JP2002226941A - 深絞り性に優れた複合組織型高張力冷延鋼板およびその製造方法 - Google Patents
深絞り性に優れた複合組織型高張力冷延鋼板およびその製造方法Info
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Abstract
型高張力冷延鋼板およびその製造方法を提案することに
ある。 【解決手段】 本発明鋼板の製造方法は、質量%で、
C:0.01〜0.08%、Si:2.0%以下、Mn:3.0%以下、P:
0.10%以下、S:0.02%以下、Al:0.005〜0.20%、N:0.
02%以下およびV:0.01〜0.5%を含有し、かつ、VとC
が、0.5×C/12≦V/51≦3×C/12なる関係を満たし、
残部は実質的にFeおよび不可避的不純物の組成になる鋼
スラブを、熱間圧延し、引き続き酸洗した後、冷間圧延
を施し、その後、Ac1〜Ac3変態点の温度域で連続焼鈍
することを特徴とする。
Description
が440MPa以上である、自動車用鋼板等の使途に有用な深
絞り性に優れた複合組織型高張力冷延鋼板およびその製
造方法に関するものである。
ス規制に関連して、自動車の車体重量の軽減が極めて重
要な課題となっており、最近、車体重量の軽減のため
に、自動車用鋼板を高強度化して鋼板板厚を低減するこ
とが検討されている。
くがプレス加工により成形されるため、使用される冷延
鋼板には、優れたプレス成形性を有することが要求され
る。プレス成形性向上のためには、鋼板の機械的特性と
して、高いランクフォード値(r値)と高い延性(El)
および低い降伏応力(YS)が必要である。しかし、一
般に、鋼板を高強度化すると、r値および延性が低下
し、プレス成形性が劣化するとともに、降伏応力が上昇
して形状凍結性が劣化して、スプリングバックの問題が
生じやすい。
としては、軟らかいフェライトと硬質のマルテンサイト
の複合組織からなる複合組織鋼板が挙げられ、特に連続
焼鈍後ガスジェット冷却で製造される複合組織鋼板は、
降伏応力が低く高延性と優れた焼付け硬化性とを兼ね備
えている。上記複合組織鋼板は、加工性については概ね
良好であるものの、厳しい条件下での加工性、特にr値
が低く深絞り成形性が劣るという欠点があった。
て深絞り性を改善する試みがなされている。例えば特公
昭55−10650号公報では、冷間圧延後、再結晶温度〜A
c3変態点の温度で箱焼鈍を行い、その後、複合組織とす
るため700〜800℃に加熱した後、焼入れ焼戻しを伴う連
続焼鈍を行う技術が開示されている。しかしながら、こ
の方法では、連続焼鈍時に焼入れ焼戻しを行うため降伏
応力が高く、低い降伏比が得られない。この高降伏応力
の鋼板はプレス成形に適さず、かつプレス部品の形状凍
結性が悪いという欠点がある。
めの方法としては、特開昭55−100934号公報に開示され
ている。この方法は、高r値を得るためにまず箱焼鈍を
行うが、箱焼鈍時の温度をフェライト(α)−オーステ
ナイト(γ)の2相域とし、均熱時にα相からγ相にMn
を濃化させる。このMn濃化相は連続焼鈍時に優先的にγ
相となり、ガスジェット程度の冷却速度でも混合組織が
得られ、さらに降伏応力も低い。しかし、この方法で
は、Mn濃化のためα−γの2相域という比較的高温で長
時間の箱焼鈍が必要であり、そのため鋼板間の密着の多
発、テンパーカラーの発生および炉体インナーカバーの
寿命低下など製造工程上、多くの問題がある。従来、こ
のように高いr値と低い降伏応力を兼ね備えた高張力鋼
板を工業的に安定して製造することは困難であった。
質量%C-0.32質量%Si-0.53質量%Mn-0.03質量%P−
0.051質量%Tiの組成の鋼を冷間圧延後、α-γの2相域
である870℃に加熱後、100℃/sの平均冷却速度にて冷
却することにより、r=1.61、YS=224MPa、TS=482MPaの非
常に高いr値と低降伏応力を有する複合組織型冷延鋼板
が製造可能となる技術が開示されている。しかしなが
ら、100℃/sという高い冷却速度は、通常のガスジェ
ット冷却では達成できないため、水焼入れ設備が必要と
なる他、水焼入れした冷延鋼板は、表面処理性の問題が
顕在化するため、製造設備上および材質上の問題があ
る。
を有利に解決した、高いr値を有する深絞り性に優れた
複合組織型高張力冷延鋼板およびその製造方法を提案す
ることを目的とする。
課題を達成するため、冷延鋼板のミクロ組織および再結
晶集合組織におよぼす合金元素の影響について鋭意研究
を重ねたところ、鋼スラブ中のCを低含有量に制限する
とともに、C含有量との関係でV含有量の適正化を図る
ことにより、再結晶焼鈍前には、鋼中のCをV系炭化物
として析出させて固溶Cを極力低減させ、{111}再結晶
集合組織を発達させることにより高r値が得られるこ
と、また引き続きα−γの2相域に加熱することによ
り、V系炭化物を溶解させて、オーステナイト中にCを
濃化させることにより、その後の冷却過程でマルテンサ
イトが生成しやすくなる結果、r値の高い深絞り性に優
れた複合組織型高張力冷延鋼板を安定して製造できるこ
とを見い出した。
果について説明する。質量%で、C:0.03%、Si:0.02
%、Mn:1.7%、P:0.01%、S:0.005%、Al:0.04
%、N:0.002%、Mo:0.15%を基本組成とし、これに
Vを0.03〜0.55質量%の範囲で添加することによって、
異なるV含有量を有する種々のシートバーについて、12
50℃に加熱−均熱後、仕上圧延終了温度が900℃となる
ように3パス圧延を行って板厚4.0mmとした。なお、仕
上圧延終了後、コイル巻取り処理として650℃×1hの
保温相当処理を施した。引き続き、圧下率70%の冷間圧
延を施して板厚1.2mmとした。ついで、これらの冷延板
に、850℃で60sの再結晶焼鈍を施した後、30℃/sの
冷却速度で冷却した。
施し引張特性を調査した。引張試験は、JIS5号引張試験
片を用いて行った。r値は、圧延方向(rL)、圧延方向
に45度方向(rD)および圧延方向に垂直(90度)方
向(rc)の平均r値{=(rL+rc +2×rD)/4}と
して求めた。
比(=降伏応力(YS)/引張り強さ(TS)×100(%))
に及ぼす影響を示すための図であり、横軸はV含有量と
C含有量の原子比((V/51)/(C/12))であり、
縦軸はr値と降伏比に上下に分けて示す。図1から、鋼
スラブ中のV含有量をCとの原子比にして0.5〜3.0の範
囲に制限することにより、高いr値と低い降伏比が得ら
れ、深絞り性に優れた複合組織型高張力冷延鋼板が製造
可能となることが明らかになった。
固溶CおよびNが少なく、{111}再結晶集合組織が強く
発達するため、高r値が得られる。一方、α-γの2相域
にて焼鈍することにより、V炭化物が溶解し、固溶Cが
オーステナイト相に多量に濃化することにより、その後
の冷却過程においてオーステナイトがマルテンサイトに
容易に変態することができ、フェライトとマルテンサイ
トの複合組織が得られることを明らかにした。
よびNbが主に使用されてきたが、本発明者らは高温域で
の焼鈍で有効に固溶Cを得るために、炭化物の溶解度が
TiおよびNbよりも高いVに着目した。すなわち、V炭化
物はTi炭化物およびNb炭化物よりも、高温焼鈍時に容易
に溶解する結果、α−γの2相域での焼鈍により、オー
ステナイトがマルテンサイトに変態するのに十分な量の
固溶Cが得られることを発見した。加えて、この現象
は、V成分が最も顕著に生じるが、Nb、Tiを複合添加す
ることによっても同様に得られることも明らかになっ
た。
検討して完成されたものであり、本発明の要旨は下記の
とおりである。 (1)質量%でC:0.01〜0.08%、Si:2.0%以下、Mn:
3.0%以下、P:0.10%以下、S:0.02%以下、Al:0.005〜
0.20%、N:0.02%以下およびV:0.01〜0.5%を含有
し、かつ、VとCが、 0.5×C/12≦V/51≦3×C/12 なる関係を満たし、残部は実質的にFeおよび不可避的不
純物からなる組成を有し、主相であるフェライト相と、
組織全体に対する面積率で1%以上のマルテンサイト相
を含む第2相とからなる組織を有することを特徴とす
る、深絞り性に優れた複合組織型高張力冷延鋼板。
%以下、Mn:3.0%以下、P:0.10%以下、S:0.02%以
下、Al:0.005〜0.20%、N:0.02%以下およびV:0.01
〜0.5%を含有するとともに、Nb:0.001〜0.3%とTi:0.
001〜0.3%のうちの1種または2種を合計で0.3%以下
含有し、かつ、V、Nb、TiとCとが、 0.5×C/12≦(V/51+2×Nb/93+2×Ti/48)≦3×
C/12 なる関係を満たし、残部は実質的にFeおよび不可避的不
純物からなる組成を有し、主相であるフェライト相と、
組織全体に対する面積率で1%以上のマルテンサイト相
を含む第2相とからなる組織を有することを特徴とす
る、深絞り性に優れた複合組織型高張力冷延鋼板。
で、下記に示すA群およびB群のうちの1群または2群
を含有することを特徴とする上記(1)又は(2)に記
載の深絞り性に優れた複合組織型高張力冷延鋼板。 記 A群:CrおよびMoのうちの1種または2種を合計で2.0
質量%以下 B群:CuおよびNiのうちの1種または2種を合計で2.0
質量%以下
%以下、Mn:3.0%以下、P:0.10%以下、S:0.02%以
下、Al:0.005〜0.20%、N:0.02%以下およびV:0.01
〜0.5%を含有し、かつ、VとCが、 0.5×C/12≦V/51≦3×C/12 なる関係を満たし、残部は実質的にFeおよび不可避的不
純物の組成になる鋼スラブを、熱間圧延し、引き続き酸
洗した後、冷間圧延を施し、その後、Ac1〜Ac3変態点
の温度域で連続焼鈍することを特徴とする、深絞り性に
優れた複合組織型高張力冷延鋼板の製造方法。
%以下、Mn:3.0%以下、P:0.10%以下、S:0.02%以
下、Al:0.005〜0.20%、N:0.02%以下およびV:0.01
〜0.5%を含有するとともに、Nb:0.001〜0.3%とTi:0.
001〜0.3%のうちの1種または2種を合計で0.3%以下
含有し、かつ、V、Nb、TiとCとが、 0.5×C/12≦(V/51+2×Nb/93+2×Ti/48)≦3×
C/12 なる関係を満たし、残部は実質的にFeおよび不可避的不
純物の組成になる鋼スラブを、熱間圧延し、引き続き酸
洗した後、冷間圧延を施し、その後、Ac1〜Ac3変態点
の温度域で連続焼鈍することを特徴とする、深絞り性に
優れた複合組織型高張力冷延鋼板の製造方法。
に、質量%で、下記に示すA群およびB群のうちの1群
または2群を含有することを特徴とする請求項(4)又
は(5)に記載の深絞り性に優れた複合組織型高張力冷
延鋼板の製造方法。 記 A群:CrおよびMoのうちの1種または2種を合計で2.0
質量%以下 B群:CuおよびNiのうちの1種または2種を合計で2.0
質量%以下
(TS)が440MPa以上の深絞り性に優れた複合組織型高張
力冷延鋼板である。まず、本発明の冷延鋼板の組成を限
定した理由について説明する。なお、質量%は単に%と
記す。
ンサイトの複合組織の形成を促進する元素であり、本発
明では複合組織形成の観点から0.01%以上、より好まし
くは0.015%以上含有する必要がある。なお、TS:540MPa
以上の高強度化を指向する場合にもCは0.015%以上と
することが好ましい。一方、0.08%を超える含有は、{1
11}再結晶集合組織の発達を阻害し、深絞り成形性を低
下させる。このため、本発明では、C含有量は0.01〜0.
08%に限定した.なお、深絞り性の観点からは0.05%以
下とするのが好ましい。
高強度化させることができる有用な強化元素であるが、
その含有量が2.0%を超えると、深絞り性の劣化を招く
とともに、表面性状が悪化する。このため、Siは2.0%
以下に限定した。
ルテンサイトの複合組織が得られる臨界冷却速度を小さ
くして、フェライトとマルテンサイトの複合組織の形成
を促進する作用を有しており、再結晶焼鈍後の冷却速度
に応じた量を含有させるのが好ましい。また、Mnは、S
による熟間割れを防止する有効な元素でもあるため、含
有するS量に応じて適量含有させるのが好ましい。しか
しながら、Mn含有量が3.0%を超えると、深絞り性およ
び溶接性が劣化する。このため、本発明ではMn含有量は
3.0%以下に限定した。尚、Mn含有量は、0.5%以上含有
させることが上記効果を顕著に発揮させる上で好まし
く、より好ましくは1.0%以上である。
量含有させることができるが、P含有量が0.10%を超え
ると、プレス成形性が劣化する。このため、P含有量は
0.10%以下と限定した。なお、より優れたプレス成形性
が要求される場合には、P含有量は0.08%以下とするの
が好ましい。
形性、とくに伸びフランジ成形性の劣化をもたらす元素
であるため、できるだけ低減するのが好ましく、0.02%
以下に低減するとさほど悪影響を及ぼさなくなることか
ら、本発明ではS含有量は0.02%を上限とした。なお、
より優れた伸びフランジ成形性を要求される場合には、
S含有量は0.01%以下とするのが好ましく、より好まし
くは0.005%以下である。
させるのに有用な元素であるが、0.005%未満では添加
の効果がなく、一方、0.20%を越えて含有してもより一
層の脱酸効果は得られず、逆に深絞り性が劣化する.こ
のため、Alは0.005〜0.20%に限定した。なお、本発明
では、Al脱酸以外の脱酸方法による溶製方法を排除する
ものではなく、たとえばTi脱酸やSi脱酸を行ってもよ
く、これらの脱酸法による鋼板も本発明の範囲に含まれ
る。その際、CaやREM等を溶鋼に添加しても、本発明鋼
板の特徴はなんら阻害されず、CaやREM等を含む鋼板も
本発明範囲に含まれるのは勿論である。
元素であるが、0.02%を超えて含有すると、鋼板中に窒
化物が増加し、それにより鋼板の深絞り性が顕著に劣化
する。このため、Nは0.02%以下に限定した。なお、よ
りプレス成形性の向上が要求される場合には0.01%以下
とするのが好適であり、より好ましくは、0.004%以下
とする。
には固溶CをV炭化物として析出固定することにより、
{111}再結晶集合組織を発達させて高いr値を得ることが
でき、さらに、α−γのニ相域焼鈍時にはV炭化物を溶
解させて固溶Cを多量にオーステナイト相に濃化させ、
その後の冷却過程において容易にマルテンサイト変態さ
せることにより、フェライトとマルテンサイトの複合組
織を有する複合組織鋼板を得ることができる。このよう
な効果は、V含有量が0.01%以上、より好ましくは0.02
%以上でかつC含有量との関係で0.5×C/12≦V/51で
有効となる。一方、V含有量が0.5%を超えるかあるい
はC含有量との関係でV/51>3×C/12であると、α-
γの2相域におけるV炭化物の溶解が起こりにくくなる
ため、フェライトとマルテンサイトの複合組織が得られ
にくくなる。したがって、V含有量は0.01〜0.5%でか
つ0.5×C/12≦V/51≦3×C/12に限定した。なお、V
/51≦2×C/12とすることが、フェライトとマルテンサ
イトの複合組織を得るうえで好ましい。
て、質量%で、Nb:0.001〜0.3%およびTi:0.001〜0.3
%のうちの1種または2種を合計で0.3%以下含有し、
かつ、V含有量とC含有量とが0.5×C/12≦V/51≦3
×C/12を満足することに代えて、V、Nb、Tiの各含有量
とCの含有量とが、0.5×C/12≦(V/51+2×Nb/93+
2×Ti/48)≦3×C/12なる関係を満たすことが好まし
い。
のうちの1種または2種を合計で0.3%以下含有し、か
つ、V、Nb、TiとCとが、0.5×C/12≦(V/51+2×N
b/93+2×Ti/48)≦3×C/12なる関係を満たすこと NbおよびTiはVと同様に炭化物形成元素であって、上述
したVと同様の作用を有する。すなわち、再結晶前には
固溶CをNbおよびTi炭化物として析出固定することによ
り、{111}再結晶集合組織を発達させて高いr値を得る
ことができ、さらにα−γの2相域での焼鈍時にはNbお
よびTi炭化物を溶解させて固溶Cを多量にオーステナイ
ト相に濃化させ、その後の冷却過程においてマルテンサ
イト変態させることにより、フェライトとマルテンサイ
トの複合組織を有する複合組織鋼板を得ることができ
る。但し、NbおよびTiの上述した効果は、Vに比べると
かなり小さいため、鋼スラブ中にVを添加することな
く、NbやTiだけを添加しただけでは、本発明の効果であ
る深絞り性を十分に高めることはできない。
0.001%以上でかつCおよびV含有量との関係で0.5×C
/12≦(V/51+2×Nb/93+2×Ti/48)であること
が上記効果を発揮する上で好ましい。一方、NbおよびTi
の単独添加で又は複合添加の合計で0.3%を超えるか、
あるいはCとV含有量との関係で(V/51+2×Nb/93
+2×Ti/48)>3×C/12の場合には、α−γの2相
域における炭化物の溶解が起こりにくくなるため、フェ
ライトとマルテンサイトの複合組織が得られにくくな
る。したがって、NbおよびTiのいずれか1方のみを添加
する場合には、ともに0.001〜0.3%の範囲とし、また、
NbおよびTiを複合添加する場合には、合計で0.3%以下
とし、かつVおよびCとの関係で0.5×C/12≦(V/51
+2×Nb/93+2×Ti/48)≦3×C/12の範囲に限定し
た。
成に加えてさらに、下記に示すA群およびB群、すなわ
ち、 A群:Cr、Moのうちの1種または2種を合計で2.0%以
下 B群:Cu、Niのうちの1種または2種を合計で2.0%以
下 のうちの1群または2群を含有することが好ましい。
合計で2.0%以下 A群:CrおよびMoは、いずれもMnと同様に、フェライト
とマルテンサイトの複合組織が得られる臨界冷却速度を
小さくし、フェライトとマルテンサイトの複合組織の形
成を促進する作用を有しており、必要に応じ含有でき
る。上記効果を得るための好ましいCr、Moの含有量の下
限値は、Cr:0.05%、Mo:0.05%である。但し、Cr、Mo
のうちの1種または2種で合計2.0%超えて含有する
と、深絞り性が低下する。このため、A群:Cr、Moのう
ちの1種または2種を合計で2.0%以下に限定するのが
好ましい。
計で2.0%以下 B群:Cu、Niは、鋼を強化する作用があり、所望の強度
に応じて必要量含有することができるが、CuおよびNiを
単独添加でまたは複合添加の合計で2.0%を超えると、
深絞り性が劣化する傾向がある。このため、Cu、Niは1
種または2種を合計で2.0%以下とするのが好ましい。
なお、上記効果を得るための好ましいCu、Niの含有量の
下限値は、Cu:0.05%、Ni:0.05%である。
いては、特に限定していないが、B、Ca、Zr、REM等を
通常の鋼組成の範囲内であれば含有させてもなんら問題
はない。
的不純物である。不可避的不純物としては、例えばSb、
Sn、Zn、Co等が挙げられ、これらの含有量の許容範囲と
しては、Sb:0.01%以下、Sn:0.1%以下、Zn:0.01%以
下、Co:0.1%以下の範囲である。
る。本発明の冷延鋼板は、組織が、主相であるフェライ
ト相と、組織全体に対する面積率で1%以上のマルテン
サイト相を含む第2相とからなる組織を有する。
し、優れた深絞り性を有する冷延鋼板とするために、本
発明では鋼板の組織を、主相であるフェライト相と、マ
ルテンサイト相を含む第2相との複合組織とする必要が
ある。主相であるフェライト相は、面積率で80%以上と
するのが好ましい。フェライト相が面積率で80%未満で
は、高い延性を確保することが困難となり、プレス成形
性が低下する傾向があるからである。また、さらに良好
な延性が要求される場合には、フェライト相を面積率で
85%以上とするのが好ましい。なお、複合組織の利点を
利用するため、フェライト相は99%以下とする必要があ
る。
ンサイト相を、組織全体に対する面積率で1%以上含有
する必要がある。マルテンサイトが面積率で1%未満で
は、低い降伏応力(YS)と高い延性(El)を同時に満足
させることができない。より好ましくはマルテンサイト
相は面積率で3%以上である。なお、第2相は、面積率
で1%以上のマルテンサイト相単独としても、あるいは
面積率で1%以上のマルテンサイト相と、副相としてそ
れ以外のパーライト相、ベイナイト相、残留オーステナ
イト相のいずれかとの混合としてもよく、特に限定され
ない。ただし、これらパーライト相、ベイナイト相、残
留オーステナイト相は、前記マルテンサイト相の効果を
より有効に発揮させるため、これらの相の合計を第2相
の組織に対して面積率で50%以下とするのが好ましい。
上記した組織を有する冷延鋼板は、低降伏応力で高延性
を有する深絞り性に優れた鋼板である。
て説明する。本発明の製造方法に用いられる鋼スラブの
組成は、上述した冷延鋼板の組成と同様であるので、鋼
スラブの限定理由の説明については省略する。本発明の
冷延鋼板は、上記した範囲内の組成を有する鋼スラブを
素材とし、該素材に熱間圧延を施し熱延板とする熱延工
程と、該熱延板を酸洗する酸洗工程と、該熱延板に冷間
圧延を施し冷延板とする冷延工程と、該冷延板に再結晶
焼鈍を施して冷延焼鈍板とする再結晶焼鈍工程とを順次
施すことにより製造される。
防止するために連続鋳造法で製造するのが好ましいが、
造塊法、薄スラブ鋳造法で製造してもよい。また、鋼ス
ラブを製造したのち、いったん室温まで冷却し、その
後、再度加熱する従来法に加え、冷却しないで、温片の
ままで加熱炉に挿入する方法や、わずかの保熱を行った
後に直ちに圧延する直送圧延・直接圧延する方法などの
省エネルギープロセスも問題なく適用できる。
圧延を施し熱延板とする熱延工程を施す。熱延工程は所
望の板厚の熱延板が製造できる条件であればよく、通常
の圧延条件を用いても特に問題はない。なお、参考のた
め、好適な熱延条件を以下に示しておく。
{111}再結晶集合組織を発達させ、深絞り性を改善する
ため、低い方が望ましい。しかし、加熱温度が900℃未
満では、圧延荷重が増大し、熱間圧延時におけるトラブ
ル発生の危険性が増大する。このため、スラブ加熱温度
は900℃以上にすることが好ましい。また、酸化重量の
増加に伴うスケールロスの増大による歩留まりの低下な
どから、スラブ加熱温度の上限は1300℃とすることがよ
り好適である。なお、スラブ加熱温度を低くし、かつ熱
間圧延時のトラブルを防止するといった観点から、シー
トバーを加熱する、いわゆるシートバーヒーターを活用
することは、有効な方法であることは言うまでもない。
鈍後に優れた深絞り性が得られる均一な熱延母板組織を
得るため、700℃以上にすることが好ましい。すなわ
ち、仕上圧延終了温度が700℃未満では、熱延母板組織
が不均一となるとともに、熱間圧延時の圧延負荷が高く
なり、熱間圧延時におけるトラブル発生の危険性が増大
するからである。
ち、巻取温度が800℃を超えると、スケールが増加しス
ケールロスにより歩留りが低下する傾向があるからであ
る。なお、巻取温度は200℃未満となると、鋼板形状が顕
著に乱れ、実際の使用にあたり不具合を生じる危険性が
増大するため、巻取温度の下限を200℃とすることがよ
り好適である。
ラブを900℃以上に加熱した後、仕上圧延終了温度:700
℃以上とする熱間圧延を施し、800℃以下の巻取温度で
巻き取るのが好ましい。なお、本発明における熱間圧延
工程では、熱間圧延時の圧延荷重を低滅するため、仕上
圧延の一部または全部のパス間で潤滑圧延としてもよ
い。加えて、潤滑圧延を行うことは、鋼板形状の均一化
や材質の均一化の観点からも有効である。なお、潤滑圧
延の際の摩擦係数は0.10〜0.25の範囲とすることが好ま
しい。
し、連続的に仕上圧延する連続圧延プロセスとすること
が好ましい。連続圧延プロセスを適用することは、熱間
圧延の操業安定性の観点からも望ましい。
を施す。酸洗工程は、常法に従えばよく、酸洗液として
は、例えば塩酸や硫酸系の処理液を用いることが好まし
い。さらに、熱延板に冷間圧延を施し冷延板とする。冷
聞圧延条件は、所望の寸法形状の冷延板とすることがで
きればよく、特に限定されないが、冷間圧延時の圧下率
は40%以上とすることが好ましい。圧下率が40%未満で
は、{111}再結晶集合組織が発達せず、優れた深絞り
性が得られないからである。
結晶焼鈍を行い冷延焼鈍板とする。再結晶焼鈍は、連続
焼鈍ラインで行う。再結晶焼鈍の焼鈍温度は、Ac1〜A
c3変態点の温度範囲の(α+γ)の2相域で行う必要が
ある。焼鈍温度がAc1変態点よりも低いと、フェライト
単相組織となって、マルテンサイトを生成することがで
きなくなるからであり、一方、Ac3変態点よりも高い
と、結晶粒が粗大化するとともに、オーステナイト単相
域となり、{111}再結晶集合組織が発達せずに深絞り性
が著しく劣化するからである。
イトを生成することができ、フェライトとマルテンサイ
トの複合組織を得るため、冷却速度5℃/s以上で行う
ことが好ましい。
面粗度等の調整のために、伸び率10%以下の調質圧延を
加えてもよい。なお、本発明の冷延鋼板は、加工用冷延
鋼板としてのみならず、加工用表面処理鋼板の原板とし
ても適用できる。加工用表面処理鋼板としては、亜鉛め
っき鋼板(合金系を含む。)、錫めっき鋼板、ほうろう
等が挙げられる。また、本発明の冷延鋼板には、亜鉛め
っき後、化成処理性、溶接性、プレス成形性および耐食
性等の改善のために特殊な処理を施してもよい。
鋳造法でスラブとした。ついで、これら鋼スラブを1150
℃に加熱したのち、仕上圧延終了温度:900℃、巻取温
度:650℃とする熱間圧延を施す熱延工程により、板厚
4.0mmの熱延鋼帯(熱延板)とした。引き続き、これ
ら熱延鋼帯(熱延板)に酸洗、圧下率:70%で冷間圧延
を施す冷延工程により、板厚1.2mmの冷延鋼帯(冷延
板)とした。ついで、これら冷延鋼帯(冷延板)に、連続
焼鈍ラインにて表2に示す焼鈍温度で再結晶焼鈍を施し
た。得られた鋼帯(冷延板)に、さらに伸び率:0.8%の
調質圧延を施した。
向に直交する断面(C断面)について、光学顕微鏡ある
いは走査型電子顕微鏡を用いて微視組織を撮像し、画像
解析装置を用いて主相であるフェライトの組織分率およ
び第2相の種類と組織分率を求めた。また、得られた鋼
帯から、JIS5号引張試験片を採取し、JIS Z 2241の
規定に準拠して引張試験を行い、降伏応力(YS)、引張
強さ(TS)、伸び(El)、降伏比(YR)およびランクフ
ォード値(r値)を求めた。これらの結果を表2に示
す。
も、低い降伏応力(YS)、高い伸び(El)および低い降
伏比(YR)を有し、さらに高いr値を示して、深絞り成
形性に優れるとともに、引張り強さが(TS)が440MPa以
上の高張力を有している。これに対し、本発明の範囲を
外れる比較例では、降伏応力(YS)が高いか、伸び(E
l)が低いか、あるいはr値が低くなっている。
有する高張力の冷延鋼板を安定して製造することができ
るという産業上格段の効果を奏する。本発明の冷延鋼板
を自動車部品に適用した場合、プレス成形が容易で、自
動車車体の軽量化に十分に寄与できるという効果もあ
る。
比(=降伏応力(YS)/引張り強さ(TS)×100(%))
に及ぼす影響を示すための図である。
Claims (6)
- 【請求項1】 質量%でC:0.01〜0.08%、Si:2.0%以
下、Mn:3.0%以下、P:0.10%以下、S:0.02%以下、Al:
0.005〜0.20%、N:0.02%以下およびV:0.01〜0.5%
を含有し、かつ、VとCが、 0.5×C/12≦V/51≦3×C/12 なる関係を満たし、残部は実質的にFeおよび不可避的不
純物からなる組成を有し、 主相であるフェライト相と、組織全体に対する面積率で
1%以上のマルテンサイト相を含む第2相とからなる組
織を有することを特徴とする、深絞り性に優れた複合組
織型高張力冷延鋼板。 - 【請求項2】 質量%でC:0.01〜0.08%、Si:2.0%以
下、Mn:3.0%以下、P:0.10%以下、S:0.02%以下、Al:
0.005〜0.20%、N:0.02%以下およびV:0.01〜0.5%
を含有するとともに、Nb:0.001〜0.3%とTi:0.001〜0.
3%のうちの1種または2種を合計で0.3%以下含有し、
かつ、V、Nb、TiとCとが、 0.5×C/12≦(V/51+2×Nb/93+2×Ti/48)≦3×
C/12 なる関係を満たし、残部は実質的にFeおよび不可避的不
純物からなる組成を有し、 主相であるフェライト相と、組織全体に対する面積率で
1%以上のマルテンサイト相を含む第2相とからなる組
織を有することを特徴とする、深絞り性に優れた複合組
織型高張力冷延鋼板。 - 【請求項3】 上記組成に加えてさらに、質量%で、下
記に示すA群およびB群のうちの1群または2群を含有
することを特徴とする請求項1又は2に記載の深絞り性
に優れた複合組織型高張力冷延鋼板。 記 A群:CrおよびMoのうちの1種または2種を合計で2.0
質量%以下 B群:CuおよびNiのうちの1種または2種を合計で2.0
質量%以下 - 【請求項4】 質量%でC:0.01〜0.08%、Si:2.0%以
下、Mn:3.0%以下、P:0.10%以下、S:0.02%以下、Al:
0.005〜0.20%、N:0.02%以下およびV:0.01〜0.5%
を含有し、かつ、VとCが、 0.5×C/12≦V/51≦3×C/12 なる関係を満たし、残部は実質的にFeおよび不可避的不
純物の組成になる鋼スラブを、熱間圧延し、引き続き酸
洗した後、冷間圧延を施し、その後、Ac1〜Ac3変態点
の温度域で連続焼鈍することを特徴とする、深絞り性に
優れた複合組織型高張力冷延鋼板の製造方法。 - 【請求項5】 質量%でC:0.01〜0.08%、Si:2.0%以
下、Mn:3.0%以下、P:0.10%以下、S:0.02%以下、Al:
0.005〜0.20%、N:0.02%以下およびV:0.01〜0.5%
を含有するとともに、Nb:0.001〜0.3%とTi:0.001〜0.
3%のうちの1種または2種を合計で0.3%以下含有し、
かつ、V、Nb、TiとCとが、 0.5×C/12≦(V/51+2×Nb/93+2×Ti/48)≦3×
C/12 なる関係を満たし、残部は実質的にFeおよび不可避的不
純物の組成になる鋼スラブを、熱間圧延し、引き続き酸
洗した後、冷間圧延を施し、その後、Ac1〜Ac3変態点
の温度域で連続焼鈍することを特徴とする、深絞り性に
優れた複合組織型高張力冷延鋼板の製造方法。 - 【請求項6】 鋼スラブは、上記組成に加えてさらに、
質量%で、下記に示すA群およびB群のうちの1群また
は2群を含有することを特徴とする請求項4又は5に記
載の深絞り性に優れた複合組織型高張力冷延鋼板の製造
方法。 記 A群:CrおよびMoのうちの1種または2種を合計で2.0
質量%以下 B群:CuおよびNiのうちの1種または2種を合計で2.0
質量%以下
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