JP5047649B2 - 伸びフランジ成形性に優れた高強度熱延鋼板及び亜鉛めっき鋼板並びにそれらの製造方法 - Google Patents

伸びフランジ成形性に優れた高強度熱延鋼板及び亜鉛めっき鋼板並びにそれらの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、自動車、輸送機器などの分野で構造材、特に自動車の足廻り部品に好適である熱延鋼板、亜鉛めっき鋼板並びにそれらの製造方法に関する。
自動車を軽量化し、燃費を向上させるためにAl合金板や高強度熱延鋼板の使用部位が増加している。高強度鋼板はAl合金板よりも比強度は低いものの、低コストであるため、その使用部位は年々増加している。
特に、自動車のサスペンションアーム等の足廻り部品は、バーリング加工などの伸びフランジ加工により成形される部位があるため、Al合金の使用は困難であり、鋼板が使用されている。このような伸びフランジ性が要求される用途に適した高強度熱延鋼板が開発されており、例えば、Ti等の特殊炭化物によって高強度化を図った熱延鋼板が提案されている(例えば、特許文献1、2)。なお、特殊炭化物とは、マイクロアロイ元素(M元素ともいう。ここで、Mは、Ti、Nb、Mo、V、W、Ta、Zrの何れかである。)とCからなる炭化物であり、MC型炭化物(M=Ti、Nb、Mo、V、W、Ta、Zr)及びM2C型炭化物(M=Nb、V、Mo、W、Ta、Zr)の総称である。
更に、ミクロ組織を、フェライトを主体とする組織とし、特殊炭化物によって強度を向上させた熱延鋼板については、集合組織の制御によって成形性を向上させたもの(例えば、特許文献3)や、粒径及び粒界の形状を制御してクラックの進展を抑制して伸びフランジ性を高めたもの(例えば、特許文献4)も提案されている。
また、自動車の足廻り部品は繰り返し応力を受けるため、素材にも疲労特性が要求され、長時間厳しい腐食環境に曝される部位でもあり、めっきや塗装を施されることから、例えば亜鉛めっきや化成処理皮膜の密着性が要求される。疲労特性については、ミクロ組織を微細なフェライトとした熱延鋼板が提案されており(例えば、特許文献5)、耐食性については、表面のFe−Si系酸化物を含むスケールを制御する方法が提案されている(例えば、特許文献6)。更に、組成、熱延条件及び冷却条件を適正化して伸びフランジ性のバラツキを低減する方法が提案されている(例えば、特許文献7)。
しかし、特許文献3、特許文献4の実施例に示された熱延鋼板はSiを0.5%以上含有するものである。Siを過剰に添加すると、Fe−Si系酸化物を含むスケールを生成するため、熱延鋼板の表面状態を悪化させ、疲労特性や化成処理性、亜鉛めっきの密着性を低下させる。したがって、これらの発明では伸びフランジ成形性に優れ、かつ表面状態の良好な高強度熱延鋼板を製造することは困難である。
また、特許文献2、6及び7の熱延鋼板は、Bを含有しないものであり、特許文献1及び5の熱延鋼板は、Bを選択元素として含有するものの、特許文献1に示された実施例はBを含有するものはなく、これらの特許文献には、打ち抜き端面の損傷に関しても述べられていない。また、特許文献5に示された実施例でBを含有するものはSiを過剰に含有しており、化成処理性、めっきの密着性が改善できていない。
本発明者らの一部は、伸びフランジ性だけでなく、打ち抜き加工性を向上させるためにBを活用した熱延鋼板を特許文献8に提案した。この技術によれば、打ち抜き端面の損傷を抑えられる、即ち、耐打ち抜き割れ性を向上させることができる。しかし、特許文献8の実施例に示された熱延鋼板は、C又はSiを過剰に含有するもの、選択的に添加されるNbを過剰に含有するもの、TiC等の炭化物生成元素とN及びSの含有量の関係が適正でないもの、変態挙動に影響を及ぼすSi、Mn及びBの含有量の関係が最適でないものの何れかであり、鋼板の強度、打ち抜き端面の性状、疲労特性、化成処理性及びめっきの密着性の全てを極めて良好なレベルとすることができていなかった。
特開平10−195591号公報 特開2003−321739号公報 特開2002−180191号公報 特開2002−105595号公報 特開2000−328186号公報 特開2003−155541号公報 特開2004−225109号公報 特開2004−315857号公報 特開平1−185444号公報 日本鉄鋼協会基礎研究会ベイナイト調査研究部会編、「鋼のベイナイト写真集1」、日本鉄鋼協会、1992年6月出版
本発明は、伸びフランジ成形性に優れ、かつ打ち抜き端面の損傷を抑え、優れた疲労特性を有し、更に化成処理性の優れた高強度熱延鋼板及び、めっき密着性の優れた亜鉛めっき鋼板、並びにそれらを安価に、安定して製造する方法が確立されていないという現状に鑑み、伸びフランジ成形性、耐打ち抜き割れ性及び表面状態の全てが良好であり、引張強度が690MPa以上という高強度の熱延鋼板を安価に、安定して製造する技術を提供することを目的とするものである。
本発明者らは、係る課題を解決するため、C及びSiを低減し更にBを添加した鋼の、TiCの析出挙動と、オーステナイト相からフェライト相への変態(以下、γ/α変態という。)が開始する温度(以下、γ/α変態温度という。)との関係に注目し、検討を行った。その結果、γ/α変態温度を低下させると、TiCが微細に析出し、析出強化に寄与して、セメンタイトの生成も抑制されることがわかった。
これは、オーステナイト相中のTi及びCの固溶限がフェライト相中より大きく、オーステナイト相中のTi及びCの拡散もフェライト相中より遅いことに起因する。すなわち、TiCが析出し難いオーステナイト相をより低温まで安定にし、TiCが析出し易いフェライト相をより低温で生じさせることにより、TiCの析出開始が遅れ、フェライト相中でのTi及びCの拡散速度も遅くなり、TiCの析出及び粗大化を更に抑制することができたと考えられる。
本発明は、このような知見に基づいてなされたものであり、その要旨は以下の通りである。
(1)質量%で(以下同じ)、C:0.015〜0.06%、Si:0.5%未満、Mn:0.1〜2.5%、P≦0.10%、S≦0.01%、Al:0.005〜0.3%、N≦0.01%、Ti:0.01〜0.30%、B:2〜50ppmを含み、残部Fe及び不可避的不純物からなる鋼組成を有し、下記(1)式及び(2)式の関係を満足し、フェライトとベイニティックフェライト一方又は双方の面積率の合計が90%以上、セメンタイトの面積率が5%以下であり、引張強度が690MPa以上850MPa以下、穴拡げ値λが40%以上であることを特徴とする伸びフランジ成形性に優れた高強度熱延鋼板。
Figure 0005047649
ここで、C%、Ti%、N%、S%、Mn%、Si%は、C、Ti、N、S、Mn、Siの含有量[質量%]であり、BppmはBの含有量[ppm]である。
(2)さらに、質量%で、V:0.5%以下、W:1.0%以下、Nb:0.1%以下、Mo:0.5%以下、Ta:1.0%以下、Zr:1.0%以下の一種又は二種以上を含み、かつV、W、Nb、Mo、Ta、Zrの一種又は二種以上を合計して0.02%以上含み、(1)式及び(2)式の代わりに、下記(3)式及び(4)式の関係を満足することを特徴とする(1)記載の伸びフランジ成形性に優れた高強度熱延鋼板。
Figure 0005047649
ここで、C%、Ti%、V%、W%、Nb%、Mo%、Ta%、Zr%、N%、S%、Mn%、Si%は、C、Ti、V、W、Nb、Mo、Ta、Zr、N、S、Mn、Siの含有量[質量%]であり、BppmはBの含有量[ppm]である。
(3)前記(1)〜()のいずれかに記載の鋼板を製造する方法であって、前記(1)〜()のいずれかに記載の成分を有する鋳片を1100℃以上で加熱した後、仕上げ圧延温度Ar3以上で熱間圧延を終了し、ランアウトテーブルでの平均冷却速度を15℃/s以上とし、550℃未満で巻き取って鋼板とした後、更に、この鋼板を、500℃以上の昇温速度を0.2℃/s以下として、550〜650℃に加熱し、300s以上保持した後、0.3〜4℃/sの冷却速度で冷却することを特徴とする伸びフランジ成形性に優れた高強度熱延鋼板の製造方法。
)前記(1)〜()のいずれかに記載の鋼板を製造する方法であって、前記(1)〜()のいずれかに記載の成分を有する鋳片を1100℃以上で加熱した後、仕上げ圧延温度Ar3以上で熱間圧延を終了し、ランアウトテーブルでの平均冷却速度を15℃/s以上とし、550℃未満で巻き取って鋼板とした後、更に、この鋼板を、昇温速度を0.2℃/s超として、600〜800℃に加熱し、その後、10〜80℃/sの冷却速度で冷却することを特徴とする伸びフランジ成形性に優れた高強度熱延鋼板の製造方法。
(5)前記(4)記載の鋼板を製造する方法であって、前記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の成分を有する鋳片を1100℃以上で加熱した後、仕上げ圧延温度Ar3以上で熱間圧延を終了し、ランアウトテーブルでの平均冷却速度を15℃/s以上とし、550℃未満で巻き取って鋼板とした後、更に、この鋼板を、昇温速度を0.2℃/s超として、600〜800℃に加熱し、その後、5〜70℃/sの冷却速度で冷却して、電気亜鉛めっき又は溶融亜鉛めっきを施すことを特徴とする伸びフランジ成形性に優れた高強度亜鉛めっき鋼板の製造方法。
本発明によれば、自動車用に好適な、伸びフランジ性に優れ、かつ打ち抜き端面の割れがなく、疲労特性と化成処理性に優れた高強度熱延鋼板、更にめっき密着性にも優れた亜鉛めっき鋼板及びそれらの製造方法を提供することが可能になり、本発明による産業上の貢献は極めて顕著である。
本発明者らは、熱延鋼板の成分組成、熱延条件について鋭意研究を重ねた結果、次に述べる知見を得るに至った。
式(1)、(2)又は式(3)、(4)を満足する成分系の鋼は、熱間圧延後、冷却して巻き取る際に、特殊炭化物が微細に析出してセメンタイトの析出が抑制されるため、伸びフランジ成形に優れた高強度熱延鋼板が得られる。この時、鋼中のCはMC型炭化物として析出するため、セメンタイトの析出量は非常に僅かであり、セメンタイトの析出抑制元素であるSiを添加する必要はない。このため、Siを過剰に含有する従来の伸びフランジ性に優れた高強度鋼板とは異なり、表面のスケール中にFe及びSiの複合酸化物が生成されず、表面状態が良好である。そのため、化成処理性、疲労特性、めっきの密着性も改善されることがわかった。
しかし、Cとマイクロアロイ元素(Ti、Nbなど)が原子比で1対1程度の割合で添加されている成分系の鋼を、MC型炭化物の析出が進行する条件で製造すると、固溶C量が極端に低下してしまうため、フェライトの粒界強度が低下し、高強度鋼板では打ち抜き端面の破断面にハガレ、せん断割れと呼ばれる打ち抜き端面の破断面に損傷が発生することがわかった。しかし、この打ち抜き端面の損傷はBを2〜50ppm程度添加することにより抑制できることも同時に見出した。
また、変態を介して、MC型炭化物の析出状態を大きく変化させるSi、Mn及びBの成分を適正な範囲に制御することで、適切な析出強化量を付与し、優れた穴拡げ−強度バランスを有する鋼を安定的に製造できることを見出した。
以下に、本発明における鋼の化学成分の限定理由について述べる。
C(炭素):Cは、690MPa以上の引張強度を確保するためには少なくとも0.015%以上必要であり、好ましい下限は0.02%以上である。しかしながら、0.06%超ではセメンタイト又はパーライト等の硬質第2相の組織分率が増加するため、伸びフランジ成形性などの加工性が劣化する。またTiC等のMC型炭化物の溶体化温度を上昇させるので、好ましい上限は0.05%以下である。
Si(シリコン):Siは0.5%以上を含有すると、表面のスケールにより熱延板の表面性状を悪化させ、これにより、化成処理性、めっき密着性及び疲労特性を損なうので、その上限を0.5%未満としたが、好ましくは0.2%以下である。なお、Siは脱酸剤であるが、脱酸はAlの添加によっても可能であり、0%も本発明に含まれる。
Mn(マンガン):Mnは、本発明において、変態温度を低下させてMC型炭化物の析出を制御するための極めて重要な元素であり、少なくとも0.1%以上必要である。また固溶強化にも寄与するため、好ましい下限は0.5%以上である。しかし、偏析により鋼中に偏析帯を作り、組織の均一性を低下させて、伸びフランジ成形性を悪化させるため、その上限を2.5%とした。また、Mnの添加により強度が増大すると、打ち抜き端面の損傷を生じ、疲労特性も損なうことがあるので、好ましい上限は2.0%以下である。
P(リン):Pは不純物であり少ないほど好ましい。Pを0.1%以上含有すると加工性や溶接性に悪影響を及ぼし、特に粒界を脆化させる作用があるので、0.1%を上限とする。
S(硫黄):Sは不純物であり少ないほど好ましい。Sは、Tiと結合しTiSを形成しやすく、高強度に寄与するTiCの生成量を低減させるので、0.01%を上限とする。
Al(アルミニウム):Alは溶鋼脱酸のために0.005%を添加する。一方、多量に添加すると非金属介在物を増大させ延性を劣化させるので、0.3%以下とする。
N(窒素):Nは不純物であり少ないほど好ましい。Nは、Tiと結合し、鋼中に粗大なTiNを生成して、穴拡げ、強度ともに低下させるので上限を0.01%とする。
Ti(チタン):Tiはフェライト中でCと結合し、TiCとして析出して強度を確保するため、少なくとも0.01%以上必要である。しかし、Tiを過剰に添加すると析出物が粗大化して析出強化に寄与しなくなり、強度が低下するため、上限を0.30%以下とする。また、Ti量の増加に伴い、スラブ再加熱温度をより高温する必要がありコスト上昇を招くため、好ましくは0.20%以下である。
B(ホウ素):Bは高強度化のための組織強化元素として有効であり、少なくとも2ppm以上の添加が必要である。また、フェライト中の粒界偏析Bは打ち抜き端面の損傷を抑制する働きがあるので、5ppm以上の添加が好ましい。しかし、オーステナイトのBの固溶量は50ppm程度であり、それ以上添加しても未溶解析出物として硼化物が残るだけであるので、50ppmを上限とする。また、B添加量を多くすると熱間圧延中の変形抵抗が大きくなるため、好ましくは30ppm以下である。
V(バナジウム)、W(タングステン)、Nb(ニオブ)、Mo(モリブデン)、Ta(タンタル)、Zr(ジルコニウム):これらの元素はTiと同様にフェライト中でCと結合し、MC型炭化物又はM2C型炭化物として析出して強度を確保する効果があるため、添加しても良い。しかし、多量の添加は合金コストの上昇、及びスラブ加熱温度の高温化を招くので、それぞれV(バナジウム)0.5%、W(タングステン)1.0%、Nb(ニオブ)0.1%、Mo(モリブデン)0.5%、Ta(タンタル)1.0%、Zr(ジルコニウム)1.0%を上限とするが、好ましくはそれぞれV(バナジウム)0.3%、W(タングステン)0.5%、Nb(ニオブ)0.05%、Mo(モリブデン)0.2%、Ta(タンタル)0.5%、Zr(ジルコニウム)0.5%以下である。一方、上記の効果を得るためには、V、W、Nb、Mo、Ta、Zrの1種又は2種以上を合計で0.01%以上含有することが好ましい。また、これらの元素の添加量の合計は、合金コスト、スラブ加熱温度の観点から2%以下が好ましい上限であり、特殊炭化物の粗大化を抑制するという観点から、更に好ましい上限は1%以下である。
Ca及びREMは、破壊の起点となったり、加工性を劣化させる非金属介在物の形態を変化させて無害化する元素である。ただし、それぞれ0.0005%未満を添加してもその効果が十分ではないことがあり、Caを0.02%超、REMを0.2%超添加してもその効果が飽和するので、Caを0.0005〜0.02%、REMを0.0005〜0.2%添加することが好ましい。なお、REMの上限は、製造コストの観点から0.02%以下とすることが更に好ましい。
式(1)及び式(3)の限定理由について述べる。
式(1)及び式(3)は鋼中で特殊炭化物(主にMC型)を生成するマイクロアロイ元素とCの原子比を示したものである。本発明の熱延鋼板は特殊炭化物によってフェライトの強度を向上させ、セメンタイトの形成を抑制するため、この原子比、すなわち式(1)又は式(3)の値が0.75超であることが必要である。式(1)又は式(3)の値が1.25以上であると、鋼中の過剰なCがセメンタイトを形成するため、伸びフランジ性が劣化し、穴拡げ値λが40%以下となる。一方、M元素が過剰な場合はCのスカベンジング効果が大きく、式(1)又は式(3)の値が0.75以下になると、析出物が容易に粗大化して引張強度が低下してしまう。したがって、式(1)及び式(3)の値は0.75超1.25未満とした。
式(2)及び式(4)の限定理由について述べる。
Si、Mn、B、Moは鋼のγ/α変態温度を制御する元素である。変態温度が高くなると特殊炭化物が粗大化する。このため、γ/α変態温度を適切な範囲に制御して特殊析出物の粗大化を防ぐことが強度−穴拡げバランスを良好に保つために重要である。式(2)又は(4)の値が1.0以下の場合は変態温度が高温すぎるため、析出物が粗大になり易く、析出強化を有効に活用できない。従って、式(2)及び式(4)の値は1.0超としたが、好ましくは1.2以上である。なお、上限は、3以下とすることが好ましい。
本発明においてミクロ組織を限定した理由について以下に述べる。
優れた伸びフランジ性を有する鋼板を得るには、フェライト又はベイニティックフェライトを最大の組織とすることが必要条件である。本発明においては、優れた伸びフランジ性を確保するために、フェライトとベイニティックフェライトの一方又は双方の面積率の合計を90%以上としたが、望ましくは95%以上である。セメンタイトとフェライトの界面はバーリング加工などの際に亀裂発生の起点となり、穴拡げ性を劣化させる。従って、優れた伸びフランジ性を確保するためにセメンタイトの面積率を5%以下としたが、望ましくは3%以下である。セメンタイトの面積率は少ないほど好ましく、0%でも良い。なお、本発明では、セメンタイトの面積率を光学顕微鏡による観察で測定する。これは、光学顕微鏡で観察できない微細なセメンタイトは、穴拡げ性に及ぼす影響は顕著ではないためである。
本発明においては、形態がベイナイトと類似しているがセメンタイトを含まないか殆ど含まない組織をベイニティックフェライト、比較的多角形に近い形態をしている粒によって構成されている組織をフェライト、と定義する。また、ミクロ組織において、フェライトとベイニティックフェライトの残部は、主にパーライトであるが、マルテンサイト、ベイナイト、残留オーステナイトを含むこともある。なお、セメンタイトの面積率は、パーライト以外の組織中に存在するセメンタイトの面積率である。
フェライトとベイニティックフェライトの合計の面積率は、ナイタールなどでエッチングしてミクロ組織を光学顕微鏡によって観察し、組織写真を画像解析することによって求め、次のようにして求めたセメンタイトの面積率を減じて算出する。セメンタイトの面積率は、試料をピクラール試薬又はSULC−G試薬でエッチングし、ミクロ組織を光学顕微鏡によって観察し、黒色であるセメンタイトとパーライトを分類して、セメンタイトのみの面積率を画像解析によって求める。セメンタイトとパーライトの分類は、形状と大きさによって行う。即ち、セメンタイトは、組織中に分散している粒径が1〜3μm程度の析出物であり、パーライトは、粒径が10μm程度の塊状の組織である。
なお、SULC−G試薬は、特許文献9に提案されている、鋼の組織を現出させる腐食液であり、水100mlに対してドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム2〜10g、蓚酸0.1〜1g、ピクリン酸1〜5gを溶かした水溶液にFe0.1〜0.5gを溶かし、6Nの塩酸2〜3mlを添加した溶液である。
本発明において強度範囲を限定した理由について以下に述べる。
打ち抜き端面の損傷の発生し易さは高強度化によりその感受性が増加することが明らかになっている。工業的に行われている打ち抜きの条件(打ち抜き速度、クリアランス等)では、引張強度が690MPa未満の場合には打ち抜き端面の損傷発生は非常にまれであり、本発明を使用しなくても打ち抜き端面を正常に保つことが可能である。反対に引張強度が850MPaを超えると打ち抜き端面の損傷が非常に発生し易くなり、本発明を用いても打ち抜き端面の発生を完全に抑えることは困難である。このため、引張強度の範囲を690MPa以上、850MPa以下とした。
以上の成分、ミクロ組織を満足することにより、引張強度が適正な範囲となり、穴拡げ値λが40%超となる良好な伸びフランジ性を得ることができる。本発明においては、伸びフランジ性及び耐打ち抜き割れ性を評価するための穴拡げ試験は、日本鉄鋼連盟規格JFS T 1001−1996記載の方法に従って行う。穴拡げ値は、試験前後の穴の直径の差を試験前の穴の直径で除した値を百分率で示したものである。
本発明の効果を発揮する鋼板の製造方法について以下に述べる。
本発明は高強度化のために析出強化を用いているため、鋼片を加熱して熱延の前状態で析出物(主にTiC)を溶解し、Ti及びCを固溶させておく必要がある。このため、鋳造直後又はスラブ加熱温度を1100℃以上とした。加熱温度の上限は特に定めることなく本発明の効果を得ることができるが、加熱温度が高すぎるとスケール生成量の増大による歩留まり低下を招くため、1300℃以下とすることが好ましい。
熱間圧延工程は、粗圧延を終了後、仕上げ圧延を行うが、仕上げ温度をAr3変態点以上の温度域で終了する必要がある。これは、圧延中の圧延温度がAr3変態点を下回るとひずみが残留して延性が低下するためである。Ar3変態点は鋼を加熱し、冷却した際の熱膨張曲線から求めても良く、また、熱力学データ計算によって求めた平衡変態温度Ae3で代用しても良い。例えば、サーモカルク(登録商標)によって求めたAe3をAr3変態点としても良い。
巻き取り温度は550〜700℃とする。これは、巻き取り温度が700℃より高いと析出強化に寄与するMC型炭化物が粗大化し、析出強化量が低下して引張強度を低下させるためであり、また、巻き取り温度が550℃より低いとMC型炭化物が十分に析出できず、引張強度を低下させ、かつ鋼中のCがセメンタイトとして析出し、伸びフランジ成形性も低下するためである。
ランアウトテーブルの平均冷却速度が15℃/sより遅い場合も、巻き取り温度が高い場合と同様に析出強化に寄与するMC型炭化物が粗大化し、析出強化量が低下して引張強度を低下させるため、平均冷却速度は15℃/s以上とした。平均冷却速度の上限は特に定めることなく本発明の効果を得ることができるが、冷却速度が高すぎると冷却ムラによる板形状の悪化を招くので、150℃/s以下とすることが好ましい。
また、熱間圧延の巻き取り温度を550℃未満にすることもできる。その場合は、MC型炭化物を十分に析出させるため、熱延鋼板に焼鈍を施す。即ち、550℃未満で巻き取った熱延鋼板には、更に焼鈍を施して、MC型炭化物を析出させることで、引張強度と穴広げ性を両立させることができる。この焼鈍は、バッチ式焼鈍炉、連続焼鈍装置、連続焼鈍めっき装置の何れで行っても良い。
熱延鋼板の焼鈍を、例えば、バッチ式焼鈍炉で行う場合は、連続焼鈍装置及び連続焼鈍めっき装置と比較して、昇温速度が0.2℃/s以下と遅く、また、保持時間は長くすることができる。保持時間の下限は特に限定しないが、コイル全体を均一に加熱する為には300s以上とすることが好ましい。また、冷却速度は特に規定しないが、バッチ式焼鈍炉は設備制約上、通常は、1℃/s以下となる。
昇温速度が0.2℃/s以下である場合、加熱温度が650℃より高いとMC型炭化物が粗大化し、析出強化に寄与しなくなるため、引張強度が低下する。一方、加熱温度が550℃より低いとMC型炭化物が十分に析出しないため、引張強度が低下し、鋼中のCがセメンタイトとして析出し、伸びフランジ成形性も低下する。したがって、昇温速度が0.2℃/sec以下である場合、加熱温度は、550〜650℃とすることが必要である。
連続焼鈍装置又は連続焼鈍めっき装置で熱処理を行う場合は、昇温速度がバッチ式焼鈍炉よりも速く、0.2℃/s超となる。また、保持時間は特に規定しないが、生産性を考慮すると、上限を300s以下とすることが好ましい。保持時間の下限には制限はなく、加熱温度に到達した直後に冷却を開始しても良く、この場合の保持時間は0sである。また、連続焼鈍装置又は連続焼鈍めっき装置で熱処理を行う場合の冷却速度は、特に規定しないが、通常は3℃/s以上である。
昇温速度が0.2℃/s超である場合は、加熱温度が800℃より高いとMC型炭化物が粗大化し、析出強化に寄与しなくなるため、引張強度が低下する。一方、加熱温度が600℃より低いとMC型炭化物が十分に析出せず、引張強度が低下し、鋼中のCがセメンタイトとして析出し、伸びフランジ成形性も低下する。
この発明の効果は、酸洗後であっても、熱延ままの黒皮の状態のどちらでも十分に発揮される。 熱延後、巻き戻し、酸洗をした後に電気亜鉛めっき、溶融亜鉛めっきを施しても良い。また、溶融めっき処理に加えて、さらに合金化処理を行っても構わない。熱延後の巻き取りを550〜700℃で行った熱延鋼板に焼鈍を施しても良く、溶融亜鉛めっきを施す場合、焼鈍に相当する条件で加熱、冷却しても良い。
以下に、実施例により本発明をさらに説明する。
表1に示す化学成分を有する鋼を転炉にて溶製して連続鋳造し熱間圧延用のスラブを得た。ただし、表中の化学組成の表示は、S、N及びBはppmであり、その他は質量%である。表1のAr3は、データベースとしてStell Solution database 2を使用し、C、Si、Mn及びTiをパラメータとしてサーモカルク(登録商標)によって求めたAe3をAr3変態点の代用としたものである。
また、表1には式(1)又は式(3)、及び式(2)又は式(4)の値を併記した。ここで、V、W、Nb、Mo、Ta及びZrが0%の時、式(3)は式(1)と同じであり、Moが0%の時、式(4)は式(2)と同じである。即ち、V、W、Nb、Mo、Ta及びZrを含有しない鋼は式(1)の値及び式(2)の値を、V、W、Nb、Mo、Ta及びZrの何れか1種以上を含有する鋼は式(3)の値及び式(4)の値を示した。なお、V、W、Nb、Ta及びZrの何れか1種以上を含有する鋼は、式(4)の値を、Moを0として計算するので、式(2)と同じである。
Figure 0005047649
これらを表2に示す加熱温度(SRT)で再加熱し、粗圧延後に仕上げ温度(FT)で1.2〜8.0mmの板厚に圧延した後、巻き取り温度(CT)でそれぞれ巻き取った。
このようにして得られた熱延板の板幅1/4W位置から切り出した試料を圧延方向断面に研磨し、ナイタール試薬又はSULC−G試薬にてエッチングし、光学顕微鏡を用い500倍の倍率で観察し、撮影した。得られたミクロ組織を画像解析して、フェライト、ベイニティックフェライトの面積率を求め、後述するセメンタイトの面積率を減じ、フェライト、ベイニティックフェライトの一方又は双方の合計の面積率を求めた。また、ミクロ組織の観察により、フェライト、ベイニティックフェライト以外の相、即ち、残部の組織を特定した。
フェライト、ベイニティックフェライトの面積率の測定方法の詳細は、以下のとおりである。まず、光学顕微鏡組織写真で、フェライトと判断される組織を着色し、デジタル化した組織写真の着色部分の面積率を画像解析によって測定した。同様にして、次にベイニッティックフェライトと判断される組織の面積率を測定した。更に、これらの面積率を合計し、後述の方法で求めたセメンタイトの面積率を減じて、フェライト、ベイニティックフェライトの合計の面積率を算出した。
表2に、ミクロ組織に存在する組織、フェライト、ベイニティックフェライトの合計の面積率、最大の相の組織名と残部が存在する場合はその組織名を記す。ここでは、形態はベイナイトと類似しているがセメンタイトを含まないか殆ど含まない組織をベイニティックフェライトと呼び、比較的多角形に近い形態をしている粒によって構成されている組織をフェライトと呼ぶ(非特許文献1参照)。
また、同試料をピクラール試薬にてエッチングし、光学顕微鏡を用い500倍の倍率で観察された組織から画像処理によって算出したセメンタイトの面積率も表2に併記する。セメンタイトの面積率は、組織写真の黒色の部分の形状と大きさでセメンタイトとパーライトを分類し、セメンタイトのみの面積率を画像解析によって求めた。なお、ピクラールにより現出した組織中に粒状に分散している1〜3μm程度の析出物をセメンタイト、10μm程度の比較的大きな塊で存在している組織をパーライトした。
引張特性は供試材をJIS Z 2201に記載の5号試験片に加工してJIS Z2241記載の試験方法に従って評価した。穴拡げ試験は日本鉄鋼連盟規格JFS T 1001−1996記載の試験方法に従って評価した。また、打ち抜き端面の損傷の発生の有無は、打ち抜きクリアランスを12.5%として穴拡げ試験と同様に10mm径の穴を打ち抜き、その端面状態を目視で観察した。表2にその結果を示す。
疲労特性はJIS Z 2275に従って、平面曲げ完全両振り疲労試験により評価した。繰り返し数は2×106回までとした。試験片形状はJIS Z 2275に記載されている1号試験片とした。試験片の採取方向は圧延方向に垂直とし、試験片の表面は酸洗ままとした。周波数は25Hzで統一した。表2には疲労限とそれを引張強度で除した値を記載した。
熱延鋼板の表面のスケールを酸洗により除去し、脱脂、表面調整を行った後、汎用の化成処理液を用いて、化成処理を行った。化成処理後、鋼板の表面の化成処理皮膜を走査型電子顕微鏡によって観察し、均一に皮膜が形成されているものは良好(○)、皮膜が一部形成されていないものは不良(×)と評価した。
また、熱延鋼板に溶融亜鉛めっきを施し、めっき密着性を以下の方法で評価した。酸洗後の熱延鋼板を0.1%O2雰囲気中で20℃/秒の加熱速度で470℃に加熱し、0.1%のAlを添加した470℃の亜鉛めっき浴に3秒浸漬し、溶融亜鉛めっき鋼板を製造した。得られためっき鋼板の外観及び密着性を評価した。外観は目視により確認した。めっき密着性は、高さ1mから10kg荷重の錘を5mmΦの打撃ポンチ上に落下させる落重試験後、めっき表面にテープを貼り付け、剥がした際にめっき層の剥離の有無により評価した。これらの評価で、外観が市販の溶融亜鉛めっき鋼板と同等であり、テープを剥がした際にめっき層の剥離のないものをめっき性良、外観又は落重試験後のめっき密着性の劣位な鋼板はめっき性不良として、表2に記載した。尚、本実施例における鋼板加熱温度及びめっき浴温度は熱延巻取り温度よりも低いため、めっき処理によるミクロ組織及び機械特性の変化は軽微であり、亜鉛めっき鋼板の機械特性は酸洗後の鋼板とほぼ同じであった。
本発明例のNo.1〜26は、引張強度690MPa以上850MPa以下、穴拡げ値λが40%以上となっており、強度−延性バランスに優れた熱延鋼板であり、打ち抜き端面の欠陥及び不めっきも発生していない。また、これらの鋼板中の、伸びフランジ成形の際に亀裂の起点となるような直径又は対角線長さが1μm以上の粗大なTiC及びTiNの個数を電子線マイクロアナライザー法(Elecoron Probe Micro Analyzer:EPMA)により測定したところ、No.1〜21では1000個/mm2以下であり、添加したTi及びCが析出強化に有効な微細析出物として鋼中に存在していることを示している。
上記以外は以下の理由によって本発明の範囲外である。 No.27はB無添加であるため、打ち抜き端面の損傷が発生している。端面損傷の発生に伴い、この鋼の疲労限は0.35と低い。また、式(4)の値が1.0未満であるため、変態温度が高くなり、TiCが粗大化し、引張強度も690MPa以下となっている。No.28はB添加量が70ppmと本発明の上限を超えているため、これによってBがスラブ加熱時に十分に固溶できず、粗大析出物となっているため、穴拡げ性が劣位である。
No.29、No.30はSi添加量が0.6、0.7%と本発明の上限を超えているため、これによって表面性状が悪化し、不めっきが発生している。また、疲労限/TSの値も発明鋼と比較して劣位である。No.31、No.32はC添加量が本発明の下限に達していないため、これによって析出強化量が不足し、強度が690MPaに未達である。No.33はC添加量が0.7%と本発明の上限を超えている。このため、セメンタイト析出量が本発明の範囲を超えている。このため、穴拡げ性が劣位である。
No.34、No.35はMn添加量が3.0%、3.5%と本発明の上限を超えているため、これによってMn偏析により組織の均一性が劣化している。このため、穴拡げ性が劣位である。また、Mnによる固溶強化量の増大によりTSが上限を超えてしまっているため、Bを添加しているにもかかわらず、打ち抜き端面の損傷が発生している。
No.36は式(2)の値が1.69と本発明の上限を超えているため、これによってCが特殊炭化物生成元素に対して過剰となっている。このため、第2相としてパーライトが生成し、穴拡げ性を劣化させている。No.37は式(2)の値が0.60と本発明の下限に達していないため、これによってTiCのスカベンジング効果により析出物が粗大化している。このため、析出強化量が不足し、強度が590MPaに未達である。
No.38は巻き取り温度CTが本発明の推奨条件の下限に達していないため、添加されたTi及びCがTiCとして十分に析出せず、セメンタイトとして析出したため、セメンタイトの面積率が本発明の上限を超えている。このため、穴拡げ性が劣位である。
Figure 0005047649
Figure 0005047649
実施例1の表1の成分を有し、表2の熱延条件によって製造した熱延鋼板No.1〜38を650〜850℃に加熱し、40秒間保持した後、460℃まで10℃/secの速度で冷却し、溶融亜鉛めっき浴(Al量=0.1%)に浸漬し、530℃、40秒間の合金化処理を施した。さらに、圧延率を0.5%としてスキンパス圧延を行い、合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造した。これらの鋼板の機械特性については実施例1と同様の方法で評価した。めっき性の評価については60°V曲げ(R=2)後、曲げ戻して、曲げた部分にテープを貼り付け、剥がした際の剥離幅によって評価した。市販の合金化溶融亜鉛めっき鋼板を比較材としてめっき性の評価を行い、同等の剥離幅のものをめっき性良、剥離幅が大きいものを不良として、表3に記載した。
亜鉛めっきの合金化処理による材質特性の大きな変化はなく、実施例1の場合と同じく本発明例のNo.1〜26は、引張強度690MPa以上850MPa以下、穴拡げ値λが40%以上となっており、強度−延性バランスに優れた熱延鋼板であり、打ち抜き端面の欠陥も発生しておらず、めっき性も良好である。比較例No.27〜38は実施例1の場合と同じ理由によって本発明の範囲外となっている。
Figure 0005047649
表1の成分を有する鋼の一部を、表4に示した条件で熱延、焼鈍し、熱延鋼板を製造した。焼鈍は、バッチ式焼鈍炉で行った。これらの鋼板の機械特性を実施例1と同様の方法で評価した。結果を表4に示す。
本発明例のNo.39〜46は、引張強度690MPa以上850MPa以下、穴拡げ値λが40%以上となっており、強度−延性バランスに優れた熱延鋼板である。一方、No.47、No.50は焼鈍温度が低いため、MC型炭化物の析出が不十分であり、強度が690MPaに達していない。No.48は焼鈍時間が長く、No.49は焼鈍温度が高いため、MC型炭化物が粗大化して強度が690MPaよりも低下している。No.51は、C量が0.07%と多く、焼鈍条件が本発明の範囲であってもλが40%に達していない。
Figure 0005047649
表1の成分を有する鋼の一部を、表5に示した条件で熱延、焼鈍し、熱延鋼板を製造した。焼鈍は、連続焼鈍装置で行った。これらの鋼板の機械特性を実施例1と同様の方法で評価した。結果を表5に示す。
本発明例のNo.52〜58は、引張強度690MPa以上850MPa以下、穴拡げ値λ40%以上となっており、強度−延性バランスに優れた熱延鋼板である。一方、No.59は焼鈍温度が高く、No.62は焼鈍時間が長いため、MC型炭化物が粗大化して強度が690MPaよりも低下している。No.60、61は焼鈍温度が低いため、MC型炭化物の析出が不十分であり、強度が690MPaに達していない。No.63は、C量が0.07%と多く、焼鈍条件が本発明の範囲であってもλが40%に達していない。
Figure 0005047649
表1の成分を有する鋼の一部を、表6に示した条件で熱延、焼鈍し、熱延鋼板を製造した。焼鈍は、連続焼鈍めっき装置で行い、そのまま溶融亜鉛めっきを施して、亜鉛めっき鋼板を製造した。また、一部の鋼板についてはめっきした後、合金化処理を行った。これらの鋼板の機械特性を実施例1と同様の方法で評価した。結果を表6に示す。
発明例のNo.64〜71は、引張強度690MPa以上850MPa以下、穴拡げ値λ40%以上となっており、強度−延性バランスに優れた亜鉛めっき鋼板である。なお、No.70はめっきを施した後、合金化処理を行った亜鉛めっき鋼板である。
一方、No.72は焼鈍温度が高く、No.75は焼鈍時間が長いため、MC型炭化物が粗大化して強度が690MPaよりも低下している。No.73、No.74は焼鈍温度が低いため、MC型炭化物の析出が不十分であり、強度が690MPaに達していない。No.76は、C量が0.07%と多く、焼鈍条件が本発明の範囲であってもλが40%に達していない。
Figure 0005047649

Claims (5)

  1. 質量%で、
    C:0.015〜0.06%、
    Si:0.5%未満、
    Mn:0.1〜2.5%、
    P≦0.10%、
    S≦0.01%、
    Al:0.005〜0.3%、
    N≦0.01%、
    Ti:0.01〜0.30%、
    B:2〜50ppm
    を含有し、残部Fe及び不可避的不純物からなる鋼組成を有し、下記(1)式及び(2)式の関係を満足し、フェライトとベイニティックフェライトの一方又は双方の面積率の合計が90%以上、セメンタイトの面積率が5%以下であり、引張強度が690MPa以上850MPa以下、穴拡げ値λが40%以上であることを特徴とする伸びフランジ成形性に優れた高強度熱延鋼板。
    Figure 0005047649
    ここで、C%、Ti%、N%、S%、Mn%、Si%は、C、Ti、N、S、Mn、Siの含有量[質量%]であり、BppmはBの含有量[ppm]である。
  2. さらに、質量%で
    V:0.5%以下、
    W:1.0%以下、
    Nb:0.1%以下、
    Mo:0.5%以下
    Ta:1.0%以下、
    Zr:1.0%以下、
    の一種又は二種以上を含み、かつV、W、Nb、Mo、Ta、Zrの一種又は二種以上を合計して0.01%以上含み、(1)式及び(2)式の代わりに、下記(3)式及び(4)式の関係を満足することを特徴とする請求項1記載の伸びフランジ成形性に優れた高強度熱延鋼板。
    Figure 0005047649
    ここで、C%、Ti%、V%、W%、Nb%、Mo%、Ta%、Zr%、N%、S%、Mn%、Si%は、C、Ti、V、W、Nb、Mo、Ta、Zr、N、S、Mn、Siの含有量[質量%]であり、BppmはBの含有量[ppm]である。
  3. 請求項1〜のいずれか1項に記載の鋼板を製造する方法であって、請求項1〜のいずれか1項に記載の成分を有する鋳片を1100℃以上で加熱した後、仕上げ圧延温度Ar3以上で熱間圧延を終了し、ランアウトテーブルでの平均冷却速度を15℃/s以上とし、550℃未満で巻き取って鋼板とした後、更に、この鋼板を、500℃以上の昇温速度を0.2℃/s以下として、550〜650℃に加熱し、300s以上保持した後、0.3〜4℃/sの冷却速度で冷却することを特徴とする伸びフランジ成形性に優れた高強度熱延鋼板の製造方法。
  4. 請求項1〜のいずれか1項に記載の鋼板を製造する方法であって、請求項1〜のいずれか1項に記載の成分を有する鋳片を1100℃以上で加熱した後、仕上げ圧延温度Ar3以上で熱間圧延を終了し、ランアウトテーブルでの平均冷却速度を15℃/s以上とし、550℃未満で巻き取って鋼板とした後、更に、この鋼板を、昇温速度を0.2℃/s超として、600〜800℃に加熱し、その後、10〜80℃/sの冷却速度で冷却することを特徴とする伸びフランジ成形性に優れた高強度熱延鋼板の製造方法。
  5. 請求項1〜2のいずれか1項に記載の鋼板を製造する方法であって、請求項1〜のいずれか1項に記載の成分を有する鋳片を1100℃以上で加熱した後、仕上げ圧延温度Ar3以上で熱間圧延を終了し、ランアウトテーブルでの平均冷却速度を15℃/s以上とし、550℃未満で巻き取って鋼板とした後、更に、この鋼板を、昇温速度を0.2℃/s超として、600〜800℃に加熱し、その後、5〜70℃/sの冷却速度で冷却して、電気亜鉛めっき又は溶融亜鉛めっきを施すことを特徴とする伸びフランジ成形性に優れた高強度亜鉛めっき鋼板の製造方法。
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