JP2013142162A - 反り付け加工性に優れたベース板用銅或いは銅合金板及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】反り付け加工性の良好な、使用時におけるはんだ接合部の信頼性を高めたベース板用の銅或いは銅合金板及びその製造方法が提供される。
【解決手段】導電率が90%IACS以上の銅或いは銅合金からなり、後方散乱電子回折像システム付の走査型電子顕微鏡によるEBSD法にて表面の測定面積内の全ピクセルの方位を測定し、隣接するピクセル間の方位差が10°以上である境界を結晶粒界とみなした場合の全結晶粒における結晶粒内の全ピクセル間の平均方位差の平均値(GOS)が0.11〜3.62°であり、表面の{541}結晶面のX線回折強度(I1)と{521}結晶面のX線回折強度(I2)との比であるI1/I2が0.9〜7.0であり、ビッカース硬さ(HV)と結晶粒径(D)との比であるHV/Dが1〜150である。
【選択図】なし
【解決手段】導電率が90%IACS以上の銅或いは銅合金からなり、後方散乱電子回折像システム付の走査型電子顕微鏡によるEBSD法にて表面の測定面積内の全ピクセルの方位を測定し、隣接するピクセル間の方位差が10°以上である境界を結晶粒界とみなした場合の全結晶粒における結晶粒内の全ピクセル間の平均方位差の平均値(GOS)が0.11〜3.62°であり、表面の{541}結晶面のX線回折強度(I1)と{521}結晶面のX線回折強度(I2)との比であるI1/I2が0.9〜7.0であり、ビッカース硬さ(HV)と結晶粒径(D)との比であるHV/Dが1〜150である。
【選択図】なし
Description
本発明は、反り付け加工性、特に、反り付け加工後の寸法精度の公差が優れたベース板用銅或いは銅合金板及びその製造方法に関する。
大規模集積回路(LSI)等の発熱を伴う電子部品においては、電子部品を正常に動作させるために、熱を外部に放散させるベース板(ヒートシンク)が取り付けられる。このベース板の素材としては、熱伝導率が高く、軽量で加工性の良いアルミニウムや銅或いは銅合金が一般的に使用されている。また、ベース板は、半導体モジュールの組立過程や電気或いは電子機器としての使用中にできるだけ変形しないことが望まれるが、組立て時に、はんだ接合時の昇温で軟化して、0.2 % 耐力が低下し易く、半導体素子基板との熱膨張差に起因する「反り」が生じ易くなる。通常、この反り対策として、ベース板には、プレスなどによる反り付け加工にて、いわゆる「逆反り」を予め形成しておき、はんだ接合時に発生する反りを出来るだけ相殺する処置が施されている。
特許文献1には、パワー半導体モジュールやICパッケージ等の組立工程において、接合後の平坦性に優れ、接合時や使用環境時のヒートサイクルによりはんだ接合部にクラックが発生せず、且つ、熱伝導、コスト的に優れた銅基合金製放熱板が開示されている。0.2%耐力が300N/mm2 以上で、400℃で10分間の加熱後の0.2%耐力が加熱前の0.2%耐力の90%以上であり、熱伝導率が350W/m・K以上であり、Fe、Co及びNiからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素とPとを合計で0.01〜0.3%含有する銅基合金からなり、各辺の長さがそれぞれ10〜200mmで、板厚が0.1〜5mmである放熱板において、形状が曲率半径100mm以上の湾曲状で、そり量をそれぞれ200μm以下を与えることによって、組み立て工程後の平坦性に優れ、熱放散性を向上させることを特徴としている。
特許文献2では、Pbフリーはんだで複数の半導体基板を接合した後の放熱板形状を安定して精度良くフラット化することのできる放熱板として、複数の半導体基板をはんだ接合により搭載するための銅または銅合金からなる放熱板であって、特定の式(RA≦RB<RS、10≦RA/(LA・t)≦70、10≦RB/(LB・t)≦70、200≦RS/(LS・t)≦10000)を満たすように、並設する半導体基板の搭載部分と、その間の部分とで曲率半径に差を付けて反り付けしたことを特徴とする半導体基板用放熱板を開示している。
特許文献3では、半導体モジュールの放熱板に好適な銅合金であって、特にPbフリーはんだで接合した場合に放熱板の変形を抑制する効果の高い銅合金を開示している。質量%で、Ni:3〜15%、B:3%以下、Cu、Ni、Bを除く元素の合計:3%以下、残部Cu、かつ、Ni/B≦7の組成をもち、Cuマトリックス中のNi濃度が2.5質量%以下である銅合金である。特性としては、熱伝導率260W/m・K以上、熱膨張係数16.6×10−6 /K以下、0.2%耐力270N/mm2 以上、耐熱温度270℃以上を有する。この合金は、10%以上の冷間圧延が施された冷間圧延材に、400〜900℃の温度範囲で時効析出を伴う焼鈍を施してCuマトリックス中のNi濃度を2.5質量%以下とし、次いで5〜40%の仕上げ圧延を行う方法で製造される。
従来の銅或いは銅合金のベース板では、反り付け加工性、特に、反り付け加工後の寸法精度の公差のばらつきが大きく、使用時におけるはんだ接合部の信頼性に不安が見られていた。
本発明では、上述の欠点を解決し、反り付け加工性の良好な、使用時におけるはんだ接合部の信頼性を高めたベース板用の銅或いは銅合金板及びその製造方法を提供する。
本発明者らは、鋭意検討の結果、導電率が90%IACS以上のベース板用の銅或いは銅合金板は、後方散乱電子回折像システム付の走査型電子顕微鏡によるEBSD法にて表面の測定面積内の全ピクセルの方位を測定し、隣接するピクセル間の方位差が10°以上である境界を結晶粒界とみなした場合の全結晶粒における結晶粒内の全ピクセル間の平均方位差の平均値(GOS)が0.11〜3.62°であり、表面の{541}結晶面のX線回折強度(I1)と{521}結晶面のX線回折強度(I2)との比であるI1/I2が0.9〜7.0であり、ビッカース硬さ(HV)と後方散乱電子回折像システム付の走査型電子顕微鏡によるEBSD法にて表面の測定面積内の全ピクセルの方位を測定し、隣接するピクセル間の方位差が10°以上である境界を結晶粒界とみなした場合の結晶粒径(D)との比であるHV/Dが1〜150であると、良好な反り付け加工性を示すことを見出した。
更に、この良好な反り付け加工性を有するベース板用の銅或いは銅合金板は、溶解鋳造、熱間圧延、冷間圧延、酸洗処理、焼鈍、仕上げ冷間圧延をこの順で含む工程で製造され、圧延開始温度を900℃として複数回の熱間圧延を行い、熱間圧延後に1パス当たりの加工率を30〜60%として複数回の冷間圧延を行い、銅或いは銅合金の再結晶温度をT1℃とし、焼鈍温度をT2℃とした場合に、1.2×T1≦T2なる温度で時間を30〜300秒として連続焼鈍を行うことにより、製造されることも見出した。
更に、この良好な反り付け加工性を有するベース板用の銅或いは銅合金板は、溶解鋳造、熱間圧延、冷間圧延、酸洗処理、焼鈍、仕上げ冷間圧延をこの順で含む工程で製造され、圧延開始温度を900℃として複数回の熱間圧延を行い、熱間圧延後に1パス当たりの加工率を30〜60%として複数回の冷間圧延を行い、銅或いは銅合金の再結晶温度をT1℃とし、焼鈍温度をT2℃とした場合に、1.2×T1≦T2なる温度で時間を30〜300秒として連続焼鈍を行うことにより、製造されることも見出した。
即ち、本発明の反り付け加工性に優れたベース板用銅或いは銅合金板は、導電率が90%IACS以上の銅或いは銅合金からなり、後方散乱電子回折像システム付の走査型電子顕微鏡によるEBSD法にて表面の測定面積内の全ピクセルの方位を測定し、隣接するピクセル間の方位差が10°以上である境界を結晶粒界とみなした場合の全結晶粒における結晶粒内の全ピクセル間の平均方位差の平均値(GOS)が0.11〜3.62°であり、表面の{541}結晶面のX線回折強度(I1)と{521}結晶面のX線回折強度(I2)との比であるI1/I2が0.9〜7.0であり、ビッカース硬さ(HV)と後方散乱電子回折像システム付の走査型電子顕微鏡によるEBSD法にて表面の測定面積内の全ピクセルの方位を測定し、隣接するピクセル間の方位差が10°以上である境界を結晶粒界とみなした場合の結晶粒径(D)との比であるHV/Dが1〜150であることを特徴とする。
反り付け加工は、長方形状の銅或いは銅合金板のベース板にプレス加工にて、長辺側及び短辺側に所定の寸法量にてなされることが多く、その導電率が90%IACS以上のベース板の(1)後方散乱電子回折像システム付の走査型電子顕微鏡によるEBSD法にて表面の測定面積内の全ピクセルの方位を測定し、隣接するピクセル間の方位差が10°以上である境界を結晶粒界とみなした場合の、全結晶粒における結晶粒内の全ピクセル間の平均方位差の平均値(GOS)が0.11〜3.62°であり、(2)表面の{541}結晶面のX線回折強度(I1)と{521}結晶面のX線回折強度(I2)との比であるI1/I2が0.9〜7.0であり、(3)ビッカース硬さ(HV)と後方散乱電子回折像システム付の走査型電子顕微鏡によるEBSD法にて表面の測定面積内の全ピクセルの方位を測定し、隣接するピクセル間の方位差が10°以上である境界を結晶粒界とみなした場合の、結晶粒径(D)との比であるHV/Dが1〜150であることにより、反り付け加工後の寸法精度の公差のばらつきが小さくなり、使用時におけるはんだ接合部の信頼性を高めることができる。
上記の(1)〜(3)の条件のうち、何れか一つが外れても、反り付け加工後の寸法精度の公差のばらつきは小さくならない。
上記の(1)〜(3)の条件のうち、何れか一つが外れても、反り付け加工後の寸法精度の公差のばらつきは小さくならない。
更に、本発明の反り付け加工性に優れたベース板用銅或いは銅合金板は、前記結晶粒径(D)の結晶粒径分布図において、平均結晶粒径をD1とした時に、D1±0.5D1の範囲内の結晶粒径(D)の面積占有率が60%を超えることを特徴とする。
ベース板用の銅或いは銅合金板における、結晶粒径(D)の結晶粒径分布図において、平均結晶粒径をD1とした時に、D1±0.5D1の範囲内の結晶粒径(D)の面積占有率が60%を超えることにより、反り付け加工後の寸法精度の公差のばらつきを更に小さくすることができる。
ベース板用の銅或いは銅合金板における、結晶粒径(D)の結晶粒径分布図において、平均結晶粒径をD1とした時に、D1±0.5D1の範囲内の結晶粒径(D)の面積占有率が60%を超えることにより、反り付け加工後の寸法精度の公差のばらつきを更に小さくすることができる。
更に、本発明の反り付け加工性に優れたベース板用銅或いは銅合金板は、前記ベース板用銅或いは銅合金板の表面の表面粗さRaが0.005〜0.09μmであり、前記表面上にNi系めっきが施されたことを特徴とする。
ベース板用の銅或いは銅合金板における、表面の表面粗さRaが0.005〜0.09μmであることにより、その表面に良好なNi系めっきを施すことができ、使用時におけるはんだ接合部の信頼性が更に増加する。表面粗さRaが0.005μm未満では、効果は見られず、0.09μmを超えると、めっきの付着性や均質性が悪くなる。
ベース板用の銅或いは銅合金板における、表面の表面粗さRaが0.005〜0.09μmであることにより、その表面に良好なNi系めっきを施すことができ、使用時におけるはんだ接合部の信頼性が更に増加する。表面粗さRaが0.005μm未満では、効果は見られず、0.09μmを超えると、めっきの付着性や均質性が悪くなる。
更に、本発明の反り付け加工性に優れたベース板用銅或いは銅合金板は、前記ベース板用銅は、純度が99.96質量%以上である純銅からなることを特徴とする。
純度が99.96質量%以上である純銅、例えば、三菱伸銅(株)製合金名「OFC」は、導電率が高く、加工性も良好であり、本発明の反り付け加工性に優れたベース板用銅に好適である。
純度が99.96質量%以上である純銅、例えば、三菱伸銅(株)製合金名「OFC」は、導電率が高く、加工性も良好であり、本発明の反り付け加工性に優れたベース板用銅に好適である。
更に、本発明の反り付け加工性に優れたベース板用銅或いは銅合金板は、前記ベース板用銅合金は、Zr;0.015〜0.03質量%を含有し、残部がCuおよび不可避的不純物からなる組成を有することを特徴とする。
Zr;0.015〜0.03質量%を含有し、残部がCuおよび不可避的不純物からなる組成を有する銅合金板、例えば、三菱伸銅(株)製合金名「ZC」は、導電率が高く、純銅より高い強度を有しており、弾性係数が高く、本発明の反り付け加工性に優れたベース板用銅合金に好適である。
Zr;0.015〜0.03質量%を含有し、残部がCuおよび不可避的不純物からなる組成を有する銅合金板、例えば、三菱伸銅(株)製合金名「ZC」は、導電率が高く、純銅より高い強度を有しており、弾性係数が高く、本発明の反り付け加工性に優れたベース板用銅合金に好適である。
更に、本発明の反り付け加工性に優れたベース板用銅或いは銅合金板は、前記ベース板用銅は、Fe;0.05〜0.15質量%、P;0.015〜0.05質量%、Zn;0.01〜0.2質量%を含有し、残部がCuおよび不可避的不純物からなる組成を有することを特徴とする。
Fe;0.05〜0.15質量%、P;0.015〜0.05質量%、Zn;0.01〜0.2質量%を含有し、残部がCuおよび不可避的不純物からなる組成を有する銅合金板、例えば、三菱伸銅(株)製合金名「TAMAC4」は、導電率が高く、純銅より高い強度を有しており、耐熱性に優れており、本発明の反り付け加工性に優れたベース板用銅合金に好適である。
Fe;0.05〜0.15質量%、P;0.015〜0.05質量%、Zn;0.01〜0.2質量%を含有し、残部がCuおよび不可避的不純物からなる組成を有する銅合金板、例えば、三菱伸銅(株)製合金名「TAMAC4」は、導電率が高く、純銅より高い強度を有しており、耐熱性に優れており、本発明の反り付け加工性に優れたベース板用銅合金に好適である。
本発明の反り付け加工性に優れたベース板用銅或いは銅合金板の製造方法は、溶解鋳造、熱間圧延、冷間圧延、酸洗処理、焼鈍、仕上げ冷間圧延をこの順で含む工程で銅或いは銅合金板を製造するに際して、圧延開始温度を900℃以上として複数回の熱間圧延を行い、熱間圧延後に1パス当たりの加工率を30〜60%として複数回の冷間圧延を行い、前記銅或いは銅合金の再結晶温度をT1℃とし、焼鈍温度をT2℃とした場合に、1.2×T1≦T2なる温度で時間を30〜300秒として連続焼鈍を行うことを特徴とする。
熱間圧延、冷間圧延、焼鈍を上記の条件で実施することにより、結晶組織が微細化され、導電率が90%IACS以上のベース板の(1)後方散乱電子回折像システム付の走査型電子顕微鏡によるEBSD法にて表面の測定面積内の全ピクセルの方位を測定し、隣接するピクセル間の方位差が10°以上である境界を結晶粒界とみなした場合の、全結晶粒における結晶粒内の全ピクセル間の平均方位差の平均値(GOS)が0.11〜3.62°であり、(2)表面の{541}結晶面のX線回折強度(I1)と{521}結晶面のX線回折強度(I2)との比であるI1/I2が0.9〜7.0であり、(3)ビッカース硬さ(HV)と後方散乱電子回折像システム付の走査型電子顕微鏡によるEBSD法にて表面の測定面積内の全ピクセルの方位を測定し、隣接するピクセル間の方位差が10°以上である境界を結晶粒界とみなした場合の、結晶粒径(D)との比であるHV/Dが1〜150となり、反り付け加工後の寸法精度の公差のばらつきが小さくなり、使用時におけるはんだ接合部の信頼性が高まる。
熱間圧延、冷間圧延、焼鈍を上記の条件で実施することにより、結晶組織が微細化され、導電率が90%IACS以上のベース板の(1)後方散乱電子回折像システム付の走査型電子顕微鏡によるEBSD法にて表面の測定面積内の全ピクセルの方位を測定し、隣接するピクセル間の方位差が10°以上である境界を結晶粒界とみなした場合の、全結晶粒における結晶粒内の全ピクセル間の平均方位差の平均値(GOS)が0.11〜3.62°であり、(2)表面の{541}結晶面のX線回折強度(I1)と{521}結晶面のX線回折強度(I2)との比であるI1/I2が0.9〜7.0であり、(3)ビッカース硬さ(HV)と後方散乱電子回折像システム付の走査型電子顕微鏡によるEBSD法にて表面の測定面積内の全ピクセルの方位を測定し、隣接するピクセル間の方位差が10°以上である境界を結晶粒界とみなした場合の、結晶粒径(D)との比であるHV/Dが1〜150となり、反り付け加工後の寸法精度の公差のばらつきが小さくなり、使用時におけるはんだ接合部の信頼性が高まる。
本発明の反り付け加工性に優れたベース板用銅或いは銅合金板の製造方法は、前記酸洗処理時の機械研磨を表面粒度が#320〜#600の研磨ロールで実施することを特徴とする。
酸洗処理時の機械研磨を表面粒度が#320〜#600の研磨ロールで実施することにより、ベース板用銅或いは銅合金板の表面の表面粗さRaが0.005〜0.09μmとなり、その表面に良好なNi系めっきを施すことが可能となり、使用時におけるはんだ接合部の信頼性が更に増加する。
酸洗処理時の機械研磨を表面粒度が#320〜#600の研磨ロールで実施することにより、ベース板用銅或いは銅合金板の表面の表面粗さRaが0.005〜0.09μmとなり、その表面に良好なNi系めっきを施すことが可能となり、使用時におけるはんだ接合部の信頼性が更に増加する。
本発明により、反り付け加工性の良好な、使用時におけるはんだ接合部の信頼性を高めたベース板用の銅或いは銅合金板及びその製造方法が提供される。
以下、本発明のベース板用銅或いは銅合金板の一実施形態につき、図1を参照に説明する。
本発明の導電率が90%IACS以上のベース板用銅或いは銅合金板1は、X方向にdx、Y方向にdyの反り量を有している。
その材質としては、銅板であるなら、純度が99.96質量%以上である純銅からなることが好ましく、例えば、三菱伸銅(株)製合金名「OFC」は、導電率が高く、加工性も良く、本発明の反り付け加工性に優れたベース板用銅板に適している。また、銅合金板であるなら、(1)Zr;0.015〜0.03質量%を含有し、残部がCuおよび不可避的不純物からなる組成を有することが好ましく、例えば、三菱伸銅(株)製合金名「ZC」は、導電率が高く、純銅より高い強度を有しており、弾性係数が高く、本発明の反り付け加工性に優れたベース板用銅合金板に適している。また、他の銅合金として、(2)Fe;0.05〜0.15質量%、P;0.015〜0.05質量%、Zn;0.01〜0.2質量%を含有し、残部がCuおよび不可避的不純物からなる組成を有することが好ましく、例えば、三菱伸銅(株)製合金名「TAMAC4」は、導電率が高く、純銅より高い強度を有しており、耐熱性に優れているので、本発明の反り付け加工性に優れたベース板用銅合金板に適している。
本発明の導電率が90%IACS以上のベース板用銅或いは銅合金板1は、X方向にdx、Y方向にdyの反り量を有している。
その材質としては、銅板であるなら、純度が99.96質量%以上である純銅からなることが好ましく、例えば、三菱伸銅(株)製合金名「OFC」は、導電率が高く、加工性も良く、本発明の反り付け加工性に優れたベース板用銅板に適している。また、銅合金板であるなら、(1)Zr;0.015〜0.03質量%を含有し、残部がCuおよび不可避的不純物からなる組成を有することが好ましく、例えば、三菱伸銅(株)製合金名「ZC」は、導電率が高く、純銅より高い強度を有しており、弾性係数が高く、本発明の反り付け加工性に優れたベース板用銅合金板に適している。また、他の銅合金として、(2)Fe;0.05〜0.15質量%、P;0.015〜0.05質量%、Zn;0.01〜0.2質量%を含有し、残部がCuおよび不可避的不純物からなる組成を有することが好ましく、例えば、三菱伸銅(株)製合金名「TAMAC4」は、導電率が高く、純銅より高い強度を有しており、耐熱性に優れているので、本発明の反り付け加工性に優れたベース板用銅合金板に適している。
ベース板用銅或いは銅合金板1は、導電率が90%IACS以上であり、後方散乱電子回折像システム付の走査型電子顕微鏡によるEBSD法にて表面の測定面積内の全ピクセルの方位を測定し、隣接するピクセル間の方位差が10°以上である境界を結晶粒界とみなした場合の、全結晶粒における結晶粒内の全ピクセル間の平均方位差の平均値(GOS)が0.11〜3.62°であり、表面の{541}結晶面のX線回折強度(I1)と{521}結晶面のX線回折強度(I2)との比であるI1/I2が0.9〜7.0であり、ビッカース硬さ(HV)と後方散乱電子回折像システム付の走査型電子顕微鏡によるEBSD法にて表面の測定面積内の全ピクセルの方位を測定し、隣接するピクセル間の方位差が10°以上である境界を結晶粒界とみなした場合の、結晶粒径(D)との比であるHV/Dが1〜150である。
反り付け加工は、長方形状の銅或いは銅合金板のベース板にプレス加工にて、長辺側及び短辺側に所定の寸法量にてなされることが多く、その導電率が90%IACS以上のベース板の(1)後方散乱電子回折像システム付の走査型電子顕微鏡によるEBSD法にて表面の測定面積内の全ピクセルの方位を測定し、隣接するピクセル間の方位差が10°以上である境界を結晶粒界とみなした場合の、全結晶粒における結晶粒内の全ピクセル間の平均方位差の平均値(GOS)が0.11〜3.62°であり、(2)表面の{541}結晶面のX線回折強度(I1)と{521}結晶面のX線回折強度(I2)との比であるI1/I2が0.9〜7.0であり、(3)ビッカース硬さ(HV)と後方散乱電子回折像システム付の走査型電子顕微鏡によるEBSD法にて表面の測定面積内の全ピクセルの方位を測定し、隣接するピクセル間の方位差が10°以上である境界を結晶粒界とみなした場合の、結晶粒径(D)との比であるHV/Dが1〜150であることにより、反り付け加工後の寸法精度の公差のばらつきが小さくなり、使用時におけるはんだ接合部の信頼性を高めることができる。
上記の(1)〜(3)の条件のうち、何れか一つが外れても、反り付け加工後の寸法精度の公差のばらつきは小さくならない。
反り付け加工は、長方形状の銅或いは銅合金板のベース板にプレス加工にて、長辺側及び短辺側に所定の寸法量にてなされることが多く、その導電率が90%IACS以上のベース板の(1)後方散乱電子回折像システム付の走査型電子顕微鏡によるEBSD法にて表面の測定面積内の全ピクセルの方位を測定し、隣接するピクセル間の方位差が10°以上である境界を結晶粒界とみなした場合の、全結晶粒における結晶粒内の全ピクセル間の平均方位差の平均値(GOS)が0.11〜3.62°であり、(2)表面の{541}結晶面のX線回折強度(I1)と{521}結晶面のX線回折強度(I2)との比であるI1/I2が0.9〜7.0であり、(3)ビッカース硬さ(HV)と後方散乱電子回折像システム付の走査型電子顕微鏡によるEBSD法にて表面の測定面積内の全ピクセルの方位を測定し、隣接するピクセル間の方位差が10°以上である境界を結晶粒界とみなした場合の、結晶粒径(D)との比であるHV/Dが1〜150であることにより、反り付け加工後の寸法精度の公差のばらつきが小さくなり、使用時におけるはんだ接合部の信頼性を高めることができる。
上記の(1)〜(3)の条件のうち、何れか一つが外れても、反り付け加工後の寸法精度の公差のばらつきは小さくならない。
更に、図2に示すように、ベース板用銅或いは銅合金板1は、結晶粒径(D)の結晶粒径分布図において、平均結晶粒径をD1とした時に、D1±0.5D1の範囲内の結晶粒径(D)の面積占有率が60%を超えることを特徴とする。
ベース板用の銅或いは銅合金板における、図2の結晶粒径(D)の結晶粒径分布図において、平均結晶粒径をD1とした時に、D1±0.5D1の範囲内の結晶粒径(D)の面積占有率が60%を超えることにより、反り付け加工後の寸法精度の公差のばらつきを更に小さくすることができる。
また、ベース板用銅或いは銅合金板1は、その表面の表面粗さRaが0.005〜0.09μmであり、その板面上にNi系めっきが施されていても良い。表面の表面粗さRaが0.005〜0.09μmであることにより、その表面に良好な性状のNi系めっきを施すことができ、使用時におけるはんだ接合部の信頼性が更に増加する。表面粗さRaが0.005μm未満では、効果は見られず、0.09μmを超えると、めっき付着性や均質性が悪くなる。
ベース板用の銅或いは銅合金板における、図2の結晶粒径(D)の結晶粒径分布図において、平均結晶粒径をD1とした時に、D1±0.5D1の範囲内の結晶粒径(D)の面積占有率が60%を超えることにより、反り付け加工後の寸法精度の公差のばらつきを更に小さくすることができる。
また、ベース板用銅或いは銅合金板1は、その表面の表面粗さRaが0.005〜0.09μmであり、その板面上にNi系めっきが施されていても良い。表面の表面粗さRaが0.005〜0.09μmであることにより、その表面に良好な性状のNi系めっきを施すことができ、使用時におけるはんだ接合部の信頼性が更に増加する。表面粗さRaが0.005μm未満では、効果は見られず、0.09μmを超えると、めっき付着性や均質性が悪くなる。
次に、本発明のベース板用銅或いは銅合金板1の製造方法につき説明する。
ベース板用銅或いは銅合金板1は、溶解鋳造、熱間圧延、冷間圧延、酸洗処理、焼鈍、仕上げ冷間圧延をこの順で含む工程にて、熱間圧延開始温度を900℃以上として複数回の熱間圧延を行い、熱間圧延後に1パス当たりの加工率を30〜60%として複数回の冷間圧延を行い、この冷間圧延後の銅或いは銅合金の再結晶温度をT1℃とし、焼鈍温度をT2℃とした場合に、1.2×T1≦T2なる温度で時間を30〜300秒として連続焼鈍を行うことにより製造される。
熱間圧延、冷間圧延、焼鈍を上記の条件で実施することにより、導電率が90%IACS以上のベース板用銅或いは銅合金板1における、後方散乱電子回折像システム付の走査型電子顕微鏡によるEBSD法にて表面の測定面積内の全ピクセルの方位を測定し、隣接するピクセル間の方位差が10°以上である境界を結晶粒界とみなした場合の、全結晶粒における結晶粒内の全ピクセル間の平均方位差の平均値(GOS)が0.11〜3.62°となり、表面の{541}結晶面のX線回折強度(I1)と{521}結晶面のX線回折強度(I2)との比であるI1/I2が0.9〜7.0となり、ビッカース硬さ(HV)と後方散乱電子回折像システム付の走査型電子顕微鏡によるEBSD法にて表面の測定面積内の全ピクセルの方位を測定し、隣接するピクセル間の方位差が10°以上である境界を結晶粒界とみなした場合の、結晶粒径(D)との比であるHV/Dが1〜150となり、反り付け加工後の寸法精度の公差のばらつきが小さくなり、使用時におけるはんだ接合部の信頼性を高めることができる。
熱間圧延開始温度、複数回の熱間圧延、冷間圧延の条件の何れか一つが外れても、銅或いは銅合金板の結晶組織は、前述の様にはならない。
また、酸洗処理は、酸洗いと機械研磨とが施されるが、その時の機械研磨を表面粒度が#320〜#600の研磨ロールで実施することにより、表面の表面粗さRaが0.005〜0.09μmとなり、その表面に良好なNi系めっきを施すことができ、使用時におけるはんだ接合部の信頼性が更に増加する。
ベース板用銅或いは銅合金板1は、溶解鋳造、熱間圧延、冷間圧延、酸洗処理、焼鈍、仕上げ冷間圧延をこの順で含む工程にて、熱間圧延開始温度を900℃以上として複数回の熱間圧延を行い、熱間圧延後に1パス当たりの加工率を30〜60%として複数回の冷間圧延を行い、この冷間圧延後の銅或いは銅合金の再結晶温度をT1℃とし、焼鈍温度をT2℃とした場合に、1.2×T1≦T2なる温度で時間を30〜300秒として連続焼鈍を行うことにより製造される。
熱間圧延、冷間圧延、焼鈍を上記の条件で実施することにより、導電率が90%IACS以上のベース板用銅或いは銅合金板1における、後方散乱電子回折像システム付の走査型電子顕微鏡によるEBSD法にて表面の測定面積内の全ピクセルの方位を測定し、隣接するピクセル間の方位差が10°以上である境界を結晶粒界とみなした場合の、全結晶粒における結晶粒内の全ピクセル間の平均方位差の平均値(GOS)が0.11〜3.62°となり、表面の{541}結晶面のX線回折強度(I1)と{521}結晶面のX線回折強度(I2)との比であるI1/I2が0.9〜7.0となり、ビッカース硬さ(HV)と後方散乱電子回折像システム付の走査型電子顕微鏡によるEBSD法にて表面の測定面積内の全ピクセルの方位を測定し、隣接するピクセル間の方位差が10°以上である境界を結晶粒界とみなした場合の、結晶粒径(D)との比であるHV/Dが1〜150となり、反り付け加工後の寸法精度の公差のばらつきが小さくなり、使用時におけるはんだ接合部の信頼性を高めることができる。
熱間圧延開始温度、複数回の熱間圧延、冷間圧延の条件の何れか一つが外れても、銅或いは銅合金板の結晶組織は、前述の様にはならない。
また、酸洗処理は、酸洗いと機械研磨とが施されるが、その時の機械研磨を表面粒度が#320〜#600の研磨ロールで実施することにより、表面の表面粗さRaが0.005〜0.09μmとなり、その表面に良好なNi系めっきを施すことができ、使用時におけるはんだ接合部の信頼性が更に増加する。
銅素材として、三菱伸銅(株)製合金名「TC」(純度が99.9質量%以上であるタフピッチ銅)、三菱伸銅(株)製合金名「OFC」(純度が99.96質量%以上である純銅)、銅合金素材として、三菱伸銅(株)製合金名「ZC」(Zr;0.015〜0.03質量%を含有し、残部がCuおよび不可避的不純物)、「TAMAC4」(Fe;0.05〜0.15質量%、P;0.015〜0.05質量%、Zn;0.01〜0.2質量%を含有し、残部がCuおよび不可避的不純物)を使用し、溶解鋳造、表1に示す条件にて、熱間圧延、冷間圧延、酸洗処理、焼鈍、仕上げ冷間圧延をこの順で実施し、実施例1〜10、比較例1〜10の長さ100mm×幅40mm×板厚3mmのベース板用銅或いは銅合金板を作製した。
なお、冷間圧延後の各銅素材の再結晶温度は、タフピッチ銅が270℃、「OFC」が270℃、「ZC」が550℃、「TAMAC4」が520℃である。
なお、冷間圧延後の各銅素材の再結晶温度は、タフピッチ銅が270℃、「OFC」が270℃、「ZC」が550℃、「TAMAC4」が520℃である。
これらの試料につき、後方散乱電子回折像システム付の走査型電子顕微鏡によるEBSD法にて表面の測定面積内の全ピクセルの方位を測定し、隣接するピクセル間の方位差が10°以上である境界を結晶粒界とみなした場合の、全結晶粒における結晶粒内の全ピクセル間の平均方位差の平均値(GOS)、結晶粒径(D)、X線回折装置にて{541}結晶面のX線回折強度(I1)と{521}結晶面のX線回折強度(I2)、ビッカース硬さ(HV)、導電率を測定した。
全結晶粒における結晶粒内の全ピクセル間の平均方位差の平均値(GOS)は、次のようにして求めた。
前処理として、10mm×10mmの試料を10%硫酸に10分間浸漬した後、水洗、エアブローにより散水した後に、散水後の試料を日立ハイテクノロジーズ社製フラットミリング(イオンミリング)装置で、加速電圧5kV、入射角5°、照射時間1時間にて表面処理を施した。
次に、TSL社製EBSDシステム付きの日立ハイテクノロジーズ社製走査型電子顕微鏡S−3400Nでその試料表面を観察した。観察条件は、加速電圧25kV、測定面積150μm×150μmとした。
観察結果より、全結晶粒における結晶粒内の全ピクセル間の平均方位差の平均値は次の条件にて求めた。
ステップサイズ0.5μmにて、測定面積範囲内の全ピクセルの方位を測定し、隣接するピクセル間の方位差が10°以上である境界を結晶粒界とみなした。次に、結晶粒界で囲まれた個々の結晶粒の全てについて、結晶粒内の全ピクセル間の方位差の平均値(GOS:Grain Orientation Spread)を数1の式にて計算し、その全ての値の平均値を全結晶粒における結晶粒内の全ピクセル間の平均方位差とした。なお、2ピクセル以上が連結しているものを結晶粒とした。
全結晶粒における結晶粒内の全ピクセル間の平均方位差の平均値(GOS)は、次のようにして求めた。
前処理として、10mm×10mmの試料を10%硫酸に10分間浸漬した後、水洗、エアブローにより散水した後に、散水後の試料を日立ハイテクノロジーズ社製フラットミリング(イオンミリング)装置で、加速電圧5kV、入射角5°、照射時間1時間にて表面処理を施した。
次に、TSL社製EBSDシステム付きの日立ハイテクノロジーズ社製走査型電子顕微鏡S−3400Nでその試料表面を観察した。観察条件は、加速電圧25kV、測定面積150μm×150μmとした。
観察結果より、全結晶粒における結晶粒内の全ピクセル間の平均方位差の平均値は次の条件にて求めた。
ステップサイズ0.5μmにて、測定面積範囲内の全ピクセルの方位を測定し、隣接するピクセル間の方位差が10°以上である境界を結晶粒界とみなした。次に、結晶粒界で囲まれた個々の結晶粒の全てについて、結晶粒内の全ピクセル間の方位差の平均値(GOS:Grain Orientation Spread)を数1の式にて計算し、その全ての値の平均値を全結晶粒における結晶粒内の全ピクセル間の平均方位差とした。なお、2ピクセル以上が連結しているものを結晶粒とした。
上式において、i、jは結晶粒内のピクセルの番号を示す。
nは結晶粒内のピクセル数を示す。
αijはピクセルiとjの方位差を示す。
nは結晶粒内のピクセル数を示す。
αijはピクセルiとjの方位差を示す。
結晶粒径(D)は、次のようにして求めた。
前処理として、10mm×10mmの試料を10%硫酸に10分間浸漬した後、水洗、エアブローにより散水した後に、散水後の試料を日立ハイテクノロジーズ社製フラットミリング(イオンミリング)装置で、加速電圧5kV、入射角5°、照射時間1時間にて表面処理を施した。
次に、TSL社製EBSDシステム付きの日立ハイテクノロジーズ社製走査型電子顕微鏡S−3400Nでその試料表面を観察した。観察条件は、加速電圧25kV、測定面積150μm×150μmとした。
観察結果より、結晶粒径は次の条件にて求めた。
ステップサイズ0.5μmにて、測定面積範囲内の全ピクセルの方位を測定し、隣接するピクセル間の方位差が10°以上である境界を結晶粒界とみなし、各結晶の粒径(D)を測定し、更に、その結晶粒径分布図を求めた。
{541}結晶面のX線回折強度(I1)と{521}結晶面のX線回折強度(I2)は、次のようにして求めた。
銅合金板材の板面(圧延面)を#1500耐水ペーパーで研磨仕上げした試料を用意し、X線回折装置(XRD)を用いて、Mo−Kα線、管電圧20kV、管電流2mAの条件で、試料の研磨仕上げ面について{541}面のX線回折強度と{521}面のX線回折強度I{220}を測定した。
ビッカース硬さの測定は、マイクロビッカース硬度計にて、4.9N(0.5kgf)の加重を加えて行った。
導電率の測定は、JISH0505の導電率測定方法に従って測定した。
その結果を表2に示す。
更に、これらの試料につき、プレス加工にて、図1に示す様な長辺側X=100mm、短辺側Y=50mmの長方形で、長辺側に反り量目標値dx=+0.3mm、短辺側に反り量目標値dy=+0.15mmであるベース板を各々10枚作製し、そのdx、dyの寸法公差のばらつきを測定した。
反り量はダイヤルゲージにて測定した。
その結果を表2に示す。
前処理として、10mm×10mmの試料を10%硫酸に10分間浸漬した後、水洗、エアブローにより散水した後に、散水後の試料を日立ハイテクノロジーズ社製フラットミリング(イオンミリング)装置で、加速電圧5kV、入射角5°、照射時間1時間にて表面処理を施した。
次に、TSL社製EBSDシステム付きの日立ハイテクノロジーズ社製走査型電子顕微鏡S−3400Nでその試料表面を観察した。観察条件は、加速電圧25kV、測定面積150μm×150μmとした。
観察結果より、結晶粒径は次の条件にて求めた。
ステップサイズ0.5μmにて、測定面積範囲内の全ピクセルの方位を測定し、隣接するピクセル間の方位差が10°以上である境界を結晶粒界とみなし、各結晶の粒径(D)を測定し、更に、その結晶粒径分布図を求めた。
{541}結晶面のX線回折強度(I1)と{521}結晶面のX線回折強度(I2)は、次のようにして求めた。
銅合金板材の板面(圧延面)を#1500耐水ペーパーで研磨仕上げした試料を用意し、X線回折装置(XRD)を用いて、Mo−Kα線、管電圧20kV、管電流2mAの条件で、試料の研磨仕上げ面について{541}面のX線回折強度と{521}面のX線回折強度I{220}を測定した。
ビッカース硬さの測定は、マイクロビッカース硬度計にて、4.9N(0.5kgf)の加重を加えて行った。
導電率の測定は、JISH0505の導電率測定方法に従って測定した。
その結果を表2に示す。
更に、これらの試料につき、プレス加工にて、図1に示す様な長辺側X=100mm、短辺側Y=50mmの長方形で、長辺側に反り量目標値dx=+0.3mm、短辺側に反り量目標値dy=+0.15mmであるベース板を各々10枚作製し、そのdx、dyの寸法公差のばらつきを測定した。
反り量はダイヤルゲージにて測定した。
その結果を表2に示す。
これらの結果より、本発明のベース板用の銅或いは銅合金板は、反り付け加工後の寸法精度の公差のばらつきが小さく、使用時におけるはんだ接合部の信頼性が高いことがわかる。
また、実施例3、4と比較例3、4の試料につき、次のようにNiめっき密着性試験を行った。
試験材に前処理として2A×30秒の電解脱脂を施し、純水で洗浄し、次いで10% 硫酸を用いて10秒の酸洗を行い、純水で洗浄した。その後、2A×120秒の通電により厚さ1.5μmNiめっきを行った。めっき浴はスルファミン酸Ni浴を用い、純Ni板を試験材の表面に対向するように設置して行った。試験材は全体がめっき浴中に浸漬するようにした。めっき後の試験片を大気中300℃×5分の加熱処理に供した後、試験材の底辺側の端部から10mmの位置について切断・樹脂埋めを行い、断面観察(光学顕微鏡300倍)を行った。その結果、実施例3、4には、母材とめっき層との間に空隙が観察されず、比較例3、4には、母材とめっき層との間に空隙が観察された
この結果より、本発明のベース板用の銅或いは銅合金板は、その表面に良好なNi系めっきを施すことができ、使用時におけるはんだ接合部の信頼性が更に増加することがわかる。
また、実施例3、4と比較例3、4の試料につき、次のようにNiめっき密着性試験を行った。
試験材に前処理として2A×30秒の電解脱脂を施し、純水で洗浄し、次いで10% 硫酸を用いて10秒の酸洗を行い、純水で洗浄した。その後、2A×120秒の通電により厚さ1.5μmNiめっきを行った。めっき浴はスルファミン酸Ni浴を用い、純Ni板を試験材の表面に対向するように設置して行った。試験材は全体がめっき浴中に浸漬するようにした。めっき後の試験片を大気中300℃×5分の加熱処理に供した後、試験材の底辺側の端部から10mmの位置について切断・樹脂埋めを行い、断面観察(光学顕微鏡300倍)を行った。その結果、実施例3、4には、母材とめっき層との間に空隙が観察されず、比較例3、4には、母材とめっき層との間に空隙が観察された
この結果より、本発明のベース板用の銅或いは銅合金板は、その表面に良好なNi系めっきを施すことができ、使用時におけるはんだ接合部の信頼性が更に増加することがわかる。
以上、本発明の実施形態であるめっき付銅条材の製造方法について説明したが、本発明はこの記載に限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
1 ベース板用銅或いは銅合金板
dx X方向の反り
dy Y方向の反り
dx X方向の反り
dy Y方向の反り
Claims (8)
- 導電率が90%IACS以上の銅或いは銅合金からなり、後方散乱電子回折像システム付の走査型電子顕微鏡によるEBSD法にて表面の測定面積内の全ピクセルの方位を測定し、隣接するピクセル間の方位差が10°以上である境界を結晶粒界とみなした場合の全結晶粒における結晶粒内の全ピクセル間の平均方位差の平均値(GOS)が0.11〜3.62°であり、表面の{541}結晶面のX線回折強度(I1)と{521}結晶面のX線回折強度(I2)との比であるI1/I2が0.9〜7.0であり、ビッカース硬さ(HV)と後方散乱電子回折像システム付の走査型電子顕微鏡によるEBSD法にて表面の測定面積内の全ピクセルの方位を測定し、隣接するピクセル間の方位差が10°以上である境界を結晶粒界とみなした場合の結晶粒径(D)との比であるHV/Dが1〜150であることを特徴とする反り付け加工性に優れたベース板用銅或いは銅合金板。
- 前記結晶粒径(D)の結晶粒径分布図において、平均結晶粒径をD1とした時に、D1±0.5D1の範囲内の結晶粒径(D)の面積占有率が60%を超えることを特徴とする請求項1に記載の反り付け加工性に優れたベース板用銅或いは銅合金板。
- 前記ベース板用銅或いは銅合金板の表面の表面粗さRaが0.005〜0.09μmであり、前記表面上にNi系めっきが施されたことを特徴とする請求項1或いは2に記載の反り付け加工性に優れたベース板用銅或いは銅合金板。
- 前記ベース板用銅は、純度が99.96質量%以上である純銅からなることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の反り付け加工性に優れたベース板用銅或いは銅合金板。
- 前記ベース板用銅合金は、Zr;0.015〜0.03質量%を含有し、残部がCuおよび不可避的不純物からなる組成を有することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の反り付け加工性に優れたベース板用銅或いは銅合金板。
- 前記ベース板用銅合金は、Fe;0.05〜0.15質量%、P;0.015〜0.05質量%、Zn;0.01〜0.2質量%を含有し、残部がCuおよび不可避的不純物からなる組成を有することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の反り付け加工性に優れたベース板用銅或いは銅合金板。
- 請求項1〜請求項6の何れか1項に記載の銅合金板の製造方法であって、溶解鋳造、熱間圧延、冷間圧延、酸洗処理、焼鈍、仕上げ冷間圧延をこの順で含む工程で銅或いは銅合金板を製造するに際して、圧延開始温度を900℃以上として複数回の熱間圧延を行い、熱間圧延後に1パス当たりの加工率を30〜60%として複数回の冷間圧延を行い、前記銅或いは銅合金の再結晶温度をT1℃とし、焼鈍温度をT2℃とした場合に、1.2×T1≦T2なる温度で時間を30〜300秒として連続焼鈍を行うことを特徴とする反り付け加工性に優れたベース板用銅或いは銅合金板の製造方法。
- 前記酸洗処理時の機械研磨を表面粒度が#320〜#600の研磨ロールにて実施することを特徴とする請求項7に記載の反り付け加工性に優れたベース板用銅或いは銅合金板の製造方法。
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---|---|---|---|---|
JP2017132871A (ja) * | 2016-01-27 | 2017-08-03 | 日東電工株式会社 | 粘着剤組成物、粘着部材、光学部材、および電子部材 |
CN110072333A (zh) * | 2018-01-22 | 2019-07-30 | 捷客斯金属株式会社 | 柔性印刷基板用铜箔、使用其的覆铜层叠体、柔性印刷基板、和电子设备 |
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2012
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