JP2003193191A - 深絞り性に優れた複合組織型高張力冷延鋼板およびその製造方法 - Google Patents

深絞り性に優れた複合組織型高張力冷延鋼板およびその製造方法

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JP2003193191A
JP2003193191A JP2001391733A JP2001391733A JP2003193191A JP 2003193191 A JP2003193191 A JP 2003193191A JP 2001391733 A JP2001391733 A JP 2001391733A JP 2001391733 A JP2001391733 A JP 2001391733A JP 2003193191 A JP2003193191 A JP 2003193191A
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Kazuhiro Hanazawa
和浩 花澤
Saiji Matsuoka
才二 松岡
Tetsuo Shimizu
哲雄 清水
Takashi Sakata
坂田  敬
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 引張り強さが780MPa以上である深絞り性に優
れた複合組織型高張力冷延鋼板およびその製造方法を提
案することにある。 【解決手段】 質量%で、C:0.03〜0.08%、Si:0.1〜
2.0%、Mn:1.0〜3.0%、P:0.05%以下、S:0.01%以
下、Al:0.005〜0.20%、N:0.02%以下およびV:0.01
〜0.5%を含有し、さらに、Nb:0.001〜0.3%とTi:0.00
1〜0.3%のうちの1種または2種を合計で0.3%以下含
有し、かつ、V、Nb、TiとCとが、0.5×C/12≦(V/5
1+2×Nb/93+2×Ti/48)≦3×C/12なる関係を満た
すとともに、V、Nb及びTiが、1.5≦(2×Nb/93+2×Ti/4
8)/(V/51)≦15なる関係を満たし、残部は実質的にFeお
よび不可避的不純物からなる組成を有し、主相であるフ
ェライト相と、組織全体に対する面積率で1%以上のマ
ルテンサイト相を含む第2相とからなる組織を有するこ
とを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、引張り強さが780M
Pa以上である、自動車用鋼板等の使途に好適な深絞り性
に優れた複合組織型高張力冷延鋼板およびその製造方法
に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、地球環境の保全という観点から、
自動車の燃費改善が要求され、また、車両衝突時に乗員
を保護する観点から、自動車車体の安全性向上も要求さ
れている。このため、自動車車体の軽量化と強化の双方
を図るための検討が積極的に進められている。自動車車
体の軽量化と強化を同時に満足させるには、部品素材を
高強度化することが効果的であると言われており、最近
では高張力鋼板が自動車部品に積極的に使用されてい
る。
【0003】鋼板を素材とする自動車の車体用部品の多
くは、プレス加工により成形される。このため、使用さ
れる高張力鋼板には、優れたプレス成形性を有すること
が要求される。プレス成形性向上のためには、鋼板の機
械的特性として、高いランクフォード値(r値)と高い
延性(El)および低い降伏応力(YS)が必要である。
しかし、一般に、鋼板を高強度化すると、r値および延
性が低下し、プレス成形性が劣化するとともに、降伏応
力が上昇して形状凍結性が劣化して、スプリングバック
の問題が生じやすい。
【0004】プレス成形性の良好な高張力鋼板の代表例
としては、軟らかいフェライトと硬質のマルテンサイト
の複合組織からなる複合組織鋼板が挙げられる。特に連
続焼鈍後ガスジェット冷却で製造される複合組織鋼板
は、降伏応力が低く高延性と優れた焼付け硬化性とを兼
ね備えている。上記複合組織鋼板は、加工性については
概ね良好であるものの、厳しい条件下での加工性、特に
r値が低く深絞り成形性が劣るという欠点があった。
【0005】このような不利な条件のもとで、複合組織
鋼板のr値を大きくして深絞り性を改善する試みがなさ
れている。例えば特公昭55−10650号公報では、冷間圧延
後、再結晶温度〜Ac3変態点の温度で箱焼鈍を行い、そ
の後、複合組織とするため700〜800℃に加熱した後、焼
入れ焼戻しを伴う連続焼鈍を行う技術が開示されてい
る。しかしながら、この方法では、連続焼鈍時に焼入れ
焼戻しを行うため降伏応力が高く、低い降伏比が得られ
ない。この高降伏応力の鋼板はプレス成形に適さず、か
つプレス部品の形状凍結性が悪いという欠点がある。
【0006】また、前記高降伏応力を改善するための方
法としては、特開昭55−100934号公報に開示されてい
る。この方法は、高r値を得るためにまず箱焼鈍を行う
が、箱焼鈍時の温度をフェライト(α)−オーステナイ
ト(γ)の2相域とし、均熱時にα相からγ相にMnを濃
化させる。このMn濃化相は連続焼鈍時に優先的にγ相と
なり、ガスジェット程度の冷却速度でも混合組織が得ら
れ、さらに降伏応力も低い。しかし、この方法では、Mn
濃化のためα−γの2相域という比較的高温で長時間の
箱焼鈍が必要であり、そのため焼鈍時の熱膨張に起因す
るコイル内部における鋼板間の密着の多発、テンパーカ
ラーの発生および炉体インナーカバーの寿命低下など製
造工程上、多くの問題がある。従来、このように高いr
値と低い降伏応力を兼ね備えた高張力鋼板を工業的に安
定して製造することは困難であった。
【0007】加えて、特公平1-35900号公報では、0.012
質量%C-0.32質量%Si-0.53質量%Mn-0.03質量%P−
0.051質量%Tiの組成の鋼を冷間圧延後、α-γの2相域
である870℃に加熱後、100℃/sの平均冷却速度にて冷
却することにより、r=1.61、YS=224MPa、TS=482MPaの非
常に高いr値と低降伏応力を有する複合組織型冷延鋼板
が製造可能となる技術が開示されている。しかしなが
ら、100℃/sという高い冷却速度は、通常の冷間圧延
後の連続焼鈍ライン、あるいは連続溶融亜鉛めっきライ
ンで用いられるガスジェット冷却では達成困難で、水焼
入れ設備が必要となる他、水焼入れした鋼板は、表面処
理性の問題が顕在化するため、製造設備上および材質上
の問題がある。
【0008】本発明者らは、上記問題点を解決した、高
いr値と低い降伏応力を兼ね備えた高張力鋼板の開発に
成功し、既に出願した特願2001-312687号の明細書及び
図面において、かかる高張力鋼板を開示した。特願2001
-312687号の明細書及び図面にて開示した高張力鋼板
は、引張り強さが440MPa以上の鋼板を対象としていた
が、発明者らがさらに検討を進めたところ、440MPa以上
の鋼板であっても、特に780MPa級の高張力鋼板の場合に
は、V含有量と、Nb及びTiの含有量との関係によって
は、高いr値が得られなくなる場合があることが判明し
た。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記の問題
を解決した、引張り強さが780MPa以上である深絞り性に
優れた複合組織型高張力冷延鋼板およびその製造方法を
提案することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記した
課題を達成するため、冷延鋼板のミクロ組織および再結
晶集合組織におよぼす合金元素の影響について鋭意研究
を重ねた。この結果、鋼スラブ中のCを低含有量に制限
するとともに、C含有量との関係でV、NbおよびTiの含
有量の適正化を図ることにより、再結晶焼鈍前には、鋼
中のCをV、Nb、Ti系炭化物、特にV系炭化物として析
出させて固溶Cを極力低減させ、{111}再結晶集合組織
を発達させることにより高r値が得られること、また、
引き続きα−γの2相域に加熱することにより、V、N
b、Ti系炭化物を溶解させて、オーステナイト中にCを
濃化させることにより、その後の冷却過程でマルテンサ
イトが生成しやすくなる結果、r値の高い深絞り性に優
れた複合組織型高張力冷延鋼板を安定して製造できるこ
とを見い出した。
【0011】以下、本発明者らが行った基礎的な実験結
果について説明する。ここでは、TS:590MPa級およびT
S:780MPa級の複合組織型高張力冷延鋼板について実験
を行った。まず、TS:590MPa級の複合組織型高張力冷延
鋼板の基礎実験は以下のような条件で行った。質量%
で、C:0.03%、Si:0.02%、Mn:1.7%、P:0.01
%、S:0.005%、Al:0.04%、N:0.002%を基本組成
とし、これにVを0.03〜0.55質量%の範囲、Nbを0.005
〜0.2質量%の範囲、およびTiを0.005〜0.2質量%の範
囲で添加することによって、異なるV、Nb、Ti含有量を
有する種々のシートバーについて、1250℃に加熱−均熱
後、仕上圧延終了温度が900℃となるように3パス圧延
を行って板厚4.0mmの熱延板とした。
【0012】加えて、質量%で、C:0.03%、Si:0.02
%、Mn:1.7%、P:0.01%、S:0.005%、Al:0.04
%、N:0.002%を基本組成とし、これにV、Nb、Ti
をそれぞれ質量%で0.03〜0.04%、0.01〜0.18%、0.01
〜0.18%の範囲で添加することによって、0.5×C/12≦
(V/51+2×Nb/93+2×Ti/48)≦3×C/12を満足し、異な
る(2×Nb/93+2×Ti/48)/(V/51)の値を有する種々のシー
トバーについても同様の処理を行った。
【0013】なお、上記の仕上圧延終了後、コイル巻取
り処理として650℃×1hの保温相当処理を施した。引
き続き、圧下率70%の冷間圧延を施して板厚1.2mmの
冷延板とした。ついで、これらの冷延板に、850℃で60s
の再結晶焼鈍を施した後、30℃/sの平均冷却速度で30
0℃まで冷却した。
【0014】また、TS:780MPa級の複合組織型高張力冷
延鋼板の基礎実験は以下のような条件で行った。質量%
で、C:0.04%、Si:0.70%、Mn: 2.6%、P:0.04
%、S:0.005%、Al:0.04%、N:0.002%を基本組成
とし、これにV、Nb、Tiをそれぞれ質量%で0.02〜
0.06、0.01〜0.12、0.01〜0.12の範囲で添加することに
よって、0.5×C/12≦(V/51+2×Nb/93+2×Ti/48)≦3×
C/12を満足し、異なる(2×Nb/93+2×Ti/48)/(V/51)の値
を有する種々のシートバーについて、1250℃に加熱−均
熱後、仕上圧延終了温度が900℃となるように3パス圧
延を行って板厚4.0mmの熱延板とした。なお、仕上圧延
終了後、コイル巻取り処理として650℃×1hの保温相
当処理を施した。引き続き、圧下率70%の冷間圧延を施
して板厚1.2mmの冷延板とした。ついで、これらの冷延
板に、α−γの2相域温度である850℃で60sの再結晶
焼鈍を施した後、30℃/sの平均冷却速度で300℃まで
冷却した。
【0015】得られた冷延鋼板について、引張試験を実
施し引張特性を調査した。引張試験は、JIS5号引張試験
片を用いて行った。r値は、圧延方向(rL)、圧延方向
に45度方向(rD)および圧延方向に垂直(90度)方
向(rc)の平均r値{=(rL+rc +2×rD)/4}と
して求めた。
【0016】図1(a),(b)は、TS:590MPa級の複合組織型
高張力冷延鋼板において、鋼スラブ中のV、NbおよびTi
の含有量が冷延鋼板のr値と降伏比(YR=降伏応力(Y
S)/引張り強さ(TS)×100(%))に及ぼす影響を示
すための図である。横軸は、図1(a),(b)とも、V、Nbお
よびTiの含有量とC含有量の原子比((V/51+2×Nb/
93+2×Ti/48)/(C/12))であり、縦軸は、図1
(a)がr値、図1(b)が降伏比(YR)である。図1(a),
(b)から、鋼スラブ中のV、NbおよびTiの含有量をCと
の原子比にして0.5〜3.0の範囲に制限することにより、
高いr値と低い降伏比が得られ、深絞り性に優れた複合
組織型高張力冷延鋼板が製造可能となることが明らかに
なった。
【0017】本発明の鋼板では、再結晶焼鈍前には固溶
CおよびNが少なく、{111}再結晶集合組織が強く発達
するため、高r値が得られることを、発明者らは知見し
ている。また、α-γの2相域((α+γ)の2相域と
もいう。)にて焼鈍することにより、V、NbおよびTiの
炭化物、特にV炭化物が溶解し、固溶Cがオーステナイ
ト相に多量に濃化し、その後の冷却過程においてオース
テナイトがマルテンサイトに容易に変態することがで
き、フェライトとマルテンサイトの複合組織が得られる
ことを、発明者らは知見している。
【0018】ここで、従来は炭化物形成元素としてTiお
よびNbが主に使用されてきたが、本発明者らは高温域で
の焼鈍で有効に固溶Cを得るために、炭化物の溶解度が
TiおよびNbよりも高い、Vに着目した。すなわち、V炭
化物はTi炭化物およびNb炭化物よりも、高温焼鈍時に容
易に溶解する結果、α−γの2相域での焼鈍により、オ
ーステナイトがマルテンサイトに変態するのに十分な量
の固溶Cが得られることを発見した。加えて、この現象
は、Vにより最も顕著に生じるが、Nb、Tiを複合添加す
ることによっても同様に得られることも明らかになっ
た。
【0019】本発明は、これらの知見に基づくものであ
るが、発明者らがさらに検討を進めたところ、440MPa以
上の鋼板であっても、特に780MPa級の高張力鋼板の場合
には、V含有量と、Nb及びTiの含有量との関係によって
は、高いr値が得られなくなる場合があることが判明し
た。
【0020】すなわち、発明者らは、V、NbおよびTiを
含有する鋼スラブを用いて製造したTS:590MPa級とTS:
780MPa級の複合組織型高張力冷延鋼板のr値について比
較した結果、以下の事項が明らかになった。図2(a),(b)
は、両者におけるTSおよびr値と、(2×Nb/93+2×Ti/
48)/(V/51)の関係を示したものである。
【0021】この結果によると、TS:780MPa級では多量
の固溶強化元素により高強度化を図っているため、固溶
C量の増加等によりTS:590MPa級に比べr値が低下して
いる。しかしながら、TS:780MPa級では、(2×Nb/93+2×
Ti/48)/(V/51)を1.5以上の範囲とすることにより、r値
が著しく向上することがわかる。こうした、TS:780MPa
級において、(2×Nb/93+2×Ti/48)/(V/51)を1.5以上の
範囲とすることにより、r値が著しく向上する特徴は、
TS:590MPa級では見られなかった。原因の詳細について
は不明であるが、TS:780MPa級のような固溶C等のr値
を低下させる要因となる元素を多量に含有する系では、
Vに比べNbやTiの方が固溶C、Nを化合物として析出
し易く、熱間圧延後の固溶C、N量が少量となるためr値
が向上したものと考えられる。なお、(2×Nb/93+2×Ti/
48)/(V/51)が15を超える範囲ではTSが著しく低下するた
め、TS:780MPa級の複合組織型高張力冷延鋼板を得る上
では好ましくない。これは、V炭化物に比べNb炭化物
やTi炭化物の方が溶解しにくいため、Vに比べNbと
Tiの添加量が多量となりすぎると、α−γの2相域で
の焼鈍時にオーステナイト相に濃化するC量が大幅に減
少し、冷却後に生成するマルテンサイト相が軟質化する
ためと考えられる。
【0022】本発明は、上記した知見に基づき、さらに
検討して完成されたものであり、本発明の要旨は下記の
とおりである。 (1)質量%でC:0.03〜0.08%、Si:0.1〜2.0%、Mn:
1.0〜3.0%、P:0.05%以下、S:0.01%以下、Al:0.005
〜0.20%、N:0.02%以下およびV:0.01〜0.5%を含有
し、さらに、Nb:0.001〜0.3%とTi:0.001〜0.3%のう
ちの1種または2種を合計で0.3%以下含有し、かつ、
V、Nb、TiとCとが、0.5×C/12≦(V/51+2×Nb/93
+2×Ti/48)≦3×C/12なる関係を満たすとともに、
V、Nb及びTiが、 1.5≦(2×Nb/93+2×Ti/48)/(V/51)≦15 なる関係を満たし、残部は実質的にFeおよび不可避的不
純物からなる組成を有し、主相であるフェライト相と、
組織全体に対する面積率で1%以上のマルテンサイト相
を含む第2相とからなる組織を有することを特徴とす
る、深絞り性に優れた複合組織型高張力冷延鋼板。
【0023】(2)(1)に記載の高張力冷延鋼板にお
いて、さらに、質量%で、下記に示すA群およびB群の
うちの1群または2群を含有することを特徴とする深絞
り性に優れた複合組織型高張力冷延鋼板。 A群:CrおよびMoのうちの1種または2種を合計で2.0
%以下 B群:CuおよびNiのうちの1種または2種を合計で2.0
%以下
【0024】(3)質量%でC:0.03〜0.08%、Si:0.1
〜2.0%、Mn:1.0〜3.0%、P:0.05%以下、S:0.01%以
下、Al:0.005〜0.20%、N:0.02%以下およびV:0.01
〜0.5%を含有し、さらに、Nb:0.001〜0.3%とTi:0.00
1〜0.3%のうちの1種または2種を合計で0.3%以下含
有し、かつ、V、Nb、TiとCとが、0.5×C/12≦(V/5
1+2×Nb/93+2×Ti/48)≦3×C/12なる関係を満た
すとともに、V、Nb及びTiが、 1.5≦(2×Nb/93+2×Ti/48)/(V/51)≦15 なる関係を満たし、残部は実質的にFeおよび不可避的不
純物からなる組成になる鋼スラブを、熱間圧延し、つい
で、酸洗した後、冷間圧延を施し、その後、Ac1〜Ac3
変態点の温度域で連続焼鈍することを特徴とする、深絞
り性に優れた複合組織型高張力冷延鋼板の製造方法。
【0025】(4)(3)に記載の製造方法において、
さらに、鋼スラブが、質量%で、下記に示すA群および
B群のうちの1群または2群を含有することを特徴とす
る深絞り性に優れた複合組織型高張力冷延鋼板の製造方
法。 A群:CrおよびMoのうちの1種または2種を合計で2.0
%以下 B群:CuおよびNiのうちの1種または2種を合計で2.0
%以下
【0026】
【発明の実施の形態】本発明の冷延鋼板は、引張強さ
(TS)が780MPa以上の深絞り性に優れた複合組織型高張
力鋼板である。まず、本発明の冷延鋼板の組成を限定し
た理由について説明する。なお、質量%は単に%と記
す。
【0027】C:0.03〜0.08% Cは、鋼板の強度を増加し、さらにフェライトとマルテ
ンサイトの複合組織の形成を促進する元素であり、本発
明では高強度化を指向した複合組織形成の観点から0.03
%以上、より好ましくは0.035%以上含有する必要があ
る。一方、Cが、0.08%を超えて含有すると、{111}再
結晶集合組織の発達を阻害し、深絞り成形性を低下させ
る。このため、本発明では、C含有量は0.03〜0.08%に
限定した。なお、深絞り性の観点からは0.05%以下とす
るのが好ましい。
【0028】Si:0.1〜2.0% Siは、鋼板の延性を顕著に低下させることなく、鋼板を
高強度化させることができる有用な強化元素であるが、
その含有量が2.0%を超えると、深絞り性の劣化を招く
とともに、表面性状が悪化する。また、Si含有量が0.1
%未満だと、TS:780MPa以上の高強度を確保することが
難しくなる。このため、Siは2.0%以下に限定した。
【0029】Mn:1.0〜3.0% Mnは、鋼を強化する作用があり、さらにフェライトとマ
ルテンサイトの複合組織が得られる臨界冷却速度を小さ
くして、フェライトとマルテンサイトの複合組織の形成
を促進する作用を有しており、再結晶焼鈍後の冷却速度
に応じた量を含有させるのが好ましい。また、Mnは、S
による熱間割れを防止する有効な元素でもあるため、含
有するS量に応じて適量含有させるのが好ましい。しか
しながら、Mn含有量が3.0%を超えると、深絞り性およ
び溶接性が劣化し、1.0%未満だと、TS:780MPa以上の
高強度を確保することが難しくなる。このため、本発明
ではMn含有量は1.0〜3.0%に限定した。
【0030】P:0.05%以下 Pは鋼を強化する作用があり、所望の強度に応じて必要
量含有させることができるが、P含有量が0.05%を超え
ると、プレス成形性が劣化するとともに、TS:780MPa以
上を確保するためにC、Mn等を多量に含有する場合に
は、溶接性が劣化することから、P含有量は0.05%以下
と限定した。なお、TS:780MPa以上を確保するために
は、P含有量は0.005%以上とすることが好ましい。
【0031】S:0.01%以下 Sは、鋼板中では介在物として存在し、鋼板の延性、成
形性、とくに伸びフランジ成形性の劣化をもたらすとと
もに、TS:780MPa以上を確保するためにC、Mn等を多量
に含有した場合には、溶接性を劣化させる元素である。
このため、できるだけ低減するのが好ましいが、0.01%
以下に低減するとさほど悪影響を及ぼさなくなることか
ら、本発明ではS含有量は0.01%を上限とした。なお、
好ましくは0.005%以下である。一方、製鋼工程での脱S
コストを考慮すると、S含有量は0.0001%以上とするこ
とが好ましい。
【0032】Al:0.005〜0.20% Alは、鋼の脱酸元素として添加され、鋼の清浄度を向上
させるのに有用な元素であるが、0.005%未満では添加
の効果がない。一方、0.20%を超えて含有してもより一
層の脱酸効果は得られず、逆に深絞り性が劣化する。こ
のため、Alは0.005〜0.20%に限定した。なお、本発明
では、Al脱酸以外の脱酸方法による溶製方法を排除する
ものではなく、たとえばTi脱酸やSi脱酸を行ってもよ
く、これらの脱酸法による鋼板も本発明の範囲に含まれ
る。その際、CaやREM等を溶鋼に添加しても、本発明鋼
板の特徴はなんら阻害されず、CaやREM等を含む鋼板も
本発明範囲に含まれるのは勿論である。
【0033】N:0.02%以下 Nは、固溶強化や歪時効硬化で鋼板の強度を増加させる
元素であるが、0.02%を超えて含有すると、鋼板中に窒
化物が増加し、それにより鋼板の深絞り性が顕著に劣化
する。このため、Nは0.02%以下に限定した。なお、よ
りプレス成形性の向上が要求される場合には0.01%以下
とするのが好適であり、より好ましくは、0.004%以下
とする。ここで、製鋼工程での脱Nコストを考慮する
と、N含有量は0.0001%以上とすることが好ましい。
【0034】V:0.01〜0.5%含有し、Nb:0.001〜0.3
%およびTi:0.001〜0.3%のうちの1種または2種を合
計で0.3%以下含有し、かつ、V、NbおよびTiの含有量
とC含有量とが0.5×C/12≦(V/51+2×Nb/93+2×
Ti/48)≦3×C/12なる関係を満たすことVは、本発明
において最も重要な元素であり、再結晶前には固溶Cを
V炭化物として析出固定することにより、{111}再結晶
集合組織を発達させて高いr値を得ることができる。さ
らに、Vは、α−γの二相域焼鈍時にはV炭化物を溶解
させて固溶Cを多量にオーステナイト相に濃化させ、そ
の後の冷却過程において容易にマルテンサイト変態させ
ることにより、フェライトとマルテンサイトの複合組織
を有する複合組織鋼板を得ることができる。このような
効果は、V含有量が0.01%以上、より好ましくは0.02%
以上で有効となる。一方、V含有量が0.5%を超える
と、α-γの2相域におけるV炭化物の溶解が起こりに
くくなるため、フェライトとマルテンサイトの複合組織
が得られにくくなる。したがって、V含有量は0.01〜0.
5%に限定した。
【0035】NbおよびTiはVと同様に炭化物形成元素で
あって、上述したVと同様の作用を有する。すなわち、
再結晶前には固溶CをNbおよびTi炭化物として析出固定
することにより、{111}再結晶集合組織を発達させて高
いr値を得ることができ、さらにα−γの2相域での焼
鈍時にはNbおよびTi炭化物を溶解させて固溶Cを多量に
オーステナイト相に濃化させ、その後の冷却過程におい
てマルテンサイト変態させることにより、フェライトと
マルテンサイトの複合組織を有する複合組織鋼板を得る
ことができる。但し、NbおよびTiの上述した効果は、V
に比べるとかなり小さいため、鋼スラブ中にVを添加す
ることなく、NbやTiだけを添加しただけでは、本発明の
効果である深絞り性を十分に高めることはできない。
【0036】従って、NbおよびTi含有量はともに0.001
%以上であることが好ましい。さらに、この場合、Cと
V、NbおよびTiの含有量との関係で0.5×C/12≦(V
/51+2×Nb/93+2×Ti/48)であることが上記効果
を発揮する上で好ましい。一方、NbおよびTiの単独添加
で又は複合添加の合計で0.3%を超えるか、あるいはC
とV含有量との関係で(V/51+2×Nb/93+2×Ti/4
8)>3×C/12の場合には、α−γの2相域における
炭化物の溶解が起こりにくくなるため、フェライトとマ
ルテンサイトの複合組織が得られにくくなる。したがっ
て、NbおよびTiのいずれか1方のみを添加する場合に
は、ともに0.001〜0.3%の範囲とし、また、NbおよびTi
を複合添加する場合には、合計で0.3%以下とし、かつ
CとV、NbおよびTiの含有量との関係で0.5×C/12≦
(V/51+2×Nb/93+2×Ti/48)≦3×C/12の範囲に
限定した。なお、(V/51+2×Nb/93+2×Ti/48)≦2
×C/12とすることが、フェライトとマルテンサイトの
複合組織を得る上で好ましい。
【0037】また、TS:780MPa以上の高張力冷延鋼板
は、添加する多量のC、Mn等の固溶強化元素等によ
り、深絞り性が低下する場合がある。このため、発明者
らが鋭意検討を行ったところ、上記構成に加えて、V、
NbやTi の添加量を1.5≦(2×Nb/93+2×Ti/48)/(V/51)≦
15の範囲とすれば、TS:780MPa以上の高張力冷延鋼板に
おいて、深絞り性を向上させることができることを見出
し、本発明を完成させるに至ったのである。すなわち、
(2×Nb/93+2×Ti/48)/(V/51)を1.5以上の範囲とする理
由は、原因の詳細については明らかではないが、Vに比
べ多量のNbやTiを添加することにより、熱間圧延後の炭
化物形成を促進し固溶C量を減少させるため、{11
1}再結晶集合組織が容易に発達するためと考えられ
る。また、(2×Nb/93+2×Ti/48) /(V/51)を15以下の範
囲とする理由は、この範囲を超えた場合には、TS:780M
Pa以上の高強度を確保するのが難しくなるからである。
【0038】また、本発明では、上記した鋼組成に加え
てさらに、下記に示すA群およびB群、すなわち、 A群:Cr、Moのうちの1種または2種を合計で2.0%以
下 B群:Cu、Niのうちの1種または2種を合計で2.0%以
下 のうちの1群または2群を含有することが好ましい。
【0039】A群: Cr、Moのうちの1種または2種を
合計で2.0%以下 A群:CrおよびMoは、いずれもMnと同様に、フェライト
とマルテンサイトの複合組織が得られる臨界冷却速度を
小さくし、フェライトとマルテンサイトの複合組織の形
成を促進する作用を有しており、必要に応じ含有でき
る。上記効果を得るための好ましいCr、Moの含有量の下
限値は、Cr:0.05%、Mo:0.05%である。但し、Cr、Mo
のうちの1種または2種を合計で2.0%を超えて含有す
ると、深絞り性が低下する。このため、A群:Cr、Moの
うちの1種または2種を合計で2.0%以下に限定するの
が好ましい。
【0040】B群:Cu、Niのうちの1種または2種を合
計で2.0%以下 B群:Cu、Niは、鋼を強化する作用があり、所望の強度
に応じて必要量含有することができるが、CuおよびNiを
単独添加でまたは複合添加の合計で2.0%を超えると、
深絞り性が劣化する傾向がある。このため、Cu、Niは1
種または2種を合計で2.0%以下とするのが好ましい。
なお、上記効果を得るための好ましいCu、Niの含有量の
下限値は、Cu:0.05%、Ni:0.05%である。
【0041】なお、本発明では、上記した成分以外につ
いては、特に限定していないが、B、Ca、Zr、REM等を
通常の鋼組成の範囲内であれば含有させてもなんら問題
はない。ここで、Bは鋼の焼入性を向上する作用を有す
る元素であり、必要に応じ含有できる。しかし、B含有
量が0.003%を超えると、効果が飽和するため、Bは0.0
03%以下が好ましい。なお、より望ましい範囲は0.001〜
0.002%である。CaおよびREMは、硫化物系介在物の形態
を制御する作用を有し、これにより鋼板の伸びフランジ
性を向上させる効果を有する。このような効果は、Caお
よびREMのうちから選ばれた1種または2種の含有量が
合計で、0.01%を超えると飽和する。このため、Caおよ
びREMのうちの1種または2種の含有量は、合計で0.01
%以下とするのが好ましい。なお、より好ましい範囲は
0.001〜0.005%である。
【0042】上記した成分以外の残部はFeおよび不可避
的不純物である。不可避的不純物としては、例えばSb、
Sn、Zn、Co等が挙げられ、これらの含有量の許容範囲と
しては、Sb:0.01%以下、Sn:0.1%以下、Zn:0.01%以
下、Co:0.1%以下の範囲である。
【0043】次に、本発明鋼板の組織について説明す
る。本発明の冷延鋼板は、組織が、主相であるフェライ
ト相と、組織全体に対する面積率で1%以上のマルテン
サイト相を含む第2相とからなる組織を有する。
【0044】低い降伏応力(YS)と高い延性(El)を有
し、優れた深絞り性を有する冷延鋼板とするために、本
発明では鋼板の組織を、主相であるフェライト相と、マ
ルテンサイト相を含む第2相との複合組織とする必要が
ある。主相であるフェライト相は組織全体に対する面積
率で80%以上、従って、第2相は20%以下とするのが好
ましい。フェライト相が面積率で80%未満では、高い延
性を確保することが困難となり、プレス成形性が低下す
る傾向があるからである。また、さらに良好な延性が要
求される場合には、フェライト相を面積率で85%以上、
従って、第2相を15%以下とするのが好ましい。なお、
複合組織の利点を利用するため、フェライト相は99%以
下とする必要がある。
【0045】また、第2相として、本発明では、マルテ
ンサイト相を、組織全体に対する面積率で1%以上含有
する必要がある。マルテンサイトが面積率で1%未満で
は、低い降伏応力(YS)と高い延性(El)を同時に満足
させることができない。より好ましくはマルテンサイト
相は面積率で3%以上、20%以下であり、さらに良好な
延性が要求される場合には、マルテンサイト相は面積率
で15%以下とするのが好ましい。なお、第2相は、面積
率で1%以上のマルテンサイト相単独としても、あるい
は面積率で1%以上のマルテンサイト相と、副相として
それ以外のパーライト相、ベイナイト相、残留オーステ
ナイト相のいずれかとの混合としてもよく、特に限定さ
れない。ただし、これらパーライト相、ベイナイト相、
残留オーステナイト相は、前記マルテンサイト相の効果
をより有効に発揮させるため、これらの相の合計を第2
相の組織に対する面積率で50%以下とするのが好まし
い。
【0046】上記した組織を有する冷延鋼板は、低降伏
応力で高延性を有する深絞り性に優れた鋼板である。
【0047】次に、本発明の冷延鋼板の製造方法につい
て説明する。本発明の製造方法に用いられる鋼スラブの
組成は、上述した冷延鋼板の組成と同様であるので、鋼
スラブの限定理由の説明については省略する。本発明の
冷延鋼板は、上記した範囲内の組成を有する鋼スラブを
素材とし、該素材に熱間圧延を施し熱延板とする熱延工
程と、該熱延板を酸洗する酸洗工程と、該熱延板に冷間
圧延を施し冷延板とする冷延工程と、該冷延板に再結晶
焼鈍を施して冷延焼鈍板とする再結晶焼鈍工程とを順次
施すことにより製造される。
【0048】使用する鋼スラブは、成分のマクロ偏析を
防止するために連続鋳造法で製造するのが好ましいが、
造塊法、薄スラブ鋳造法で製造してもよい。また、鋼ス
ラブを製造したのち、いったん室温まで冷却し、その
後、再度加熱する従来法に加え、冷却しないで、温片の
ままで加熱炉に挿入する方法や、わずかの保熱を行った
後に直ちに圧延する直送圧延・直接圧延する方法などの
省エネルギープロセスも問題なく適用できる。
【0049】上記した素材(鋼スラブ)を加熱し、熱間
圧延を施し熱延板とする熱延工程を施す。熱延工程は所
望の板厚の熱延板が製造できる条件であればよく、通常
の圧延条件を用いても特に問題はない。なお、参考のた
め、好適な熱延条件を以下に示しておく。
【0050】スラブ加熱温度:900℃以上 スラブ加熱温度は、析出物を粗大化させることにより、
{111}再結晶集合組織を発達させ、深絞り性を改善する
ため、低い方が望ましい。しかし、加熱温度が900℃未
満では、圧延荷重が増大し、熱間圧延時におけるトラブ
ル発生の危険性が増大する。このため、スラブ加熱温度
は900℃以上にすることが好ましい。また、酸化重量の
増加に伴うスケールロスの増大による歩留まりの低下な
どから、スラブ加熱温度の上限は1300℃とすることがよ
り好適である。なお、スラブ加熱温度を低くし、かつ熱
間圧延時のトラブルを防止するといった観点から、熱間
圧延時に、シートバーを加熱する、いわゆるシートバー
ヒーターを活用することは、有効な方法であることは言
うまでもない。
【0051】仕上圧延終了温度:700℃以上 仕上圧延終了温度(FDT)は、冷間圧延および再結晶焼
鈍後に優れた深絞り性が得られる均一な熱延母板組織を
得るため、700℃以上にすることが好ましい。すなわ
ち、仕上圧延終了温度が700℃未満では、熱延母板組織
が不均一となるとともに、熱間圧延時の圧延負荷が高く
なり、熱間圧延時におけるトラブル発生の危険性が増大
するからである。
【0052】巻取温度:800℃以下 巻取温度は、800℃以下とするのが好ましい。すなわ
ち、巻取温度が800℃を超えると、スケールが増加しス
ケールロスにより歩留りが低下する傾向があるからであ
る。なお、巻取温度は200℃未満となると、鋼板形状が顕
著に乱れ、実際の使用にあたり不具合を生じる危険性が
増大するため、巻取温度の下限を200℃とすることがよ
り好適である。
【0053】このように、本発明の熱延工程では、鋼ス
ラブを900℃以上に加熱した後、仕上圧延終了温度:700
℃以上とする熱間圧延を施し、800℃以下の巻取温度で
巻き取るのが好ましい。なお、本発明における熱間圧延
工程では、熱間圧延時の圧延荷重を低滅するため、仕上
圧延の一部または全部のパス間で潤滑圧延としてもよ
い。加えて、潤滑圧延を行うことは、鋼板形状の均一化
や材質の均一化の観点からも有効である。なお、潤滑圧
延の際の摩擦係数は0.10〜0.25の範囲とすることが好ま
しい。
【0054】また、相前後するシートバー同士を接合
し、連続的に仕上圧延する連続圧延プロセスとすること
が好ましい。連続圧延プロセスを適用することは、熱間
圧延の操業安定性の観点からも望ましい。
【0055】ついで、熱延板にスケール除去のため酸洗
を施す。酸洗工程は、常法に従えばよく、酸洗液として
は、例えば塩酸や硫酸系の処理液を用いることが好まし
い。さらに、熱延板に冷間圧延を施し冷延板とする。冷
間圧延条件は、所望の寸法形状の冷延板とすることがで
きればよく、特に限定されないが、冷間圧延時の圧下率
は40%以上とすることが好ましい。圧下率が40%未満で
は、{111}再結晶集合組織が発達せず、優れた深絞り
性が得られないからである。
【0056】本発明の冷延鋼板では、その後、再結晶焼
鈍工程にて、冷延板に再結晶焼鈍を行い冷延焼鈍板とす
る。再結晶焼鈍は、連続焼鈍ラインで行う。このときの
再結晶焼鈍の焼鈍温度は、(α+γ)の2相域であるAc
1〜Ac3変態点の温度範囲で行う必要がある。これは(α
+γ)の2相域で焼鈍を行うことにより、V、TiやN
bの炭化物を溶解させ、オーステナイトがマルテンサイ
トに変態するのに十分な量の固溶Cをオーステナイト相
に分配するためである。焼鈍温度がAc1変態点よりも低
いと、フェライト単相組織となって、マルテンサイトを
生成することができなくなるからであり、一方、Ac3
態点よりも高いと、結晶粒が粗大化するとともに、オー
ステナイト単相域となり、{111}再結晶集合組織が発達
せずに深絞り性が著しく劣化するからである。
【0057】また、本発明の冷延鋼板では再結晶焼鈍時
の冷却は、300℃までの平均冷却速度を5℃/s以上と
して行うのが好ましい。前記冷却速度を5℃/s以上と
したのは、5℃/s以上であれば、マルテンサイトを容
易に生成して、フェライトとマルテンサイトの複合組織
を得るのには十分であるからである。
【0058】また、再結晶焼鈍工程後の冷延鋼板には、
形状矯正、表面粗度等の調整のために、伸び率10%以下
の調質圧延を加えてもよい。さらに、本発明の冷延鋼板
は、加工用冷延鋼板としてのみならず、加工用表面処理
鋼板の原板としても適用できる。加工用表面処理鋼板と
しては、亜鉛めっき鋼板(合金系を含む)以外に、錫め
っき鋼板、ほうろう等が挙げられる。樹脂あるいは油脂
コーティング、各種塗装あるいは電気めっき等の処理を
施しても何ら不都合はない。さらにまた、本発明の冷延
鋼板には、めっき後、化成処理性、溶接性、プレス成形
性および耐食性等の改善のために特殊な処理を施しても
よい。
【0059】上述したところは、この発明の実施形態の
一例を示したにすぎず、請求の範囲において種々の変更
を加えることができる。
【0060】
【実施例】表1示す組成の溶鋼を転炉で溶製し、連続鋳
造法でスラブとした。ここで、表1に示した組成のスラ
ブは、TS:780MPa以上の冷延鋼板を得ることを目的とし
て作製した。ついで、これら鋼スラブを1150℃に加熱し
たのち、仕上圧延終了温度:900℃、巻取温度:650℃と
する熱間圧延を施す熱延工程により、板厚4.0mmの熱
延鋼帯(熱延板)とした。引き続き、これら熱延鋼帯
(熱延板)に酸洗、圧下率:70%で冷間圧延を施す冷延
工程により、板厚1.2mmの冷延鋼帯(冷延板)とした。
ついで、この冷延鋼板に、連続焼鈍ラインにて表2に示
す焼鈍温度で再結晶焼鈍を施した。なお、前記連続焼鈍
において、焼鈍温度から300℃までの平均冷却速度を5
〜40℃/sとして冷却した。得られた冷延板に、さらに
伸び率:0.8%の調質圧延を施した。
【0061】得られた鋼帯から試験片を採取し、圧延方
向に直交する断面(C断面)について、光学顕微鏡ある
いは走査型電子顕微鏡を用いて微視組織を撮像し、画像
解析装置を用いて主相であるフェライトの組織分率およ
び第2相の種類と組織分率を求めた。ここで、組織観察
用試料は、鏡面研磨後、2%のHNOを含むアルコール溶
液を用いてエッチングを施した後に観察に供した。ま
た、得られた鋼帯から、JIS5号引張試験片を採取し、J
IS Z 2241の規定に準拠して引張試験を行い、降伏応
力(YS)、引張強さ(TS)、伸び(El)、降伏比(YR)
およびランクフォード値(r値)を求めた。これらの結
果を表2に示す。
【0062】
【表1】
【0063】
【表2】
【0064】表2に示す結果から、本発明例は、いずれ
も、高い引張強さに比して低い降伏応力(YS)、すなわ
ち70%以下の低い降伏比、18%以上の高い伸び(El)お
よび1.1以上の高いr値を示して、深絞り成形性に優れ
るとともに、引張り強さが(TS)が780MPa以上の高張力
を有している。これに対し、本発明の範囲を外れる比較
例では、降伏比(YR)が高いか、伸び(El)が低いか、
あるいはr値が低くなっている。
【0065】
【発明の効果】本発明によれば、引張り強さが780MPa以
上である深絞り性に優れた複合組織型高張力冷延鋼板を
安定して製造することができるという産業上格段の効果
を奏する。本発明の冷延鋼板を自動車部品に適用した場
合、プレス成形が容易で、自動車車体の軽量化に十分に
寄与できるという効果もある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 (a)は、鋼中のV、NbおよびTiとCの含有量
がr値に及ぼす影響を示す図であり、(b)は、鋼中のV、
NbおよびTiとCの含有量が降伏比(YR=降伏応力(Y
S)/引張り強さ(TS)×100(%))に及ぼす影響を示
す図である。
【図2】 (a)は、TS:590MPa級とTS:780MPa級の複合
組織型高張力冷延鋼板において、Nb,Ti,V添加量の関係
が引張り強さ(TS)に及ぼす影響を示す図であり、
(b)は、TS:590MPa級とTS:780MPa級の複合組織型高張
力冷延鋼板において、Nb,Ti,V添加量の関係がランクフ
ォード値(r値)に及ぼす影響を示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 清水 哲雄 千葉県千葉市中央区川崎町1番地 川崎製 鉄株式会社技術研究所内 (72)発明者 坂田 敬 千葉県千葉市中央区川崎町1番地 川崎製 鉄株式会社技術研究所内 Fターム(参考) 4K037 EA01 EA05 EA11 EA13 EA15 EA16 EA17 EA18 EA19 EA20 EA23 EA25 EA27 EA28 EA31 EA32 EB11 FA02 FB00 FC04 FE02 FE03 FG00 FH01 FJ05 FJ06 FK02 FK03 FM02 GA05 JA06

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 質量%でC:0.03〜0.08%、Si:0.1〜2.
    0%、Mn:1.0〜3.0%、P:0.05%以下、S:0.01%以下、A
    l:0.005〜0.20%、N:0.02%以下およびV:0.01〜0.5
    %を含有し、さらに、Nb:0.001〜0.3%とTi:0.001〜0.
    3%のうちの1種または2種を合計で0.3%以下含有し、
    かつ、V、Nb、TiとCとが、 0.5×C/12≦(V/51+2×Nb/93+2×Ti/48)≦3×
    C/12なる関係を満たすとともに、V、Nb及びTiが、 1.5≦(2×Nb/93+2×Ti/48)/(V/51)≦15 なる関係を満たし、残部は実質的にFeおよび不可避的不
    純物からなる組成を有し、主相であるフェライト相と、
    組織全体に対する面積率で1%以上のマルテンサイト相
    を含む第2相とからなる組織を有することを特徴とす
    る、深絞り性に優れた複合組織型高張力冷延鋼板。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載の高張力冷延鋼板におい
    て、さらに、質量%で、下記に示すA群およびB群のう
    ちの1群または2群を含有することを特徴とする深絞り
    性に優れた複合組織型高張力冷延鋼板。 A群:CrおよびMoのうちの1種または2種を合計で2.0
    %以下 B群:CuおよびNiのうちの1種または2種を合計で2.0
    %以下
  3. 【請求項3】 質量%で C:0.03〜0.08%、Si:0.1〜2.0%、Mn:1.0〜3.0%、
    P:0.05%以下、S:0.01%以下、Al:0.005〜0.20%、
    N:0.02%以下およびV:0.01〜0.5%を含有し、さら
    に、Nb:0.001〜0.3%とTi:0.001〜0.3%のうちの1種
    または2種を合計で0.3%以下含有し、かつ、V、Nb、T
    iとCとが、0.5×C/12≦(V/51+2×Nb/93+2×Ti/
    48)≦3×C/12なる関係を満たすとともに、V、Nb及
    びTiが、 1.5≦(2×Nb/93+2×Ti/48)/(V/51)≦15 なる関係を満たし、残部は実質的にFeおよび不可避的不
    純物からなる組成になる鋼スラブを、熱間圧延し、つい
    で酸洗した後、冷間圧延を施し、その後、Ac1〜Ac3
    態点の温度域で連続焼鈍することを特徴とする、深絞り
    性に優れた複合組織型高張力冷延鋼板の製造方法。
  4. 【請求項4】 請求項3に記載の製造方法において、さ
    らに、鋼スラブが、質量%で、下記に示すA群およびB
    群のうちの1群または2群を含有することを特徴とする
    深絞り性に優れた複合組織型高張力冷延鋼板の製造方
    法。 A群:CrおよびMoのうちの1種または2種を合計で2.0
    %以下 B群:CuおよびNiのうちの1種または2種を合計で2.0
    %以下
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