JP5655475B2 - 深絞り性に優れた高強度冷延鋼板およびその製造方法 - Google Patents

深絞り性に優れた高強度冷延鋼板およびその製造方法 Download PDF

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本発明は、自動車用鋼板等に好適な、引張強さ(TS):440MPa以上の高強度と、かつ、平均r値:1.2以上の高r値を有し、優れた深絞り性を兼ね備えた高強度冷延鋼板およびその製造方法に関する。
昨今、地球環境保全の観点からCO2排出量を削減すべく、自動車車体の軽量化を図り、自動車の燃費を改善することが要求されている。また、衝突時における乗員の安全を確保すべく、自動車車体を強化し、自動車車体の衝突特性を中心とした安全性を向上することも要求されている。このように、自動車車体の軽量化と安全性向上とを同時に満たすためには、自動車の部品素材を高強度化し、剛性が問題とならない範囲で板厚を減ずることにより軽量化を図ることが効果的である。そのため、今日では高強度鋼板が自動車部品に積極的に使用されている。また、上記の軽量化効果は、使用する鋼板が高強度であるほど大きくなるため、自動車業界では、例えば、内板および外板用のパネル用素材として、引張強さ(TS)が440MPa以上の鋼板を使用する傾向にある。
一方、鋼板を素材とする自動車部品の多くは、プレス加工によって成形されるため、自動車用鋼板には優れたプレス成形性を有することが要求される。しかしながら、高強度鋼板のプレス成形性、特に深絞り性は、通常の軟鋼板よりもはるかに劣る。そのため、高強度鋼板を用いて自動車の軽量化を図るうえでは、引張強さ:440MPa以上、より好ましくは500MPa以上、さらに好ましくは590MPa以上で、且つ良好な深絞り性を兼備した鋼板、具体的には深絞り性の評価指標であるランクフォード値(以下「r値」という)で平均r値:1.2以上、より好ましくは平均r値:1.3以上という高r値を有する高強度鋼板の開発が必須となる。
高r値を確保しつつ鋼板の高強度化を図る技術としては、極低炭素鋼をベースとしたIF鋼(Interstitial atom free)に固溶強化元素を添加することにより、高r値と強度の両立を図る技術が知られている。例えば特許文献1には、鋼中の固溶C、固溶Nを固着する十分な量のNb、Alを添加した極低炭素鋼に、固溶強化元素としてSi、Mn、Pを添加した、引張強さ:35〜45kg/mm2級(340〜440MPa)の非時効性で成形性に優れた高張力冷延鋼板が提案されている。
しかしながら、上記の如き極低炭素鋼をベースとしてSi、Mn、P等の固溶強化元素を添加する技術で、引張強さ:440MPa以上、さらには500MPa以上、590MPa以上の高強度鋼板を製造しようとする場合、合金元素の添加量を多くすることが必要となる。しかし、合金元素の添加量を多くすることには様々な問題が伴う。例えば、Si添加量が多くなると、連続焼鈍中にSiが鋼板表面に濃化し、濃化したSiが雰囲気中に存在する微量の水蒸気と反応することにより、鋼板表面にSi系酸化物が形成される。そのため、通常、鋼板塗装の前処理として化成処理が施されるが、上記Si系酸化物は化成処理性を著しく劣化させ、鋼板の塗装密着性を著しく低下させる。また、P添加量が多くなると、Pが粒界に偏析して耐二次加工脆性が劣化する。また、Mn添加量が多くなるにつれて、r値は低下する。
ここで、鋼板の高強度化を図る技術としては、上記した固溶強化を利用した技術のほかに、組織強化を利用した技術がある。例えば、軟質なフェライト相と硬質なマルテンサイト相からなる複合組織鋼板は、一般的に延性が良好であり、優れた強度−延性バランスを有するうえ、低降伏比であるという特性を具えている。上記複合組織鋼板は、優れたプレス成形性を有するが、しかし、r値が低く、深絞り性に劣るという問題がある。なお、上記複合組織鋼板のr値が低くなるのは、マルテンサイト形成に必須である固溶Cが、r値を高めるうえで有効な {111} 再結晶集合組織の形成を阻害するためと推測されている。
上記のような複合組織鋼板のr値を改善する技術として、例えば特許文献2には、C:0.05〜0.15%、Si:1.50%以下、Mn:0.30〜1.50%、P:0.030%以下、S:0.030%以下、sol.Al:0.020〜0.070%、N:0.0020〜0.0080%を含む組成の鋼素材に所定条件の熱間圧延、圧下率:40%以上の冷間圧延を順次施し得られた冷延鋼板に、再結晶温度〜AC3変態点の焼鈍温度で箱焼鈍を施しAlNを析出させることにより(111)集積度を高め、次いで調質圧延後さらに700〜800℃に加熱し、焼入れし、さらに200〜500℃で焼戻しを施すことにより所望の複合組織を有する鋼板を得る技術が提案されている。
また、特許文献3には、C:0.20%以下、Si:1.0%以下、Mn:0.8〜2.5%、sol.Al:0.01〜0.20%、N:0.0015〜0.0150%、P:0.10%以下を含有する鋼を、熱間圧延および冷間圧延後、650〜800℃の温度域に加熱し冷却する箱焼鈍を施し、r値に好ましい再結晶集合組織を形成するとともに、箱焼鈍時に存在するオーステナイト相へC、Mn原子を偏析させ、次いで連続焼鈍炉にて加熱冷却し、フェライト−マルテンサイト複合組織を有する鋼板とする技術が提案されている。
さらに、特許文献4には、C:0.03〜0.25%、Si:0.001〜3.0%、Mn:0.01〜3.0%、P:0.001〜0.06%、S:0.05%以下、N:0.001〜0.030%、Al:0.005〜0.3%を含む鋼素材に所定条件の熱間圧延、圧下率:30%以上95%未満の冷間圧延を順次施し得られた冷延鋼板に、4〜200℃/hの平均加熱速度で600〜800℃の最高到達温度まで加熱する焼鈍を施し、AlとNのクラスターや析出物を形成させて所望の集合組織とし、冷却後、続いてAc1変態点以上のフェライト−オーステナイト2相域に加熱し、さらに冷却することにより、組織中にベイナイト、マルテンサイト、オーステナイトのうち1種または2種以上を合計で3〜100%含有した組織を有する鋼板とする技術が提案されている。
しかしながら、特許文献2〜4に提案された技術では、AlとNのクラスターや析出物の形成により集合組織を発達させてr値を高める焼鈍工程と、所望の組織を形成するための熱処理工程とを必要とする。しかも、焼鈍工程では箱焼鈍を基本とし、その保持時間を1時間以上という長時間保持することを要する。すなわち、特許文献2〜4で提案された技術では、焼鈍工程の処理時間が長いうえ、工程数が多く、生産性が劣り、製造コストの観点から経済性に劣る。また、長時間焼鈍に伴い、鋼板間の密着が多発する、テンパーカラーが発生する、焼鈍炉の炉体インナーカバーの寿命が低下する等、製造工程上、多くの問題がある。
複合組織鋼板のr値を改善する他の技術として、例えば特許文献5には、C:0.003〜0.03%、Si:0.2〜1%、Mn:0.3〜1.5%、Al:0.01〜0.07%、Ti:0.02〜0.2%、を含み、(有効Ti) / (C+N) の原子濃度比:0.4〜0.8を満足する鋼素材に、熱間圧延および冷間圧延を順次施したのち、Ac1変態点以上900℃以下の温度範囲に加熱し、30℃/s以上の平均冷却速度で冷却する連続焼鈍を施すことにより、フェライト中に所定量の第二相(マルテンサイト及び/又はベイナイト)が分散した複合組織を有する高強度冷延鋼板を製造する技術が開示されている。また、特許文献5に記載された技術では、例えば、質量%で、0.012%C-0.32%Si-0.53%Mn-0.03%P-0.03%Al-0.051%Tiの組成を有する鋼素材を熱間・冷間圧延後、フェライト−オーステナイト2相域で連続焼鈍(870℃×2min)を施し、続いて100℃/sの平均冷却速度で急冷することにより、r値:1.61、引張強さ:482MPaの複合組織鋼板が得られるとしている。
しかしながら、特許文献5に記載された技術では、100℃/sの冷却速度を確保するために強力な冷却能力を具備した水焼入れ設備が必要となり、設備コストが嵩むという問題がある。また、水焼入れを施した鋼板は、板形状や表面処理性に劣るという問題もある。さらに、特許文献5に記載された技術で得られる鋼板の引張強さは500MPaに到達しておらず、上記技術では、引張強さ:500MPa以上、590MPa以上という、高強度化には対応することが困難である。
また、特許文献6には、C:0.01〜0.08%、Si:2.0%以下、Mn:3.0%以下、Al:0.005〜0.20%、N:0.02%以下を含み、V:0.01〜0.5%をCとの特定関係を満足するように含有する組成の鋼素材に、熱間圧延および冷間圧延を施し、続いてAC1〜AC3変態点の温度域で連続焼鈍(再結晶焼鈍)し、主相であるフェライト相と面積率1%以上のマルテンサイト相を含む組織を有する、深絞り性に優れた複合組織型高張力冷延鋼板を製造する技術が提案されている。この技術では、C含有量との関係でV含有量の適正化を図り、再結晶焼鈍工程前に鋼中のCをV系炭化物として析出させ、固溶Cを極力低減させることにより高r値化を図り、続く再結晶焼鈍工程でフェライト−オーステナイト2相域に加熱し、V系炭化物を溶解させてオーステナイト中にCを濃化させ、その後の冷却工程でマルテンサイトを形成することにより高強度化を図っている。
しかしながら、特許文献6に記載された技術では、フェライト−オーステナイト2相域でV系炭化物を溶解させる際に、溶解速度のバラツキが生じるという問題がある。そのため、再結晶焼鈍工程において、焼鈍温度や焼鈍時間に対する高精度の管理が必要となり、実機製造するうえでは品質安定性の面で問題を残していた。
特許文献7には、C:0.010〜0.050%、Si:1.0%以下、Mn:1.0〜3.0%、P:0.005〜0.1%、S:0.01%以下、Al:0.005〜0.5%、N:0.01%以下、Nb:0.01〜0.3%を、(Nb/93)/(C/12):0.2〜0.7を満足するように含む鋼素材に、所定条件の熱間圧延を施して熱延板とし、該熱延板に冷間圧延を施し冷延板とし、該冷延板に、焼鈍温度:800〜950℃(フェライト−オーステナイト2相域)に加熱したのち、焼鈍温度〜500℃での平均冷却速度:5℃/s以上で冷却する冷延板焼鈍を施す、高強度鋼板の製造方法が提案されている。特許文献7に記載された技術によれば、面積率50%以上のフェライト相と面積率1%以上のマルテンサイト相を含む組織を有し、平均r値が1.2以上である高強度鋼板が製造できるとしている。
この技術では、Nb含有により熱延板の組織を微細化するとともに、C含有量とNb含有量を(Nb/93)/(C/12):0.2〜0.7 となるように制御することにより、熱間圧延時に鋼中のCの一部をNbCとして析出させ焼鈍前の固溶Cを低減し、続く焼鈍工程において粒界からの{111}再結晶粒の発生を促進して高r値化を図っている。また、NbCとして固定されなかったCの存在により、焼鈍時の冷却工程においてマルテンサイトを形成可能とし、高強度化を図っている。
特開昭56−139654号公報 特公昭55−10650号公報 特開昭55−100934号公報 特開2003−64444号公報 特公平1−35900号公報 特開2002−226941号公報 特開2005−120467号公報
しかしながら、Nbを積極的に利用する特許文献7に記載の技術では、次に挙げるような種々の問題が見られる。まず、Nbは非常に高価であるため、コスト面で不利である。また、Nbはオーステナイトの再結晶を著しく遅延させるため、熱間圧延時の負荷が高くなるという問題がある。さらに、熱延板中に析出したNbCは、冷間圧延時の変形抵抗を高めるため、特許文献7の実施例に開示されているような高圧下率(65%)で冷間圧延を施す場合、ロールへの負荷が大きくなり、トラブル発生の危険性が高まるとともに、生産性の低下、製造可能な鋼板幅の制約等、鋼板製品を工業的に大量生産するうえでは問題を残していた。
このように、深絞り性に優れる軟鋼板を高強度化するにあたり、固溶強化により高強度化する技術では、添加する合金元素量の増加が必須となるためコスト面で不利となるとともに、化成処理性が劣化する等、得られる鋼板の表面品質や、r値の向上そのものにも問題を残していた。他方、組織強化を利用する場合において、上記した技術では、長時間の焼鈍工程を必要とすることや、所望の組織を形成すべく焼鈍工程後に別途熱処理工程を設ける2回焼鈍法とすること、高速冷却設備を必要とすること等、製造工程上いくつかの問題が見られた。また、VCやNbCの析出を利用した技術では、比較的良好な特性を有する鋼板が得られるものの、実機における製造においては、品質安定性やコスト面、さらには安定した生産性等について改善の余地があった。
本発明は、上記した従来技術が抱える問題を有利に解決し、自動車用鋼板等に好適な、引張強さ(TS):440MPa以上、好ましくは500MPa以上、より好ましくは590MPa以上の高強度を有し、かつ、平均r値が1.2以上という高r値を示す、高強度と優れた深絞り性を兼ね備えた高強度冷延鋼板およびその製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決すべく、本発明者らは、鋼板の高強度化と深絞り性、さらには鋼板を工業的に大量生産するうえでの生産性に及ぼす各種要因について鋭意検討した。その結果、質量%で、C:0.010〜0.06%、N:0.01%以下、Nb:0.01〜0.1%、Ti:0.015〜0.15%、或いは更にTa:0.005〜0.1%の範囲で含み、かつ、NbをCとの関係で(Nb/93)/(C/12):0.2未満に限定するとともに、NbおよびTi、或いは更にTaで固定されないC(固溶C)量を所定範囲に調整した組成とすることにより、鋼板組織を面積率で70%以上のフェライト相と面積率で3%以上のマルテンサイト相とを含む組織とすることができ、平均r値が1.2以上で、引張強さ:440MPa以上を有する深絞り性に優れた高強度冷延鋼板を製造可能であるという知見を得た。
本発明は上記の知見に基づき完成されたものであり、その要旨は次のとおりである。
(1)質量%で、
C :0.010%以上0.06%以下、 Si:0.5%超1.5%以下、
Mn:1.0%以上3.0%以下、 P :0.005%以上0.1%以下、
S :0.01%以下、 sol.Al:0.005%以上0.5%以下、
N :0.01%以下、 Nb:0.01%以上0.1%以下、
Ti:0.015%以上0.15%以下
を含み、かつ、C、Nb、TiおよびNを下記(1)式および(2)式を満足するように含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成と、面積率で70%以上のフェライト相と、面積率で3%以上のマルテンサイト相とを含む組織とを有し、平均r値が1.2以上であることを特徴とする深絞り性に優れた高強度冷延鋼板。

(Nb/93) / (C/12) < 0.2 ・・・ (1)
0.005 ≦ C≦ 0.030 ・・・ (2)
ここで、C= C−(12/93)Nb−(12/48){Ti−(48/14)N}
なお、Ti−(48/14)N≦0の場合には、Ti−(48/14)N=0とする。
(C、Nb、Ti、N:各元素の含有量(質量%))
(2)(1)において、前記C、Nb、TiおよびNを前記(2)式に代えて下記(3)を満足するように含有することを特徴とする深絞り性に優れた高強度冷延鋼板。

0.005 ≦ C≦ 0.025 ・・・ (3)
ここで、C= C−(12/93)Nb−(12/48){Ti−(48/14)N}
なお、Ti−(48/14)N≦0の場合には、Ti−(48/14)N=0とする。
(C、Nb、Ti、N:各元素の含有量(質量%))
(3)(1)または(2)のいずれかにおいて、前記組成に加えてさらに、質量%でCu:0.3%以下、Ni:0.3%以下の1種または2種を含有することを特徴とする深絞り性に優れた高強度冷延鋼板。
)(1)ないし()のいずれかにおいて、前記組成に加えてさらに、質量%でSn:0.2%以下、Sb:0.2%以下の1種または2種を含有することを特徴とする深絞り性に優れた高強度冷延鋼板。
)(1)ないし()のいずれかにおいて、前記組成に加えてさらに、質量%でTa:0.005%以上0.1%以下を含み、かつ、前記(2)式または(3)式に代えてC、Nb、Ta、TiおよびNを下記(4)式を満足するように含有することを特徴とする深絞り性に優れた高強度冷延鋼板。

0.005 ≦ C≦ 0.030 ・・・ (4)
ここで、C= C−(12/93)Nb−(12/181)Ta−(12/48){Ti−(48/14)N}
なお、Ti−(48/14)N≦0の場合には、Ti−(48/14)N=0とする。
(C、Nb、Ta、Ti、N:各元素の含有量(質量%))
)()において、前記C、Nb、Ta、TiおよびNを前記(4)式に代えて下記(5)式を満足するように含有することを特徴とする深絞り性に優れた高強度冷延鋼板。

0.005 ≦ C≦ 0.025 ・・・ (5)
ここで、C= C−(12/93)Nb−(12/181)Ta−(12/48){Ti−(48/14)N}
なお、Ti−(48/14)N≦0の場合には、Ti−(48/14)N=0とする。
(C、Nb、Ta、Ti、N:各元素の含有量(質量%))
)鋼素材に、粗圧延および仕上げ圧延を施し熱延板とする熱間圧延工程と、前記熱延板に冷間圧延を施し冷延板とする冷間圧延工程と、さらに前記冷延板に焼鈍処理を施す焼鈍工程とを順次施し冷延鋼板とするにあたり、
前記鋼素材を、質量%で、
C :0.010%以上0.06%以下、 Si:0.5%超1.5%以下、
Mn:1.0%以上3.0%以下、 P :0.005%以上0.1%以下、
S :0.01%以下、 sol.Al:0.005%以上0.5%以下、
N :0.01%以下、 Nb:0.01%以上0.1%以下、
Ti:0.015%以上0.15%以下
を含み、かつ、C、Nb、TiおよびNを下記(1)式および(2)式を満足するように含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成とし、
前記焼鈍工程を、前記冷延板に700℃以上800℃以下の温度範囲を3℃/s未満の平均加熱速度で、800℃以上950℃以下の焼鈍温度に加熱し、前記焼鈍温度から500℃以下の冷却停止温度Tcまでを5℃/s以上の平均冷却速度で冷却する焼鈍処理を施す工程とすることを特徴とする深絞り性に優れた高強度冷延鋼板の製造方法。

(Nb/93) / (C/12) < 0.2 ・・・ (1)
0.005 ≦ C≦ 0.030 ・・・ (2)
ここで、C= C−(12/93)Nb−(12/48){Ti−(48/14)N}
なお、Ti−(48/14)N≦0の場合には、Ti−(48/14)N=0とする。
(C、Nb、Ti、N:各元素の含有量(質量%))
)()において、前記C、Nb、TiおよびNを前記(2)式に代えて下記(3)式を満足するように含有することを特徴とする深絞り性に優れた高強度冷延鋼板の製造方法。

0.005 ≦ C≦ 0.025 ・・・ (3)
ここで、C= C−(12/93)Nb−(12/48){Ti−(48/14)N}
なお、Ti−(48/14)N≦0の場合には、Ti−(48/14)N=0とする。
(C、Nb、Ti、N:各元素の含有量(質量%))
)(7)または(8)のいずれかにおいて、前記組成に加えてさらに、質量%でCu:0.3%以下、Ni:0.3%以下の1種または2種を含有することを特徴とする深絞り性に優れた高強度冷延鋼板の製造方法。
10)()ないし()のいずれかにおいて、前記組成に加えてさらに、質量%でSn:0.2%以下、Sb:0.2%以下の1種または2種を含有することを特徴とする深絞り性に優れた高強度冷延鋼板の製造方法。
11)()ないし(10)のいずれかにおいて、前記組成に加えてさらに、質量%でTa:0.005%以上0.1%以下を含み、かつ前記(2)式または(3)式に代えてC、Nb、Ta、TiおよびNを下記(4)式を満足するように含有することを特徴とする深絞り性に優れた高強度冷延鋼板の製造方法。

0.005 ≦ C≦ 0.030 ・・・ (4)
ここで、C= C−(12/93)Nb−(12/181)Ta−(12/48){Ti−(48/14)N}
なお、Ti−(48/14)N≦0の場合には、Ti−(48/14)N=0とする。
(C、Nb、Ta、Ti、N:各元素の含有量(質量%))
12)(11)において、前記C、Nb、Ta、TiおよびNを前記(4)式に代えて下記(5)式を満足するように含有することを特徴とする深絞り性に優れた高強度冷延鋼板の製造方法。

0.005 ≦ C≦ 0.025 ・・・ (5)
ここで、C= C−(12/93)Nb−(12/181)Ta−(12/48){Ti−(48/14)N}
なお、Ti−(48/14)N≦0の場合には、Ti−(48/14)N=0とする。
(C、Nb、Ta、Ti、N:各元素の含有量(質量%))
13)()ないし(12)のいずれかにおいて、前記熱間圧延の仕上げ圧延終了後、3秒以内に冷却を開始し、40℃/s以上の平均冷却速度で650℃まで冷却し、500℃以上650℃以下の巻取り温度で巻取り、且つ、前記冷間圧延の圧延率を50%以上とすることを特徴とする深絞り性に優れた高強度冷延鋼板の製造方法。
本発明によれば、自動車用鋼板等に好適な、引張強さ(TS):440MPa以上でかつ高r値(平均r値:1.2以上)の、高強度で優れた深絞り性を兼備する高強度冷延鋼板を、容易にかつ安価に、しかも工業的に安定して生産することが可能となり、産業上格段の効果を奏する。
以下、本発明について詳細に説明する。
まず、本発明鋼板の成分組成の限定理由について説明する。なお、以下の成分組成を表す%は、特に断らない限り質量%を意味するものとする。
C :0.010%以上0.06%以下
Cは、マルテンサイトを形成し、強度上昇に寄与する元素である。C含有量が0.010%未満であると所望のマルテンサイト量(面積率:3%以上)を確保することができず、所望の440MPa以上の引張強さが得られなくなる。一方、C含有量が0.06%を超えると、マルテンサイト量が必要以上に増加し、良好なr値が得られなくなる。したがって、C含有量は0.010%以上0.06%以下とする。
Si:0.5%超1.5%以下
Siは、固溶強化元素であり、高強度化に有効な元素である。本発明においては、440MPa以上の引張強さを確保すべく、Si含有量を0.5%超とする。一方、Si含有量が1.5%を超えると、鋼板表面にSi系酸化物が形成され、化成処理性を著しく劣化させ、鋼板の塗装密着性が著しく低下する。したがって、Si含有量は0.5%超1.5%以下とする。なお、好ましくは0.7%以上1.2%以下である。
Mn:1.0%以上3.0%以下
Mnは、焼入れ性を向上させ、マルテンサイトの形成を促進する元素であり、マルテンサイトを安定して生成させるうえで有効に作用する。Mn含有量が1.0%未満では、所望量のマルテンサイトの形成が困難となり、440MPa以上の引張強さを確保することができなくなる場合がある。したがって、高強度化の観点からMn含有量は1.0%以上とする。また、さらなる高強度化を図るうえでは、1.2%以上とすることが好ましく、1.5%以上とすることがより好ましい。一方、Mn含有量が3.0%を超えると、スラブコストの高騰を招くとともに、r値および溶接性が劣化する。したがって、Mn含有量は1.0%以上3.0%以下とする。なお、好ましくは1.2%以上3.0%以下、より好ましくは1.5%以上3.0%以下である。
P :0.005%以上0.1%以下
Pは、固溶強化により、鋼板の高強度化に有効に寄与する元素である。P含有量が0.005%未満では、かかる効果が期待できないばかりか、製鋼工程における脱燐コストの上昇を招く。したがって、P含有量は0.005%以上とし、好ましくは0.01%以上とする。一方、P含有量が0.1%を超えると、Pが粒界に偏析し、耐二次加工脆性および溶接性が劣化する。したがって、P含有量は0.005%以上0.1%以下とする。なお、好ましくは0.01%以上0.08%以下である。
S :0.01%以下
Sは熱間加工性(熱間圧延性)を低下させる元素であり、スラブの熱間割れ感受性を高めるほか、鋼中にMnSとして存在して鋼板の加工性を劣化させる。そのため、本発明ではSは不純物として極力低減することが好ましいが、0.01%までは許容できる。なお、好ましくは0.008%以下である。
sol.Al:0.005%以上0.5%以下
sol.Alは、固溶強化元素であり、高強度化に有効に作用するとともに、脱酸剤としても作用する。sol.Al含有量が0.005%未満では上記効果が安定的に得られないため、本発明においてはsol.Al含有量を0.005%以上とする。一方、sol.Al含有量が0.5%を超えると、コストの高騰を招くとともに、鋼板表面欠陥を誘発する。したがって、sol.Al含有量は0.005%以上0.5%以下とする。なお、好ましくは0.1%以下である。
N :0.01%以下
Nは、本発明においては有害な元素であり、極力低減することが好ましい。特にN含有量が0.01%を超えると、鋼中に過剰な窒化物が生成することに起因して、延性、靭性および鋼板表面性状が劣化する。したがって、N含有量は0.01%以下とする。
Nb:0.01%以上0.1%以下
Nbは、本発明において重要な元素のひとつである。Nbは、熱延板組織を微細化する作用を有するとともに、熱延板中にNbCとして析出することにより鋼中の一部のCを固定する作用を有し、これらの作用によって高r値化に寄与する元素である。かかる効果を発現すべく、本発明ではNb含有量を0.01%以上とする。一方、0.1%を超える過剰なNbの含有はコスト高を招くとともに、熱間圧延時の負荷を増大させ、また、冷間圧延時の変形抵抗を高くして、安定した実機製造を困難にする。また、後述のとおり、本発明においては焼鈍後の冷却工程においてマルテンサイトを形成させるための固溶Cを必要とするが、Nbを過剰に含有させると、鋼中のCを全てNbCとして固定してしまい、マルテンサイトの形成を妨げることになる。したがって、Nb含有量は0.01%以上0.1%以下とする。なお、上記した実機製造性やコストアップの制御をより安定的に達成するためには、Nb含有量は0.09%以下とすることが好ましく、0.075%以下とすることがより好ましい。
Ti:0.015%以上0.15%以下
Tiは、本発明において重要な元素のひとつである。Tiは、Nbと同様、熱延板中に炭化物TiCとして析出することによりCを固定する作用を有し、これらの作用によって高r値化に寄与する元素である。かかる効果を発現すべく、本発明ではTi含有量を0.015%以上とする。一方、0.15%を超える過剰なTiはコスト高を招くとともに、Nbの場合と同様に、冷間圧延時の変形抵抗を高くするため、安定した実機製造を困難にする。また、過剰なTiの含有は、Nbと同様に、焼鈍後の冷却工程におけるマルテンサイトの形成を妨げる可能性がある。したがって、Ti含有量は0.015%以上0.15%以下とする。
(Nb/93) / (C/12) < 0.2 ・・・ (1)
0.005 ≦ C≦ 0.030 ・・・(2)
ここで、C= C−(12/93)Nb−(12/48){Ti−(48/14)N} である。
なお、Ti−(48/14)N≦0の場合には、Ti−(48/14)N=0とする。
(C、Nb、Ti、N:各元素の含有量(質量%))
上記(1)式および(2)式は、本発明において最も重要な指標である。Nbは、Tiに比べて非常に高価であるうえ、熱間圧延時の圧延負荷を著しく増加させ、製造安定性低下の要因となり得る。また、後述するが、本発明では、焼鈍後の冷却工程でマルテンサイトを形成させるために、NbやTiで固定されないC量Cすなわち固溶C量が必要となる。このため、本発明においては、コスト、製造安定性、鋼板組織および鋼板特性の観点から、(Nb/93) / (C/12)およびCを適正に制御する。
(Nb/93) / (C/12)が0.2以上であると、高価なNb含有量が多くなりコスト面で不利になるうえ、熱間圧延時の負荷が増大する。したがって、(Nb/93) / (C/12)は0.2未満とする。
また、Cが0.005%未満では、所定のマルテンサイト量(面積率:3%以上)を確保することができず、引張強さ:440MPa以上とすることが困難となる。したがって、C( = C−(12/93)Nb−(12/48){Ti−(48/14)N})は0.005%以上とする。一方、Cが0.030%を超えると、高r値に有効なフェライト相の{111}再結晶集合組織の形成を阻害し、良好な深絞り性が得られなくなる。したがって、Cは0.005%以上0.030%以下とする。高r値を得るには、Cを0.025%以下すなわち (3)式(0.005 ≦ C≦ 0.025 ここで、C= C−(12/93)Nb−(12/48){Ti−(48/14)N})を満足するのが好ましく、さらに、平均r値:1.3以上を達成するうえではCを0.020%以下とすることが好ましく、また、平均r値:1.4以上を達成するうえではCを0.017%未満とすることが好ましい。
以上が、本発明における基本組成であるが、基本組成に加えてさらにCu、Niの1種または2種を、必要に応じ選択して含有することができる
Cu:0.3%以下、Ni:0.3%以下の1種または2種
Cuは、スクラップ等を積極的に活用する際に混入する元素である。本発明においては、Cuの混入を許容することで、原料資源にリサイクル資源を活用して製造コストを削減することができる。なお、本発明の鋼板では、材質に及ぼすCuの影響は小さいが、過剰に混入すると鋼板表面傷の原因となるので、Cu含有量は0.3%以下とすることが好ましい。
Niも、本発明鋼板の材質に及ぼす影響は小さいが、Cuを含有する場合、鋼板表面傷を低減するうえで有効に作用する。この効果は、Cu含有量の1/2のNiを含有することで顕著に生じるため、Niを添加する場合、Ni含有量の下限はCu含有量の1/2とすることが好ましい。しかしながら、Ni含有量が過剰になると、スケールの不均一性に起因した鋼板表面欠陥の発生を助長するので、Ni含有量は0.3%以下とすることが好ましい。
Sn:0.2%以下、Sb:0.2%以下の1種または2種
Snは鋼板表面の窒化、酸化、あるいは酸化により生じる鋼板表層の数十ミクロン領域の脱炭を抑制する観点から添加することができる。これにより、疲労特性、耐時効性が改善される。窒化や酸化を抑制する観点から、Sn含有量は0.005%以上とすることが望ましく、0.2%を超えると靭性の劣化を招くので、Sn含有量は0.2%以下とすることが望ましい。
Sb:0.2%以下
SbもSnと同様に鋼板表面の窒化、酸化、あるいは酸化により生じる鋼板表層の数十ミクロン領域の脱炭を抑制する観点から添加することができる。このような窒化や酸化を抑制することで鋼板表面においてマルテンサイトの生成量が減少するのを防止し、疲労特性や耐時効性を改善させる。窒化や酸化を抑制する観点から、Sb含有量は0.005%以上とすることが望ましく、0.2%を超えると靭性の劣化を招くので、Sb含有量は0.2%以下とすることが望ましい。
Ta:0.005%以上0.1%以下
TaはNbやTiと同様に熱延板中に炭化物(TaC)として析出し、高r値化に寄与する元素である。このような観点からTaを0.005%以上添加してもよい。一方、0.1%を超える過剰のTa添加は、コストの増加を招くだけでなく、Nb、Tiと同様に、焼鈍後の冷却過程におけるマルテンサイトの形成を妨げる可能性があり、さらに熱延板中に析出したTaCは、冷間圧延時の変形抵抗を高くし、安定した実機製造を困難にする場合があるため、Ta含有量の上限を0.1%とすることが望ましい。
また、Taを上記の範囲で含有する場合、前記(2)式または(3)式に代えて以下に示す(4)式を満足するよう、C、Nb、Ta、Ti、Nの含有量を調整する。
0.005 ≦ C≦ 0.030 ・・・ (4)
ここで、C= C−(12/93)Nb−(12/181)Ta−(12/48){Ti−(48/14)N}=0.005〜0.030%
C(= C−(12/93)Nb−(12/181)Ta−(12/48){Ti−(48/14)N})が0.005%未満では所定のマルテンサイト量が得られず、440MPa以上の引張強さが得られない。このため、Cを0.005%以上とする。一方、Cが0.030%を超えると、高r値化に有効なフェライト相の{111}再結晶集合組織の形成を阻害し、良好なr値(平均r値:1.2以上)が得られにくくなる可能性がある。このため、Cを0.030%以下とするのが好ましい。高r値化には、Cを0.025%以下すなわち (5)式(0.005 ≦ C≦ 0.025 ここで、C= C−(12/93)Nb−(12/181)Ta−(12/48){Ti−(48/14)N})を満足するのが好ましく、平均r値:1.3以上を安定して得るには、Cを0.020%以下とすることが好ましい。また、平均r値:1.4以上を得るためには、Cを0.017%未満とすることがより好ましい。
本発明の鋼板において、上記以外の成分は、Feおよび不可避的不純物である。なお、不可避的不純物としては、例えば、酸素(O)が挙げられ、酸素(O)は非金属介在物を形成して品質に悪影響を及ぼすため、その含有量は0.003%以下に低減することが好ましい。
次に、本発明の鋼板組織の限定理由について説明する。
本発明の冷延鋼板は、組織全体の面積率で70%以上のフェライト相と、組織全体の面積率で3%以上のマルテンサイト相とを含む組織を有する。本発明では、鋼板の強度とプレス成形性(特に深絞り性)との両立を図るうえで、フェライト相およびマルテンサイト相各々の面積率を限定する。
フェライト相:面積率で70%以上
フェライト相は鋼板のプレス成形性、特に深絞り性を確保するための軟質相であり、本発明においては、フェライト相の{111}再結晶集合組織を発達させることによって高r値化を図っている。フェライト相の面積率が70%未満では、平均r値:1.2以上を達成することが困難となり、良好な深絞り性を確保することができず、プレス成形性が低下する。したがって、フェライト相の面積率は70%以上とする。なお、平均r値のさらなる向上を図るうえでは、フェライト相の面積率は75%以上とすることが好ましく、さらに80%以上とすることがより好ましい。一方、フェライト相の面積率が97%を超えると、鋼板強度が低下し、引張強さ:440MPa以上を確保することが困難となる場合がある。
なお、本発明において「フェライト」とは、ポリゴナルフェライトのほか、オーステナイトから変態した転位密度の高いベイニティックフェライトを含む。
マルテンサイト相:面積率で3%以上
マルテンサイト相は、鋼板の強度を確保するための硬質相である。マルテンサイト相の面積率が3%未満では、鋼板の強度が低下し、引張強度:440MPa以上を確保することが困難となる。したがって、マルテンサイト相の面積率は3%以上とする。鋼板のさらなる高強度化(引張強さ:500MPa以上、590MPa以上)を図るうえでは、マルテンサイト相の面積率は5%以上とすることが好ましい。一方、マルテンサイト相の面積率が30%を超えると、r値を向上させるフェライト相の面積率が低下し、良好な深絞り性を確保することが困難となり、プレス成形性の低下が懸念される。このため、マルテンサイト相の面積率は30%以下とすることが好ましく、さらに20%以下とすることがより好ましい。
なお、本発明の鋼板において、フェライト相とマルテンサイト相以外の組織としては、NbC、TiC或いは更にTaC等が含まれる。その他に、パーライト、ベイナイト、残留オーステナイト、不可避的な炭化物(Fe3C)等が挙げられ、これらは5%程度であれば含まれてもよい。
次に、本発明の冷延鋼板の製造方法について説明する。
本発明の冷延鋼板は、上記した組成の溶鋼を溶製して鋼素材とし、該鋼素材に、粗圧延および仕上げ圧延を施し熱延板とする熱間圧延工程と、該熱延板に冷間圧延を施し冷延板とする冷間圧延工程と、該冷延板に焼鈍処理を施す焼鈍工程とを順次施して製造される。
本発明において、鋼素材の溶製方法は特に限定されず、転炉、電気炉等、公知の溶製方法を採用することができる。また、溶製後、偏析等の問題から連続鋳造法により鋼スラブ(鋼素材)とするのが好ましいが、造塊−分塊圧延法、薄スラブ連鋳法等、公知の鋳造方法で鋼スラブとしても良い。なお、鋳造後に鋼スラブを熱間圧延するにあたり、加熱炉でスラブを再加熱した後に圧延しても良いし、所定温度以上の温度を保持している場合には、鋼スラブを加熱することなく直送圧延しても良い。
(熱間圧延工程)
熱間圧延工程では、鋼素材に、粗圧延および仕上げ圧延を施す。本発明では、鋼素材の加熱条件、粗圧延条件、仕上げ圧延条件については特に限定する必要はないが、鋼素材の加熱温度は1100℃以上1300℃以下、仕上げ圧延終了温度はAr3点以上1000℃以下とすることが好ましい。
また、巻取り温度は、500℃以上700℃以下とすることが好ましい。というのは、巻取り温度が700℃を超えると結晶粒が粗大化し、強度低下が懸念されるとともに冷延焼鈍後の高r値化を妨げるおそれがあるためである。一方、巻取り温度が500℃未満になると、NbC、TiC或いは更にTaCの析出が困難となり、高r値化に不利となる。
また、熱延板の結晶粒微細化によりr値向上を図るうえでは、仕上げ圧延終了後、3秒以内に冷却を開始し、40℃/s以上の平均冷却速度で650℃まで冷却し、500℃以上650℃以下の巻取り温度で巻取ることがより好ましい。
本発明においては、上記した成分組成、および熱間圧延条件を満足するように調整することにより、熱延板の段階でCを0.005〜0.030、更には0.005〜0.025の範囲に調整でき、これにより、高r値化と複合組織化による高強度化の両立が可能となる。さらに、(Nb/93) / (C/12) を 0.2未満に調整することにより、鋼中にNbを含有させることに伴う高コスト化や生産性の低下を大幅に抑制することができる。すなわち、熱間圧延負荷を増大させる高価なNbを極力低減し、Tiを積極的に活用してC(固溶C量)を制御する、或いは更にTaを活用してCを制御することにより、安価でかつ製造性に優れた高強度高r値鋼板が得られる。
(冷間圧延工程)
冷間圧延工程も、常法に従って行えばよく、熱延板を、酸洗後、通常の操業範囲内の圧下率、50〜90%とする冷間圧延を施すことが好ましい。一般に、高r値化を図るうえでは冷間圧延の圧下率を高めることが有効である。圧下率が50%未満ではフェライト相の{111}再結晶集合組織が十分に発達せず、優れた深絞り性が得られないおそれがある。一方、圧下率が90%を超えると冷間圧延時のロールへの負荷が増大し、これに伴い通板トラブル発生率が高まることが懸念される。したがって、冷間圧延の圧下率は50〜90%程度とすることが好ましい。
(焼鈍工程)
焼鈍工程では、冷延板に700℃以上800℃以下の温度範囲を3℃/s未満の平均加熱速度で、800℃以上950℃以下の焼鈍温度に加熱し、前記焼鈍温度から500℃以下の冷却停止温度Tcまでを5℃/s以上の平均冷却速度で冷却する。
700℃以上800℃以下の温度範囲の平均加熱速度:3℃/s未満
本発明においては、熱延板の段階でTiC、NbC或いは更にTaCを析出させているため、冷間圧延工程を経て得られた冷延板の再結晶温度は比較的高温となっている。このため、冷延板を焼鈍温度まで加熱するに際しては、再結晶を促進させて高r値化に有効な{111}再結晶集合組織を発達させる観点から、700℃以上800℃以下の温度範囲を3℃/s未満の平均加熱速度で加熱する。この平均加熱速度が3℃/s以上では、{111}再結晶集合組織の発達が不十分となり、高r値化が困難となる場合がある。なお、生産効率の観点から上記平均加熱速度は0.5℃/s以上とすることが好ましい。
焼鈍温度:800℃以上950℃以下
鋼板組織を所望の面積率のフェライト相とマルテンサイト相を含む複合組織とするために、焼鈍工程ではフェライト−オーステナイト2相域に加熱する。このため、本発明においては焼鈍温度を800℃以上とする。焼鈍温度が800℃未満では、焼鈍冷却後に所望のマルテンサイト量が得られないうえ、焼鈍工程において再結晶が完了しないため、フェライト相の{111}再結晶集合組織が十分に発達せず、平均r値:1.2以上の高r値化を図れない。一方、焼鈍温度が950℃を超えると、その後の冷却条件によっては、第2相(マルテンサイト相、パーライト相、ベイナイト相)が必要以上に増加するため、所望の面積率のフェライト相が得られず良好なr値が得られなくなる場合があるうえ、生産性の低下やエネルギーコストの増加を招き、好ましくない。したがって、焼鈍温度は800℃以上950℃以下とする。好ましくは、820℃以上880℃以下である。
焼鈍時間は、オーステナイトへのC等の元素の濃化を十分に進行させる観点、およびフェライト相の{111}再結晶集合組織の発達を促進させる観点から、15s以上とすることが好ましい。一方、焼鈍時間が300sを超えると、結晶粒が粗大化し、強度の低下や鋼板表面性状の劣化等、鋼板の諸特性に悪影響を及ぼす場合がある。また、連続焼鈍ラインのライン速度を極端に遅くすることになり、生産性の低下にもつながる。したがって、焼鈍時間は15s以上300s以下とすることが好ましい。より好ましくは、15s以上200s以下である。
焼鈍温度から500℃以下の冷却停止温度(Tc)までの平均冷却速度:5℃/s以上
焼鈍温度から、5℃/s以上の平均冷却速度で、500℃以下の冷却停止温度(Tc)まで冷却する。冷却停止温度が500℃を超える場合は、鋼板組織全体の面積率で3%以上のマルテンサイト相が確保できない場合がある。 また、平均冷却速度が5℃/s未満となる場合も、鋼板組織全体の面積率で3%以上のマルテンサイト相を確保することが困難となり、所望の強度(引張強さ:440MPa以上)が得られない場合がある。したがって、冷却停止温度(Tc)は500℃以下とし、上記平均冷却速度は5℃/s以上とする。また、好ましい冷却停止温度(Tc)は400℃以上450℃以下であり、好ましい平均冷却速度は8℃/s以上、より好ましくは10℃/s以上である。
本発明において、冷却停止温度(Tc)未満の温度域における冷却条件については特に限定されないが、冷却停止温度(Tc)から200℃までの温度域を、0.2℃/s以上10℃/s以下の平均冷却速度で冷却すると、マルテンサイト相の焼戻しが適度に進行するため、延性や靭性を回復するうえで好ましい。冷却停止温度(Tc)から200℃までの温度域の平均冷却速度が0.2℃/s未満であると、マルテンサイト相の焼戻しが過度に進行し、所望の強度が得られないおそれがある。一方、冷却停止温度(Tc)から200℃までの温度域の平均冷却速度が10℃/sを超えると、マルテンサイト相の焼戻しが不十分となり、延性や靭性の回復効果があまり期待できない。したがって、冷却停止温度(Tc)から200℃までの温度域の平均冷却速度は0.2℃/s以上10℃/s以下とすることが好ましい。より好ましくは0.5℃/s以上6℃/s以下である。
なお、本発明においては、上記の如く製造された冷延鋼板に、形状矯正、表面粗度調整等の目的で、調質圧延、レベラー加工等を施すことも可能である。なお、調質圧延を行う場合、その圧延率(伸長率)は0.3%〜1.5%程度とすることが好ましい。
(実施例1)
表1に示す組成の溶鋼を真空溶解にて溶製、鋳造し、分塊圧延を施して肉厚30mmの鋼スラブとした。これらの鋼スラブを、1200℃に加熱後、粗圧延し、850℃の仕上げ圧延温度で熱間圧延を施し、表2に示す条件で冷却したのち、600℃で巻取り、板厚:4.5mmの熱延板を製造した。なお、熱間圧延工程においては、仕上げ圧延終了後3秒以内に冷却を開始した。続いて熱延板を酸洗後、表2に示す条件の冷間圧延を施して板厚:1.4mmの冷延板とした。これらの冷延板に、表2に示す条件の焼鈍工程を施した。また、焼鈍後の冷延鋼板に、伸長率:0.5%の調質圧延を施した。
Figure 0005655475
Figure 0005655475
上記により得られた冷延鋼板から試験片を採取し、組織観察、引張試験を行い、フェライト相およびマルテンサイト相の面積率、引張強さ、並びに、平均r値を求めた。試験方法は次のとおりとした。
(i)組織観察
得られた冷延鋼板から試験片を採取し、試験片のL断面(圧延方向に平行な垂直断面)で板厚の1/4位置を機械的に研磨し、ナイタールで腐食した後、走査型電子顕微鏡(SEM)で倍率:2000倍にて撮影した組織写真(SEM写真)を用い、画像処理によりフェライト相、マルテンサイト相等の組織の種類、および、それらの面積率を求めた。
組織写真(SEM写真)において、フェライトはやや黒いコントラストの領域であり、炭化物がラメラー状に生成している領域をパーライト、炭化物が点列状に生成している領域をベイナイトとし、白いコントラストのついている粒子をマルテンサイトもしくは残留オーステナイトとした。このように組織の種類を判別することにより、観察視野内におけるフェライトの面積率を定量化することができる。また、上記の白いコントラストのついている粒子がマルテンサイトであるか残留オーステナイトであるかの判別については、冷延鋼板に対して250℃で4hrの焼戻し処理を施したのち、上記と同様に組織写真を撮影し、その組織写真において炭化物がラメラー状に生成している領域を上記の焼戻し処理前にパーライトであった領域とし、炭化物が点列状に生成している領域を上記の焼戻し処理前にベイナイト、マルテンサイトであった領域とし、白いコントラストのまま残存している粒子を残留オーステナイトとして判別することができる。よって、上記焼戻し処理後の白いコントラストのついている粒子の面積率を残留オーステナイトの面積率とすることができる。そして、上記焼戻し処理前の白いコントラストのついている粒子(マルテンサイトもしくは残留オーステナイト)の面積率と上記焼戻し処理後の白いコントラストのついている粒子の面積率の差を計算することにより、マルテンサイトの面積率を求めることができる。なお、それぞれの相の面積率は、透明のOHPシートに各相ごとを層別して色付けし、画像取り込み後、2値化を行い、画像解析ソフト(マイクロソフト社Digital Image Pro Plus)にて面積率を求めた。
(ii)引張試験
得られた冷延鋼板から、圧延方向に対して90°方向(C方向)を引張方向とするJIS 5号試験片(JIS Z 2201)を採取し、JIS Z 2241の規定に準拠した引張試験を行い、引張強さ(TS)、全伸び(El)を測定した。
さらに、圧延方向に対して0°方向(L方向)、45°方向(D方向)、90°方向(C方向)をそれぞれ引張方向とするJIS 5号試験片を採取し、これらの試験片に10%の単軸引張歪を付与したときの各試験片の幅方向真歪と厚さ方向真歪を測定し、これらの測定値から、JIS Z 2254の規定に準拠して平均r値(平均塑性歪比)を算出した。
得られた結果を表3に示す。
Figure 0005655475
本発明例(鋼板No.4〜14)および本発明例(鋼板No.17〜23)は、引張強さ (TS)が440MPa以上、かつ、平均r値が1.2以上を有し、強度と深絞り性を兼備した鋼板となっている。また、Cが0.020%以下である本発明例(鋼板No.9,13,23)は平均r値が1.3以上、さらに、Cが0.017%未満である本発明例(鋼板No.4〜7)および本発明例(鋼板No.10〜12)、本発明例(鋼板No.17〜22)は平均r値が1.4以上と、極めて良好な深絞り性を示している。
一方、比較例(鋼板No.1)はC,Si含有量およびCが、また、比較例(鋼板No.2)はMn含有量が本発明の範囲に満たないため、所望のマルテンサイト量が得られず、引張強さ(TS)が440MPaを下回っている。比較例(鋼板No.15,16)は、Cが本発明の範囲を超えるため、高r値化に有効なフェライト相の面積率が低く、平均r値が1.2を下回っている。
(実施例2)
表1の鋼F,K,Mに示す組成を有する鋼を真空溶解にて溶製、鋳造し、分塊圧延を施して肉厚30mmの鋼スラブとした。これらの鋼スラブを、1200℃に加熱後、850℃の仕上げ圧延温度で熱間圧延を施し、板厚:4.5mmの熱延板を製造した。なお、熱間圧延工程においては、仕上げ圧延終了後3秒以内に冷却を開始した。また、冷却開始後650℃までの平均冷却速度および巻取り温度は表4に示すとおりとした。続いて熱延板を酸洗後、表4に示す条件の冷間圧延を施して板厚:1.4mmの冷延板とした。これらの冷延板に、表4に示す条件で焼鈍工程を施した。また、焼鈍後の冷延鋼板に、伸長率:0.5%の調質圧延を施した。
Figure 0005655475
上記により得られた冷延鋼板から、(実施例1)と同様にして試験片を採取し、組織観察、引張試験を行い、フェライト相およびマルテンサイト相の面積率、引張強さ、並びに、平均r値を求めた。
得られた結果を表5に示す。
Figure 0005655475
本発明の製造条件を満足する本発明例(鋼板No.24,27,28,30〜33,35,36,39〜42)は、引張強さ (TS)が440MPa以上、且つ、平均r値が1.2以上であり、強度と深絞り性を兼備した鋼板となっている。さらに、熱延板組織の微細化による高r値化を図る目的で、仕上げ圧延終了後の平均冷却速度を40℃/s以上とした本発明例(鋼板No.27,30,33)は、仕上げ圧延終了後の平均冷却速度を40℃/s未満とした他の本発明例よりも高い平均r値を示している。
一方、比較例(鋼板No.25)は、焼鈍温度が本発明の範囲を下回り、焼鈍時間も短いため、所望のマルテンサイト量が得られず、引張強さ(TS)が440MPaを下回っている。また、比較例(鋼板No.29)は、焼鈍温度から冷却停止温度(Tc)までの冷却速度が本発明の範囲を下回るため、所望のマルテンサイト量が得られず、引張強さ(TS)が440MPaを下回っている。比較例(鋼板No.26,38)は、焼鈍温度が本発明の範囲を超えてオーステナイト単相域焼鈍となったため、その後の冷却過程において高r値化に有効なフェライト相が生成せず、平均r値が1.2を下回っている。比較例(鋼板No.37)は、焼鈍温度が本発明の範囲を下回っているため、所望のマルテンサイト量が得られず、引張強さが440MPaを下回っている。比較例(鋼板No.34)は、焼鈍加熱工程の700〜800℃における加熱速度が本発明の範囲を超えるため、フェライト相の{111}再結晶集合組織の発達が不十分となり、平均r値が1.2を下回っている。

Claims (13)

  1. 質量%で、
    C :0.010%以上0.06%以下、 Si:0.5%超1.5%以下、
    Mn:1.0%以上3.0%以下、 P :0.005%以上0.1%以下、
    S :0.01%以下、 sol.Al:0.005%以上0.5%以下、
    N :0.01%以下、 Nb:0.01%以上0.1%以下、
    Ti:0.015%以上0.15%以下
    を含み、かつ、C、Nb、TiおよびNを下記(1)式および(2)式を満足するように含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成と、面積率で70%以上のフェライト相と、面積率で3%以上のマルテンサイト相とを含む組織とを有し、平均r値が1.2以上であることを特徴とする深絞り性に優れた高強度冷延鋼板。

    (Nb/93) / (C/12) < 0.2 ・・・(1)
    0.005 ≦ C≦ 0.030 ・・・(2)
    ここで、C= C−(12/93)Nb−(12/48){Ti−(48/14)N}
    なお、Ti−(48/14)N≦0の場合には、Ti−(48/14)N=0とする。
    (C、Nb、Ti、N:各元素の含有量(質量%))
  2. 前記C、Nb、TiおよびNを前記(2)式に代えて下記(3)式を満足するように含有することを特徴とする請求項1に記載の深絞り性に優れた高強度冷延鋼板。
    0.005 ≦ C≦ 0.025 ・・・(3)
    ここで、C= C−(12/93)Nb−(12/48){Ti−(48/14)N}
    なお、Ti−(48/14)N≦0の場合には、Ti−(48/14)N=0とする。
    (C、Nb、Ti、N:各元素の含有量(質量%))
  3. 前記組成に加えてさらに、質量%でCu:0.3%以下、Ni:0.3%以下の1種または2種を含有することを特徴とする請求項1または2のいずれか1項に記載の深絞り性に優れた高強度冷延鋼板。
  4. 前記組成に加えてさらに、質量%でSn:0.2%以下、Sb:0.2%以下の1種または2種を含有することを特徴とする請求項1ないしのいずれか1項に記載の深絞り性に優れた高強度冷延鋼板。
  5. 前記組成に加えてさらに、質量%でTa:0.005%以上0.1%以下を含み、かつ、前記(2)式または(3)式に代えてC、Nb、Ta、TiおよびNを下記(4)式を満足するように含有することを特徴とする請求項1ないしのいずれか1項に記載の深絞り性に優れた高強度冷延鋼板。

    0.005 ≦ C≦ 0.030 ・・・(4)
    ここで、C= C−(12/93)Nb−(12/181)Ta−(12/48){Ti−(48/14)N}
    なお、Ti−(48/14)N≦0の場合には、Ti−(48/14)N=0とする。
    (C、Nb、Ta、Ti、N:各元素の含有量(質量%))
  6. 前記C、Nb、Ta、TiおよびNを前記(4)式に代えて下記(5)式を満足するように含有することを特徴とする請求項に記載の深絞り性に優れた高強度冷延鋼板。

    0.005 ≦ C≦ 0.025 ・・・(5)
    ここで、C= C−(12/93)Nb−(12/181)Ta−(12/48){Ti−(48/14)N}
    なお、Ti−(48/14)N≦0の場合には、Ti−(48/14)N=0とする。
    (C、Nb、Ta、Ti、N:各元素の含有量(質量%))
  7. 鋼素材に、粗圧延および仕上げ圧延を施し熱延板とする熱間圧延工程と、前記熱延板に冷間圧延を施し冷延板とする冷間圧延工程と、さらに前記冷延板に焼鈍処理を施す焼鈍工程とを順次施し冷延鋼板とするにあたり、
    前記鋼素材を、質量%で、
    C :0.010%以上0.06%以下、 Si:0.5%超1.5%以下、
    Mn:1.0%以上3.0%以下、 P :0.005%以上0.1%以下、
    S :0.01%以下、 sol.Al:0.005%以上0.5%以下、
    N :0.01%以下、 Nb:0.01%以上0.1%以下、
    Ti:0.015%以上0.15%以下
    を含み、かつ、C、Nb、TiおよびNを下記(1)式および(2)式を満足するように含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成とし、
    前記焼鈍工程を、前記冷延板に700℃以上800℃以下の温度範囲を3℃/s未満の平均加熱速度で、800℃以上950℃以下の焼鈍温度に加熱し、前記焼鈍温度から500℃以下の冷却停止温度Tcまでを5℃/s以上の平均冷却速度で冷却する焼鈍処理を施す工程とすることを特徴とする深絞り性に優れた高強度冷延鋼板の製造方法。

    (Nb/93) / (C/12) < 0.2 ・・・(1)
    0.005 ≦ C≦ 0.030 ・・・(2)
    ここで、C= C−(12/93)Nb−(12/48){Ti−(48/14)N}
    なお、Ti−(48/14)N≦0の場合には、Ti−(48/14)N=0とする。
    (C、Nb、Ti、N:各元素の含有量(質量%))
  8. 前記C、Nb、TiおよびNを前記(2)式に代えて下記(3)式を満足するように含有することを特徴とする請求項に記載の深絞り性に優れた高強度冷延鋼板の製造方法。

    0.005 ≦ C≦ 0.025 ・・・(3)
    ここで、C= C−(12/93)Nb−(12/48){Ti−(48/14)N}
    なお、Ti−(48/14)N≦0の場合には、Ti−(48/14)N=0とする。
    (C、Nb、Ti、N:各元素の含有量(質量%))
  9. 前記組成に加えてさらに、質量%でCu:0.3%以下、Ni:0.3%以下の1種または2種を含有することを特徴とする請求項7または8に記載の深絞り性に優れた高強度冷延鋼板の製造方法。
  10. 前記組成に加えてさらに、質量%でSn:0.2%以下、Sb:0.2%以下の1種または2種を含有することを特徴とする請求項ないしのいずれか1項に記載の深絞り性に優れた高強度冷延鋼板の製造方法。
  11. 前記組成に加えてさらに、質量%でTa:0.005%以上0.1%以下を含み、かつ、前記(2)式または(3)式に代えてC、Nb、Ta、TiおよびNを下記(4)式を満足するように含有することを特徴とする請求項ないし10のいずれか1項に記載の深絞り性に優れた高強度冷延鋼板の製造方法。

    0.005 ≦ C≦ 0.030 ・・・(4)
    ここで、C= C−(12/93)Nb−(12/181)Ta−(12/48){Ti−(48/14)N}
    なお、Ti−(48/14)N≦0の場合には、Ti−(48/14)N=0とする。
    (C、Nb、Ta、Ti、N:各元素の含有量(質量%))
  12. 前記C、Nb、Ta、TiおよびNを前記(4)式に代えて下記(5)式を満足するように含有することを特徴とする請求項11に記載の深絞り性に優れた高強度冷延鋼板の製造方法。

    0.005 ≦ C≦ 0.025 ・・・(5)
    ここで、C= C−(12/93)Nb−(12/181)Ta−(12/48){Ti−(48/14)N}
    なお、Ti−(48/14)N≦0の場合には、Ti−(48/14)N=0とする。
    (C、Nb、Ta、Ti、N:各元素の含有量(質量%))
  13. 前記熱間圧延の仕上げ圧延終了後、3秒以内に冷却を開始し、40℃/s以上の平均冷却速度で650℃まで冷却し、500℃以上650℃以下の巻取り温度で巻取り、且つ、前記冷間圧延の圧延率を50%以上とすることを特徴とする請求項ないし12のいずれか1項に記載の深絞り性に優れた高強度冷延鋼板の製造方法。
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