JP2010018852A - 深絞り性に優れた高強度鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】C:0.01〜0.03%を含有し、Z=100Si+30Mn+800Pが150以上であり、C*=C−(12/93)Nb−(12/48)Ti*−(12/50.9/10)V、X=0.1(Si−0.5)−0.5(P−0.05)−0.75(Mn−2.0)、Ti*=Ti―1.5S−3.4Nとしたとき、0.005≦C*≦0.012+0.04X、Ti*≧0.01を満たし、面積率で50%以上のフェライト相と、面積率で1%以上のマルテンサイト相を含む複合組織を有する。
【選択図】なし
Description
なお、以下の説明において、特にことわらない限り、元素の含有量の%は質量%である。
C:0.01〜0.03%
Cは、後述するNbとともに、本発明における重要な元素である。Cは高強度化に有効であり、フェライトを主相としマルテンサイトを含む第2相を有する複合組織の形成を促進するので、本発明では複合組織を形成する観点から0.01%以上含有する必要がある。一方、良好なr値を得るためには過剰な添加は好ましいものではないため、その点を考慮して0.03%以下とする。より好ましくは、0.025%以下である。
C*=C−(12/93)Nb−(12/48)Ti*−(12/50.9/10)V
X=0.1(Si−0.5)−0.5(P−0.05)−0.75(Mn−2.0)
Ti*=Ti―1.5S−3.4N
としたとき(ただし、各元素記号はその元素の含有量(質量%)を示す)、
0.005≦C*≦0.012+0.04X
を満たすことが好ましい。C*は上述したようにNb,Ti,Vにより固定されないC量を示し、これが0.005%よりも低いと第2相を確保することができず、組織強化を活用することが困難となる。また、C*が0.012+0.04Xを超えると、固溶Cの存在により、r値に好ましい{111}再結晶集合組織を発達させることができず、平均r値1.4以上を満足することが困難となる。r値のレベルは、固溶強化元素であるSi,Mn,Pの存在によっても変化するので、上記式ではその寄与分をXとして加味している。
Siは、フェライト変態を促進させ、未変態オーステナイト中のC含有量を上昇させて、フェライトとマルテンサイトとの複合組織を形成させやすくする他、固溶強化の効果がある。上記効果を得るためには0.2%以上含有することが必要である。より好ましくは0.35%以上である。一方、Siを1.5%を超えて含有すると、熱延時に赤スケールが発生するため、鋼板の表面外観を悪化させる。また、溶融亜鉛めっきを施す際にめっきの濡れ性を悪くしてめっきむらの発生を招き、めっき品質が劣化する。このため、Si含有量を1.5%以下とする。溶融亜鉛めっきのめっき品質を良好にする観点からは、Si含有量を1.0%以下とすることが好ましい。
Mnは、高強度化に有効であるとともに、マルテンサイトが得られる臨界冷却速度を低くする作用を有し、焼鈍後の冷却時にマルテンサイトの形成を促進するため、要求される強度レベルおよび焼鈍後の冷却速度に応じて含有させることが好ましい。また、MnはSによる熱間割れを防止するのに有効な元素でもある。このような観点からMnは1.0%以上含有させる必要がある。好ましくは1.2%以上である。また一方で、過度の添加はr値および溶接性を劣化させるので、その上限を3.0%とする。
Pは固溶強化の効果を有する。しかしながら0.005%未満ではその効果を発現させることが困難であるのみならず、製鋼工程において脱りんコストの上昇を招く。したがって、P含有量を0.005%以上とする。好ましくは0.01%以上である。一方、P含有量が0.1%を超えると、Pの粒界への偏析を招き、耐二次加工脆性および溶接性を劣化させる。また、溶融亜鉛めっき鋼板とする際には、溶融亜鉛めっき後の合金化処理時に、めっき層と下地鋼板との界面における下地鋼板からめっき層へのFeの拡散を抑制し、合金化処理性を劣化させる。そのため、高温での合金化処理が必要となり、得られるめっき層はパウダリング、チッピング等のめっき剥離が生じやすいものとなってしまう。したがって、P含有量を0.1%以下とする。
本発明においては、高強度化する際、固溶強化と析出強化とのバランスが重要である。引張強さ(TS)540MPa以上を得るためには、Z=100Si+30Mn+800Pとしたとき(ただし、各元素記号はその元素の含有量(質量%)を示す)、Zが150以上であることが必要である。Zは、Si,Mn,Pによる固溶強化量(MPa)に相当する値である。Zが150未満においては、TSを540MPa以上にしながら、平均r値を1.4以上にしようとすると、r値の面内異方性が大きくならざるを得ず、ある方向のr値が低くなってしまう。このため、Zを150以上とした。また、本発明は、TSが700MPa級までの鋼板を対象としており、その観点からZは250以下であることが好ましい。250を超えると、合金添加コストが高いものとなる他、脆性、めっき性が劣化する傾向となる。
Sは不純物であり、熱間割れの原因となる他、鋼中で介在物として存在し、鋼板の諸特性を劣化させるので、極力低減することが好ましいが、0.01%までは許容できるため、S含有量を0.01%以下とする。
Alは、鋼の脱酸元素として有用である他、固溶Nを固定して耐常温時効性を向上させる作用を有するため、0.005%以上含有させる。一方、0.1%を超えて添加すると合金コストが高くなり、さらに欠陥を誘発するので0.1%以下とする。
Nは、多すぎると耐常温時効性を劣化させ、多量のAlやTi添加が必要となるため、極力低減することが好ましく、上限を0.005%とする。
Nbは本発明において重要な元素であり、熱延板組織の微細化および熱延板中にNbCとしてCを析出固定させる作用を有し、高r値化に寄与する元素である。このような作用を有効に発揮させるためには0.02%以上含有させることが必要である。一方、本発明では焼鈍後の冷却過程でマルテンサイトを形成させるための固溶Cを必要とするが、過剰のNbはこれを妨げることになるので、その上限を0.5%とする。
VもNbと同様、熱延板組織の微細化および熱延板中に炭化物として存在してCを析出固定させる作用を有し、高r値化に寄与する元素である。ただし、炭素を固定する能力はNb、Tiに比べると劣るので、その分を考慮してその含有量を決定する必要がある。従来は、Vの寄与について明確に把握できておらず、必ずしも十分なr値が得られない問題があったが、本発明では上述したC*の式において、Vの寄与分をTiおよびNbの10%とすることにより、確実に高いr値を得ることができる。しかし、過剰のVは焼鈍後の冷却過程でマルテンサイトを形成するための固溶Cの生成を妨げるため、その上限を0.5%とする。
TiもNbと同様、熱延板組織の微細化および熱延板中に炭化物として存在してCを析出固定させる作用を有し、高r値化に寄与する元素である。また、Tiは固溶S,Nの析出固定に効果がある。r値の異方性を制御するためには、NbだけでなくTiも有効に活用することが重要である。このような観点から、固溶S,Nの析出固定に使われない有効Ti量(Ti*=Ti−1.5S−3.4N)が0.01%以上であることが必要である。一方、過剰のTiは焼鈍後の冷却過程でマルテンサイトを形成するための固溶Cの生成を妨げるため、その上限を0.5%とする。
CrはMn同様、マルテンサイトが得られる臨界冷却速度を遅くする作用を有し、焼鈍後の冷却時にマルテンサイト形成を促進する元素であり、強度レベル向上に効果がある。さらに、本発明では、熱延後の冷却を制御することでCを析出固定させる作用を有しながら、焼鈍時に溶解することで高r値化とマルテンサイト化に寄与する元素でもある。これらの効果を得るために、Cr含有量を0.1%以上とする。しかしながら、Crを過剰に含有させると、これらの効果が飽和するだけでなく、合金コストの上昇を招くため、その上限を1.0%とする。
本発明の鋼板の鋼組織は、面積率で50%以上のフェライト相と、面積率で1%以上のマルテンサイト相を含む複合組織である。これにより、良好な深絞り性を有し、引張強さ(TS)が540MPa以上である鋼板が得られる。
平均r値=(r0+2r45+r90)/4
ただし、
r0=試験片を板面の圧延方向に対し平行に採取し測定した塑性歪比
r45=試験片を板面の圧延方向に対し45°方向に採取し測定した塑性歪比
r90=試験片を板面の圧延方向に対し90°方向に採取し測定した塑性歪比
このように平均r値を1.4以上の高い値とすることにより、良好な深絞り性が得られる。
本発明では、上述した鋼板と同様の成分組成を有する鋼スラブに対し、熱間圧延工程、冷間圧延工程、冷延板焼鈍工程を施し、本発明の鋼板を得る。
熱間圧延工程では、上記成分組成の鋼スラブに対し、仕上圧延出側温度:800℃以上とする仕上圧延を施し、550℃以上720℃以下で巻き取り、コイル冷却して熱延板とする。
冷間圧延工程では、得られた熱延板に酸洗および冷延率50%以上85%以下の冷間圧延を施し冷延板とする。
冷延板焼鈍工程では、得られた冷延板に、焼鈍温度:800℃以上950℃以下で焼鈍を施し、次いで焼鈍温度から500℃までの温度域の平均冷却速度:5℃/s以上として冷却する。
表1に示す組成の溶鋼を転炉にて溶製し、連続鋳造法で鋼スラブとした。これら鋼スラブを1250℃に加熱し、粗圧延してシートバーとし、次いで表2に示す条件で仕上圧延および巻取を行う熱間圧延工程により熱延板とした。これらの熱延板を酸洗し、その後圧下率65%で冷間圧延を行う冷間圧延工程により冷延板とした。引き続き、これら冷延板に連続焼鈍ラインにて、表2に示す条件で連続焼鈍を行った。さらに、得られた冷延焼鈍板に伸び率0.5%の調質圧延を施した。
(1)引張特性
得られた各冷延焼鈍板から圧延方向に対して90°方向(C方向)にJIS5号引張試験片を採取し、JIS Z 2241の規定に準拠して、クロスヘッド速度10mm/minで引張試験を行い、降伏応力(YS)、引張強さ(TS)、全伸び(TEl)を求めた。
得られた各冷延焼鈍板から、圧延方向(L方向)、圧延方向に対して45°方向(D方向)、圧延方向に対して90°方向(C方向)にJIS5号引張試験片を採取した。これらの試験片に10%の単軸引張歪を付与した時の各試験片の幅歪と板厚歪を求め、JIS Z 2254の規定に準拠して平均r値(平均塑性歪比)を求めた。また、L方向のr値も求めた。
Claims (6)
- 質量%で、
C:0.01〜0.03%、
Si:0.2〜1.5%、
Mn:1.0〜3.0%、
P:0.005〜0.1%、
S:0.01%以下、
Al:0.005〜0.1%、
N:0.005%以下、
Nb:0.02〜0.5%、
Ti:0.5%以下、
V:0.5%以下、
Cr:0.1〜1.0%
を含有し、
Z=100Si+30Mn+800P
としたとき(ただし、各元素記号はその元素の含有量(質量%)を示す)、Zが150以上であり、
C*=C−(12/93)Nb−(12/48)Ti*−(12/50.9/10)V
X=0.1(Si−0.5)−0.5(P−0.05)−0.75(Mn−2.0)
Ti*=Ti―1.5S−3.4N
としたとき(ただし、各元素記号はその元素の含有量(質量%)を示す)、
0.005≦C*≦0.012+0.04X
Ti*≧0.01
を満たし、残部Feおよび不可避的不純物よりなり、
面積率で50%以上のフェライト相と、面積率で1%以上のマルテンサイト相を含む複合組織を有することを特徴とする、平均r値が1.4以上でかつ圧延方向のr値が1.1以上の深絞り性に優れた高強度鋼板。 - 前記高強度鋼板は、めっきを施しためっき鋼板であることを特徴とする請求項1に記載の深絞り性に優れた高強度鋼板。
- 前記めっきは、溶融亜鉛めっきであることを特徴とする請求項2に記載の深絞り性に優れた高強度鋼板。
- 質量%で、
C:0.01〜0.03%、
Si:0.2〜1.5%、
Mn:1.0〜3.0%、
P:0.005〜0.1%、
S:0.01%以下、
Al:0.005〜0.1%、
N:0.005%以下、
Nb:0.02〜0.5%、
Ti:0.5%以下、
V:0.5%以下、
Cr:0.1〜1.0%
を含有し、
Z=100Si+30Mn+800P
としたとき(ただし、各元素記号はその元素の含有量(質量%)を示す)、Zが150以上であり、
C*=C−(12/93)Nb−(12/48)Ti*−(12/50.9/10)V
X=0.1(Si−0.5)−0.5(P−0.05)−0.75(Mn−2.0)
Ti*=Ti―1.5S−3.4N
としたとき(ただし、各元素記号はその元素の含有量(質量%)を示す)、
0.005≦C*≦0.012+0.04X
Ti*≧0.01
を満たし、残部Feおよび不可避的不純物よりなる成分組成を有する鋼スラブに対し、
仕上圧延出側温度:800℃以上とする仕上圧延を施し、550℃以上720℃以下で巻き取り、コイル冷却して熱延板とする熱間圧延工程と、
得られた熱延板に酸洗および冷延率50%以上85%以下の冷間圧延を施し冷延板とする冷間圧延工程と、
得られた冷延板に、焼鈍温度:800℃以上950℃以下で焼鈍を施し、次いで焼鈍温度から500℃までの温度域の平均冷却速度:5℃/s以上として冷却する冷延板焼鈍工程と
を順次施すことを特徴とする、平均r値が1.4以上でかつ圧延方向のr値が1.1以上の深絞り性に優れた高強度鋼板の製造方法。 - 前記冷延板焼鈍工程の後、めっきを施すめっき工程をさらに有することを特徴とする請求項4に記載の深絞り性に優れた高強度鋼板の製造方法。
- 前記めっき工程は、溶融亜鉛系めっきを施すことを特徴とする請求項5に記載の深絞り性に優れた高強度鋼板の製造方法。
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