JP5632692B2 - 高熱伝導性鋼板 - Google Patents
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71.16−47.92[C]−4.72[Mn]−71.59[sol−Al]+39.32[Ti]+27.01[X]+0.0024[Y]≧68.5・・・(1)
(式中[ ]内は各元素の含有量(質量%)、[X]はCu、Ni、Cr、Moの合計含有量、[Y]は鋼板両面の純亜鉛めっき付着量の合計(g/m2))
本発明で用いる素地鋼板は、その化学成分組成を適切に規定すると共に、後記する式(1)を満足するように制御することが必要である。これら各成分の限定理由は、以下の通りである。
Cは、鋼板(素地鋼板)の熱伝導率に大きな悪影響を及ぼす元素であることから、本発明ではC含有量の上限を低く設定している。即ち、C含有量が少ないほど熱伝導率は高くなるため、Cは0.03%以下とする必要がある。好ましくは、0.02%以下、より好ましくは0.01%以下である。その一方で、Cは薄鋼板としたときの強度を確保する上で有用な元素である。強度が不足した鋼板では、バックシャーシのような大型の電子機器部品として用いる場合、構造を支持したり、鋼板の平坦度を確保することが難しくなる。そこで、他の元素との組み合わせによって、バックシャーシとして必要な強度を確保する必要があるが、強度を低下させることなくバックシャーシとして使用できる範囲のC含有量の下限として、0.001%以上とする。好ましくは0.0015%以上、より好ましくは0.0020%以上である。
Siは、鋼板の熱伝導率に悪影響を及ぼす元素である。Si含有量が少ないほど熱伝導率は高くなるため、Siは0.1%以下とする必要がある。好ましくは0.05%以下、より好ましくは0.03%以下である。一方、Siは固溶強化元素として作用し、薄鋼板の強度を確保するのに作用する元素でもある。したがって鋼板の強度を確保するためには、Siは好ましくは0.001%以上、より好ましくは0.002%以上、更に好ましくは0.003%以上である。
Mnは、鋼板の熱伝導率に悪影響を及ぼす元素である。Mn含有量が少ないほど熱伝導率は高くなるため、Mnは0.90%以下とする必要がある。好ましくは、0.50%以下、より好ましくは0.30%以下である。一方、Mnは焼入れ性の向上に作用する元素でもある。従って、鋼板の強度を確保するためには、Mnは0.05%以上含有させることが必要である。好ましくは、0.08%以上、より好ましくは0.10%以上である。
sol−Alは、鋼板の熱伝導率に大きな悪影響を及ぼす元素の一つである。熱伝導率を良好に維持するためには、sol−Alの含有量は0.10%以下とする必要がある。好ましくは0.07%以下、より好ましくは0.06%以下である。しかしながら、sol−Alは脱酸元素として作用し、こうした作用を有効に発揮させるには、sol−Alの含有量は0.01%以上とする必要がある。好ましくは0.015%以上、より好ましくは0.020%以上である。
Tiは、鋼板の熱伝導率の向上に寄与する元素である。詳細にはTiは、Cとカーバイドを形成して固溶Cを低減させ、またNと窒化物を形成して熱伝導率向上に寄与する元素である。こうした効果を発揮させるためには0.01%以上含有させることが好ましい。より好ましくは0.02%以上、更に好ましくは0.03%以上である。しかしながら、Ti含有量が過剰になると、鋼板の強度を劣化させるので、その上限は0.10%とする。Ti含有量のより好ましい上限は0.07%であり、更に好ましい上限は0.06%である。
Cu、Ni、Mo、Crは、もともと鋼中に不可避的不純物として含まれ得る元素であるが、いずれも焼き入れ性を向上させる元素であると共に、熱伝導率が鉄(Fe:80W/m・K)よりも高い(Cu:401W/m・K、Ni:91W/m・K、Mo:138W/m・K、Cr:94W/m・K)ことから、鋼板の熱伝導率向上に寄与する元素である。鋼板の強度や加工性に影響を及ぼさない範囲で、熱伝導特性を改善させるために、Cu、Ni、Mo、及びCrよりなる群から選ばれる少なくとも1種を0.01%以上添加するのが好ましい。これらの元素は単独、或いは2種以上を併用してもよい。但し、これらの元素の含有量が過剰になると鋼板の強度や加工性に悪影響を及ぼすだけでなく、めっき性も悪くなるため、各々0.1%以下とするが、各元素の単独量としては、Crの好ましい上限は0.08%、Ni、Mo、Cuの好ましい上限はいずれも0.05%である。
Sは不可避的不純物であるが、Mnと結合して鋼板の延性を劣化させるため、少ないほど好ましく、こうした観点から0.04%以下とすることが好ましい。より好ましくは0.02%以下であり、更に好ましくは0.01%以下である。また、この範囲であれば、鋼板の熱伝導率には悪影響を及ぼすこともない。
Pは不可避的不純物であるが、粒界偏析による粒界破壊を助長させるので、その含有量はできるだけ少ない方が望ましい。こうした観点から、P含有量は0.05%以下とすることが好ましい。より好ましくは0.04%以下であり、更に好ましくは0.025%以下である。また、この範囲であれば、鋼板の熱伝導率には悪影響を及ぼすこともない。
Nは不可避的不純物である。Nは、粗大な介在物(TiNなど)を形成し、鋼板の靭性を劣化させる元素であるため、できるだけ低減することが望ましい。こうした観点から、N含有量は、0.01%以下とするのが良い。より好ましくは0.008%以下であり、更に好ましくは0.004%以下である。また、この範囲であれば、熱伝導率には悪影響を及ぼさない。
(式中[ ]内は各元素の含有量(質量%)、[X]はCu、Ni、Cr、Moの合計含有量(質量%)、[Y]は鋼板両面の純亜鉛めっき付着量の合計(g/m2))
本発明の高熱伝導性鋼板は、素地鋼板の両面に純亜鉛めっき被膜を形成したものであるが、この亜鉛めっきの付着量(目付け量)は、熱伝導率を向上させるという観点から、できるだけ多くする必要がある。亜鉛めっき付着量は、片面当り10g/m2以上とする必要がある。好ましくは15g/m2以上、より好ましくは20g/m2以上である。但し、亜鉛めっき付着量が過剰になると、表面外観が非常に悪化するため、亜鉛めっき付着量の上限値は200g/m2とすることが好ましい。より好ましくは180g/m2以下、更に好ましくは150g/m2以下である。
(1) アルカリ水溶液浸漬脱脂:3質量%苛性ソーダ水溶液、60℃、2秒
(2) アルカリ水溶液電解脱脂:3質量%苛性ソーダ水溶液、60℃、2秒、10〜30A/dm2
(3) 水洗
(4) 酸洗 :3〜7質量%硫酸水溶液、40℃、2秒
(5) 水洗
(6) 電気亜鉛めっき :下記[電気亜鉛めっき条件]の通り
(7) 水洗
(8) 乾燥
めっきセル :横型めっきセル
めっき浴組成:ZnSO4・7H2O 300〜400g/L
Na2SO4 50〜100g/L
H2SO4 25〜35g/L
電流密度:50〜200A/dm2
めっき浴温度:60℃
めっき浴流速:1〜2m/秒
電極(陽極):IrO2合金電極
めっき付着量 :15〜30g/m2(片面当たり)
上記冷延鋼板を、酸洗工程を通すことなく、溶融亜鉛めっきを施した。溶融亜鉛めっきは、還元性ガス雰囲気中での加熱による還元、めっき浴浸漬、ガスワイピングする装置を使用し、溶融亜鉛めっきを施した。
還元温度:780℃〜860℃
還元時間:10〜80秒
めっき浴組成:Zn−0.2%Al
めっき浴温度:455〜465℃
亜鉛付着量:60〜133g/m2
得られた各鋼板について、レーザーフラッシュ法によって熱伝導率を測定した。この方法の概要は次の通りである。
測定装置:レーザーフラッシュ法熱定数測定装置 「TC−7000アルバック 理工株式会社製」
まず下記の方法によって各鋼板の熱拡散率を測定する。
(1)25mm角の試料(鋼板)を作製し、その表裏面をカーボンスプレーによって黒化する。
(2)試料の黒化した面に赤外線レーザー光を瞬間的に照射し、裏面の温度変化を熱電対または赤外線検出器を用いて測定する。
(3)得られた時間−温度上昇曲線から熱拡散率を求める。
(4)レーザー光照射点と温度検出点との距離(即ち、各鋼板の厚さに相当)をL(mm)、試料裏面での最高到達温度の1/2の温度に到達するまでの時間をt1/2(sec)とすると、熱拡散率α(m2/sec)は下記の式で示される(このような測定方法をハーフタイム法と呼ぶ)。
熱拡散率α=1.37(L/π)2・1/t1/2 [m2/sec]
試料にレーザー光を瞬間的に照射したときに、試料に吸収された熱量をQ(J/cm2)、試料の質量をM(g)、温度上昇量をΔT(K)とすると、比熱Cp(J/(g・K))は以下の式で示される。なお、各試料の質量は50〜60gであり、示差走査熱量計(セイコーインスツルメンツ製 DSC220C)を用いて室温、アルゴン雰囲気下における比熱を測定した。
比熱Cp=Q/(M・ΔT) [J/(g・K)]
25mm角の試料を作製し、該試料を用いて室温で水中置換法により密度を測定した。
熱拡散率をα(m2/sec)、比熱をCp(J/(g・K))、密度をρ(g/cm3)とすると、熱伝導率η[W/m・K]は以下の式で示される。密度ρはアルキメデス法によって測定した値を採用した。
熱伝導率η=Cp・α・ρ [W/(m・K)]
図1Aに示すような軸対称2次元モデルを用い、長さ100mm×厚さ0.8mmの鋼板を設定し、熱伝導性を熱伝導シミュレーションによって評価した。
発熱体温度(T0):ヒーターと鋼板の接触面の中心温度
面内最高温度(Tmax):鋼板の反対面の中心温度
最低温度(Tmin):鋼板の反対面の周辺端部(角部)温度
面内温度差(Tdiff):面内最高温度(Tmax)から最低温度(Tmin)を引いた値
尚、計算には汎用流体解析コードFLUENT6.3(ANSYS社)を用いて、乱流モデルはK−ωSSTモデル、放射はD0モデルを採用した。
鋼板No.15(アルミ板:熱伝導率120.0W/m・K)のシミュレーション値(T0=94.5℃)と、鋼板No.14(電気めっき鋼板:熱伝導率50.0W/m・K)のシミュレーション値(T0=97.9℃)の中間値96.2℃([94.5℃+97.9℃]/2)を基準値として、鋼板の発熱体温度(T0)が中間値(96.2℃)以下の場合を合格とし(○:T0≦96.2℃)、中間値を超える場合を不合格(×:T0>96.2℃)と評価した。
鋼板No.15のシミュレーション値(Tdiff=14.6℃)と、鋼板No.14のシミュレーション値(Tdiff=21.9℃)の中間値18.3℃を基準値として、試験片の面内温度差(Tdiff)が18.3+0.5℃未満の場合を合格とし(○:Tdiff<18.3+0.5℃)、更に18.3℃以下の場合を特に優れているとした(◎:Tdiff≦18.3℃)。また面内温度差(Tdiff)が18.3+0.5℃以上の場合を不合格(×:Tdiff≧18.3+0.5℃)と評価した。
Claims (2)
- 熱源に局部的に接する部材として用いられる高熱伝導性鋼板であって、素地鋼板は、
C:0.03%以下(0%を含まない)(「質量%」の意味、以下同じ)、
Si:0.1%以下(0%を含まない)、
Mn:0.05〜0.90%、
sol−Al:0.01〜0.10%、
Ti:0.01〜0.10%、並びに
Cu、Ni、Mo、及びCrよりなる群から選ばれる少なくとも1種:各0.01%以上0.1%以下
を夫々含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなり、前記素地鋼板の両面に片面当りの付着量が10g/m2以上の純亜鉛めっきが施されると共に、下記式(1)を満足することを特徴とする高熱伝導性鋼板。
71.16−47.92[C]−4.72[Mn]−71.59[sol−Al]+39.32[Ti]+27.01[X]+0.0024[Y]≧68.5・・・(1)
(式中[ ]内は各元素の含有量(質量%)、[X]はCu、Ni、Mo、及びCrの合計含有量(質量%)、[Y]は鋼板両面の純亜鉛めっき付着量の合計(g/m2)) - 電子機器部品に用いられるものである請求項1に記載の高熱伝導性鋼板。
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