鈍板に、圧下率7%以下の調質圧延を施し
てもよい。これにより、形状矯正、表面粗さの調整がで
き、さらに鋼板の降伏応力が増加し、YRが適正範囲内で
高くなる。
相を5%以上有する熱延焼鈍組織もしくは冷延焼鈍組織
とするためには、たとえば焼鈍に際してフェライト−オ
ーステナイト2相域に加熱し、その際加熱温度などによ
りフェライト−オーステナイトの比率を制御し、その後
冷却パターンを熱延鋼板と概ね同様の思想で制御すれば
よい。YR、BH量およびプレス成形後の制御についても同
様である。
以外に、加工用表面処理鋼板の原板として利用できるの
は言うまでもない。表面処理としては、亜鉛合金を含む
亜鉛めっき、錫めっき、有機複合めっき等がある。
し、連続鋳造法でスラブに鋳造した。これらスラブを12
50℃に加熱したのち、表2に示す熱間圧延条件で板厚1.
6 mmの熱延鋼板とした。得られた熱延鋼板から、試験片
を採取し、ヤング率を測定した。ヤング率の測定方法
は、圧延方向、圧延方向と45°、圧延方向と90°の各方
向について縦共振法により測定し、前記(1)式で定義
される平均Eを求めた。測定時室温は15℃であった。
鈍、 700 ℃×2 hの熱延板焼鈍−冷間圧延(圧下率60%)
−770 ℃×30sec の再結晶焼鈍、 の各工程を施された。これら各工程を経た鋼板につい
て、試験片を採取し、ヤング率を、熱延板と同様に測定
した。また、各鋼板の組織観察を行った。
引張特性(降伏応力、引張強さ、伸び)を測定した。さ
らに、10%の歪を与える引張変形を行い、変形後の降伏
応力を測定した。また、各鋼板について、一定の衝撃力
を与えて、生じた塑性変形量を、鋼No.1の熱延板の塑性
変形量を1として比較した。さらに、これら鋼板から試
験片を採取し、2%の引張予歪を与えたのち、170℃×2
0min の熱処理を施した時の熱処理前後の降伏応力の増
加量(BH量)を求めた。
母相とし、マルテンサイトを含む第2相を有する組織で
あった。表2〜表4から、本発明例は、いずれもヤング
率Eが200 GPa 以下の低ヤング率を有ししかも0.7 以下
の低いYRと、10%の変形後の降伏応力が380MPa以上、B
H量30MPa 以上の高張力鋼板である。さらに、本発明例
は、いずれも同一YS、YRの比較例とくらべ衝撃的な力に
よる塑性変形が少ないことがわかる。
低ヤング率で、プレス成形後の降伏応力も高く、衝撃的
な力による塑性変形が少なく、かつ塗装焼付硬性の高い
高張力鋼板が製造でき、自動車車体向けとして有用な加
工用高張力鋼板を安価に提供でき、産業上格段の効果を
奏する。さらに、本発明の低ヤング率高張力鋼板は、小
石が衝突した場合でも、その外力を塑性変形なしに吸収
できるという効果もある。また、さらにヤング率が低下
することにより、共振周波数が低下し、防振範囲が広が
るという効果も期待できる。
圧延温度と圧下率の影響を示すグラフである。
Claims (6)
- 【請求項1】 フェライト相を母相とし、第2相として
マルテンサイト相を面積率で5%以上含み、かつ下記
(1)式で定義されるEが200GPa以下であり、プレス成
形後の降伏応力が380MPa以上、塗装焼付硬化量(BH
量)が30MPa 以上であることを特徴とする塗装焼付硬化
型高張力鋼板。 記 E=(E0 +2E45+E90)/4 …………(1) ただし、E0 、E45、E90はそれぞれ圧延方向、圧延方
向に45°、圧延方向に90°の方向のヤング率(GPa )。 - 【請求項2】 重量%で、 C:0.03〜0.20%、 Si:0.005 〜1.5 %、 Mn:0.05〜3.5 %、 P:0.005 〜0.15%、 S:0.02%以下、 Al:0.005 〜0.2 %、 N:0.020 %以下を含み、残部Feおよび不可避的不純物
からなる組成を有し、フェライト相を母相とし、第2相
としてマルテンサイト相を面積率で5%以上含有する組
織を有し、かつ下記(1)式で定義されるEが200GPa以
下であり、プレス成形後の降伏応力が380MPa以上、塗装
焼付硬化量(BH量)が30MPa 以上であることを特徴と
する塗装焼付硬化型高張力鋼板。 記 E=(E0 +2E45+E90)/4 …………(1) ただし、E0 、E45、E90はそれぞれ圧延方向、圧延方
向に45°、圧延方向に90°の方向のヤング率(GPa )。 - 【請求項3】 前記組成に加えて、さらに重量%で、N
b、Ti、Vのうちから選ばれた1種または2種以上を合
計で0.005 〜0.20%、またはCu、Ni、Cr、Moのうちから
選ばれた1種または2種以上を合計で0.005 〜1.0 %、
あるいはNb、Ti、Vのうちから選ばれた1種または2種
以上を合計で0.005 〜0.20%およびCu、Ni、Cr、Moのう
ちから選ばれた1種または2種以上を合計で0.005 〜1.
0 %、を含有することを特徴とする請求項1に記載の塗
装焼付硬化型高張力鋼板。 - 【請求項4】 前記組成に加えて、さらに重量%で、
B:0.0005〜0.005 %を含有することを特徴とする請求
項2または3に記載の塗装焼付硬化型高張力鋼板。 - 【請求項5】 重量%で、 C:0.03〜0.20%、 Si:0.005 〜1.5 %、 Mn:0.05〜3.5 %、 P:0.005 〜0.15%、 S:0.02%以下、 Al:0.005 〜0.2 %、 N:0.020 %以下を含有する組成の鋼素材に、Ar3変態
点〜(Ar3変態点−100 ℃)の温度範囲における圧下率
が50%以上、最終パスの圧下率が15%以下で、かつ仕上
げ圧延温度が(Ar3変態点−100 ℃)以上とし、巻取温
度が600 ℃以下とする熱間圧延を施すことを特徴とする
塗装焼付硬化型高張力熱延鋼板の製造方法。 - 【請求項6】 重量%で、 C:0.03〜0.20%、 Si:0.005 〜1.5 %、 Mn:0.05〜3.5 %、 P:0.005 〜0.15%、 S:0.02%以下、 Al:0.005 〜0.2 %、 N:0.020 %以下を含有する組成の鋼素材に、Ar3変態
点〜(Ar3変態点−100 ℃)の温度範囲における圧下率
が50%以上、最終パスの圧下率が15%以下で、かつ仕上
げ圧延温度が(Ar3変態点−100 ℃)以上とし、巻取温
度が600 ℃以下とする熱間圧延を施したのち、冷間圧
延、再結晶焼鈍を施すことを特徴とする塗装焼付硬化型
高張力冷延鋼板の製造方法。
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