JP4407449B2 - 高強度鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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記
Mn当量(%)=Mn+0.1Si ・・・・・・・(1)
1.5≦Mn当量(%)≦3.0 ・・・・・・・(2)
−20Nb+3.1≦Mn当量(%)≦−20Nb+4.5 ・・・・(3)
(式中のMn、SiおよびNbは各々の元素の含有量(質量%)である)
(I)質量%で、
C:0.010〜0.050%
Si:1.0%以下
Mn:1.0〜3.0%
P:0.005〜0.1%
S:0.01%以下
Al:0.005〜0.5%
N:0.01%以下および
Nb:0.03〜0.3%
を含有し、かつ、Nb含有量とC含有量が、
(Nb/93)/(C/12)=0.2〜0.7
の関係式(式中のNbおよびCは各々の元素の含有量(質量%)である)を満たし、さらに、Mn、SiおよびNbの含有量が、下記(1)、(2)および(3)式を満たし、残部はFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有するとともに、面積率で50%以上のフェライト相と、面積率で1%以上のマルテンサイト相を含む鋼組織を有し、圧延直角方向のヤング率が225GPa以上、平均r値が1.3以上であることを特徴とする高強度鋼板。
記
Mn当量(%)=Mn+0.1Si ・・・・・・・・・・(1)
1.5≦Mn当量(%)≦3.0 ・・・・・・・・・・(2)
−20Nb+3.1≦Mn当量(%)≦−20Nb+4.5 ・・・・(3)
(式中のMn、SiおよびNbは各々の元素の含有量(質量%)である)
P(222)/{P(200)+P(110)+P(310)}≧1.5(式中のP(222)、P(200)、P(110)およびP(310)は、各々鋼板1/4板厚位置における板面に平行な(222)面、(200)面、(110)面および(310)面の各X線回折積分強度比)なる関係を満足することを特徴とする上記(I)に記載の高強度鋼板。
記
Mn当量(%)=Mn+0.1Si+3.5Mo+1.3Cr+Cu+Ni ・・・・(4)
(式中のMn、Si、Mo、Cr、CuおよびNiは各々の元素の含有量(質量%)である)
(Ti/48)/{(S/32)+(N/14)}≦2.0
の関係式(式中のTi、SおよびNは各々の元素の含有量(質量%)である)を満足することを特徴とする上記(I)、(II)または(III)に記載の高強度鋼板。
C:0.010〜0.050%
Si:1.0%以下
Mn:1.0〜3.0%
P:0.005〜0.1%
S:0.01%以下
Al:0.005〜0.5%
N:0.01%以下および
Nb:0.03〜0.3%
を含有し、かつ、Nb含有量とC含有量が、
(Nb/93)/(C/12)=0.2〜0.7
の関係式(式中のNbおよびCは各々の元素の含有量(質量%)である)を満たし、さらに、Mn、SiおよびNbの含有量が、下記(1)、(2)および(3)式を満たし、残部はFeおよび不可避的不純物からなる組成の鋼スラブを熱間圧延にて仕上圧延出側温度:800℃以上とする仕上圧延を施し、巻取温度:400〜720℃で巻取り、熱延板とする熱間圧延工程と、該熱延板に冷間圧延を施し、冷延板とする冷間圧延工程と、該冷延板に焼鈍温度:800〜950℃で焼鈍を行い、次いで焼鈍温度から500℃までの温度域における平均冷却速度:5℃/s以上として冷却する冷延板焼鈍工程とを有することを特徴とする高強度鋼板の製造方法。
記
Mn当量(%)=Mn+0.1Si ・・・・・・・(1)
1.5≦Mn当量(%)≦3.0 ・・・・・・・(2)
−20Nb+3.1≦Mn当量(%)≦−20Nb+4.5 ・・・・(3)
(式中のMn、SiおよびNbは各々の元素の含有量(質量%)である。)
記
Mn当量(%)=Mn+0.1Si+3.5Mo+1.3Cr+Cu+Ni ・・・・(4)
(式中のMn、Si、Mo、Cr、CuおよびNiは各々の元素の含有量(質量%)である)
(Ti/48)/{(S/32)+(N/14)}≦2.0(式中のTi、S、Nは各々の元素の含有量(質量%))
なる関係を満足することを特徴とする上記(VI)または(VII)に記載の高強度鋼板の製造方法。
高r値化、すなわち{111}再結晶集合組織を発達させるためには、従来軟鋼板においては、冷間圧延および再結晶前の固溶Cを極力低減することや熱延板組織を微細化することなどが有効な手段とされてきた。一方、前述のようなDP鋼板では、マルテンサイト形成に固溶Cを必要とするため、母相の再結晶集合組織が発達せずr値が低かった。しかしながら、本発明では、母相であるフェライト相の{111}再結晶集合組織発達と、マルテンサイト相の形成の双方を可能にする絶妙の好成分範囲が存在することを新たに見出した。すなわち、従来のDP鋼板(低炭素鋼レベル)よりもC量を低減しつつ、極低炭素鋼よりはC量が多いという、0.010〜0.050質量%のC含有量とし、加えて、このC含有量に合わせて適切なNb添加を行なうことで、{111}再結晶集合組織の発達と、マルテンサイト相の形成の双方を同時に達成できることを新たに見出した。
なお、元素の含有量の単位はいずれも「質量%」であるが、以下、特に断らない限り、単に「%」で示す。
まず、本発明の高強度鋼板の成分組成を限定した理由について説明する。
Cは、後述のNbとともに本発明における重要な元素である。Cは、高強度化に有効であり、フェライト相を主相としマルテンサイト相を含む第2相を有する複合組織の形成を促進するので、本発明では複合組織形成の観点からCを0.010%以上含有する必要があり、好ましくは0.015%以上、より好ましくは0.020%以上とする。一方、0.050%を超えるCの含有は良好なr値が得られなくなることから、C含有量の上限を0.050%とし、好ましくは0.030%以下とする。なお、高強度化するには、C含有量は多いほど好ましい。
Siは、フェライト変態を促進させ、未変態オーステナイト中のC含有量を上昇させてフェライト相とマルテンサイト相の複合組織を形成させやすくする他、固溶強化の効果があるが、Siを1.0%を超えて含有すると、熱間圧延時に赤スケールと称される表面欠陥が発生するため、鋼板とした時の表面外観を悪くする。また、溶融亜鉛めっきを施す場合には、めっきの濡れ性を悪くしてめっきむらの発生を招き、めっき品質が劣化するので、Si含有量は1.0%以下とする必要があり、好ましくは0.7%以下とする。なお、Si含有量の下限値は、上記効果を得るため、0.01%とすることが好ましく、より好ましくは0.05%とする。
Mnは、高強度化に有効であるとともに、マルテンサイト相が得られる臨界冷却速度を低くする作用があり、焼鈍後の冷却時にマルテンサイト相の形成を促すため、要求される強度レベルおよび焼鈍後の冷却速度に応じて含有するのが好ましく、また、Mnは、Sによる熱間割れを防止するのに有効な元素でもある。このような観点から、Mnは1.0%以上含有する必要があり、好ましくは1.2%以上とする。一方、3.0%を超える過度のMnを含有することは、r値および溶接性を劣化させるので、Mn含有量の上限は3.0%とする。
Pは、固溶強化の効果がある元素である。しかしながら、P含有量が0.005%未満では、その効果が現れないだけでなく、製鋼工程において脱りんコストの上昇を招く。したがって、Pは0.005%以上含有するものとし、好ましくは0.01%以上含有させる。一方、0.1%を超える過剰なPの含有は、Pが粒界に偏析し、耐二次加工脆性および溶接性を劣化させる。また、溶融亜鉛めっき鋼板とする際には、溶融亜鉛めっき後の合金化処理時に、めっき層と鋼板の界面における鋼板からめっき層へのFeの拡散を抑制し、合金化処理性を劣化させる。そのため、高温での合金化処理が必要となり、得られるめっき層は、パウダリング、チッピング等のめっき剥離が生じやすいものとなる。従って、P含有量の上限は0.1%とした。
Sは、不純物であり、熱間割れの原因になる他、鋼中で介在物として存在し鋼板の諸特性を劣化させるので、できるだけ低減する必要がある。具体的には、S含有量は、0.01%までは許容できるため、0.01%以下とする。
Alは、鋼の脱酸元素として有用である他、不純物として含有している固溶Nを固定して耐常温時効性を向上させる作用があり、さらに、Alはフェライト生成元素として、α−γ2相域の温度調整成分としても有用である。かかる作用を発揮させるためには、Al含有量は0.005%以上とする必要がある。一方、0.5%を超えるAlの含有は、高価なAlの過剰添加による合金コストの上昇を招き、さらに表面欠陥を誘発するので、Al含有量の上限を0.5%とする。より好ましくは0.1%以下である。
Nは、耐常温時効性を劣化させる元素であり、できるだけ低減することが好ましい元素である。N含有量が0.01%を超えると、Nによる耐常温時効性の劣化を防止するために、多量のAlやTi添加が必要となることから、N含有量の上限を0.01%とする。
Nbは、Mnと同様に本発明で重要な元素である。Nbは、主に3つの役割を有する。Nbの第1の役割は、炭素を一部NbCとして熱延板の固溶Cを固定することである。ただし、従来のようにNbで全て炭素を固定する必要はない。逆に、Nbで固溶Cを固定しすぎると、焼鈍時にγ相へ十分な炭素を濃縮させることができず、高強度化できないという問題が生じる。この観点より、Nb含有量(質量%)とC含有量(質量%)を、(Nb/93)/(C/12)=0.2〜0.7の関係式を満足させる必要がある。なお、ここで式中の元素記号(Nb、C)は、各々の元素の含有量(質量%)を示している。また、(Nb/93)/(C/12)は、NbとCの原子濃度比を表している。
なお、本発明では、上記した組成に加えてさらに下記に示すMo、Cr、CuおよびNiの中から選択される1種または2種以上、および/またはTiを、必要に応じて添加してもよい。
Mo、Cr、CuおよびNiは、Mnと同様、マルテンサイト相が得られる臨界冷却速度を遅くする作用をもち、焼鈍後の冷却時にマルテンサイト相の形成を促す元素であり、強度レベル向上に効果がある。Mo、Cr、CuおよびNiは、鋼中に不可避的不純物としてMo:0.02%未満、Cr:0.05%未満、Cu:0.05%未満およびNi:0.05%未満の範囲で含有する場合があるが、上記効果を得るためには、Moは0.02%以上、Cr:0.05%以上、Cu:0.05%以上およびNi:0.05%以上の中から選択される1種または2種以上を合計で0.5質量%以下含有させることが好ましい。
Tiは、Alと同等或いはAl以上に固溶Nの析出固定に効果がある元素であり、鋼中に不可避的不純物として、0.005%未満の範囲で含有している場合があるが、上記効果を得るためにはTiを0.005%以上含有させることが好ましい。しかしながら、0.1%を超える過剰の添加は、コストの上昇を招くばかりか、TiCの形成によりマルテンサイト相の形成に必要な固溶Cを鋼中に残すことを妨げる。したがって、Ti含有量は、0.1%以下とすることが好ましい。
本発明の高強度鋼板は、良好な深絞り性を有し、引張強度≧440MPaの鋼板とするために、面積率で50%以上のフェライト相と、面積率で1%以上のマルテンサイト相を含む鋼組織を有する鋼板、いわゆる複合組織鋼板であることが必要である。特に、本発明では、50%以上の面積率を占めるフェライト相の{111}再結晶集合組織を発達させることによって、平均r値≧1.3を達成することができる。フェライト相が少なくなり、面積率で50%未満となると、良好な深絞り性を確保することが困難となり、プレス成形性が低下する傾向がある。なお、フェライト相は、面積率で70%以上とすることが好ましく、また、複合組織の利点を利用するため、フェライト相は面積率で99%以下とするのが好ましい。
本発明では、Nb含有量を0.03〜0.3%とし、さらにMn当量を1.5〜3.0でかつ−20Nb+3.1〜−20Nb+4.5に適正化することにより、ヤング率225GPa以上を達成できた。ここで、ヤング率とは、物質の弾性定数の1つであり、自動車などの部品を設計する上で欠かせないパラメータのひとつとなっている。ヤング率の測定法は、主に2つの方法に大別され、一つは応力と歪の測定による方法で、もうひとつは音速の測定などの静的な方法があり、本発明では、共振周波数を測定するモジュールr値法によりヤング率を測定する。ヤング率を225GPa以上とすることにより、自動車部品の剛性が上昇し、自動車車体の軽量化効果が大きくなる。
本発明の高強度鋼板は、上記成分組成および鋼組織を満足するとともに、平均r値が1.3以上であることが必要である。
平均r値=(r0+2r45+r90)/4
なお、r0、r45およびr90は、試験片を板面の圧延方向に対し、それぞれ0°、45°および90°方向(圧延直角方向)に採取し測定した塑性ひずみ比である。
本発明鋼板におけるr値と集合組織の相関について鋭意研究を進めたところ、詳細はまだ明らかではないが、{310}面は少ないながらも{100}、{110}面同様、r値を低下させる集合組織であり、これを低減することが高r値化に寄与することを見出した。これは、詳細は明らかではないが、Nb添加により熱延時の未再結晶γ域での圧下率が高いことや、前述した微細なNbCの析出、およびNbCとして析出固定されないCの存在などが、{310}面低減に寄与していると考えられる。
本発明の製造方法に用いられる鋼スラブの組成は、上述した鋼板の組成と同様であるので、鋼スラブの限定理由の記載は省略する。
従来軟鋼板においては、熱延板の結晶粒径を微細化するほど、r値を高める効果があることが知られている。
図1(a)、(b)および図2(a)、(b)は、ナイタール腐食させた熱延鋼板の光学顕微鏡写真である。ナイタール液は3%硝酸アルコール溶液(3%HNO3−C2H50H)であり、10〜15s腐食した。
本発明では、粒径を測定する際、上記の線(1)と線(2)を粒界として結晶粒径を測定した。
また、このことから、詳細は定かではないが、本発明における粒界からの深絞り成形性に好ましい再結晶核発生の促進には、5°以上の傾角が有効であることが推測される。
熱延板段階において、NbCとして析出固定されるC量は、熱延板を化学分析(抽出分析)して得られる析出Nb量を基に求めることができるため、熱延板段階においてNbCとして析出固定されるC量が鋼中の全C量に占める割合(以下、単に「析出固定されるC量の割合」という。)は、次式にて算出される値である。
[C]fix=100×12×([Nb*]/93)/[C]total
ここで、鋼中にTiを含有しない場合、NbはNbNを形成するため、
[Nb*]=[Nb]−(93[N]/14)、[Nb*]>0
一方、鋼中にTiを含有する場合、Nは優先的にTiNを形成するので
[Nb*]=[Nb]−(93[N*]/14)
なお、式中、
[N*]=[N]−(14[Ti*]/48)、[N*]>0
[Ti*]=[Ti]−(48[S]/32)、[Ti*]>0
[C]fixは析出固定されるC量の割合(%)、
[C]totalは、鋼中の全C含有量(質量%)、
[Nb]、[N]、[Ti]、[S]は、それぞれ析出Nb、析出N、析出Ti、析出S量(質量%)である。
表1に示す組成の溶鋼を転炉で溶製し、連続鋳造法でスラブとした。これら鋼スラブを1250℃に加熱し粗圧延してシートバーとし、次いで、表2に示す条件の仕上圧延を施す熱間圧延工程により熱延板とした。これらの熱延板を酸洗し、次いで圧下率65%の冷間圧延を施す冷間圧延工程により冷延板とした。引き続き、これら冷延板に、連続焼鈍ライン(CAL)にて、表2に示す条件で連続焼鈍を行ない、冷延焼鈍板とした。また、一部の冷延板については、連続焼鈍ラインに代えて連続溶融亜鉛めっきライン(CGL)にて、表2に示す条件で連続焼鈍を行なった。なお、連続溶融亜鉛めっきラインにて冷延板焼鈍工程を施した鋼板については、その後引き続きインラインで溶融亜鉛めっき(めっき浴温:480℃)を施した。さらに、得られた冷延焼鈍板あるいは溶融亜鉛めっき鋼板に伸び率0.5%の調質圧延を施した。
調査方法は下記の通りである。
前述のように抽出分析により析出Nb、析出Ti、析出N、析出S量を定量し、下記式で求めた。
[C]fix=100×12×([Nb*]/93)/[C]total
ここで、鋼中にTiを含有しない場合、
[Nb*]=[Nb]−(93[N]/14)、[Nb*]>0
Tiを含有する場合、
[Nb*]=[Nb]−(93[N*]/14)
なお、式中、
[N*]=[N]−(14[Ti*]/48)、[N*]>0
[Ti*]=[Ti]−(48[S]/32)、[Ti*]>0
[C]fixは析出固定されるC量の割合(%)、
[C]totalは、鋼中の全C含有量(質量%)、
[Nb]、[N]、[Ti]、[S]はそれぞれ析出Nb、析出N、析出Ti、析出S量(質量%)である。
なお、抽出分析の方法は、10%マレイン酸系電解液を用いて電解抽出した残渣をアルカリ融解し、融成物を酸溶解した後、ICP発光分光法で定量した。
ナイタール腐食した圧延方向に平行な板厚断面(L断面)を光学顕微鏡で撮像し、JIS G 0552に準じた切断法により、前述のように平均結晶粒の切片長さl(μm)を求め、(ASTM)公称粒径dn=1.13×lとして表記した。粒界としては、先述したように、ナイタール液により腐食し、通常通り深く腐食される線および腐食が浅い線の双方を粒界としてカウントした。また、このようにして測定した平均結晶粒径の値は、傾角5°以上の結晶粒境界を結晶粒界とみなして測定した値に相当することをEBSP解析により確認した。ここでナイタール液は、3%硝酸アルコール溶液(3%HNO3−C2H5OH)を用い、10〜15秒間腐食した。
各冷延焼鈍板から試験片を採取し、圧延方向に平行な板厚断面(L断面)について、走査型電子顕微鏡を用いて1000〜3000倍で微視組織を撮像し、相の種類を観察するとともに、各相の面積を解析し、フェライト相の面積率とマルテンサイト相の面積率を求めた。
得られた各冷延焼鈍板から圧延方向に対して90°方向(C方向)にJIS5号引張試験片を採取し、JIS Z 2241の規定に準拠してクロスヘッド速度10mm/minで引張試験を行い、降伏応力(YS)、引張強度(TS)および伸び(El)を求めた。
得られた各冷延焼鈍板の圧延方向(L方向)、圧延方向に対し45°方向(D方向)、圧延方向に対し90°方向(C方向)からJIS5号引張試験片を採取した。これらの試験片に10%の単軸引張歪を付与した時の各試験片の幅歪と板厚歪を測定し、これらの測定値を用い、JIS Z 2254の規定に準拠して平均r値(平均塑性歪比)を算出し、これをr値とした。
ヤング率(EC)は、圧延直角方向(板幅方向)から短冊試片を切り出し、米国Control Products 社製 Module-r Drawability Testerを用い、モジュールr値法(参考文献 P.R. Mould, and T.E. Johnson, Jr. Sheet Metal Industries, June (1973), p.328)により、共振周波数より計算して求めた。
得られた各冷延焼鈍板の鋼板1/4板厚位置にて、白色X線を用いたエネルギー分散型X線回折を行った。測定面は、α-Feの主要回折面である(110)面、(200)面、(211)面、(220)面、(310)面、(222)面、(321)面、(400)面、(411)面、(420)面の計10面について測定し、無方向性標準試料との相対強度比で各面のX線回折積分強度比を求め、求めた(222)面、(200)面、(110)面および(310)面のX線回折積分強度比P(222)、P(200)、P(110)およびP(310)を下記式の右辺各項に代入し、左辺項Aを算出した。
A=P(222)/{P(200)+P(110)+P(310)}
Claims (9)
- 質量%で、
C:0.010〜0.050%
Si:1.0%以下
Mn:1.0〜3.0%
P:0.005〜0.1%
S:0.01%以下
Al:0.005〜0.5%
N:0.01%以下および
Nb:0.03〜0.3%
を含有し、かつ、Nb含有量とC含有量が、
(Nb/93)/(C/12)=0.2〜0.7
の関係式(式中のNbおよびCは各々の元素の含有量(質量%)である)を満たし、さらに、Mn、SiおよびNbの含有量が、下記(1)、(2)および(3)式を満たし、残部はFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有するとともに、面積率で50%以上のフェライト相と、面積率で1%以上のマルテンサイト相を含む鋼組織を有し、圧延直角方向のヤング率が225GPa以上、平均r値が1.3以上であることを特徴とする高強度鋼板。
記
Mn当量(%)=Mn+0.1Si ・・・・・・・・・・(1)
1.5≦Mn当量(%)≦3.0 ・・・・・・・・・・(2)
−20Nb+3.1≦Mn当量(%)≦−20Nb+4.5 ・・・・(3)
(式中のMn、SiおよびNbは各々の元素の含有量(質量%)である) - 前記鋼板は、鋼板1/4板厚位置における板面に平行な(222)面、(200)面、(110)面および(310)面の各X線回折積分強度比が、
P(222)/{P(200)+P(110)+P(310)}≧1.5(式中のP(222)、P(200)、P(110)およびP(310)は、各々鋼板1/4板厚位置における板面に平行な(222)面、(200)面、(110)面および(310)面の各X線回折積分強度比)なる関係を満足することを特徴とする請求項1に記載の高強度鋼板。 - 上記組成に加えて、さらにMo:0.02質量%以上、Cr:0.05質量%以上、Cu:0.05質量%以上およびNi:0.05質量%以上の中から選択される1種または2種以上を合計で0.5質量%以下含有するとともに、前記(1)式に代えて、下記(4)式を満たすことを特徴とする請求項1または2に記載の高強度鋼板。
記
Mn当量(%)=Mn+0.1Si+3.5Mo+1.3Cr+Cu+Ni ・・・・(4)
(式中のMn、Si、Mo、Cr、CuおよびNiは各々の元素の含有量(質量%)である) - 上記組成に加えて、さらにTi:0.1質量%以下を含有し、かつ、鋼中のTiとSとNの含有量が、
(Ti/48)/{(S/32)+(N/14)}≦2.0
の関係式(式中のTi、SおよびNは各々の元素の含有量(質量%)である)を満足することを特徴とする請求項1、2または3に記載の高強度鋼板。 - 表面にめっき層を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の高強度鋼板。
- 質量%で、
C:0.010〜0.050%
Si:1.0%以下
Mn:1.0〜3.0%
P:0.005〜0.1%
S:0.01%以下
Al:0.005〜0.5%
N:0.01%以下および
Nb:0.03〜0.3%
を含有し、かつ、Nb含有量とC含有量が、
(Nb/93)/(C/12)=0.2〜0.7
の関係式(式中のNbおよびCは各々の元素の含有量(質量%)である)を満たし、さらに、Mn、SiおよびNbの含有量が、下記(1)、(2)および(3)式を満たし、残部はFeおよび不可避的不純物からなる組成の鋼スラブを熱間圧延にて仕上圧延出側温度:800℃以上とする仕上圧延を施し、巻取温度:400〜720℃で巻取り、熱延板とする熱間圧延工程と、該熱延板に冷間圧延を施し、冷延板とする冷間圧延工程と、該冷延板に焼鈍温度:800〜950℃で焼鈍を行い、次いで焼鈍温度から500℃までの温度域における平均冷却速度:5℃/s以上として冷却する冷延板焼鈍工程とを有することを特徴とする高強度鋼板の製造方法。
記
Mn当量(%)=Mn+0.1Si ・・・・・・・(1)
1.5≦Mn当量(%)≦3.0 ・・・・・・・(2)
−20Nb+3.1≦Mn当量(%)≦−20Nb+4.5 ・・・・(3)
(式中のMn、SiおよびNbは各々の元素の含有量(質量%)である。) - 上記組成に加えて、さらにMo:0.02質量%以上、Cr:0.05質量%以上、Cu:0.05質量%以上およびNi:0.05質量%以上の中から選択される1種または2種以上を合計で0.5質量%以下含有するとともに、前記(1)式に代えて、下記(4)式を満たすことを特徴とする請求項6に記載の高強度鋼板の製造方法。
記
Mn当量(%)=Mn+0.1Si+3.5Mo+1.3Cr+Cu+Ni ・・・・(4)
(式中のMn、Si、Mo、Cr、CuおよびNiは各々の元素の含有量(質量%)である) - 鋼スラブが、上記組成に加えて、さらにTi:0.1質量%以下を含有し、かつ、鋼中のTi、SおよびNの含有量が、
(Ti/48)/{(S/32)+(N/14)}≦2.0(式中のTi、S、Nは各々の元素の含有量(質量%))
なる関係を満足することを特徴とする請求項6または7に記載の高強度鋼板の製造方法。 - 上記冷延板焼鈍工程の後の鋼板表面にめっき層を形成するめっき処理工程をさらに有することを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項に記載の高強度鋼板の製造方法。
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