JP3872595B2 - 面内異方性が小さく成形性に優れた冷延鋼板 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、成型性に優れた冷延鋼板に関するものであり、特に、円筒もしくは円錐形の回転対称な自動車部品等に好適な成形性に優れた冷延鋼板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、自動車用鋼板に要求される材料特性は年々高度になっている。特に、自動車のフェンダーやオイルパン等の部品については、極めて過酷なプレス成形がなされることから、深絞り性および延性についてはより一層の向上が期待されてきた。さらに最近では、CO2排出規制等の地球環境問題、燃費の向上および衝突安全性などの観点から車体の軽量化と高強度化が求められている。このような状況下で、引張強度が340MPa以上でかつ良好な成形性をそなえる高強度冷延鋼板が、自動車の車体を構成する各種部品に広範囲にわたって使用されている。
【0003】
高強度冷延鋼板は、通常、曲げや軽い絞り成形部品として成形されるが、円筒もしくは円錐形の回転対称な部品に深絞りされる場合もある。このような部品に成形する際に問題になるのは、耳と呼ばれる材料の不均一変形で、プレス成形を行った場合r値の異方性が顕著であると、特定方向のr値が低いために耳と呼ばれる材料の流れ込みが良くない方向が現れる。
【0004】
耳の発生する方向は、r値の面内異方性と対応していることが知られている。例えば、r90≧r0>r45のV字分布ならば、圧延方向より0°および90°方向に耳が発生し、r45>r90≧r0の逆V字分布ならば、45°方向に耳が発生する。ただし、ここで、r0、r45およびr90はそれぞれ圧延方向に対して0°方向のランクフォード値、圧延方向に対して45°方向のランクフォード値および圧延方向に対して90°方向のランクフォード値である。また、耳の大きさは、r値の異方性の程度によって決まり、耳の高さが大きいと、成形部品の板厚が圧延方向によって変動し、十分な均一性を持たなったり、材料歩留りが悪いなどの問題点があり、品質および経済性での面で改善が期待されている。
【0005】
成形性の優れた高強度冷延鋼板としては、Mn、P、Si等の固溶強化元素で強化し、Ti、Nb等の炭窒化物形成元素を添加した極低炭素鋼を連続焼鈍装置にて製造する方法がある。例えば、特公昭59―42742号公報等は、Tiを添加した極低炭素高強度冷延鋼板に関する技術である。しかし、これらの技術は、r値の面内異方性が大きい欠点があった。
そこで、このような高強度鋼板のr値の面内異方性の改善の方策として以下の既知技術が開示されている。
【0006】
特公昭62―287018号公報は、Ti、Nbを添加し固溶Cと固溶Nを熱延時に固定し、また熱延はオーステナイト域で再結晶しない温度域で圧延し、直ちに低温で巻取り、冷延、再結晶焼鈍することにより、r値の面内異方性を小さくする技術である。
しかしながら、上記の技術は、極低炭素鋼ベースの成分系における高強度冷延鋼板のr値の面内異方性改善方法を開示したものであり、C、Nなどの進入型固溶元素を低減させるためにRHなどの二次精練を行わなければならず、製鋼コストが高くなるという難点がある。
【0007】
また、特公昭62―161919号公報には、熱間圧延でスラブ加熱温度を低温にし、巻取り温度を高温にすることにより適当なAlNを析出させたr値の面内異方性の小さな熱延鋼板を85〜93%の高冷延率で冷延し、再結晶焼鈍することによってr値の面内異方性を小さくする技術が報告されている。
しかしながら、上記の技術は、r値の面内異方性改善のために85%以上という高い冷延率が必要となり、冷間圧延の負荷が高くなるという問題点がある。
【0008】
特公昭57―3732および特公平8―14003には、低炭素アルミキルド鋼の成分系をベースとしてTiまたはNbを添加してNをTiNで固定して、焼鈍時にAlNの析出を抑制し、TiCの析出物サイズを制御することによってr値の面内異方性を小さくする技術が開示されている。
しかしながら、この技術は、長時間低温焼鈍である箱焼鈍を前提としており、単位時間あたりの生産量が低いという問題点がある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、円筒もしくは円錐形の回転対称な自動車部品等の成形に好適な冷延鋼板に関するもので、r値の面内異方性を改善するために微細な分散粒子のサイズ、分布等を最適化して再結晶焼鈍時のr値の面内異方性を顕著にする方位の核生成、粒成長を抑制してr値の面内異方性を小さくするように集合組織を最適化した冷延鋼板を提供しようとするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の要旨とするところは、
(1)質量%にて、C=0.01〜0.06%、Si=0.005〜0.5%、Mn=0.01〜2.0%、P=0.01〜0.10%、S≦0.02%、Al≦0.004%、Mg=0.0001〜0.01%、
O=0.001〜0.01%、N=0.001〜0.01%、Ti=0.005〜0.1%、
を含み、残部がFe及び不可避的不純物であることを特徴とする面内異方性が小さく成形性に優れた冷延鋼板。
(2)平均粒子径で0.005μm以上0.1μm以下であるMgとTiの酸化物および/または複合酸化物を鋼中に含有することを特徴とする前記(1)に記載の面内異方性が小さく成形性に優れた冷延鋼板。
(3)鋼中に含有するMgとTiの酸化物および/または複合酸化物の面密度が40〜1000個/mm2であることを特徴とする前記(2)に記載の面内異方性が小さく成形性に優れた冷延鋼板。
にある。
【0011】
ここで、MgとTiの酸化物および複合酸化物とはMgOのようなMg単独およびTiO、Ti2O3,TiO2のようなTi単独の酸化物粒子およびその複合酸化物粒子だけでなく、それら以外の酸化物およびTiC、TiN、MnS等の析出物が含まれるような複合粒子のことを指す。
なお、本発明は、溶融亜鉛めっき鋼板にも適用可能である。
【0012】
r値の面内異方性は、集合組織に起因している。例えば、「鉄と鋼」第57年(1971)1134〜1154ページによれば、{110}〈100〉方位が強い場合は、r90≧r0>r45のV字分布の異方性を示し、{100}〈110〉方位が強い場合には、r45>r90≧r0の逆V字分布を示す。
また、耳の大きさとr値の異方性の程度(以下dr=rmax−rmin、ただしrmaxは、r0、r45およびr90の最大値、rminは、r0、r45およびr90の最小値と定義する)には、強い相関がある。
従って、drを小さくするためには、再結晶焼鈍時の{110}〈100〉方位および{100}〈110〉方位の核生成または、粒成長を抑制すればよい。
【0013】
本発明者らは、現在通常に採用されている工業的規模の連続焼鈍設備または連続溶融亜鉛めっき設備による製造を念頭において冷延鋼板のr値の面内異方性を改善すべく鋭意研究を重ねた結果、焼鈍後の結晶粒径が同等であってもMgを添加するとdrが小さくなることを新規に知見した。そして、更に詳細に調査した結果、鋼板中のMgとTiの酸化物および/または複合酸化物の大きさとdrの間に強い相関があることを見出し、MgとTiの酸化物および/または複合酸化物の大きさおよび分布を最適化すれば、強度―延性バランスを損なうことなく、かつ成形後の耳の高さが実用上問題とならないdr≦0.2という鋼板を製造できることを新規に知見した。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の基礎となった実験結果について述べる。
まず、焼鈍後の鋼板の結晶粒径とdrの関係をMgを添加したものと添加しないものについて比較した。0.02%C―0.02%Si―0.2%Mn―0.02%P―0.005%S―0.003%Al―0.05%Tiの成分の鋼をベースとして、純Mg金属(99%以上)を鉄箔で包んで添加したMg含有鋼とMgを添加しないMg無添加鋼を50kgの実験室溶解にてそれぞれ溶製した。得られた鋳塊を1230℃で1時間加熱後、仕上温度(FT)800〜870℃で熱間圧延し、500〜700℃で巻取った。酸洗後、圧延率80%で冷間圧延を施し、焼鈍炉で750〜820℃で1分間の焼鈍の後、冷却速度20℃/Sで冷却し、さらに1%のスキンパス圧延を行った。
【0015】
このようにして得られた鋼板の結晶粒径とdrとの関係を調査した。
ただし、得られた鋼板の平均結晶粒径は、圧延方向と平行な断面で測定し、JIS G 0522記載の切断法にて粒度番号にて整理した。また、r値は、JIS Z 2201記載の5号試験片にて、15%の引張変化の前後における板厚の変化量を板幅の変化量で除した値と定義し、r0(圧延方向でのr値)、r45(圧延方向から45°方向でのr値)、r90(圧延方向から90°(板幅方向)でのr値)のそれぞれを測定し、drを得た。
図1に粒度番号とdrとの関係を示す。このように、Mgを含有させた場合には、含有させない場合と比較して顕著にdrを低くできることが分かった。
【0016】
次に鋼板中のMgとTiの酸化物および/または複合酸化物の大きさとdrの関係を調査した。0.02%C―0.02%Si―0.2%Mn―0.02%P―0.005%S―0.003%Al―0.05%Ti―0.0005%Mgの成分の鋼をベースとし、脱酸剤であるAl、Si、TiおよびMg等の添加順序、添加間隔等を製鋼工程にてさまざまに変化させ得られた鋼片を1230℃で1時間加熱後、仕上温度(FT)840℃で熱間圧延し、600℃で巻取った。酸洗後、圧延率80%で冷間圧延を施し、焼鈍炉で800℃で1分間の焼鈍の後、冷却速度20℃/Sで冷却し、更に1%のスキンパス圧延を行った。
【0017】
このようにして得られた鋼板の機械的性質およびMgとTiの酸化物および/または複合酸化物の粒子サイズとdrとの関係を調査した。
ただし、機械的性質は、JIS Z 2201記載の5号試験片にて、JIS Z 2241記載の引張試験方法で測定した。またdrは、既に述べたものと同一の方法によって求めた。
一方、MgとTiの酸化物および複合酸化物の状態は、供試鋼の表面から1/4厚のところから透過型電子顕微鏡サンプルを採取し、エネルギー分散型X線分光(Energy Dispersive X−ray Spectroscope:EDS)や電子エネルギー損失分光(Electron EnergyLoss Spectroscope:EELS)の組成分析機能を加えた、200kVの加速電圧の電界放射型電子銃(Field Emission Gun:FEG)を搭載した透過型電子顕微鏡によって観察した。観察される粒子の組成は、上記EDSおよびEELSによりMgとTiの酸化物および複合酸化物であることを確認した。また、本願で規定するMgとTiの酸化物および複合酸化物の平均粒子径は、10000〜500000倍の倍率で少なくとも1000μm2以上の面積にわたって観察し、対象となる粒子をそれぞれ測定したもののその一視野での平均の値である。
図2に強度―延性バランス(引張強度×全伸び:TS×El)およびdrとMgとTiの酸化物および複合酸化物の粒子サイズの測定結果を示す。このように、強度―延性バランスとdrがともに優れるMgとTiの酸化物および複合酸化物の粒子サイズは0.005μm以上0.1μm以下と分かった。
【0018】
次に、本発明の化学成分の限定理由について説明する。
C : Cは、0.01%未満であるとdrが大きくなり過ぎるので0.01%以上とする。また、0.06%超含有していると硬度が高くなりすぎ冷間圧延性が悪くなるので、0.01%以上0.06%以下とする。
Si: Siは固溶強化元素であり必要に応じて添加する。ただし、0.005%未満では製鋼段階での製造コストの上昇を招くので0.005%以上とする。一方、Siは、0.5%超添加すると固溶硬化が著しくなり加工用に不適当になるので、0.5%以下とする。さらに好ましくは、溶融亜鉛めっきの密着性を損なわないようにするために、0.1%以下とする。
【0019】
Mn: Mnは、Si同様に固溶強化元素であり必要に応じて添加する。た
だし、0.01%未満では製鋼段階での製造コストの上昇を招くので0.01%
以上とする。一方、2.0%超添加すると延性が低下するため2.0%以下とする。また、Ac3点を低下させる作用があるため再結晶焼鈍の温度を確保するために好ましくは、1.0%以下がよい。
P: Pは、強力な固溶強化元素であるので求められる強度レベルに応じて0.01%以上添加する。ただし0.10%超添加すると溶接性に悪影響を及ぼすので、上限を0.10%とする。
S: Sは不純物であり、多すぎると熱間圧延時の割れを引き起こすばかりでなく、平均ランクフォード値の劣化を起こすので極力低減させるべきであるが、0.02%以下ならば許容できる範囲である。
Al: 通常Alは溶鋼脱酸のために添加されるが本発明においてはMg添加の効果を阻害するため少ないほど好ましい。ただし、0.004%以下ならば、許容できる範囲である。
【0020】
Mg: Mgは、本発明における最も重要な添加元素の一つである。Mgは、酸素と結合して微細な酸化物を形成する。鋼中に微細に分散したMgとTiの酸化物および複合酸化物はピニング効果によって、熱延板段階での結晶粒の粗大化を抑制し、drを低減する。また、再結晶焼鈍時にこれらの粒子は、{110}〈100〉方位および{100}〈110〉方位の核生成または粒成長を抑制する効果がある考えられる。ただし、0.0001%未満ではその効果が不十分である。一方、0.01%超添加すると、r値面内異方性を小さくする効果が飽和してしまうばかりでなく、製鋼技術上非常に難しい。従ってMgの添加量は0.0001%以上0.01%以下とする。
【0021】
O : drを低減する効果のあるMgまたは/およびTiを含む微細な粒子を得るためには、0.001%以上必要である。しかし、0.01%超では、酸化物が粗大化し、その効果が失われるばかりか、成形性に好ましくないC系介在物が増加する。従ってOの含有量は0.001%以上0.01%以下とする。
N : Nは、drを低減する効果のあるMgとTiの酸化物および複合酸化物を含む微細な粒子の形成に関与し、drを低減する効果を促進する。この効果を得るためにNは0.001%以上含有する必要がある。しかし、0.01%超含有してもその効果は飽和するので、Nの含有量は0.001%以上0.01%以下とする。
【0022】
Ti: Tiは、本発明における最も重要な添加元素の一つである。Tiは、drを低減する効果のあるMgとTiの酸化物および複合酸化物を形成し、均一に微細に分散させるのに必要である。また、再結晶焼鈍時にこれらの粒子は、{110}〈100〉方位および{100}〈110〉方位の核生成または粒成長を抑制する効果があると考えられる。ただし、0.005%未満ではその効果が不十分である。一方、0.1%超添加すると、r値面内異方性を小さくする効果が飽和してしまうだけでなく、表面性状や化成処理性が劣化するので、その上限は0.1%以下とする。さらに、Tiは、0.06%超添加すると溶融亜鉛めっきの密着性を悪くし、プレス成形時にパウダリングを起こすので、好ましくは0.06%以下がよい。
なお、本発明において上記以外の成分はFeとなるが、スクラップ等の溶製原料から混入する不可避的不純物の含有は許容される。
【0023】
次に、本発明の鋼板に含まれるMgとTiの酸化物および複合酸化物の存在状態について説明する。
これらの酸化物の直径が、平均粒子径で0.005μm未満であると硬質化してしまい良好な強度―延性バランスが得られない。また、0.1μm超であるとdrの低減にとって好ましくない{110}〈100〉方位および{100}〈110〉方位の再結晶焼鈍時の核生成、粒成長を抑制することが不十分になりdr≦0.2が得られない。従って、良好な強度―延性バランスおよびdr≦0.2の両方を満足させるためには、MgとTiの酸化物および複合酸化物の平均粒子径を0.005μm以上0.1μm以下とする。
【0024】
また、MgとTiの酸化物および複合酸化物の面密度は、40個/mm2未満では、これら粒子の数が少く、drの低減にとって好ましくない{110}〈100〉方位および{100}〈110〉方位の再結晶焼鈍時の核生成、粒成長を抑制することが不十分になりdr≦0.2が得られない。従って、MgとTiの酸化物および複合酸化物の面密度は、40個/mm2以上とする。
一方、MgとTiの酸化物および複合酸化物の面密度は、1000個/mm2
超では、r値の面内異方性にとって好ましくない{110}〈100〉方位お
よび{100}〈110〉方位の再結晶焼鈍時の核生成、粒成長を抑制する効果が飽和するだけでなく、伸びを劣化させる。従って、MgとTiの酸化物およ
び複合酸化物の面密度は、1000個/mm2以下とする。
【0025】
【実施例】
以下に、実施例により本発明をさらに説明する。
表1に示す化学成分を有するA〜Mの鋼を、転炉にて溶製して、連続鋳造後、加熱温度1230℃で再加熱し、800℃〜900℃の仕上げ圧延温度で6.0mmに圧延した後、500〜700℃で温度でそれぞれ巻取った。酸洗後0.8mmまで冷間圧延を施し(圧延率86.7%)、連続焼鈍ライン(最高加熱温度760〜780℃、スキンパス圧延率0.8%)を通板した。ただし、鋼Bについては、再結晶焼鈍処理後に350℃×180秒の過時効処理を施した。また、鋼Hについては、冷延後、溶融亜鉛めっきライン(最高加熱温度770〜780℃、溶融亜鉛めっき460℃、合金化処理520℃×20秒、スキンパス圧延率0.8%)を通板した。なお、表1の化学組成についての表示は質量%である。
【0026】
このようにして得られた鋼板の機械的性質およびMgとTiの酸化物および/または複合酸化物の粒子サイズと平均ランクフォード値(rm)およびdrとの関係を調査した。ただし、得られた鋼板の機械的性質は、JIS Z 2201記載の5号試験片にて、JIS Z 2241記載の引張試験方法で測定した。r値は、JIS Z 2201記載の5号試験片にて、15%における板厚の変化量を板幅の変化量で除した値と定義し、r0(圧延方向でのr値)、r45(圧延方向から45°方向でのr値)、r90(圧延方向から90°(板幅方向)でのr値)のそれぞれを測定し、rmとdrを得た。
【0027】
一方、MgとTiの酸化物および複合酸化物の状態は、供試鋼の1/4厚のところから透過型電子顕微鏡サンプルを採取し、エネルギー分散型X線分光(Energy Dispersive X−ray Spectroscope:EDS)や電子エネルギー損失分光(Electron Energy Loss Spectroscope:EELS)の組成分析機能を加えた、200kVの加速電圧の電界放射型電子銃(Field Emission Gun:FEG)を搭載した透過型電子顕微鏡によって観察した。観察される粒子の組成は、上記EDSおよびEELSによりMgとTiの酸化物および複合酸化物であることを確認した。また、それらの粒子径は、10000〜500000倍の倍率で少なくとも1000μm2以上の面積にわたって観察し、対象となる粒子をそれぞれ測定したもののその一視野での平均の値である。一方、それら対象となるサイズの粒子の面密度(1mm2あたりの個数)も同時に測定した。
【0028】
【表1】
【0029】
【表2】
【0030】
本発明に沿うものは、鋼B、C、D、F、G、H、Lの7鋼である。上記以外の鋼は、以下の理由によって面内異方性が小さく成形性に優れた冷延鋼板が得られていない。鋼Aは、Oの含有量が本発明の範囲より多いので、MgとTiの酸化物および複合酸化物の粒子径が大きい、従ってdrが本発明の範囲外である。鋼Eは、Alの含有量が本発明の範囲外であるのでMgとTiの酸化物および複合酸化物の面密度が低い、従ってdrが本発明の範囲外である。鋼Iは、Mgが添加されていないため、酸化物粒子の径が大きい、従ってdrが本発明の範囲外である。鋼Kは、Tiが添加されていないため、酸化物粒子の面密度が低い、従ってdrが本発明の範囲外である。鋼Jは、Cの含有量が本発明の範囲より少ないので、drが本発明の範囲外である。鋼Mは、Oの含有量が本発明の範囲より少ないので、MgとTiの酸化物および複合酸化物の粒子の面密度が低い、従ってdrが本発明の範囲外である。
【0031】
【発明の効果】
本発明は、上述したようにr値の面内異方性が小さく成形性に優れた冷延鋼板を与えるもので、これらの冷延鋼板を用いることで、円筒もしくは円錐形の回転対称な自動車部品等の成形性に大幅な改善が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の基礎になる実験において圧延方向と平行な断面における焼鈍後の再結晶粒の粒度番号Nと面内異方性の程度drの関係を示す図である。
【図2】 本発明の範囲をMgとTiの酸化物および複合酸化物の平均粒子径dと面内異方性の程度drおよび強度―延性バランスの関係を示す図である。
Claims (3)
- 質量%にて
C =0.01〜0.06%、
Si=0.005〜0.5%、
Mn=0.01〜2.0%、
P =0.01〜0.10%、
S ≦0.02%、
Al≦0.004%、
Mg=0.0001〜0.01%、
O =0.001〜0.01%、
N =0.001〜0.01%、
Ti=0.005〜0.1%、
を含み、残部がFe及び不可避的不純物であることを特徴とする面内異方性が小さく成形性に優れた冷延鋼板。 - 平均粒子径で0.005μm以上0.1μm以下であるMgとTiの酸化物および/または複合酸化物を鋼中に含有することを特徴とする請求項1に記載の面内異方性が小さく成形性に優れた冷延鋼板。
- 鋼中に含有するMgとTiの酸化物および/または複合酸化物の面密度が40〜1000個/mm2であることを特徴とする請求項2に記載の面内異方性が小さく成形性に優れた冷延鋼板。
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