JP4858004B2 - 延性と深絞り性に優れた高強度鋼板およびその製造方法 - Google Patents

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Description

この発明は、自動車用鋼板などに有用な、引張強度TSが440MPa以上と高強度で、平均r値(ランクフォード値)が1.2以上と深絞り性に優れ、かつ延性に優れ、すなわち引張強度TSと全伸びElの積TS×Elで表される強度-延性バランスとTSと一様伸びU-Elの積TS×U-Elで表される強度-一様伸びバランスに優れた高強度鋼板およびその製造方法に関する。
近年、地球環境保全の観点から、CO2の排出量を規制するため、自動車の燃費改善が要求されている。加えて、衝突時に乗員の安全を確保するため、自動車車体の衝突特性を中心とした安全性向上も要求されている。このため、自動車車体の軽量化および強化が積極的に進められている。
自動車車体の軽量化と強化を同時に満たすには、剛性が問題にならない範囲で部品素材を高強度化し、その板厚を薄くすることが効果的であると言われており、最近では高強度鋼板が自動車部品に積極的に使用されている。特に、軽量化効果は、使用する鋼板が高強度であるほど大きくなるため、自動車業界では、例えば、内・外板パネル用材料としてTSが440MPa以上の鋼板が使用される動向にある。
一方、鋼板を素材とする自動車部品の多くはプレス成形によって製造されるため、自動車用鋼板には優れたプレス成形性が必要とされる。一般に、高強度鋼板は、通常の軟鋼板に比べて成形性、特に深絞り性や延性に大きく劣っているため、自動車車体の軽量化を進める上で、TSが440MPa以上、好ましくは500MPa以上、さらに好ましくは590MPa以上、深絞り性の指標である平均r値が1.2以上、TS×Elが20000MPa・%以上の高強度鋼板が要求されている。さらに、張り出し性が重視される部品では、TS×U-Elが10000MPa・%以上であることが望まれている。
こうした高r値を有しながら高強度化する手段としては、極低炭素鋼にTiやNbを添加して固溶炭素や固溶窒素を固着したIF(Interstitial Free)鋼をベースとして、これにSi、Mn、Pなどの固溶強化元素を添加する手法がある。例えば、特許文献1には、C:0.002〜0.015%、Si:1.2%以下、Mn:0.04〜0.8%、P:0.03〜0.10%を含有し、NbをC×3〜(C×8+0.020)%(ここで、Cは元素Cの含有量を表す)となるように添加し、TSが340〜460MPa、平均r値が1.7以上、Elが36%以上で、しかも非時効性である成形性に優れた高張力冷延鋼板が開示されている。しかし、このような極低炭素鋼を素材としてTSが440MPa以上の鋼板を安定して製造することは難しく、また、TSが500MPa以上の鋼板を製造しようとすると、合金元素添加量が多くなり、表面外観の悪化、めっき性の劣化、2次加工脆性の顕在化などの問題が生じる。さらに、多量に固溶強化元素を添加するとr値が劣化するので、高強度化を図るほどr値が低下してしまう。
鋼板を高強度化するには、前述のような固溶強化による方法以外に、組織強化による方法もある。例えば、軟質なフェライト相と硬質のマルテンサイト相からなる複合組織としたDP(Dual-Phase)鋼板がある。DP鋼板は、一般的に延性は概ね良好であり優れたTS×Elを有し、また降伏比が低い、すなわち引張強度の割に降伏応力が低くプレス成形時の形状凍結性に優れるという特徴があるが、r値が低く深絞り性に劣る。これは、結晶方位的にr値に寄与しないマルテンサイト相が存在したり、マルテンサイト相形成に必須である固溶Cが高r値化に有効な{111}再結晶集合組織の形成を阻害するためと言われている。
DP鋼板のr値を改善する技術として、特許文献2には、C:0.05〜0.15%、Si:1.50%以下、Mn:0.30〜1.50%、P:0.030%以下、S:0.030%以下、sol.Al:0.020〜0.070%、N:0.0020〜0.0080%、残りFeおよび不可避的不純物からなる鋼をAr3変態点以上の仕上圧延出側温度、600℃以下の巻取温度で熱間圧延し、40%以上の圧下率で冷間圧延した後、バッチ焼鈍(箱焼鈍)を行い、その後、複合組織とするため連続焼鈍炉で700〜800℃に加熱し、水焼入れ後、200〜500℃で焼戻しを行う深絞り性に優れた高強度冷延鋼板の製造法が開示されている。
特許文献3には、C:0.20%以下、Si:1.0%以下、Mn:0.8〜2.5%、Sol.Al:0.01〜0.20%、N:0.0015〜0.0150%、P:0.10%以下、残部が実質的にFeからなる鋼を熱間圧延し、冷間圧延した後、650〜800℃の温度範囲で箱焼鈍を行い、その後、連続焼鈍炉で600〜850℃に加熱し、10〜100℃/sの冷却速度で冷却する深絞り性ならびに形状性に優れた高張力冷延鋼板の製造方法が開示されている。この方法では、箱焼鈍の均熱時にフェライト(α)相からオーステナイト(γ)相にMnを濃化させ、このMn濃化相をその後の連続焼鈍の均熱時に優先的にγ相とし、冷却時に複合組織が形成される。
特許文献4には、C:0.003〜0.03%、Si:0.2〜1%、Mn:0.3〜1.5%、Al:0.01〜0.07%、Ti:0.02〜0.2%を含有し、原子濃度比(有効Ti)/(C+N)(ここで、Ti、C、Nは各元素の含有量を表す)を0.4〜0.8にコントロールした鋼を熱間圧延し、冷間圧延した後、連続焼鈍によりAc1変態点以上900℃以下の温度範囲に加熱後、30℃/s以上の平均冷却速度で急冷して深絞り性および形状性ともに優れた複合組織型高張力冷延鋼板の製造方法が開示されている。実際、質量%で、0.012%C-0.32%Si-0.53%Mn-0.03%P-0.051%Tiの組成の鋼を冷間圧延後α-γ2相域である870℃に加熱後、噴流水中で、すなわち100℃/sの平均冷却速度で冷却することにより、平均r値が1.6、TSが492MPa、Elが36%の複合組織型高張力冷延鋼板が得られている。
特許文献5には、C:0.01〜0.080%、Si:2.0%以下、Mn:3.0%以下、P:0.10%以下、S:0.02%以下、Al:0.005〜0.20%、N:0.02%以下およびV:0.01〜0.5%を含有し、かつVとCが0.5×C/12≦V/51≦3×C/12(ここで、V、Cは各元素の含有量を表す)の関係を満たし、残部が実質的にFeおよび不可避的不純物からなる深絞り性に優れた複合組織型高張力冷延鋼板が開示されている。この鋼板では、再結晶焼鈍前に鋼中のCをV系炭化物として析出させて固溶Cを極力低減させて高r値化を図り、引き続き、連続焼鈍によりα-γ2相域に加熱することによりV系炭化物を溶解させてγ相中にCを濃化させ、その後の冷却過程でマルテンサイト相が形成される。
特許文献6には、C:0.03〜0.25%、Si:0.001〜3.0%、Mn:0.01〜3.0%、P:0.001〜0.06%、S:0.05%以下、Al:0.005〜0.3%、N:0.001〜0.030%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、平均r値が1.3以上で、組織中に、ベイナイト相、マルテンサイト相、オーステナイト相のうちの少なくとも1種を3〜100%含有する深絞り性に優れた高強度鋼板が開示されている。この鋼板は、高r値を図るために4〜200℃/hの加熱速度による焼鈍、すなわち箱焼鈍され、その後、ベイナイト相、マルテンサイト相、オーステナイト相などを形成するために短時間の熱処理が施されて製造される。
特許文献7には、C:0.010〜0.050%、Si:1%以下、Mn:1.0〜3.0%、P:0.005〜0.1%、S:0.01%以下、Al:0.005〜0.5%、N:0.01%以下、Nb:0.01〜0.3%を含有し、かつNbとCの含有量が(Nb/93)/(C/12)=0.2〜0.7(ここで、Nb、Cは各元素の含有量を表す)なる関係を満たし、残部が実質的にFeおよび不可避的不純物からなる組成を有し、面積率で50%以上のフェライト相と、面積率で1%以上のマルテンサイト相を含む複合組織を有し、平均r値が1.2以上である深絞り性に優れた高強度鋼板が開示されている。この鋼板は、上記組成のスラブを800℃以上の仕上圧延出側温度で熱間圧延し、420〜720℃の巻取温度で巻取り、冷間圧延後、800〜950℃の焼鈍温度で焼鈍し、焼鈍温度から500℃までの温度域を5℃/s以上の平均冷却速度で冷却して製造される。
特開昭56-139654号公報 特公昭55-10650号公報 特開昭55-100934号公報 特公平1-35900号公報 特開2002-226941号公報 特開2003-64444号公報 特開2005-120467号公報
しかしながら、こうした従来技術には以下のような問題がある。
特許文献2、3、6:いずれも箱焼鈍が必要であり、生産性が著しく劣るとともに、鋼板の密着、テンパーカラーの発生および炉体インナーカバーの寿命低下など製造上の多くの問題がある。
特許文献2、4:水焼入れ、噴流水冷却など特別な設備が必要でありコスト高になるとともに、鋼板の表面処理性の問題が顕在化する。
特許文献5:VCなどの影響により延性が劣り、優れたTS×ElやTS×U-Elが確保できない。
特許文献7:製造条件によっては、優れたTS×ElやTS×U-Elを確保できない場合がある。
本発明は、生産性の低い箱焼鈍や特別な設備を必要とすることなく、440MPa以上のTS、1.2以上の平均r値、20000MPa・%以上のTS×El、10000MPa・%以上のTS×U-Elが安定して得られる高強度鋼板およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記のような課題を解決すべく鋭意検討を進めたところ、C量を0.020〜0.050%とし、このC量に応じてNb量を規制するとともに、フェライト相からなるマトリックス中に、マルテンサイト相を含む第2相を適当な面積率で均一に分散させることが効果的であることを見出した。
本発明は、このような知見に基づきなされたもので、質量%で、C:0.020〜0.050%、Si:1.0%以下、Mn:1.0〜2.5%、P:0.005〜0.1%、S:0.01%以下、Al:0.005〜0.5%、N:0.01%以下、Nb:0.010〜0.3%を含有し、かつNbとCの含有量が下記の式(1)を満たし、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有し、かつフェライト相からなるマトリックス中に、組織全体に対する面積率で1%以上のマルテンサイト相を含む第2相が面積率で15%以下含まれ、かつ下記で定義されるNmaxが5以上である組織を有するとともに平均r値が1.2以上であることを特徴とする延性と深絞り性に優れた高強度鋼板を提供する。
(Nb/93)/(C/12)=0.2〜0.7 ・・・(1)
式(1)で各元素記号は各元素の含有量(質量%)を表し、
Nmaxは、鋼板板厚断面の走査電子顕微鏡による観察像を画像処理して求めた第2相の重心の分布図を用い、任意の重心を中心にフェライト平均粒径を半径とした円を描き、円の中心とした重心以外の円内に含まれる重心の数を求める操作を、上記観察像において認められる全ての重心に対して行ったとき、最も高頻度で現れる重心の数である。
また、上記組成に加えて、さらに、質量%で、Cr:0.5%以下を含有させることもできる。
本発明の高強度鋼板は、質量%で、C:0.020〜0.050%、Si:1.0%以下、Mn:1.0〜2.5%、P:0.005〜0.1%、S:0.01%以下、Al:0.005〜0.5%、N:0.01%以下、Nb:0.010〜0.3%を含有し、かつNbとCの含有量が上記の式(1)を満たし、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成の鋼スラブを、800℃以上の仕上圧延出側温度で熱間圧延し、400〜720℃の巻取温度で巻取り熱延鋼板とし、次いで40%以上の圧下率で冷間圧延して冷延鋼板とし、前記冷延鋼板を800〜950℃の焼鈍温度に加熱し、次いで前記焼鈍温度から580℃までの温度域を5〜30℃/sの平均冷却速度で冷却し、480〜580℃の過時効温度で30〜600sの時間保持後、少なくとも100℃までを5℃/s以上の平均冷却速度で冷却する方法により製造できる。
本発明の方法では、上記組成に加えて、さらに、質量%で、Cr:0.5%以下を含有させることもできる。
本発明により、生産性の低い箱焼鈍や特別な設備を必要とすることなく、TS≧440MPaと高強度で、かつ1.2以上の平均r値と深絞り性に優れ、20000MPa・%以上のTS×El、10000MPa・%以上のTS×U-Elと延性にも優れた高強度鋼板を安定して製造できるようになった。本発明の高強度鋼板を自動車部品に適用することにより、これまでプレス成形が困難であった部品も高強度化が可能となり、自動車車体の衝突安全性や軽量化を十分に図れる。また、本発明の高強度鋼板は、自動車部品に限らず家電部品やパイプ素材としても適用可能である。
以下に、本発明の詳細を説明する。なお、以下の「%」は、特に断らない限り「質量%」を表す。
1)成分
C:0.020〜0.050%
Cは、高強度化に有効であるとともに、後述のNbとともに本発明における重要な元素である。440MPa以上のTSと高いElやU-Elを得るためは、後述するように、フェライト相のマトリックス中にマルテンサイト相を含む第2相を均一に分散させる必要がある。マルテンサイト相を形成させて高強度化するにはC量を0.020%以上にする必要がある。特に、590MPa以上のTSを得るためには、C量を0.025%以上にすることが望ましい。一方、過剰な添加は焼鈍時の{111}再結晶集合組織の発達を妨げ、1.2以上の平均r値が得られなくなるため、C量の上限は0.050%とする。
Si:1.0%以下
Siは、固溶強化の効果のほか、α変態を促進させ、未変態γ相中のC含有量を上昇させてフェライト相とマルテンサイト相を含む第2相との複合組織を形成させやすくする効果を有する。上記効果を得るためには、Si量は0.01%以上にすることが好ましく、0.05%以上にすることがより好ましい。一方、Si量が1.0%を超えると熱間圧延時に赤スケールと呼ばれる表面欠陥が発生し、鋼板の表面外観を悪くし、また、溶融亜鉛めっきを施す場合には、めっきの濡れ性を悪くしてめっきむらの発生を招く。したがって、Si量は1.0%以下、好ましくは0.7%以下とする。
Mn:1.0〜2.5%
Mnは、高強度化に有効であるととともに、マルテンサイト相を含む第2相が得られる臨界冷却速度を低くする作用があり、焼鈍の冷却時に第2相の形成を促す。そのため、要求される強度レベルおよび焼鈍の冷却速度に応じてその量を調整することが好ましい。また、Mnは、Sによる熱間割れを防止するのに有効な元素である。このような観点から、Mn量は1.0%以上、好ましくは1.2%以上にする必要がある。一方、Mn量が2.5%を超えるとr値や溶接性を劣化させるので、Mn量の上限は2.5%とする。
P:0.005〜0.1%
Pは、固溶強化の効果を有する。しかし、P量が0.005%未満では、その効果が現れないだけでなく、製鋼時の脱りんコストの上昇を招く。したがって、P量は0.005%以上、好ましくは0.01%以上とする。一方、P量が0.1%を超えると、Pが粒界に偏析して耐2次加工脆性および溶接性を劣化させる。また、溶融亜鉛めっき後の合金化処理時に、Pはめっき層と鋼板の界面におけるFeの拡散を抑制して合金化処理性を劣化させるので、高温での合金化処理が必要となり、パウダリングやチッピングなどのめっき剥離が生じやすくなる。したがって、P量の上限は0.1%とする。
S: 0.01%以下
Sは、熱間割れの原因になるほか、鋼中で介在物として存在して鋼板の諸特性を劣化させる。したがって、S量は0.01%以下にする必要があるが、できるだけ低減することが好ましい。
Al:0.005〜0.5%
Alは、鋼の固溶強化元素や脱酸元素として有用であるほか、固溶NをAlNとして析出させ耐常温時効性を向上させる作用がある。また、Alは、フェライト生成元素としてα-γ2相域の温度調整にも有用である。そのため、Al量は0.005%以上にする必要がある。一方、Al量が0.5%を超えると合金コスト増や表面欠陥の誘発を招くので、Al量の上限は0.5%以下、好ましくは0.1%以下とする。
N:0.01%以下
Nが多量に存在すると耐常温時効性を劣化させるため、その分多量のAlやTiの添加が必要となる。したがって、N量の上限は0.01%にする必要があるが、できるだけ低減することが好ましい。
Nb:0.010〜0.3%
Nbは、本発明において最も重要な元素であり、熱延鋼板の組織を微細化したり、熱延鋼板中にNbCとして析出して固溶C量を減少させて高r値化に寄与する。このような観点から、Nb量は0.010%以上にする必要がある。一方、焼鈍の冷却過程でマルテンサイト相を含む第2相を形成させるためには固溶Cが必要とされるが、それにはNb量を0.3%以下にする必要がある。
(Nb/93)/(C/12):0.2〜0.7(ただし、NbとCは各元素の含有量を表す。)
上記のようにC量とNb量を制御した上で、NbとCの原子濃度比を表す(Nb/93)/(C/12)を次のように制御する必要がある。(Nb/93)/(C/12)が0.2未満では、熱延鋼板の組織の微細化の効果が少なく、また、固溶C量が多くなり高r値化に有利な再結晶集合組織の形成を阻害する。一方、(Nb/93)/(C/12)が0.7を超えると、マルテンサイト相を含む第2相を形成するのに必要なC量を鋼中に存在させることを妨げ、最終的にマルテンサイト相を含む第2相が形成されない。したがって、高r値化と高延性を両立させるには、(Nb/93)/(C/12)は0.2〜0.7、好ましくは0.2〜0.5にする必要がある。
残部は、Feおよび不可避的不純物である。ここで、不可避的不純物としては、0.01%以下のSb、0.1%以下のSn、0.01%以下のZn、0.1%以下のCo、0.05%以下のMoなどが挙げられる。特に、Moはマルテンサイト相を含む第2相の分散状態を不均一にし、優れた一様伸びが得られなくなるので、不純物としてのMo量は0.05%以下に制限する必要がある。
本発明の目的を達成するには上記の成分で十分であるが、以下の理由により、さらにTi:0.1%以下やCr:0.5%以下を含有させることができる。
Ti:0.1%以下
Tiは、Alと同等あるいはAl以上にNとの親和力が大きく、固溶Nを析出させる効果がある。この効果を得るには、Ti量は0.005%以上とすることが好ましい。しかしながら,0.1%を超えるとコストの上昇を招くばかりか、TiCの形成によりマルテンサイト相を含む第2相の形成に必要な固溶C量を減少させる。したがって、Ti量は0.1%以下とする。また、Tiは鋼中でSおよびNと優先的に結合し、次いでCと結合する。鋼中での介在物の形成等によるTiの歩留まり低下を考慮すると、(Ti/48)/{(S/32)+(N/14)}が2.0を超えるTi添加量では、S、Nを固定するというTi添加の効果は飽和し、かえってTiCの形成を促進して鋼中に固溶Cを残すことを妨げるという弊害が大きくなる。したがって、Ti含有量は鋼中で優先的に結合するSおよびNの含有量との関係で、(Ti/48)/{(S/32)+(N/14)}≦2.0を満足することが好ましい。なお、ここで該関係式中のTi、S、Nは各々の元素の含有量(質量%)である。
Cr:0.5%以下
Crは、Mnと同様、高強度化に有効であるととともに、マルテンサイト相を含む第2相が得られる臨界冷却速度を低くする作用を有し、焼鈍の冷却時に第2相の形成を促す。この効果を得るためには、Cr量を0.05%以上にすることが好ましい。一方、Cr量が0.5%を超えると、r値の低下を招くため、Cr量は0.5%以下とする。
なお、さらに、B、Ca、REMなどを通常の鋼の組成範囲内であれば含有できる。例えば、鋼の焼入性を向上させるBを0.003%以下の範囲で、また硫化物系介在物の形態制御に効果的なCaやREMのうち少なくとも1種の元素を0.01%以下の範囲で含有できる。
2)組織
2-1)組織全体に対する面積率で1%以上のマルテンサイト相を含む第2相の面積率:15%以下
440MPa以上のTS、良好なTS×El、TS×U-Elと深絞り性を有する高強度鋼板を得るためには、フェライト相からなるマトリックス中に、組織全体に対する面積率で1%以上のマルテンサイト相を含む第2相が面積率で15%以下含まれる組織にする必要がある。なお、ここで、組織全体とは、フェライト相からなるマトリックスと第2相とを合わせた鋼板組織全体を意味する。本発明ではマトリックス(組織の主体)を{111}再結晶集合組織が発達したフェライト相とすることで1.2以上の平均r値が得られる。ここで、フェライト相とは、ポリゴナルフェライト相や、γ相から変態した転位密度の高いベイニチックフェライト相を意味する。
440MPa以上のTSを確実に得るには、マルテンサイト相の面積率を組織全体に対する面積率で1%以上にする必要があり、3%以上とすることがより好ましい。マルテンサイト相を含む第2相は、上記したように、{111}再結晶集合組織が発達したフェライト相をマトリックスとすることによって平均r値を1.2以上とするため、組織全体に対する面積率で15%以下とする必要がある。第2相の面積率が15%超え、すなわちフェライト相の面積率が85%未満では、1.2以上の平均r値を確保することが困難である。なお、第2相の組織は、上記したマルテンサイト相以外は特に規定する必要はなく、ベイナイト相やセメンタイト相等を含んだ組織としてもよい。ここで、フェライト相と上記した第2相の面積率や後述するフェライト平均粒径は、圧延方向に平行な板厚断面についてSEMにより組織観察し、画像解析ソフト(Media Cybernetics 社 “Image-ProPLUSVer.4.0.0.11)を用いて求めた。
2-2)第2相の分散性:Nmax≧5
20000MPa・%以上のTS×El、10000MPa・%以上のTS×U-Elを安定して得るには、上述した組織の規定に加え、さらに上記のように定義したNmaxを5以上とする必要がある。
Nmaxは、具体的には次のように測定される。まず、図1の(a)に示すような圧延方向に平行な板厚断面のSEMによる観察像を、画像処理により(b)に示すようなフェライト相と(c)に示すような第2相に分離し、上記の画像解析ソフトを用いて第2相のまわりでの1次モーメントが0となる重心座標を求め、(d)に示すような第2相の重心の分布図を求める。図1では、後述する実施例の鋼板No.1、2と16の例が示されているが、鋼板によって第2相の重心の分布が大きく異なっていることがわかる。次に、図1の(d)に示す第2相の重心の分布図から任意の重心を選び、図2に示すように、その重心を中心に図1の(b)を用いて求めたフェライト平均粒径Dを半径とした円を描き、円の中心とした重心以外の円内に含まれる重心の数(図2の場合は6)を求める。このとき、観察像の縁に存在する第2相に関しては、周期的境界条件を仮定し、次のようにして重心の数を求める。すなわち、円の中心となる重心が縁に存在する場合、測定を行っている観察像を囲むように同一視野を並べ、フェライト平均粒径Dの円に含まれる重心の数を求める。なお、フェライト平均粒径Dの円上に存在する重心は、重心の数としては数えない。この操作を他の重心を円の中心として繰り返し、最も高頻度で現れる重心の数をNmaxとする。図3に、鋼板No.1、No.2とNo.16における重心の数と頻度(全測定数に対する各重心の数の現れる測定数の割合)の関係を示すが、鋼板No.1およびNo.2ではNmaxが5以上、鋼板No.16ではNmaxが4となる。後述する表3に示すように、鋼板No.1、No.2では優れたTS×ElとTS×U-Elが得られた。発明者らはこのような検討を、種々の鋼板について行い、Nmaxを5以上とすることにより優れたTS×ElとTS×U-Elが得られることを見出したのである。
Nmaxを5以上とすると、優れたTS×ElとTS×U-Elが得られる理由は次のように考えられる。すなわち、フェライト平均粒径Dを半径とする円内にはフェライト粒が完全に1個含まれる。粒界三重点が最適な第2相の存在位置であると仮定すると、Nmaxが5以上のとき第2相は三重点に均等に配置され、第2相はフェライト相のマトリックス中に均一に分散されるのでU-Elが向上し、優れたTS×ElとTS×U-Elが得られる。
本発明の高強度鋼板は、上記成分、鋼ミクロ組織を満足するとともに、平均r値が1.2以上となる。このような平均r値を有する本願発明の鋼板は、集合組織を鋼板1/4板厚位置におけるX線回折により求め、板面に平行な(222)面、(200)面、(110)面および(310)面のX線回析積分強度比P(222)、P(200)、P(110)、P(310)が、P(222)/{P(200)+P(110)+P(310)}≧1.5を満足することが好ましく、より好ましくはP(222)/{P(200)+P(110)+P(310)}≧2.0である。
従来より、{111}面が板面に平行な集合組織をもつ場合はr値が高いが、{110}面や{100}面が板面に平行な集合組織ではr値が低いことが知られている。ここで、詳細はまだ明らかではないが、{310}面は強度が低いながらも{100}、{110}面同様、r値を低下させる集合組織であり、本願発明の鋼板では、これを低減していることも高r値化に寄与していることを知見している。なお、本願発明の鋼板では、Nbを添加しているため熱間圧延時の未再結晶γ域での圧下率が高いことや、微細なNbCの析出、およびNbCとして析出固定されないCの存在などが、{310}面強度の低減に寄与していると考えられる。
なお、{111}集合組織とは、鋼板面垂直方向に結晶の<111>方向が向いていることを言う。Braggの反射条件から、体心立方構造であるα-Feの場合、{111}面の回折としては、(111)面では起こらず、(222)面で起こるため、X線回析積分強度比としては(222)面の値(P(222))を用いた。よって、(222)面の強度が高いことは、{111}集合組織が発達していることに対応する。{100}面に対しても同様の理由から、(200)面の値(P(200))を用いた。ここで、X線回折積分強度比とは、無方向性標準試料(不規則試料)のX線回折積分強度を基準としたときの相対的な強度である。X線回折は、角度分散型、エネルギー分散型のいずれでもよく、X線源は特性X線でも白色X線でもよい。測定面は、α-Feの主要回折面である(110)から(420)までの7面から10面を測定することが望ましい。
3)製造方法
本発明の製造方法では、まず、上記組成を有する鋼スラブ(以下、単にスラブという)を、800℃以上の仕上圧延出側温度FTで熱間圧延し、400〜720℃の巻取温度CTで巻取り熱延鋼板とする。
このとき、使用するスラブは、成分のマクロ偏析を防止すべく連続鋳造法で製造されることが望ましいが、造塊法で製造されてもよい。連続鋳造法では、薄スラブ鋳造法でもよい。また、スラブを熱間圧延するには、スラブを一旦室温まで冷却、その後再加熱して圧延する従来法に加え、連続鋳造後直ちに熱間圧延する方法、あるいは室温まで冷却せず温片のままで加熱炉に装入し圧延する方法などの省エネルギープロセスも問題なく適用できる。
スラブ加熱温度は、析出物を粗大化させることにより{111}再結晶集合組織を発達させて深絞り性を改善するため、低い方が望ましい。しかし、加熱温度が1000℃未満では圧延荷重が増大し、熱間圧延時におけるトラブル発生の危険性が増大するので、スラブ加熱温度は1000℃以上にすることが好ましい。なお、酸化重量の増加に伴うスケールロスの増大を防止するために、スラブ加熱温度は1300℃以下とすることが好適である。スラブには、粗圧延および仕上圧延を行う熱間圧延が施される。
ここで、スラブは、粗圧延によりシートバーとされる。粗圧延の条件は、特に規定されず、常法に従って行えばよい。また、スラブの加熱温度を低くした場合は、圧延時のトラブルを防止するといった観点から、シートバーヒーターを活用してシートバーを加熱することが好ましい。
シートバーは、仕上圧延により熱延板とされる。このとき、冷間圧延、再結晶焼鈍後に優れた深絞り性が得られるように微細な熱延鋼板の組織とするために、FTは800℃以上にする必要がある。FTが800℃未満では熱延鋼板の組織が加工組織を有し、冷間圧延、焼鈍後に{111}再結晶集合組織が発達せず高r値が得難いだけでなく、熱間圧延時の圧延負荷も高くなる。一方、FTが980℃を越えると熱延鋼板の組織が粗大化し、冷間圧延、焼鈍後の{111}再結晶集合組織の形成および発達を妨げ高r値が得られない場合があるので、FTは980℃以下にすることが好ましい。
また、熱間圧延時の圧延荷重を低減したり、鋼板の形状や特性の均一化を図るために、仕上圧延の一部または全部のパス間で潤滑圧延を行うこともできる。潤滑圧延時の摩擦係数は0.10〜0.25の範囲にすることが好ましい。さらに、熱間圧延の操業安定性の観点から、シートバー同士を接合して連続的に仕上圧延する連続圧延プロセスを適用することが好ましい。
熱間圧延後の熱延鋼板は巻取られるが、熱延鋼板の組織の微細化およびNbCの析出のためにCTは400〜720℃、好ましくは550〜680℃にする必要がある。CTが720℃を超えると、熱延鋼板の結晶粒が粗大化し、強度低下やr値の低下を招く。また、CTが400℃未満では、NbCの析出が起こり難く、深絞り性を確保することが困難になる。
次に、熱延鋼板は、冷間圧延により冷延鋼板とされる。なお、熱延鋼板は、冷間圧延前にスケール除去のため酸洗を行うことが好ましい。酸洗は通常の条件にて行えばよい。冷間圧延の圧下率は、40%未満では{111}再結晶集合組織が発達せず、優れた深絞り性を得ることが困難となるので、40%以上、好ましくは50%以上にする必要がある。一方、本発明では90%までの範囲では圧下率を高くするほどr値が上昇するが、圧下率が90%を越えるとその効果が飽和するばかりでなく、圧延時のロールへの負荷も高まるため、圧下率の上限は90%とすることが好ましい。
冷延鋼板は、800〜950℃の焼鈍温度に加熱し、次いで焼鈍温度から580℃までの温度域を5〜30℃/sの平均冷却速度で冷却し、480〜580℃の過時効温度で30〜600sの時間保持後、少なくとも100℃まで5℃/s以上の平均冷却速度で冷却する焼鈍が施される。この焼鈍は、冷却条件や過時効処理条件を確保するために、連続焼鈍ラインあるいは連続溶融亜鉛めっきラインで行う連続焼鈍とすることが好ましい。
焼鈍では、再結晶を行わせるためと第2相形成のためにα-γ2相域となる800℃以上の焼鈍温度に加熱する必要がある。一方、焼鈍温度は、950℃を超えると再結晶粒が著しく粗大化し、特性が著しく劣化するため、950℃以下にする必要がある。加熱時の昇温速度は、限定する必要はないが、例えば300〜700℃までの平均昇温速度は、1℃/s未満であると再結晶前に回復により歪みエネルギーが解放されることで再結晶の駆動力を減少させてしまう傾向にあるので、1℃/s以上とすることが好ましい。なお、300〜700℃までの平均昇温速度の上限は、現状の設備では、50℃/s程度である。また、700℃から焼鈍温度までは、再結晶集合組織形成の観点から、平均昇温速度0.1℃/s以上で加熱することが好ましい。一方、700℃から焼鈍均熱温度までを20℃/s以上の平均昇温速度で加熱すると、未再結晶部からの変態あるいは未再結晶のまま変態が進みやすくなり、集合組織形成の点で不利になりやすいため、20℃/s以下の平均昇温速度で加熱することが好ましい。
加熱後の冷延鋼板は、冷却中にα相とγ相に分離し、γ相中にCを濃化させるという観点から、これに大きく影響する焼鈍温度から580℃までの温度域を5〜30℃/sの平均冷却速度で冷却される必要がある。平均冷却速度が5℃/s未満だと第2相が形成され難く、フェライト単相組織となり、440MPa以上のTSが得られない。一方、平均冷却速度が30℃/sを超えると、フェライト変態で得られる組織が転位密度の高い低温変態組織となり、延性が低下する。
引き続き、480〜580℃の過時効温度で30〜600sの時間保持の過時効処理を行う必要がある。図4に過時効温度と引張特性値の関係を示すが、480〜580℃の過時効温度でNmaxが5以上となり、高El、高U-Elが得られ、TS×Elが20000MPa・%以上、TS×U-Elが10000MPa・%以上になる。過時効温度が480℃未満では、Nmaxが5未満となり、良好なTS×El、TS×U-Elとすることができない。一方、過時効温度が580℃以上では、γ相が不安定であり、十分な第2相を得ることができず、Nmaxが小さくなり、良好なTS×El、TS×U-Elとすることができない。また、過時効処理の保持時間が30s未満ではγ相が不安定であり、十分な第2相が得られず、600sを超えると過剰なセメンタイトが生成するため、保持時間は30〜600sにする必要がある。
過時効処理後の冷延鋼板は、過剰なセメンタイト相の生成を抑制するため、5℃/s以上の平均冷却速度で100℃以下まで、すなわち少なくとも100℃までは平均冷却速度を5℃/s以上として冷却される。
なお、加熱後の冷却や過時効処理後の冷却は、ロール冷却、ガスジェット冷却、水焼入冷却などで行える。
焼鈍後の冷延鋼板には、電気めっき処理、あるいは溶融めっき処理などによりめっき層を形成してもよい。また、上記焼鈍を連続焼鈍ラインで行い、一旦室温まで冷却した後に溶融亜鉛めっきラインにて溶融亜鉛めっきを施し、あるいはさらに合金化処理を行ってもよい。ここで、めっき層は純亜鉛および亜鉛系合金めっきに限らず、AlやAl系合金めっきなど、従来より鋼板表面に施されている各種めっき層とすることも勿論可能である。
このようにして製造された冷延鋼板あるいはめっき鋼板には、形状矯正、表面粗度調整の目的で調質圧延またはレベラー加工を施してもよい。調質圧延あるいはレベラー加工の伸び率は合計で0.2〜15%の範囲内であることが好ましい。これは、0.2%未満では、形状矯正や表面粗度調整の目的が達成できないおそれがあり、15%を超えると顕著な延性低下をもたらすためである。なお、調質圧延とレベラー加工では加工形式が相違するが、その効果は両者で大きな差がないことを確認している。また、調質圧延、レベラー加工はめっき処理後でも有効である。
表1に示す組成の鋼A〜Qを転炉で溶製し、連続鋳造法でスラブとした。これらスラブを1250℃に加熱後、粗圧延してシートバーとし、次いで表2、3に示す熱延条件で熱延鋼板とした。これらの熱延鋼板を酸洗後圧下率70%で冷間圧延して冷延鋼板(板厚:1.2mm)とし、引き続き、連続焼鈍ラインにて表2、3に示す焼鈍条件で焼鈍を行い、伸び率0.5%の調質圧延を施して鋼板No.1〜50の試料を作製した。なお、焼鈍加熱時、300〜700℃の平均昇温速度を14〜16℃/s、700℃から焼鈍温度までの平均昇温速度を3〜4℃/sとした。そして、得られた試料について、組織、引張特性、r値、集合組織の調査を以下の方法で行った。
組織:圧延方向に平行な板厚断面について光学顕微鏡あるいは走査型電子顕微鏡を用いて観察し、上記の画像解析ソフトを用いフェライト相の面積率、マルテンサイト相および第2相の面積率、フェライト平均粒径およびNmaxを求めた。
引張特性:試料から圧延方向に対して90°方向にJIS5号引張試験片を採取し、JIS Z 2241の規定に準拠してクロスヘッド速度10mm/minで引張試験を行い、YS、TS、El、TS×El、U-El、TS×U-Elを求めた。
r値:試料から圧延方向、圧延方向に対し45°方向、圧延方向に対し90°方向からJIS5号引張試験片を採取し、10%の単軸引張歪を付与した時の各試験片の幅歪と板厚歪を測定し、JIS S 2254の規定に準拠して平均のr値(平均塑性歪比)を次の式から算出し、深絞り性を評価した。
平均r値=(r0+2r45+r90)/4
ここで、r0、r45、r90は、それぞれ圧延方向に対し0°、45°、90°方向から採取した試験片で測定した塑性歪比である。
集合組織:試料の1/4板厚位置にて、エネルギー分散型X線回折を行った。測定面はα-Feの主要回折面である(110)面、(200)面、(211)面、(220)面、(310)面、(222)面、(321)面、(400)面、(411)面、(420)面の計10面について測定し、無方向性標準試料との相対強度比で各面のX線回折積分強度比を求め、求めた(222)面、(200)面、(110)面および(310)面のX線回折積分強度比P(222)、P(200)、P(110)およびP(310)を求め、下記式からTAを算出した。
TA=P(222)/{P(200)+P(110)+P(310)}
なお、TAが大きいほどr値に有利な集合組織が発達しているといえる。
結果を表4、5、6に示す。本発明例では、いずれもNmaxが5以上であり、440MPa以上のTS、1.2以上の平均r値、20000MPa・%以上のTS×El、10000MPa・%以上のTS×U-Elが得られていることがわかる。
Figure 0004858004
Figure 0004858004
Figure 0004858004
Figure 0004858004
Figure 0004858004
Figure 0004858004
板厚断面のSEM像(a)、フェライト相(b)、第2相(c)、第2相の重心の分布(d)の一例を示す図である。 第2相の重心の数を求める方法を示す図である。 第2相の重心の数とその頻度の関係の一例を示す図である。 過時効処理温度と引張特性値との関係を示す図である。

Claims (4)

  1. 質量%で、C:0.020〜0.050%、Si:1.0%以下、Mn:1.0〜2.5%、P:0.005〜0.1%、S:0.01%以下、Al:0.005〜0.5%、N:0.01%以下、Nb:0.010〜0.3%を含有し、かつNbとCの含有量が下記の式(1)を満たし、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有し、かつフェライト相からなるマトリックス中に、組織全体に対する面積率で1%以上のマルテンサイト相を含む第2相が面積率で15%以下含まれ、かつ下記で定義されるNmaxが5以上である組織を有するとともに平均r値が1.2以上であることを特徴とする延性と深絞り性に優れた高強度鋼板;
    (Nb/93)/(C/12)=0.2〜0.7 ・・・(1)
    式(1)で各元素記号は各元素の含有量(質量%)を表し、
    Nmaxは、鋼板板厚断面の走査電子顕微鏡による観察像を画像処理して求めた第2相の重心の分布図を用い、任意の重心を中心にフェライト平均粒径を半径とした円を描き、円の中心とした重心以外の円内に含まれる重心の数を求める操作を、上記観察像において認められる全ての重心に対して行ったとき、最も高頻度で現れる重心の数である。
  2. 上記組成に加えて、さらに、質量%で、Cr:0.5%以下を含有することを特徴とする請求項1に記載の延性と深絞り性に優れた高強度鋼板。
  3. 質量%で、C:0.020〜0.050%、Si:1.0%以下、Mn:1.0〜2.5%、P:0.005〜0.1%、S:0.01%以下、Al:0.005〜0.5%、N:0.01%以下、Nb:0.010〜0.3%を含有し、かつNbとCの含有量が下記の式(1)を満たし、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成の鋼スラブを、800℃以上の仕上圧延出側温度で熱間圧延し、400〜720℃の巻取温度で巻取り熱延鋼板とし、次いで40%以上の圧下率で冷間圧延して冷延鋼板とし、前記冷延鋼板を800〜950℃の焼鈍温度に加熱し、次いで前記焼鈍温度から580℃までの温度域を5〜30℃/sの平均冷却速度で冷却し、480〜580℃の過時効温度で30〜600sの時間保持後、少なくとも100℃までを5℃/s以上の平均冷却速度で冷却することを特徴とする延性と深絞り性に優れた高強度鋼板の製造方法;
    (Nb/93)/(C/12)=0.2〜0.7 ・・・(1)
    式(1)で各元素記号は各元素の含有量(質量%)を表す。
  4. 鋼スラブが、さらに、質量%で、Cr:0.5%以下を含有することを特徴とする請求項3に記載の延性と深絞り性に優れた高強度鋼板の製造方法。
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