以下、本発明の斜め印刷方法およびプリンタの一実施の形態について、図1から図26に基づいて説明する。なお、本実施の形態のプリンタ10は、インクジェット式のプリンタとなっている。このようなインクジェット式プリンタは、インクを吐出して印刷可能な装置であれば、いかなる吐出方法を採用した装置でも良い。また、例えばレーザ方式、昇華型熱転写方式、ドットインパクト方式等のインクジェット式以外のプリンタについても、本発明は適用可能である。
なお、以下の説明においては、下方側とは、プリンタ10が設置される側を指し、上方側とは、設置される側から離間する側を指す。また、後述するキャリッジ30が移動する方向を主走査方向、主走査方向に直交する方向であってレンズシート12が搬送される方向を副走査方向とする。また、レンズシート12が供給される側を給紙側(後端側)、レンズシート12が排出される側を排紙側(手前側)として説明する。
<レンズシートに関して>
最初に、印刷対象物であるレンズシート12について説明する。図1に示すように、レンズシート12は、表面に位置するレンチキュラーレンズ12Aと、このレンチキュラーレンズ12Aの裏面と接するインク吸収層12Bと、該レンズシート12の裏面に位置するインク透過層12Cとを具備している。これらのうち、レンチキュラーレンズ12Aは、一方向を長手とする複数のシリンドリカル凸レンズ(凸レンズ12A1)が、一定のピッチで並列配置された構成となっている。レンチキュラーレンズ12Aにおいては、それぞれの凸レンズ12A1を進行する光の焦点が、レンチキュラーレンズ12Aの裏面(インク吸収層12Bとの境界面Q)に位置するように、凸レンズ12A1の曲率が形成されている。
レンチキュラーレンズ12Aは、PET、PETG、APET、PP、PS、PVC、アクリル、UV樹脂などから作られる。インク吸収層12Bは、印刷面に相当し、この印刷面にインクが定着し印刷画像が形成されることになる。インク吸収層12Bは、レンチキュラーレンズ12Aに貼り合わせる専用紙、ロール状の紙等としても良い。また、レンズシート12には、インク透過層12Cはあってもなくてもよいが、そのインク透過層12Cがあることで、印刷後すぐに触ることができる。また、インク透過層12Cやインク吸収層12B以外に、透明フィルム層や接着層などの他の層があってもよい。なお、レンズシート12は、上述のインク吸収層12Bおよびインク透過層12Cを備えない構成を採用し、レンチキュラーレンズ12Aの裏面に直接、印刷をし、レンチキュラーレンズ12Aの裏面自体を印刷面としてもよい。
なお、本実施の形態では、レンチキュラーレンズ12Aにおける凸レンズ12A1の並びのピッチ(配設間隔)としては、後述するスケール81のラインパターンの並びのピッチの整数倍とするものがある。例えば、スケール81のラインパターンが1/180インチである場合、凸レンズ12A1のピッチは、10lpi(lens per inch;1インチ当たりの凸レンズ12A1の本数)、20lpi、30lpi、45lpi、60lpi、90lpi、180lpi(180dpiのパターンピッチのラインパターンを有するスケール81と比較して、1〜18の比を有するピッチ)とするものがある。しかしながら、凸レンズ12A1のピッチは、該例示には限られず、例えば、100lpi、120lpi、130lpi、のように、種々変更するようにしても良い。また、レンズシート12の凸レンズ12A1のピッチは、製造誤差等によって、通常は、上述のような正確なピッチとはならず、若干ずれたものとなっている。
また、インク透過層12Cは、ノズルから吐出されたインク滴が最初に付着する部分であり、該付着したインクが透過していく部分である。このインク透過層12Cは、例えば酸化チタン、シリカゲル、PMMA(メタクリル樹脂)、バインダ樹脂、硫酸バリウム、ガラスファイバ、プラスチックファイバ等を材料としたものとして形成されている。また、インク吸収層12Bは、インク透過層12Cを透過したインクを吸収および/または固着させる部位である。このインク吸収層12Bは、例えばPVA(ポリビニルアルコール)等の親水性ポリマー樹脂、カチオン化合物、シリカ等の微粒子等を材料としたものとして形成されている。なお、インク吸収層12Bとインク透過層12Cのいずれか一方は、光を通す非透明な部材とされ、他方は透明な部材とされているが、共に白色で光を通す部材としたり、共に透明な部材としたりしても良い。また、必要により、共に、光を通さない部材とすることもできる。
さらに、レンチキュラーレンズ12Aの切断面は鋭利になっているので、扱う人の手や指を切る危険があるので、角をとっておくことが望ましい。すなわち、図3(A)に示すように、シート端12Eが交わる部分13を丸くしたり(円弧状にしたり)、図3(B)に示すように、シート端12E部分であって、第1の面となる表側に丸み部分14や第2の面となる裏側に同様な丸み部分15を設けるのが好ましい。なお、丸みを設ける代わりに、テーパーである斜面を設けても良い。また、丸みを設ける部分は、レンチキュラーレンズ12Aの部分に設けるのが好ましいが、第1や第2の面の少なくとも一方側がまるみ形成されまたはテーパー状とされていれば、手を切る危険は減少する。
また手を切る危険性を避ける別な方法として、レンズシート12を、レンチキュラーレンズ12A、透明フィルム、インク吸収層12B、インク透過層12Cの順で構成し、レンチキュラーレンズ12Aより透明フィルムのほうを若干大きめにする方法も採用できる。
また、図2、図3に示すように、本実施の形態におけるレンズシート12は、その外観が長方形または正方形の矩形状となっていると共に、該矩形状の外観を構成するレンズシート12のシート端12Et(このシート端12Etは、後述するように、印刷時の副走査方向と平行となるシート端で、以下では、適宜、副走査方向シート端という。)が、凸レンズ12A1の長手方向(遷移方向に相当)に対して傾斜する状態に設けられている。すなわち、凸レンズ12A1の長手方向は、矩形状のレンズシート12の外枠(各シート端12E)に対して、平行または垂直ではなく、傾斜する状態に設けられている。なお、副走査方向シート端は、印刷開始側のシート端12Etと、印刷終了側のシート端12Eeの2つが存在している。また、シート端12Eには、上述の2つの他に、シート端12Et,12Eeをつなぐように、前後方向となる位置に、シート端12Em、12Euが存在している。これら4つのシート端12Et,12Ee,12Em,12Euによって、長方形または正方形の外形が形成されている。
なお、凸レンズ12A1のシート端12Et、12Eeに対する傾斜角度θは、本実施の形態では、10度程度となるように設けられている。しかしながら、傾斜角度θは、10度に限られるものではなく、5度〜15度の範囲内であれば、視差に対応する視差画像の目視性が良好となる。また、傾きをこの範囲とすると、立体印刷向きとなり、そのレンズシート12を90度傾けて観測する場合は、モーション印刷や変り絵印刷などの変化系印刷向きとなる。なお、シート端12Etは、上述したように、レンズシート12の主走査方向(印刷方向)における印刷が開始される側のシート端である。
<プリンタの全体的な構成について>
図4他に示すように、プリンタ10は、キャリッジモータ(CRモータ22)によってキャリッジ30を主走査方向に往復動させるキャリッジ機構20、PFモータ41(紙送りモータに対応)によってレンズシート12を搬送する用紙搬送機構40等があり、その他、図4に示す制御部100が存在する。
ここで、キャリッジ機構20の詳細について説明する。キャリッジ機構20は、図4および図5他に示すように、キャリッジ30を具備している。また、キャリッジ機構20は、キャリッジ30を摺動可能に保持するキャリッジ軸21と、キャリッジモータ(CRモータ22)と、このCRモータ22に取り付けられている歯車プーリ23と、無端のベルト24と、歯車プーリ23との間にこの無端のベルト24を張設する従動プーリ25と、リニアエンコーダ80と、を備えている。なお、キャリッジ機構20を揺動させて、主走査方向を副走査方向(=レンズシート12の搬送方向)に対して斜めとする揺動機構を加えるようにしても良い。
図5等に示すように、プラテン50に対向する状態で、キャリッジ30が設けられている。キャリッジ30には、図4等に示すように、各色のインクカートリッジ31が着脱可能に搭載されている。また、キャリッジ30の下部には、印刷ヘッド32が設けられている。図6に示すように、印刷ヘッド32には、ノズル33aがレンズシート12の搬送方向(副走査方向)に列状に配置され、それぞれの色のインクに対応したノズル列33を形成している。なお、本実施の形態では、ノズル列33は、例えば180個のノズル33aから構成されており、このうち、180番目のノズル33aが給紙側、1番目のノズル33aが排紙側に位置している。
また、キャリッジ30の下部に設けられ、各インクに対応づけられたノズル列33には、ノズル33a毎に、ピエゾ素子(不図示)が配置されている。このピエゾ素子の作動により、インク通路の端部にあるノズル33aからインク滴を吐出することが可能となっている。なお、印刷ヘッド32は、ピエゾ素子を用いたピエゾ駆動方式に限られず、例えば、インクをヒータで加熱し、発生する泡の力を利用するヒータ方式、磁歪素子を用いる磁歪方式、静電気力を利用した静電方式、ミストを電界で制御するミスト方式等、その他の方式を用いるようにしても良い。
また、図5等に示すように、プリンタ10は、用紙搬送機構40を具備している。用紙搬送機構40は、レンズシート12等を搬送するためのPFモータ41(図4参照)、および普通紙等の給紙に対応する給紙ローラ42を具備している。また、給紙ローラ42よりも排紙側には、レンズシート12を搬送および/または挟持するためのPFローラ対43が設けられている。なお、PFローラ対43のうち、PF駆動ローラ43aは、PFモータ41からの駆動力が伝達され、レンズシート12の1ステップずつの搬送を可能としている。
また、PFローラ対43の排紙側には、プラテン50および上述の印刷ヘッド32が上下に対向する様に配設されている。プラテン50は、PFローラ対43によって印刷ヘッド32の下へ搬送されてくるレンズシート12を、下方側から支持する。また、プラテン50よりも排紙側には、上述のPFローラ対43と同様の、排紙ローラ対44が設けられている。この排紙ローラ対44のうち、排紙駆動ローラ44aには、PF駆動ローラ43aと共に、PFモータ41からの駆動力が伝達される。
また、プリンタ10のうち、排紙側とは逆の後端側かつ給紙ローラ42の下方側には、開口部45が設けられている。開口部45は、レンズシート12等の折り曲げ困難な印刷対象物を、プリンタ10の後端側で通過させるための開口部分である。なお、レンズシート12は、単体で開口部45を通過する以外に、トレイ等に載置された状態で通過するようにしても良い。
また、図1および図8等に示すように、キャリッジ30の下面とプラテン50の間の部位には、レンズシート12における凸レンズ12A1のレンズピッチ(またはレンズ位置)を検出する、レンズ検出手段としてのレンズ検出センサ60が配置されている。レンズ検出センサ60は、光の投受光方式(透過方式)のセンサであって、図1および図8等に示すように、発光部61と、受光部62とを有している。これらうち、発光部61は、搬送されるレンズシート12よりもプラテン50側(下方側)に設けられている。また、受光部62は、搬送されるレンズシート12よりもキャリッジ30側(上方側)に設けられている。なお、発光部61が設けられる部位は、プラテン50には限られず、その他の固定的な部位に設けるようにしても良く、また、プラテン50の前端側に設けるようにしても良い。このように、発光部61をプラテン50の後端側に設けることにより、後述する発光部61と受光部62とが対向することとなる。
これらのうち、発光部61は、多数の発光ダイオード(LED;light emitting diode)から構成されている。なお、LEDとしては、可視光または赤外光等の種々の波長の光を発するものがあるが、眩しさを抑える場合、赤外光を発する赤外LEDを用いるのが好ましい。また、発光部61は、プラテン50の後端側に存在する凹陥部51に設けられている。凹陥部51は、プラテン50の他の部分よりも窪んでいる部分である。この凹陥部51は、光源群611(光源612)が拡散板613に対して一定の距離だけ離間可能となるように、一定以上の深さ寸法を有する状態に設けられている。
また、上述のように、光源群611は、多数の光源612が主走査方向に並べられている。また、光源612は、所定の間隔毎に配置されていると共に、光源612の指向性を考慮して、レンズシート12に対して一定の間隔だけ離間する状態で配置されている。それにより、光源612から出射された光は、拡散板613に対して、若干の広がりを有した状態で照射される。また、拡散板613は、光源612から出射された光の進行方向を種々変更する。それにより、拡散板613を通過した光は、コントラストの均一化が図られた状態で、レンズシート12に向かって出射される。
なお、本実施の形態では、光源612が並べられた光源群611は、レンズシート12の規定の幅よりも大きくなるように設けられている。そのため、レンズシート12に対して入射される光のコントラストに、大きな差異が生じないように設けられている。また、光のコントラストを一層低減したい場合には、光源群611を構成する光源612の配置を変更して、多数の光源612を千鳥状となるように配置するようにしても良い。
また、受光部62は、例えば図6示すように、キャリッジ30の下面に取り付けられていて、しかも、主走査方向において、例えばホームポジションから離間する部位、かつ副走査方向において給紙側に取り付けられている。しかしながら、受光部62の取付位置は、かかる部位には限られず、キャリッジ30の下面のうち、例えば主走査方向の中央部に取り付けられる構成としても良い。
本実施の形態では、受光部62は、基体部621、受光素子623およびスリット板624を有している。このうち、基体部621は、受光素子623を取り付ける部分であり、該受光素子623を取り付ける収納部622を有している。この収納部622は、四方が板状部材で囲まれる状態となっている。そして、板状部材で囲まれた収納部622に受光素子623が取り付けられ、下面側のみが開放している。それによって、一定の拡散光の受光を防止するように構成されている。
また、受光素子623は、例えばフォトトランジスタ、フォトダイオード、フォトIC等のような、受光した光を電気信号に変換することが可能な素子である。また、収納部622の下面側には、スリット板624が取り付けられている。このスリット板624には、光の通過を許容するスリット624aが形成されていて、該スリット624aを介して所定の方向の光(図1においては光軸Lに沿う方向の光)の受光を許容する構成となっている。
なお、スリット624aの幅寸法は、凸レンズ12A1のレンズ幅の1/2以下であることが望ましい。しかしながら、スリット624aの幅寸法が狭すぎる場合、プラテン50とキャリッジ30との間のギャップ調整がシビアになり、良好な検出が行えなくなる虞がある。このため、スリット624aの幅寸法は、一定の寸法値以上とする必要がある。また、スリット板624のうち、スリット624a以外の部分に照射された光は、該スリット板624によって遮断される。かかる構成により、光軸Lに沿う方向以外の拡散光が受光素子623で受光されるのが防止されている。
また、上述のようなスリット板624を設けない構成を採用しても良い。この場合には、受光素子623におけるレンズピッチの検出精度は悪化するものの、各凸レンズ12A1の有する集光作用等により、レンズシート12のレンズピッチの検出は可能である。
また、本実施の形態では、受光部62は、レンズシート12の搬送状態において、該レンズシート12に接触しないものの、このレンズシート12に対して搬送性を悪化させない程度に近接する配置となっている。それにより、発光部61から出射された光は、境界面Qのうち各凸レンズ12A1の曲率中心を焦点として拡散するが、光はさほど拡散しない状態で受光部62に入射される。
なお、発光部61が、図1に示すような直下方式を採用する場合、その構成は、発光ダイオードを多数並べるものには限られず、主走査方向を長手とするライン状光源を用いるようにしても良い。ライン状光源としては、具体的には、陰極蛍光ランプ(CFL;Cathode Fluorescent Lamp)、冷陰極蛍光ランプ(CCFL;Cold Cathode Fluorescent Lamp)またはエレクトロルミネセンス(EL;Electro Luminescence)を用いることが可能である。また、発光部61は、その他、可視光または赤外光のようなレーザ光を生じさせることが可能なレーザ発振器、ランプ等を用いるようにしても良い。
また、発光部としては、直下方式を採用せずに、エッジライト方式の構成を採用するようにしても良い。この場合、発光部は、主走査方向の端部に配置される光源と、光源の光を主走査方向側に向けて反射するリフレクタと、光が内部を進行すると共に主走査方向を長手とする導光板と、導光板の下面側、側面側および導光板の長手方向の他端側に取り付けられ光を反射する反射部材と、上面側に向かって出射される光を拡散させる拡散フィルムと、導光板の下面に配置され光を拡散させる反射ドットと、を有するものとするのが好ましい。
また、レンズシート12とノズル33aとの間の距離PGを測定すべく、キャリッジ30の下面には、レンズ検出センサ60以外に、ギャップ検出センサ70が存在するのが好ましい。図9は、距離PGを検出するギャップ検出センサ70の説明図である。図9に示すように、ギャップ検出センサ70は、発光部71と、2つの受光部(第1受光部72a及び第2受光部72b)とを有する。発光部71は、発光ダイオードを有し、レンズシート12に光を照射する。第1受光部72aおよび第2受光部72bは、受光した光量に応じた電気信号を出力する受光素子をそれぞれ有する。なお、第2受光部72bは、第1受光部72aと比較して、発光部71から遠い位置に設けられている。
発光部71から発せられた光は、レンズシート12に照射されると共に、反射される。反射された光は、上述の受光素子に入射され、この受光素子において入射した光量に応じた電気信号に変換される。ここで、距離PGが小さい場合、レンズシート12によって反射された光は、主に第1受光部72aに入射されるが、第2受光部72bには拡散光しか入射されない。したがって、第1受光部72aの出力信号は、第2受光部72bの出力信号よりも大きくなる。
一方、距離PGが大きい場合、反射された光は、主に第2受光部72bに入射され、第1受光部72bには拡散光しか入射されない。したがって、第2受光部72bの出力信号は、第1受光部72aの出力信号よりも大きくなる。このため、第1受光部72aと第2受光部72bの出力信号の比と距離PGとの関係を予め求めておけば、該出力信号の比に基づいて、レンズシート12等に対応する距離PGを検出することが可能である。この場合、受光部72a,72bの出力信号の比と距離PGとの関係に関する情報をテーブルとしてROM102や不揮発性メモリ104に記憶しておくのが良い。
このような出力信号の検出を、キャリッジ30を主走査方向へ駆動させつつ行う。この駆動に際して、後述するリニアエンコーダ80の位置検出と対応させることにより、レンズシート12の主走査方向における距離PGを検出することが可能となる。
なお、ギャップ検出センサ70は、上述のレンズ検出センサ60と兼用可能である。この場合、発光部61の光軸が傾斜するように配置し、距離PGに応じて第1受光部72aと第2受光部72bとの間における出力信号の比が変化するようにすれば、ギャップ検出センサ70とレンズ検出センサ60とを兼用させることが可能となる。
また、図4等に示すように、キャリッジ機構20には、位置検出手段に対応するリニアエンコーダ80が設けられている。リニアエンコーダ80は、黒色の印刷部分と光を透過する透明部分とからなるラインパターンが繰り返されるスケール81と、スケール81に向けて光を出力すると共に、該スケール81から反射される光を、電気的な信号(エンコーダ信号;以下、ENC信号とする。)に変換して制御部100に送信するリニアセンサ82と、を有している。
ここで、本実施の形態においては、キャリッジ機構20には、支持軸に対応するキャリッジ軸21を揺動させるための揺動機構が設けられていないが、揺動機構を設けるようにしても良い。すなわち、印刷ヘッド32そのものを図18のように傾斜させながら、かつ副走査方向に対して90度を超える角度を持つ方向に駆動させたり、図19に示すように、印刷ヘッド32のみを傾斜させて駆動するようにしても良い。
<信号形成部の構成および信号処理の概要について>
次に、信号形成部90の構成について説明する。図10に示すように、信号形成部90は、フィルタ91と、アンプ(AMP)92と、2値化処理部93とを具備している。これらのうち、フィルタ91は、信号線94の一端側と接続されている。信号線94の他端側は、上述した受光部62(受光素子623)に接続されている。このため、受光部62で発生したアナログ信号は、この信号線94を介してフィルタ91に伝達されるが、フィルタ91では、アナログ信号(図11参照)のうち所定の帯域以外の周波数成分が除去される。それにより、図11に示すようなデジタル信号(レンズ信号;検出信号に相当)が生成される。
また、フィルタ91を通過した信号は、AMP92に入力され、所定の電圧等(一例として、40倍等)に増幅される。かかる増幅が為された信号は、続いて2値化処理部93に入力され、該入力された信号を、しきい値を超えたか否かで、HレベルまたはLレベルの2値の信号(2値化信号)とする。この状態で、後述する制御部100に2値化信号を入力し、Hレベルの信号および/またはLレベルの信号の切り替わりタイミングを検出することにより、レンズシート12のレンズピッチが計測可能となる。
<プリンタの制御部について>
次に、制御部100について説明する。制御部100は、各種の制御を行う部分であって、制御手段および判断部に対応する部分であり、レンズ検出センサ60、レンズシート検出のためのレンズシート検出センサ63(図6参照)、ギャップ検出センサ70、リニアセンサ82、後述するロータリエンコーダ132、プリンタ10の電源をオン/オフする電源SW等)の各出力信号が入力される。図3に示すように、制御部100は、CPU101、各種のプログラムを記憶するROM102、データを一時的に蓄えるRAM103、不揮発性メモリ(PROM)104、ASIC105、ヘッドドライバ106等を具備していて、これらがバス107を介して接続されている。そして、これらの協働、または特有の処理を行う回路を追加する等によって、以下に述べる処理フローが実現される。
なお、以下の図12、図14および図16における処理フローを実行する構成は、ハードウエア的に実現されても良く、またソフトウエア的に実現されても良い。
また、図4に示すように、プリンタ10は、制御部100と接続されるインターフェース131を具備している。このインターフェース131を介して、プリンタ10は、コンピュータ130に接続されている。また、プリンタ10は、ロータリエンコーダ132を具備している。ロータリエンコーダ132は、上述のリニアエンコーダ80とは異なり、スケール132aが円盤状とされている。しかしながら、それ以外の構成は、リニアエンコーダ80と同様となっている。
<印刷を行うための基本的な処理フローについて>
以上のような構成のプリンタ10を用いて、レンズシート12に対して印刷を行うための基本的な処理フローを、図12に基づいて説明する。
プリンタ10の電源オン状態で、最初にレンズシート12の凸レンズ12A1が、傾斜しているか否かを判断する(ステップS10;情報獲得工程に対応)。この判断を行うことにより、後述する印刷データが、凸レンズ12A1の傾斜に対応させて形成すべきか(凸レンズ12A1の長手が副走査方向に対して傾斜しているか)、または通常のレンズシート12への印刷のように凸レンズ12A1の長手が副走査方向に沿うかが定まる。この判断において、Yesの場合(凸レンズ12A1の長手が傾斜している場合)、ステップS20に進行する。また、Noの場合(凸レンズ12A1の長手が副走査方向に沿っている場合)、後述するステップS50に進行する。
上述のステップS10においてYesの場合、続いて、傾斜角度(図2における傾斜角度θ)がどれぐらいか、算出する処理を行う(ステップS20)。この算出は、例えば図12に示すように、地点Aと、この地点Aに対して副走査方向に沿って所定距離だけ離間している地点Bとの間の距離Qを計測する。また、副走査方向に垂直な方向、すなわち凸レンズ12A1の横断方向に沿う直線上の地点Aに対する右隣または左隣のいずれか(図13(A)では右隣)に存在する谷部分までの距離ALと、上述の横断方向上の地点Bに対する右隣または左隣のいずれか(図13(A)では右隣)に存在する谷部分までの距離BLとを計測する。そして、これら距離AL,BLおよび距離Qの計測が終了した後に、続いて、傾斜角度θの計算を行う。「θ」を度で表す場合、傾斜角度θは、θ=ATAN(Δ/Q)×180/πによって求められる。なお、Δは、距離BLと距離ALとの間の差分である。以上のようにして、凸レンズ12A1の傾斜角度θが算出される。
上述の傾斜角度θの算出の後に、傾斜角度θの情報を反映させて、印刷すべき印刷データを作成する処理を行う(ステップS30;以下、ステップS50まで印刷工程に対応)。この処理により、印刷データが作成されると、印刷を実行する(ステップS40)。また、上述のステップS10の判断において、Noの場合(凸レンズ12A1の長手が副走査方向に沿っている場合)、凸レンズ12A1が傾斜していない状態の、印刷データを作成する処理を行う(ステップS50)。
なお、ステップS50においては、レンズ解像度(凸レンズ12A1の本数)と、印刷解像度、印刷サイズに応じて、解像度変換が為され複数枚の原画像データが合成された後の目視画像データにおける画像サイズの計算(通常は、原画像データの圧縮となる)が行われる。次に、個々の凸レンズ12A1内の画素数Rを求める。画素数Rは、個々の凸レンズ12A1内に打てるドット数に対応する。次に、個々の凸レンズ12A1内における、1画像データ当たりの画素数(ドット数)Lを求める。この画素数Lは、ドット数Lを、原画像データの枚数で除算することにより、求められる。以上のようにして、解像度変換がなされ、かかる解像度変換を、原画像データのそれぞれに対して行う。そして、定められている順番(目視角度順)に、解像度変換後の細分化された圧縮原画像データを並べて配置する。それにより、1つの凸レンズ12A1内に配置される、短冊状の細分化画像データが作成される。
また、作成された細分化画像データを、凸レンズ12A1の短手方向の並びの順に配置することにより、複数の原画像データの情報が反映された、目視画像データが作成される。なお、この後に、色変換処理を実行し、目視画像データのR,G,B系で表現される色成分が、プリンタ10で印刷および/または表現可能なシアン(C),マゼンタ(M),イエロー(Y),ブラック(K)系の色成分に変換される。さらに、色変換が為された目視画像データに対して、ハーフトーン処理が行われる。ここで、ハーフトーン処理とは、原画像データの階調値(本実施の形態では256階調)をプリンタ10が画素毎に表現可能な階調値に減色する処理をいう。ここで、「減色」とは、色を表現する階調の数を減らすことをいう。なお、具体的には、記録率テーブルを参照して、例えば、「ドットの形成なし」、「小ドットの形成」、「中ドットの形成」、および「大ドットの形成」の4階調への減色を行う。なお、このハーフトーン処理においては、誤差拡散法、ディザ法といった手法を用いて、ドットの分散処理が行われる。
さらに、ハーフトーン処理が為された画像データから、印刷データを生成する処理が実行される。ここで、印刷データとは、各主走査時のドットの記録状態を示すラスタデータと、副走査送り量を示すデータとを含むデータであり、分散テーブルの分散データを参照して作成される。なお、印刷データは、通常の印刷データに対し、鏡像反転させられたデータとなっている。以上が、プリンタ10による印刷を行う際の、基本的な処理フローである。
<凸レンズ12A1が傾斜している場合の印刷データ作成の処理フローについて>
続いて、上述のステップS10の判断において、凸レンズ12A1が傾斜していると判断された場合(Yesの場合)に、ステップS30にて行う印刷データを作成するための処理について、図14に基づいて説明する。
最初に、作成される印刷データが、連続画素配置に対応するか、または離間画素配置に対応するかを判断する(ステップS301)。ここで、連続画素配置とは、図15に示すように、各視差に対応する、原画像データを圧縮して得られる圧縮原画像データを構成する画素データが、凸レンズ12A1の長手方向に沿って連続的(列状)に配置される状態をいう。これに対して、離間画素配置とは、図16、図17に示すように、各視差に対応する上述の圧縮原画像データを構成する画素が、凸レンズ12A1の長手方向に沿って配置されるものの、連続的(列状)ではなく、他の画素データを挟んで離間した状態で配置される状態をいう。なお、印刷データが連続画素配置に対応させるか、または離間画素配置に対応させるかは、原画像データの数(視差数)によって判断するようにしても良い。しかしながら、例えば画質等、他の要素によって判断するようにしても良い。
図15に示す連続画素配置では、4つの画像1,2,3,4の画素は1次元的に配置されている。すなわち、画像1の画素1a1、画像2の画素2a1、画像3の画素3a1、画像4の画素4a1が主走査方向に、一列に並んで配置されると共に、その後の画素1a2,2a2,3a2,4a2,・・・も同じ関係を保ちながら副走査方向に伸びている。画素1a系で1つの凸レンズ12A1中の1つの部分視差画像を形成し、画素1a系、1b系、・・・で、1つの細分化視差画像を形成している。
図16に示す離間画素配置では、6つの画像1,2,3,4,5,6の画素は2次元的に配置されている。すなわち、画像1の画素1a1の右隣に画像3の画素3a1、その右隣に画像5の画素5a1を配置し、画像1の画素1a1の副走査方向(図16では、下側)に画像6の画素6a1、その右隣に画像2の画素2a1、その右隣に画像4の画素4a1が配置されている。この場合も、画素1a系で1つの凸レンズ12A1中の1つの部分視差画像を形成し、画素1a系、1b系、・・・で、1つの細分化視差画像を形成している。図では、画素3a系の部分視差画像を網掛けで示している。ここで、太い点線の小さい四角部分12Bは、視差画像の配置領域(=視差領域)を示し、太い実線部分12Cは、視差数分の視差領域(以下、視差域と呼ぶ。)を示し、斜めに伸びる細い点線部分12Dは、視差境界のイメージラインを示している。また、斜めに伸びる実線部分12Fは、凸レンズ12A1の物理的境界を示している。
図17に示す離間画素配置も、6つの画像1,2,3,4,5,6の画素は2次元的に配置されている。すなわち、視差数は両方とも6視差である。図16は、縦2×横3の配列であり、図17は、縦3×横2の配列である。図16と図17とでは画像のクロストークの影響が異なる。例えば、図16中の網掛け部分である画素3a系に注目した場合、この画素3a系の部分視差画像を見ようとすると、部分的に画素2a系と画素4a系の画素が見えてしまうことがある。一方、図17では、さらに、画素1a系、2a系、4a系もしくは画素2a系,4a系,5a系の画素が見えることになる。このように、視差数が増えれば、配列の違いによるクロストークの影響が顕著にでてくる。画像のクロストークは、凸レンズ12A1の幅側(横側)に多くの視差を割り当てるほど、少なくなる傾向がある。画像のクロストークが少なくなるほど、画像の切り替わりが明確になる一方で、画像の滑らかさが消えていく。
なお、図には示していないが、6視差の2次元配列の候補として、縦1×横6や縦6×横1もあり得る。これらサイズは、正確には連続画素配置であり1次元配列(1次元配置)であるが、プリンタ10が用意する2次元配置の中の1つとしても良い。
ここで、2次元配置の方が、図15に示す連続画素配置よりも、目視可能(配置可能)な原画像データの枚数が多くなる。すなわち、視差数を多くしやすいものとなる。これは2次元配置の利点である。なお、離間画素配置や連続画素配置においては、共に目視する際のレンズシート12の回転は、基準方向L(この方向が、基準軸方向および回転軸方向に相当)を基準としていて、ユーザの目も、基準方向Lを基準としている。
なお、2次元配置では、レンズシート12を連続的に回転させる場合、目視される画素は、例えばマトリクス状の配置の画素が、連続的に切り替えられる。また、本実施の形態では、ユーザがレンズシート12を通して目視する絵柄は、立体画像に対応している。そのため、各画素は近似しており、上述のような2次元配置を採用しても、ユーザは良好に目視可能となっている。なお、目視される画像としては、立体画像ではなく、見る角度を変えて動く画像(アニメーション)としても、同様に、ユーザは良好に目視可能となる。これは、図16に示すように、2次元配置においても、例えば画素1a,1b,・・・と画素2a,2b,・・・と画素3a,3b,・・・等は、共に、基準方向Lに対して同一の角度となるためである。
上述のステップS301の判断において、Yesの場合(連続画素配置に対応する場合)、続いて各圧縮原画像データの回転処理を行う(ステップS302)。この回転処理においては、上述のステップS20において検出された、傾斜角度θの分だけ、各圧縮原画像データを回転させる処理を行う。図18に4視差の画像(視差構成用画像)を作成する場合の例を示す。4つの視差構成用画像となる画像をそれぞれ、傾斜角度θの分だけ回転させる。このステップS302が第1ステップに相当する。
次に、連続画素配置に対応する一時画像データを作成する(ステップS303)。この場合、回転処理が為された各圧縮原画像データに対して、紙送り方向に対応する方向に沿って、凸レンズ12A1のレンズピッチに対応させて、細分化する。なお、細分化に先立って、本実施の形態では、解像度変換処理を行い、原画像データに対して、画像データの圧縮を経て、各圧縮原画像データを得る。そして、この圧縮原画像データから短冊状の細分化画像データを作成する。次に、短冊状の細分化画像データを、目視時に切り替わる順番で配置する。このようにして、一時画像データが得られる。なお、このステップS303が第2ステップに相当する。
すなわち、ステップS303にて、各画像を合成することで1つの画像を作成するが、その画像を合成する際、レンズ解像度、印字解像度、視差数、印刷サイズの情報が必要になる。例えば、印刷サイズが100mm(横)×148mm(縦)となる合成画像を作成する場合、まず、入力画像の解像度を変換し、次に、各画像を短冊状に合成していく。解像度変換では、レンズ解像度と、印字解像度、印刷サイズに基づいて行なう。レンズ解像度が60lpi、印字解像度が1440dpiであった場合、横の画素数は236画素(≒100/(25.4/60))とし、縦は8390画素(≒148/(25.4/1440))となる。なお、横の画素数236は、印刷サイズ長でのレンズ本数ともいえる。
解像度変換後、短冊状の合成では、1つの凸レンズ12A1内に配置できる各視差の画素数を考慮した上で各画像を交互に結合していく。例えば、視差数が4であった場合、1レンズ内の各視差の画素数Lは6画素(=24(=1440/60)/4視差)となる。合成時、各画像から順に、1レンズ分の画像(1×8390)を取り出し、1視差分の画像サイズ(6×8390)にした後に、視差順に結合していく。その結果、1レンズ分の画像(24×8390)が完成する。これを凸レンズ12A1の本数回、繰り返す。
なお、短冊を作成する際、1レンズ内の各視差の画素数Lが正数でない場合、レンズピッチと印字ピッチが異なるために周期ずれが発生するが、1視差内の画素分配を均一にしなければよい。また、ステップS303で使用するレンズ解像度の値は、製造のレンズ解像度であってもよいし、スキャナーなどを用いてより厳密に求めたレンズ解像度を与えてあっても良い。ただし、製造時のレンズ解像度を与える場合、注意すべき点がある。それは、後述する図28の印刷方法にてENC信号に基づいた吐出を選択すると、レンズと画像が正確に合わない可能がでてくるので、製造時のレンズ解像度を指定することは避けたほうがよい。
続いて、ステップS303で作成された一時画像データに対して、先のステップS302とは逆向きに、同一の回転角度θだけ回転させる、逆回転処理を行う(ステップS304;このとき作成される画像データを、視差画像データとする。)。この逆回転により、それぞれの原画像データに対応する細分化画像データの境界が、凸レンズ12A1の長手に沿う状態となる。この結果、図18中の最後の段階が示すような斜めの短冊構成の画像が出来上がる。なお、このステップS304が第3ステップに相当する。
上述のステップS304で作成された視差画像データに対して、ハーフトーン処理を行う(ステップS305)。なお、ハーフトーン処理は、複数の圧縮原画像データの個々に対し行う等、ステップS304よりも前の段階で行うようにしても良い。ハーフトーン処理が為された画像データから、印刷データを生成する処理が実行され、処理が終了する。ここで、印刷データとは、各主走査時のドットの記録状態を示すラスタデータと、副走査送り量を示すデータとを含むデータであり、分散テーブルの分散データを参照して作成される。なお、印刷データは、通常の印刷データに対し、鏡像反転させられたデータとなっている。このハーフトーン処理には、HTモジュールが使用され、ハーフトーン処理の他に、色変換、印刷データの作成が実行される。
また、図14の処理フローでは、短冊画像を作成後に、色変換・ハーフトーン処理を適用したが、別の方法として、ステップS302の画像の回転後に、色変換・ハーフトーン処理、短冊画像作成、画像の逆回転、印刷データの作成の順に適用しても良い。図14に示した前者の方法は、画質の滑らかさが増し、後者の方法は画像の切り替わりがよくなる。したがって、多くの場合、前者の方法は、立体印刷向きであり、後者は変わり絵印刷向きである。
また、上述のステップS301において、離間画素配置に対応すると判断される場合、次に、印刷を行うプリンタ10が、斜め吐出に対応しているか否か(上述の揺動機構を備えるか否か、または揺動機構を備える場合には、それが使用可能な状態であるか否か)を判断する(ステップS310)。ここで、斜め吐出とは、ノズル列33が紙送り方向に沿う列とはならず、凸レンズ12A1の傾斜角度θに対応する角度だけ傾斜している状態(図21、図22参照)をいう。
また、上述のステップS310の判断において、斜め吐出に対応していると判断される場合、続いて、斜め吐出に対応した視差画像データを作成する(ステップS311)。ステップS311によって、斜め吐出用の目視画像データが作成されると、続いて上述のステップS305に示すハーフトーン処理に移行する。なお、斜め吐出に対応していないプリンタ10の場合、このステップS310とS311が省略された処理フローとすることが好ましい。
また、上述のステップS310において、プリンタ10が斜め吐出に対応していないと判断される場合(Noの場合)、上述したステップS302と同様の、各圧縮原画像データの回転処理を行う(ステップS312)。この回転処理においても、凸レンズ12A1の傾斜角度θの分だけ、各圧縮原画像データを回転させる処理を行う。
ステップS312の次に、離間画素配置に対応する一時画像データを作成し、視差画像となる目視画像データを作成する(ステップS313)。このとき、上述のステップS303と同様に、回転処理が為された各圧縮原画像データに対して、紙送り方向に対応する方向に沿って、凸レンズ12A1のレンズピッチに対応させて、細分化する。なお、細分化の処理に先立ち、離間画素配置に対応させて、紙送り方向においても、各原画像データを圧縮する処理を行う。この場合、凸レンズ12A1の長手方向に沿って配置される細分化画像データの個数に応じて、各原画像データが圧縮される。そして、この圧縮が終了した後に、圧縮後の各圧縮原画像データを、凸レンズ12A1と、それぞれの圧縮原画像データにおける画素データとを、1つずつ並べてマトリクスを形成することにより、マトリクス状の細分化画像データが得られる。このようにして、一時画像データが作成される。
この一時画像データが作成された後に、当該一時画像データに対して、先のステップS312とは逆向きに、同一の回転角度だけ回転させる、逆回転処理を行う(このとき作成される画像データは、目視画像データに対応)。ステップS304と同様な逆回転により、それぞれの原画像データに対応する細分化画像データの境界が、凸レンズ12A1の長手に沿う状態となり、離間画素配置に対応する目視画像データが作成される。なお、図16や図17に示すような2次元配置(離間画素配置)の場合は、ステップS312,S313の回転と逆回転の処理は不要となるが、各凸レンズ12A1の物理的境界を示す実線部分12Fに沿って、離間画素が配置される場合は、ステップS312,S313の回転と逆回転の処理は必要となる。
なお、このようにして目視画像データが作成されると、続いて上述のステップS305に示すハーフトーン処理に移行する。以上が、凸レンズ12A1が傾斜している斜めレンズシートに印刷を行う際の、印刷データを作成するための処理フローである。
<印刷を実行する際の処理フローについて>
続いて、上述のステップS10の判断において、凸レンズ12A1が傾斜していると判断された場合(Yesの場合)に、印刷を実行するための処理(ステップS40)について、図19に基づいて説明する。
印刷を実行する場合、まず、目視画像データを基とする印刷データのピッチ調整を行う(ステップS401)。このピッチ調整においては、インク滴の吐出に対応するドットのデータが、凸レンズ12A1の谷間の部分に存在する場合に、いずれかの凸レンズ12A1側にそのドットのデータが含まれるように調整する。この場合、ドットのデータが跨る割合に応じて、いずれかの凸レンズ12A1側に含まれるように、調整する。なお、このピッチ調整は、ステップS303やステップS313の中で行うようにしても良い。また、凸レンズ12A1を跨るドットの場合、どちらの凸レンズ12A1に入るかを調整するピッチ調整は、後述するENC信号での吐出のみに使用し、後述するレンズ信号での吐出には使用しない。なぜなら、レンズ吐出は、どの凸レンズ12A1でも、同じドット数を吐出するからであり、もし調整してしまうと、ピッチが合わなくなるからである。よって、ピッチ調整がされた場合には、必ず、ENC信号での吐出となる。次に、レンズシート12のシート端12Etを基準として、インク滴を吐出するか否かを判断する(ステップS402)。この判断において、シート端12Etを基準としてインク滴を吐出する場合(Yesの場合)には、ENC信号に基づいて、インク滴を吐出する設定とする(ステップS403)。ここで、ENC信号を基準とする場合とは、レンズピッチが正確である等、一定の条件を満たす場合である。
また、上述のステップS402の判断において、シート端12Etを基準とせずに、インク滴を吐出する場合(Noの場合)には、レンズ信号を基準として、インク滴を吐出する設定とする(ステップS404)。この場合、上述のレンズ検出センサ60を用いて、レンズシート12のレンズピッチを検出しながら、印刷を実行する状態となる。
ステップS402での判断およびステップS403,S404の処理は、2種類の打たせ方(印刷方法)があるうち、どちらで行なうのかを指定するものである。1つは、レンズシート12の端を検出後、吐出タイミングの信号は変更せずに、ENC信号に基づいて印刷を実行するものである。その打たせ方のイメージを図20(A)に示す。もう一つは、レンズシート12の端又は凸レンズ12A1を検出後、吐出タイミングをレンズ信号に基づくものである。そのイメージを図20(B)に示す。なお、レンズ信号吐出では、図20(B)のイメージだけではなく、代表的なレンズ間隔をCPUタイマで生成することで、キャリッジ20の走査全体をレンズ信号としてもよい。
前者(図20(A))の印刷方法は、写真印刷やドキュメント印刷をするための汎用プリンタで実行できるが、画像作成時のレンズ解像度は小数第1又は第2まで求めておかないといけない。一方、後者は、汎用プリンタの構成に加え、レンズ検出機構とレンズ信号生成などが必要となる。しかし、画像作成時のレンズ解像度は、製造時の段階の値であってもよい。
図19の処理フローにおいては、ステップS402にて、シート端12Etにそった打たせ方、すなわちシート端12Etを基準とした印刷、をするかどうかを確認する。どちらで打つのかを決定する方法は、利用者側で指定しても良いし、印刷画像作成時に指定したレンズ解像度が製造時の値なのかどうかで判断しても良いし、プリンタ10がレンズ検出装置を備えているかどうかの対応状況で判断しても良い。もしもシート端基準の吐出が選択されたならば、ステップS403を適用する。それ以外はステップS404を適用する。
ステップS403では、ENC信号吐出の設定を有効にする。ステップS404では、レンズ信号吐出の設定を有効にする。設定の完了後、その設定内容に基づいた印刷を行なう。ENC信号吐出設定が有効の場合、レンズシート12に特化した印刷ではなく、汎用プリンタが行なうように、単に印刷媒体の端と印刷画像の端が合うように印刷を行なう。一方、レンズ信号吐出が有効な場合は、レンズ信号に基づいた打たせ方になるが、斜めレンズシートとなるレンズシート12を使用するためには、吐出制御に関して拡張が必要となる。
また、上述のステップS403、ステップS404における設定が終了した後に、続いて、上述のステップS310と同様に、プリンタ10が斜め吐出に対応しているか否か(上述の揺動機構を備えるか否か、または揺動機構を備える場合には、それが使用可能な状態であるか否か)を判断する(ステップS405)。この判断において、プリンタ10が斜め吐出に対応していると判断される場合(Yesの場合)、続いて、斜め吐出に対応する設定とする(ステップS406)。また、上述のステップS405において、プリンタ10が斜め吐出に対応していないと判断される場合(Noの場合)、斜め吐出ではなく、通常の吐出に対応する設定とする(ステップS407)。なお、斜め吐出に対応していないこのプリンタ10の場合、ステップS405とS406が省略された処理フローとすることが好ましい。
そして、上述のステップS406およびステップS407での設定が為された後に、各設定に対応する印刷を実行する(ステップS408)。
ここで、各設定に対応する印刷の例を述べる。例えば、キャリッジ軸21の一端側をスライドさせることが可能な揺動機構を具備する場合、図21に示すように、印刷に際しては、紙送り方向に対して、印刷ヘッド32の走査方向が直交しておらず、しかも、レンズシート12の凸レンズ12A1の長手が、ノズル列33の長手と一致する方向となっている。この場合、インク滴の吐出のタイミングは、レンズ信号を基準とする状態となる。そのため、レンズピッチに応じて、インク滴の吐出タイミングを調整しながら、印刷を実行することになる。
なお、図21に示す状態においては、ノズル列33の長手が紙送り方向に沿う状態における紙送り量をLとすると、紙送り量W=Lcosθとなる。この紙送り量でPFモータ41を駆動すると共に、レンズ信号をトリガとしてインク滴を吐出すれば、図2に示すような斜めレンズシートとなるレンズシート12に対して、良好な印刷を実行することができる。なお、図21において、レンズピッチが正確である場合であって、レンズ信号とENC信号との整合性が良好である等の場合には、シート端12Etを検出した後に、ENC信号を基準として、印刷を実行するようにしても良い。
また、例えばキャリッジ軸21が固定的であると共に、このキャリッジ軸21に対して印刷ヘッド32が揺動する揺動機構を備える場合、図21に示す場合とは異なり、凸レンズ12A1内に配列されるインク滴のドットは、正方形状とはならなく、図22に示すような平行四辺形を形成する状態でドットがレンズシート12に付着する。このため、インク滴の吐出に対応する印刷データを作成する場合、かかる平行四辺形状のドット配置に対応させるように、印刷データを作成する。この場合、レンズ信号のエッジを基準としてドットを形成する場合、印刷ヘッド32の走査方向に沿って数ドット進行すると、図22におけるドット配置では、図21におけるドット配置よりも一つだけ紙送り方向において隣に位置する画素データに対応させて、インク滴を吐出する状態となる。
なお、図22に示す場合、印刷ヘッド32の主走査方向は、凸レンズ12A1の幅方向に対して、若干傾斜しているため、主走査方向に沿う凸レンズ12A1の横断距離は、凸レンズ12A1の幅方向よりも長い。そのため、印刷ヘッド32は、1つの凸レンズ12A1につき、打てるドットの数を多くすることができる。
さらに、揺動機構を具備せずに、印刷ヘッド32の制御駆動のみで印刷を行う場合において、個々のノズル33aにおいてインク吐出のタイミングを独自に調整可能であれば、図23に示すように、平行四辺形状のドット配置で印刷を実行することができる。この方法で印刷を行う場合については後述する。なお、この場合も、インク吐出は、レンズ信号をトリガとして吐出する状態となる。
以上が、プリンタ10に揺動機構があるか否か、すなわち、図21(斜め走査系)や図22(斜め吐出系)のように斜めの印字ができるか否かを考慮した処理フローであるが、そのような機構を有しないプリンタの場合は、上述の処理フローが簡略化されることとなる。なお、斜め走査系や斜め吐出系のように斜めの印字を行う場合は、画像データ作成に当たって、画像変形が必要とされる。
図24に、斜め印字の際の印刷画像の作成の流れを示す。このフローでは、ステップS611の画像の変形、ステップS612の短冊画像作成、ステップS613のハーフトーン処理(HT)の流れとなる。ステップS612とステップS613は、図14で説明した、ステップS303,S305と同じであるが、ステップS611の画像の変形は、斜め走査系と斜め吐出系に依存した処理である。
斜め走査系の画像変形では、図25のように画像の幅は同じであり、凸レンズ12A1の角度に応じて右下へ引っ張られた画像を作る必要がある。なぜならば、図21の印字領域のように右上がりになっているためである。レンズシート12内に納めるために、その印字領域とは逆の絵柄が必要になる。なお、斜め走査系では、ステップS611の画像変形と、ステップS612の短冊画像作成の適用順を入れ替えることで、変形させるべき画像が1枚で済むので時間的に効率的である。ここでは、説明簡素化のために、次の斜め吐出系と同じフローを採用している。
斜め吐出系では、画像が斜めに吐出されるので、図26のように縦の長さは変えずに傾いた画像に変換させておく。ただし、図26に示すように、作成される画像は、印字データとして不要な部分を含んでいるために、印字データの作成の段階で必要なデータのみで構成するように取り出さないといけなくなる。例えば、ハーフトーン済みの画像データに対して、プリンタが3回の走査で描くと仮定した場合、図27のように、網掛け部分(3つの区域に分かれている)で印字データを作成しないといけない。
続いて実行される印刷処理は、図19の処理フローとなる。斜め吐出系では、図19のステップS405および/またはステップS406が必要となるが、通常の印刷や斜め走査系では不要となる。
なお、斜め走査系及び吐出系の機構があったとしても、必ずしも、これらの機構を利用しなくても良い。しかしながら、斜め吐出系や斜め走査系の機構をもったプリンタは、凸レンズ12A1に沿ったインクの吐出になるので、斜め機構を採用していないプリンタより画質は良くなる。斜め機構を採用していないプリンタでは、印刷画像のドット配列は、主・副走査系に対して水平・垂直のラインからなる升目をイメージするが、そのイメージ上に斜めのレンチキュラーレンズ12Aをかぶせると、あるドットではレンズの谷を跨ることがしばしばある。凸レンズ12A1の谷を跨ることは、画像のクロストークの要因であるため、できるだけ避けたい。従って、斜め走査系や吐出系を採用したプリンタは、非採用より画質が良くなる傾向がある。
<補完レンズ信号の生成について>
ところで、図28(A)に示すように、図中矢印方向に搬送されるレンズシート12に対して、キャリッジ30が、副走査方向の地点(1),(2),(3)から主走査方向に移動したときのレンズ信号は、図28(B)に示すようになる。レンズ信号(1)は、地点(1)におけるレンズ信号を示す。レンズ信号(2)は、地点(2)におけるレンズ信号を示す。また、レンズ信号(3)は、地点(3)におけるレンズ信号を示す。
レンズ信号(1),(2),(3)から判るように、最初に出力されるレンズシート12のシート端12Etの部分のレンズ信号は、シート端12Etに沿う位置にある凸レンズ12A1(凸レンズ12A11)が、シート端12Etの外側において欠損していることにより、凸レンズ12A1があるにも関わらず、パルスが現れなかったり(レンズ信号(1))、パルス幅が狭くなってしまっている(レンズ信号(2),(3))。
レンズ信号(2),(3)に現れている当該狭いパルス幅のパルスを基準にしてインク滴を吐出すると、当該狭いパルス幅に、通常の幅の凸レンズ12A1の1本分の吐出信号が印字信号として存在することになり、インク滴を吐出した場合に、ドットが詰め込まれる状態となる。そのため、目視される絵柄も、横方向に圧縮された状態となるか、またはインク滴の混じり合いにより、にじんだような状態となり、好ましくない画像が印刷されてしまう。
そこで、以下に説明するように、シート端12Etにおいて凸レンズ12A1が欠損していても、この凸レンズ12A1に対応するパルスの幅を、主走査方向の他のタイミングにおけるパルス幅と同じ幅とした補完レンズ信号を生成し、この補完レンズ信号に基づいてインク滴を吐出することにより、好ましくない画像の印刷が行われないようにする。図29(A)には、図28(B)に示されるレンズ信号(1),(2),(3)に対する補完レンズ信号が、補完レンズ信号(1′),(2′),(3′)として示されている。
図30に、レンズ信号から、補完レンズ信号、擬似ENC信号および吐出信号を生成し、インク滴の吐出制御を行うレンズ信号処理制御部110の概略構成を示す。このレンズ信号処理制御部110においては、先ず、補完レンズ信号生成部111においてバッファ112を利用しながらレンズ信号から補完レンズ信号を生成する。そして、擬似ENC信号生成部113において、補完レンズ信号から、ENC信号を利用して擬似ENC信号に生成する。そうして、吐出制御部114において、擬似ENC信号からインクを吐出するための吐出信号を生成する。
補完レンズ信号生成部111におけるレンズ信号の補完処理について、レンズ信号(3)を例に採って、図31の処理フローおよび図32などを参照しながら説明する。なお、レンズ信号(1),(2)においても、レンズ信号(3)について行われる処理と同様の処理が行われる。ここでは代表例として、レンズ信号(3)のみ図32に取り出し、説明することとする。レンズ信号(3)は、図32(A)に示すように、パルスP1,P2,P3,…,Pn−2,Pn−1,Pnが、図28(A)に示すレンズシート12の凸レンズ12A11,12A12,12A13,12A14,…,12A1(n−2),12A1(n−1),12A1nに対応するパルスとなっている。
補完レンズ信号の生成に当たっては、先ず、レンズ信号(3)の隣り合うパルスのポジティブエッジ(立上がり部)の間隔を、クロック信号のクロック数により計数し、この計数値を凸レンズ12A1の配設間隔とする(ステップS500)。最初に検出される凸レンズ12A11は、レンズシート12のシート端12Et側が欠損したレンズであるため、レンズ幅が狭く検出される。したがって、最初のパルスP1と凸レンズA12を検出したパルスP2のポジティブエッジの間隔は、他のパルス間、たとえばパルスP2とP3のポジティブエッジの間隔に比べて狭くなっている。つまり、最初の凸レンズ12A11と次の凸レンズ12A12とのクロック数における間隔は700となっている。2番目以降の凸レンズ12A12,12A13,…については、凸レンズ12A1が完全な形で存在するため、隣接する凸レンズ12A1同士のクロック数における間隔は1000となっている。凸レンズ12A1nについても、シート端12Eeの外側が欠損しているため、パルスPnの幅は、他のパルスに比べ、狭くなっているが、前のパルスPn−1との間隔(配設間隔)は、それ以前と同様、1000となっている。シート端12Eeは、レンズシート12の主走査方向への印刷方向における印刷が終了する側のシート端である。
クロック数として計数された凸レンズ12A1の配設間隔は、キャリッジ30の移動に従って順次バッファ112に記録していく(ステップS500)。この際、レンズ信号(3)の最初に検出されたパルスP1については、上述したように、レンズシート12のシート端12Etの部分にある凸レンズ12A11であり、欠損しているので、ポジティブエッジ信号のバッファ112への記録は行わない。他のレンズ信号(1),(2)についても同様に、最初に検出されたパルスについては、レンズシート12のシート端12Etの部分にある凸レンズ12A11であり、欠損している可能性があるので、バッファ112へのポジティブエッジ信号の記録は行わないようにする。
バッファ112への凸レンズ12A1の配設間隔の記録は、図32(B)に示すように行われる。図32(B)は、上から下に向う方向がキャリッジ30の進行方向に対応している。バッファ112は、5本分の凸レンズ12A1についての配設間隔がクロック信号の計数値として記録できるようになっている。図32(B)は、凸レンズA12と凸レンズA13の間隔と凸レンズA13と凸レンズA14の間隔がクロック数1000として記録され、さらに、凸レンズA14と凸レンズA15の間隔が計測中である状態を示している。
そして、所定本数の凸レンズ12A1を検出したところで(ステップS510)、バッファ112内に記録されている凸レンズ12A1の配設間隔に基づき、補完レンズ信号(3′)を生成する(ステップS520)。所定本数は、所定本数の凸レンズ12A1の幅が、印刷ヘッド32とレンズ検出センサ60の受光部62との間隔よりも狭くなるように設定する必要がある。その理由は、少なくとも印刷ヘッド32が、レンズシート12のシート端12Etに到達する前に補完レンズ信号を生成し、インクの吐出に備える必要があるからである。本実施の形態では、レンズ信号(3)の4個目のポジティブエッジが検出されるのを待って、補完レンズ信号の生成処理(ステップS520)を行うようにしている。
補完レンズ信号(3′)の生成は、バッファ112に記録されている凸レンズ12A1の配設間隔に基づいて行う。クロック数1000の配設間隔の最初の半分(500)はHiの信号として、後の半分(500)は、Loの信号として、図32(C)に示す補完レンズ信号(3′)を生成する。そして、この補完レンズ信号(3′)は、欠損している可能性があるとして、バッファ112に記録されなかったレンズ信号(3)のパルスP1の代わりに、点線で示されるパルスP1′が補完されている。本実施の形態では、補完されたパルスP1′は、パルスP2′を用いている。なお、パルスP2′はパルスP2に対応し、パルスP3′はパルスP3に対応している。また、パルスP4′はパルスP4に対応している。
この後、キャリッジ30がシート端12Eeに向かって移動するのに合わせて検出されるレンズ信号(3)に基づき、補完レンズ信号(3′)を生成する(ステップS520)。バッファ112は、上述したように5本分の凸レンズ12A1の配設間隔が記録するように構成されていて、キャリッジ30が移動するのに合わせて順次に記録されている凸レンズ12A1の配設内容を更新していく(ステップS530)。
キャリッジ30が、レンズシート12のシート端12Etからシート端12Eeの側に向かって移動すると、凸レンズ12A11,12A12,12A13,12A14,…,12A1(n−2),12A1(n−1),12A1nに合わせて、図32(A)に示されるようにパルスP1,P2,P3,P4,…,Pn−2,Pn−1,Pnのレンズ信号(3)が出力される。そして、このレンズ信号(3)に基づいて、図32(C)に示される、補完レンズ信号(3′)が生成されることになる。補完レンズ信号(3′)のパルスP1′,P2′,P3′,P4′,…,Pn−2′,Pn−1′,Pn′は、それぞれレンズ信号(3)のパルスP1,P2,P3,P4,…,Pn−2,Pn−1,Pnに対応している。
キャリッジ30が、レンズシート12のシート端12Ee側まで移動したかどうかは次のようにして判断する。図33に、レンズシート12のシート端12Eeにおける印刷ヘッド32、レンズ検出センサ60の受光部62、凸レンズ12A1の位置関係を示す。キャリッジ30が、シート端12Etの側からシート端12Eeの側に移動して、レンズ検出センサ60が、レンズシート12のシート端12Eeにある凸レンズ12A1nを越えると、その後には凸レンズ12A1が存在しないため、レンズ信号(3)の出力はなくなる。そこで、凸レンズ12A1nのレンズ信号(3)のパルスPnが検出された後、所定の距離をキャリッジ30が移動しても、レンズ信号(3)が検出されない場合は、レンズ検出センサ60は、レンズシート12のシート端12Eeを検出したと判断する。その所定の距離は、例えば、この凸レンズ12A1nの直前に検出された凸レンズ12A1(n−1)との間隔の1.5倍に相当する距離とする。この距離をキャリッジ30が移動しても、レンズ信号(3)が検出されない場合に、キャリッジ30が、受光部62の位置においてレンズシート12のシート端12Eeを越える位置に移動したと判断する(ステップS540)。
レンズシート12のシート端12Eeにおいても、図33に示すように、凸レンズ12A1nが欠損している場合がある。この場合も、シート端12Etにける凸レンズ12A11が欠損しているときと同様に、レンズ信号のパルス幅が狭いパルスPnが生じることになる。そして、当該狭いパルス幅に、通常の幅の凸レンズ12A1の1本分の吐出信号が存在すると、インク滴を吐出した場合に、ドットが詰め込まれる状態となり、目視される絵柄が好ましくないものとなる。
そこで、レンズ検出センサ60の受光部62が、レンズシート12のシート端12Eeに到達したと判断された場合には(ステップS540)、図32(C)に示す補完レンズ信号(3′)のように、凸レンズ12A1nに対応するパルスPn′として、凸レンズ12A1nの直前にある凸レンズ12A1(n−1)とのレンズ間隔に対応するパルスPn−1′を用いて補完処理を行う。
以上のようにして、補完レンズ信号(3′)は生成される。そして、補完レンズ信号(3′)に基づいてインク滴を吐出することによりレンズ信号(3)に幅が狭いパルスがあっても、他の部分と同程度の印刷品質を確保できる。
補完レンズ信号(3′)は、キャリッジ30が移動するのに合わせてレンズ信号(3)に基づいて生成されていく。そして、印刷ヘッド32が、レンズシート12のシート端12Etに到達するのに合わせて、補完レンズ信号(3′)に基づいて生成されるインクの吐出信号に基づいてインク滴の吐出を開始する。
本実施の形態においては、図6に示すように、キャッリジ30に設けられている受光部62は、印刷ヘッド32よりも主走査方向に先行する位置に配設されている。したがって、レンズ信号(3)が検出されてから、受光部62と印刷ヘッド32の距離T分をキャリッジ30が移動したときに、インク滴の吐出が開始されることになる。なお、レンズ検出センサ60の受光部62は、印刷ヘッド32よりも主走査方向において先行させて配設する必要がある。それは、レンズ検出センサ60からレンズ信号(3)が出力されてから、補完レンズ信号(3′)を生成し、そしてこの補完レンズ信号(3′)に基づいて後述するように吐出信号を生成した後、この吐出信号に基づいてインク滴の吐出を行うため、レンズ信号(3)の出力からインク滴の吐出までにはタイムラグがあるからである。
補完レンズ信号生成部111でキャリッジ30の移動に従って順次生成される補完レンズ信号(3′)は、生成されるのに合わせて擬似ENC信号生成部113に出力され、擬似ENC信号として生成される。この擬似ENC信号は、補完レンズ信号(3′)をENC信号の解像度に合わせて定倍して擬似ENC信号として生成する。例えば、レンズの配設ピッチが45lpiであり、ENC信号の解像度が180dpiであるときは、補完レンズ信号(3′)の周期を、ENC信号の解像度に合わせるため、補完レンズ信号(3′)の周期を4倍(180÷45)にした信号を擬似ENC信号とする。
そして、さらに、この擬似ENC信号に基づいて、吐出制御部114において、インクの吐出信号を生成する。この吐出信号に基づいてインク滴の吐出が行われる。この吐出信号は、擬似ENC信号を印字解像度に合わせて定倍して吐出信号として生成する。例えば、印字解像度が1440dpiであれば、擬似ENC信号の周期を、印字解像度に合わせるため、8倍(1440÷180)した信号を吐出信号とする。
プリンタ10は、キャリッジ30を主走査走行へ移動させながら、このキャリッジ30の移動に従って出力される上述の吐出信号により、インク適をレンズシート12の所定位置に吐出することで、印刷を実行する。
ところで、先に説明したように、レンズ検出センサ60の受光部62は、印刷ヘッド32に対して、キャリッジ30の移動方向に先行した位置に配設されている。そのため、印刷ヘッド32は、レンズ検出センサ60により検出された凸レンズ12A1に、検出された時点よりも遅れて到達する。したがって、印刷ヘッド32が吐出信号に対応する凸レンズ12A1に到達したときに、吐出が行われるようにする必要がある。例えば、レンズ信号(3)のパルスP1に基づいて生成された吐出信号によりインクを吐出するときは、印刷ヘッド32が凸レンズ12A11に到達したときに吐出させる必要がある。
そのため、吐出信号による吐出は、受光部62と印刷ヘッド32との主走査方向の距離Tに相当する分だけ遅らせる。具体的には、例えば、上述のようにレンズの解像度が45lpi、ENC信号の解像度が180dpiそして印字解像度が1440dpiであれば、吐出信号の1波長は、0.0177mmに相当する。したがって、例えば、受光部62と印刷ヘッド32との距離(間隔)Tを1.77mmに設定すると、吐出信号が出力されてから100波長分送れたタイミングで吐出を行うと、吐出信号に対応するレンズシート12上の印刷位置と、吐出位置とが一致することになる。
上述の説明では、簡単のため、受光部62と印刷ヘッド32との距離Tに基づいて、吐出信号と吐出のタイミング合わせたが、実際には、印刷ヘッド32のインクの吐出ノズル33aと受光部62との間隔が基準となる。また、レンズ信号(3)から吐出信号を生成するまでの生成時間や、その他のメカ的あるいは電気的なロス時間などを考慮して、吐出タイミングを決定することになる。
以上のように、キャリッジ30が主走査方向に移送して、図28(A)に示す地点(3)について、シート端12Etからシート端12Eeに亘って印刷が行われた後、紙送り機構によりレンズシート12を副走査方向に送りながら、キャリッジ30をレンズシート12のシート端12Et側に戻す。そして、地点(2),(3)について上述した印刷動作を行う。つまり、図28(B)に示す、レンズ信号(1),(2)から、図29(A)に示す補完レンズ信号(1′),(2′)を生成し、さらにこの補完レンズ信号(1),(2)に基づいて吐出信号を生成して印刷が行われる。
なお、上述の説明においては、図28(A)に示すレンズシート12の副走査方向の途中にある地点(1),(2),(3)についてのみの印刷動作を説明したが、レンズシート12の搬送方向の前端側から、レンズシート12の後端側に向かって、レンズシート12の搬送ピッチに毎に、上述した地点(3)について説明したのと同様な印刷動作が行われる。
ところで、補完レンズ信号は、実際には凸レンズ12A1が存在しないレンズシート12の外側に、あたかも凸レンズ12A1があるかのように、信号を生成している。したがって、補完レンズ信号を基準にインク滴を吐出することとすると、レンズシート12の外側にインクの吐出が行われ、プラテン50が汚れてしまうことになる。
そこで、レンズシート検出センサ63によりレンズシート12のシート端12Etとシート端12Eeの検出を行い、印刷ヘッド32が、レンズシート12の外側にあるときは、インク滴の吐出を行わないようにすることが適当である。
つまり、実際は凸レンズ12A1の無い位置に印刷ヘッド32が位置するときにおいて、吐出信号により、本来はインク滴が吐出されるべきであっても、印刷ヘッド32がレンズシート12のシート端12Etに到達するまでは、インク滴を吐出しないように空打ちを行う。すなわち、画像データに基づいて吐出信号に従ってインク滴を吐出するところ、実際にはインク滴の吐出を行わない制御を行う。このように、インク滴の吐出を制御することにより、印刷画像はレンズシート12の主走査方向の幅に合わせて印刷されることになる。
印刷ヘッド32が、レンズシート12のシート端12Etに到達したかどうかは次のように判断する。レンズシート検出センサ63は、レンズ検出センサ60の受光部62と同様に、印刷ヘッド32よりも主走査方向に先行する位置に配設されている。従って、レンズシート検出センサ63によりシート端12Etが検出されてから、キャリッジ30が、レンズシート検出センサ63と印刷ヘッド32との主走査方向の距離Tを移動したときに、印刷ヘッド32が、レンズシート32のシート端12Etに到達したとして、インク滴の吐出を行うようにする。レンズシート検出センサ63がシート端12Etを検出してからのキャリッジ30の移動距離は、ENC信号により計測を行う。なお、本実施の形態においては、レンズシート検出センサ63とレンズ検出センサ60は、印刷ヘッド32に対して主走査方向の同一の距離Tに配設されている。
また、レンズシート12のシート端12Eeにおいても、補完レンズ信号は、実際には凸レンズ12A1が存在しない、レンズシート12の外側に、あたかも凸レンズ12A1があるかのように生成されている。したがって、補完レンズ信号を基準にインク滴を吐出することとすると、レンズシート12の外側にインクの吐出が行われ、プラテン50が汚れてしまうことになる。
そこで、レンズシート検出センサ63がシート端12Eeを検出した後、キャリッジ30が、レンズシート検出センサ63と印刷ヘッド32との主走査方向の距離Tを移動したときには、印刷ヘッド32が、レンズシート32のシート端12Eeに到達したとして、インク滴の吐出を停止するようにする。
ところで、レンズシート12のシート端12Etの外側においては、インクの吐出は行われないものの、画像データは消費されている。すなわち、レンズシート12に対する印刷が全体的に、シート端12Et側に補完した信号分偏倚して印刷が行われる。したがって、レンズシート12のシート端12Etの反対側のシート端12Eeにおいては、画像データがなくなり印刷がされない虞がある。そこで、主走査方向についての画像データを、レンズシート12の主走査方向の幅よりも若干大きめに作成しておく。このように画像データを作っておくことにより、レンズシート12のシート端12Etの外側において画像データが消費されても、シート端12Eeにおいて、印刷するための画像データがなくなってしまうことを防ぐことができる。
また、補完レンズ信号は、図29(A)に示す幅Y分だけ、シート端12Et側に偏倚させておこくことが好ましい。この幅Yは、補完レンズ信号のポジティブエッジと凸レンズ12A1の谷間との距離である。補完レンズ信号を、幅Y分だけ、シート端12Et側に偏倚させ、補完レンズ信号のポジティブエッジと凸レンズ12A1の谷間の位置を一致させることにより、各凸レンズ12A1に対するインク敵の吐出の開始を、凸レンズ12A1の凸部の始まる位置に合わせ易くなる。つまり、インク敵の吐出を各凸レンズ12A1の幅に正確に合わせて行うことができるようになる。
ところで、図28(B)に示すレンズ信号(1)とこれに対応する図29(A)に示す補完レンズ信号(1′)を見て判るように、凸レンズ12A11に対応している部分の信号には、凸レンズ12A11が僅かにあるにも関わらず、パルスが現れていない。つまりレンズの欠損量が大きく、残存している部分が少ないような箇所については、レンズ信号にパルスが現れず、したがって、補完レンズ信号にもパルスが現れない。そのため、吐出信号が生成されず、このような部分に対しては、インクの吐出が行われないことになってしまう。
そこで、最初に現れるパルスの幅(凸部分と凹部分の合計)が、上述の例で言えば、クロック数にして1000であれば、レンズシート12のシート端12Etは、残存している部分は少ないが凸レンズ12A11が存在していると判断する。そして、図29(B)に示すように、シート端12Et側にクロック数1000に相当するパルスの信号を2つ補完した補完レンズ信号(1″)(図中、シート端12Et側に点線で示した信号)を生成する。
このようにすることにより、シート端12Etの部分に僅かに残存している凸レンズ12A11の部分にも、インクの吐出を行うことができ、レンズシート12のシート端12Et一杯に文字や画像を印刷できる。この実施の形態では、この補完レンズ信号(1″)を得ての処理を行っているため、シート端12Et一杯に文字や画像を印刷できるものとなっている。
このような構成のレンズシート12、プリンタ10および印刷方法によれば、レンズシート12の基準方向Lは、凸レンズ12A1の長手に対して傾斜角度θで傾斜している。しかも、このレンズシート12では、外形が長方形または正方形であり、かつ各凸レンズ12Aがシート端Eに対して傾いて配置されているので、無駄が出ず、しかも印字幅を稼ぐことが可能となる。また、このレンズシート12を回転させると、凸レンズ12A1の表面の角度は、凸レンズ12A1を横切る方向のみならず、レンズシート12の基準方向Lに沿っても変化する。それにより、視差画像を構成する圧縮原画像データを、横切る方向に直線状に配置するのみならず、平面状に配置することができ、複数の視差に対応する視差画像を目視する場合、視差画像の切り替わりが滑らかになり、目視するユーザに自然な印象を与えることが可能となる。
また、レンズシート12は、その外観が矩形状を呈すると共に、シート端12Etは基準方向Lに平行に設けられている。それにより、レンズシート12の基準方向Lがシート端12Etに平行となり、ユーザにとって、目視時の基準方向Lが分かり易い。また、プリンタ10における紙送り等の動作を行い易くなる。
また、上述の傾斜角度θは、5度〜15度の範囲内で傾斜している。このため、レンズシート12を、その基準方向Lを基準にして5度〜15度回転させた場合に、目視画像における画像の切り替わりが良好となり、特に目視画像が立体画像に対応する場合、立体画像が滑らかに切り替わり、ユーザにとって目視性が良好となる。なお、傾斜角度θは、0.1度〜45度の範囲内としても良い。
また、上述のプリンタ10のように、地点A、地点Bを通るように印刷ヘッド32を走査させる等によって、レンズシート12が、通常のレンズシートであるか、または凸レンズ12A1が傾斜している状態となっているかが判断されるため、傾斜していると判断された場合でも、通常のレンズシートと区別して、良好に印刷を行わせることができる。すなわち、凸レンズ12A1が傾斜していて、このレンズピッチごとに目視画像データに対応するインク滴を吐出させ、かつ斜め印刷に対応させることができる。
なお、図13に示すように、2点においてレンズピッチの計測を行う場合、凸レンズ12A1の長手方向の一方向に対する傾斜角度θを適切に算出することが可能となり、凸レンズ12A1の傾斜角度を考慮して、適切な位置にインク滴を吐出させることが可能となる。それにより、凸レンズ12A1の傾斜角度を考慮せずにインク滴を吐出させる場合のように、印刷画像(印刷コンテンツに相当)がずれたり、曲がったりするのを防止することができる。
さらに、図21に示すように、印刷ヘッド32からのインク滴の吐出を、それぞれのノズル33a毎に制御可能な場合、それぞれのノズル33a毎に、インク滴の吐出のタイミングを調整することができる。このため、凸レンズ12A1の長手が紙送り方向に対して傾斜しているレンズシート12においても、各凸レンズ12A1のレンズピッチ毎に、視差に対応する分だけの原画像データが目視画像データに存在し、該傾斜に対応するように、各ノズル33aからインク吐出のタイミングをずらしながら印刷を実行可能となる。それにより、印刷ヘッド32を揺動させる揺動機構等を有しなくても、凸レンズ12A1の傾斜に対応する印刷を良好に行わせることが可能となる。
また、レンズ信号は、凸レンズ12A1の幅に応じてパルス幅が異なるパルス信号であり、さらに、制御部100は、レンズ信号の検出により、レンズシート12のシート端12Et付近の凸レンズ12A1の幅が狭いと判断すると、他の部分と同様のパルス幅となるように、補完処理を行っている。それにより、狭いパルス幅のレンズ信号に、複数の視差の視差画像データに対応する印刷データ(ドット)が詰め込まれる状態が解消され、他の部分と同程度の印刷品質を確保できる。
また、図15に示すような連続画素配置を採用する場合、凸レンズ12A1を横切る方向に沿って、レンズピッチに対応させて細分化された複数の圧縮原画像データから、視差画像データが構成される。この場合、凸レンズ12A1が基準方向Lに対して傾斜している場合でも、視差毎の画像の切り替わりが良好となる視差画像を、レンズシート12に対して印刷可能となる。また、主走査方向が凸レンズ12A1の長手方向に対して斜めになるため、この主走査方向に沿う距離が若干伸び、着弾させるドット数を増やすことができるため、印刷品質を向上させることが可能となる。
さらに、図16や図17に示すような、離間画素配置となる2次元配置を採用する場合、複数の原画像データから形成される視差画像データは、圧縮および細分化後に、マトリクス状に配置される。それにより、凸レンズ12A1を横切る方向のみに細分化された圧縮原画像データが配置される、図15に示す場合と比較して、より多数の画素データ(圧縮および細分化された圧縮画像データ)を配置可能となる。それによって、例えばユーザに目視されるのが立体画像である場合、運動視差に対応させることが可能となり、ユーザは、より自然な状態の立体画像を認識することが可能となる。
以上、本発明の一実施の形態について述べたが、本発明は、種々変形可能である。以下、それについて述べる。
上述の実施の形態では、凸レンズ12A1の傾きが右下がりとなっているが、左下がりのものとしても良い。また、印刷を行う際、図2に示す状態から90度回転させた状態で印刷を行うようにしても良い。また、上述の説明では、キャリッジ軸21の揺動機構を備える構成と、他の揺動機構を備える構成と、揺動機構を備えない構成を簡単に説明したが、これらは選択的な要素であり、いずれかのみを備えるのが原則であるが、全てを備える構成、またはいずれか2つを選択的に備える構成を採用しても良い。
上述の実施の形態においては、レンズシート12への印刷は、トレイを用いず、直接、レンズシート12を副走査方向に搬送させて印刷しているが、印刷に際して、専用のトレイを用いるようにしても良い。トレイを用いる場合、該トレイには、レンズシート12の大きさに対応する嵌め込み部が存在し、この嵌め込み部にレンズシート12を嵌め込むと、凸レンズ12A1の長手は紙送り方向に沿うものの、レンズシート12のシート端Eは、紙送り方向に傾斜する状態となるものを使用しても良い。このようなトレイを用いて印刷を行うと、揺動機構等の特有の機構を設けなくても、印刷品質を確保することが可能となる。また、レンズシート12を搬送しないで、印刷ヘッド32を主走査方向と副走査方向に移動させるようにしても良い。
また、上述の実施の形態においては、レンズ検出センサ60は、ホームポジションから離間する部位に、1つのみ設けられている。しかしながら、レンズ検出センサ60の個数は1つには限られず、キャリッジ30に複数個設けるようにしても良い。例えば、キャリッジ30の下面のうち、主走査方向の両端にそれぞれレンズ検出センサ60を取り付ける場合、キャリッジ30の往復動のそれぞれにおいて、印刷よりも先にレンズピッチを計測することが可能となり、レンズシート12に対する印刷を往復動のそれぞれで実行可能となる。
また、上述の実施の形態では、ENC信号およびレンズ信号は、パルス信号であると共に、エンコーダ周期情報やレンズ周期情報は、これらのポジティブエッジで計測しているが、ネガティブエッジで計測しても良い。また、ENC信号およびレンズ信号は、アナログ信号であっても良い。これらがアナログ信号である場合、電圧の所定のしきい値を、エンコーダ周期情報やレンズ周期情報とすれば、カウント値等を算出することが可能となる。また、レンズ信号などの取得の際、光透過方式のセンサではなく、光反射式のセンサを用いるようにしても良い。
また、上述の実施の形態では、レンズシート12は、凸レンズ12A1が多数並べられる構成となっているが、レンズシートはこれには限られず、凹レンズが多数並べられる構成のレンズシートであっても良い。なお、この場合には、上述の各処理は、ポジティブエッジではなく、ネガティブエッジを検出したときを基準とするのが好ましい。
また、上述の実施の形態では、プリンタ10は、印刷を実行するものとなっているが、印刷のみを行うものには限られず、コピー、ファックス、スキャナの各機能の1つまたは複数を兼ねる複合的なプリンタであっても良い。また、上述の実施の形態においては、レンズシート12に対して印刷画像を直接印刷する方式である直描型の場合について述べている。しかしながら、別途印刷された印刷物をレンチキュラーレンズ12Aに貼り合わせる方式の分離型の場合についても、本発明を適用することは勿論可能である。
また、上述した各処理方法は、プログラム化されても良い。また、プログラム化されたものが記憶媒体、たとえばCD(Compact Disc)、DVD、USB(Universal Serial Bus)メモリに入れられ、コンピュータによって読みとり可能とされても良い。この場合、プリンタ10やコンピュータ130は、その記憶媒体内のプログラムを読み込む読み込み手段を持つこととなる。さらには、そのプログラム化されたものがプリンタ10やコンピュータ130の外部のサーバに入れられ、必要によりダウンロードされ、使用されるようにしても良い。この場合、プリンタ10やコンピュータ130は、その記憶媒体内のプログラムをダウンロードする通信手段を持つこととなる。
10…プリンタ、12…レンズシート(斜めレンズシートに相当)、12A1…凸レンズ(レンズに相当)、12E…シート端、12Et…副走査方向シート端、60…レンズ検出センサ、θ…傾斜角度