JP4380353B2 - 深絞り性と強度−延性バランスに優れた高強度鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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が19000MPa・%以上で深絞り性と強度−延性バランスに優れ、かつフェライト相とマルテンサイト相を含む鋼組織をもつ高強度鋼板を得ることに成功した。
(1)質量%で、
C:0.010〜0.050%、
Si:0.01〜1.0%、
Mn:1.0〜3.0%、
P:0.005〜0.1%、
S:0.01%以下、
Al:0.028〜0.1%、
N:0.0035%以下および
Nb:0.03〜0.3%
を含有し、かつ、Nb含有量とC含有量が、0.2≦(Nb/93)/(C/12)≦0.7(式中のNbおよびCは各々の元素の含有量(質量%))なる関係を満たし、残部はFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有するとともに、面積率で50%以上のフェライト相と、面積率で1%以上のマルテンサイト相を含む鋼組織を有し、平均r値が1.2以上であり、引張強さ(TS)と伸び(El)の積(TS×El)が、19000MPa・%以上であることを特徴とする深絞り性と強度−延性バランスに優れた高強度鋼板。
C:0.010〜0.050%、
Si:0.01〜1.0%、
Mn:1.0〜3.0%、
P:0.005〜0.1%、
S:0.01%以下、
Al:0.028〜0.1%、
N:0.0035%以下および
Nb:0.03〜0.3%
を含有し、かつ、NbとCの含有量(質量%)が、0.2≦(Nb/93)/(C/12)≦0.7(式中のNbおよびCは各々の元素の含有量(質量%))を満たし、残部はFeおよび不可避的不純物からなる成分組成になる鋼スラブを熱間圧延にて仕上圧延出側温度をFT(℃)とし、仕上げ圧延の最終3スタンドの合計圧下率をX(%)とするとき、仕上圧延出側温度FTは、800≦FT≦800+25×X×Nb(式中のNbは鋼中のNb含有量(質量%))とする仕上圧延を施し、該仕上圧延後、0.5秒間以内に25℃/s以上で冷却し、巻取温度:500〜720℃で巻取り熱延板とする熱間圧延工程と、該熱延板に酸洗および冷間圧延を施し冷延板とする冷間圧延工程と、該冷延板に焼純温度:800〜950℃で焼鈍を行い、次いで焼鈍温度から500℃までの温度域の平均冷却速度を5℃/s以上として冷却する冷延板焼純工程とを順次施すことを特徴とする、深絞り性と強度−延性バランスに優れた高強度鋼板の製造方法。
高r値化、すなわち{111}再結晶集合組織を発達させるためには、従来軟鋼板においては、冷間圧延および再結晶前の固溶Cを極力低減することや、熱延板組織を微細化することなどが有効な手段とされてきた。一方、前述のようなDP鋼板では、マルテンサイト相の形成に必要な固溶Cを必要とするため、母相の再結晶集合組織が発達せずr値が低かった。しかしながら、本発明では、{111}再結晶集合組織の発達と、マルテンサイト相の形成の双方を可能にする絶妙の好成分範囲が存在することを新たに見出した。すなわち、従来のDP鋼板(低炭素鋼レベル)よりもC量を低減し、しかしながら極低炭素鋼に比べてC量が多いという、0.010〜0.050質量%のC含有量に加え、このC含有量に合わせて適切なNb添加を行なうことで、{111}再結晶集合組織の発達と、マルテンサイト相の形成の双方を行えることを新たに見出した。
鋼中の元素の含有量は質量%であるが、以下、特に断らない限り、単に%で示す。
まず、本発明の鋼板の成分組成を限定した理由について説明する。
Cは、後述のNbとともに本発明における重要な元素である。Cは高強度化に有効であり、フェライト相を主相とし、マルテンサイト相を含む第2相を有する複合組織の形成を促進するので、本発明では複合組織形成の観点から0.010%以上含有する必要がある。一方、良好なr値を得るためには過剰な添加は好ましいものではないため、C含有量の上限を0.050%とし、より好ましくは0.030%とする。
Siは、フェライト変態を促進させ、未変態オーステナイト中のC含有量を上昇させてフェライト相とマルテンサイト相の複合組織を形成させやすくする他、固溶強化の効果がある。上記効果を得るには、Siは0.01%以上含有することが好ましく、より好ましくは0.05%以上含有する。一方、Siを1.0%を超えて含有すると、熱間圧延時に赤スケールが発生するため、鋼板とした時の表面外観を悪くする。また、溶融亜鉛めっきを施す際にめっきの濡れ性を悪くしてめっきむらの発生を招き、めっき品質が劣化するので、Si含有量の上限は1.0%とし、より好ましくは0.7%とする。
Mnは、高強度化に有効であるとともに、マルテンサイト相が得られる臨界冷却速度を遅くする作用があり、焼鈍後の冷却時にマルテンサイト相の形成を促すため、要求される強度レベルおよび焼鈍後の冷却速度に応じて含有するのが好ましい。また、MnはSによる熱間割れを防止するのに有効な元素でもある。このような観点から、Mnは1.0%含有する必要がある。より好ましくは1.2%以上含有させる。また一方で、3.0%を超える過度のMn添加は、r値および溶接性を劣化させるので、Mn含有量の上限は3.0%を上限とする。
Pは固溶強化の効果を発揮する元素である。しかしながら、P含有量が0.005%未満では、その効果が現れないだけでなく、製鋼工程に於いて脱りんコストの上昇を招く。したがって、P含有量は0.005%以上とし、より好ましくは0.01%以上とする。一方、0.1%を超える過剰なPの添加は、Pが粒界に偏析し、耐二次加工脆性および溶接性を劣化させる。また、溶融亜鉛めっき鋼板とする際には、溶融亜鉛めっき後の合金化処理時に、めっき層と鋼板の界面における鋼板からめっき層へのFeの拡散を抑制し、合金化処理性を劣化させる。そのため、高温での合金化処理が必要となり、得られるめっき層はパウダリング、チッピング等のめっき剥離が生じやすいものとなるため好ましくない。従って、P含有量の上限は0.1%とした。
Sは不純物であり、熱間割れの原因になる他、鋼中で介在物として存在し鋼板の諸特性を劣化させるので、できるだけ低減することが好ましいが、0.01%までのS含有量であれば許容できるため、S含有量の上限を0.01%とする。
Alは、鋼の脱酸元素として有用である他、固溶Nを固定して耐常温時効性を向上させる効果を発揮する元素である。かかる効果を発揮するには、Al含有量は0.005%以上とすることが必要である。一方、0.1%を超えるAlの添加は、合金コストの増加を招き、さらに表面欠陥を誘発するので、Al含有量の上限は0.1%とする。
Nは、多すぎると耐常温時効性を劣化させ、多量のAlやTi添加が必要となるため、できるだけ低減することが好ましいが、0.01%までのN含有量であれば許容できるため、N含有量の上限を0.01%とする。
Nbは、本発明において最も重要な元素であり、熱延板組織の微細化および熱延板中にNbCとしてCを析出固定させる作用を有し、高r値化に寄与する元素である。また圧延時の最終仕上げでの蓄積歪量を向上させる。このような観点から、Nbは0.03%以上含有するのが好ましい。一方で、本発明では、焼鈍後の冷却過程でマルテンサイト相を形成させるための固溶Cを必要とするが、過剰のNb添加はこれを妨げることになるので、Nb含有量の上限を0.3%とする。
本発明では、上記した組成に加えてさらに下記に示すMoおよびTiの1種または2種を添加してもよい。
Moは、Mn同様、マルテンサイト相が得られる臨界冷却速度を遅くする作用をもち、焼鈍後の冷却時にマルテンサイト相の形成を促す元素であり、強度レベル向上に効果がある。また、Moは、Cを析出固定させる作用を有し、高r値化に寄与する元素でもある。Moは鋼中に不可避的不純物として0.02%未満程度の範囲で含有している場合があるが、上記効果を得るためにはMoは0.02%以上含有していることが好ましく、0.05%以上含有することがさらに好ましい。しかしながら、過剰のMoを添加しても、これらの効果が飽和するだけでなく、合金コストの増加を招くだけであることから、Mo含有量の上限は0.5%とすることが好ましい。
Tiは、Alと同等或いはそれよりも固溶Nを析出固定する効果がある元素である。Tiは鋼中に不可避的不純物として0.005%未満の範囲で含有している場合があるが、上記効果を得るには、Ti含有量を0.005%以上とすることが好ましい。しかしながら、0.1%を超える過剰なTiの添加は合金コストの増加を招くばかりか、TiCの形成によりマルテンサイト相の形成に必要な固溶Cを鋼中に残すことを妨げるので、Ti含有量は0.1%以下とする。また、Tiは、鋼中で優先的に結合するSおよびN含有量との関係で(Ti/48)/{(S/32)+(N/14)}≦2を満足する必要がある。(Ti/48)/{(S/32)+(N/14)}が2よりも大きいと、過剰Tiにより2相域焼鈍時の固溶Cが少なくなり、複合組織化が困難になるからである。
本発明の高強度鋼板は、上記鋼組成を満足した上で、面積率で50%以上のフェライト相と、面積率で1%以上のマルテンサイト相を含む鋼組織を有し、平均r値が1.2以上であり、引張強さ(TS)と伸び(El)の積(TS×El)が、19000MPa・%以上であることが必要である。
本発明の高強度鋼板は、面積率で50%以上のフェライト相と、面積率で1%以上のマルテンサイト相を含む、複合組織を有する複合組織鋼板である。ここで、本発明の鋼板は、半分以上の面積率を占めるフェライト相の{111}再結晶集合組織を発達させたものであり、平均r値≧1.2を達成している。良好な深絞り性を有し、引張強さTS≧440MPaの鋼板とするために、面積率で50%以上のフェライト相と、面積率で1%以上のマルテンサイト相を含む鋼組織とする必要がある。フェライト相が少なくなり、面積率で50%未満となると、良好な深絞り性を確保することが困難となり、プレス成形性が低下する傾向がある。より好ましくは、フェライト相は面積率で70%以上とする。なお、複合組織の利点を利用するため、フェライト相は99%以下とするのが好ましい。なお、ここでフェライト相とは、ポリゴナルフェライト相や、オーステナイト相から変態した転位密度の高いベイニチックフェライト相を意味する。
本発明の鋼板は、上記した成分組成および鋼組織を満足するとともに、平均r値≧1.2を満足することが必要である。本発明では、上記成分組成に調整し、フェライト相とマルテンサイト相を含む鋼組織とするもので、初めて平均r値が1.2以上を達成することができた。ここで平均r値とは、JIS Z 2254で求められる平均塑性ひずみ比を意味し、以下で求められる値である。
平均r値=(r0+2r45+r90)/4
ただし、r0、r45およびr90は、試験片を板面の圧延方向に対し、それぞれ、平行、45°方向および90°方向に採取し測定した塑性ひずみ比である。
本発明鋼板は、強度−延性バランスに優れることを特徴としており、TS×Elの値が19000MPa・%以上であることが必要である。この場合のElはJIS5号試験片にてJIS Z 2241の規定に準拠して引張試験し、破断した時の全伸びとする。
本発明の製造方法に用いられるスラブの組成は、上述した鋼板の組成と同様であるので、鋼スラブの限定理由については省略する。
NbCとして析出固定されているC量とは、熱延板を化学分析(抽出分析)して得られる析出Nb量から次式にて算出される値である。
Cfix(%)={12×(NbPre/93)/Ctotal}×100
但し、CfixはNbCとして析出固定されているC量の全C量に占める割合(%)、Ctotalは鋼中の全C量(質量%)、そして、NbPreは析出Nb量(質量%)である。
従来軟鋼板においては、熱延板の結晶粒径を微細化する程、r値を高める効果があることが知られている。本発明においては、特に小傾角粒界も含めて粒径を測定した場合、その平均結晶粒径が8μm以下で高r値化に効果が現れる。結晶粒径の測定方法としては、圧延方向に平行な断面(L断面)について光学顕微鏡を用いてて微視組織を撮像し、JIS G O552に準じた切断法により、公称粒径dnとして求めればよく、この他EBSD(Electron Back-Scatter Diffraction)等の装置を用いて求めてもよい。
表1に示す組成の溶鋼を転炉で溶製し、連続鋳造法でスラブとした。これら鋼スラブを1250℃に加熱し粗圧延してシートバーとし、次いで表2および表3に示す条件の仕上圧延を施す熱間圧延工程により熱延板とした。これらの熱延板を酸洗および圧下率65%の冷間圧延工程により冷延板とした。引き続きこれら冷延板に連続焼鈍ラインにて、表2および表3に示す条件で連続焼鈍を行なった。さらに得られた冷延焼鈍板に伸び率0.5%の調質圧延を施した。なお、No.2の鋼板は、連続溶融亜鉛めっきラインにて冷廷板焼鈍工程を施し、その後引き続きインラインで溶融亜鉛めっき(めっき浴温:480℃)を施して溶融亜鉛めっき鋼板とし、同様に各種特性を評価した。
得られた各冷延焼鈍板あるいはめっき鋼板から試験片を採取し、圧延方向に平行な断面(L断面)について光学顕微鏡或いは走査型電子顕微鏡を用いて微視組織を撮像し、画像解析装置で主相であるフェライト相の面積率と第2相の種類および面積率を求めた。
得られた各冷延焼鈍板あるいはめっき鋼板から圧延方向に対して90°方向(C方向)にJIS5号引張試験片を採取し、JIS Z 2241の規定に準拠してクロスヘッド速度10mm/minで引張試験を行い、降伏応力(YS)、引張強さ(TS)、伸び(El)および引張強さ(TS)と伸び(El)の積(TS×El)を求めた。
得られた各冷延焼鈍板あるいはめっき鋼板から、それぞれ、圧延方向(L方向)、圧延方向に対し45°方向(D方向)および圧延方向に対し90°方向(C方向)にJIS5号引張試験片を採取した。これらの試験片に10%の単軸引張歪を付与した時の各試験片の幅歪と板厚歪を求め、JIS Z 2254の規定に準拠して平均r値(平均塑性歪比)を求め、これをr値とした。
Claims (8)
- 質量%で、
C:0.010〜0.050%、
Si:0.01〜1.0%、
Mn:1.0〜3.0%、
P:0.005〜0.1%、
S:0.01%以下、
Al:0.028〜0.1%、
N:0.0035%以下および
Nb:0.03〜0.3%
を含有し、かつ、Nb含有量とC含有量が、0.2≦(Nb/93)/(C/12)≦0.7(式中のNbおよびCは各々の元素の含有量(質量%))なる関係を満たし、残部はFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有するとともに、面積率で50%以上のフェライト相と、面積率で1%以上のマルテンサイト相を含む鋼組織を有し、平均r値が1.2以上であり、引張強さ(TS)と伸び(El)の積(TS×El)が、19000MPa・%以上であることを特徴とする深絞り性と強度−延性バランスに優れた高強度鋼板。 - 上記組成に加えて、さらに質量%でMo:0.5%以下を含有することを特徴とする請求項1に記載の深絞り性と強度−延性バランスに優れた高強度鋼板。
- 上記組成に加えて、さらに質量%でTi:0.1%以下を含有し、かつ、鋼中のTiとSとNの含有量が、(Ti/48)/{(S/32)+(N/14)}≦2(式中のTi、SおよびNは各々の元素の含有量(質量%))なる関係を満足することを特徴とする請求項1または2に記載の深絞り性と強度−延性バランスに優れた高強度鋼板。
- 表面にめっき層を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の深絞り性と強度−延性バランスに優れた高強度鋼板。
- 質量%で、
C:0.010〜0.050%、
Si:0.01〜1.0%、
Mn:1.0〜3.0%、
P:0.005〜0.1%、
S:0.01%以下、
Al:0.028〜0.1%、
N:0.0035%以下および
Nb:0.03〜0.3%
を含有し、かつ、NbとCの含有量(質量%)が、0.2≦(Nb/93)/(C/12)≦0.7(式中のNbおよびCは各々の元素の含有量(質量%))を満たし、残部はFeおよび不可避的不純物からなる成分組成になる鋼スラブを熱間圧延にて仕上圧延出側温度をFT(℃)とし、仕上げ圧延の最終3スタンドの合計圧下率をX(%)とするとき、仕上圧延出側温度FTは、800≦FT≦800+25×X×Nb(式中のNbは鋼中のNb含有量(質量%))とする仕上圧延を施し、該仕上圧延後、0.5秒間以内に25℃/s以上で冷却し、巻取温度:500〜720℃で巻取り熱延板とする熱間圧延工程と、該熱延板に酸洗および冷間圧延を施し冷延板とする冷間圧延工程と、該冷延板に焼純温度:800〜950℃で焼鈍を行い、次いで焼鈍温度から500℃までの温度域の平均冷却速度を5℃/s以上として冷却する冷延板焼純工程とを順次施すことを特徴とする、深絞り性と強度−延性バランスに優れた高強度鋼板の製造方法。 - 鋼スラブが、上記組成に加えてさらに質量%でMo:0.5%以下を含有することを特徴とする請求項5に記載の深絞り性と強度−延性バランスに優れた高強鋼板の製造方法。
- 鋼スラブが、上記組成に加えてさらに質量%でTi:0.1%以下を含有し、かつ鋼中のTiとSおよびNとの含有量が、(Ti/48)/{(S/32)+(N/14)}≦2(式中のTi、SおよびNは各々の元素の含有量(質量%))なる関係を満足する請求項5または6に記載の深絞り性と強度−延性バランスに優れた高強度鋼板の製造方法。
- 請求項5〜7のいずれか1項に記載の製造方法で、前記冷延板焼鈍工程を施した後にめっき処理を施すことを特徴とする深絞り性と強度−延性バランスに優れた高強度鋼板の製造方法。
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