JP5076480B2 - 強度−延性バランスと深絞り性に優れた高強度鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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特許文献2、3、6:いずれも箱焼鈍が必要であり、生産性が著しく劣るとともに、鋼板の密着、テンパーカラーの発生および炉体インナーカバーの寿命低下など製造上の多くの問題がある。
特許文献2、4:水焼入れ、噴流水冷却など特別な設備が必要でありコスト高になるとともに、鋼板の表面処理性の問題が顕在化する。
特許文献5:VCなどの影響により延性が劣り、十分な強度-延性バランスが確保できない。
特許文献7:製造条件によっては、十分な強度-延性バランスを確保できない場合がある。
(Nb/93)/(C/12)=0.2〜0.7 ・・・(1)
r40={(平均粒径dNbC≧40nmのNbC数)/(組織中に分布する全NbC数)}×100 [%]
・・・(2)
ただし、式(1)では、各元素記号は各元素の含有量(質量%)を表し、
また、式(2)では、2つ以上のNbCが1つに凝集している場合は、1個のNbCとしてNbC数を数えるものとする。
{(Nb/93)+(Ti*/48)+(V/51)}/(C/12)=0.2〜0.7・・・(3)
ここで、Ti*=Ti-1.5S-3.4Nであり、式(3)で、各元素記号は各元素の含有量(質量%)を表す。
Ta=985+70.1Si-55.5Mn+252P・・・(4)
式(4)で、各元素記号は各元素の含有量(質量%)を表す。
ただし、Mo、Cu、Niのうちから選ばれた少なくとも1種の元素を含有させる場合は、Taには、上記の式(4)の代わりに下記の式(5)で定義したものを用いる。
Ta=985+70.1Si-55.5Mn+252P-80Ni-40Cu+28Mo・・・(5)
式(5)で、各元素記号は各元素の含有量(質量%)を表す。
C:0.010〜0.050%
Cは、高強度化に有効であるとともに、後述のNbとともに本発明における重要な元素である。フェライトを主相とし、マルテンサイトを含む第2相を有する複合組織の形成の観点から、C量は0.010%以上にする必要がある。一方、良好なr値を得るためには過剰な添加は好ましくなく、また、2回連続焼鈍による延性の向上効果を考慮して、C量は0.050%以下、好ましくは0.030%以下にする必要がある。
Siは、固溶強化の効果とともに、フェライト変態を促進させ、未変態オーステナイト中のC含有量を上昇させてフェライトとマルテンサイトの複合組織を形成させ易くする効果を有する。上記効果を得るためには、Si量は0.01%以上、好ましくは0.05%以上にする必要がある。一方、その量が1.0%を超えると熱間圧延時に赤スケールが発生し、鋼板の表面外観を悪くし、また、溶融亜鉛めっきを施す場合には、めっきの濡れ性を悪くしてめっきむらの発生を招く。したがって、Si量は1.0%以下、好ましくは0.7%以下にする必要がある。
Mnは、高強度化に有効であるととともに、マルテンサイトが得られる臨界冷却速度を低くする作用があり、焼鈍時の冷却時にマルテンサイトの形成を促す。そのため、要求される強度レベルおよび焼鈍時の冷却速度に応じてその量を調整する必要がある。また、Mnは、Sによる熱間割れを防止するのに有効な元素である。このような観点から、Mn量は1.0%以上、好ましくは1.2%以上にする必要がある。一方、Mn量が3.0%を超えるとr値や溶接性を劣化させるので、Mn量は3.0%以下にする必要がある。
Pは、固溶強化の効果を有する。しかし、P量が0.005%未満ではその効果が現れないだけでなく、製鋼時の脱りんコストの上昇を招く。したがって、P量は0.005%以上、好ましくは0.01%以上にする必要がある。一方、P量が0.1%を超えると、Pが粒界に偏析して耐二次加工脆性および溶接性を劣化させる。また、溶融亜鉛めっき後の合金化処理時に、Pはめっき層と鋼板の界面におけるFeの拡散を抑制して合金化処理性を劣化させるので、高温での合金化処理が必要となり、パウダリングやチッピング等のめっき剥離が生じ易くなる。したがって、P量は0.1%以下にする必要がある。
Sは不純物であり、熱間割れの原因になるほか、鋼中で介在物として存在して鋼板の諸特性を劣化させる。したがって、S量は0.01%以下にする必要があるが、できるだけ低減することが好ましい。
Alは、鋼の脱酸元素として有用であるほか、固溶NをAlNとして析出させ耐常温時効性を向上させる作用があるため、Al量は0.005%以上にする必要がある。一方、Al量が0.1%を超えると合金コスト増や表面欠陥の誘発を招くので、Al量は0.1%以下にする必要がある。
Nが多量に存在すると耐常温時効性を劣化させるため、その分多量のAlやTiの添加が必要となる。したがって、N量は0.01%以下にする必要があるが、できるだけ低減することが好ましい。
Nbは、本発明において最も重要な元素であり、熱延板組織を微細化したり、熱延板中にNbCとして析出して固溶C量を減少させて高r値化に寄与する。また、NbCは、焼鈍板中に微細に存在する場合、良好な延性を確保する上では不利となるが、本願では、所定の条件で2回の連続焼鈍を行うことによりNbCを粗大に凝集せしめ、延性の向上をも達成せしめている。このような観点から、Nb量は0.04%以上にする必要がある。一方、焼鈍時の冷却過程でマルテンサイトを形成させるためには固溶Cを必要とするが、それにはNb量は0.3%以下にする必要がある。
元素記号のNbとCを含有量としたとき、(Nb/93)/(C/12)が0.2未満では、固溶C量が多く、高r値化に有効な{111}再結晶集合組織の形成を阻害し、また、0.7を超えると、マルテンサイトを形成するのに必要なC量を鋼中に存在させることを妨げ、最終的にマルテンサイトを含む第2相を有する複合組織が得られない。したがって、(Nb/93)/(C/12)は0.2〜0.7にする必要がある。
焼鈍板中にNbCを凝集して析出させるためには、析出Nb量を0.030%位以上確保する必要がある。析出Nb量が0.030%未満では、2回目の連続焼鈍後の焼鈍板中に十分なNbCを凝集させることが困難となる。
Ti、VもNbと同様の効果を有し、熱延板組織を微細化させるとともに、熱延板中に炭化物としてCを析出させる作用を有し、高r値化に寄与する。このような観点から、Ti、Vの量はそれぞれ0.005%以上にすることが好ましい。一方、本発明では焼鈍時の冷却過程でマルテンサイトを形成させるための固溶Cを必要とするが、過剰のTi、V量は、これを妨げることになるので、それぞれ0.1%以下にする必要がある。なお、Ti、Vを添加したときは、上記と同様な理由により、各元素記号を含有量としたとき、(Nb/93)/(C/12)の代わりに、{(Nb/93)+(Ti*/48)+(V/51)}/(C/12)を0.2〜0.7にする必要がある。ただし、Ti*=Ti-1.5S-3.4Nである。なお、Tiは固溶S、Nの析出にも効果がある元素であるので、Cとの結合に有効なTi量、すなわち上記Ti*を用いている。
Mo、Cu、Niは、Mn同様、強度レベル向上に効果があるとともに、マルテンサイトが得られる臨界冷却速度を低くする作用を有し、焼鈍時の冷却過程でマルテンサイトの形成を促す元素である。特に、MoはCを析出させる作用を有し高r値化にも寄与する元素でもあり、また、Cu、Niはめっき性への影響が少ない元素でもある。これらの効果を得るためには、Mo、Cu、Ni量はそれぞれ0.05%以上にすることが好ましい。しかしながら、過剰のMo、Cu、Ni添加はこれらの効果を飽和させるだけでなく、合金コスト増を招き、また、Cu、Niの場合は表面性状を悪化させるため、Mo、Cu、Ni量はそれぞれ0.5%以下にする必要がある。
本発明の製造方法では、上記組成を有する鋼スラブ(以下、単にスラブともいう)を、800℃以上の仕上圧延出側温度で熱間圧延し、400〜720℃の巻取温度で巻取り熱延板とし、該熱延板を酸洗後冷間圧延して冷延板とし、該冷延板に対し、800〜950℃の焼鈍温度に加熱し、次いで該焼鈍温度から500℃までの温度域を5℃/s以上の平均冷却速度で冷却する1回目の連続焼鈍を行い、引き続き、上記の式(4)あるいは式(5)で定義したTaを用いて、(Ta-20)〜(Ta+20)℃の焼鈍温度に加熱し、次いで該焼鈍温度から500℃までの温度域を5〜15℃/sの平均冷却速度で冷却する2回目の連続焼鈍を行う。
本発明の高強度鋼板の製造方法により作製された鋼板の組織は、面積率で50%以上のフェライトと、面積率で1%以上のマルテンサイトを含む複合組織である。また、上記の式(2)で定義したr40が15%以上である。
面積率で50%以上のフェライトの存在により、{111}再結晶集合組織が発達し、1.2以上の平均r値が得られ、優れたプレス成形性が得られる。なお、フェライトの面積率は70%以上とすることが好ましく、また、複合組織の利点を生かすには、面積率を99%以下とすることが好ましい。ここで、フェライトとは、ポリゴナルフェライトや、γ相から変態した転位密度の高いベイニチックフェライトを意味する。一方、面積率で1%以上のマルテンサイトの存在により、440MPa以上のTSと良好な強度-延性バランスが得られる。なお、マルテンサイトの面積率は3%以上とすることが好ましい。
本発明者らはNbCの分布が延性に大きく影響すると考え、NbCの分布と延性との関係を詳細に調査した。
平均r値=(r0+2r45+r90)/4
ここで、r0、r45、r90は、それぞれ圧延方向に対し0°、45°、90°方向から採取した試験片で測定した塑性歪比である。
Claims (8)
- 質量%で、C:0.010〜0.050%、Si:0.01〜1.0%、Mn:1.0〜3.0%、P:0.005〜0.1%、S:0.01%以下、Al:0.005〜0.1%、N:0.01%以下、Nb:0.04〜0.3%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、かつNbとCの含有量が下記の式(1)を満たす組成を有するとともに、析出Nb量が0.030%以上であり、面積率で88%以上のフェライトと面積率で3%以上のマルテンサイトを有し、炭化物NbCの分布状態を示す下記の式(2)で定義されるr40が15%以上である鋼組織を有することを特徴とする強度-延性バランスと深絞り性に優れた高強度鋼板;
(Nb/93)/(C/12)=0.2〜0.7 ・・・(1)
r40={(平均粒径dNbC≧40nmのNbC数)/(組織中に分布する全NbC数)}×100 [%]
・・・(2)
ただし、式(1)では、各元素記号は各元素の含有量(質量%)を表し、
また、式(2)では、2つ以上のNbCが1つに凝集している場合は、1個のNbCとしてNbC数を数えるものとする。 - さらに、質量%で、Ti:0.1%以下、V:0.1%以下のうちから選ばれた少なくとも1種の元素を含有し、上記式(1)の代わりに下記の式(3)を満たすことを特徴とする請求項1に記載の強度-延性バランスと深絞り性に優れた高強度鋼板;
{(Nb/93)+(Ti*/48)+(V/51)}/(C/12)=0.2〜0.7・・・(3)
ここで、Ti*=Ti-1.5S-3.4Nであり、式(3)で、各元素記号は各元素の含有量(質量%)を表す。 - さらに、質量%で、Mo:0.5%以下、Cu:0.5%以下、Ni:0.5%以下のうちから選ばれた少なくとも1種の元素を含有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の強度-延性バランスと深絞り性に優れた高強度鋼板。
- 表面にめっき層を有することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の強度-延性バランスと深絞り性に優れた高強度鋼板。
- 請求項1に記載の組成からなる鋼スラブを800℃以上の仕上圧延出側温度で熱間圧延し、400〜720℃の巻取温度で巻取り熱延板とし、該熱延板を酸洗後冷間圧延して冷延板とし、該冷延板に対し、800〜950℃の焼鈍温度に加熱し、次いで該焼鈍温度から500℃までの温度域を5℃/s以上の平均冷却速度で冷却する1回目の連続焼鈍を行い、引き続き、Taを下記の式(4)で定義したとき、(Ta-20)〜(Ta+20)℃の焼鈍温度に加熱し、次いで該焼鈍温度から500℃までの温度域を5〜15℃/sの平均冷却速度で冷却する2回目の連続焼鈍を行うことを特徴とする強度-延性バランスと深絞り性に優れた高強度鋼板の製造方法;
Ta=985+70.1Si-55.5Mn+252P・・・(4)
式(4)で、各元素記号は各元素の含有量(質量%)を表す。 - さらに、質量%で、Ti:0.1%以下、V:0.1%以下のうちから選ばれた少なくとも1種の元素を含有し、上記式(1)の代わりに上記の式(3)を満たす組成の鋼スラブを用いることを特徴とする請求項5に記載の強度-延性バランスと深絞り性に優れた高強度鋼板の製造方法。
- さらに、質量%で、Mo:0.5%以下、Cu:0.5%以下、Ni:0.5%以下のうちから選ばれた少なくとも1種の元素を含有する鋼スラブを用い、Taを上記式(4)の代わりに下記の式(5)で定義することを特徴とする請求項5または請求項6に記載の強度-延性バランスと深絞り性に優れた高強度鋼板の製造方法;
Ta=985+70.1Si-55.5Mn+252P-80Ni-40Cu+28Mo・・・(5)
式(5)で、各元素記号は各元素の含有量(質量%)を表す。 - 2回目の連続焼鈍を行った後に、めっき処理を施すことを特徴とする請求項5から請求項7のいずれか1項に記載の強度-延性バランスと深絞り性に優れた高強度鋼板の製造方法。
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